説明

吸収材

【課題】
古紙をリサクルでき、水などの吸収性に優れ、低コストで製造でき、かつ、リサイクル製品を使用した後でも環境への負荷が少ない吸収材を提供する。
【解決手段】
古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物とバージンパルプとからなる植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とからなり、その割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=40〜90質量部:60〜10質量部であることを特徴とし、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=50〜95質量部:5〜50質量部であり、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物において、粉砕後の破片の最大長さが0より大きく、5.0mm以下であり、嵩密度が0.03〜0.05g/cm3であり、平均繊維長が0.3〜5.0mmであり、繊維長の加重平均が0.5〜10mmであり、平均繊維幅が0.01〜0.07mmであることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収材に関し、さらに詳しくは、古紙をリサイクルするため、古紙を含んでも、水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れ、かつ、使用後の環境への負荷が少ない吸収材に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の吸収材の主なる用途としては、紙オムツ、生理用ナプキンや失禁パットなどの衛生材料、動物用排泄物処理材、家庭用廃棄油吸収材、ドリップシートなどの鮮度保持材、土壌改良材、種子被覆材、農薬や肥料の崩壊補助材などの農園芸用途材料、コンクリート養生材やシーリング材などの建材シート、ヘドロや汚泥の固化材、携帯用トイレ、汚物処理袋などのトイレタリー用品、傷被覆材や湿布材などのメディカル用品などである。しかしながら、水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れ、かつ、使用後の環境への負荷が少ない用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)紙を用いた雑誌、新聞や紙箱などから発生する古紙の量は膨大である。古紙の多くは廃棄され、一部が回収されて玩具の外箱用のボール紙などへリサイクルされている。しかしながら、これらのリサイクル製品も使用後においては、再び廃棄物となって焼却などされるために、環境への負荷が大きい。そこで、古紙を含み、かつ、古紙を多く含ませることができ、古紙を含んだリサイクル製品が安価に製造でき、該リサイクル製品の使用後も環境への負荷の少ない用途が求められている。一方、吸収性樹脂を含む吸収材としては、紙オムツなどの衛生材料に使用されているが、該吸収性樹脂は石油由来であり、高価であり、生分解性がなく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。また、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため環境への負荷が大きい。
従って、吸収材は、古紙をリサクルでき、リサイクルしたリサイクル製品が低コストで製造でき、該リサイクル製品は水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れ、かつ、該リサイクル製品を使用した後でも環境への負荷が少ないことが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、生分解性を有する吸水性樹脂としては、ガラクトマンナンとホウ酸イオン及び(又は)ホウ酸以外の多価金属イオンから成る吸水樹脂など)、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる本高分子含水ゲル複合体、架橋ポリアミノ酸重合体を含有する吸収樹脂が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかしながら、これらの生分解性吸収樹脂は、シート状に加工するのが困難であり、また、その単品で使用するとコストが高いという問題点がある。
また、吸収性樹脂を含む吸収材としては、紙オムツなどの衛生材料が知られている(例えば、特許文献4〜6参照。)。しかしながら、該吸収性樹脂は石油由来であり、高価であり、生分解性がなく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。また、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため環境への負荷が大きいという欠点がある。
さらに、古紙を使用した吸収材が知られている(例えば、特許文献7〜10参照。)。特許文献7は、押出成形機にて押出成形した造粒物などで、押出成形による製造にあたって、押出成形機にかかる大きな負荷を解消を課題とし、植物繊維質成分及び澱粉質成分を骨格成分と共に高吸水性ポリマーを用いた成形体である。特許文献8は、水と有機溶剤が共存していると、水をあまり吸着せず有機溶剤を効率良く吸着することができないという課題を解消したもので、環境汚染を防止する関点から、有機溶剤を効率良く吸着する粉砕したサイズ剤入りの紙を用いて、粉砕したサイズ剤入りの紙同士を結合材で結合させてなるものである。特許文献9は、ペットの尿の吸収速度が遅く、また吸収後の処理材は全く固化しないため、使用後の煩雑処理を解消した排泄物用処理材で、古紙のスラッジに成形助材のクレー又はベントナイトを添加して造粒した粒状物基材の表面にノニオン系吸水性ポリマーを被覆したものである。特許文献10は、ペットなどの尿を少量で速やかに吸収し、衛生的であり、軽量であり、かつ尿を吸収後の処理材の塊が硬く固化され、また生分解性を有するのでトイレや下水道に流して処分するために、吸水材、有機物充填材、及び無機充填材から構成される動物の排泄物用処理材である。しかしながら、これら特許文献7〜10では、吸水材はいずれも造粒物であり、未だ吸水機能が低く、また、古紙のリサイクル化については記載も示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−37924号公報
【特許文献2】特開2004−285279号公報
【特許文献3】特開平11−60729号公報
【特許文献4】特開昭60−81120号公報
【特許文献5】特開昭61−10502号公報
【特許文献6】特開昭61−58657号公報
【特許文献7】特開平08−246398号公報
【特許文献8】特開平10−314582号公報
【特許文献9】特開2000−106779号公報
【特許文献10】特開2002−51659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、古紙をリサクルでき、リサイクルしたリサイクル製品が低コストで製造でき、該リサイクル製品は水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れ、かつ、該リサイクル製品を使用した後でも環境への負荷が少ない吸収材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる吸収材は、少なくとも植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とを含む吸収材において、前記植物繊維質成分が、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物とバージンパルプとからなり、その割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=40〜90質量部:60〜10質量部であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物とバージンパルプとの割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=50〜80質量部:50〜20質量部であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる吸収材は、上記植物繊維質成分と上記生分解性吸収性樹脂成分との割合が質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=50〜95質量部:5〜50質量部であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる吸収材は、上記植物繊維質成分と上記生分解性吸収性樹脂成分との割合が質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=70〜90質量部:10〜30質量部であるように、したものである。
請求項5の発明に係わる吸収材は、上記生分解性吸収性樹脂成分が、ガラクトマンナンとチタン若しくはジルコニウムから成る吸水体、架橋ポリアミノ酸重合体を含有する吸水材、及び/若しくは、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる高分子含水ゲル複合体であるように、したものである。
請求項6の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物において、粉砕後の破片の最大長さが0より大きく、5.0mm以下であるように、したものである。
請求項7の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の嵩密度が0.03〜0.05g/cm3であるように、したものである。
請求項8の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の平均繊維長が0.3〜5.0mmであるように、したものである。
請求項9の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の繊維長の加重平均が0.5〜10mmであるように、したものである。
請求項10の発明に係わる吸収材は、上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の平均繊維幅が0.01〜0.07mmであるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、古紙をリサクルでき、リサイクルしたリサイクル製品が低コストで製造でき、該リサイクル製品は水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れ、かつ、該リサイクル製品を使用した後でも環境への負荷が少ない吸収材が提供される。
請求項2の本発明によれば、古紙をより多くリサクルでき、リサイクルしたリサイクル製品がより低コストで製造できる吸収材が提供される。
請求項3〜5の本発明によれば、水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性により優れる吸収材が提供される。
請求項6〜10の本発明によれば、水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性により優れる吸収材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
(吸収材)本発明の吸収材は、少なくとも植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とを含み、前記植物繊維質成分は古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物(単に古紙とも略す)とバージンパルプとからなる。古紙とバージンパルプの割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=40〜90質量部:60〜10質量部、好ましくは50〜80質量部:50〜20質量部である。上記植物繊維質成分と上記生分解性吸収性樹脂成分との割合が質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=50〜95質量部:5〜50質量部、好ましくは70〜90質量部:10〜30質量部である。上記生分解性吸収性樹脂成分が、好ましくはガラクトマンナンとチタン若しくはジルコニウムから成る吸水体、架橋ポリアミノ酸重合体を含有する吸水材、及び/若しくは、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる高分子含水ゲル複合体である。
【0012】
従来の吸水樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸水できる樹脂であり、例えばアクリル系吸水材などが知られている。これらの吸水材は、その高い吸水性から広く使い捨て衛生用品に使用されている。しかし、これまでの吸水材は石油由来であり、生分解性がなく、それを含む衛生用品の処理方法に問題があった。紙おむつ、生理用品等の衛生材料に代表される使い捨て用途の場合に一般的に使用されている樹脂は分解性に乏しく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。
本発明の吸収材は、古紙とバージンパルプとの配合比を明確に設定した有機ベース基材(植物繊維質成分)に、生分解性吸水樹脂を含ませて、吸収材を製造する。古紙のインキなどを分離することなく、全量をリサイクルでき、しかも古紙の含有量を多くできるので、低コストでリサイクル製品が製造できる。従来の生分解性吸水樹脂を100%使用した吸水材と比較すると、低コストで安く製造することができる。本発明の吸収材は、水、油、溶剤及びゲルなどの吸収性に優れるので、少量の使用でよく、使用後の処分も容易である。リサイクル製品を使用後に廃棄しても、処分場において微生物の作用により分解されるので焼却や埋設処理する必要がなく、環境への負荷が少ない。本発明の吸収材により、容易に安全に、大量の古紙をリサイクルすることができる。
【0013】
(植物繊維質成分)植物繊維質成分はバージンパルプと古紙の粉砕物もしくは解繊物とからなる。
(バージンパルプ)バージンパルプは、例えば木材パルプ、コーンファイバー、または麻、棉、藁等より得られる繊維で、未使用のものである。
【0014】
(古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物)古紙の粉砕物もしくは解繊物とは、アート紙、コート紙、マットコート紙、中質コート紙、微塗工紙、上質紙、中質紙、グラビア用紙、下級紙(つや更、ラフ更)、インディアン紙、段ボール原紙、板紙、チップボール、包装用紙などの印刷済用紙や印刷加工途上での捨てられる部分を、粉砕若しくは解繊したものである。該古紙の粉砕物もしくは解繊物は単独又は複数の混合物として用いられる。古紙の粉砕物や解繊物は、新聞、雑誌、OA用紙、証券用紙、板紙、段ボールなどの古紙をハンマーミル、ターボミル、ターボカッターなどで、0.1〜50mm程度に粉砕すればよく、該解繊物は価格、入手の容易性の点で有利である。また、紙への印刷方式は特に限定されず、例えば、活版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、孔版印刷などがあり、色数も特に限定されず、例えば、片面につき単色〜8色刷程度とする。紙の坪量は20〜900g/m2の範囲であり、粉砕の作業性を考慮し、坪量30〜200g/m2が望ましい。坪量の極端に低い薄紙は剛性が低すぎるため粉砕機での加工性が悪く、坪量の極端に高い厚紙は、厚みがありすぎて粉砕機での加工において紙詰まり等の支障が発生しやすい。
【0015】
また、好ましくは、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物において、粉砕後の破片の最大長さが0より大きく5.0mm以下であり、嵩密度が0.03〜0.05g/cm3であり、平均繊維長が0.3〜5.0mmであり、繊維長の加重平均が0.5〜10mmであり、平均繊維幅が0.01〜0.07mmである。これらの範囲の詳細については、実施例の中で述べる。なお、破片とは粉砕物の破片であり、繊維の集合体であり、繊維とはパルプの繊維(セルロースファイバー)単体のことを示す。
【0016】
なお、破片の最大長さの測定方法は、古紙及びバージンパルプの粉砕物から目視にて最大破片を特定し、JIS1級金尺で、20倍ルーペを用いて、目視で測定した。
平均繊維長及び平均繊維幅は、Optest Equipment社製の繊維長・形状測定機FQAを使用して、古紙及びバージンパルプの粉砕物を純水で希釈し、希釈液をフローセルにて吸収し、CCDカメラにて繊維画像を撮影し、画像解析により繊維長及び繊維幅を測定し、平均したものである。繊維長の加重平均は、i=1,2,3・・n,n=iがn番目の繊維数、L=iがn番目の繊維長さとして、荷重平均Lw=ΣniLi2
ΣniLiから計算したものである。嵩密度(g/cm3)は、古紙及びバージンパルプ
の粉砕物を体積100cm3のスチール製容器に入れ、粉砕物が密になるように底部を弾性のない硬いゴムシート上で10〜20回たたき、試料が100cm3以上に加えられない時の重量を測定し、算出したものである。
【0017】
粉砕後の破片は形状が一定しないが、該破片の最大辺又は最大差し渡しの長さを本明細書では最大長さとし、該粉砕後の破片の最大長さを0より大きく5.0mm以下とする。破片の最大長さは、古紙を粉砕し、所定のフィルターを用いることで調整することができる。該破片の最大長を変化させて、該破片の残っている印刷文字の判読を評価した結果を表4に示す。表4に示すように、粉砕後の破片の最大長さがこの範囲を超えると、古紙に印刷されていた文字などが判読できてしまうからである。好ましくは、印刷用紙のネーム部分の文字は一般的に8級(2.0mm)から9級(2.25mm)以上の大きさのフォントが使用される点から2.0mm以下である。下限値は特になく0より大きければよい。
【0018】
【表4】

【0019】
古紙として、印刷済みのコート紙、微塗工紙、上質紙、及びラフ紙を、公知の粉砕機で粉砕し、4Φ、8Φ、12Φのフィルターを用いることで、粉砕度の異なる古紙粉砕物1〜12を得た。該古紙粉砕物の嵩密度、繊維長、繊維長の加重平均、繊維幅を表5に示す。なお、コート紙としては日本製紙社製の「オーロラコート」を、微塗工紙としては日本製紙社製の「NTVガイド用紙」を、上質紙としては日本製紙社製の「ピレーヌDX」を、ラフ紙としては明治製紙社製の「メイジラフ更」を用いた。
【0020】
【表5】

【0021】
また、嵩密度がこの範囲未満では、吸収材とした場合に吸水量が少なく、この範囲を超えると吸水量の増加率は少なく、また微粉砕するほど密度は向上し吸水量が増加するが、粉砕作業のために高コストとなってしまう。
【0022】
さらに、平均繊維長、繊維長の加重平均、及び/又は平均繊維幅が、それぞれの範囲未満の古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物を用いて作成した吸収材は固まりにくく、ムラが発生したり、繊維が粉状に脱落する危険性がある。また、平均繊維長、繊維長の加重平均、及び/又は平均繊維幅が、それぞれの範囲を超えた古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物を用いて作成した吸収材は、毛羽立ちし、繊維が抜け落ちたり、肌触りが悪い。
【0023】
(割合)古紙とバージンパルプとの割合は、質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=40〜90質量部:60〜10質量部とする。古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物が40質量部より少ないとバージンパルプを多く使用するため、コストメリットが少なく高コストとなり、また、90質量部を超えると古紙を使用することによる加工性の低下と、印刷インキ由来の着色による外観の色見の問題が出てくる。好ましくは、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=50〜80質量部:50〜20質量部である。
【0024】
(生分解性吸収性樹脂成分)生分解性吸収樹脂としては、天然高分子類(例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト重合体、その他のデンプン系天然高分子、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト重合体、カルボキシメチルセルロースの架橋体、その他のセルロース系天然高分子、ヒアルロン酸やアガロース等の多糖類系天然高分子類、コラーゲン、その他のたんぱく質、など)、ポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体)、アルギン酸架橋体、デンプン架橋体、ポリアミノ酸架橋体、ガラクトマンナン−金属イオン架橋体、キタンサンガム架橋体、ガラクトマンナンとチタン又はジルコニウムから成る吸水体、cis−1,2−ジオールを含む多糖類とホウ酸ナトリウムから成る吸水体、架橋ポリコハク酸イミドを含有する吸水体、架橋ポリアミノ酸重合体(架橋ポリアスパラギン酸や架橋ポリアミド酸重合体)を含有する吸水材、多糖類をポリカルボン酸で架橋してなる吸水材、ヒアルロン酸のポリカルボン酸架橋物、カルボキシアルキルセルロースやカルボキシアルキルデンプンのアミノ酸架橋物、カルボキシアルキルセルロースのポリカルボン酸架橋物、酸性多糖類の生分解性架橋剤による架橋物、ガラクトマンナンとホウ酸イオン及び(又は)ホウ酸以外の多価金属イオンから成るポリマー、ポリカルボン酸又はその塩で架橋されたカルボキシアルキル化ガラクトマンナン、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる本高分子含水ゲル複合体などが適用できる。
【0025】
好ましくは、生分解性と植物繊維質成分の結合の点で、ガラクトマンナンとチタン若しくはジルコニウムから成る吸水体、架橋ポリアミノ酸重合体を含有する吸水材、及び/若しくは、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる高分子含水ゲル複合体である。
【0026】
(割合)植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分との割合は、質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=50〜95質量部:5〜50質量部とする。植物繊維質成分が50質量部より少ないと、吸収部材としての保形性能が劣り、また生分解吸収樹脂が比較的高価なため、高コストとなる。植物繊維質成分が95質量部を超えると、吸収部材としての加工性(折込適正)が悪くなり、また、吸収性能が生分解吸収樹脂より劣るため、全体の吸収性能が減ずる問題が生じる。好ましくは、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=70〜90質量部:10〜30質量部である。
【0027】
(バインダ)植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とを積繊機でマット化する場合には、バインダは不要であり、植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とを積繊機で混練しながらマット化し乾燥するだけでよい。これは、生分解性吸収性樹脂が水分によって膨潤し粘着性を有するので、バインダがなくても付着する場合もあり、また、繊維質成分はバインダがなくとも、通常の紙のように水素結合などで結合することもできる。生分解性吸収性樹脂成分は、植物繊維質成分の表面へ付着したり、多少は含浸したりする場合もあるが、いずれでもよい。また、必要に応じて、CMC、PVA、PEG、グリセリン、エチレングリコールなどのバインダ成分を水溶液をスプレーなどで添加してもよい。
【0028】
(添加剤)吸水速度の向上などの目的で、単糖類、キレート剤などの有機化合物、無機塩類、コロイダルシリカ、層状珪酸塩、ゼオライト、タルク、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物を添加してもよい。さらに可塑剤、酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、防臭剤、消臭剤、顔料等を混合してもよい。
【0029】
(製造方法)本発明の吸収材は、次のような製造方法により製造することができる。古紙とバージンパルプを粗粉砕機に投入し、20〜30mm程度の大きさに粉砕、解繊する。その後、得られた粉砕物をさらに微粉砕機に投入し、さらに細かく粉砕、解繊する。得られた粉砕物を植物繊維質成分とし、該植物繊維質成分に生分解性吸収性樹脂成分とである生分解性樹脂を添加し、積繊機でマット化して、マット状(不織布状とのいう)の吸収材を製造すればよい。
【0030】
該マット状の吸収材は、さらに必要に応じて、折り畳んだり、折り込んだり、他の部材と積層したり、上下2枚の他の部材への間へ封入してりしてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1〜4)バージンパルプと、古紙としては100g/m2コート紙へ4色オフセット印刷した雑誌の断裁クズを用い、表1の割合で、古紙とバージンパルプを粗粉砕機に投入し、20〜30mm程度の大きさに粉砕、解繊する。その後、得られた粉砕物をさらに微粉砕機に投入し、さらに細かく粉砕、解繊する。得られた粉砕物を植物繊維質成分とし、該植物繊維質成分に生分解性吸収性樹脂成分としてグアガム(分子量55,000)を使用した固形分30質量%のグアガム誘導体−ジルコニウム架橋吸水樹脂の溶液を表1の割合(固形分としての割合、以下同様)で添加し、積繊機でマット化して、実施例1〜4のマット状(不織布状とのいう)の吸収材を得た。
【0033】
(比較例1〜2)バージンパルプ、古紙、生分解性吸収性樹脂の割合を、表1の割合とする以外は実施例1と同様にして、比較例1〜2の吸収材を得た。
【0034】
(実施例5〜8)生分解性吸収性樹脂成分として、固形分20質量%のポリ乳酸とけん化度95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる高分子含水ゲル複合体の溶液を用い、さらに、バージンパルプ、古紙、生分解性吸収性樹脂の割合を、表2の割合とする以外は実施例1と同様にして、実施例5〜8の吸収材を得た。
【0035】
(比較例3〜4)バージンパルプ、古紙、生分解性吸収性樹脂の割合を、表2の割合とする以外は実施例5と同様にして、比較例3〜4の吸収材を得た。
【0036】
(実施例9〜12)生分解性吸収性樹脂成分として、固形分10質量%の架橋ポリアスパラギン酸を含有する吸水性樹脂の溶液を、さらに、バージンパルプ、古紙、生分解性吸収性樹脂の割合を、表3の割合とする以外は実施例1と同様にして、実施例9〜12の吸収材を得た。
【0037】
(比較例5〜6)バージンパルプ、古紙、生分解性吸収性樹脂の割合を、表3の割合とする以外は実施例9と同様にして、比較例5〜6の吸収材を得た。
【0038】
(評価方法)得られた実施例1〜12、比較例1〜6の吸収材をコスト、加工性、純水吸収性で評価した。コストは、有機ベース基材(植物繊維質成分)部分を全量バージンパルプから製造したものと同程度以下を合格とし「◎印」で示し、20%以内で高いものも合格とし「○印」で示し、20%以上高いものを不合格とし「×印」で示した。加工性は、積繊機でマット化する際に、バージンパルプでの加工作業と同程度以上を合格とし「◎印」で示し、加工はやや劣るが実用上支障がないものも合格とし「○印」で示し、著しい支障が発生するものを不合格とし「×印」で示した。純水吸収性は、全量バージンパルプから製造したものと同程度以上を合格とし「◎印」で示し、著しく低下するものを不合格とし「×印」で示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
(評価結果)実施例2、6、10ではコスト、加工性、吸収性の全部が合格であった。実施例1、5、9では、加工性が「○」であったが、いずれも合格であった。実施例3、4、7、8、11、12では、コストが「○」であったが、いずれも合格であった。比較例1、3、5では、加工性が不合格であった。比較例2、4、6では、コストが不合格であった。
【0043】
(実施例13〜18、参考例1〜3)植物繊維質成分として、古紙(表5の古紙粉砕物1〜12)とバージンパルプとを用い、生分解性吸収性樹脂成分としては固形分20質量%のポリ乳酸と鹸化度95%以上のポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結乾燥して得られる高分子含水ゲル複合体の溶液を用い、古紙:バージンパルプ:生分解性吸収性樹脂=64:16:20の割合(いずれも固形分、質量基準)で、積繊機を用いてマット化してマット状の実施例13〜18、参考例1〜3の吸収材を得た。
【0044】
(評価、評価方法)実施例13〜18、参考例1〜3で得られた吸収材を、純水及び生理食塩水の吸収性で評価した。吸収性の測定は、蒸留水と生理食塩水(大塚生食注=大塚製薬社製、日本薬局方、生理食塩液、0.9%塩化ナトリウム水溶液)を対象として行った。すなわち、過剰の蒸留水又は生理食塩水に吸水材を10時間浸し、膨潤したゲルを150メッシュのワイヤーのふるいの上で10分間水切りを行い、膨潤したゲルの重量を測定し、膨潤前の吸水材の重量に減じた値を、吸水材の重量で除した値を吸水倍率(g/g)とした。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】

【0046】
(評価結果)参考例1〜3の吸収倍率は6.7〜8.7倍であったが、実施例13〜18の吸収倍率は、いずれも自重の10倍以上の吸収性があり、吸水材として充分な吸収性能を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも植物繊維質成分と生分解性吸収性樹脂成分とを含む吸収材において、前記植物繊維質成分が、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物とバージンパルプとからなり、その割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=40〜90質量部:60〜10質量部であることを特徴とする吸収材。
【請求項2】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物とバージンパルプ植物繊維質成分の割合が質量基準で、古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物:バージンパルプ=50〜80質量部:50〜20質量部であることを特徴とする請求項1記載の吸収材。
【請求項3】
上記植物繊維質成分と上記生分解性吸収性樹脂成分との割合が質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=50〜95質量部:5〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の吸収材。
【請求項4】
上記植物繊維質成分と上記生分解性吸収性樹脂成分との割合が質量基準で、植物繊維質成分:生分解性吸収性樹脂成分=70〜90質量部:10〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の吸収材。
【請求項5】
上記生分解性吸収性樹脂成分が、ガラクトマンナンとチタン若しくはジルコニウムから成る吸水体、架橋ポリアミノ酸重合体を含有する吸水材、及び/若しくは、ポリ乳酸とけん化度が95%以上であるポリビニルアルコールとを含有する水分散体を凍結解凍して得られる高分子含水ゲル複合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸収材。
【請求項6】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物において、粉砕後の破片の最大長さが0より大きく、5.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸収材。
【請求項7】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の嵩密度が0.03〜0.05g/cm3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸収材。
【請求項8】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の平均繊維長が0.3〜5.0mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸収材。
【請求項9】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の繊維長の加重平均が0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸収材。
【請求項10】
上記古紙の粉砕物及び/若しくは解繊物の平均繊維幅が0.01〜0.07mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸収材。

【公開番号】特開2007−222864(P2007−222864A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128775(P2006−128775)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】