説明

吸引ノズル

【課題】通常の集塵装置と組み合わせても十分な吸引力を有して溶接ヒュームを効率的に吸引可能な吸引ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る吸引ノズル10は、半環状のノズル本体11、吸引ノズル10を配管に固定する際の吸着力を発生する永久磁石12、吸引ノズル10を集塵装置に接続するための接続管13を備えている。溶接箇所に面するノズル本体11の前面板11aには、溶接箇所に沿って延在する吸引口としての複数の小孔15,16が開けられている。溶接箇所に近い複数の小孔15が第1の吸引口を構成し、外側の小孔16が第2の吸引口を構成する。吸引ノズル10を集塵装置に接続した状態で、被溶接部材である配管に設置すれば、溶接により発生する溶接ヒュームが、吸引口である小孔15,16から吸引・回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置の先端に取り付けられる吸引ノズルに関し、特に、溶接作業時に発生する煙やガス等を吸引除去するための吸引ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接等によって配管を溶接する際には、酸化亜鉛や酸化鉄を主成分とする白煙状の溶接ヒュームが発生し、作業者の健康を害するおそれがあるため、作業所の換気を行ったり、作業者に防塵マスクを使用させたり等、種々の対策が取られているが、充分ではなかった。
【0003】
そこで、発生した溶接ヒュームを即座に回収すべく、集塵装置のホースの先端に接続した状態で溶接箇所近傍に配置して溶接ヒュームを吸引する吸引ノズルが開発されており、例えば、下記特許文献1及び2に開示されている
【特許文献1】特許第2732359号公報
【特許文献2】実開昭59−34875号公報
【0004】
上記特許文献には、溶接対象である配管の外周に取り付けるための円弧状の接触面を備えた吸引ノズルが開示されている。また、上記特許文献では、吸引ノズルの配管への接触部の側面を大きく開口し、この開口部を吸引口として溶接ヒュームを吸引している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の吸引ノズルは、溶接ヒュームを吸引するための吸引口が大きいため、通常の集塵装置と組み合わせたのでは吸引力が弱く、溶接によって発生する溶接ヒュームを十分に回収できていなかった。また、吸引力を上げるためには、吸引装置の容量を大きくする必要があるが、装置が大型化してしまい、可搬性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、通常の集塵装置と組み合わせても十分な吸引力を有して溶接ヒュームを効率的に吸引可能な吸引ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る吸引ノズルは、吸引口を溶接箇所近傍に設置して集塵装置に接続することで、溶接時に発生する溶接ヒュームを前記吸引口から吸引する吸引ノズルにおいて、内部空間を有し、溶接箇所近傍に設置された際に溶接箇所に対向する面に前記吸引口が形成されたノズル本体であって、前記吸引口が溶接箇所に沿って延在する多数の小孔からなるノズル本体と、前記ノズル本体の内部空間を前記集塵装置に接続するための接続部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る吸引ノズルは、前記吸引口が、溶接箇所に近い内側に位置する複数の小孔からなる第1の吸引口と、前記第1の吸引口の外側に位置する複数の小孔からなる第2の吸引口と、を少なくとも有することを特徴とし、内側の吸引口で吸引できなかった溶接ヒュームを、外側の吸引口で吸引できるので、より確実に溶接ヒュームの回収を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る吸引ノズルによれば、通常の集塵装置と組み合わせても十分な吸引力を有して溶接ヒュームを効率的に吸引可能な吸引ノズルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、図1乃至図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る吸引ノズルについて説明する。図1は、第1実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。図2は、第1実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。図3は、図2のA−A線における断面図である。図4は、第1実施形態に係る吸引ノズルの使用態様を示す図である。
【0011】
図1〜図3に示すように、吸引ノズル10は、半環状のノズル本体11、吸引ノズル10を配管に固定する際の吸着力を発生する永久磁石12、吸引ノズル10を集塵装置に接続するための接続管13を備えている。
【0012】
ノズル本体11は、厚さ1.6mmの薄鋼板製であり、所定の形状に成形された前面板11a、後面板11b、内面板11c、外面板11dを溶接により接続することで、内部に半環状空間を有するように形成されている。図3に示すように、この内部空間は、接続管13との接続部分の厚み(図中左右方向)が最も大きく、両端にいくに従って厚みが小さくなっている。
【0013】
このように、垂直に配置された前面板11aに対して、図3に示す下方側(両端側)が前面板11aに近づくように後面板11bは斜めに配置されており、これに伴い内面板11c及び外面板11dも両端に近づくにつれて幅が小さくなるように形成されている。このように、吸引ノズル10の内部空間が、集塵装置との接続部分である根元から先端に向けて徐々に先細りになるように構成すれば、距離による流速の低下を低減し、吸い込みにむらが発生するのを抑えることができる。
【0014】
前面板11aの壁面には、溶接ヒュームの吸引口である多数の小孔15,16が開けられている。この小孔15,16の直径は4mmである。内側の小孔15は、半輪状の前面板11aの半径方向の中央付近の円弧上に、4.5°間隔で39箇所に開けられている。また、外側の小孔16は、半輪状の前面板11aの外縁近傍の円弧上に、9°間隔で19箇所に設けられている。
【0015】
このように、吸引口として、多数の微小孔を採用すれば、従来と比べて吸引口のための開口面積を大幅に減らすことができる。よって、全体として同じ開口面積でも、広い範囲にわたって吸引口を配置することが可能となり、拡散する溶接ヒュームを広い範囲で吸引・回収することができる。
【0016】
また、微小孔であれば、容量の小さい集塵装置であっても吸引口での吸引圧を上げることができ、同じ容量の集塵装置であっても、従来の吸引ノズルと比較して、吸引口の設置場所を大幅に広げて吸引ノズルを延長することもできる。吸引ノズルを延長すれば、一度に溶接できる長さが長くなり、吸引ノズルの移動回数を減らして効率的な作業が可能になる。
【0017】
また、本実施形態に係る吸引ノズル10吸引口は、溶接箇所に沿って延在する複数の小孔15からなる第1の吸引口と、第1の吸引口の外側に延在する複数の小孔16からなる第2の吸引口とから構成されている。このような構成によれば、溶接箇所に近い場所に設置された第1の吸引口によって回収できなかった溶接ヒュームであっても、外側に配置された第2の吸引口によって回収することが可能であり、溶接ヒュームの回収率を大幅に向上させることが可能である。
【0018】
特に、本実施形態では、内側の第1の吸引口の開口面積は、外側の第2の吸引口の開口面積の2倍以上の広さになるように構成されており、さらに回収率を向上させている。すなわち、内側の吸引口では、溶接箇所との距離が近いため、開口面積を広くして、より多くの溶接ヒュームを回収すると共に、溶接箇所からの距離が遠い外側の吸引口では、溶接ヒュームもより拡散しているため、開口面積を小さくして強い吸引力で溶接ヒュームを回収している。
【0019】
次に、図1に示すように、内面板11cは、前面板11a及び後面板11bの内縁よりも若干後退した位置に配置され、内面板11c上には三箇所に永久磁石12が設置されている。この永久磁石12の表面が、前面板11a及び後面板11bの内縁と同位置になっている。吸引ノズル10を使用する際には、この永久磁石12の吸着力により、吸引ノズル10が被溶接部材である配管表面に固定される。
【0020】
接続管13は、ノズル本体11の真ん中部分において後面板11bに対して垂直に接続されている。よって、吸引ノズル10が配管に設置された場合には、接続管13は、配管の軸に平行に位置することになる。また、内部空間の両端の端面は、内面板11cの両端が折り曲げられて溶接されることで閉じられている。
【0021】
続いて、本実施形態に係る吸引ノズル10の具体的なサイズについて言及する。第1実施形態に係る吸引ノズル10は、150Aの配管(直径165.2mm)に適合する吸引ノズルであり、半環形状のノズル本体11の内径(前面板11a及び後面板11bの内縁の直径)は、166mmである。また、ノズル本体11の外径は262mmであり、前面板11aの幅(半径方向の長さ)は48mmである。内面板11cは、前面板11aの内縁端から3mm後退した位置に設置されている。
【0022】
小孔15は、前面板11aの内縁端から15mmの位置の円弧上に開けられており、小孔16は、同じく40mmの位置の円弧上に開けられている。また、ノズル本体11の厚み(前面板11aに垂直な方向)は、接続管13に接続される根本部分で最も厚く60mmであり、両側の先端部分で最も薄く30mmである。このように、先端にいくにしたがって薄くなることで、ノズル本体11内の内部空間が先細りし、上述したように、先端での吸引力の低下を抑えている。
【0023】
もちろん、本実施形態に係る吸引ノズルのサイズは、溶接される配管の大きさに合わせて適宜変更されることは言うまでもなく、各配管径に適合する複数のサイズの吸引ノズルを準備しておけば、種々のサイズの配管に対応できる。
【0024】
続いて、図4に基づいて、本実施形態に係る吸引ノズル10の使用態様について説明する。同図に示すように、吸引ノズル10は、前面板11aが被溶接部材である配管60の溶接箇所に面した状態で、永久磁石12によって配管60の溶接箇所近傍に吸着・固定される。吸引ノズル10の接続管13に集塵装置50のホース51が接続され、ホース固定バンド52により、ホース51が配管60に対して固定される。集塵装置50は、小型で可搬可能な家庭用電気掃除機と同様の集塵装置であり、吸引ノズル10と共に溶接現場に持ち運んで使用される。
【0025】
このように吸引ノズル10を配管60に対して固定した状態で、集塵装置50の電源をONにすれば、吸引ノズル10の吸引口である多数の小孔15,16から、周囲の気体が吸引されるので、配管60の溶接によって発生する酸化亜鉛や酸化鉄を主成分とする白煙状の溶接ヒュームを吸引ノズル10内に吸引して、集塵装置50へと導くことができる。
【0026】
集塵装置50内には、酸化亜鉛や酸化鉄等を除去するためのフィルターが内蔵されており、溶接ヒューム内の有害物質をフィルターで回収することができ、溶接作業の環境を良好に維持することができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、図5乃至図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る吸引ノズルについて説明する。図5は、第2実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。図6は、第2実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。図7は、図6のB−B線における断面図である。図8は、第2実施形態に係る吸引口調節板の正面図である。
【0028】
図5〜図7に示すように、吸引ノズル20は、半環状の第1ノズル本体21、同じく半環状の第2ノズル本体22、吸引ノズル20を集塵装置に接続するための接続管23、第1ノズル本体21と第2ノズル本体22とを接続するための蝶番28及び引っ掛け式のパチン錠29を備えている。また、吸引ノズル20は、吸引口の開口面積を調節するために、図8に示す吸引口調節板30を有している。
【0029】
第1及び第2ノズル本体21,22は、厚さ1.6mmの薄鋼板製であり、第1ノズル本体21は、所定の形状に成形された前面板21a、後面板21b、内面板21c、外面板21dを溶接により接続することで、内部に半環状空間を有するように形成されている。第2ノズル本体22も同様に、所定の形状に成形された前面板22a、後面板22b、内面板22c、外面板22dを溶接により接続することで、内部に半環状空間を有するように形成されている。
【0030】
図7の断面図に示すように、第1及び第2ノズル本体21,22の内部空間は、接続管23との接続部分(根元)における厚み(図中左右方向)が最も大きく、図中下方(先端)へいくにしたがって幅が小さくなり、第2ノズル本体22の最下端では、最も厚みが小さくなっている。このため、垂直に配置された前面板21a,22aに対して、後面板21b,22bは、下方が前面板21a,22a側に近付くように斜めに設置されている。
【0031】
このように、吸引ノズル20の内部空間が、集塵装置との接続部分である根元から遠ざかるに連れて徐々に先細りになるように構成すれば、距離による流速の低下を低減し、吸い込みにむらが発生するのを抑えることができる。
【0032】
前面板21a,22aには、溶接ヒュームの吸引口である多数の小孔25,26が開けられている。この小孔25,26の穴の直径は4mmである。第1の吸引口である内側の小孔25は、半輪状の前面板21aの半径方向の中央付近の円弧上に、4.5°間隔で40箇所、同じく半輪状の前面板22aの半径方向中央付近の円弧上に、4.5°間隔で40箇所の計80箇所に開けられている。
【0033】
また、第2の吸引口である外側の小孔26は、半輪状の前面板21aの外縁近傍の円弧上に、9°間隔で20箇所、同じく半輪状の前面板22aの外縁近傍の円弧上に、9°間隔で20箇所の計40箇所に開けられている。このように、吸引口として多数の微小孔を用いれば、上記第1実施形態と同様に、より多くの溶接ヒュームを広範囲にわたって吸引・回収するこことができると共に、容量の小さい集塵装置であっても、充分な吸引圧を確保することができる。
【0034】
また、溶接箇所に近い内側の第1の吸引口と、その外側に位置する第2の吸引口とを備えているため、溶接箇所に近い場所に設置された第1の吸引口によって回収できなかった溶接ヒュームであっても、外側に配置された第2の吸引口によって回収することが可能であり、溶接ヒュームの回収率を大幅に向上させることが可能である。
【0035】
さらに、本実施形態では、内側の第1の吸引口を構成する小孔25の数が、外側の第2の吸引口を構成する小孔26の数の2倍であり、第1の吸引口の開口面積が、外側の第2の吸引口の開口面積よりも十分に広くなるように構成されており、さらに回収率を向上させている。すなわち、内側の吸引口では、溶接箇所との距離が近いため、開口面積を広くして、より多くの溶接ヒュームを回収すると共に、溶接箇所からの距離が遠い外側の吸引口では、溶接ヒュームもより拡散しているため、開口面積を小さくして強い吸引力で溶接ヒュームを回収している。
【0036】
蝶番28及びパチン錠29は、半環状の第1及び第2ノズル本体21,22を環状に接続し、環状に連続する内部空間を形成するための部品である。第1及び第2ノズル本体21,22の両端を向き合わせて全体として環状とした状態で、一方の接合部において、蝶番28が両外面板21d及び22dに固定されており、この蝶番28を軸として、第1ノズル本体21と第2ノズル本体22とを相対的に回動させることで、環状にしたり、開いたりすることができる。
【0037】
パチン錠29は、第1及び第2ノズル本体21,22のもう一方の接合部を着脱可能に固定するための部品である。吸引ノズル20を配管に設置する場合には、第1及び第2ノズル本体21,22を開いた状態で、一方のノズル本体21,22の内面板21c,22cを配管表面に沿うように吸引ノズル10を設置した後に、もう一方のノズル本体21,22を、蝶番28を軸にして回転させる。このように、ノズル本体21,22を環状につなげた状態で、最後にパチン錠を閉めて固定すれば、配管の溶接部の一周全体にわたって、溶接ヒュームの吸引口を近接して配置することができる。
【0038】
接続管23は、第1ノズル本体21の真ん中部分において、外面板21dに対して垂直に接続されている。よって、吸引ノズル20が配管に設置された場合には、接続管23は、配管の軸に対して垂直に位置することになる。
【0039】
図8に示す吸引口調節板30は、吸引ノズル20の吸引口である小孔25,26における吸引力が弱いときに、前面板21a,22aの表面に貼ることで、小孔25,26の一部を覆って吸引口の総面積を小さくし、覆われていない部分の吸引口における吸引力を向上させるために用いられる。
【0040】
吸引口調節板30は、1/3輪状板であり、その半径方向の幅は、前面板21a,22aとほぼ同じである。また、吸引口調節板30の一方の面には、2つの永久磁石31が固定されており、この磁力により、吸引口調節板30を前面板21a,22a上に貼り付けられる。
【0041】
なお、本実施形態に係る吸引ノズル20の具体的サイズについては、第2実施形態に係る吸引ノズル20も150Aの配管に適合する吸引ノズルであり、基本的なサイズは、上記第1実施形態の吸引ノズル10と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0042】
但し、図7に示す第1及び第2ノズル本体21,22の厚み(図中左右方向)は、接続管23との接続部分(根本部分)で最も厚くて45mm、接続部分と最も離れた図中の下端部分(先端部分)で20mmとなっている。このように、先端にいくにしたがって薄くなることで、第1及び第2ノズル本体21,22内の内部空間が先細りし、上述したように、先端での吸引力の低下を抑えている。
【0043】
また、吸引ノズル20の使用態様については、上記第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。但し、本実施形態に係る吸引ノズル20であれば、配管の周りの360°を覆っているので、配管の周りを一周分溶接する間は、吸引ノズル20を移動させる必要がないので、より効率的に溶接作業を行うことが可能である。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、吸引力が弱い場合には、吸引口調節板30を使用することで、吸引口を構成する小孔25,26の一部を塞いで、吸引口の開口面積を小さくでき、吸引力を上げることができる。吸引口調節板30の移動は、吸引ノズル全体を移動させる場合と比較して格段に労力がかからず、容量の小さい集塵装置と組み合わせて使用する場合でも、本実施形態のような環状の吸引ノズルを用いて、作業効率を向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第3実施形態に係る吸引ノズルについて説明する。図9は、第3実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。図10は、第3実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。
【0046】
図9及び図10に示すように、吸引ノズル40は、1/3環状のノズル本体41、吸引ノズル40を集塵装置に接続するための接続管43、吸引ノズル40を設置するための土台48、固定管49、ノズル本体41を固定管49に固定するための固定棒44を備えている。
【0047】
ノズル本体41は、厚さ1.6mmの薄鋼板製であり、所定の形状に形成された前面板41a、外面板41d及び図示しない後面板、内面板、側面板を溶接によって貼り合わせることで、内部に1/3環状空間を有するように形成されている。
【0048】
前面板41aには、溶接ヒュームの吸引口である多数の小孔45,46,47が形成されている。小孔45,46の穴の直径は10mm、小孔47の穴の直径は6mmである。第1の吸引口を構成する内側の小孔45は、前面板41aの内縁近傍の円弧上に、9°間隔で11箇所に開けられている。第2の吸引口を構成する半径方向において真ん中の小孔46は、前面板41aの半径方向中央付近の円弧上に、9°間隔で10箇所に開けられている。
【0049】
また、第3の吸引口を構成する外側の小孔47は、前面板41aの外縁近傍の円弧上に、9°間隔で11箇所に開けられている。小孔45と小孔47は、同一の放射線上に位置し、小孔46はこの放射線から4.5°ずれた位置の放射線上に位置する。これら小孔45〜46は、前面板41aの接続管43との接続部付近から一方の端部にわたって、中心角で90°の範囲に設けられている。
【0050】
接続管43は、地面と平行になるように外面板41dに接続されている。ノズル本体41の下方の側面板に設けられた固定棒44は、工場の床等に設置される土台48に固定された固定管49内に挿入・固定されており、この構造によりノズル本体41を地面に対して固定できる。
【0051】
上記第1及び第2実施形態に係る吸引ノズルは、吸引ノズル側を移動させて配管に設置して使用するものであったが、本第3実施形態に係る吸引ノズル40は、吸引ノズル側を設置しておいて、配管側を移動させて溶接を行う場合に適している。すなわち、吸引ノズル40は、工場加工用の吸引ノズルであり、多数の配管を工場で流れ作業的に溶接する場合に適している。
【0052】
具体的には、吸引ノズル40に接続された集塵装置の稼働させた状態で、ノズル本体41の下方近傍に溶接部が来るように配管を設置して溶接を行えば、溶接により発生する溶接ヒュームが吸引口である小孔45〜47から吸引され、集塵装置へと集められる。この場合、ノズル本体41側は固定されているので、溶接箇所が常にノズル本体41下方近傍に位置するように、溶接箇所が移動するに従って、配管側を回転させることが望ましい。
【0053】
本実施形態に係る吸引ノズル40によれば、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様の作用効果を奏することができると共に、吸引ノズル側を固定して、被溶接部材である配管側を移動させて溶接するので、大量の配管を溶接する場合には、作業効率を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、溶接箇所に近い側から、第1〜第3の吸引口を設けており、より多くの溶接ヒュームを回収可能である。
【0055】
以上、本発明の第1乃至第3の実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、吸引ノズルを構成する各部材のサイズや材料は適宜変更可能である。
【0056】
また、本実施形態では、溶接箇所に面する吸引ノズル本体の前面板を、被溶接部材である配管の表面に垂直になるように配置したが、もちろん多少傾いていても良い。また、吸引ノズル本体は、円環状の全部又は一部の形状としたが、被溶接部材の形状に合わせて変更可能であり、例えば、角管を溶接する場合には、直線形状や角環形状のノズル本体であっても良い。
【0057】
また、第2実施形態で用いた吸引口の開口面積を調節するための、吸引口調節板は、第2実施形態に係る吸引ノズル本体のように、環状の吸引ノズル本体の場合だけでなく、第1実施形態や第2実施形態のような他の形状の吸引ノズル本体にも適用できる。すなわち、吸引ノズル本体に開けられている吸引口を構成する小孔の一部を塞ぐことができる形状の吸引口調節板であれば、適宜吸引口の開口面積を調節するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、第1実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線における断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る吸引ノズルの使用態様を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。
【図6】図6は、図6は、第2実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。
【図7】図7は、図6のB−B線における断面図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る吸引口調節板の正面図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係る吸引ノズルの斜視図である。
【図10】図10は、第3実施形態に係る吸引ノズルの正面図である。
【符号の説明】
【0059】
10,20,40 吸引ノズル
11,21,41 吸引ノズル本体
12,31 永久磁石
13,23,43 接続管
15,16 小孔
25,26 小孔
30 吸引口調節板
45,46,47 小孔
50 集塵装置
51 ホース
60 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引口を溶接箇所近傍に設置して集塵装置に接続することで、溶接時に発生する溶接ヒュームを前記吸引口から吸引する吸引ノズルにおいて、
内部空間を有し、溶接箇所近傍に設置された際に溶接箇所に対向する面に前記吸引口が形成されたノズル本体であって、前記吸引口が溶接箇所に沿って延在する多数の小孔からなるノズル本体と、
前記ノズル本体の内部空間を前記集塵装置に接続するための接続部と、
を備えることを特徴とする吸引ノズル。
【請求項2】
前記吸引口は、溶接箇所に近い内側に位置する複数の小孔からなる第1の吸引口と、前記第1の吸引口の外側に位置する複数の小孔からなる第2の吸引口と、を少なくとも有することを特徴とする請求項1記載の吸引ノズル。
【請求項3】
前記第1の吸引口の開口面積が、前記第2の吸引口の開口面積よりも十分に広いことを特徴とする請求項2記載の吸引ノズル。
【請求項4】
前記吸引口が形成された面上に着脱可能な吸引口調節板であって、前記吸引口が形成された面上に設置されることで、前記吸引口を構成する小孔の一部を塞ぐように構成された吸引口調節板をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の吸引ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−45644(P2009−45644A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213233(P2007−213233)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(507279831)由委工業株式会社 (2)