説明

吸放湿性ポリウレタンフォームとその製造方法

【目的】 高い吸放湿性をもつポリウレタンフォームを簡便且つ安価に製造する。
【構成】 ポリウレタンフォーム製造時にセリシンを共有させて気泡膜と骨格内にセリシンを分散させた吸放湿性ポリウレタンフォームを得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高い吸放湿性をもつポリウレタンフォームとその製造方法に関し、特に椅子、ソファー等の家具類、車輛等の座席シート等の内装材料として使用するに適する高い吸放湿性をもつポリウレタンフォームおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】近年、家具、車輛等の内装の高級化はそれらを使用する人々のセンスの向上と要求度の高まりに従って充実され一応満足のできる程度にまで達している。一方、室内の防音、断熱等の快適性の向上に対する要求が一層強くなるに従い、高い気密性も要求されており、これが室内温度の上昇や結露の発生の大きな原因となっている。
【0003】しかしながら、これらの原因に対する改善の決め手になる吸湿性に対する配慮はほとんどされていないのが現状である。
【0004】特に室内で使用される椅子や車輛シートには防音、断熱、衝撃吸収およびクッション性を高めるために通常かなりの容量のポリウレタンフオームが使用されており、これを室内で発生する水分を吸湿させたり、放湿させたりする媒体として効果的に利用できれば好都合である。
【0005】ポリウレタンフォームは合成樹脂より構成されているため本質的に吸湿性をもたない。そこで上記した様な用途に適した吸放湿性に富んだポリウレタンフォームを開発すべくいくつかの提案がなされている。
【0006】例えば、特開昭57−57778号公報には、ポリウレタンフォームシートの内部に吸放湿性を有する極細繊維をニードルパンチして柔軟複合材を得るという方法が提案されている。しかし、この方法は、成形品を成形した後に行われるのでフォームのクッション性や通気性を悪化させる傾向にありまた、この様な後処理は製造工程を複雑化する上、成形品表層の処理であるため効果を付与することは、困難である。一方、ポリウレタンフォームを製造する際にウレタン樹脂に皮革粉やゼラチン粉等を混入する方法も提案されているが、皮革粉をウレタン樹脂中に混合した場合は、皮革粉の粒径が大きいために、混入された樹脂素材に滑性が少なく、樹脂の流動性を悪化させ、従って成形の際に押出し抵抗が大となり滑らかな押出しに支障をきたすことになる。
【0007】更に樹脂と粉体との均一な混練に手間を要する等の問題もある。またゼラチンを使用する場合は、ゼラチン粉は粒径が微小であっても粉砕により微粉化しているために凝集が生じ易く、このため粉体が樹脂内で偏在し、成形歪や成形品の片寄りを引き起こす原因になるという問題がある。
【0008】本発明の目的は、上記した問題点を解決し、従来のポリウレタンフォームシートには見られない優れた吸放湿性の機能を備えたポリウレタンフォームとその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は第1にポリウレタンフォームの気泡膜および骨格内にセリシンを分散させてなる吸放湿性ポリウレタンフォームであり、第2に、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒および発泡剤を含む組成物を反応させてポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリオール100重量部当り0.01〜50重量部のセリシンを共存させて反応を行うことを特徴とする吸放湿性ポリウレタンフォームの製造方法である。
【0010】本発明で用いるセリシンとしては平均粒径が20μm以下の球状粉体が好ましく、特に最大粒径が10μm以下で平均粒径が5μm程度のものが好ましい。これらのセリシンは通常絹の精練液から得られ、平均分子量600〜40000を有している。
【0011】本発明の吸放湿性ポリウレタンフォームは上記したセリシンがポリウレタンフォームの気泡膜部および骨格内に分散してなる構造を有するものであり、ポリウレタンフォーム製造反応時にセリシンを共存させることによって製造される。
【0012】ポリウレタンフォームの製造に用いる原料化合物及び同フォームの製造条件は従来知られた原料化合物及び条件を適宜採用しうる。
【0013】ポリウレタンフォーム、製造用の原料はポリオール、ポリイソシアネート、触媒および発泡剤を必須とし、通常さらに整泡剤や他の添加剤を含有してなるものである。
【0014】本発明の方法において使用されるポリオールは、2以上の末端ヒドロキシル基を有する化合物であり、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、これら2種の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオール、ポリオール中でアクリロニトリルもしくはスチレンあるいは両者の混合物等を重合させて得られるいわゆるポリマーポリオール等のポリオール類が使用できるが、特にポリエーテルポリオールを用いるのが好ましい。それらは例えばその末端に第1級ヒドロキシル基を0〜90%含有する分子量、3,000以上7,000以下の一般の軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるものであり、グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加させて得られるポリエーテルポリオールが一般によく用いられる。また、使用部所により弾性が特に必要となる場合、ポリオール100重量部のうちの5〜50重量部に上記のポリマーポリオールを使用することが好ましい。
【0015】本発明において使用されるポリイソシアネートとしては一般に軟質ウレタンフォーム製造に使用されるポリイソシアネートが使用できる。一般にはTDIが使用されるが、その異性体即ち2,4−体と2,6−体の混合比が80:20あるいは65:35(重量比)のものが低価格であり、また実用性の点で好ましい。トリレンジイソシアネートは精製された純品あるいは粗製のものあるいはその混合物が使用される。また、特にフォームの柔軟性、白色性を必要とする場合、このTDI単独で使用することが好ましい。
【0016】また反応性を高めるためTDIと他のポリイソシアネートとの混合物が使用されるが、このTDIに混合される他のポリイソシアネートとしては例えばジフェニルメタンジイソシアネートの純品または粗製物あるいはその混合物、ジフェニルジイソシアネート、クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、P−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンイソシアネート等が用いられる。ポリオール及びその他の活性水素を有する化合物の全量に対するポリイソシアネートの使用量即ちイソシアネート指数(NCOインデックス)は80〜130の範囲であるが製造される軟質ポリウレタンフォームの一般物性を考慮すると100〜110の範囲が特に好ましい。
【0017】触媒としてはこの分野で常用されている公知のものが使用可能である。具体的にはジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、オクチル亜鉛等の有機金属化合物系触媒やトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール等のアミン系触媒等が挙げられる。
【0018】また、反応性を調整するため樹脂溶液の混合後特定の時間に達してから触媒能を発揮する遅延活性触媒も使用することができる。これらの触媒は単独で用いても併用してもよい。触媒の使用量は特に限定されず広範囲に変えることができるが、通常ポリウレタンフォーム製造時に使用するポリオール100重量部に対して0.1〜5.0重量部が好ましく、特に0.5〜3.0重量部が好ましい。
【0019】発泡剤としては、一般に軟質ウレタンフォームに使用される公知の発泡剤である水あるいは低沸点を有する揮発性液体が用いられる。低沸点を有する揮発性液体とは例えばトリクロロモノフルオロメタン、ジブロモジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリフルオロエチルブロミド、ジクロロメタン等でありこれらの発泡剤は単独あるいは混合して使用することができる。
【0020】発泡体内の気泡を均一にするための整泡剤としては、ポリウレタンフォームの発泡用に使用される公知のシリコーン系整泡剤があり、例えばポリジアルキルシロキサン、またはポリシロキサン−ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体から選択されるが、本発明の目的を損なわない限りその種類及び使用量については制限はない。ただし特に気泡の均一性を重視する場合、ポリシロキサン−ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体を主体とする単独あるいは併用シリコーン整泡剤を用いることが好ましい。またその使用量はポリオール100重量部に対して0.5〜5.0重量部、特に0.5〜2.0重量部が好ましい。
【0021】また、その他の添加剤として公知の顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤、有機無機フィラー、等通常ウレタンフォームの発泡時に配合されるものを必要に応じて用いることができる。
【0022】かかる原料組成物中に混人されるセリシン量は、ポリオール100重量部に対して0.01〜50重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。セリシン添加量が少なすぎるとセリシン添加による効果が充分得られず、多すぎるとポリウレタンフォームの強度などの機械的特性が低下する。
【0023】ポリウレタンフォームの気泡膜および骨格内部にセリシンは分散され一体に成形されて、成形面表面に露出しているセリシン微小球状粒子が直接水分を吸収して膨潤し、その吸収水分を成形物中に散在しているセリシン粒子を介しながら順次成形物の内奥に送り込む機能を有する。しかもこれらの粒子が所定値の水分を含有して膨潤状態とされていることにより、ポリウレタンフォーム固有の帯電が防止され、不快な静電気の放電が生じない。
【0024】実施例1 エクセノール828(グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイ ドを付加して、分子量5000としたポリエーテルポリ オール、OH値34.1、旭硝子株式会社製)
80部、 エクセノール940(ポリオールにアクリロニトリルとスチレンを1;1の比 率で重合させたポリマーポリオール、OH値26.4、 旭硝子株式会社製) 20部、 TDI−80(2,4−体/2,6−体=80/20品、NCO%=48.2 %、住友バイエルウレタン株式会社製) 35.8部、 SF−2962(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社 製) 1部、 水 3部、 トリエタノールアミン 2部、 カオーライザーNo.1(テトラメチルヘキサメチレンジアミン、花王株式会 社製) 0.8部、 NiaxA−1(混合触媒、ユニオンカーバイト株式会社製) 0.1部からなる組成物に セリシン(平均粒径10μm) 5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。
(評価法)ポリウレタンの吸湿性は以下の方法で評価した。
1)測定対象のポリウレタンフォームを20℃65%RHの雰囲気中または、40℃90%RHに2時間維持した後の重量を測定する。(測定値A)
2)1)で吸湿後の重量が確認されたポリウレタンフォームに対して105℃2時間処理し絶乾した後に重量を測定する。(測定値B)
3)吸湿率(%)を次式より算出する。
吸湿率(%)=(測定値A−測定値B)/測定値B*100
【0025】実施例2 エクセノール3031K(グリセリンにプロピレンオキサイドを付加して、分 子量3000としたポリエーテルポリオール、OH 値54.9、旭硝子株式会社製) 100部、 TDI−80(2,4−体/2,6−体=80/20品、NCO%=48.2 %、住友バイエルウレタン株式会社製) 52.1部、 SH−190(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社 製) 1.5部、 水 4部、 Dabco−33LV(トリエチレンジアミンの33%DPG溶液、AirP roduct&Chemical社製)0.3部、 スタノクト T−90(オクチル酸錫、古富製薬株式会社製) 0.3部からなる組成物に セリシン(平均粒径10μm) 5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。
【0026】比較例1セリシンを用いない以外実施例1と同様の処方でポリウレタンフオームを製造した。
【0027】比較例2セリシンを用いない以外実施例2と同様の処方でポリウレタンフォームを製造した。
【0028】上記の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【0030】実施例1と2のポリウレタンフォームは気泡膜と骨格内にセリシンが分散して存在することを光学顕微鏡での観察で確認した。
【0031】上記から本発明によりセリシンを用いない場合に比し2〜5倍の吸放湿性を有するポリウレタンフォームが簡便に得られることがわかる。
【0032】
【発明の効果】本発明により高い吸放湿性をもつポリウレタンフォームが簡便に得られる。
【0033】またセリシンは従来絹の精練工程で廃棄されていた副生物であり、実質上無価値であっただけでなく、廃水処理における設備や運転経費等に大きな負荷をかけていたが、分離回収して有効利用できる結果、その価値が高まり且つ上記の負荷を大きく軽減できるという二次的効果も得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリウレタンフォームの気泡膜および骨格内にセリシンを分散させてなる吸放湿性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】 ポリオール、ポリイソシアネート、触媒および発泡剤を含む組成物を反応させてポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリオール100重量部当り0.01〜50重量部のセシリンを共存させて反応を行うことを特徴とする吸放湿性ポリウレタンフォームの製造方法。