説明

含水組成物をベースとするガス発生用固体発火燃料

【課題】 燃焼時に固体残留物の生じない無毒な「冷たい」ガスを発生し、しかも連続製造、成形ができる固体発火組成物。爆発性消火器および自動車の安全装置のガス発生器で使用される。
【解決手段】 硝酸ヒドロキシルアンモニウム水溶液を含浸したゲル化効果を有する結合剤、例えばポリビニルアルコールからなるガス発生固体発火組成物。必要に応じて硝酸アンモニウムまたはニトロアミン等の酸化剤、安定化剤および増粘剤を含む。本発明組成物は押出機1で連続製造して発火爆薬13に成形できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】
本発明は、無毒な冷たいガスを発生する固体残留物のない発火組成物に関するものである。
本発明は特に、1種または1種以上の酸化剤とゲル状の有機結合剤とからなる非晶質構造のコンポジット発火組成物に関するものである。本発明組成物はエアバッグを膨張させたり、爆発式消火器(extincteur pyrotechnique)を作動させる発火剤の製造で用いられる。
【0002】
【従来の技術】
自動車の安全装置や消防装置等の多くの用途では固体残留物のない無毒で冷たいガスを発生する発火組成物が望まれている。「冷たい」ガスとは約1800℃以下の温度でできるガスを意味する。
これらの分野では連続工程で製造、成形ができる組成物がさらに望まれている。
【0003】
固体残留物ができない冷たいガスを得るために硝酸ヒドロキシルアンモニウム、硝酸トリエタノールアンモニウム、硝酸アミノテテトラゾール、硝酸アミノトリアゾール、尿素硝酸塩、ビウレット硝酸塩等の化合物の水溶液からなる液体推進薬が開発されいる。この種の液体推進薬は例えば米国特許第5,060,973号および第5,684,269号に記載されている。
【0004】
しかし、これらの液体推進薬はそれに合ったガス発生器を必要とし、そのガス発生器は構造が複雑で、製造コストも高い。そのため、固体燃料の分野では硝酸カリウムまたは過塩素酸カリウムの存在下でポリビニルアルコールのような結合剤と硝酸アンモニウムおよび硝酸グアニジンまたは硝酸アミノグアニジンとをベースにした固体共融物からなるコンポジット組成物が開発されてきた。しかし、これらの組成物は、国際特許出願第WO97/46502号等に記載のように、圧縮成形で作られるため連続製造できないという欠点があり、しかも、かなり高温のガスが発生するという欠点がある。
【0005】
固体推進薬の分野では、例えば米国特許第5,386,777号のように、上記の硝酸塩をベースとする液体共融物を含浸したポリビニルアルコールシートのコイルで構成される固体燃料も提案されている。このコイルには還元剤としてのアルミニウムをさらに含んでいる。この解決策は上記方法と同様に高温のガスを発生し、連続製造ができない。
従って、燃焼時に固体残留物の生じない無毒な「冷たい」ガスを発生し、しかも連続製造、成形ができる固体発火組成物に対する要望が依然として存在する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はこの要望を満たすことにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明は、ゲル化効果を有する少なくとも1種の有機結合剤と、この結合剤によって吸収される液相の少なくとも1種の主酸化剤系とからなる、燃焼時に固体残留物を生じないガスを発生する発火組成物において、(i) ゲル化効果を有する有機結合剤がポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースおよびキサンタンガムからなる群の中から選択され、(ii) 液相の主酸化剤系が水と硝酸ヒドロキシルアンモニウム(HAN)との混合物からなることを特徴とする組成物を提供する。
【0008】
【実施の形態】
結合剤はポリビニルアルコールであるのが好ましい。これは本発明の組成物の化学安定性を高める。
本発明の固体組成物は結合剤がヒドロキシルアンモニウム水相が含浸した固体ゲルの形をした非晶質構造をしている。この組成物は燃焼時にゲル中に含まれる水を水蒸気の形で遊離する。この水が燃焼ガスの温度を大きく下げる役目をする。
本発明組成物の含水率は5〜20重量%であるのが有利である。従って、本発明によって公知の組成物の含水率よりはるかに高い含水率を有する組成物が得られる。
【0009】
さらに、硝酸ヒドロキシルアンモニウムの含有率は組成物の全重量の少なくとも50重量%であるのが有利であり、好ましくは60〜70重量%にする。
本発明の利点の1つは、温度が摂氏ゼロ度以下に下がらない限り、水/硝酸ヒドロキシルアンモニウム混合物が上記含有率の時に液体状態を維持することにある。
【0010】
本発明の好ましい第1実施例では、本発明組成物が硝酸アンモニウム、ヘキソーゲン(hexogene)(RDX)およびオクトーゲン(octogene)(HMX)からなる群の中から選択される二次酸化剤をさらに含む。この二次酸化剤によって組成物中に含まれる水によって燃焼ガスの温度を過度に上昇させずに、同じ容積の組成物を燃焼した時に生じるガス分子の数を増やすことができる。
【0011】
本発明の好ましい第2実施例では、本発明組成物を自動車の乗客を保護するエアバッグを膨張させるガス発生器用発火燃料で用いる場合に、硝酸アンモニウムの使用を避け、使用すの場合でも組成物中の硝酸アンモニウムの含有率を数重量%に制限する。
この用途では、本発明組成物は一般にビピリジン、リン酸水素アンモニウムおよび酢酸アンモニウムからなる群の中から選択される安定化剤を含む。組成物中のこの安定化剤の含有率は約2重量%であり、ビピリジンおよびリン酸水素アンモニウムが好ましい安定化剤である。
自動車の安全設備の用途では、本発明組成物はイソシアネート、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂および化学式:Na2B4O7・10H2Oのホウ酸テトラナトリウムであるホウ酸ナトリウムからなる群の中から選択される増粘剤を含むのが有利である。
【0012】
本発明はさらに、下記の(i)および(ii)を特徴とする、上記非晶質構造を有する固体の発火組成物の製造方法を提供する:(i) 少なくとも水と硝酸ヒドロキシルアンモニウムとを含む液相(A)と、ゲル化効果を有する少なくとも1種の結合剤を含む固体顆粒(B)を混合・押出機(1)へ連続的に供給し、(ii) 混合後、所定の断面形状を有するロッド(12)を押出し、炉(4)中で硬化させ、所望長さに切断する。
【0013】
混合・押出機は二軸スクリュー押出機であるのが有利である。
本発明方法を好ましい実施例では、ゲル化効果を有する結合剤はポリビニルアルコールにし、二軸スクリュー押出機の温度を50〜60℃にし、炉内温度は約80℃にする。液相を二軸スクリュー押出機に導入する前に、結合剤以外の全ての水溶性成分を水と硝酸ヒドロキシルアンモニウムとを含む液相と混合するのが好ましい。
【0014】
こうして得られた発火燃料は特に爆発性消火器のガス源を作るために用いたり、自動車の乗客を保護するエアバッグを膨張させるための発火ガス発生器で用いることができる。
以下、本発明の燃料組成物を連続製造するための設備の概略図を示す図1を参照して説明する。
【0015】
図1に示す設備は基本的に押出ヘッド2を備えた二軸スクリュー押出機1と、これに続く炉4中を通るコンベヤーベルト3と、切断装置5とを備える。押出機の入口には2つの供給装置が設けられている。第1の供給装置は攪拌器を備えたタンク8にタップ7を介して連結されたホース6で構成される。押出機1の下流側にはホッパ10とコンベヤーベルト11とで構成される第2の供給装置がある。
【0016】
タンク8には水と、硝酸ヒドロキシルアンモニウムと、必要に応じて用いられる結合剤以外の水溶性成分、例えば硝酸アンモニウムとからなる液体混合物Aが入っている。水と反応する成分はこの水溶液相には混ぜない。
【0017】
結合剤の顆粒と、必要に応じて用いる水に不溶な添加剤の顆粒、特に水に不溶な酸化剤、例えばヘキソーゲンまたはオクトーゲンからなる顆粒Bはコンベヤーベルト11を介してホッパ10に供給する。
結合剤がポリビニルアルコールの場合には押出機1の内部温度が50〜60℃になるように押出機1を温度制御する。
【0018】
液相Aと顆粒Bとは押出機1で混合され、結合剤のゲル化によって非晶質構造を有するコンポジットペーストが作られる。得られたペーストは押出ヘッド2を介して所定のプロフィルを有するロッド12に押し出される。このロッドは単純な円筒形のストランドにし(場合によっては内部に管路を形成し)、それを切断して小片にするか、寸法の大きなロッドにし(必要に応じて外側プロフィルを加工し)、それを切断して中実または環状のブロックにすることができる。
【0019】
ロッド12はコンベヤーベルト3によって加熱した炉を通し、ゲル化した結合剤を硬化する。結合剤がポリビニルアルコールの場合には炉の温度を約80℃にし、炉内のロッドの滞留時間を2、3分にする。ロッド12を炉から取り出し、切断装置5で切断して単位燃料13にし、容器14に貯蔵する。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施例を示す。
【実施例】
実施例1、2 上記のようにして円筒リング形の発火燃料を製造した。この燃料の組成は〔表1〕に示してある。
【0021】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゲル化効果を有する少なくとも1種の有機結合剤と、この結合剤によって吸収される液相の少なくとも1種の主酸化剤系とからなる、燃焼時に固体残留物を生じないガスを発生する発火組成物において、(i) ゲル化効果を有する有機結合剤がポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースおよびキサンタンガムからなる群の中から選択され、(ii) 液相の主酸化剤系が水と硝酸ヒドロキシルアンモニウムとの混合物からなる、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】 組成物の含水率が5〜20重量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 硝酸ヒドロキシルアンモニウムの含有率が組成物の全重量の少なくとも50重量%である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】 硝酸ヒドロキシルアンモニウムの含有率が組成物の全重量の60〜70重量%である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】 二次酸化剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】 二次酸化剤が硝酸アンモニウム、ヘキソーゲンおよびオクトーゲンからなる群の中から選択される請求項5に記載の組成物。
【請求項7】 安定化剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】 安定化剤がビピリジン、リン酸水素アンモニウムおよび酢酸アンモニウムからなる群の中から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】 安定化剤がビピリジンおよびリン酸水素アンモニウムからなる群の中から選択される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】 増粘剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】 増粘剤がイソシアネート、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂およびホウ酸ナトリウムからなる群の中から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】 下記の(i)および(ii)を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非晶質構造を有する固体の発火組成物の製造方法:(i) 少なくとも水と硝酸ヒドロキシルアンモニウムとを含む液相(A)と、ゲル化効果を有する少なくとも1種の結合剤を含む固体顆粒(B)を混合・押出機(1)へ連続的に供給し、(ii) 混合後、所定の断面形状を有するロッド(12)を押出し、炉(4)中で硬化させ、所望長さに切断する。
【請求項13】 混合・押出機が二軸スクリュー押出機である請求項12に記載の方法。
【請求項14】 ゲル化効果を有する結合剤がポリビニルアルコールであり、二軸スクリュー押出機を50〜60℃に加熱し、炉内温度を約80℃にする請求項13に記載の方法。
【請求項15】 液相を二軸スクリュー押出機に導入する前に、結合剤以外の全ての水溶性成分を、水と硝酸ヒドロキシルアンモニウムとを含む液相と混合する請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2002−517376(P2002−517376A)
【公表日】平成14年6月18日(2002.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−553386(P2000−553386)
【出願日】平成11年5月21日(1999.5.21)
【国際出願番号】PCT/FR99/01206
【国際公開番号】WO99/64375
【国際公開日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】
【氏名又は名称】エス エヌ ペー ウー