説明

吸水処理材及びその製造方法

【課題】使用後において、短時間で均一に被覆層部を染色可能であるとともに、安価かつ容易に製造することが可能となる複層構造の吸水処理材を提供する。
【解決手段】粒状芯部と前記粒状芯部を被覆する被覆層部とを有する吸水処理材において、前記被覆層部は、その構成比が、99.0重量%乃至99.93重量%である基材と、1.0重量%乃至0.07重量%の染色材料とから構成されており、前記染色材料は、吸着率25重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、前記多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されている水溶性染料を含み、前記水溶性染料は、前記被覆層部100重量部に対して、0.010重量部乃至0.017重量部の範囲内となるように添加されているとともに、前記被覆層部は、外部水分と前記水溶性染料が接触することにより、染色可能となるように構成されている吸水処理材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材(以下、単に「吸水処理材」という)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、愛玩動物等の排泄物の処理を行うための吸水処理材の認知が進んでいるが、低価格化の要請が強くなってきている。このような要請に応えるために、種々の材料が使用されてきている。ところが、種々の材料は固有の色(明度、彩度、色合い、以下同様)を有しており、単に当該材料を用いて吸水処理材を製造すると、美観上に問題が生じる場合が存在していた。そのような問題点を解決するために、例えば、予め着色された不活性である微細な無機酸化物等の粉体を吸水処理材に混入し、吸水処理材を発色させる技術が存在している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3740440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この技術は、着色料を直接的に吸水処理材に混入した場合と比較すれば、微細な無機酸化物等の粉体を吸処理材に混入しているため着色されやすいが、粉体を混入しているため着色が不均一となる場合が存在していた。
また、色合いの異なる複数の色素を用いて、混合色となるように染色させる場合があるが、各々の色素が別々に発色してしまうため、所望する混合色となるように染色することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記の各問題点を解決するためになされたものであり、使用後において、短時間で均一に被覆層部を染色可能であるとともに、安価かつ容易に製造することが可能となる複層構造の吸水処理材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の吸水処理材は、粒状芯部と前記粒状芯部を被覆する被覆層部とを有する吸水処理材において、前記被覆層部は、その構成比が、99.0重量%乃至99.93重量%である基材と、1.0重量%乃至0.07重量%の染色材料とから構成されており、前記染色材料は、吸着率25重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、前記多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されている水溶性染料を含み、前記水溶性染料は、前記被覆層部100重量部に対して、0.010重量部乃至0.017重量部の範囲内となるように添加されているとともに、前記被覆層部は、外部水分と前記水溶性染料が接触することにより、染色可能となるように構成されていることを特徴としている。
【0007】
また、上記吸水処理材において、上記水溶性染料は、2種類以上の種類や色相が異なる水溶性染料の混合物とすることができる。
【0008】
本発明によれば、染色材料は、微細孔を有する多孔質吸着剤と、水溶性染料を含んでいる。水溶性染料は、多孔質吸着剤の微細孔に吸着されているため、粒状芯部等から滲出する水分を遮断し、水溶性染料が水分と反応することを防止することができる。
【0009】
また、本発明の吸水処理材の製造方法は、粒状芯部と、前記粒状芯部を被覆する被覆層部とを有し、前記被覆層部は水溶性染料を含んでおり、外部水分と前記水溶性染料が接触することにより、前記被覆層部が染色可能となるように構成されている複層構造である吸水処理材の製造方法において、前記粒状芯部を製造する造粒工程と、前記水溶性染料を溶媒に溶解させ、当該溶解させた水溶性染料を、微細孔を有する多孔質吸着剤に吸着させることにより、染色材料を調合する染色材料調合工程と、基材に前記染色材料を添加することにより、前記被覆層部を構成する被覆材料を製造する被覆材料製造工程と、前記粒状芯部の周囲を前記被覆材料で被覆する被覆工程とを、含むことを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、水溶性染料を直接に添加するのではなく、水溶性染料を一旦溶媒に溶解させ、その後、微細孔を有する多孔質吸着剤に吸着させているため、使用後において、均一かつ美観に優れた着色を実現させることができる。
また、色や種類の異なる複数の色素を溶媒に溶解させて多孔質吸着剤に吸着させ、それを被覆層部に添加することで、容易に所望の色となるように染色させることができる。
【0011】
また、本発明において、前記吸水処理材は、前記粒状芯部が80重量%乃至87重量%、前記被覆層部が20重量%乃至13重量%の構成比であり、前記造粒工程において、前記粒状芯部の含水率を20重量%乃至41重量%にするとともに、前記染色材料調合工程において、前記水溶性染料は、前記被覆層部100重量部に対して、0.010乃至0.017の範囲内となるように添加する構成としてもよい。
【0012】
本発明によって製造された本吸水処理材によれば、当該水溶性染料を直接に添加するのではなく、水溶性染料を一旦溶媒に溶解させ、その後、多孔質吸着剤に吸着させている。多孔質吸着剤は間隙部に水溶性染料を吸着させているため、粒状芯部等から滲出する水分を遮断し、水溶性染料が水分と反応することにより、使用前において、発色を防止することができる。
また、被覆層部に水溶性染料を混入しているため、外部からの水分と接触することにより発色した色素が速やかに被覆層部に拡散することから、短時間で美観に優れた染色を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用前に発色することなく、使用後のみに外部水分と水溶性染料が接触することにより、被覆層部が染色可能であるとともに、安価かつ容易に複層構造の吸水処理材及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の吸水処理材の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための一形態(以下、「実施形態」という。)について、猫や犬等の愛玩動用の排泄物を処理するための粒状の吸水処理材(排泄物処理材)を例として、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[吸水処理材]
本発明の吸水処理材(以下、「本吸水処理材」という。)は、外部からの水分を吸収するための粒状芯部と、この粒状芯部の表面を被覆する所定厚さの被覆層部とから形成される複層構造を有している。
【0017】
<粒状芯部の構成材料>
粒状芯部は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わない。
また、粒状芯部は吸水性能又は保水性能を有していればその材質等に制限はない。
例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)等の他、生分解性プラスチックなどのプラスチック材料を使用することもできる。
【0018】
さらに、動物用排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物若しくは合成樹脂繊維廃材(以下、これらの材料を総称して「衛生廃材等」ということがある。)を用いることもできる。
【0019】
また、上記プラスチック材料に加えて、他の有機質廃材を加えることもできる。それらの有機質廃材としては、動物用排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、動物用紙おむつ廃材(衛生材メーカーから発生する規格外品の紙おむつの外装体など)、生理用ナプキン廃材、動物用生理用ナプキン廃材(衛生材メーカーから発生する規格外品の生理用ナプキンの外装体など)、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーから発生するトリムロス、不織布等や、製紙メーカーから発生する紙屑全般)、製紙スラッジ、パルプスラッジ、木材屑、鉋屑、木粉、紙粉、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、茶殻、野菜屑、使用済み切符若しくはパンチ屑、又はこれら二以上の材料の混合物の粉砕物(以下、これらの材料を総称して「有機質廃材」ということがある。)を用いることができる。
【0020】
また、粒状芯部には、無機質廃材や、ベントナイト、ゼオライト等の無機質材料等を用いることもできる。
なお、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質、検査用指示薬等、吸水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能となるような物質を配合することもできる。
【0021】
<被覆材料>
被覆層部は、基材と染色材料を添加した被覆材料を主な構成材料としている。
【0022】
◎被覆材料
被覆層部は、使用時に尿等の排泄物で濡れた吸水処理材同士を付着させて塊状とさせる作用を奏させることを第1の目的として設けられている。また、被覆層部は、粒状芯部が固有の色を有している場合に、その周囲を覆うことによって、使用前に粒状芯部の色を隠すという作用を奏させることを第2の目的として設けられている。
これらの被覆層部の役割は、基材が担っているが、その材料の例としては、吸水性樹脂、接着性を有する水溶性材料(以下、「水溶性接着材料」という。)若しくは両材料の混合物と、紙粉の混合物とを用いることが好適である。
【0023】
上記吸水性樹脂とは、ポリマー、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉(T−α化澱粉、デキストリン、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉)などの吸水性能を備える樹脂である。特に、ポリマーは高い吸水性能を有している高吸水性樹脂である。
【0024】
上記水溶性接着材料としては、例えば、糊料やポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂がある。このような接着剤として機能する糊料としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、各アルファ(α)化した澱粉などの澱粉類、アクリルアミド、PVA、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムを使用することができ、又はこれらの2種類以上の物質を組み合わせて使用することができる。また、その他の接着剤としては、高吸水性樹脂、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン又はゼラチンなどがあり、これらは単独で使用されるか、又はこれらの2種以上の物質を混合して使用する。
【0025】
紙粉としては、薄葉紙、薄葉紙廃材、衛生用紙、衛生用紙廃材、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、化粧紙用紙、化粧紙廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙綿、紙綿廃材、紙タオル、紙タオル廃材、便座シート廃材、機械パルプ、機械パルプ廃材、化学パルプ、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、木材パルプ、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉又はこれら二以上の粉砕物の混合物であり、何れも、0.5ミリメートル以下、好ましくは、0.3ミリメートル以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用される。
【0026】
◎染色材料
さらに、被覆層部は、使用後に染色することにより、使用部分と未使用部分の判別を容易にするとともに、使用後にも粒状芯部の色隠すという作用を奏させることを第3の目的として設けられている。
この目的を達成するために、本吸水処理材では溶剤に溶解させた水溶性染料を多孔質吸着剤に吸着させた染色材料が用いられている。
【0027】
水溶性染料を使用する目的は、外部から浸透する水分により染色を容易に行うためであり、直接染料、水に易溶である酸性染料及び塩基性染料の一部、反応性染料など、下記の水に対する溶解度の要件を満たす公知の水溶性天然染料及び水溶性合成染料を使用することができる。また、この水溶性染料は、種類や色相の異なる複数の水溶性染料の混合物(種類や色相の異なる複数の色素(着色料)の混合物から構成されているものなど)とすることも可能である。
【0028】
下記で詳述するように、本吸水処理材では、水溶性染料の添加方法に特徴を有している。すなわち、水溶性染料は、一旦、溶媒である水に溶解させ、それを微粉末に粉砕した多孔質吸着剤に吸着させた後に、その粒状物を被覆層部に添加するものである。
【0029】
多孔質吸着剤は、微細孔(微細空隙)を多く含み、表面積が大きく、吸着率が25重量%以上である吸着剤を用いることが必要であり、シリカゲル(いわゆる、A型シリカゲル及びB型シリカゲル)(二酸化珪素)、ゼオライト(アルミノ珪酸塩)等の公知の物質を用いることができる。特に、B型シリカゲルは、平均吸着表面積約450(m/g)、平均微細孔径約60Å、微細孔容積約0.75(ml/g))と、A型シリカゲル(A型シリカゲルは平均吸着表面積約700(m/g)、平均微細孔径約24Å、微細孔容積約0.46(ml/g))と比較して、微細孔径及び微細孔容積が大きいため、溶解させた水溶性染料を吸着させる場合には高い吸着性能を発揮することになり、非常に好適である。
【0030】
上記の水溶性染料を添加することにより、例えば、粒状芯部と被覆層部の色を異なる色として、被覆層部を発色させることにより他色に染色すること(例えば、粒状芯部を黄色とし被覆層部を青色に発色させて全体を緑色に染色することや、粒状芯部を白色とし被覆層部を赤色に発色させて全体を桃色に染色することなど)や、粒状芯部と被覆層部を同色系の色に染色することなどが可能となる。
このように、被覆材料の種類、被覆層部及び粒状芯部の色、染色を希望する使用後の被覆層部の色等を考慮して、適切な水溶性染料を用いることができる。
【0031】
また、被覆層部には、浸透剤又は膨潤剤を添加することも可能である。浸透剤としては、各種の界面活性剤など公知の物質を用いることができ、膨潤剤としては、セルロース系の膨潤剤など公知の物質を使用することができる。
【0032】
◎被覆材料の構成比率
被覆材料は、その構成比率が、99.0重量%乃至99.93重量%(好ましくは、99.60重量%乃至99.85重量%)である基材と、1.0重量%乃至0.07重量%(好ましくは、0.40重量%乃至0.15重量%)の染色材料となるように構成されている。
そして、染色材料中の水溶性染料は、被覆層部100重量部に対して、0.010乃至0.017(より好ましくは、0.013乃至0.015)の範囲内となるように添加されている。
また、染色材料は、水溶性染料1重量部に対して、多孔質吸着剤6.5重量部乃至11.0重量部の範囲内の配合比率であることが好ましいものである。
【0033】
<粒状芯部と被覆層部の構成比率等>
本吸水処理材は、粒状芯部が80重量%乃至87重量%、被覆層部が20重量%乃至13重量%の構成比率であることが、粒状芯部の寸法及び被覆層部の層厚や下記の水溶性染料の添加割合との関係上最適である。
【0034】
[製造方法]
続いて、本発明の吸水処理材の製造方法について、図1を参照して説明する。
本発明に係る排泄物処理材の製造方法は、造粒工程(S1)と、染色材料調合工程(S2)と、被覆材料製造工程(S3)と、被覆工程(S4)と、分粒工程(S5)と、乾燥工程(S6)とから構成されている。
【0035】
(1)造粒工程(S1)
本工程は、粒状芯部を形成する工程である。
本工程では、プラスチック材料、衛生廃材等、有機質廃材などの構成材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された構成材料を所定の割合となるようにミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水して含水率を高めた後に、基材を押出造粒することにより、粒状芯部を形成する作業を行うことになる。
【0036】
被覆材料は粒状芯部に存在する水分によってその周囲に付着するため、当該被覆層部の形成前における粒状芯部の含水率の下限値を下回ると、粒状芯部の周囲に被覆層部を形成する材料が付着しないことなる。すなわち、粒状芯部の含水率が20重量%未満の場合には、所定の作用を奏するために必要となる所定厚の被覆層部が形成されず、複層構造の吸水処理材が形成されない結果となり、被覆層部に剥離が生じたり、使用後に塊状にならならず、美観にも優れないため好ましくない。
一方、粒状芯部の含水率が41重量%を上回ると、被覆層部の形成時において粒状芯部の水分が過剰に被覆層部に滲出することにより、水溶性染料と接触し、発色してしまうことになるため好ましくない。
このような事情を考慮して、上記の押出造粒する場合には、20重量%乃至41重量%(より好ましくは、20重量%乃至25重量%)となるように含水率を調整することが好ましい。
【0037】
(2)染色材料調合工程(S2)
本工程は、染色材料を調合する工程であり、さらに、溶解工程(S21)、吸着工程(S22)から構成されている。
【0038】
溶解工程(S21)は、水溶性染料(1種類又は複数種類の混合物)を溶媒に溶解させる工程である。
本工程では、所望の水溶性染料を、当該水溶性染料1重量部に対して、溶媒である水が1.5重量部乃至5.7重量部となるように、溶媒である水に溶解させる。このとき、使用する水溶性染料の種類に応じて、上記希釈倍率を達成することができることになるのであれば、必ずしも、その水温は問わないものであるが、水溶性染料は水温を高いほど溶解しやすいため、60℃乃至100℃(より好ましくは、85℃乃至95℃)の温水又は熱湯(溶媒)に溶解させることが好適である。
【0039】
吸着工程(S22)は、溶解させた水溶性染料を、微細粉末とした多孔質吸着剤に少量ずつ、滴下し、混合することにより、水溶性染料を多孔質吸着剤に吸着させて染色材料を調合する工程である。
水溶性染料と多孔質吸着剤の構成割合は、多孔質吸着剤の吸着率と水溶性染料の希釈倍率に依存することになる。しかし、多孔質吸着剤の添加量を所定量より多くすると、多孔質吸着剤の粒子が被覆層部の表層から顕出してしまい、当該顕出した部分が表層から突起状に突出することになる。そして、袋詰時や運搬時において、吸水処理材同士が接触することにより、当該突出部が基端部から分離し、表層部が破損するなどの状態が生じるため好ましくない。
【0040】
また、被覆層部の基材と、水溶性染料と多孔質吸着剤から形成される染色材料の構成比は、前者が、99.0重量%乃至99.97重量%、後者が1.0重量%乃至0.03重量%の範囲内であり、また、染色材料中の水溶性染料は、被覆層部100重量部に対して、0.010乃至0.017の範囲内となるように添加することが必要となる。
なお、多孔質吸着剤の吸着率はその物質により決まっていることから、使用後に発色させるのに必要となる水溶性染料を吸着させるための、多孔質吸着剤の最低必要量が理論的に決定されることになる(通常は、水溶性染料1重量部に対して、多孔質吸着剤6.5重量部乃至11.0重量部程度)。
【0041】
(3)被覆材料製造工程(S3)
本工程は、被覆層部を構成する被覆材料を製造する工程である。
本工程は、所定の材料から構成される基材に、染色材料調合工程で調合された染色材料を添加し、混合することにより被覆材料を製造する工程である。
なお、被覆層部に、浸透剤や膨潤剤などの被覆材料と染色材料以外の所望の材料を添加することきは、本工程で行うことになる。
【0042】
(4)被覆工程(S4)
本工程は、粒状芯部の周囲を上記被覆材料で被覆することにより、被覆層部を形成する工程である。本工程では、コーティング装置等を用いて、粒状芯部の周囲に被覆材料を噴霧し、被覆層部を形成することにより、複層構造の吸水処理材を製造する作業を行うことになる。
【0043】
(5)分粒工程(S5)
本工程は、吸水処理材の寸法が所定の規格になるように分粒する工程である。
本工程では、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された吸水処理材を通過させることにより規格外の製品を分別し、所定の規格品のみを抽出する作業を行うことになる。
【0044】
(6)乾燥工程(S6)
本工程は、規格品として抽出した吸水処理材を乾燥機で乾燥させる工程である。
吸水性処理材の保存時において粒状芯部の含水率が高い場合には、長期的に粒状芯部の水分が滲出して、水溶性染料と反応して発色してしまうことになる。そこで、本吸水性処理材は、保存時に発色することを防ぐことが可能となる粒状芯部の含水率を3%以上10%以下の範囲内となるように乾燥させることになる。
【0045】
[作用効果]
本発明によって製造された吸水処理材によれば、当該水溶性染料を直接に添加するのではなく、水溶性染料を一旦溶媒に溶解させ、その後、多孔質吸着剤に吸着させている。多孔質吸着剤は間隙部に水溶性染料を吸着させているため、粒状芯部等から滲出する水分を遮断し、水溶性染料が水分と反応することにより、使用前において、発色を防止することができる。
【0046】
また、被覆層部に水溶性染料を混入しているため、外部からの水分と接触することにより発色した色素が速やかに被覆層部に拡散することから、短時間で鮮やかに被覆層部を染色することができる。特に、被覆層部は白色の紙粉等を多く含んでいるため、白色であることが多いが、その場合には、水溶性染料によって鮮やか、かつ綺麗に染色することができる。
さらに、色や種類の異なる複数の色素を溶媒に溶解させて、多孔質吸着剤に吸着させ、それを被覆層部に添加することで、容易に所望の色となるように染色させることができる。
【0047】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。本実施形態では、愛玩動用の排泄物を処理するための吸水処理材の製造方法を例として説明したが、吸水処理材の用途は人間や他の動物等に使用するものあってもいいことは言うまでもない。
また、上記説明において、造粒工程の後に、染色材料調合工程を行う説明としたが、両工程は時間的に並列して行ってもよい。
さらに、上記工程以外にも、適宜、他の工程を追加することも可能である。
【実施例】
【0048】
本吸水処理材の性能を調べるために、下記製造方法でサンプルを作成し、4種類の発色試験を行った。
【0049】
1.吸着剤の違いによる発色試験
【0050】
<構成材料>
以下の試験で使用した各サンプルは、粒状芯部と被覆層部とから形成される複層構造の吸水処理材であり、当該粒状芯部と被覆層部を構成する材料の重量比を80%対20%とした。また、粒状芯部及び被覆層部を構成する以下の構成材料は各サンプルともに共通とした。
【0051】
(1)粒状芯部
塩化ビニル壁紙、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、損紙を原材料とした。
【0052】
(2)被覆層部
基材は、紙粉60重量%、タピオカアルファー化澱粉20重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(吸水性樹脂)16重量%、デキストリン4重量%を混合して生成した。
水溶性染料は、食用青色1号(別名:ブリリアントブルーFCF、ダイワ化成株式会社製)を用いた。
各サンプルは、吸着剤として、B型シリカゲル、A型シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化チタン、炭酸カルシウムの微粉末を使用した。
【0053】
<製造方法>
サンプルは、本発明の製造方法を用いて吸水処理材を製造したものである。
まず、上記構成材料を混ぜ合わせ、加水して含水率を20%に高めた後に、基材を押出造粒することにより、粒状芯部(4000g)を形成した。
次に、上記混合された水溶性染料を希釈倍率が、2.33倍(水70重量%、水溶性染料30重量%)となるように、溶媒である60℃の湯に溶解させた。そして、溶解させた水溶性染料を、少量ずつ、微細粉末とした上記6種類の各吸着剤に滴下・混合することにより、吸着剤に吸着させて染色材料を調合した。
その後、基材(990g)に染色材料(10g)を添加し、混合することにより被覆材料(1000g)を製造した。続いて、粒状芯部の周囲を被覆材料で被覆することにより、被覆層部を形成した。
【0054】
<観察結果>
まず、上記の各サンプルに関し、水溶性染料の吸着率を測定したところ、B型シリカゲル49.5%、A型シリカゲル26.0%、ゼオライト26.0%、活性炭5.5%、酸化チタン5.5%、炭酸カルシウム4.5%となった。
ところで、被覆層部の全質量に対する水溶性染料の配合量は、B型シリカゲル0.014%、A型シリカゲル0.0070%、ゼオライト0.0070%、活性炭0.0015%、酸化チタン0.0015%、炭酸カルシウム0.0012%となった(この場合、染色材料10gであり、吸着率から水溶性染料の配合量が定まる)。
【0055】
【表1】

【0056】
上記の各サンプルに関し、それぞれ使用前後で被覆層部の発色の程度を目視により観察した。その結果、25%以上の吸着率を呈した各サンプルは、多孔質吸着剤(B型シリカゲル、A型シリカゲル、ゼオライト)を使用したものであり、使用前において被覆層部の発色が視認されず、使用後には、被覆層部が青色に発色し、明瞭に染色されるという良好な結果となった。
一方、25%未満の吸着率を呈したる各サンプル(活性炭、酸化チタン、炭酸カルシウム)では、使用前後において被覆層部の発色が視認されず、良好な結果が得られなかった。
【0057】
この結果によれば、吸着率が高い多孔質吸着剤を使用したサンプルほど、多量の水溶性染料を保持させることが可能となることが明らかになり、また、粒状芯部等から滲出する水分を遮断し、水溶性染料が水分と反応することにより、使用前において、発色を防止することができることが確認された。
【0058】
2.製造方法の異なるサンプルによる発色試験
<構成材料>
以下の試験で使用した各サンプルは、粒状芯部と被覆層部とから形成される複層構造の吸水処理材であり、当該粒状芯部と被覆層部を構成する材料の重量比を80%対20%とした。また、粒状芯部及び被覆層部を構成する以下の構成材料は各サンプルともに共通とした。
【0059】
(1)粒状芯部
塩化ビニル壁紙、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、損紙を原材料とした。
【0060】
(2)被覆層部
基材は、紙粉60重量%、タピオカアルファー化澱粉20重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(吸水性樹脂)16重量%、デキストリン4重量%を混合して生成した。
水溶性染料は、食用青色1号(別名:ブリリアントブルーFCF、ダイワ化成株式会社製)を66.7重量%、食用黄色4号(別名:タートラジン、ダイワ化成株式会社製)を33.3重量%の構成比率となるように混合した。
また、多孔質吸着剤として、B型シリカゲルの微粉末を使用した。
【0061】
<製造方法>
(1)第1のサンプル
第1のサンプルは、本発明の製造方法を用いて吸水処理材(5000g)を製造したものである。
まず、上記構成材料を混ぜ合わせ、加水して含水率を20%に高めた後に、基材を押出造粒することにより、粒状芯部(4000g)を形成した。
次に、上記混合された水溶性染料を希釈倍率が、5.67倍(水85重量%、水溶性染料15重量%)となるように、溶媒である90℃の熱湯に溶解させた(熱湯0.76g、水溶性染料0.14g[内訳、食用青色1号(0.10g)、食用黄色4号(0.04g)])。そして、溶解させた水溶性染料を、少量ずつ、微細粉末とした多孔質吸着剤(1.1g)に滴下・混合することにより、多孔質吸着剤に吸着させて染色材料(2g)を調合した。その後、基材(998g)に染色材料(2g)を添加し、混合することにより被覆材料(1000g)を製造した。
続いて、粒状芯部の周囲を被覆材料で被覆することにより、被覆層部を形成した。
【0062】
(2)第2のサンプル
第2のサンプルは、本発明の製造方法のうちの被覆材料製造工程のみを以下の工程に置換して、吸水処理材を製造したものである。
すなわち、水溶性染料である食用青色1号(0.10g)と食用黄色4号(0.04g)を、固体のままで基材(999.86g)に直接添加し、混合することにより、被覆材料(1000g)を形成したものである。
【0063】
<観察結果>
上記の各サンプルに関し、それぞれ使用前後で被覆層部の発色の程度を目視により観察した。その結果、本発明の製造方法を用いて製造した第1のサンプルは、使用前において被覆層部の発色が視認されず、使用後には、被覆層部が、食用青色1号と食用黄色4号の混合色である緑色となるように明確に染色されるという良好な結果となった。
一方、本発明の製造方法と異なる従来方法で製造された第2のサンプルは、食用青色1号と食用黄色4号の色素が別々に発色することにより、部分的に青色と黄色の部分が生じてしまい、良好な結果が得られなかった。
以上の結果より、本発明の有用性が確認された。
【0064】
3.被覆層部の配合比の異なるサンプルによる発色試験
本試験では、上記「2.製造方法の異なるサンプルによる発色試験」と同様の構成材料を使用し、本発明の製造方法を用いて、基材と染色材料(被覆材料)の構成比の異なる合計108パターンのサンプル群を製造した(基材が、98.91重量%乃至99.98重量%、染色材料が1.09重量%乃至0.02重量%の範囲内となるように、0.01重量部ずつ変化させることにより各サンプルを製造した)。
【0065】
<観察結果>
上記の各サンプルに関し、それぞれ使用前後で被覆層部の発色の程度を目視により観察した。その結果、被覆材料を99.00重量%乃至99.93重量%、染色材料を1.00重量%乃至0.070重量%とした各サンプルに関しては、使用前において被覆層部の発色が視認されず、使用後には、被覆層部が、食用青色1号と食用黄色4号の混合色である緑色となるように明確に染色されるという良好な結果となった(特に、基材を、99.60重量%乃至99.85重量%、染色材料を、0.40重量%乃至0.15重量%とした各サンプルは、特に良好な結果であった)。
一方、被覆材料を99.94重量%乃至99.98重量%、染色材料を0.06重量%乃至0.02重量%とした各サンプルに関しては、使用前及び使用後において、明確な染色が確認されず、良好な結果が得られなかった。
また、被覆材料を98.91重量%乃至98.99重量%、染色材料を1.09重量%乃至1.01重量%とした各サンプルに関しては、使用前において、食用青色1号と食用黄色4号の混合色である緑色となるように明確に染色されてしまい、良好な結果が得られなかった。
【0066】
4.水溶性染料量の異なるサンプルによる発色試験
本試験では、上記「2.製造方法の異なるサンプルによる発色試験」と同様の構成材料を使用し、本発明の製造方法を用いて、被覆材料1000gに対する水溶性染料の添加量を0.07g乃至0.20g(但し、配合比率は、食用青色1号と食用黄色4号の重量比は、2対1)の範囲で、0.01重量部ずつ変化させることにより製造された、配合比率の異なる合計14パターンのサンプル群を使用し、発色の状況を確認した。
【0067】
<観察結果>
上記の各サンプルに関し、それぞれ使用前後で被覆層部の発色の程度を目視により観察した。その結果、被覆材料1000gに対する水溶性染料の添加量を0.10g乃至0.17gとした各サンプルに関しては、使用前において被覆層部の発色が視認されず、使用後には、被覆層部が、食用青色1号と食用黄色4号の混合色である緑色となるように明確に染色されるという良好な結果(添加量を0.13g乃至0.15gとした各サンプルは、特に良好であった)。
一方、被覆材料1000gに対する水溶性染料の添加量を0.07g乃至0.09gとした各サンプルに関しては、使用前及び使用後において、明確な染色が確認されず、良好な結果が得られなかった。
また、被覆材料1000gに対する水溶性染料の添加量を0.18g乃至0.20gとした各サンプルに関しては、使用前において、食用青色1号と食用黄色4号の混合色である緑色となるように明確に染色されてしまい、良好な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0068】
S1 造粒工程
S2 染色材料調合工程
S3 被覆材料製造工程
S4 被覆工程
S5 分粒工程
S6 乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状芯部と前記粒状芯部を被覆する被覆層部とを有する吸水処理材において、
前記被覆層部は、その構成比が、99.0重量%乃至99.93重量%である基材と、1.0重量%乃至0.07重量%の染色材料とから構成されており、
前記染色材料は、吸着率25重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、前記多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されている水溶性染料を含み、
前記水溶性染料は、前記被覆層部100重量部に対して、0.010重量部乃至0.017重量部の範囲内となるように添加されているとともに、
前記被覆層部は、外部水分と前記水溶性染料が接触することにより、染色可能となるように構成されていることを特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
前記水溶性染料は、2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の吸水処理材。
【請求項3】
粒状芯部と、前記粒状芯部を被覆する被覆層部とを有し、
前記被覆層部は水溶性染料を含んでおり、外部水分と前記水溶性染料が接触することにより、前記被覆層部が染色可能となるように構成されている複層構造である吸水処理材の製造方法において、
前記粒状芯部を製造する造粒工程と、
前記水溶性染料を溶媒に溶解させ、当該溶解させた水溶性染料を、微細孔を有する多孔質吸着剤に吸着させることにより、染色材料を調合する染色材料調合工程と、
基材に前記染色材料を添加することにより、前記被覆層部を構成する被覆材料を製造する被覆材料製造工程と、
前記粒状芯部の周囲を前記被覆材料で被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする吸水処理材の製造方法。
【請求項4】
前記吸水処理材は、前記粒状芯部が80重量%乃至87重量%、前記被覆層部が20重量%乃至13重量%の構成比であり、
前記造粒工程において、前記粒状芯部の含水率を20重量%乃至41重量%にするとともに、
前記染色材料調合工程において、前記水溶性染料は、前記被覆層部100重量部に対して、0.010重量部乃至0.017重量部の範囲内となるように添加することを特徴とする請求項3に記載の吸水処理材の製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2011−147382(P2011−147382A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10626(P2010−10626)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000148977)株式会社大貴 (43)
【Fターム(参考)】