説明

吸入による哺乳動物への物質投与用装置及び方法

本発明は、吸入による哺乳動物への物質投与用装置及び方法に関する。本発明の装置は、エアゾールを作り出すためのエアゾール手段、エアゾールを操作し、それによってエアゾールの粒径を制御する制御手段を含み、そして、その装置からエアゾールを放出する前又は放出する際に、物質をエアゾールに加える供給手段を備える。本発明の装置は、物質、例えば医薬の肺デリバリーに適している。


【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、吸入による哺乳動物への物質投与用装置及び方法に関し、前記装置は、
エアゾールを作り出すエアゾール手段
前記エアゾールの粒径を制御するために前記エアゾールを操作する制御手段
を含む。
本発明は、物質、例えば、薬の肺へのデリバリーに特に適している。
【背景技術】
【0002】
従来のドラッグデリバリー方法(注射及び注入を除く)は、主に、小分子、例えば、個々のペプチドを用いて使用されている。肺のデリバリーでは、既に、様々な小分子の薬が、主に呼吸器官障害治療のために用いられている。呼吸系に利用される薬には、抗炎症剤、気管支拡張薬及びプロテアーゼ阻害薬が含まれている。さらに、深部の肺も、非侵襲性デリバリー及び大分子を吸収するための好ましい環境である。つまり、肺胞(深部の肺)は、大分子のタンパク質及びペプチドが体循環に接近させることを可能にする広域な空気−血液界面を提供する。従って、肺ドラッグデリバリーは、注射又は注入以外の他の投与経路よりも比較的高く生物学的利用能を伴って、巨大分子投与の極めて有効な投与経路となる可能性もっている。さらに、深部の肺のデリバリー装置の開発は、侵襲性である注射の代替として、患者の承諾を増加させ、そしてコンプライアンスを向上することができる。
【0003】
肺のデリバリーは、医療又は非医療的効果のどちらかの意図で、鼻及び口の両方から吸入することができる気体、液体又は固体の種々の集合状態の物質に適用される。吸入される物質は、体循環系を目標としている。同様に、それらは、投与の観点から、口/鼻から深部の肺までの局所効果を持つことにねらいを向けることができる。
吸入された液体及び固体物質は最終的に沈着し、その後続いて吸収されるのに対し、気体物質は交換により吸収され、そして部分的に放出される。体内の沈着部位には、口、鼻、のど、気道、気管支及び肺胞が含まれる。ガス交換は、主に肺胞において起こる。沈着の好ましい部位は、吸入される物質の意図された効果及び量によって決定される。
【0004】
多くの場合、体内への液体及び固体物質の肺投与のために、製剤化された物質から微粒子ミストを生成する装置が使用される。液体を投与する際、ミストは小さい水分粒子(エアゾール)からなり、固体の場合においては微細粉末ミストが得られる。このような分散薬の吸入は、肺の状態、例えば、ぜん息、気管支炎及び気腫の治療面において最も一般的である。呼吸系用途のドラッグデリバリー製品としては、ドライパウダー吸入器(DPI)、定量噴霧吸入器(MDI)及びネビュライザーを含んでいる。
【0005】
製剤化された物資からの微粒子ミストの生成及び吸入において、均一性の欠如が重要な問題である。各粒子は直径が異なり、通常、粒径分布は非対称である。結果として、微粒子ミストは、平均径、メジアン径、標準偏差及び特定バンド幅をもっている。バンド幅が大きくなればなるほど、吸入された物質の沈着領域も広くなる。
【0006】
注記:数学的には、ミスト中の最も多い粒径は、対象分布の場合においてのみ、平均径及びメジアン径と等しくなる。しかしながら、多くの専門医は、非対象分布の場合においてさえも、生成されたミスト中の最も多い粒径をメジアン径として考慮している。本願明細書において、数学的なメジアン径は、最も多い粒径よりも使用される。
【0007】
微粒子ミストの粒径がその沈着挙動に強く影響していることが研究により明らかになっている。1993年において、国際放射線保護委員会(ICRP)は、新しい肺モデルに改定し、そのモデルには特定の粒径の粒子に関する種々の区分における沈着速度が示されている。この普遍的に適用される肺のモデルは、ICRP60報告書において発表されている。従来の肺のモデルにおける区分は、鼻咽頭(NP)、気管支(TB)及び肺(P)であった。従来の沈着モデルでは、0.1〜10μmの範囲の粒子では空気力学的な挙動のみを考慮し、0.1〜0.5μmの範囲における粒子の肺区分において>40%の沈着を予想し、全範囲における区分TBにおいて約10%の沈着を予想し、そして、2μmを超える粒子でのNPにおいて>50%の沈着を予想していた。
【0008】
新しい肺のモデル(A.S.Keverling Buisman in NVS Publication No.17,pp.129−134にも記載)においては、区分が新しく命名及び分類されている。鼻咽頭(NP)は、胸外(ET)として新しく命名され、気管−気管支(TB)は、ジェネレーション(generation)8までの上部の気管支(BB)及びジェネレーション9から18までの下部の気管支(bb)に分けられた。後者は、呼吸気管支(ジェネレーション16〜18)を考慮する限り、かつての肺(P)区分の部分を含む。最後に、肺(P)区分の残りの部分は、肺胞−間隙(AI)として、新たに命名された。後者の区分は、深部の肺に相当している。0.1〜10μmの範囲での粒子の空気力学的挙動に加えて、新しい沈着モデルもまた1〜100nmの範囲におけるエアゾールの熱力学的な挙動を考慮している。新しい沈着モデルて゜は、>2μm及び<2nm粒子両方での、ETにおける>50%沈着を予想している。AIにおける最適な沈着(>40%)は、5〜50nmの範囲であると予想される。区分bbにおける沈着は、1〜5nmの範囲において約35%であり、そして、全範囲におけるBBにおいては<20%である。
【0009】
このモデルが暗に示しているところによれば、大きさにより、吸入された粒子は、口/鼻から肺胞への流路線の或る場所に沈着する。さらに、呼吸努力(吸入された微粒子ミストを含む流量:1分間当たりの1リットル数)は、沈着挙動に影響を及ぼす。比較的低い呼吸努力には、吸入された粒子を、気道下部及び深部の肺の最適な沈着のために比較的小さくする必要がある。呼吸努力の増加は、比較的大きい吸入された粒子の早期沈着、例えば気道上部及び肺での沈着を部分的に防ぐことができる。
【0010】
肺のデリバリー装置の個々の使用者は、彼ら自身の呼吸プロファイルをもっている。さらに、口/鼻から肺胞への流路線の状態は、使用者毎に大きく変わっている可能性がある。結果として、吸入される物質の沈着挙動を予想することは困難である。吸入されるエアゾールの平均粒径は、吸入される物質の望ましい沈着効果に関して、個々の使用者の特定の呼吸プロファイルのための最適な径と頻繁に異なっているので、予想される沈着挙動は、実際の沈着パターンからかなり外れてしまう。上記理由により、沈着挙動の制御は、重要な課題である。
【0011】
現在の肺デリバリー装置は、吸入される製剤化物質から微粒子ミストを生成する。結果として、多くの場合において、物質を投与するための前記のような現在の装置の使用は、非効率な沈着となる。患者は、呼吸動作をエアゾールデリバリーと調和させなればならない結果、医薬のほとんどは、吸入器内又は患者の口と喉において失われるので、現在の薬吸入器は、一般的には、医薬の一部分だけしか深部の肺に送られていない。ドライパウダー吸入器及びMDIも、多くの全身系の用途において必要とされる深部の肺への投与量の再現性は、提供されていない。さらに、高分子医薬は、MDI製剤化成分によって変性させられるので、治療上で価値のある高分子は、現在、MDI装置への使用には製剤化することができない。同様の問題は、治療用の高分子を不活性化にする傾向がある医薬の噴霧化にも関係している。さらに、ドライパウダー器は、高分子製剤の長期安定性に必要な予防策を提供していない。従って、現在の医薬吸入器、例えばドライパウダー吸入器、定量噴霧式吸入器及びネビュライザーは、主に、局所的疾病の治療において薬を上気道に運ぶために使用される。
【0012】
医薬組成物の投与用の公知の装置は、ドライパウダー吸入器(DPI)である。ドライパウダー吸入器は、患者が吸入した空気流によって発生するサイフォン効果を用いて気道及び肺へ微細粉末状の医薬を分散し運ぶ呼吸作動装置である。ドライパウダー吸入器を使用する際に、患者は息を吸い込むことができ、それによって、製剤化された医薬から微細粉末ミストを作り出すことができ、その微細粉末ミストは気道及び肺に投与される。MDI(以下参照)の正しい使用のために要求される厳密な呼吸調和を行う必要なしに、前記ミストが発生し、そして投与される。ドライパウダー吸入器は、噴出剤及び防腐剤を必要としない。
【0013】
ドライパウダー吸入器利用の不利な点は、装置の機能的効果が、より大きい粉末形状を分裂させ、そして呼吸可能な寸法の医薬の粒径を生成するための適切な呼吸努力及び乱気流を生みだすことを患者の能力に依存していることである。その結果、そのミストを作り出すために使用されるサイフォンは、必要な投与量の再現性に寄与していない。さらに、ドライパウダー装置は、高分子製剤の長期安定性のために必要な予防手段を提供していない。従って、現在のドライパウダー吸入器は、局所疾病の治療のために薬を上気道へ運ぶために主として使用される。
【0014】
DPIの機能的な制限及び同等のMDIと比較して高い平均価格にもかかわらず、COPD患者の治療におけるDPIの相対的な利用は、過去3〜4年間の間に急速に広がっている。現在、グラクソ・スミスクラインのアキュヘラー(Accuhaler)[商品名]、ディスクヘラー(Diskhaler)[商品名]、ローターヘラー(Rotahaler)[商品名]、スピンヘラー(Spinhaler)[商品名]及びチューブヘラー(Tubuhaler)[商品名]などのDPIのいくつもの型式が、アメリカ合衆国において入手可能である。
【0015】
Accuhaler[商品名]は、60ブリスターのホイルストリップを含んでおり、それぞれが、医薬とラクトースキャリアーとの単位ドーズを含んでいる。Diskhaler[商品名]は、医薬の粒子集合を破壊するために乱気流を発生する粗いネットを含んでいる。医薬は、4つ又は8つのホイルブリスターディスク内に含まれており、マルチドーズ投与を可能にする。Rotahaler[商品名]は、薬の粒子集合を破壊するための粗いネットを使用し、適切な医薬ドーズを含むカプセルの再充てんを必要とする単回投与装置である。Spinhaler[商品名]は、医薬を放出するための回転メカニズムを使用し、そして適切な医薬ドーズを含むカプセルの再充てんを必要とする単回分装置である。Rotahaler[商品名]及びRotahaler[商品名]において必要とされるカプセルは、水分に影響を受けやすいことがある。Tubuhaler[商品名]は、薬の単位容量を2つの高抵抗性ラセンチャンネルに放出し、患者の吸息流速が30L/min.より大きくなると、前記の2つの高抵抗性ラセンチャンネルにおいて渦を生成し、そして粒最適化する。このマルチドーズ型デバイスは、20ドーズを残すときに表示し、そして噴出剤を使用しない。この噴出剤がないために、咳を減らし、医薬の味を抑える。
【0016】
AstraZenecaは、調整可能なドージングを提供するパルミコート チューブヘラー(Pulmicort Tubuhaler)[商品名]及びシンビコート チューブヘラー(Symbicort Turbuhaler)[商品名]、すなわち新しいドライパウダー吸入器を提供する。その吸入器は、医者が患者の治療を単独吸入器に合わせることを可能にする。
Symbicort Turbuhaler[商品名]は、ドライパウダー吸入器中のブデソニド、コルチコステロイド、及び即効性で長時間作用型の気管支拡張薬フォルモテロールの併用である。
【0017】
哺乳動物への投与のために、製剤化医薬からミストを生成するために使用されるもう一つ公知の装置は、いわゆる定量噴霧吸入器(MDI)である。この型式の装置は、COPDの医薬吸入療法のための最も広く使用されているデリバリー装置である。
【0018】
定量噴霧吸入器は、噴出剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)を使用して、加圧容器から製剤化医薬を放出し、ミクロ化された医薬粒子のミストを生成した後、それを気道及び肺に沈着させる。噴出剤は加圧され、製剤化された医薬を含む流体と混合される。加圧された容器から前記混合物を放出するとき、エアゾールは、典型的に、1〜3μmのミクロ化された粒子を伴って形成される。投与中に、粒子は、キャリアとして噴出剤を使用して、気管支の中間位置まで気道中を進行する。その後、噴出剤は蒸発し、気道及び肺に残余の粒子を残留させ、粒子が肺システムにより深く進行することを可能にする。噴出剤と製剤化物質粒子との混合物を気道及び肺へ供給することと、製剤化粒子の移動を可能にするために噴出剤が最初に蒸発する必要があることとは、患者に医薬を投与するときの時間遅延を生みだす。
【0019】
MDI装置において、容器のキャニスターは、それぞれの作動中において医薬含有エアゾールの所定容量を放出するために設計されている特別な絞り弁によりシールされている。MDI内部において、医薬は、追加的な潤滑剤及び界面活性剤とともに噴出剤中に懸濁される。様々な装置は、400ドーズまで運ぶことができる。容器の寿命は、1作動当たりに運ばれる医薬の容量に依存する。
【0020】
前記DPIと比較した場合に、MDI装置の利点は、装置が水分への耐性を示し、比較的安価であることである。
MDI装置の重大な不利な点は、装置の発動と吸入とにおいて、正確な調整が必要とされることである。粒子の沈着は、製剤化医薬からのエアゾール生成と患者の呼吸との調整に依存している。
MDIからの肺の沈着は、唇に関連する吸入器の位置、吸入での肺容量、吸入する流速及び吸入後の使用者の息の止め方(一般的には、10秒間)によって、さらに影響を受ける。
【0021】
他の問題としては、ドーズカウンター不足及びコールドフェロン効果があり、この場合、エアゾールが喉に届くと、患者が吸入を止めてしまう。体内に入る混合物の低い温度及び低温流体を吸入したくない使用者の反射神経が、この効果の原因となる。
【0022】
MDI装置の操作性を改善するために、呼吸−作動MDIが開発され、患者の呼吸努力と従来の加圧MDIの作業サイクルとを調整することが困難である患者に対して、ドラッグデリバリー効率が改善されている。呼吸−作動MDIは、従来のMDIとスプリング駆動活性メカニズムとを組み合わせており、この呼吸−作動MDIは始動を必要とし、患者の30L/min又はそれ以上の流速吸入によって引き起こされる。多くの患者、例えばCOPD患者は、必要な流速を発生することができないので、この要件は、装置の有用性を制限している。
【0023】
呼吸−作動MDIは、従来のMDIで必要とされている調整を必要としない。しかし、患者の中には、声門の閉鎖を引き起こすスプリングの放出によって驚かされるものがいる。この問題は、特別の静かな起動メカニズムを特徴とする新しいMDIを使用することによって克服することができる。呼吸−作動MDI装置の医療的な効き目は、喘息及びCOPD患者に正しく使われた従来のMDI装置の効果と同等である。
【0024】
MDIの使用を改善するための更なる試みは、患者による不得意な調整操作及びコールドフェロン効果を克服するために、プラスチックチャンバー又はホールディングチャンバーの使用である。吸入用補助器(スペーサー)は、放出口に取り付けられ、種々のサイズで利用される。小さい容量のスペーサーは、MDIの一体又は分離可能な部品として利用することができる。大きい容量のスペーサーは、別々に販売されており、一般的に6〜12ヶ月毎に交換される。大きい容量のスペーサーは、吸入前にエアゾールの速度を減少させることを可能にする。このスペーサーは、蒸発を推進させ、そして5μmより小さい直径を持つ液滴へ減少する時間を可能にし、それによって肺への医薬の沈着を増加させる。大きい容量のスペーサーを用いることにより、高速粒子は吸入の流れにより偏向し、ドラッグデリバリーの効率を増加させる。
【0025】
しかしながら、スペーサー利用の重大な欠点は、MDIの繰り返し操作及びスペーサーからの遅延吸入が、気道及び肺へのドラッグデリバリー中の50%に至る損失に関連していることである。これらの効果は、静電気及びスペーサー内での医薬エアゾールの半減期がほんの10秒である事実の両方に起因する。毎週の洗浄、スペーサーをすすいだ後立てておくことにより、静電気のレベルを減少させることができる。
【0026】
地球のオゾン層へのクロロフルオロカーボン(CFC)の影響に関する事項により、モントリオールプロトコル、すなわち法的拘束力のある国際協定は、すべての団体に、エアゾール噴出剤として使用されるオゾンを減少させる物質、特にCFCのすべての製造物及び利用を減少させ、その後廃止する義務を負わしている。結果として、CFCを使用しない新しいMDIは、より環境に優しいハイドロフルオロアルカン(HFA)の使用によって推進されている。今日まで、CFCを使用しないMDIモデル(HFAの噴出剤に依拠)は、極めて少数のものしかアメリカ合衆国において発売されていない。しかし、CFCを使用しない装置は、将来において、従来のMDIの代わりとして期待されている。
アメリカ合衆国において、MDI’sを提供する他の企業としては、Nektar Therapeutics及びSkyePharmaを挙げることができる。
【0027】
導入部において記載した流体投与のための第3装置は、ネブライザーである。この装置は、前記医薬製剤を含む液体に素早く圧縮空気を通過させることにより、又は超音波を使用する高周波でこのような液体を振動させることにより、製剤化医薬からエアゾールを生成する。これら両方の方法は、医薬を運ぶための効率的なミストを提供する。超音波ユニットは操作が非常に静かでありヒーターを必要としないが、圧縮空気ユニットは気道及び肺のより深い所へ移動する、より微細なミストを生成するので、デリバリーの深さの観点から優れていると考えられる。
【0028】
圧縮器又は超音波ユニットは、少なくとも約125ドルの装置投資が必要にもかかわらず、実際のネブライザーは交差感染の危険性を軽減する使い捨て装置としてほとんどいつも購入される。その例外は、自宅療養を受けている患者である。これらの場合において、患者は、費用を軽減するために再利用可能又は半使い捨てネブライザーを頼りにすることを好んでいる。治療用ネブライザーは、継続的な医薬投与のために使用される小さい容器、携帯気流装置である。それらは、主に、病院において、そして在宅で動けないCOPD患者のために使用される。医薬のネブライザーは、気管支拡張薬、コルチコステロイド及び粘液溶解の習慣的なドーズデリバリーのために必要とされる。
【0029】
AstraZenecaのパルミコート レスプル(Pulmicort Respules)[商品名]は、アメリカ合衆国において、12歳の子供に使用される初めての噴霧化されたコルチコステロイドである。レスプル(resuple)中の液体医薬の予備混合ドーズを開いた後、医薬をネブライザー(液体医薬をエアゾール化する圧縮器を使用する)に注ぎ、その後、フェイスマスク又はマウスピースを介してそれを運ぶ。NIHは、ネブライザーを幼児及び幼い子供のための効果的なデリバリー方法として承認している。ネブライザーは、非ステロイド系の喘息薬を運ぶために、アメリカ合衆国において、今日広く使われている。Pulmicort Respules[商品名]は、即効性の治療ではなく、予防措置であり、ぜんそくの発作を治療するためには使用されない。装置価格の明らかに不利な点に加えて、もう一つのネブライザーの不利な点は、医薬の多くがデリバリー装置又は患者の口及び喉において失われるので、これらの装置が医薬のほんの一部だけしか深部の肺に運ばないことである。
【0030】
研究は、さらに吸入物質の沈着及び摂取の両方が投与物質の効果及び応答時間に影響することを明らかにしている。従って、吸入される物質の沈着挙動は、ドーズを処方し、吸入の理想的な時間を決定するときに考慮されなければならない。非効率的な沈着(沈着の失敗の結果としての非効率的な沈着)は、吸入によるそれら物質の最適利用を保証する製薬会社及びバイオメディカル会社にとっては障害である。
【0031】
最適な沈着効果のために、吸入される物質の沈着挙動は、できる限りの方法で制御されなければならない。例えば、製造されるミストの均一性を改善することは重要である。さらに、必要に応じて平均粒径を変更すること、例えば使用者の一般的グループの呼吸プロファイル又は個々の使用者の呼吸プロファイルに平均粒径を調節することが望ましい。その上、水分粒子の濃度を制御すること、例えば使用者の気道及び肺を湿らせることは望ましいことである。
【0032】
米国特許公開US2004/0163646号公報は、エアゾール化された医薬製剤の周りの空気を温かくするための携帯用空気温度制御装置に関するものである。
医薬製剤に加えられる熱は、エアゾール発生装置により生成されるエアゾール粒子の直径を縮小するために使われる。エアゾールは、物質、例えば医薬を含む液体から形成される。気道領域に粒子をより正確に標的とすることを可能にするため、エアゾール粒子の直径を減少させる。
前記携帯用空気温度制御装置の不利な点は、エアゾールが純粋な物質からではなく、医薬製剤から生成されることを含んでいることである。結果として、エアゾールの粒子は投与される物質を含んでおり、その後、粒径の縮小を成し遂げるためにその温度条件下にさらされる。これは、この装置の利用をこのような温度条件に耐えることができる物質に制限し、エアゾールに適用することができるある程度の操作及び制御を制限する。さらに、薬剤内のエアゾール化された液体キャリアは完全に蒸発し、ドライパウダー粒子を残している。
【発明の概要】
【0033】
前記に関して、本発明の目的は、吸入による哺乳動物への物質投与を改善することである。
【0034】
本発明の第1の観点によれば、前記目的は、吸入による哺乳動物への物質投与用装置であって、
エアゾールを作り出すエアゾール手段
前記エアゾールの粒径を制御するために前記エアゾールを操作する制御手段
前記装置が、その装置からエアゾールを放出する前又は放出する際に、物質を前記エアゾールに加える供給手段を備える装置を提供する本発明によって達成される。
【0035】
本発明の装置は、処理手段と一体となり、貯蔵手段を備え、物質をエアゾールに加える前と投与する前に、エアゾールの好ましい状態及び条件に関するデータを受け取り及び制御するための処理手段を含んでいる。
【0036】
本発明の第2の観点は、吸入による哺乳動物へ物質を投与する方法であって、以下の工程を含んでいる。
(a)エアゾールを作り出す工程
(b)前記エアゾールにエネルギーを加えるか又前記エアゾールからエネルギーを除去することにより前記エアゾールを操作し、それによって前記エアゾール粒子の粒径を制御する工程
(c)前記エアゾールを哺乳動物へ投与する工程を含み、
(d)前記エアゾールにより哺乳動物へ物質を投与するために、前記エアゾールを哺乳動物へ投与する前に、前記物質を前記エアゾールに加える工程
【0037】
本発明によれば、工程(d)、工程b)の完了後と工程c)の前に実行される。工程b)は、工程d)の完了後に繰り返すことができる。
【0038】
方法は、以下の工程を含むことが可能である。
e)哺乳動物へ投与される物質の気道及び肺システムにおける好ましい目標部位を特定する
f)エアゾールの好ましい状態及び条件を計算する。
【0039】
本発明によれば、工程e)及びf)は、工程b)の前に実行される。工程f)は、工程d)の完了後、繰り返すことができる。
【0040】
これら測定結果が吸入される物質の沈着挙動及び物質の意図する効果に積極的に影響するために、吸入前にエアゾールキャリアとエアゾールに加えられる物質の混合物の条件を制御することが可能である。
【0041】
エアゾールは、物質、例えば薬を、哺乳動物の気道及び肺へ運ぶためのキャリア手段として使われる。第1段階において、エアゾールは、哺乳動物に投入される物質を運ぶための最適特性を与えるために操作される。エアゾールは、哺乳動物の快適な要求にも応じるために操作することができる。装置からの放出する際に、ローデッドエアゾールは、好ましい温度、キャリア粒子濃度、粒径、均一の相対湿度とすることができることを意味する。
【0042】
第2段階において、物質をエアゾールキャリアに加える。これは、物質の安定性、完全性又は他の条件を考慮する必要性がなく操作することができる利点である。さらなる利点として、キャリア材料を加える必要性なしに、物質は高濃度で貯蔵することができる。物質は、投与されるためにキャリアを含まなければならないことはない。物質は、好ましい凝集において、エアゾールキャリアに加えられ、それとともに哺乳動物へ輸送することができる。
【0043】
本発明のさらなる好ましい実施態様及び特性は、従属項に記載されている。
【0044】
本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、本発明の詳細な説明及び図面から明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】は、燃料電池を用いた水蒸気の生成を模式的に示す。
【0046】
【図2】は、燃料電池の積み重ね体(stack)を示す。
【0047】
【図3】は、ハウジング内に収納され、水蒸気生成用燃料電池を用いた吸入器の実施態様を模式的に示す。
【0048】
【図4】は、エアゾールを作り出すコンデンサーを備える図3に記載の吸入器を示す。
【0049】
【図5】は、エアゾールの露点を減少させる希釈室を備える図4に記載の吸入器を示す。
【0050】
【図6】は、エアゾールに物質を加えるミキサーを備える図5に記載の吸入器を示す。
【0051】
【図7】は、装置中のコンデンサー室の実施態様を示す。
【発明の詳細な説明】
【0052】
[定義]
本明細書において、用語「哺乳動物」を使用する。用語「哺乳動物」は、気道及び肺システムを持つ人間又は動物を意味する。
【0053】
本明細書において、用語「流体」を使用する。これは、液体、気体、エアゾールなどを意味する。
【0054】
本明細書において、例えば「人間の体内」、「患者」等の用語を使用する。開示された装置及び方法は、哺乳動物への流体投与において同じ利点及び効果を伴って使用することができるものと理解されたい。
【0055】
本明細書において、用語「エアゾール」を使用する。これは、気体とその気体中の水分粒子との混合物を意味し、前記気体中の気体状態の水分を含む。
【0056】
本明細書において、用語「エアゾール源(aerosol source)」を使用する。これは、エアゾールキャリアを生成する手段を意味する。
【0057】
本明細書において、用語「ローデッドエアゾール(loaded aerosol)」を使用する。これは、物質が加えられたエアゾールキャリアを意味する。
【0058】
本明細書において、「物質」を使用する。用語「物質」は、吸入によって哺乳動物に投与されるのに適した、任意の物質、活性物質、医薬又は医薬製剤を意味する。
【0059】
本明細書において、用語「相対湿度」を使用する。これは、或る温度での空気中における気体状態の実際の水分量(実際の湿度)とその温度での空気中における気体状態の飽和水分量(飽和湿度)との比を意味する。
【0060】
本明細書において、用語「露点」を使用する。これは、気体状態の或る水分量が前記空気を飽和している空気温度を意味する(100%相対湿度)。
【0061】
本明細書において、用語「から放出する(した)」を使用する。用語「から放出する(した)」は、能動的又は受動的、発動的、自発的又は誘導的な任意の放出を意味する。
【0062】
[全工程]
本発明によるエアゾールの投与方法において、以下の工程を特定することができる。
【0063】
工程1:第1工程では、(活性)物質を投与する間において、(活性)物質の投与に使用されるエアゾールの好ましい状態及び条件を決定すべきである。エアゾールの好ましい条件は、主に、デリバリーされる物質及びその物質の好ましい沈着効果に依存する。更に、使用者の状態及び条件が役割を果たすことができる。装置から放出されるエアゾールの好ましい状態及び条件から、物質を加える前にエアゾールの中間状態及び条件を推測することができる。
【0064】
工程2:第2工程において、エアゾールを作り出す。
【0065】
工程3:第3工程においては、作り出されたエアゾールの状態及び条件を調整するために、例えばエアゾールの均一性及び平均粒径を制御するためにエアゾールを操作する。この操作は、工程1で確定した好ましい状態及び条件に依存して行う。
【0066】
工程4:第4工程においては、物質がエアゾールに加えられる。
【0067】
工程5:第5工程においては、エアゾールを哺乳動物に投与する。
【0068】
好ましい装置及び方法によれば、前記の5つの工程すべてが、物質の調整及び哺乳動物への投与に必要とされる。しかしながら、投与される物質により、全ての吸入の間に、工程4の使用を必要とせずに物質を投与することが可能である。さらに、一連の工程は、適切に変更することができる。明らかにエアゾールの操作はエアゾールの生成前に必要とされ、そして同様にいくつかの操作が投与前に起こる。加えて、エアゾールの好ましい状態及び条件は、操作が完了する前に決定されるだろう。いくつかの工程を繰り返し、そして同時にいくつかの工程を実行することは可能である。
【0069】
[エアゾールの好ましい状態及び条件]
(活性)物質を投与するために使用されるエアゾールの好ましい状態及び条件は、エアゾールキャリアに加えられる物質(医薬、刺激剤又は他の物質)、気道における前記物質の好ましい目標領域(咽頭、肺等)、物質をデリバリーする対象(治療、娯楽又はその他)そして哺乳動物(年齢、条件等)に依存する。
【0070】
[エアゾールの生成]
エアゾールの生成は、装置の内側又は外側に位置するエアゾール源によって行われる。
【0071】
エアゾール源は、物質、例えば医薬を含む水分粒子、又は不活性キャリア、例えば水を形成する水分粒子を生成することができる。物質を組み合わせることも可能である。しかしながら、本発明において、物質は、工程3が完了した後に加えられることが好ましい。出発エアゾールが第1の物質を含む状態で生成された場合、その第1の物質は、工程3の完了後に加えられる物質の主要機能とは異なる特定の機能を有することができ、例えば第1の物質は香料であることができる。種々のエアゾール源を、装置中で同時に使用することができる。
【0072】
製造された水分粒子ミストの平均粒径及び均一性は、エアゾール源で異なっている。平均粒子径は、例えば直径でサブナノメーターからサブミリメーターの範囲である。吸入装置は、吸入される物質の意図する沈着効果及びエアゾールの状態と条件を制御する能力に依存しており、本発明の吸入装置は、特定のエアゾール源を備えることができる。このように、水分粒子のミストを、以下の操作工程において必要とされる状態及び条件にすることができる。特定のエアゾール源は、利用方法及び装置から選択することができる。別の方法として、新開発のエアゾール源を使用することができる。
【0073】
圧縮ガスを素早く液体に通すことによって、エアゾールを製造することが可能である。そのような圧縮空気ユニットが、比較的小さい粒径を持つ微細なミストを提供する。あるいは、液体を、エアゾールを生成するために超音波で振動することもできる。
【0074】
エアゾールを生成するための他の方法は、液体を加熱したキャピラリーを通して押し出すことによるものである。そのキャピラリーは、一定の比較的高い温度に加熱される。キャピラリーに導入される液体は、蒸気圧を生成し、蒸気を蒸気ジェットとしてキャピラリーから抜け出す熱の応用により揮発させる。抜け出しジェットは、周囲空気に乗せられ、そしてすぐに冷え、キャピラリージェットの数ミリメートル以内の同種核形成に必要な過飽和状態条件を達成する。エアゾール形成は先端の数センチメートル以内で完了し、近くの周囲温度で微細なエアゾール粒子の低速度ジェットを生ずる。このようなミスト発生器の利用により、限定的な均一性を持つエアゾールを生成することができる。
【0075】
もう一つの方法は、振動膜である。エアゾールは、液体を膜に通させることにより生成される。この方法も、比較的小さい粒径を持つ微細なミストを提供する。
【0076】
本発明によれば、エアゾールを生成するための好ましい方法は、触媒バーナー、例えば燃料電池を使用することである。この方法によれば、水素及び酸素、例えば周囲空気が、一般的な燃料電池に供給され、熱、電気及び水分子(気相中の水)を生成する。
【0077】
燃料電池の使用は、多くの利点を持つ。最初の利点は、エアゾールの生成が分子レベルの水分を含む気体の生成から始まることである。従って、この特別な方法は、他の従来の方法よりも、もっとより小さい(平均)粒径を持つエアゾールを生成する可能性を提供する。加えて、前記ガスから形成するエアゾールは、きわめて均一な粒径を持つと思われる。エアゾールのバンド幅と標準偏差の両方は、最少と思われる。この均一性は、その装置におけるエアゾールの操作及びさらなる処置は他の従来方法よりも高精度で予測及び繰り返されることができる効果を持つと思われる。
【0078】
燃料電池を利用するさらなる利点は、ガスの生成が、装置の制御システムに使用することができる電気を生みだすことである。
エアゾールは、例えばドラッグデリバリーの目的に使用されるので、さらなる利点は作られた水は殺菌されていることである。さらに、ほとんどのデリバリー装置は外気を使用するので、流れを浄化するためにフィルターを使用することができる。このフィルターは、流れから粒子、バクテリアそして/又はウイルスを取り除くと思われる。
【0079】
生成されたガス状の水からエアゾールを作り出すために、ガスは、比較的簡単な技術的装置であるコンデンサー室に運ばれる。コンデンサー室は、制御された温度の密閉空間を持つには十分である。
【0080】
同様に、触媒工程はガスを生成するために使用することができる。この場合、熱エネルギーだけが生成され、電気エネルギーは生成されない。触媒工程は、液体燃料、例えば水素の代わりにメタノールを使用することができる。物質は液体燃料に溶けるか、又は燃料と結合する。触媒転化中、物質は予め決めた形状で遊離している。このように、物質の添加とエアゾールの生成は一体となっている。しかしながら、本発明において、物質は工程3が終了した後、添加されることが好ましい。前述したように、最初の物質を含む初期エアゾールが生成された場合、最初の物質は、工程3終了後に添加される物質の主な性質と異なる特有の性質を持つ。最初の物質は、香りがあるかもしれない。
【0081】
前記のエアゾールは、吸入される物質を含む液体から直接形成することができる。この場合、この物質は、エアゾール源で発生する条件、例えば液体を揮発するために必要な高い温度及びエアゾールの操作と制御工程間で起こる条件の両方に抵抗することができるということ注意をしなければならない。
【0082】
[エアゾールの操作]
工程3において、エアゾールは操作及び制御される。物質の添加及びその物質の投与に使用されるエアゾールの状態と条件の変化は、明らかに吸入される物質の吸着挙動に影響を及ぼす。エアゾールキャリアを使用する物質投与の繰り返し性のために、エアゾールキャリアの状態及び条件を操作又は制御するができることも重要である。
【0083】
提案される方法は、初期エアゾール(input)と好ましいエアゾール(output)とを区別している。エアゾールの均一性と平均粒径の両方を制御することは、エアゾールを生成するための適切な方法選びから始まる。エアゾールは、エアゾール生成のために使用される方法に依存しているので、エアゾールは平均粒径、メジアン粒径及び均一性を持っているだろう。エアゾールは、エネルギーをエアゾールに加える又エアゾールから除去することによって操作及び制御される。これは、水分を分子レベル(ガス)から液体状態に又は液体から分子レベルに転換することが目的である。結果として、エアゾールの平均粒径、メジアン粒径及び均一性は変化する。
【0084】
エアゾールにエネルギーを加える又はエネルギーを除去することによって、温度と圧力を、制御パラメータとして使用することができる。両方の制御パラメータの組み合わせを使用することも可能である。圧力室の使用を避けるために、可能な実施態様として、温度のみ使用することが好ましい。
【0085】
凝縮工程において、平均粒径を大きくするために、そして均一性を向上させるためにエアゾールからエネルギーが除去される。初期エアゾール中のガスは飽和し、縮合を開始する。エアゾール中の水分粒子は、凝縮核の機能を果たす。より小さい粒子はより大きい粒子よりも体積比を高く示すので、より小さい粒子はより大きい粒子よりも高い速度で冷却する。凝縮は、より大きい粒子の表面よりも、より小さい粒子の表面で起こることを示唆している。結果として、平衡状態に達するまで、より小さい粒子は、より大きい粒子よりも速い速度で大きくなるであろう。結果として、粒径における相互の相違、従ってエアゾールの均一性も減少する。同時に、より高い値への平均粒径とメジアンシフト、及び粒径分布の対称性は改善される。
【0086】
蒸発工程において、エネルギーがエアゾールに加えられ、平均粒径は減少する。水分粒子の数が実際に変化しない凝縮工程と違い、蒸発中の水分粒子の数は減少する。今回、均一性も同様に改善される。より小さい粒子は、より大きい粒子よりもより高い速度で蒸発する。結果として、バンド幅は減少し、粒径分布はより対称的になる。
【0087】
このように、制御方法においてエネルギーをエアゾールキャリアに加え又はエネルギーをエアゾールキャリアから除去することによって、エアゾール粒子の均一性及びエアゾールの平均粒径の増加又は減少を制御することができる。結果として、あるバンド幅と対称性を持つある平均粒径を実現することができる。
【0088】
加えられる又は除去される比エネルギー量を決定するために、エアゾールキャリアに存在する気体と水分の熱容量が考慮される。温度に対して様々なエアゾールとガス混合物の組成と熱容量をプロット、例えばモリエ線図することによって、好ましい状態及び条件を達するためにエアゾールキャリアに除去され又は加えられなければならないエネルギー量を簡単に決定することができる。この比エネルギー量が、その後、実際に初期エアゾールから取り除かれ又は加えられるとき、エアゾールキャリアの状態及び条件は、望ましく変化する。これは、制御された凝縮工程及び/又は蒸発工程と呼ばれる。
【0089】
初期エアゾールに加えられ、又は除去しなければならない比エネルギー量を決定するために、エアゾール中に存在する水分の熱容量だけを考慮し、エアゾール中に存在するガスの熱容量を無視することも可能である。収率の相違は比較的小さいので、結果は意図したものから必ずしも大きく逸脱していない。ガスの熱容量は、結局、液体の熱容量よりも小さい。
【0090】
他方、熱容量に加えて、ある応用の参考として蒸発速度又は蒸発収量を使用することも可能である。これは、初期エアゾールのより正確な操作及び制御を可能にすることにより達成される。上記理由により、エアゾールキャリア中に存在する気体及び液体の熱特性を参照することはより適切かもしれない。
【0091】
温度がエアゾールから比エネルギー量を取り除く又は加えるための制御パラメータとして使用されるとき、対応する温度勾配が決定されるに違いない。必要とされる温度勾配は、エアゾールキャリア中に存在するガスと水分の熱容量、及びエアゾールから除去され又は加えられなければならない比エネルギー量に基づいて決定される。エアゾールキャリアの温度の減少又は温度の増加の結果として、望ましい水分量が1つの凝集状態から他の集合状態に変換するであろう。明らかに、ガスの熱容量ではなく、エアゾールキャリア中に存在する水分の熱容量のみから温度勾配を決定することは可能である。
【0092】
エアゾールの状態及び条件の操作中に到達する最高収率は、100%である。エアゾールから除去される又は加えられる総エネルギーは、エアゾールにおけるガスの飽和度を変化させないで、1つの凝集状態から他の凝集状態に水分を変化させるために使用されること意味する。実際には、追加の予防が最適収率を達成するために考慮されるかもしれないが、損失はいつも起こるだろう。収率が高くなればなるほど、制御されるエアゾールの状態及び条件はより正確になる。
【0093】
[実施例I]
本発明による吸入器において、エアゾール源は出発エアゾールを生成するために存在する。エアゾール源は、既存の技術を使用し、不飽和エアゾールを生成する。続いて、出発エアゾールは、物質をエアゾールに加える前に、操作及び制御され、物質が加えられた後さらに操作及び制御することもできる。このように、ローデッドエアゾールは、好ましい状態及び条件で吸入器から放出される。1つの凝集状態から他の凝集状態に水分量を転換する目的で、或るエネルギー量は、エアゾールから除去又はエアゾールに加えられる。
【0094】
この実施例において、エアゾールの好ましい状態及び条件は、平均粒径の増加を必要とすると仮定される。これは、分子レベル(ガス)の水分は、液体状態の水分に変化していることを示唆している。この効果のために、制御パラメータとして温度を使用し、エアゾールからエネルギーを除去しなければならない。この場合、相対水分量を分子レベル(ガス)から液体状態へ変換するために、エアゾールを或る温度に減少させなければならない。
【0095】
しかしながら、出発エアゾール中のガスが不飽和状態である問題がある。結果として、エアゾール中の100%の相対湿度と等しい飽和ガスに到達する前に埋めなければならない温度の相違点が存在する。その後においてのみ、さらなる温度の減少により、分子レベル(ガス)の水分量を液体状態の水分に変換するだろう。最初に除去されるエネルギー量は、露点以下にエアゾールの温度を下げることにより得られることを示唆する。
【0096】
もし、操作の前に出発エアゾールが、例えば90%の相対湿度であれば、収率は限られた範囲で少し減少するだけである。露点に到達する前に、実現されなければならない温度ジャンプは比較的小さい。もし、相対湿度が、例えば40%であれば、収率減少は明らかに大きくなる。その場合には、比較的大きい温度ジャンプが、露点に到達する前に必要とされる。
【0097】
たとえ、出発エアゾールにエネルギーを除去するかわりに、エネルギーが加えられたとしても、収率は減少する。相対湿度がエアゾールの蒸発中に下がる時、収率は下がる。不飽和エアゾールにエネルギーを加えることは、飽和エアゾールにエネルギーを加えるよりもより低い収率となる。従って、エアゾール源が飽和エアゾールキャリアを生成することが好ましい。
【0098】
減少した収率は、エアゾールの状態及び条件の操作と制御の一因でないことは明らかである。減少した収率の場合、1つの凝集状態から他の凝集状態へ水分の好ましい転換を実現するために、より多くのエネルギーが、エアゾールから除去され又は加えられなければならない。それに必要な追加のエネルギーが、例えば初期エアゾールの露点及び相対湿度が知られていないときにおいて、決定することは困難である。既存の吸入装置において、これらの制御パラメータはよく知られていない。その理由のために、本発明による吸入装置及び方法は、エアゾールのより正確な操作と制御を可能にする測定システムを使用することができる。
【0099】
例えば、吸入装置に入り、そして出発エアゾールを生成するために使用されるガスの量を測定することはできる。さらに、このガスの温度は測定することができる。このガスの相対湿度もまた、測定することができる。その上、初期エアゾールの生成中に、このガスに加えられる水分の量を決定することができる。エアゾール中の水分粒子の温度を測定することも可能である。上記で明記したように、1つ又はいくつかの制御パラメータに対して、操作されるエアゾール中に存在する水分とガスの熱特性をプロットすることにより、エアゾールの状態及び条件の好ましい変化を実現するために必要とされるエネルギーの適切な量を決定することは、操作及び制御がより高い精度で起きることができる範囲において容易になる。
【0100】
別の解決手段は、出発エアゾールの生成方法を有効にすることである。臨床的又は実験室的研究から、好ましい水分転換並びに状態及び条件の好ましい変化を実現するために、出発エアゾールに実際に加えられるか又は出発エアゾールから実際に除去されるエネルギー量は知られている。前記の有効化は、操作と制御に適用される理論式の調整に利用される。
【0101】
使用されるエアゾール源を、100%相対湿度の出発エアゾールを生成するエアゾール源によって置き換えることも可能である。これは、出発エアゾールが露点に達することを意味する。続いて、エネルギーがエアゾールから除去されるか又はエアゾールに加えられるとき、収率は最適となると思われる。
【0102】
100%の相対湿度であるエアゾールを生成するエアゾール源を利用することが可能でない場合、又は、例えば出発エアゾールの制御パラメータがほとんど知られていない場合、飽和状態の出発エアゾールをもたらすためにコンデンサーを置くことが好ましい。エアゾールは、公知の温度及び100%相対湿度を持つコンデンサーから放出されるので、エアゾールの状態及び条件の操作と制御は容易になる。このように、最適な初期状況が作り出される。コンデンサーの補助器を付けることによりエアゾールの好ましい状態及び条件を実現することも可能である。この場合、体内への投与は次工程とすることができる。
【0103】
平均粒径及び/又は均一性の改良は、すべての利用のために同じように重要なわけではない。例えば、エアゾールの操作及び制御は、不飽和状態から飽和状態へエアゾールを変化させるために使用することができる。制御手段は、エアゾールの相対湿度を増加させ又は幾分減少するために使用することも可能である。薬剤は、例えば、低い相対湿度よりも高いほうが、より良く作用することが知られている。その逆も同様である。エアゾールの操作及び制御は、エアゾールの平均粒径そして/又は均一性を実際の改良する意図で行われる。
ある凝集状態から他の凝集状態への水分転換を通じて、均一性及び平均粒径の変化は実現される。この改良が均一性及び/又は平均粒径のための特別な最終値になる場合、その後初期エアゾールの均一性及び平均粒径は知られるに違いない。これらの初期値に基づいて、ある凝集状態から他の凝集状態へ変換しなければならない水分量を決定することができる。
【0104】
出発エアゾールの平均粒径を知るために、事前バリデーション及び/又は制御パラメータ測定を使用することができる。しかしながら、後者はより複雑な吸入装置をもたらし、多くの利用において、これは必要ではない。前もって予想されている状態及び条件を考慮することは可能である。すなわち、これまで、エアゾールの生成工程でバリデーションは行われており、それを基準として、初期エアゾールの均一性及び/又は平均粒径を予想することができる。
両方の状況において、初期値は知られている。その後、ある凝集状態から他の凝集状態へ変換させなければならない水分の量が決定される。次に、エアゾール中に存在する水分及びガスの熱特性に基づいて、その後、エアゾールの状態と条件の望ましい変化を実現するために要求される比エネルギー量を決定することができる。
【0105】
物質を加える前及び/又は吸引装置から放出される時にエアゾールの好ましい状態及び条件を、ある範囲で固定することができる。意図する吸着効果を持つある物質が投与され、これに基づき、エアゾールの状態及び条件は物質投与にとって好ましいことを意味する。エアゾールを生成し、操作し、投与する工程中の好ましい状態と条件に影響を持つ付加的な要因は考慮されていない。
【0106】
固定値としてエアゾールの好ましい状態及び条件を考慮することは、一般的な効果を示唆する。いくつかの利用のために、この操作モデルは適切であるだろう。しかしながら、例えば、利用のために個々のユーザーの呼吸プロファイルを考慮しなければならないとき、これはすることができない。吸入される物質の意図する吸着効果のため、吸入中の呼吸努力が、吸入される(活性)物資を運ぶエアゾールの特定状態及び条件を要求する。従って、エアゾールの好ましい状態と条件は、ユーザー毎に異なっているかもしれない。さらに、エアゾールの好ましい状態及び条件は、吸入装置の使用中に変化しているかもしれない。
本発明に記載の吸入装置及び方法は、エアゾールの好ましい状態及び条件を決定するために、リアルタイムによる測定が望ましい。例えば、ユーザーの呼吸プロファイルを測定し、基準となる肺と比較し、エアゾール操作を制御するために比較したものを使用することも可能である。結果として、エアゾールの平均粒径は、エアゾール及びユーザーの呼吸努力によって運ばれる吸引される物質の意図する吸着効果に対応して、最適な値に調整される。
【0107】
[実施例II]
前述の基準は、エネルギー量をエアゾールから除去する又はエアゾールに加えるための制御パラメータとして圧力及び/又は温度を使用するために作られている。これは、エアゾールの状態及び条件を変化する目的でもある。この効果に使用することができる他の制御パラメータは、相対湿度である。以下に、例が示されている。
【0108】
本発明に記載の吸入装置は、流入原理に基づいてエアゾールをユーザーに投与している。これは、一定量のガスが装置に導入されることを意味する。これは、ユーザーの呼吸及び/又は補助機器、例えばベンチレーターを使用することにより行われることが好ましい。ある水分粒子の濃度が、エアゾール源の助けにより流動気体に加えられる。結果として、エアゾールが生成される。その後、エアゾールは吸入装置を通って流れ、そしてエアゾールの状態及び条件は、物質を加える前と吸入装置から放出される前に操作される。この効果のために、エネルギーはエアゾールから除去又はエネルギーに加えられる。圧力及び/又は温度を制御パラメータとして使用することができる。好ましくは、温度か゛制御パラメータとして使用されることである。このように、ガス又は他のエアゾールが加えられないので、圧力室は必要とされず、流動エアゾールの全容積は等しいままである。
【0109】
しかしながら、エアゾールの状態及び条件を、他のガス又は他のエアゾールを加えることによって操作することは可能である。このように、エネルギーもエアゾールから除去され又は加えることもできる。エアゾールの相対湿度よりも、より低い相対湿度をもつガスを加えるとき、エアゾールは、エネルギーをガスから除去するだろう。結果として、エネルギーは、初期エアゾールに直接加えられる。エアゾールの相対湿度よりも、より相対湿度の高いガスが加えられるとき、エアゾールはエネルギーをガスに運ぶだろう。これは、エネルギーがエアゾールから間接的に除去されることを意味している。この工程を制御するために、エアゾールの状態及び条件を制御することは可能である。この工程を制御することは、相対湿度及び体積を、初期エアゾールとガス又はエアゾールの両方に配慮していることを意味している。互いに関係しているこれらの制御パラメータを調節することによって、使用されるガス及び/又は水分の熱特性を考慮することにより、初期エアゾールの状態及び条件は操作される。
【0110】
要約すれば、初期エアゾールの状態と条件の操作及び制御は、制御された凝縮工程及び/又は蒸発工程の助けにより行われる。この効果のために、初期エアゾールは、圧力により冷却、加熱、希釈又は変化する。上記記載のように、制御手段は別々又は組み合わせて配置することができる。このように、例えば、最初に冷却し、次に加熱し、続いて希釈することが可能である。別の順序又は組み合わせも、可能である。
【0111】
エアゾールの好ましい状態及び条件を計算する時に、エアゾールの状態、条件、均一性及び平均粒径が、物質を加える時及び/又は装置から放出されそして哺乳動物の体内へ入るときに変化することを考慮することはさらに好ましい。
【0112】
飽和状態にするために初期エアゾールに温度勾配を利用することのさらなる利点は、この飽和エアゾールの温度が知られていることである。飽和エアゾールの温度は、50℃であると考えられる。飽和エアゾールが、続いて人間に投与される時、体内を37℃の一定温度及び100%の一定相対湿度で維持する竜骨に到達するまで、エアゾールの温度は減少するだろう。飽和エアゾールの温度減少は知られているので、軌道中において分子レベル(ガス)から液体状態へ転換する水分の量は知られている。この情報から、竜骨に達する前の平均粒径の増加を推論することはできる。
【0113】
凝縮を続ける結果として、飽和エアゾール粒子のサイズが大きくなることを防ぐために、不飽和ガス、例えば周囲空気が加えられる、好ましくは、コンデンサーから放出される飽和エアゾールと同じ温度が良い。結果として、得られた混合物の飽和度は減少し、混合物中の水分粒子を部分的に蒸発させる。不飽和ガスと飽和エアゾールの割合を調節することにより、吸入装置から放出される混合物は、微細な水分粒子を装置から好ましい目標沈着部位までの軌道中において適切な大きさを達することを可能にするための予定された状態及び条件を持つ。
【0114】
[実施例III]
本発明による吸入装置において、触媒工程がエアゾール源として使用される。このエアゾール源は、最初に、水分分子を含むガスを生成する。このガスは、続いて、物質を加える前に、コンデンサーに導入される。ガスは、飽和し、凝縮し、そして特定の温度をもつ100%相対湿度であるエアゾールとしてコンデンサーから放出される。続いて、エアゾールに物質を加えることができる。加えられる物質が凝縮核として作用することを防ぐために、物質を加える前に、希釈によりエアゾールを乾燥させることを最初に決定することができる。
【0115】
[実施例IV]
別の方法は、燃料電池をエアゾール源として使用する吸入装置である。燃料電池は、分子レベルの水を含むガスを生成する。加えられる必須の物質は、生成されたガスの一部分ではない。ガスは、物質を加える前にコンデンサーを通ってゆく。生成されるガスは、100%の相対湿度であるエアゾールとしてコンデンサーから放出される。続いて、エアゾールに加える物質を加えることができる。加えた物質が凝縮核として作用するのを防ぐために、物質を加える前に希釈によってエアゾールを最初に乾燥することもできる。
【0116】
飽和エアゾールがコンデンサー室から放出されるとすぐに、エアゾールは、ガス、例えば周囲空気によって希釈することができる。これは、エアゾールの希釈は凝縮工程の逆工程であること意味する。エアゾールの希釈は、露点を減少する。例えば、エアゾールの希釈は、本質的に飽和エアゾールと同じ温度を持つガスを使用することによって実現される。
物質がエアゾール加えられたかどうかの問題に関係なく、エアゾール投与用装置の放出入り口に到達したエアゾールの平均粒径は、コンデンサー室へと流れるエアゾールの希釈と組み合わせたコンデンサー室から放出されるエアゾールの平均粒径に主に依存している。
【0117】
凝縮と希釈の組み合わせを、好ましい平均粒径を持つエアゾールを得るためのエアゾール微調整に使用することができる。
【0118】
エアゾールの状態と条件を操作及び制御をするために、エアゾールはコンデンサー室に供給されている。コンデンサーに入るエアゾールは、特有の状態及び条件を持っている。通常、エアゾール源は、エアゾールの状態と条件を支配している。しかし、エアゾールの状態と条件はコンデンサーに入る前に調整することは可能である。この効果のために、吸入装置は、適切な手段を備えることができる。
【0119】
このように、コンデンサーに入るエアゾールを、細塵粒子を除去し又はエアゾールに存在する水分粒子のいくつかを捕らえるためにフィルターを付けることは可能である。その上、いくつかのコンデンサーでエアゾール源によって生成されるエアゾールを区切ることは可能である。さらに、いくつかのエアゾール混合物を混ぜ合わせることができ、その後これらの混ぜ合わされた混合物はひとつのコンデンサーを流れるか、又はいくつかのコンデンサーで区切られる。さらに、いくつかのエアゾール混合物は、1つのコンデンサーに単独で流れるか、又はいくつかのコンデンサーに単独で又は一緒に入る。コンデンサーに入る前又はコンデンサーに入ると同時に、物質をエアゾールに加えることも可能である。さらに、エアゾールの体積は、例えば圧縮によって、コンデンサーに入る前に変化させることは可能である。
【0120】
コンデンサー室は、密閉空間の形態にすることができ、コンデンサー室においてエアゾールを受け取るための第1開口端及びエアゾールを放出するための第2開口端を持つことが好ましい。これらの特徴のため、コンデンサー室は、投与装置の放出開口部に向かうエアゾール流れの障害が最少となる流入凝縮設備として使用することができる。コンデンサー室をコンデンサー中の抵抗の結果として、コンデンサーから放出されるエアゾールの流速は、コンデンサーに入る時よりも低いであろう。補助手段、例えば流体粘性の調整により意図的に流速を増すことも可能である。
【0121】
コンデンサー室において、流れるエアゾールを冷却する手段が備わっている。結果として、エアゾールは、コンデンサーに入る直前の温度よりも低い温度でコンデンサーから放出される。コンデンサーにおいて、冷却は外部から内部に変化をもたらす。これは、壁が入ってくるエアゾールよりも冷たいことを意味している。しかしながら、内部から外部に冷却することが好ましい。この場合、コンデンサーの壁は、コンデンサーに入ってくる及び/又はコンデンサーを通過し続けているエアゾールの温度よりも高い又は同じ温度であり、エアゾールはコンデンサー室内部に置かれた冷却要素に沿って通過し流れる。この配置は、凝縮が壁で起こらない利点がある。しかし、両方の方法の組み合わせも可能である。
【0122】
上記で述べたように、エアゾールは、コンデンサー室内部に置かれている冷却要素に沿って、好ましくは通過して流れる。流れるエアゾールの温度は、減少する。冷却要素は、流路に対称的に置かれている。しかし、これは、必須条件ではない。好ましくは、コンデンサーの壁は、凝縮の妨げとなるか、又はこのような物質が備わっている物質を構成しているかもしれない。さらに、測定は、抵抗を減少するための方法、例えばコーティングされている滑らかな(プラスチック)壁により行われる。エアゾールに沿って流れる冷却要素は、凝縮を妨げる物質により構成されるか、またはこのような物質を備えることもできる。初期エアゾールは、すでに小さい分子粒子の形で凝縮核を含んでいるので、冷却要素について考慮することは全く必要ではない。
【0123】
エアゾールが、コンデンサー室から放出する時間で完全に飽和されることを確実にするために温度を設定することができる。理論的には、コンデンサーから放出されるエアゾール中の総水分量はエアゾールが入ってくる時に含まれる水分の量と等しくすべきであるが、実際にはコンデンサーから放出されるエアゾール中の水分の量は、おそらく「損失」の結果として低くなるであろう。例えば、水分をこの効果に提供される手段によって除去することができる。この水分は装置中の貯蔵タンクに移動するか、又は装置の外に放流される。結局、この水分をエアゾール源及び/又はコンデンサーに入ってくるエアゾールに加えることができる。
ある大きさを持つコンデンサーに存在する水分粒子を捕らえるために、例えば水分分離の方法を取ることができる。低い流速のために、ある大きさを持つ水分粒子は運ばれず、エアゾールの脱落(drop out)を生じる。
コンデンサー室において放出される凝縮エネルギーを回収するために、ペルチエ素子を使用することができる。前記ペルチエ素子によって回収することができるエネルギーを、装置の制御システムのために使用することができる。
【0124】
[物質のエアゾールへの添加]
本発明による装置は、エアゾールを作り出し、操作し、そして投与するために利用される。エアゾールは、物質、例えば哺乳動物への薬デリバリーのためのキャリアである。投与される物質は、分離工程においてエアゾールに加えられる。その後、エアゾールと物質の組み合わせたものがさらに操作及び制御されるか、または直接哺乳動物へ投与される。任意に、出発エアゾールを別の物質を含む液体から生成することができる。初期エアゾールが別の物質を含み生成された場合、他の物質は、工程3の完了後に加えられる物質の主な性質と異なる特定の性質を持っているかもしれない。異なる性質として、例えば他の物質は香りがあるかもしれないことがあげられる。
【0125】
物質をエアゾールに加える異なる技術を、以下に記載する。技術は、気体、液体又は固体状態の物質をエアゾールに加えることと関連している。方法を増やすことができ又は同時に使用することができることを理解すべきである。例えば、液体状態の第1及び第2物質とガス状態の物質を同じエアゾールに加えることできることを意味する。
【0126】
物質を医療ガスの状態で加える場合、ドーズは比較的小さいだろう。大量のガスを患者にデリバリーする場合に、呼吸装置を使用することが実用的であるだろう。
【0127】
医療ガスは、キャニスター装置中に存在しているだろう。エアゾールへのガス添加は、キャニスターの放出口を閉めているバルブを開けることによって起こるだろう。
【0128】
実際には、限られた量のガスを投与するためにエアゾールを使用することはとても利点がある。最初の場所において、エアゾールの流量が、哺乳動物の肺システムへガスを運ぶために必要なエネルギーを供給するだろう。
【0129】
希釈された形でガスを投与することができるようにするために、エアゾール及びエアゾール粒子が限られた量のガスと十分な周囲空気量との混合性の良さを確実にするだろう。
【0130】
エアゾールの存在が混合性の良さを確実にするので、キャニスター中のガスは、物質の投与中に哺乳動物体内におけるある部位での過量摂取の危険性なしに、高濃度の物質を持つことができる。
【0131】
さらなる利点は、例えば水蒸気の形でのエアゾールも、ガスの投与中に哺乳動物の気道及び肺システムを湿らせるための必要な水分を提供することである。
【0132】
物質を、継続的に、例えば8回の呼吸サイクル毎に1回又は1タイムユニット当たり一定の投薬量でエアゾールキャリアに加えることができる、さらなる利点がある。
【0133】
液体形状の物質をエアゾールと効果的に混合することを確実にする様々な方法がある。
【0134】
第1方法において、物質を含む液体は、膜を通って送り出される。膜は、0.3〜0.7μmの範囲の一般的な大きさを持つ口径を提供する。
【0135】
第2方法において、物資を含む液体は、加圧下に置かれ、そして口径を備える膜に隣接することを可能にする。エアゾールの流れは膜の反対側に隣接しているので、加圧液体が蒸発することを可能にし、その結果として物質を含む蒸気がエアゾールに加えられる。エアゾール流体に入る粒子の粒径は、膜中の口径サイズに依存するだろう。粒径は比較的小さく、粒子がエアゾール流体中において蒸発することを可能にする。
【0136】
エアゾールとエアゾール添加される物質の間で効果的な混合を得るために、高濃度の少量で物質を加えることができる。この利点は、物質を含む小さい容器が多数のドーズにとっては十分であることである。本発明において、投与装置で物質が供給される時にはキャリアには溶けないが、装置自身において別々のキャリアに添加されるために可能である。
【0137】
ガスが比較的乾燥しているために、通り過ぎるガス(流入原理)は、水分を欲している。この水分は、膜の表面で形成される。膜表面において、液剤は通り過ぎる。
【0138】
第3方法において、物質は、放出する際にすぐに蒸発する噴出剤、例えばCOに溶解される。噴出剤及びその物質はバルブにより閉められているキャニスター中に含まれている。バルブが開くと同時に、噴出剤及び物質は放出され、そしてエアゾール流体に入る。噴出剤はすぐに蒸発し、物質は噴出剤又はドライパウダーよりも、エアゾールによって目的地に向かって運ばれるだろう。これは、物質が分子レベルでエアゾールキャリアに加えられることを可能にする。エアゾールキャリアは物質が加えられる前に操作及び制御されるので、とても小さい粒径が実現する。
【0139】
物質は、生成相において、蒸発物質と混合し、対になり又は化学結合する。この蒸発する物質は、物質がキャニスターから放出することを可能にする。この蒸発する物質は、物質を運び及びデリバリーするためのキャリアとして使用されないだろう。物質の蒸発は、物質がエアゾールに付着し又は混合することを可能にするだろう。エアゾールは、物質を好ましい吸着部位に運ぶキャリアになるだろう。
【0140】
物質と蒸発する物質が一緒になった場合の移動距離は、50nm未満に制限されるために、蒸発する物質は一般的には蒸発する。
【0141】
噴出剤がCOである場合、蒸発された噴出剤は哺乳動物の健康を害することなしに吸入することができる。
【0142】
固体状の物質がエアゾールに加えられる場合には、2つの場合を区別しなければならない。
【0143】
固体物質の第1グループは、液体に溶解することである。これらの物質は、液体をエアゾールに加える類似の方法でエアゾールに加えることができる。
【0144】
固体物質の第2グループは、液体に溶解されない。この固体物質の第2グループはパウダー状でエアゾールに添加される。物質の粒子が、100%飽和していないエアゾールキャリアに加えられる時、粒子はエアゾールのさらなる凝縮を起こさないだろう。パウダーはエアゾール中の粒子によって吸い上げられ、そしてエアゾールによって運ばれるだろう。パウダーの粒径は、エアゾールキャリア及びパウダー粒子を組み合わせることにより得られる粒径の増大を決定するだろう。エアゾールキャリアは、パウダー粒子を加える前に操作及び制御されるので、とても小さい粒径を得ることができる。
【0145】
エアゾールに加える間のパウダー粒子のクラスター化を防ぐために、粒子をエアゾールに加えることができる。この時、一定の電荷を持つ粒子を供給する電気装置を使用する。
【0146】
あるいは、塊を防ぐためにパウダー粒をコーティングすることができる。適切な界面活性剤を含むパウダー粒子をコーティングすることによって、エアゾールキャリアの水分粒子の界面張力は、これらコーティング粒子を加えると同時に減少し、従って取り込みの助けとなる。
【0147】
飽和レベルは、竜骨レベルで100%となるであろう。本願の発明において、エアゾールを使用し固体物質を哺乳動物に加えることができることは、ドライパウダーを含むエアゾールの吸入がキャリアとしてガス流量のみを使用するドライパウダーの吸入よりもよりとても快適である利点を持っている。
【0148】
[哺乳動物へのエアゾールの投与]
ローデッドエアゾールが投与装置の放出口に到達すれば、哺乳動物への投与される状態にある。エアゾールがデリバリーされる物質にとって好ましい粒径を持つように操作されているので、物質吸着の予測可能性は従来技術の装置及び方法と比較して大いに改善されている。
【0149】
哺乳動物へのローデッドエアゾール投与のためにいくつかの選択物がある。装置は、ローデッドエアゾールの吸い込みが哺乳動物の呼吸努力に依存する呼吸作動手段である。装置は、哺乳動物の流体の吸い込みを助ける呼吸補助手段として作動することができる。本願記載の発明の装置も、同時に使用することができる。マスク又はマウスピースと組み合わせて使用することができる。
【0150】
ローデッドエアゾールを放出するための開口は、哺乳動物の呼吸努力によって装置を通る流れを生み出すために、哺乳動物の口につなぐことにより適用されることが好ましい。
【0151】
本発明によれば、リアルタイム制御システムを利用して、ローデッドエアゾール投与を監視及び管理することができる。この制御システムは、特定の投与条件に依存する物質投与を、現在の最適デリバリー値に微調整するために、センサー、制御メカニズム及びプロセス手段の使用を必要とする。
【0152】
制御システムは、投与される物質の量を微調整するために適用されなければならないし、呼吸サイクルでエアゾールへの物質を加える時期を決めなければならない。
【0153】
流量はセンサーを用いて直接測定することができ、そして流量障害及び圧力センサーとの組み合わせを使用することによって推論することができる。
【0154】
本発明は、呼吸により操作される装置として使用することができる。ユーザーが口に向かって装置を通る流量を起こすために最小限の呼吸努力を提供しなければならない。
【0155】
呼吸作動装置は、初期エアゾールを生成するために燃料電池を確実に備えるほうが良いかもしれない。この場合、ユーザーは、燃料電池中の膜を通過する流れを生みだす。その後、エアゾールは、装置の放出口に向かってコンデンサー部分を介して進むだろう。装置から放出する前に、物質をエアゾールキャリアに加えることができる。
この場合、装置を通る流量制御は、主にユーザーの一時的な呼吸努力に依存している。
【0156】
ユーザーが、いくらかの流量を生みだすことができない、又は装置を通るほんの限られた流量しか生みだすことができない場合には、追加手段を、放出口に向かって装置を通る流量を改善するために用意することができる。これらの追加手段は、適切なファン又はベンチレーターの形状を持つことができる。
【0157】
装置−哺乳動物間中における流量を厳密に監視するために、装置が流量計を付けることが好ましい。この流量計は、制御メカニズムに接続されることが好ましく、ベンチレーターによって生みだされる追加の流量を制御することを可能とする。
【0158】
エアゾールの哺乳動物への移動の間に、哺乳動物の気道及び肺は、徐々に流入してくるエアゾールで満たされるだろう。物質を分離工程においてエアゾールに加えることができるので、物質のエアゾールへの添加時間を選択することは可能である。物質が深部の肺に入るようになっている場合、物質は呼吸サイクルの初めにエアゾールに添加されたことを意味する。物質が呼吸サイクルの最後にエアゾールに加えられる場合、その物質は基本的に空の肺に運ばれ、それから気道及び肺の深いレベルに達するだろう。物質がエアゾールに添加される時が遅くなればなるほど、哺乳動物における物質の沈着部位は口に近づいてゆく。
【0159】
物質をエアゾールに加える時期を決めることができるようにするために、哺乳動物に向かう流量を監視し、物質を流量に加えるために好ましい時期を選択することができるようにする流量計及び制御メカニズムの組み合わせを備えた装置であることが好ましい。
【0160】
本発明において、物質は分離行為においてエアゾールに加えられるので、物質の添加は、呼吸サイクル毎に合わせる必要がなく選択された間隔で行うことができる。これによって、特定のユーザーの選択に対して物質添加の調整が可能である。
【0161】
それに加えて、装置は、例えばタイムユニット毎にユーザーに投与される物質の最大量を設定するための手段を備えていることが好ましい。さらに、その時、装置はタイムユニット毎にエアゾールに添加される物質の量を測定及び貯蔵する手段を含むことが好ましい。特定のユーザーによる装置の使用に依存しているので、ユーザーが過量摂取の危険性なしに、必要摂取量を受け取ることを確実にするために、装置が物質をエアゾールに加えることが好ましい。
【0162】
物質を加える前に及び/又はユーザーへの投与前に、エアゾールが希釈されていることが好ましい。この希釈は、ユーザーに投与される流量に周囲空気を加えることによって起こすことができる。
【0163】
[エアゾールの生成、操作及び投与の異なる段階の相互作用]
上記投与中のエアゾールの好ましい粒径及び均一性を決定する5つの個々の工程において、エアゾールキャリアの生成、エアゾールの操作、エアゾールキャリアへの物質の投与、及び哺乳動物へのローデッドエアゾール投与の詳細を明記する。
【0164】
異なる工程1〜5が相互関係を持つことを理解すべきである。
例えば、ユーザーの呼吸努力の減少によって、呼吸作動装置によって作り出されたエアゾール量が減少する場合に、エアゾールを操作する制御パラメータは、エアゾールの粒径を最適にするために修正されなければならない。
【0165】
エアゾールの好ましい粒径及び均一性は、哺乳動物の気道及び肺での物質の好ましい沈着部位に依存する。好ましい粒径及び均一性は、呼吸サイクルにおけるエアゾールの実際の流量にも依存する。
呼吸サイクルにおいてエアゾールキャリアに物質を加える時期と組み合わせて、実際のエアゾールの粒径と均一性、及び1呼吸サイクルにおけるエアゾールの流量は、呼吸気道及び肺における物質の最終の吸着部位を決定する。
【0166】
I:加えられる物質の好ましい吸着部位は以下のパラメータに依存する:
哺乳動物の体内において異常の場合、治すべき特定の異常
哺乳動物へデリバリーすべき物質
物質が届く及び/又は物質で処理すべき気道及び肺の部位
哺乳動物に投与すべき物質の量
哺乳動物の年齢
【0167】
示されたパラメータは、物質を投与用装置に事前にプログラムを組むことが好ましい。プロセス手段、例えばコンピュータを備える装置を提供することが可能である。この手段は、装置の特殊用途のために特定のパラメータを受け取り及び貯蔵することができる。
好ましい沈着部位、エアゾールの好ましい粒径、物質の包装の情報を加えることもできる。この情報をバーコードの形式で供給することもできる。従って、ユーザーがデリバリー装置にカプセル又は類似の包装物質を充填した時、エアゾールの適切な操作、制御及びエアゾールへの物質の添加を含む、哺乳動物へのカプセル中の物質を投与するための操作詳細の情報を、装置は自動的に提供する。
【0168】
II:呼吸作動装置が使用される場合に、装置を通過する実際の流量はユーザーの呼吸努力に依存する。流量を補助するためのベンチレーターのような手段を備えている装置において、実際の流量は、ユーザー及び装置によって生みだされる付加的な流量の両方に依存している。実際の流量は、プロセスの5番目の工程中において哺乳動物へエアゾールのデリバリーにおいて測定されることが好ましい。この情報は、エアゾールの好ましい粒径を(再)計算するために制御手段へ反映させることが好ましい。
【0169】
実際には、その装置は、推定流量に基づくエアゾールの好ましい粒径を計算及び設定するための制御手段を備えることが好ましい。実際の流量測定は装置における、現在の粒径を調整するために使用することができる。オプションとして、4番目の工程においてエアゾールへいくつかの物質を加える前に、呼吸サイクルの最小数を最初に測定することができ、そして実際の流量を調整された粒径を微調整するために使用することができる。従って、物質が、実質的に好ましい沈着部位に到達することを確実にする。
流量測定後、装置における粒径操作を、粒径をこの流量レベルに適用するために変更することができる。あるいは、エアゾールの粒径を変化する必要なしに、流量を好ましい流量レベルを得るために、追加の流量手段を使用することによって調整することができる。2つの組み合わせ(粒径及び流量の両方を変化させる)も、使用することができる。
【0170】
粒径及びエアゾールキャリアの粒径バンド幅に関連する要求される精度は、エアゾールキャリアを作り出すための技術を選択する場合の主な基準である。
【0171】
エアゾールキャリアが作られた後、エアゾールは、エアゾールの粒径を制御するために操作される。最初の工程において決定された好ましい粒径が、エアゾールの操作に関する制御パラメータが好ましい粒径を得るために変化する程度を決定する。
【0172】
本発明において、上記で明記したように、エアゾールの操作は2つの工程で行うことができる。第1工程において、不飽和の初期エアゾールを飽和し、100%相対湿度及び一定温度を持つエアゾールの操作及び制御するための安定した初期条件を作り出すことができる。第2工程において、その後添加される物質が凝縮核として作用することを防ぐために、物質を飽和したエアゾールは気体、例えば周囲空気で希釈されることが好ましい。前記希釈の結果として、第1工程において使用される凝縮プロセスは逆転する。
【0173】
物質の添加は、以下のパラメータに依存する。
哺乳動物へデリバリーされる物質
物質が届けられ及び/又は物質で処理すべき気道及び肺の部位
哺乳動物の体内に異常がある場合に、薬物で処置されるべき特定の異常
哺乳動物へ投与されるべき物質の量
哺乳動物の年齢
哺乳動物の精神状態
【0174】
物質の添加は、装置における実際の流量と相互関係を持っているだろう。物質の添加は、ユーザーによる装置の使用頻度により制御することが好ましい。
【0175】
装置は、タイムユニット当たりユーザーに投与される物質の最大量を設定するための手段を備えることができる。さらに、装置は、タイムユニット当たりエアゾールキャリアに加えられる物質量の測定及び貯蔵するための手段を含むことが好ましい。装置は特定のユーザーによる装置の使用に依存しており、この装置により、過量摂取の危険性なしにユーザーが期間を超えて必要ドーズを受けることを確実にするためにエアゾールキャリアに物質を加えることができる。
【0176】
重要な効果は、呼吸サイクル中の加えるタイミングである。物質がエアゾールキャリアに加えられる瞬間が遅ければ遅いほど、哺乳動物中の物質の沈着部位は口に近づいてゆくだろう。
【0177】
物質の添加及び制御のさらなる観点は、装置を気休め薬として使用することができることである。ユーザーは患者が好む頻度でエアゾールキャリアを吸入することができ、装置はタイムユニット当たり物質最大量の実際の摂取を制限することができる。
【0178】
同様の方法において、患者がタイムユニット当たり十分な物質を受け入れていない場合には、装置はユーザーに知らせるための警報手段を備えることができる。
【0179】
エアゾールの投与は、装置の放出口から起こるだろう。エアゾールの量及び放出口から投与される流量は、ユーザーの呼吸努力に依存しているか、あるいは装置中において生みだされる追加の流量又は2つの組み合わせに依存している。
【0180】
装置から患者に向かう実際の流量は、上記で明記したように、プロセス過程1〜4を制御し、それによってユーザーの気道と肺中の沈着部位を制御するために監視することが好ましい。
【0181】
ユーザーへの装置から流量を制御するシステムは、流量センサーを含むことができる。制御システム及びセンサーは、操作のためのエネルギーを装置のバッテリーから、あるいはエアゾールキャリアの生成のための装置がある場合には燃料電池から直接獲得することができる。
【0182】
本発明の態様は、ベンチトップ(臨床用)、デスクトップ(住宅用)及び手のひらサイズ(携帯用)肺デリバリー装置を含む。しかし、好ましい態様は、独立型個人吸入器(吸入装置)である。
[図面の詳細な説明]
【0183】
添付図面に装置の例が示されている。
医薬の開発は、体に対する特定の効果を持つ物質の合成より多くを必要とする。開発者も、医薬が体内の特定部分へどのように運ばれ、そして利用されるのかを考慮しなければならない。
【0184】
医薬発の進歩に伴い、医薬の体内への取り込み方法が医薬自体とほぼ同じくらい重要になっている。医薬の濃度は、最大限の治療有用性を与えるレベルで維持されなければならない。医薬物投与の目標は、医薬の濃度の望ましいレベル及び受容体部位又は部位作用における治療有効性の達成である。
【0185】
本発明の好ましい形態、燃料電池を使用する個人用吸入器を図1に示している。
【0186】
図1に記載の燃料電池は、容器(2A)からの水素(2)と容器(3A)からの酸素(3)とを結合させ、水(4)、熱(5)及び電気を生成する電気化学装置であり、電球(6)によって図式的に表されている。あるいは、酸素の流れが周囲空気により提供されることがある。これは、模式的に図3に示されている。
【0187】
水素(2)が燃料電池のアノード(1A)へ、酸素(3)が燃料電池のカソード(1B)へ流れた場合、燃料電池は純粋の水(4)及び熱(5)を生成する。これは、燃料電池(1)が高い温度で蒸気を生成することを意味する。
【0188】
図2に示すように、個々の燃料電池(1、11、21、31)は、総電力を増加させるために燃料電池の積み重ね体「Stack」(10)として組み合わせることができる。
【0189】
本発明によれば、図1及び図2に記載の温かい蒸気を発生させる工程は、吸入器に取り込まれている。
図3は、吸入器の内部にある燃料電池(1)を示しており、シリンダ(15)によって模式的に示されている。エアゾールを放出するための放出口(17)は、シリンダ(15)の右端面に位置している。
【0190】
容器(15)により、燃料電池(1)において発生した蒸気は無菌のエアゾール(16)を凝縮及び生成するだろう。図3の記載において、必要な酸素量は周囲空気(18)により供給される。あるいは、図1に示すように容器により酸素は供給される。
【0191】
吸入器を通ることにより、燃料電池(1)から放出口(17)に向かって蒸気はエアゾールの粒径を大きくする凝縮を続ける。これは、描かれた水滴のサイズを大きくすることによって、図解的に示される。
エアゾールの粒径は、その安定性及び沈着効果を決定するので、この粒径の増加は好ましくない。
【0192】
エアゾール中の粒径を操作することができるようにするために、本発明において、吸入器(15)は温度制御されたコンデンサー(19)を備える。これは、図4に示されている。このコンデンサー(19)において、飽和した混合物が形成される。これは、エアゾールの温度分布、特にエアゾールの粒径を制御することを可能にする。そのコンデンサー(19)の存在は、蒸気が燃料電池(1)を用いることにより作り出される空間を制限する。この囲まれた空間は、蒸気室(14)と称する。
【0193】
図5に示されるように、粒径の制御をさらに改善するために、飽和ガス、例えば周囲空気が希釈室(20)中のエアゾールに加えられる。飽和ガスは、コンデンサーから放出された飽和流体と同じ温度であることが好ましい。結果として、エアゾール中の粒子を部分的に蒸発させながら、混合物の露点を減少し、それによってエアゾール中の個々の粒径は減少する。
【0194】
流体の露点は、体温より低い値にさらに調整することができる。この場合、エアゾールが人間の腔に入ったあとでさえも、凝縮は蒸気の一部であり、粒径の増加はさらに妨げられ、エアゾール粒径は比較的小さく維持されるであろう。加えられた飽和ガスとその混合物自体の比が新しい露点を決定する。
【0195】
吸入器から放出されるエアゾールは、単に物質、例えば医薬のキャリアにすぎない。物質(30)は、エアゾールに別々に加えられる。これは、図6に模式的に示されている。物質等(30)は、ミキサー(35)においてエアゾールと混合される。加えられる物質、例えば、医薬は、エアゾール中の水分粒子と結合し、それによって、それらの粒径をわずかに増加する。本発明により作り出されたエアゾール中の粒子の粒径は、20ナノメーター以下とすることがてきる。
【0196】
物質(30)は、固体、気体又はエアゾール物質の形状でミキサーへ移動する。吸入器で発生したエアゾール(16)は、ミキサー(35)から体内へ物質を運ぶためのキャリアを提供するであろう。
【0197】
吸入器(15)内部で発生したエアゾール(16)は、あらかじめ決められた温度で放出開口(17)から放出されるであろう。この温度は、例えば、20〜40℃の範囲内とすることができる。この温度レベルは、コールドフレオン現象を排除するであろう。これは、導入部分で記載した標準的MDI装置の使用を超える大きな利点である。
【0198】
放出口(17)で吸入器(15)から放出されるエアゾール(16)は、主に、水滴から構成される。これは、物質のキャリアとして使用されるエアゾールは、一般の人体又は特に肺にとって望ましくない効果を持っていない物質であることを意味する。これは、気道及び肺内の不快感とかゆみの原因となる濡れない霧(ドライミスト)が気道及び肺に入る標準DPIの使用を超える大きな利点である。
【0199】
示されている実施態様は、呼吸作動装置である。これは、使用者自身が、コンデンサー(19)、希釈室(20)、ミキサー(35)を介して燃料電池(1)から放出口(17)に向かう流れを創造するために要求される呼吸努力を発生させなければならない。示されている実施態様は、気道及び肺への物質投与のために激しい呼吸をする必要性を除去する。
【0200】
空気の流れが使用者の呼吸努力なしで発生させられる別の解決方法も可能であることは、理解されるべきである。
【0201】
図7において、コンデンサー(19)の可能な実施態様が模式的に示されている。エアゾール(16)は、ガス室(14)から、コンデンサー(19)を通って、装置の放出口(17)(図示せず)を進むであろう。
【0202】
コンデンサー(19)は、熱交換体(40)を備えており、好ましくは開口物質を含む。このコンデンサーにおいて、エアゾール(16)は、熱交換体による流れの最少妨害量でコンデンサーを通って流れることができる。
【0203】
熱交換体(40)は、例えば、良好な熱移動をもたらすメタル・ウールを含む。ウールは、例えば銅を含む。
【0204】
熱交換体(40)は、熱交換体(40)の温度を調節するために、加熱/冷却装置(41)と連結されている。
【0205】
コンデンサー(19)において、小滴が形成されるかもしれない。これらの小滴はガイド(42)を用いて集められ、そしてコンデンサーの外へ導くことができる。この場合、コンデンサー(19)は、エアゾールを生成するために液体を使用するエアゾール発生用装置と共に操作される。ガイド(42)において集められた流体は、エアゾール発生用装置に戻すことができる。
【0206】
コンデンサー(19)の条件は、コンデンサー放出口で100%飽和したエアゾール(16)を保つために適用されるだろう。コンデンサーから放出されたエアゾールは、安定した物理的状態をもっているだろう。エアゾール中の小滴は凝縮及び蒸発しない。
【0207】
追加の特徴として、本発明による装置は、装置を殺菌するための装置を取り付けることができる。これは、装置を通過し移動することによって、装置を殺菌するために100℃の温度でエアゾールが作り出されることを意味する。
【0208】
前記結論に関連して、前記で述べた装置及び方法は、費用効率が高く、無菌であり、衛生的な吸入装置を提供する。装置は、人体における異なる沈着部分への気体、液体、又は固体を均等に運ぶことができる。装置は、キャリアとしてエアゾールを使用することにより、薬物投与の正確であり、制御された、使いやすい方法を提供する。エアゾール自体は、人体に存在する天然物質を含む。従って、エアゾールは、高分子の変性なしに、人体における最も効果的な沈着部分へ、投与された薬(小分子または大分子)を運ぶことを可能にする。
【0209】
吸入ドラッグデリバリーのプロダクトマーケットは、近年、実質的な成長を見込まれる10億ドルビジネスである。本発明による吸入器は、臨床用、家庭用及び携帯用形状に発展することができる。
【0210】
携帯用形状は、触媒バーナー、特に燃料電池を備えることができる。この形状は、小型のエネルギー自給的個人用吸入器をもたらす。これは、吸入をレクリエーションに変える快適なレベルで、何の物質でも、どこでも、いつでも使用者の効果的な自己吸引を可能とする。
【0211】
他の十分なバーナーは、装置の効果を害することなしに使用することができることを理解すべきである。
【0212】
ドライパウダー吸入器(DPI)及び定量噴霧式吸入器(MDI)は知られているので、この吸入装置は吸入器により制御される沈着効果(D.E.C.I.又はDECI)として言及される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入による哺乳動物への物質投与用装置であって、
エアゾールを作り出すエアゾール手段、
前記エアゾールの粒径を制御するために前記エアゾールを操作するための制御手段を含み、
前記装置が、その装置から前記エアゾールを放出する前又は放出する際に、物質を前記エアゾールに加える供給手段を備える、前記装置。
【請求項2】
前記エアゾール手段がミスト発生器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エアゾール手段が、触媒バーナー、例えば燃料電池を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、エアゾール室を含み、そのエアゾール室内においてエアゾールを作り出す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記エアゾールにエネルギーを加えるか、又は前記エアゾールからエネルギーを除去し、それによってエアゾールの粒径を制御するように適用されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御手段が、コンデンサー室を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記コンデンサー室が、流れを受け入れるための第1開口端及び流れを放出するための第2開口端を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コンデンサー室が、前記エアゾール室に隣接している、請求項4及び請求項6、又は請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段が、熱交換器を含み、その熱交換器が、前記エアゾールが前記熱交換器を通過することを可能にするための開口を備える、請求項5〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、凝縮エネルギーを回収するために、前記コンデンサー室に配置されたペルチエ素子を含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御手段が、前記エアゾールと流体、例えば飽和ガスとを混合し、それによって前記エアゾールの露点を減少させる希釈手段を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記供給手段が、気体物質を前記エアゾールに加える手段を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記供給手段が、気体物質を貯蔵する容器、例えば、キャニスターを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記供給手段が、液体物質を前記エアゾールに加える手段を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記供給手段が、膜ポンプを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記供給手段が、固体物質を前記エアゾールに加える手段を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記供給手段が、噴出剤、例えばCO2、と液体及び/又は固体物質とを貯蔵する容器を含む、請求項14又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、呼吸で作動させるように適用される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、前記装置を呼吸サポートで作動する手段を備える、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記制御手段が、投与される前記エアゾールの好ましい状態及び条件に関連するデータを受け取り及び処理するための、処理手段と結びつき、貯蔵手段を備える、請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記装置が、投与されるエアゾールの状態及び条件に関連するデータを測定するために、前記処理手段と結びつき、感知手段を備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記供給手段が、前記物質を前記エアゾールに加える好ましいタイミングに関連するデータを受け取り及び処理するための、処理手段と結びつき、貯蔵手段を備える、請求項1〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記装置が、前記物質を前記エアゾールに加えるタイミングに関連するデータを測定するために、前記処理手段と結びつき、感知手段を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記感知手段が、投与容量の測定値を出す流量測定手段を含む、請求項21又は23に記載の装置。
【請求項25】
吸入による哺乳動物への物質投与方法であって、
(a)エアゾールを作り出す工程、
(b)前記エアゾールにエネルギーを加えるか又は前記エアゾールからエネルギーを除去することにより前記エアゾールを操作し、それによって前記エアゾール粒子の粒径を制御する工程、及び
(c)前記エアゾールを哺乳動物へ投与する工程を含み、
(d)前記エアゾールにより哺乳動物へ物質を投与するために、前記エアゾールを哺乳動物に投与する前に、前記物質を前記エアゾールに加える工程を含む、前記方法。
【請求項26】
(e)前記工程(b)の前に、哺乳動物へ投与される物質の好ましい標的部位を、気道及び肺中で、特定する工程、及び
f)前記エアゾールの好ましい状態及び条件を計算する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(d)を、工程(b)の完了後に、実行する、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
工程(b)を、工程(d)の完成後に繰り返す、請求項25〜27に記載の方法。
【請求項29】
(g)哺乳動物に投与されるエアゾールの第1量の流れをリアルタイムに測定する工程、及び
(h)哺乳動物へのエアゾールの第2量の投与前に、工程(b)において前記エアゾールの操作を制御するために、装置−哺乳動物間のインターフェイスにおいて、リアルタイム測定を使用する
工程を含む、請求項25〜28に記載の方法。
【請求項30】
(i)望ましいエアゾール操作を実現するために、工程(b)の前に、前記エアゾールの熱容量を評価し、それによって前記エアゾールに加えるか又は前記エアゾールから除去するためのエネルギー相対量を決定する工程を含む、請求項25〜29に記載の方法。
【請求項31】
前記エアゾール操作が、エアゾールの気相の少なくとも一部分の凝縮を可能にする凝縮工程を含む、請求項25〜30に記載の方法。
【請求項32】
前記エアゾールの操作が、相対湿度100%のエアゾールを得るために適用される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エアゾール操作が、前記エアゾールと流体、例えば不飽和ガスとを混合し、それによって前記エアゾールの露点を減少させる希釈工程を含む、請求項25〜32に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、
(j)前記エアゾールへ前記物質を加える好ましいタイミングを計算する工程(e)及び(g)の結果を使用する工程を含む、請求項25〜33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、第1物質を含む前記エアゾールを工程(a)において作り出し、そして前記エアゾールに更に物質を工程(d)において加える工程を含む、請求項25〜34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−528242(P2007−528242A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500186(P2007−500186)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002157
【国際公開番号】WO2005/079894
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506288184)
【氏名又は名称原語表記】KOREVAAR JACOB