説明

吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物

【課題】吸水性樹脂粒子の吸収速度を、吸収量の低下等を抑えながら効果的に向上させることができる吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物等を提供すること。
【解決手段】本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物は、
(a)下記一般式(1)
1O−(EO)k−H ・・・(1)
〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基、EOはオキシエチレン基、kは4〜12の数を示す。〕
で表される化合物、及び
(b)下記一般式(2)
2O−(PO)p−H ・・・(2)
〔式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基、POはオキシプロピレン基、pは1〜7の数を示す。〕
で表される化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体には、尿や経血等の液の吸収容量を増大させること等を目的として、吸水性ポリマー等と呼ばれる吸水性樹脂粒子が配合されることが多い。
また、そのような吸水性樹脂粒子の吸収速度を向上させる技術として、表面の凹凸を多くし多孔質化する技術が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
また、特許文献3には、HLBが7以上の非イオン系界面活性剤存在下で、水溶液重合して得た吸水性樹脂粒子が提案され、その吸水性樹脂粒子は、比較的疎水性の界面活性剤が粒子表面に均一に分布するため、初期吸収速度が大きいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−251310号公報
【特許文献2】特開2003−165883号公報
【特許文献3】特開昭56−91837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に提案される吸水性樹脂粒子のように、見かけの比表面積を大きくした吸水性樹脂粒子は、その形状が壊れ易く、輸送中や吸収体の製造工程において散布投下する際に、粒子表面が砕け、微粒子が発生したり吸収性能が低下するという問題が生じ易い。また比表面積の増大により、輸送効率を悪くしたり、大きな貯蔵スペースが必要になるなどの問題も生じる。
また、特許文献3の技術は、吸収速度の向上効果が不十分であった。
【0006】
従って、本発明の課題は、吸水性樹脂粒子の吸収速度を、吸収量の低下等を抑えながら効果的に向上させ得る吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物、その吸水性改質用組成物によって吸収速度が向上した改質吸水性樹脂粒子、該改質吸水性樹脂粒子を用いた吸収体、及び前記改質吸水性樹脂粒子の効率的な製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物は、(a)下記一般式(1)
1O−(EO)k−H ・・・(1)
〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基、EOはオキシエチレン基、kは4〜12の数を示す。〕
で表される化合物、及び
(b)下記一般式(2)
2O−(PO)p−H ・・・(2)
〔式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基、POはオキシプロピレン基、pは1〜7の数を示す。〕
で表される化合物を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物によれば、吸水性樹脂粒子の吸収速度を、吸収量の低下等を抑えながら効果的に向上させることができる。
本発明の改質吸水性樹脂粒子は、吸収速度及び吸収量に優れている。
本発明の吸収体は、前記改質吸水性樹脂粒子を含むことによって優れた吸収性能を有する。
本発明の改質吸水性樹脂粒子の製造方法によれば、前記改質吸水性樹脂粒子を容易且つ効率的に製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
【0010】
〔吸水性改質用組成物〕
本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物は、下記(a)成分及び下記(b)成分を含んでなる。なお、本発明の組成物としては、完全溶解型(乳化型も含む)の水溶液の形態が好ましいが、その他、分散液形態、成分の一部が溶解し残部は分散した状態の懸濁状態にある水系の組成物、極性有機溶媒(メタノール、エタノール等)系の組成物、又は水とこれら極性有機溶媒との混合溶液系の組成物等の形態であっても良い。
【0011】
<(a)成分>
(a)成分は、下記一般式(1)で表される化合物である。
1O−(EO)k−H ・・・(1)
〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基、EOはオキシエチレン基、kは4〜12の数を示す。〕
一般式(1)中のR1は、炭素数が8〜18のアルキル基であり、好ましくは炭素数が8〜16であり、より好ましくは8〜14である。炭素数8〜18のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のものが挙げられ、具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基(ドデシル基)、セチル基、イソセチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、ミリスチル基等が挙げられる。
また、アルキル基は、直鎖のアルキル基であることが好ましい。
また、異なるアルキル基を有する複数種類のポリオキシエチレンアルキルエーテルの混合物を用いることもできる。
【0012】
一般式(1)中のkは、平均付加モル数であり、吸収速度の向上をより効果的にする観点や、また、本発明の組成物は水溶液の形態であることが好ましいことから、水溶液の調整のし易さと取り扱い性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9である。
【0013】
(a)成分は、非イオン性界面活性剤であり、本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物において、(a)成分は、吸水性樹脂粒子の表面を親水化し、液(尿)に対してなじみ易くするととともに、本発明の組成物を水溶液の形態とする場合に成分(b)を水に溶解または乳化させる役割を果たすものと考えられる。
(b)成分とともに供与して、好ましい親水性を吸水性樹脂粒子に付与し、また、本発明の吸水性改質用組成物を含む水溶液の調整のしやすさと取り扱い性の点から、(a)成分は、そのHLB値(グリフィン法による測定値)が、10〜15であることが好ましく、より好ましくは11〜14である。
【0014】
<(b)成分>
(b)成分は、下記一般式(2)で表される化合物である。
2O−(PO)p−H ・・・(2)
〔式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基、POはオキシプロピレン基、pは1〜7の数を示す。〕
一般式(2)中のR2は、炭素数が4〜12のアルキル基であり、好ましくは炭素数が4〜10であり、より好ましくは6〜9である。炭素数4〜12のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のものが挙げられ、具体例には、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基(ドデシル基)等が挙げられる。
また、アルキル基は、直鎖のアルキル基であることが好ましい。
また、異なるアルキル基を有する複数種類のポリオキシプロピレンアルキルエーテルの混合物を用いることもできる。
【0015】
一般式(2)中のpは、平均付加モル数であり、吸水性樹脂粒子に適度な吸水速度向上を付与する観点、及び水溶液の組成物とする場合に上述した(a)成分と共存する水溶液の調整のし易さと安定性の観点から、2〜6であることが好ましく、より好ましくは2〜4である。
【0016】
(b)成分も、非イオン性界面活性剤であり、本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物において、(b)成分は、吸収性樹脂粒子表面に均一に付着し、(a)成分と化学的相互作用をすることにより吸水速度を向上させる役割を果たすものと考えられる。
(b)成分は、吸水速度を向上させるに比較的疎水性であることが好ましく、そのHLB値(デイビス法による測定値)が、1〜10であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。
【0017】
本発明の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物は、水溶液の状態に調製されていることが、吸水性樹脂粒子の処理の容易さ等の観点から好ましい。
吸水性改質用組成物の水溶液の調製は、任意の方法により行うことができるが、相対的に親油性であることの多い(b)成分を水に懸濁または分散させ、それとは別に、相対的に親水性であることの多い(a)成分を別の水に溶解しておき、(b)成分を含む懸濁または分散液に、(a)成分の水溶液を、徐徐に混合して調製することが好ましい。
【0018】
(a)成分と(b)成分との配合比率(質量比,前者:後者)は、水溶液の調整のし易さおよび本発明における所望の吸収性能を得易いことから、10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは30:70〜90:10であり、更に好ましくは40:60〜90:10であり、殊更好ましくは40:60〜70:30である。
【0019】
なお、改質吸水性樹脂粒子には、所望により(a)成分及び(b)成分以外の成分を添加しても良い。例えば、親水性のシリカ粒子(例えば、アエロジル200,アエロジル300(何れも日本アエロジル(株)社製))などが挙げられる。
【0020】
また、水溶液に調整した吸水性改質用組成物は、当該水溶液の質量に対する前記(a)成分及び前記(b)成分の合計質量の割合が、0.01〜1%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5%である。
【0021】
〔吸水性改質用組成物による改質処理〕
本発明の吸水性改質用組成物を用いて吸水性樹脂粒子の改質を行うには、例えば、前述のようにして、水溶液に調製した吸水性改質用組成物を、容器等に収容した吸水性樹脂粒子に、注入、散布又は滴下等により加え、それらを攪拌や振動等の任意の混合方法を用いて混合する。
この混合の際に、吸水性樹脂粒子は水分を吸収して膨潤するため、混合後に、吸水性樹脂粒子の乾燥を行う。膨潤した吸水性樹脂粒子の乾燥方法としては、吸水性樹脂粒子の乾燥方法として従来公知の各種の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、20〜200℃程度に加熱する方法、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。
【0022】
また、吸水性改質用組成物の吸水性樹脂粒子に対する添加量は、特に制限されないが、例えば、吸水性樹脂粒子がアクリル酸系のポリマーである場合、吸水性樹脂粒子に対する、前記(a)成分及び前記(b)成分の合計添加量は、0.03〜0.2質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.15質量%である。当該範囲とすることで、吸水性改質用組成物の適度な付着により、吸収性樹脂粒子内部への液の浸透を適度なものとし、吸収性能を向上させるものとが考えられる。
吸水性樹脂粒子に対する前記(a)成分及び前記(b)成分の合計添加量は、吸水性樹脂粒子の質量に対する前記(a)成分及び前記(b)成分の合計質量の割合である。
【0023】
〔処理対象の吸水性樹脂粒子〕
吸水性改質用組成物で処理する対象の吸水性樹脂粒子としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体に、従来使用されている各種の組成や形状の吸水性樹脂粒子が挙げられる。吸水性樹脂粒子の構成樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、吸水性樹脂粒子には、その形状の違いから、不定形タイプ、塊状タイプ、俵状タイプ、球粒凝集タイプ、球状タイプ等があるが、何れのタイプも用いることができる。
【0024】
吸水性改質用組成物で処理する対象の吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸又はその塩を主単位とし、水溶液重合によって得られたものであることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸又はその塩を主単位とする吸水性樹脂としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)の重合体又は共重合体があり、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩を例示することができる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を好ましく用いることができるが、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好ましい。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを吸水性樹脂粒子の性能を低下させない範囲で共重合せしめた共重合体も、アクリル酸又はその塩を主単位とする吸水性樹脂粒子として好ましく使用し得る。
(メタ)アクリル酸又はその塩を主単位とする吸水性樹脂は、(メタ)アクリル酸の中和度は50〜80%であることが好ましい。吸水性樹脂粒子は水を含んでいても良い。
【0025】
水溶液重合は、アクリル酸(塩)を含む水溶性不飽和単量体の水溶液を架橋重合する方法である。
本発明の吸水性改質用組成物により改質処理された改質吸水性樹脂粒子は、吸収速度が向上しており、その一方で、吸収量を犠牲にすることもないか、殆どない。
吸水性樹脂粒子の主な合成方法としては、水溶液重合法と逆相懸濁重合法とがあるが、水溶液重合法で得られた吸水性樹脂粒子に対して、本発明の吸水性改質用組成物による改質処理を行うことが、吸収速度及び吸収量に優れた改質吸水性樹脂粒子を製造する観点から好ましい。
【0026】
水溶液重合に用いる開始剤は、過硫酸ナトリウム、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの水溶性ラジカル開始剤や光開始剤が好ましい。
【0027】
本発明に係る吸水性改質吸水性樹脂粒子は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、生理用ナプキン等の、身体から排出される排泄体液の吸収を目的とする吸収性物品の吸収体等に好ましく用いられる。また、それ以外の吸収性物品や更に他の用途に使用することもできる。
【0028】
吸収性物品の吸収体に用いる場合、改質吸水性樹脂粒子の吸収体内の配置場所や量は特に制限されず、従来の吸水性樹脂粒子と同様の態様で使用することができる。例えば、綿状パルプ繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体中に、該繊維と混合した状態に配合することもできるし、そのような繊維集合体の片面や中央部等に偏在させることもできる。また、吸収シート間に層状に挟んだ状態に存在させることもできる。また、そのような構成のものを吸収性コアとし、それをティッシュペーパーや透水性の不織布等からなるコアラップシートで被覆した吸収体とすることもできる。
【0029】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0030】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
〔実施例1〜6,比較例1〜3〕
〔吸水性改質用組成物の調製〕
表1及び2に示す(a)成分及び(b)成分を用いて吸水性改質用組成物(水溶液)を調製した。具体的には、(b)成分をイオン交換水に入れて攪拌してイオン交換水に分散させ、(a)成分をイオン交換水に溶解させた水溶液を、前者の分散液に注入して混合し、濃度がそれぞれ500ppmになるように調整した。
【0033】
上記(a)成分として用いた化合物(界面活性剤)の種類を以下に示す。
〔(a)成分〕
a1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン108」、R1:炭素数12の直鎖のラウリル基、EO平均付加モル数:6モル)
a2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン109P」、R1:炭素数12の直鎖のラウリル基、EO平均付加モル数:9モル)
a3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン120」、R1:炭素数12の直鎖のラウリル基、EO平均付加モル数:12モル)
【0034】
上記(b)成分として用いた化合物(界面活性剤)の種類を以下に示す。
〔(b)成分〕
b1:ポリオキシプロピレン(3)オクチルエーテル(花王株式会社製商品名:「SOFCARE GP-1」、R2:炭素数8の直鎖のオクチル基、PO平均付加モル数:3モル)
b2:ポリオキシプロピレン(3)ブチルエーテル(R2:炭素数4の直鎖のブチル基、PO平均付加モル数:3モル)
【0035】
〔吸水性改質用組成物による処理〕
調製した吸水性改質用組成物を、実施例1〜5及び比較例2については、下記の吸水性樹脂粒子(1)に添加し、実施例6〜8については、下記の吸水性樹脂粒子(2)に添加した。吸水性樹脂粒子に対する前記(a)成分及び前記(b)成分の合計添加量(wt%)を、表1及び表2中に示した。比較例1は、下記の吸水性樹脂粒子(1)をそのまま用い、比較例2には、下記の吸水性樹脂粒子(2)をそのまま用いた。
【0036】
吸水性樹脂粒子(1):株式会社日本触媒製の架橋ポリアクリル酸系樹脂粒子(アクアリックCAW)
吸水性樹脂粒子(2):アクアリックCAWの高保水タイプ
そして、吸水性改質用組成物を添加した吸水性樹脂粒子を、それぞれ、電気乾燥機にて、80℃で約16時間乾燥させ、改質吸水性樹脂粒子を得た。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
〔評価〕
実施例1〜8及び比較例1〜3の吸水性樹脂粒子について、(1)保水量(吸収量)、(2)加圧下吸収量、(3)Vortex吸水時間、及び(4)加圧下通液速度を、それぞれ以下に示す方法により測定した。その結果を表1,2に示した。
【0040】
表1、2の結果から分かるように本発明の吸水性改質用組成物により改質した改質吸水性樹脂粒子は、保水量、加圧下吸収量を維持したままVortex吸水時間、加圧下通液速度を向上させることができた。また、意外なことに、親水性の高い(a)成分単独よりも疎水性の高い(b)成分を混ぜることで効果が大きいことが判る。
【0041】
(1)保水量(吸収量)
ナイロン製の織布(メッシュ開き250メッシュ)を、幅10cm、長さ30cmの長方形状に切り取り、長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして、幅10cm(内寸8.5cm)、長さ15cmのナイロン袋を作製する。試料1.0gを精秤した後、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を300mL容のビーカーに入れ、攪拌しながら生理食塩水200mLを加え、30分間放置する。30分後、ナイロン袋を遠心脱水器内で脱水する。脱水条件は、143G(800rpm)で10分間とする。脱水後、サンプルの質量を測定し、下記式に従い、保水量(吸収量)を算出する。
保水量(g/g)=(a−b−c)/1.0
(式中、aは遠心脱水後の試料及びナイロン袋の総質量(g)、bはナイロン袋の質量(g)、cは試料の質量(g)を表す。)
【0042】
(2)加圧下吸収量
加圧下保水量は、目開き63μmのナイロン網を底面に貼った円筒管(内径30mm、高さ60mm)内に、試料(吸水性樹脂粒子)0.50gを秤量して入れ、円筒管を垂直にしてナイロン網上に試料がほぼ均一の厚さになるように整え、2.0kPaの加圧が試料にかかるように外径29.5mm×高さ27mmの分銅を円筒管に挿入する。円筒管と分銅の質量はあらかじめ測定しておく。
次いで、生理食塩水50mlの入ったシャーレ(直径:94mm)の中に試料及び分銅の入った円筒管をナイロン網側を下面にして垂直に浸す。この時、シャーレの底面ぎりぎりの深さまで、円筒管が浸漬するようにする。
60分後に試料及び分銅の入った円筒管を水中から引き上げて質量を計量し、あらかじめ測定しておいた円筒管と分銅の質量を差し引き、試料が吸収した生理食塩水の質量を算出する。この吸収した生理食塩水の質量を2倍した値を加圧下吸収量(g/g)とする。
【0043】
(3)Vortex吸水時間
100mLビーカーに、生理食塩水50g及びマグネチックスターラーチップを入れ、マグネチックスターラーの回転数を600±5rpmに調整して攪拌させる。試料2.0gを、攪拌中の生理食塩水の渦の中心部で液中に投入し、液表面が平らになるまでの時間(秒)を測定した。なお、この方法では、Vortex法による吸水速度の評価を、時間を測定することで評価しているため、測定時間が短い程、吸水速度が速いとみなされる。
【0044】
(4)加圧下通液速度
垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、フィルター(目開き150μm、30SUS、直径30mm、厚み3mm)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ85mm)とが備えられた濾過円筒管を用意する。
あらかじめ試料0.32gを200mL容ビーカーに入れ、更に生理食塩水150を加え、30分間放置し、該試料を膨潤させておく。
次に、コックを閉め、前記の円筒管内に、膨潤した試料を含む上記ビーカーの内容物全てを投入する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径25mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入し、該金網と測定試料とが接するようにする。次に、前記の円柱棒におもりを取り付けて、測定試料に2.0kPaの荷重を加える。この状態で1分間静置した後コックを開いて液を流す。濾過円筒管内の生理食塩水の液面が、40mLの目盛り線から20mLの目盛り線に達する迄(20mLの液が通過する迄)の時間(T1)(秒)を計測する。計測された時間T1(秒)を用い、次式から加圧下通液速度を算出する。尚、式中、T0(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れない以外は、同様にして、生理食塩水20mlが金網を通過するのに要する時間を計測した値である。
加圧下通液速度(ml/min)=20×60/(T1−T0
【0045】
表1及び表2に示す通り、本発明の実施例1〜8は、保水量(吸収量)及び加圧下吸収量については、比較例1,3と同程度の性能が維持されている一方、Vortex吸水時間が比較例1〜3に比して短くなっており、吸収速度が向上していることが判る。また、本発明の実施例1〜8は、加圧下通液速度についても、比較例1〜3に比して増大しており、加圧下における通液速度も速くなっていることが判る。
なお、2.0kPaの加圧状態は、おむつ等の吸収性物品の着用時に該吸収性物品に厚み方向に加わる圧力を想定している。
【0046】
〔吸収性物品の評価〕
実施例2の改質吸水性樹脂粒子と比較例1の吸水性樹脂粒子とを用いて、吸収体を作成し、該吸収体を組み込んだ失禁パッドを試作した。
〔吸収体の作製方法〕
吸収体は、解繊したパルプ繊維集合体(坪量50g/m2のパルプシート)上に、吸水性樹脂粒子を散布(散布坪量75g/m2)し、次いで、パルプシートを積層させ、その上に吸収性樹脂粒子を散布(75g/m2)し、さらにパルプシートを積層しトータルパルプ坪量150g/m2、吸収性樹脂粒子150g/m2の積層体とした。そして積層体を、坪量30g/m2のティッシュペーパーで被覆した。
〔吸収性物品の作製方法〕
樹脂フィルムからなる裏面シート上に作製した吸収体を配し、その吸収体上に、坪量25g/m2のエアスルー不織布からなるクッション材(構成繊維:芯:PET、鞘:PEの2.4dtexの芯鞘型複合繊維)及び該クッション材と同材の表面シートをこの順に重ねて、裏面シート、クッション材及び表面シートを、吸収体の周囲において固定した。
【0047】
実施例2の改質吸水性樹脂粒子を用いた失禁パッド(以下、実施例の失禁パッドという)及び比較例1の吸水性樹脂粒子を用いた失禁パッド(以下、比較例の失禁パッドという)について、下記方法により液残り量(mg)を測定した。その結果を表3に示す。
【0048】
〔液残り量の測定〕
失禁パッドを水平に置き、表面シート側の面における吸収体配置領域の中央部に、人工尿(50gを、5g/秒の速度で)注入した。注入後10秒後に、市販のティッシュペーパー(商品名:クリネックス(日本製紙クレシア))2枚を縦115mm×横45mmになるように縦、横に3回折ったものを載せた。更にその上に圧力が0.4kPaになるように重りを載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の紙の重さを測定して、紙に吸収された液の重量を測定して表面液残り量(人工尿)とした。
また、人工尿に代えて生理用食塩水50gを注入する以外は、同様にして、表面液残り量(生理食塩水)を測定した。
【0049】
【表3】

【0050】
表3に示す結果から判るように、本発明の吸水性改質用組成物により改質した改質吸水性樹脂粒子を、吸収体又は吸収性物品に用いることにより、吸収体又は吸収性物品の液残り量の少なさ等の、吸収性能を向上させ得ることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)
1O−(EO)k−H ・・・(1)
〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基、EOはオキシエチレン基、kは4〜12の数を示す。〕
で表される化合物、及び
(b)下記一般式(2)
2O−(PO)p−H ・・・(2)
〔式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基、POはオキシプロピレン基、pは1〜7の数を示す。〕
で表される化合物を含む、吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物。
【請求項2】
前記(a)成分と前記(b)成分の配合比率(質量比)が、10:90〜90:10である、請求項1記載の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物。
【請求項3】
前記(a)成分は、HLB値(グリフィン法による測定値)が10〜15である請求項1又は2記載の吸水性樹脂粒子の吸水性改質用組成物。
【請求項4】
吸水性樹脂粒子を、請求項1〜3の何れか1項に記載の吸水性改質用組成物によって改質してなる改質吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子に対する、前記(a)成分及び前記(b)成分の合計添加量が0.03〜0.2質量%である、請求項4記載の改質吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を主単位とし、水溶液重合によって得られたものである、請求項4又は5記載の改質吸水性樹脂粒子。
【請求項7】
請求項4〜6の何れか1項に記載の改質吸水性樹脂粒子を用いた吸収体。
【請求項8】
請求項1〜3の何れかに1項に記載の吸水性改質用組成物を含む水溶液を吸水性樹脂粒子と混合する工程、及び含水した吸水性樹脂粒子を乾燥する工程を具備する、改質吸水性樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−126778(P2012−126778A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277914(P2010−277914)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】