説明

吸放湿量測定装置及び吸放湿量測定方法

【課題】建築躯体の表面からの吸放湿量を、現場にて簡易に測定する。
【解決手段】吸放湿量測定装置1は、建物の床面2の一部である測定対象面2aを覆う測定用カバー3と、測定対象面2a上に配置された電子天秤4と、電子天秤4に載置された飽和塩用トレー5と、飽和塩用トレー5に収容された飽和塩6と、を備える。測定用カバー3内には、測定対象面2aと測定用カバー3とにより囲まれる閉塞空間7が形成される。飽和塩6は、測定対象面2aより放出・吸収される水分を、閉塞空間7を介して、吸収・放出する。電子天秤4により測定された飽和塩6の重量変化データに基づいて、飽和塩6の重量変化率安定期間が特定され、当該期間における飽和塩6の重量変化データに基づいて、床面2の放湿量及び放湿速度が決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築躯体の表面からの吸放湿量を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4は、コンクリート等の被測定体の近傍に設置された温湿度センサを用いて、被測定体の近傍の温湿度を測定し、これらの測定値に基づいて、被測定体の表面より放出される水分の量(放湿量)を推定する手法を開示している。
【0003】
非特許文献1は、建築材料の吸放湿性試験方法(湿度応答法)を開示している。この試験方法では、恒温恒湿槽内に建築材料の試験片を配置して、槽内の相対湿度を1日周期(12時間吸湿,12時間放湿)で変化させ、この間の試験片の重量変化量を、電子天秤を用いて測定し、この測定値に基づいて、建築材料の吸放湿量を算出している。
【0004】
非特許文献2は、建築材料の揮発性有機化合物(VOC)のフラックス発生量測定法(パッシブ法)を開示している。この測定法では、拡散サンプラーが装着された小型容器を建築材料の試験片の上に設置して、試験片から放散されるVOCの捕集を行い、この捕集量と捕集時間と試験面積とに基づいて、建築材料のVOCのフラックス発生量を算出している。尚、非特許文献2には、VOCの分析法として、JIS A 1969による溶媒抽出法又は加熱脱着法を用いることが記載されている。
【0005】
非特許文献3は、建築材料の透湿性測定方法として、複数の測定方法を開示している。これらの測定方法のうち、透湿試験箱法(1箱法)では、透湿量測定用の断湿された箱(透湿試験箱)を恒温恒湿室内に設置し、透湿試験箱の一面に試験片を取り付け、透湿試験箱内に塩飽和水溶液を入れて、透湿試験箱の内外に水蒸気圧差をつける。そして、試験片を通過する水蒸気量(透湿量)を塩飽和水溶液の質量変化量から算出し、算出した透湿量と、透湿試験箱の内外の温湿度と、に基づいて、建築材料の透湿抵抗を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−14635号公報
【特許文献2】特開2002−228652号公報
【特許文献3】特開2000−5135号公報
【特許文献4】特開平6−249796号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS A 1470−1:2008
【非特許文献2】JIS A 1903:2008
【非特許文献3】JIS A 1324:1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、竣工直後の建物では、コンクリート等の建築躯体(構造体 床、壁等)の発湿面より放出される水分の量が多く、特に地下室等では、地盤に接する壁面が冷やされ、室温が下がることで室内の相対湿度(RH)が高くなりやすいため、結露やカビ発生が懸念される。
【0009】
この対策として、建物内部での結露やカビ発生を予測するためには、建物内部の温湿度をシミュレーションする必要があり、このためには、あらゆる発湿面からの放湿量を把握することが重要である。
【0010】
また、竣工より長期間が経過した建物では、コンクリート等の建築躯体の水分も安定しており、特に、梅雨時期等の相対湿度が高い期間においては、建築躯体に水分が吸収される場合もある。従って、シミュレーションで建物内部の温湿度を正確に予測するためには、建築躯体からの吸湿量も把握する必要がある。
【0011】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の手法では、被測定体の近傍の温湿度に基づいて、被測定体からの放湿量を間接的に測定しているので、放湿量の測定値が不正確となり得る。また、湿度センサの確度が高くない現状においては、測定誤差が大きくなり得る。
【0012】
また、非特許文献1〜3に記載の手法は、試験片となり得る建築材料を測定対象とする場合には適用可能であるが、建築現場にて建築躯体を測定対象とする場合には適用できない。
【0013】
本発明は、このような実状に鑑み、建築躯体の表面からの吸放湿量を、現場にて簡易かつ正確に測定可能な吸放湿量測定装置及び吸放湿量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明に係る吸放湿量測定装置は、開口面を有する箱状であり、かつ、開口面が建築躯体の表面の一部により閉口されて、内部に閉塞空間が形成される測定用カバーと、閉塞空間内に配置されて、建築躯体の表面の一部より放出・吸収される水分を吸収・放出する飽和塩と、吸収・放出による飽和塩の重量変化量を測定する電子天秤と、を含んで構成される。
【0015】
また、本発明に係る吸放湿量測定方法は、測定用カバーにより建築躯体の表面の一部を覆って、測定用カバーと建築躯体の表面の一部とにより囲まれる閉塞空間を形成し、建築躯体の表面の一部より放出・吸収される閉塞空間内の水分を、閉塞空間内に予め配置された飽和塩により吸収・放出させ、この吸収・放出による飽和塩の重量変化量を、電子天秤を用いて測定し、かつ、飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、吸放湿量を決定する。
【0016】
尚、本発明における「飽和塩」とは、その周囲雰囲気中の水分を吸収・放出する吸放湿剤である。また、本発明における「飽和塩」には、蒸留水に塩結晶を飽和状態になるまで溶解させて作成される塩飽和水溶液(例えば、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液)と、無水塩(例えば、無水塩化カルシウム)と、が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子天秤を用いて、飽和塩の重量変化量を測定することにより、比較的小型かつ簡素な構成にて、飽和塩の重量変化量の測定値から直接的に吸放湿量を算出することができるので、建築躯体のあらゆる表面からの吸放湿量を、現場にて簡易かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における吸放湿量測定装置の概略構成図
【図2】吸放湿量測定方法の第1例における測定時間と測定対象面の単位面積当たりの飽和塩の重量変化量との関係を示す図
【図3】吸放湿量測定方法の第2例における測定時間と測定対象面の単位面積当たりの飽和塩の重量変化量との関係を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態における吸放湿量測定装置の概略構成図
【図5】同実施形態における測定時間と測定対象面の単位面積当たりの飽和塩の重量変化量との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における吸放湿量測定装置の概略構成を示す。
【0020】
吸放湿量測定装置1は、建物の床面2の一部である測定対象面2aを覆うアクリル製の測定用カバー3と、測定対象面2a上に配置された電子天秤4と、電子天秤4に載置された飽和塩用トレー5と、飽和塩用トレー5に収容された飽和塩6と、を備える。ここで、建物の床面2が、本発明における建築躯体の表面に対応する。
【0021】
測定用カバー3は、下面が開口面の箱状であり、この開口面が、測定対象面2aによって閉口されて、測定対象面2aと測定用カバー3とにより囲まれる閉塞空間7が形成される。
【0022】
測定用カバー3の下端と床面2との接触部には、測定用カバー3の開口面を密閉させるために、アルミテープ8が貼付されている。従って、測定用カバー3の開口面を密閉させることが可能であれば、床面2は、平面に限らず、凹凸な面であってもよい。
【0023】
飽和塩6は、測定対象面2aより放出・吸収される水分を、閉塞空間7を介して、吸収・放出する吸放湿剤である。また、飽和塩6としては、蒸留水に塩結晶を飽和状態になるまで溶解させて作成される塩飽和水溶液(例えば、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液)と、無水塩(例えば、顆粒状の無水塩化カルシウム)と、が用いられ得る。尚、図1に示す白抜き矢印は、測定対象面2aより放出された水分が、閉塞空間7を介して、飽和塩6に至る経路の一例を示している。
【0024】
飽和塩6は、吸放湿量測定時の湿度条件(換言すれば、目標とする閉塞空間7内の相対湿度)に応じて、選択され得る。
【0025】
例えば、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が0%程度の低湿度である場合には、飽和塩6として、顆粒状の無水塩化カルシウム(RH:0%)を用いる。この場合には、無水塩化カルシウムが閉塞空間7内の水分を吸収して、閉塞空間7内の相対湿度が0%程度にまで低下することにより、床面2から閉塞空間7への水分放出が促進され得るので、床面2からの最大放湿量を測定することができる。
【0026】
また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が52%程度の中湿度である場合には、飽和塩6として、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液(RH:52%)を用いる。この場合には、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液を閉塞空間7内に配置することにより、閉塞空間7内の相対湿度を52%程度で安定させることができるので、実際の湿度環境に近い状態にて床面2からの吸放湿量を測定することができる。
【0027】
また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が90%程度の高湿度である場合には、飽和塩6として、塩化カリウムや硝酸カリウム等を含む塩飽和水溶液を用いてもよい。
【0028】
飽和塩用トレー5は、角皿状である。また、飽和塩用トレー5内の飽和塩6は、閉塞空間7との間で水分を効率よく吸収・放出することができるように、トレー5内に広げられて収容されている。
【0029】
電子天秤4は、所定の測定間隔(例えば、2分間隔)で、所定の期間(例えば、2週間)の間、飽和塩6の重量を測定し、この測定データを、図示しない電線を介して、パーソナルコンピュータ等の記録装置9に送信する。尚、電子天秤4の一例としては、A&D社製の電子天秤(FX-3000)を挙げることができる。
【0030】
測定用カバー3には、その内面に、閉塞空間7内の温度を測定する温度センサ10と、閉塞空間7内の相対湿度を測定する湿度センサ11と、が取り付けられている。温度センサ10の一例としては、T型熱電対を挙げることができる。また、湿度センサ11の一例としては、VAISALA社製の相対湿度計(HMP45ASPF)を挙げることができる。温度センサ10により測定された温度データと、湿度センサ11により測定された湿度データとは、それぞれ、図示しない電線を介して、記録装置9に送信される。
【0031】
記録装置9は、受信した各種データを測定時間と関連付けつつ、飽和塩6の重量変化データと、閉塞空間7内の温湿度変化データとを収集して、記録する。尚、記録装置9における処理の一例では、まず、重量変化データをパーソナルコンピュータに直接記録する一方、温湿度変化データをロガーに記録する。そして、ロガーに記録された温湿度変化データをパーソナルコンピュータに読み込み、重量変化データを合わせてパーソナルコンピュータで解析する。
【0032】
次に、吸放湿量測定装置1を用いた吸放湿量測定方法の第1例について説明する。
この例において、建物の床面2は、厚さ200mmのコンクリート床の上面であり、この面には、防塵塗装が施されている。ここで、防塵塗装には、水性アクリルウレタン樹脂系の防塵床材(例えば、カラートップAU水性VOC(ABC商会))が用いられるが、この他の防塵床材が用いられてもよい。
【0033】
コンクリート床の下側の空間には、雨水ピット(図示せず)が設置されている。また、コンクリート床の下面近傍の空間では、相対湿度が100%程度であるのに対し、床面2近傍の空間では、相対湿度が52%程度である。このような湿度環境にて、床面2は、水分を閉塞空間7に放出する発湿面として機能している。
【0034】
床面2における吸放湿量測定では、まず、飽和塩6が硝酸カルシウムの塩飽和水溶液である吸放湿量測定装置1を、床面2上に配置する。
【0035】
次に、測定対象面2aから閉塞空間7内へ放出された水分を、飽和塩6により吸収させ、この水分吸収による飽和塩6の重量変化量を、電子天秤4を用いて測定する。具体的には、上述のように、電子天秤4を用いて、2分間隔で2週間の間、飽和塩6の重量を測定し、この測定データが、順次、記録装置9に送信されて測定時間と関連付けられることにより、飽和塩6の重量変化データが収集される。
【0036】
一方、温度センサ10により測定された温度データと、湿度センサ11により測定された湿度データとは、順次、記録装置9に送信されて測定時間と関連付けられることにより、閉塞空間7内の温湿度変化データが収集される。
【0037】
この後、記録装置9では、飽和塩6の重量変化データと、測定対象面2aの有効面積と、に基づいて、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量の変化を示す重量変化曲線を生成する。ここで、測定対象面2aの有効面積とは、測定対象面2aのうち、発湿面として有効に機能する部分の面積(例えば、電子天秤4により覆われていない部分の面積)である。
【0038】
記録装置9にて生成された重量変化曲線を図示すると、図2のようになる。
【0039】
図2は、測定時間と、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す。
図2では、測定時間が経過するほど、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量が増加している。すなわち、測定時間が経過するほど、飽和塩6が吸湿し、その重量が増加している。
【0040】
一方、測定者は、記録装置9にて収集された閉塞空間7内の温湿度変化データに基づいて、閉塞空間7内の温湿度が安定している期間(温湿度安定期間)を特定する。この温湿度安定期間の特定手法の一例を、以下に説明する。測定者は、まず、測定時間内の所定期間(この期間は、後述する飽和塩6の重量変化率安定期間より長期間である。)における閉塞空間7内の温湿度変化データに基づいて、当該所定期間における閉塞空間7内の温度及び相対湿度の平均値を算出する。次に、これらの平均値と、当該所定期間における閉塞空間7内の温湿度変化データとを比較して、当該所定期間における温度差が±3℃以内であるか否かの判定と、当該所定期間における相対湿度差が±10%以内であるか否かの判定と、を行う。そして、当該所定期間における温度差が±3℃以内であり、かつ、相対湿度差が±10%以内であれば、当該所定期間は、温湿度安定期間であると特定される。尚、本例では、図2に示す期間t1〜t2が、温湿度安定期間として特定されている。
【0041】
次に、測定者は、記録装置9にて収集された飽和塩6の重量変化データを用いて、温湿度安定期間(期間t1〜t2)内にて飽和塩6の重量変化率が安定している期間(重量変化率安定期間)を特定する。ここで、飽和塩6の重量変化率とは、単位時間当たりの飽和塩6の重量変化量である。上記重量変化率安定期間の特定手法の一例を、以下に説明する。測定者は、まず、温湿度安定期間(期間t1〜t2)内の1日間における飽和塩6の平均重量変化率を算出する。次に、連続した3日間内の各日毎に算出された飽和塩6の平均重量変化率に基づいて、当該3日間の飽和塩6の平均重量変化率を算出し、この平均重量変化率を、当該3日間における飽和塩6の重量変化率の中央値とする。そして、この中央値に対して、当該3日間のうち最終日の飽和塩6の平均重量変化率の誤差が5%以内であるか否かの判定を行い、誤差が5%以内であれば、当該最終日の1日間は、飽和塩6の重量変化率安定期間であると特定される。これら一連の作業を温湿度安定期間(期間t1〜t2)内の全ての重量変化データに対して行い、これにより、温湿度安定期間(期間t1〜t2)内の飽和塩6の重量変化率安定期間が特定される。尚、本例では、図2に示す期間t11〜t12が、飽和塩6の重量変化率安定期間として特定されている。
【0042】
測定者は、飽和塩6の重量変化率安定期間(期間t11〜t12)を特定すると、記録装置9にて収集された飽和塩6の重量変化データに基づいて、当該重量変化率安定期間における床面2の放湿量(次元:[重量])を算出する。具体的には、期間t11〜t12における飽和塩6の重量変化データに基づいて、期間t11〜t12における測定間隔毎の飽和塩6の重量変化量を算出し、これらの算出値を期間t11〜t12において積算し、この積算値を、期間t11〜t12における床面2の放湿量とする。このようにして、飽和塩6の重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データに基づいて、床面2の放湿量が決定される。
【0043】
また、測定者は、飽和塩6の重量変化率安定期間(期間t11〜t12)を特定すると、当該重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データに基づいて、床面2の単位時間・面積当たりの放湿量(換言すれば、床面2の放湿速度(次元:[重量]/[面積]/[時間])を算出する。具体的には、まず、期間t11〜t12における飽和塩6の重量変化データ(測定間隔毎に収集された複数の重量測定データ)と、測定対象面2aの有効面積と、に基づいて、期間t11〜t12における測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化データを算出する。次に、算出されたこれらのデータに対して、最小二乗法を適用して、期間t11〜t12における、測定時間と、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す近似直線を求める。そして、この近似直線の傾きを算出し、この算出された傾きを、床面2の放湿速度として採用する。尚、この近似直線の傾きが、図2の期間t11〜t12における重量変化曲線の傾きに相当する場合には、この重量変化曲線の傾きを、床面2の放湿速度として採用することも可能である。このようにして、飽和塩6の重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データに基づいて、床面2の放湿速度が決定される。
【0044】
尚、測定者は、飽和塩6の重量測定が開始されてから所定期間を経過した後に測定された各種データに基づいて、閉塞空間7内の温湿度安定期間と、飽和塩6の重量変化率安定期間とを特定することが可能である。この場合には、閉塞空間7内の温湿度と、飽和塩6の水分吸収能力とが、安定した後に、放湿量測定を行うことができるので、測定される放湿量の精度を高めることができる。
【0045】
また、測定者は、上述の閉塞空間7内の温湿度安定期間にて、吸放湿量測定装置1の周囲環境の安定性を判定してもよい。この場合には、例えば、周囲環境の安定性を示すパラメータとして、測定用カバー3の周囲温湿度、雨水ピットの温湿度、コンクリート床下面の温湿度のうち少なくとも1つを選択し、そのパラメータのばらつきが、特定された閉塞空間7内の温湿度安定期間において、所定閾値以内であるか否かを判定し、所定閾値以内であれば、上述のように、床面2からの放湿量を算出する。
【0046】
次に、吸放湿量測定装置1を用いた吸放湿量測定方法の第2例について説明する。
上述の第1例と異なる点について、説明する。
【0047】
本例では、図1に示した吸放湿量測定装置1を2つ用いて、これらを第1及び第2の測定装置としており、これらの測定装置は、床面2上に互いに隣り合って配置されている。
【0048】
第1の測定装置では、飽和塩6として、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液が用いられ、これにより、第1の測定装置の閉塞空間7内の相対湿度が52%程度に保持される。
一方、第2の測定装置では、第1の測定装置の飽和塩6と同量の無水塩化カルシウムが、飽和塩6として用いられ、これにより、第2の測定装置の閉塞空間7内の相対湿度が0%程度に保持される。
【0049】
第1及び第2の測定装置の記録装置9にて生成された飽和塩6の重量変化曲線を図示すると、図3のようになる。
【0050】
図3は、第1及び第2の測定装置における、測定時間と、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す。
【0051】
図3において、実線は、第1の測定装置に対応しており、飽和塩6が硝酸カルシウムの塩飽和水溶液である場合の重量変化曲線を示す。また、一点鎖線は、第2の測定装置に対応しており、飽和塩6が無水塩化カルシウムである場合の重量変化曲線を示す。
【0052】
また、本例では、図3に示す期間t3〜t4が、第1及び第2の測定装置における閉塞空間7内の温湿度安定期間として特定され、かつ、期間t13〜t14が、第1及び第2の測定装置における飽和塩6の重量変化率安定期間として特定されている。従って、測定者は、第1及び第2の測定装置の各々について、期間t13〜t14における飽和塩6の重量変化データに基づいて、当該期間における床面2の放湿量と放湿速度とを算出する。
【0053】
具体的には、測定者は、第1及び第2の測定装置の各々について、期間t13〜t14における飽和塩6の重量変化データに基づいて、期間t13〜t14における測定間隔毎の飽和塩6の重量変化量を算出し、これらの算出値を期間t13〜t14において積算し、この積算値を、期間t13〜t14における床面2の放湿量とする。
【0054】
また、測定者は、第1及び第2の測定装置の各々について、期間t13〜t14における飽和塩6の重量変化データと、測定対象面2aの有効面積と、に基づいて、期間t13〜t14における測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化データを算出し、算出されたこれらのデータに対して、最小二乗法を適用して、期間t13〜t14における、測定時間と、測定対象面2aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す近似直線を求める。そして、この近似直線の傾きを算出し、この算出された傾きを、床面2の放湿速度として採用している。尚、本例では、この近似直線の傾きが、図3の期間t13〜t14における重量変化曲線の傾きに相当しており、このため、図3の期間t13〜t14における重量変化曲線の傾きが、床面2の放湿速度に対応している。
【0055】
図3に示すように、飽和塩6が無水塩化カルシウムである場合には、飽和塩6が硝酸カルシウムの塩飽和水溶液である場合に比べて、重量変化曲線の傾きが大きく、それゆえ、床面2の放湿速度が高い(すなわち、床面2の単位時間・面積当たりの放湿量が多い)。
【0056】
このようにして、閉塞空間7内の相対湿度が0%程度(低湿度)の場合の放湿量と、52%程度(中湿度)の場合の放湿量と、を把握することが可能であるので、これらの放湿量に基づいて、建物内部の温湿度をより正確にシミュレーションすることが可能である。また、このシミュレーションの結果に基づいて、建物内部での結露やカビ発生を予測することができるので、この予測結果に応じて、結露やカビ発生を防止可能な建材を選定することができると共に、結露やカビ発生を防止するための換気・空調設備の見直しを図ることができる。例えば、単位時間・面積当たりの放湿量が比較的多い場合には、空調機の除湿処理能力を見直すか、又は、除湿機を設置する等の対策を講じる。
【0057】
本実施形態によれば、測定用カバー3により床面2の一部を覆って、測定用カバー3と床面2の一部とにより囲まれる閉塞空間7を形成し、床面2の一部から閉塞空間7内へ放出された水分を、閉塞空間7内に予め配置された飽和塩6により吸収させ、この吸収による飽和塩6の重量変化量を、電子天秤4を用いて測定し、かつ、飽和塩6の重量変化量の測定値(重量変化データ)に基づいて、床面2からの放湿量を決定する。これにより、比較的小型かつ簡素な構成にて、床面2からの放湿量を測定することができるので、床面2からの放湿量を、現場にて簡易に測定することができる。尚、測定された床面2からの放湿量と、測定対象面2aの有効面積と、に基づいて、床面2の単位面積当たりの放湿量(次元:[重量]/[面積])を算出することが可能である。また、測定された床面2からの放湿量と、測定時間と、に基づいて、床面2の単位時間当たりの放湿量(次元:[重量]/[時間])を算出することが可能である。また、測定された床面2からの放湿量と、測定対象面2aの有効面積と、測定時間と、に基づいて、床面2の単位時間・面積当たりの放湿量(換言すれば、床面2の放湿速度(次元:[重量]/[面積]/[時間]))を算出することが可能である。
【0058】
また、本実施形態によれば、飽和塩6の重量変化率が安定している期間を特定し、この特定された重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化量の測定値(重量変化データ)に基づいて、床面2からの放湿量を決定する。これにより、定常状態における床面2からの放湿量を測定することができるので、測定された放湿量に基づいて、定常状態における建物内部の湿度を、精度よくシミュレーションすることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、閉塞空間7内の温湿度が安定している期間を特定し、この特定された温湿度安定期間における飽和塩6の重量変化量の測定値(重量変化データ)に基づいて、床面2からの放湿量を決定する。これにより、閉塞空間7内の温湿度変化に起因する測定誤差を最小限に抑えることができるので、測定された放湿量に基づいて、建物内部の湿度を、より正確にシミュレーションすることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、閉塞空間7内の相対湿度を、0%程度の低湿度と、52%程度の中湿度と、に設定するために、飽和塩6として、顆粒状の無水塩化カルシウムと、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液と、を用いている。このように、放湿量測定時の湿度条件(換言すれば、目標とする閉塞空間7内の相対湿度)に応じて、飽和塩6を選定することが可能であるので、建物内部の温湿度シミュレーションにて必要とされ得る放湿量データを、多面的かつ簡易に収集することができる。尚、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が33%である場合には、飽和塩6として、MgCl・6HOの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が43%である場合には、飽和塩6として、KCOの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が53%である場合には、飽和塩6として、Mg(NO・6HOの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が69%である場合には、飽和塩6として、KIの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が75%である場合には、飽和塩6として、NaClの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が85%である場合には、飽和塩6として、KClの塩飽和水溶液を用いることが可能である。また、目標とする閉塞空間7内の相対湿度が93%である場合には、飽和塩6として、KNOの塩飽和水溶液を用いることが可能である。
【0061】
尚、本実施形態では、床面2として、防塵塗装を施したコンクリート床の表面を用いて説明したが、床面2の構成は、これに限らず、例えば、モノリシック仕上げを施したコンクリート床の表面、又は、塩ビタイルを貼付したコンクリート床の表面であってもよい。すなわち、吸放湿量測定装置1は、建物に組み込まれた複合の建築部材からの放湿量を測定することが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、床面2の下方に雨水ピットが配置されているが、床面2が発湿面として機能すれば、床面2の下方の構成はこれに限らず、例えば、床面2を有するコンクリート床の下面に、水分を含む土砂が接触していてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、床面2が、水分を閉塞空間7に放出する発湿面として機能している場合に、吸放湿量測定装置1を用いて、床面2からの放湿量を測定する手法を説明したが、この他に、又は、これに加えて、床面2が、閉塞空間7から水分を吸収する吸湿面として機能している場合にも、吸放湿量測定装置1を用いることが可能である。この場合には、飽和塩6中の水分が閉塞空間7を介して床面2に吸収され得るので、測定時間が経過するほど、飽和塩6の重量は減少し、この結果、飽和塩6の重量変化曲線は、負の傾きとなる。また、床面2が発湿面として機能している場合と同様に、床面2が吸湿面として機能している場合においても、記録装置9にて、閉塞空間7内の温湿度変化データと、飽和塩6の重量変化データと、を収集し、収集したこれらのデータに基づいて、上述のように、閉塞空間7内の温湿度安定期間と、飽和塩6の重量変化率安定期間とを特定し、この特定された重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データを用いて、当該期間における床面2の吸湿量及び吸湿速度を算出することが可能である。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態を図4に基づいて説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態における吸放湿量測定装置の概略構成を示す。
【0065】
図1に示した第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
吸放湿量測定装置14は、床面2に載置された支持台15と、支持台15に載置された測定用カバー16と、を備える。
【0067】
測定用カバー16は、箱状であり、その上部側面には、測定用カバー16の内部と外部とを連通する連通管部17を備える。
【0068】
測定用カバー16は、その連通管部17の開口面が、建物の壁面18の一部である測定対象面18aによって閉口され、これによって、測定用カバー16と測定対象面18aとにより囲まれる閉塞空間7が形成される。ここで、建物の壁面18は、厚さ500mmのコンクリート製の地中壁の表面であり、この地中壁の裏側には、厚さ500mmのSWM(ソイルセメントミキシングウォール)の土留めが配置されている。尚、本実施形態では、建物の壁面18が、本発明における建築躯体の表面に対応し、特に、建築躯体の発湿面として機能している。
【0069】
電子天秤4は、測定用カバー16の底面上に配置されており、電子天秤4には、飽和塩6を収容した飽和塩用トレー5が載置されている。尚、図4に示す白抜き矢印は、測定対象面18aより放出された水分が、閉塞空間7を介して、飽和塩6に至る経路の一例を示している。
【0070】
測定用カバー16の連通管部17の開口面と壁面18との接触部には、連通管部17の開口面を密閉させるために、アルミテープ8が貼付されている。従って、測定用カバー16の連通管部17の開口面を密閉させることが可能であれば、壁面18は、平面に限らず、凹凸な面であってもよい。
【0071】
本実施形態では、図4に示した吸放湿量測定装置14を2つ用いて、これらを第3及び第4の測定装置としており、これらの測定装置は、各々が壁面18からの放湿量を測定可能なように、床面2上に互いに隣り合って配置されている。
【0072】
第3の測定装置では、飽和塩6として、硝酸カルシウムの塩飽和水溶液が用いられ、これにより、第3の測定装置の閉塞空間7内の相対湿度が52%程度に保持される。
一方、第4の測定装置では、第3の測定装置の飽和塩6と同量の無水塩化カルシウムが、飽和塩6として用いられ、これにより、第4の測定装置の閉塞空間7内の相対湿度が0%程度に保持される。
【0073】
第3及び第4の測定装置の記録装置9にて生成された飽和塩6の重量変化曲線を図示すると、図5のようになる。
【0074】
図5は、第3及び第4の測定装置における、測定時間と、測定対象面18aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す。
【0075】
図5において、実線は、第3の測定装置に対応しており、飽和塩6が硝酸カルシウムの塩飽和水溶液である場合の重量変化曲線を示す。また、一点鎖線は、第4の測定装置に対応しており、飽和塩6が無水塩化カルシウムである場合の重量変化曲線を示す。
【0076】
また、本実施形態では、図5に示す期間t5〜t6が、第3及び第4の測定装置における閉塞空間7内の温湿度安定期間として特定され、かつ、期間t15〜t16が、第3及び第4の測定装置における飽和塩6の重量変化率安定期間として特定されている。従って、測定者は、第3及び第4の測定装置の各々について、期間t15〜t16における飽和塩6の重量変化データに基づいて、当該期間における壁面18の放湿量と放湿速度とを算出する。
【0077】
具体的には、測定者は、第3及び第4の測定装置の各々について、期間t15〜t16における飽和塩6の重量変化データに基づいて、期間t15〜t16における測定間隔毎の飽和塩6の重量変化量を算出し、これらの算出値を期間t15〜t16において積算し、この積算値を、期間t15〜t16における壁面18の放湿量とする。
【0078】
また、測定者は、第3及び第4の測定装置の各々について、期間t15〜t16における飽和塩6の重量変化データと、測定対象面18aの有効面積と、に基づいて、期間t15〜t16における測定対象面18aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化データを算出し、算出されたこれらのデータに対して、最小二乗法を適用して、期間t15〜t16における、測定時間と、測定対象面18aの単位面積当たりの飽和塩6の重量変化量と、の関係を示す近似直線を求める。そして、この近似直線の傾きを算出し、この算出された傾きを、壁面18の放湿速度として採用している。尚、本実施形態では、この近似直線の傾きが、図5の期間t15〜t16における重量変化曲線の傾きに相当しており、このため、図5の期間t15〜t16における重量変化曲線の傾きが、壁面18の放湿速度に対応している。
【0079】
図5に示すように、飽和塩6が無水塩化カルシウムである場合には、飽和塩6が硝酸カルシウムの塩飽和水溶液である場合に比べて、重量変化曲線の傾きが大きく、それゆえ、壁面18の放湿速度が高い(すなわち、壁面18の単位時間・面積当たりの放湿量が多い)。
【0080】
特に本実施形態によれば、箱状の測定用カバー16は、その側面に連通管部17を備え、連通管部17の開口面が、測定対象面18aによって閉口されて、閉塞空間7が形成される。これにより、比較的小型かつ簡素な構成にて、壁面18からの放湿量を測定することができるので、壁面18からの放湿量を、現場にて簡易に測定することができる。
【0081】
尚、本実施形態では、連通管部17が、測定用カバー16の上部側面に設けられているが、この他に、例えば、測定用カバー16の一側面を開口面とし、これを、連通管部17の開口面としてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、壁面18が、水分を閉塞空間7に放出する発湿面として機能している場合に、吸放湿量測定装置14を用いて、壁面18からの放湿量を測定する手法を説明したが、この他に、又は、これに加えて、壁面18が、閉塞空間7から水分を吸収する吸湿面として機能している場合にも、吸放湿量測定装置14を用いることが可能である。この場合には、飽和塩6中の水分が閉塞空間7を介して壁面18に吸収され得るので、測定時間が経過するほど、飽和塩6の重量は減少し、この結果、飽和塩6の重量変化曲線は、負の傾きとなる。また、壁面18が発湿面として機能している場合と同様に、壁面18が吸湿面として機能している場合においても、記録装置9にて、閉塞空間7内の温湿度変化データと、飽和塩6の重量変化データと、を収集し、収集したこれらのデータに基づいて、上述のように、閉塞空間7内の温湿度安定期間と、飽和塩6の重量変化率安定期間とを特定し、この特定された重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データを用いて、当該期間における壁面18の吸湿量及び吸湿速度を算出することが可能である。
【0083】
上述の第1及び第2の実施形態では、電子天秤4を閉塞空間7内に配置しているが、閉塞空間7内に配置された飽和塩6の重量変化量を測定することが可能であれば、電子天秤4の設置箇所は、閉塞空間7内に限らず、閉塞空間7外であってもよい。この一例としては、測定用カバー3,16の上面に連通孔を形成して、測定用カバー3,16の上面に電子天秤4を載置する一方、閉塞空間7内の飽和塩用トレー5にワイヤーの一端を取り付け、その他端を、測定用カバー3,16の上面の連通孔を介して、電子天秤4に取り付けて、飽和塩用トレー5をワイヤーで吊るす状態にして、飽和塩6の重量変化量を電子天秤4にて測定することが挙げられる。この場合には、例えば、ワイヤーにグリスを予め塗布することにより、測定用カバー3,16の上面の連通孔の密閉性を確保することができる。
【0084】
また、上述の第1及び第2の実施形態では、測定者が、記録装置9にて収集された閉塞空間7内の温湿度変化データと、飽和塩6の重量変化データと、を用いて、閉塞空間7内の温湿度安定期間と、飽和塩6の重量変化率安定期間とを特定する処理を行い、更に、この特定された重量変化率安定期間における飽和塩6の重量変化データを用いて、当該期間における床面2,壁面18の吸放湿量・吸放湿速度を決定する処理を行っているが、これらの期間特定処理及び吸放湿量・吸放湿速度決定処理を自動的に行うことも可能である。この場合には、例えば、電子天秤4、記録装置9、温度センサ10、及び湿度センサ11を、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置に電気的に接続させ、この演算処理装置にて、上述の期間特定処理及び吸放湿量・吸放湿速度決定処理を行わせる。
【符号の説明】
【0085】
1 吸放湿量測定装置
2 床面(建築躯体の表面)
2a 測定対象面
3 測定用カバー
4 電子天秤
5 飽和塩用トレー
6 飽和塩
7 閉塞空間
8 アルミテープ
9 記録装置
10 温度センサ
11 湿度センサ
14 吸放湿量測定装置
15 支持台
16 測定用カバー
17 連通管部
18 壁面(建築躯体の表面)
18a 測定対象面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築躯体の表面からの吸放湿量を測定する装置であって、
開口面を有する箱状であり、かつ、前記開口面が前記表面の一部により閉口されて、内部に閉塞空間が形成される測定用カバーと、
前記閉塞空間内に配置されて、前記表面の一部より放出・吸収される水分を吸収・放出する飽和塩と、
前記吸収・放出による前記飽和塩の重量変化量を測定する電子天秤と、
を含んで構成される吸放湿量測定装置。
【請求項2】
前記飽和塩の重量変化率が安定している期間を特定し、この特定された重量変化率安定期間における前記飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、前記吸放湿量を決定する、請求項1に記載の吸放湿量測定装置。
【請求項3】
前記閉塞空間内の温湿度が安定している期間を特定し、この特定された温湿度安定期間における前記飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、前記吸放湿量を決定する、請求項1又は請求項2に記載の吸放湿量測定装置。
【請求項4】
建築躯体の表面からの吸放湿量を測定する方法であって、
測定用カバーにより前記表面の一部を覆って、前記測定用カバーと前記表面の一部とにより囲まれる閉塞空間を形成し、
前記表面の一部より放出・吸収される前記閉塞空間内の水分を、前記閉塞空間内に予め配置された飽和塩により吸収・放出させ、
この吸収・放出による前記飽和塩の重量変化量を、電子天秤を用いて測定し、かつ、
前記飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、前記吸放湿量を決定する、
吸放湿量測定方法。
【請求項5】
前記飽和塩の重量変化率が安定している期間における前記飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、前記吸放湿量を決定する、請求項4に記載の吸放湿量測定方法。
【請求項6】
前記閉塞空間内の温湿度が安定している期間における前記飽和塩の重量変化量の測定値に基づいて、前記吸放湿量を決定する、請求項4又は請求項5に記載の吸放湿量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13646(P2012−13646A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152980(P2010−152980)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)