説明

吸入器

【課題】 簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能な吸入器を提供する。
【解決手段】 吸入器は、気流が流動する流路101を規定し、ネブライザ100Aの外部から流路101に外気を導入するための第1および第2吸気口152a,152bが設けられたキャップ体150と、流路101とネブライザ100Aの外部との圧力差を利用して第1吸気口152aを開閉する吸気弁140と、第1および第2吸気口152a,152bのうちのいずれか一方を選択的に遮蔽可能な遮蔽部とを備え、この遮蔽部によって第2吸気口152bが遮蔽され、圧力差を利用した第1吸気口152aを介しての外気の導入が可能な第1の状態と、遮蔽部によって第1吸気口152aが遮蔽され、第2吸気口152bを介した流路101とネブライザ100Aの外部との連通が常時維持される第2の状態とに切り替え可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部に貯留された液体を霧化部において霧化し、生成されたエアロゾルをマウスピース等を用いて使用者の口腔や鼻腔に吐出する吸入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸入器は、主に気管支の消毒や治療等に用いられる装置であり、液体を霧化させる霧化部と、霧化された液体を吐出するマウスピース等の吐出部とを備え、霧化部にて生成されたエアロゾルをマウスピース等の吐出部を用いて口や鼻から吸入させるための装置である。このうち、治療目的で薬液をエアロゾル化させて吐出する吸入器を特に吸入治療装置と呼ぶ。
【0003】
一般に、この主の吸入器においては、使用者に負担をかけることなくかつエアロゾルの吸入がより効率的に行なえるように、装置本体に吸気弁が設けられる。吸気弁は、装置内部に設けられた気流の流路を構成する流路壁に設けられた連通孔を閉塞するように流路壁に取り付けられた逆止弁にて構成される。吸気弁は、使用者が流路中に分散したエアロゾルを含む空気を吸い込むために、装置外部から流路に外気を取り込むための弁である。
【0004】
上記吸気弁の構造としては、たとえば特開平11−137688号公報(特許文献1)に開示のものが知られている。上記特許文献1に開示の吸気弁は、吸気口が設けられたキャップ体の下面に弾性部材からなる吸気弁を取り付け、この吸気弁の変形に制限を加えることにより、エアロゾルの過度の吸入を防止したものである。
【特許文献1】特開平11−137688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示の構成を採用した場合には、常に逆止弁である吸気弁が装置に取り付けられた状態となるため、自発的に十分な量のエアロゾルを吸入することが困難な人(たとえば肺活量の比較的小さい小児や何らかの気管支の疾患を患っている人等)においては、吸気弁が十分に開かず、必要量のエアロゾルを吸入することが困難になる。その結果、口腔や鼻腔に十分な量のエアロゾルが噴霧されないことになり、消毒効果や治療効果といった吸入器の使用目的を十分に達せないことになってしまう。
【0006】
一方、吸気弁が設けられず、単に流路壁に吸気口が設けられたのみの構成を採用した場合には、自発的に十分な量のエアロゾルを吸入することが困難な人においてはエアロゾルの吸入が容易化する反面、肺活量の比較的大きい人(たとえば成人男性等)においては過度の吸入が生じ、適量のエアロゾルの吸入が行えなくなる問題が生じる。
【0007】
したがって、吸気弁を着脱自在とする構成も考えられるが、そのように構成した場合には、使用時において取付け作業や取外し作業を繰り返すことが必要になり、吸気弁が破損したり、吸気弁を紛失したりするおそれがある。また、上記取付け作業や取外し作業は、非常に煩雑なものとなり、使用者の負担を強いることにもなる。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能な吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に基づく吸入器は、気流が流動する流路を規定し、装置外部から上記流路に外気を導入するための第1および第2吸気口が設けられた流路壁と、上記流路に設けられ、貯留部に貯留された液体を霧化する霧化部と、上記霧化部にて生成されたエアロゾルを含む気流を装置外部に吐出する吐出部と、上記第1吸気口が設けられた部分の上記流路壁に取り付けられ、上記流路と装置外部との圧力差を利用して上記第1吸気口を開閉する吸気弁と、上記第1および第2吸気口のうちのいずれか一方を選択的に遮蔽可能な遮蔽部とを備え、上記遮蔽部によって上記第2吸気口が遮蔽され、上記圧力差を利用した上記第1吸気口を介しての外気の導入が可能な第1の状態と、上記遮蔽部によって上記第1吸気口が遮蔽され、上記第2吸気口を介した上記流路と装置外部との連通が常時維持される第2の状態とに切り替え可能に構成されている。
【0010】
上記本発明の第1の局面に基づく吸入器にあっては、この吸入器が、上記第1および第2吸気口が設けられていない部分の上記流路壁を含むケース体と、上記第1および第2吸気口が設けられた部分の上記流路壁を含むキャップ体とを有し、上記ケース体に上記キャップ体が取り付けられることによって構成されていてもよい。その場合には、上記遮蔽部が上記ケース体に設けられた部分の上記流路壁によって構成されていることが好ましく、また、上記ケース体に対する上記キャップ体の相対的な取付け位置を変更することにより、上記第1の状態と上記第2の状態との切り替えが可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
上記本発明の第1の局面に基づく吸入器にあっては、上記遮蔽部が、上記流路壁の表面上においてスライド移動可能に取り付けられたスライダによって構成されていることが好ましく、また、上記スライダを移動させることによって上記流路壁の表面上における上記スライダの相対的な位置を変更することにより、上記第1の状態と上記第2の状態との切り替えが可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
上記本発明の第1の局面に基づく吸入器にあっては、上記遮蔽部が、上記流路壁の表面上において上記表面と平行な方向に配置された回転軸を中心に回転可能に取り付けられた回転板によって構成されていることが好ましく、また、上記回転板を回転させることによって上記流路壁の表面上における上記回転板の相対的な位置を変更することにより、上記第1の状態と上記第2の状態との切り替えが可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の局面に基づく吸入器は、気流が流動する流路を規定し、装置外部から上記流路に外気を導入するための吸気口が設けられた流路壁と、上記流路に設けられ、貯留部に貯留された液体を霧化する霧化部と、上記霧化部にて生成されたエアロゾルを含む気流を装置外部に吐出する吐出部と、上記流路と装置外部との圧力差を利用して上記吸気口を開閉することが可能に構成された吸気弁と、上記吸気弁の上記流路中における相対的な配置位置を選択的に変更可能な位置変更手段とを備え、上記吸気弁が上記圧力差を利用した上記吸気口の開閉が可能な位置に配置され、上記圧力差を利用した上記吸気口を介しての外気の導入が可能な第1の状態と、上記吸気弁が上記圧力差を利用した上記吸気口の開閉が不能な位置に配置され、上記吸気口を介した上記流路と装置外部との連通が常時維持される第2の状態とに切り替え可能に構成されている。
【0014】
上記本発明の第2の局面に基づく吸入器にあっては、上記位置変更手段が、上記吸気弁に一端部が固定されるとともに他端部が上記流路壁によって移動自在に支持されたロッドによって構成されていることが好ましく、また、上記ロッドの上記流路壁に対する相対的な位置を変更することにより、上記第1の状態と上記第2の状態との切り替えが可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能になるため、適量のエアロゾルの噴霧を使用者に負担を強いることなく実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、吸入器としてコンプレッサ式の吸入器を例示して説明を行なう。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における吸入器の装置構成を示す外観図である。図2は、図1に示す吸入器のネブライザの組付構造を示す分解斜視図である。また、図3(A)および図3(B)は、図2に示すネブライザの組付後において吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図であり、図4(A)および図4(B)は、図2に示すネブライザの組付後において吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。なお、図3および図4においては、図2に示すマウスピースの図示は省略している。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態における吸入器1は、コンプレッサ10と、チューブ20と、ネブライザ100Aとを備えている。コンプレッサ10は、チューブ20を介して加圧した圧縮空気をネブライザ100Aに送出する。
【0019】
図2ないし図4に示すように、ネブライザ100Aは、ケース体110と、霧化部形成体120と、流路形成体130と、吸気弁140と、キャップ体150とを備える。ケース体110は、略円筒状の形状を有しており、上記霧化部形成体120および流路形成体130が、このケース体110の内部に収容・配置される。吸気弁140は、キャップ体150の下面に取り付けられ、キャップ体150は、ケース体110の上端に設けられた開口を閉塞するようにケース体110に取り付けられる。
【0020】
ケース体110は、その周面の所定位置に接続部112を有しており、この接続部112にマウスピース160が接続される。図2に示すように、マウスピース160には、呼気弁170と、この呼気弁170のマウスピース160に対する固定を可能にする固定部材180とが取り付けられる。
【0021】
図3(B)および図4(B)に示すように、ケース体110の底面には、圧縮空気導入管114が上下方向に延びるように配設されている。圧縮空気導入管114の下部先端部には、上述のチューブ20が取り付けられる。これにより、チューブ20を介してコンプレッサ10にて生成された圧縮空気が圧縮空気導入管114に導入されることになる。圧縮空気導入管114の上部先端部は、先細形状に形成されており、後述する霧化部形成体120に設けられたバッフル122に対面している。また、ケース体110の上記圧縮空気導入管114が形成された部分の周囲には、貯留部116が設けられている。この貯留部116は、水や食塩水あるいは薬液といった液体200を一時的に貯留する部位である。
【0022】
圧縮空気導入管114には、上方から霧化部形成体120の吸液管形成部124が対面配置される。この吸液管形成部124の内壁面は、圧縮空気導入管114の外壁面と所定の距離をもって位置決めして配置され、その下端は上述の貯留部116の底面近傍にまで達するように配置される。この吸液管形成部124と圧縮空気導入管114との間の隙間によって吸液管が構成され、毛管現象によって貯留部116に貯留された液体200が後述する霧化部近傍にまで吸い上げられる。
【0023】
上述のように、霧化部形成体120のバッフル122は、圧縮空気導入管114の上部先端部に対面配置されており、この部分において霧化部が形成されている。霧化部においては、コンプレッサ10によって圧縮空気導入管114に導入された圧縮空気が圧縮空気導入管114の上部先端部からバッフル122に向けて吹き付けられる。その際、毛管現象によって霧化部近傍にまで吸い上げられた液体200が上記霧化部にて生じる負圧によって吹き上げられ、圧縮空気とともにバッフル122に向けて吹き付けられることになる。この作用により、液体200はバッフル122に衝突して微細な液滴となり、この微細な液滴が流路101中を流動する気流に分散されてエアロゾルとなる。
【0024】
霧化部形成体120の上部には、流路形成体130が位置決めして配置されており、この流路形成体130によってケース体110の内部に気流が流動する流路101が形成されている。流路101は、上述のケース体110の周面に形成された接続部112に連通しており、この接続部112を介して霧化部にて生成されたエアロゾルがマウスピース160へと導入される。なお、流路形成体130の上端部には、後述する遮蔽部の一部となる遮蔽部形成壁132が設けられている。
【0025】
図3および図4に示すように、上述のキャップ体150には、所定位置に第1吸気口152aおよび第2吸気口152bが設けられている。キャップ体150は、上面視略円形状の外形を有しており、キャップ体150を左右に2分した片側に第1吸気口152aが、もう片側に第2吸気口152bがそれぞれ形成されている。また、上記第1吸気口152aと第2吸気口152bの間に位置する部分のキャップ体150の下面には、下方に向かって突出して設けられた隔壁154が形成されている。この隔壁154は、上述の流路形成体130の上端面にまで達しており、流路形成体130の遮蔽部形成壁132に当接している。
【0026】
キャップ体150の下面には、吸気弁140が取り付けられている。この吸気弁140は、略半円形状を有しており、第1吸気口152aを閉塞するように上記隔壁154に隣接して配置されている。キャップ体150に対する吸気弁140の取付けは、吸気弁140に設けられた取付部142をキャップ体150に設けられた開口に挿し込むことによって行なわれる。この吸気弁140は、たとえばシリコンやエラストマなどのような可撓性に優れたゴムや樹脂にて形成され、流路101の内圧とネブライザ100Aの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉する逆止弁である。すなわち、吸気弁140は、使用者が流路101中に分散したエアロゾルを含む空気を吸い込むために、ネブライザ100Aから流路101に外気を取り込むための弁である。
【0027】
図3に示す第1の状態においては、第2吸気口152bが遮蔽部としての隔壁154および遮蔽部形成壁132によって遮蔽された状態にあり、第2吸気口152bが流路101と連通していない状態にある。一方、第1吸気口152aは、吸気弁140を介して流路101と連通した状態にある。そのため、吸気弁140は、流路101の内圧とネブライザ100Aの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉可能な状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって吸気弁140が下方に押し下げられ、流路101とネブライザ100Aの外部とが連通する。したがって、上記負圧によって外気が第1吸気口152aを介して流路101内に導入されるようになる。なお、使用者が呼気を流路101内に吐き出した際には、流路101の内圧が上昇するため、吸気弁140は、キャップ体150の下面に押し付けられ、第1吸気口152aは閉塞された状態となる。この図3に示す第1の状態は、エアロゾルの吸入が比較的容易に行える吸入量の多い使用者の使用に適した使用状態である。
【0028】
図4に示す第2の状態においては、第1吸気口152aが遮蔽部としての隔壁154および遮蔽部形成壁部132によって遮蔽された状態にあり、第1吸気口152aが流路101と連通していない状態にある。そのため、吸気弁140は、逆止弁としての機能を果たすことはない。一方、第2吸気口152bは、流路101と連通した状態にあり、その結果この第2吸気口152bを介して流路101とネブライザ100Aの外部とが連通した状態にある。したがって、第2吸入口152bは常時連通した状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって外気が第2吸気口152bを介して流路101内に導入されるようになる。この図4に示す第2の状態は、エアロゾルの吸入が比較的困難な吸入量の少ない使用者の使用に適した使用状態である。
【0029】
図5は、本実施の形態における吸入器において、上述の第1の状態と第2の状態とを切り替える具体的な操作方法を説明するための図である。図5に示すように、本実施の形態における吸入器のネブライザ100Aにおいては、図中矢印Aで示すようにキャップ体150をケース体110から取外し、図中矢印Bで示すようにキャップ体150を水平状態において180度回転させ、その後図中矢印Cで示すように再度ケース体110にキャップ体150を取付けることにより、上述の第1の状態と第2の状態の切り替えが行われる。ケース体110に対するキャップ体150の固定は、キャップ体150の側部の相対する位置に設けられた一対の突起部157を、ケース体110の上端部内周面の相対する位置に設けられた切り欠き部117に嵌め込むことによって行われる。なお、嵌め込みの際の位置決めを容易化するために、ケース体110とキャップ体150のそれぞれには、アライメントマーク118,158が設けられている。
【0030】
以上の構成を採用することにより、キャップ体を一旦取外してその方向を代えて再度取付けるという非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能になるため、適量のエアロゾルの噴霧を使用者に負担を強いることなく実現できるようになる。また、吸気弁の有無の切り替えを行うために吸気弁のみを装置本体から取外す必要もないため、吸気弁を破損したり、紛失したりすることも防止可能となる。したがって、取扱い性に優れた吸入器とすることができる。
【0031】
(実施の形態2)
図6(A)および図6(B)は、本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図であり、図7(A)および図7(B)は、本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。また、図8(A)は、本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の斜視図であり、図8(B)は、吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の斜視図である。これら図6ないし図8においてはマウスピースの図示は省略し、また、図6(B)および図7(B)においてはネブライザの内部機構についてはその図示を省略している。なお、上述の実施の形態1における吸入器のネブライザ100Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0032】
図6ないし図8に示すように、本実施の形態における吸入器のネブライザ100Bにおいては、キャップ体150の所定位置に第1吸気口152aおよび第2吸気口152bが設けられている。キャップ体150は、上面視略円形状の外形を有しており、キャップ体150を左右に2分した片側に第1吸気口152aが、もう片側に第2吸気口152bがそれぞれ形成されている。キャップ体150の下面には、吸気弁140が取り付けられている。この吸気弁140は、第1吸気口152aを閉塞するように配置されており、流路101の内圧とネブライザ100Bの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉する逆止弁である。
【0033】
キャップ体150の外表面には、遮蔽部としてのスライダ191がスライド移動可能に設けられている。このスライダ191は、図6および図8(A)に示す第1の状態においては、第2吸気口152bを遮蔽する位置に配置される。したがって、第1の状態においては、第2吸気口152bがネブライザ100Bの外部と連通していない状態にある。一方、第1吸気口152aは、吸気弁140を介して流路101と連通した状態にある。そのため、吸気弁140は、流路101の内圧とネブライザ100Bの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉可能な状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって吸気弁140が下方に押し下げられ、流路101とネブライザ100Bの外部とが連通する。したがって、上記負圧によって外気が第1吸気口152aを介して流路101内に導入されるようになる。
【0034】
スライダ191は、図7および図8(B)に示す第2の状態においては、第1吸気口152aを遮蔽する位置に配置される。したがって、第2の状態においては、第1吸気口152aがネブライザ100Bの外部と連通していない状態にある。そのため、吸気弁140は、逆止弁としての機能を果たすことはない。一方、第2吸気口152bは、ネブライザ100Bの外部と連通した状態にあり、その結果この第2吸気口152bを介して流路101とネブライザ100Bの外部とが連通した状態にある。したがって、第2吸入口152bは常時連通した状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって外気が第2吸気口152bを介して流路101内に導入されるようになる。
【0035】
以上の構成を採用することにより、スライダをキャップ体の外表面においてスライドさせるという非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能になるため、適量のエアロゾルの噴霧を使用者に負担を強いることなく実現できるようになる。また、吸気弁の有無の切り替えを行うために吸気弁のみを装置本体から取外す必要もないため、吸気弁を破損したり、紛失したりすることも防止可能となる。したがって、取扱い性に優れた吸入器とすることができる。
【0036】
なお、上記のように本実施の形態における吸入器にあっては、遮蔽部としてのスライダをキャップ体の外表面上に設けた場合を例示して説明を行なったが、遮蔽部としてのスライダをネブライザの内部に設ける構成としてもよい。その場合には、遮蔽部としてのスライダが流路を規定するケース体の内表面上やキャップ体の内表面上などに配設されることになる。
【0037】
(実施の形態3)
図9(A)および図9(B)は、本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図であり、図10(A)および図10(B)は、本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。また、図11(A)は、本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の斜視図であり、図11(B)は、吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の斜視図である。これら図9ないし図11においてはマウスピースの図示は省略し、また、図9(B)および図10(B)においてはネブライザの内部機構についてはその図示を省略している。なお、上述の実施の形態1における吸入器のネブライザ100Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0038】
図9ないし図11に示すように、本実施の形態における吸入器のネブライザ100Cにおいては、キャップ体150は、上面視略円形状の外形を有しており、その表面は断面V字状に構成されている。キャップ体150の所定位置に第1吸気口152aおよび第2吸気口152bが設けられている。この断面V字状に形成されたキャップ体150は、その上面が屈曲部を挟んで左右に2分されており、片側に第1吸気口152aが、もう片側に第2吸気口152bがそれぞれ形成されている。キャップ体150の下面には、吸気弁140が取り付けられている。この吸気弁140は、第1吸気口152aを閉塞するように配置されており、流路101の内圧とネブライザ100Cの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉する逆止弁である。
【0039】
キャップ体150の外表面には、遮蔽部としての回転板192が回転可能に設けられている。回転板192は、その軸部192aがキャップ体150の外表面と平行な方向に配置されるように構成されており、より具体的には、軸部192aが上述の屈曲部において軸支されることにより、回転可能に構成されている。
【0040】
この回転板192は、図9および図11(A)に示す第1の状態においては、第2吸気口152bを遮蔽する位置に配置される。したがって、第1の状態においては、第2吸気口152bがネブライザ100Cの外部と連通していない状態にある。一方、第1吸気口152aは、吸気弁140を介して流路101と連通した状態にある。そのため、吸気弁140は、流路101の内圧とネブライザ100Cの外部の圧力との圧力差を利用して上記第1吸気口152aを開閉可能な状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって吸気弁140が下方に押し下げられ、流路101とネブライザ100Cの外部とが連通する。したがって、上記負圧によって外気が第1吸気口152aを介して流路101内に導入されるようになる。
【0041】
回転板192は、図10および図11(B)に示す第2の状態においては、第1吸気口152aを遮蔽する位置に配置される。したがって、第2の状態においては、第1吸気口152aがネブライザ100Cの外部と連通していない状態にある。そのため、吸気弁140は、逆止弁としての機能を果たすことはない。一方、第2吸気口152bは、ネブライザ100Cの外部と連通した状態にあり、その結果この第2吸気口152bを介して流路101とネブライザ100Cの外部とが連通した状態にある。したがって、第2吸入口152bは常時連通した状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって外気が第2吸気口152bを介して流路101内に導入されるようになる。
【0042】
以上の構成を採用することにより、回転板をキャップ体の外表面において回転させるという非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能になるため、適量のエアロゾルの噴霧を使用者に負担を強いることなく実現できるようになる。また、吸気弁の有無の切り替えを行うために吸気弁のみを装置本体から取外す必要もないため、吸気弁を破損したり、紛失したりすることも防止可能となる。したがって、取扱い性に優れた吸入器とすることができる。
【0043】
なお、上記のように本実施の形態における吸入器にあっては、遮蔽部としての回転板をキャップ体の外表面上に設けた場合を例示して説明を行なったが、遮蔽部としての回転板をネブライザの内部に設ける構成としてもよい。その場合には、遮蔽部としての回転板が流路を規定するケース体の内表面上やキャップ体の内表面上などに配設されることになる。
【0044】
(実施の形態4)
図12(A)および図12(B)は、本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図であり、図13は、本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の断面図である。また、図14は、本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の斜視図である。これら図12ないし図14においてはマウスピースの図示は省略し、また、図12(B)および図13においてはネブライザの内部機構についてはその図示を省略している。なお、上述の実施の形態1における吸入器のネブライザ100Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0045】
図12ないし図14に示すように、本実施の形態における吸入器のネブライザ100Dにおいては、キャップ体150の所定位置に吸気口152が設けられている。キャップ体150は、その中央部に支持部193aを有しており、この支持部193aによって位置変更手段としてのロッド193が移動自在に支持されている。ロッド193の下端部には、吸気弁140が固定されている。この吸気弁140は、吸気口152を閉塞可能なものであり、流路101の内圧とネブライザ100Dの外部の圧力との圧力差を利用して上記吸気口152を開閉する逆止弁である。
【0046】
図12に示す第1の状態においては、ロッド193が上方に引き上げられた状態にある。この状態においては、吸気弁140が流路101の内圧とネブライザ100Dの外部の圧力との圧力差を利用して上記吸気口152を開閉可能な位置にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって吸気弁140が下方に押し下げられ、流路101とネブライザ100Dの外部とが連通する。したがって、上記負圧によって外気が吸気口152を介して流路101内に導入されるようになる。
【0047】
図13および図14に示す第2の状態においては、ロッド193が下方に押し下げられた状態にある。この状態においては、吸気弁140が流路101の内圧とネブライザ100Dの外部の圧力との圧力差を利用して上記吸気口152を開閉することができない位置にあり、吸気弁140は、逆止弁としての機能を果たすことはない。したがって、吸入口152は常時連通した状態にあり、使用者がエアロゾルを吸入した際に流路101内が負圧となって外気が吸気口152を介して流路101内に導入されるようになる。
【0048】
以上の構成を採用することにより、ロッドを引き上げたり押し下げたりするという非常に簡単な作業で吸気弁の有無を切り替えることが可能になるため、適量のエアロゾルの噴霧を使用者に負担を強いることなく実現できるようになる。また、吸気弁の有無の切り替えを行うために吸気弁のみを装置本体から取外す必要もないため、吸気弁を破損したり、紛失したりすることも防止可能となる。したがって、取扱い性に優れた吸入器とすることができる。
【0049】
上述の実施の形態1ないし4においては、コンプレッサ式の吸入器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、超音波式の吸入器や超音波振動式と呼ばれる形式の吸入器にも当然に本発明を適用することは可能である。
【0050】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1における吸入器の装置構成を示す外観図である。
【図2】図1に示す吸入器のネブライザの組付構造を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示すネブライザの組付後において吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図4】図2に示すネブライザの組付後において吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における吸入器において、第1の状態と第2の状態とを切り替える具体的な操作方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合と吸気弁が機能しない第2の状態とした場合とを示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合と吸気弁が機能しない第2の状態とした場合とを示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能する第1の状態とした場合の上面図および断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の断面図である。
【図14】本発明の実施の形態4における吸入器のネブライザにおいて吸気弁が機能しない第2の状態とした場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 吸入器、10 コンプレッサ、20 チューブ、100A〜100D ネブライザ、101 流路、110 ケース体、112 接続部、114 圧縮空気導入管、116 貯留部、117 切り欠き部、118 アライメントマーク、120 霧化部形成体、122 バッフル、124 吸液管形成部、130 流路形成体、132 遮蔽部形成壁部、140 吸気弁、142 取付部、150 キャップ体、152 吸気口、152a 第1吸気口、152b 第2吸気口、154 隔壁、157 突起部、158 アライメントマーク、160 マウスピース、170 呼気弁、180 固定部材、191 スライダ、192 回転板、192a 軸部、193 ロッド、193a 支持部、200 液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流が流動する流路を規定し、装置外部から前記流路に外気を導入するための第1および第2吸気口が設けられた流路壁と、
前記流路に設けられ、貯留部に貯留された液体を霧化する霧化部と、
前記霧化部にて生成されたエアロゾルを含む気流を装置外部に吐出する吐出部と、
前記第1吸気口が設けられた部分の前記流路壁に取り付けられ、前記流路と装置外部との圧力差を利用して前記第1吸気口を開閉する吸気弁と、
前記第1および第2吸気口のうちのいずれか一方を選択的に遮蔽可能な遮蔽部とを備え、
前記遮蔽部によって前記第2吸気口が遮蔽され、前記圧力差を利用した前記第1吸気口を介しての外気の導入が可能な第1の状態と、前記遮蔽部によって前記第1吸気口が遮蔽され、前記第2吸気口を介した前記流路と装置外部との連通が常時維持される第2の状態とに切り替え可能に構成された、吸入器。
【請求項2】
当該吸入器は、前記第1および第2吸気口が設けられていない部分の前記流路壁を含むケース体と、前記第1および第2吸気口が設けられた部分の前記流路壁を含むキャップ体とを有し、前記ケース体に前記キャップ体が取り付けられることによって構成され、
前記遮蔽部は、前記ケース体に設けられた部分の前記流路壁によって構成され、
前記ケース体に対する前記キャップ体の相対的な取付け位置を変更することにより、前記第1の状態と前記第2の状態との切り替えが可能に構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記流路壁の表面上においてスライド移動可能に取り付けられたスライダによって構成され、
前記スライダを移動させることによって前記流路壁の表面上における前記スライダの相対的な位置を変更することにより、前記第1の状態と前記第2の状態との切り替えが可能に構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記遮蔽部は、前記流路壁の表面上において前記表表面と平行な方向に配置された回転軸を中心に回転可能に取り付けられた回転板によって構成され、
前記回転板を回転させることによって前記流路壁の表面上における前記回転板の相対的な位置を変更することにより、前記第1の状態と前記第2の状態との切り替えが可能に構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
気流が流動する流路を規定し、装置外部から前記流路に外気を導入するための吸気口が設けられた流路壁と、
前記流路に設けられ、貯留部に貯留された液体を霧化する霧化部と、
前記霧化部にて生成されたエアロゾルを含む気流を装置外部に吐出する吐出部と、
前記流路と装置外部との圧力差を利用して前記吸気口を開閉することが可能に構成された吸気弁と、
前記吸気弁の前記流路中における相対的な配置位置を選択的に変更可能な位置変更手段とを備え、
前記吸気弁が前記圧力差を利用した前記吸気口の開閉が可能な位置に配置され、前記圧力差を利用した前記吸気口を介しての外気の導入が可能な第1の状態と、前記吸気弁が前記圧力差を利用した前記吸気口の開閉が不能な位置に配置され、前記吸気口を介した前記流路と装置外部との連通が常時維持される第2の状態とに切り替え可能に構成された、吸入器。
【請求項6】
前記位置変更手段は、前記吸気弁に一端部が固定されるとともに他端部が前記流路壁によって移動自在に支持されたロッドによって構成され、
前記ロッドの前記流路壁に対する相対的な位置を変更することにより、前記第1の状態と前記第2の状態との切り替えが可能に構成されている、請求項5に記載の吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−255308(P2006−255308A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79991(P2005−79991)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)