説明

吸収性物品

【課題】液の滲み出しを防止できると共に汗の蒸散性に優れた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、親水性の表面シート2、防水透湿フィルム31を含む裏面シート3及びこれら両シート間に配された吸収体4を備えており、吸収体4の吸収性物品長手方向の延長上に位置するウエスト部分WAに、表面シート2と防水透湿フィルム31とが一体化し且つ該表面シート2が防水化したエンボス部8を有しており、該エンボス部8に、表面シート2及び防水透湿フィルム31を貫通する貫通孔81が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗の蒸散性に優れた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ内の湿度の軽減等の観点から、使い捨ておむつの所定の部位に、おむつを厚み方向に貫通する通気孔を設けることが行われている。
例えば、特許文献1には、透水性不織布、不透水性フィルム及び透水性不織布の積層体からなる使い捨てパンツ型着用物品に、該積層体を貫通する通気孔を設けることが記載されている。
また、特許文献2には、前ウエスト域及び後ウエスト域を構成するベルト部材と、前後のウエスト域間に位置する股下域を構成する吸液構造体とを含む吸収性物品における前記ベルト部材に複数の通気孔を形成することが記載されている。
【0003】
特許文献3には、通気孔や貫通孔を設けることは記載されていないが、おむつの防水性バックシートの外面に、親水性及び通気性を有する外装シートを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−57410号公報
【特許文献2】特開2009−61127号公報
【特許文献3】特開平3−231660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における通気孔は、吸収体の両側縁に沿って設けられた左右のバリヤーフラップの更に外側に形成されており、該吸収体の長手方向の延長上に形成されていない。そのため、汗の蒸散性の向上効果が不充分である。
特許文献2における通気孔は、ベルト部材に移動した尿が、その通気孔を介して外部に滲み出す虞がある。
特許文献3の技術は、汗の蒸散性を向上させるものではない。
【0006】
従って、本発明は、液の滲み出しを防止できると共に汗の蒸散性に優れた吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、親水性の表面シート、防水透湿フィルムを含む裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体を備えた吸収性物品であって、前記吸収体の吸収性物品長手方向の延長上に位置するウエスト部分に、前記表面シートと前記防水透湿フィルムとが一体化し且つ該表面シートが防水化したエンボス部を有しており、該エンボス部に、前記表面シート及び前記防水透湿フィルムを貫通する貫通孔が形成されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品は、液の滲み出しを防止できると共に汗の蒸散性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の使い捨ておむつを示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】エンボス部及び貫通孔の好ましい寸法や配置を示す拡大平面図である。
【図4】図1の使い捨ておむつの作用効果の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態の使い捨ておむつを示す図(図2相当図)である。
【図6】第2実施形態の使い捨ておむつの作用効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の吸収性物品の第1実施形態である使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1ともいう)は、図2に示すように、親水性で液透過性の表面シート2、防水透湿フィルム31を含む裏面シート3及びこれら両シート2,3間に配された吸収体4を備えている。
おむつ1は、図1に示すように、その長手方向に、着用時に着用者の背中側に配される背側部A、着用者の腹側に配される腹側部B及び股間部に配される股下部Cを有している。おむつ1は、いわゆる展開型のおむつであり、背側部Aの両側縁部に設けられたファスニングテープ5,5を、腹側部Bの外面に設けられたランディングテープ6に止着することにより、身体に装着する。
おむつ(吸収性物品)の長手方向とは、着用時に、着用者の前後方向と一致する方向であり、図中X方向である。おむつ(吸収性物品)の幅方向は、おむつ(吸収性物品)の長手方向に直交する方向であり、図中Y方向である。
【0011】
おむつ1の長手方向の両側部には、撥水性不織布からなるサイドシート7が、表面シート2の両側部を覆うように配されている。サイドシート7のおむつ幅方向中央側の側縁の近傍には、弾性部材71が伸長状態で固定されており、該弾性部材71の収縮により、股下部Cの左右一対のサイド立体ギャザーが形成される。
【0012】
表面シート2は、平面視矩形状をなし、おむつ1の長手方向の全長に亘って配されている。表面シート2の長手方向の両側縁21,21は、おむつ1の幅方向において、吸収体4の側縁よりやや外方に位置している。
裏面シート3は、おむつ1の外形と略同形の外形を有している。裏面シート3は、矩形状の防水透湿フィルム31と、おむつ1の外形と略同形の外装不織布32との積層体からなる。防水透湿フィルム31と外装不織布32との間は、両者が積層されている部分の略全域に亘って接着剤で接合されている。この接着剤の塗工パターンは、ベタ塗り等の全面塗工でも良いし、スパイラル、ドット、ストライプ、千鳥格子等のパターン塗工でも良いが、パターン塗工が好ましい。防水透湿フィルム31は、おむつ1の長手方向の全長に亘って配されている。防水透湿フィルム31の長手方向の両側縁31a,31aは、おむつ1の幅方向において、吸収体4の側縁より外方に位置している。
【0013】
股下部Cにおけるサイドシート7は、表面シート2の側縁21の近傍に、サイド立体ギャザーの起立基端(固定端)となる、表面シート2との接合部(図示略)を有している。また、サイドシート7は、おむつ1の長手方向両端部において、その幅方向の略全域が、表面シート2又は該表面シート2から延出した裏面シート3上に接着剤(ホットメルト型接着剤等)により接合されている。
【0014】
おむつ1は、吸収体4のおむつ長手方向の延長上に位置するウエスト部分WA,WBに、図2及び図3に示すような、エンボス部8を有している。
エンボス部8は、少なくとも親水性の表面シート2と防水透湿フィルム31とを重ねた状態で、それらにエンボス加工を施して形成されたものであり、該エンボス加工によって、表面シート2と防水透湿フィルム31とが接合一体化されている。また、エンボス部8の中央部には、少なくとも親水性の表面シート2及び防水透湿フィルム31を貫通する貫通孔81が形成されている。
本実施形態におけるエンボス部8は、図3に示すように、表面シート2及び防水透湿フィルム31に加えて外装不織布32も重ねた状態で、それらにエンボス加工を施して形成されたものであり、該エンボス加工によって、表面シート2及び防水透湿フィルム31に加えて外装不織布32も一体化されている。また、貫通孔81は、表面シート2、防水透湿フィルム31及び外装不織布32を貫通し、おむつ1の肌当接面側と非肌当接面側とを連通している。
【0015】
また、エンボス部8においては、エンボス加工によって、表面シート2が防水化している。即ち、おむつ1に用いる表面シート2は、親水性の不織布からなり、例えば、吸収体4上に位置する部分においては液が該不織布内に染み込み、該液を吸収体4に向かって良好に透過させるが、エンボス部8においては、エンボス加工の際に加熱及び加圧されることによって、繊維の構成成分が溶融固化して防水化している。
【0016】
エンボス部8においては、表面シート2における貫通孔81以外の部分が防水化している。表面シート2の防水化した部分は、表面シート中に染み込み該表面シート中を移動してきた汗が、貫通孔81に向かって更に移動することを阻止する。それにより、汗が液体のまま貫通孔81を介して外部に流出することが防止される。また、吸収体4上に排泄された尿は、吸収体4の端部の位置を越えてウエスト部分WA,WBまで拡散することは少ないが、何らかの理由により、表面シート中を拡散した尿が、ウエスト部分WA,WBに設けたエンボス部8に達した場合においても、前述した防水化した部分の存在により、その尿が貫通孔81を介して外部に流出することが防止される。なお、エンボス部8においては、表面シート2の構成繊維が溶融固化してフィルム化していることも好ましい。
【0017】
防水化の手段としては、a)表面シートを構成する不織布の繊維を熱溶融させて、該不織布の繊維間を狭めるか、あるいは該不織布の繊維間を無くしてフィルム化させる方法、及びb)貫通孔の周囲が親水化していない表面シートを用いる方法等が挙げられる。貫通孔周辺の非親水化部分は、不織布の製造後の撥水状態のままの部分であっても良いし、一旦親水化させた不織布の貫通孔周辺を再び撥水化処理したものであっても良い。
【0018】
表面シート2の一部を防水化(撥水化)する観点から、エンボス加工は、熱エンボス又は超音波エンボスであることが好ましい。また、エンボス部8は、表面シート2の肌当接面側が凹んでいることが好ましい。貫通孔81は、エンボス部8の形成と同時に形成したものでも、該エンボス部8の形成後に形成したものでも良い。エンボス部8の形成と同時に形成する方法としては、例えば、扁平円柱状の台座部と該台座部上に設けた小突起とを備えたエンボスロール及び受けロールを用い、台座部で、表面シート2及び防水透湿フィルム31を加熱及び加圧すると同時に、小突起でそれらに孔を開ける方法等を用いることができる。エンボス部8の形成後に形成する方法としては、エンボス部8の形成後のシートを延伸して該エンボス部8の中央部に裂け目を形成する方法や、エンボス部8の形成後に該エンボス部8に針や突起を突き刺したりやエンボス部の中央部を打ち抜く方法等を用いることができる。
【0019】
表面シート2に用いる不織布は、熱可塑性樹脂を成分に含む合成繊維を主体として構成されていることが好ましい。そのような合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン(登録商標)等のポリアミド等からなる繊維や、これらの2種以上の樹脂成分を含む複合繊維等が挙げられる。複合繊維としては、融点の高い樹脂を芯とし且つ融点の低い樹脂を鞘とした芯鞘型複合繊維や、サイド−バイ−サイド型複合繊維等も好ましく用いられる。
【0020】
表面シート2に用いる不織布は、その構成繊維中、熱可塑性樹脂を成分に含む合成繊維の割合が、50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。熱可塑性樹脂を成分に含む合成繊維以外の繊維を併用する場合の該繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、コットン等の天然繊維が挙げられる。
また、表面シート2に用いる不織布は、単層構造であっても良いし、2層構造のもの等、多層構造のものであっても良い。多層構造の不織布は、前述した合成繊維の割合が、最も肌当接面側に位置する層中において上記の範囲内であることも好ましい。が、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、表面シート2に用いる不織布は、各種公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば、カード法又はエアレイ法により製造した繊維ウエブに熱風処理を施し繊維の交点を熱融着させて得られるエアスルー不織布や、同様にして得られた繊維ウエブにエンボス加工により小エンボス部をドット状に形成して不織布化した不織布、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンレース法等により製造された不織布等を用いることもできる。
図3には、表面シート2として、カード法又はエアレイ法により製造した繊維ウエブにエンボス加工により小エンボス部22をドット状に形成して不織布化した不織布を用いた例を示した。図3に示すように、エンボス部8間に、肌当接面側が凹状をなす小エンボス部22を有することによって、肌との間に微小空間が形成され、発汗時のドライ感が向上する。
【0022】
また、親水性の不織布は、繊維の段階若しくはウエブ又は不織布の状態で親水化剤で処理(例えば、スプレー、浸積等による塗工等)したものの他、繊維原料に親水化剤を練り込んでおき、紡糸後にブリードアウトさせたもの等を用いることもできる。
親水化剤としては、当該技術分野において用いられているものと同様のものを用いることができる。そのような親水化剤としては、各種の界面活性剤が典型的なものとして挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0023】
アニオン性の界面活性剤の例としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩、セカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩等が挙げられる(いずれのアルキルも炭素数6〜22、特に8〜22が好ましい)。これらは、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。
カチオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0024】
両性イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、グリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
ノニオン性の界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2〜10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8〜22)、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物(好ましくは付加モル数2〜20モル)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0026】
防水透湿フィルム31としては、各種公知の透湿性且つ防水性のフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、該シートを一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが挙げられる。
【0027】
また、外装不織布32としては、各種公知の方法で製造された不織布を用いることができる。例えば、カード機又はエアレイ法により製造した繊維ウエブに熱風処理し繊維の交点を熱融着させて得られるエアスルー不織布や、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンレース法等により製造された不織布等を用いることもできる。外装不織布32は、親水性でも撥水性でも良い。
【0028】
おむつ1における、吸収体4、ファスニングテープ5、ランディングテープ6、サイドシート7、弾性部材71としては、それぞれ、この種の物品に従来使用されているものを特に制限なく使用することができる。例えば、吸収体4としては、粉砕パルプ等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに高吸水性ポリマーの粒子等を保持してなる吸収性コアを、ティッシュペーパや透水性の不織布等からなるコアラップシートで被覆してなるもの等を用いることができる。
【0029】
本実施形態のおむつ1は、通常の展開型おむつと同様にして使用することができる。
本実施形態のおむつ1によれば、前記ウエスト部分WA,WBに、前述した貫通孔81を有するエンボス部8を有するため、該貫通孔81を介して、おむつ1の内外の通気が促進される。他方、エンボス部8は、貫通孔81の周囲に、表面シートが撥水化した部分を有するため、表面シート2上や表面シート2中を拡散した液が、該エンボス部8や貫通孔81から外部に滲みだして漏れ出すことが防止される。
これにより、おむつ1は、液の滲み出しを防止できると共に汗の蒸散性に優れている。
【0030】
また、おむつ1におけるエンボス部8は、図1又は図3に示すように、おむつの長手方向(Y方向)に延びるエンボス部列80を形成するように複数形成されている。 ウエスト部分WA,WBに、このようなエンボス部列80を有することにより、おむつ1が、エンボス部列80を支点に幅方向に折れ曲がり易くなるため、おむつ1を装着した際に、エンボス部列80と着用者の肌Sとの間に通気路Dが形成され易い。更に、通気路Dに沿って、貫通孔81が配列されているため、通気が一層促進され、尿や汗などによるムレが一層軽減される。
エンボス部列80は、図3に示すように、おむつ1の幅方向(X方向)に間隔を開けて複数本形成されていることが、通気の一層の促進や、尿や汗などによるムレの一層の軽減等の観点から好ましい。
【0031】
通気路Dの形成性やエンボス部列80に沿う折れ曲がり易さの向上の点から、エンボス部列80内のエンボス部8のピッチP1は、おむつ1の幅方向(X方向)におけるエンボス部列80のピッチP2(図3参照)よりも短いことが好ましく、両ピッチの比(P1/P2)は、0.1〜0.8、特に0.2〜0.6であることが好ましい。
また、同様の観点から、貫通孔81は、おむつ1の長手方向に長い形状であることが好ましく、おむつ長手方向(X方向)の寸法L1の、おむつ幅方向(Y方向)の寸法L2に対する比(L1/L2)は、1.1〜40、特に2〜10であることが好ましい。
また、エンボス部8のおむつ長手方向(X方向)の寸法L3は、貫通孔81の同方向の寸法L1に対する比(L3/L1)が、1.2〜10、特に1.5〜5であることが好ましく、エンボス部8のおむつ幅方向(Y方向)の寸法L4は、貫通孔81の同方向の寸法L2に対する比(L4/L2)が、1.2〜20、特に5〜10であることが好ましい。
また、貫通孔81の面積も含めたエンボス部8の面積に対する貫通孔81の面積の割合は、0.1〜50%、特に0.5〜10%であることが好ましい。また、個々の貫通孔81の開口面積ないし断面積は、汗の蒸散性の向上と尿の滲み出し防止を両立するという観点から、0.05〜5mm2、特に0.08〜2mm2であることが好ましい。
なお、一本のエンボス部列80を構成するエンボス部の個数は、例えば、2〜20個とすることができ、3〜10個、特に5〜8個であることが好ましい。
【0032】
また、おむつ1におけるウエスト部分WA,WBは、図4に示すように、隣り合うエンボス部列80,80間に、親水性の表面シート2と防水透湿フィルム31との間が接合されていない領域Eを有している。また、各エンボス部列80においても、X方向に隣り合うエンボス部8,8間に、親水性の表面シート2と防水透湿フィルム31との間が接合されていない領域を有している。
エンボス部列間やエンボス部間が接合されていないことにより、エンボス部列とそれ以外の部分、あるいはエンボス部8とそれ以外の部分との間の厚み差が大きくなり、エンボス部列やエンボス部と着用者の肌Sとの間に隙間が生じやすくなり、通気路Dをより確実に生じさせることができる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態の使い捨ておむつ1’について図5を参照して説明する。第2実施形態のおむつ1’については、主として第1実施形態のおむつ1と異なる点について説明し、同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第2実施形態について特に説明しない点は、第1実施形態と同様である。
【0034】
第2実施形態のおむつ1’においても、ウエスト部分WA,WBに、図1及び図3に示す配置と同様の配置でエンボス部8’が形成されている。
おむつ1’におけるエンボス部8’は、親水性の表面シート2及び防水透湿フィルム31のみを重ねた状態でそれらにエンボス加工を施して形成されており、エンボス部8’においては、親水性の表面シート2及び防水透湿フィルム31のみが、エンボス加工により一体化されている。他方、外装不織布32は、防水透湿フィルム31における表面シート2側とは反対側にエンボス加工以外の方法によって一体化されている。具体的には、防水透湿フィルム31と外装不織布32との間は、接着剤(ホットメルト型接着剤等)によって接合されている。この接着剤の塗工パターンは、全面塗工でもパターン塗工でも良いが、パターン塗工が好ましい。
【0035】
おむつ1’における外装不織布32としては、親水性の不織布を用いる。この親水性の不織布としては、第1実施形態のおむつ1の表面シートに用いる不織布として上述したもの等を用いることができる。
【0036】
また、おむつ1’においては、吸収体4の長手方向の両端42それぞれをX方向に跨ぐように2枚のバリアシート9(背側部側のもののみ図示)が配されている。バリアシート9は、液不透過性又は液難透過性であり、樹脂フィルムや撥水性不織布からなる。
【0037】
第2実施形態のおむつ1’においては、エンボス部8’の中央部に孔81’が開いており、また、外装不織布32が親水性であることによって、多量に発汗し、エンボス部分に汗が溜まってしまった場合にも、エンボス部中央の孔81’を通して外装不織布32に移行することによって溜まった汗を肌側から遠ざけることができる。エンボス部の中央部の孔81’付近に外装不織布32の繊維が存在することにより、外装不織布32への汗の拡散が促進される。また、図6に示すように、外装不織布32内を汗が拡散して、外装不織布32から汗が効率良く蒸散される。
【0038】
おむつ1’における外装不織布32は汗の蒸散性の向上させる観点から、液の拡散性が高い不織布を用いることが好ましい。
【0039】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に制限されず、種々の変更が可能である。
例えば、エンボス部8,8’及び貫通孔81,81’の平面視形状は、それぞれ、円形に限られず、楕円形、長円形、縦長長方形、正方形、菱形、三角形等、他の形状とすることもできる。エンボス部8,8’と貫通孔81,81’の形状は異なる形状であっても良い。
【0040】
また、エンボス部8,8’は、背側部A側のウエスト部分WA及び腹側部B側のウエスト部分WBの何れか一方のみに形成されていても良い。また、貫通孔81を有するエンボス部8又は貫通孔81’を有するエンボス部8’に加えて、貫通孔81,81’が形成されていないエンボス部とが混在していても良い。
【0041】
また、第1実施形態のおむつ1の外装不織布32に代えて、貫通孔81と対応する位置に孔を有するが、表面シート2及び防水透湿フィルム31とは一体的にエンボス加工が施されていない外装不織布32を設けることもできる。また、第1実施形態のおむつ1における外装不織布32をなくした構成とすることもできる。
【0042】
また、第2実施形態のバリヤシート9を、第1実施形態のおむつ1に設けても良い。また、第2実施形態のおむつ1’からバリヤシート9をなくした構成とすることもできる。また、バリヤシート9は、図5に示すように、X方向の一端が表面シート2に接合され、X方向の他端が表面シート2に接合されていないものに代えて、X方向の全域において表面シート2上に接合されているものを用いることもできる。また、バリヤシート9を、表面シート2に隣接させ、該表面シートの非肌当接面側に配することもできる。
【0043】
また、本発明の吸収性物品は、展開型の使い捨ておむつの他、パンツ型の使い捨ておむつやショーツ型の生理用ナプキン、失禁パッド等に適用することも容易である。
【0044】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,1’ 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
31 防水透湿フィルム
32 外装不織布
4 吸収体
5 ファスニングテープ
6 ランディングテープ
7 サイドシート
8,8’ エンボス部
81,81’ 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の表面シート、防水透湿フィルムを含む裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体の吸収性物品長手方向の延長上に位置するウエスト部分に、前記表面シートと前記防水透湿フィルムとが一体化し且つ該表面シートが防水化したエンボス部を有しており、該エンボス部に、前記表面シート及び前記防水透湿フィルムを貫通する貫通孔が形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記エンボス部が、吸収性物品の長手方向に延びるエンボス部列を形成するように複数形成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記エンボス部列が、吸収性物品の幅方向に間隔を開けて複数本形成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
隣り合うエンボス部列間に、親水性の表面シートと防水透湿フィルムとの間が接合されていない領域を有する、請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記防水透湿フィルムにおける前記表面シート側とは反対側に、親水性の外装不織布が積層されており、前記エンボス部は、前記表面シート、前記防水透湿フィルム及び該外装不織布を一体化しており、前記貫通孔は、該外装不織布をも貫通している、請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記防水透湿フィルムにおける前記表面シート側とは反対側に、親水性の外装不織布が積層されており、前記エンボス部は、前記表面シートと前記防水透湿フィルムとの間のみを接合し、前記貫通孔は、該外装不織布を貫通していない、請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182816(P2011−182816A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47976(P2010−47976)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】