説明

吸湿性容器

【課題】 内部空間の湿気を取り除く機能を発揮する吸湿性容器において、内容物が乾燥剤成分に接触するおそれがあるという状況を改善する。
【解決手段】 内容物を収容する密閉された内部空間Sを形作る樹脂成形体でなる容器壁1と、容器壁1の内層部に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体60と、容器壁1の複数箇所に開設されて内部空間Sを面状吸湿体60の表面に臨ませる孔部61とを有する。孔部61は、内容物が入り込んで面状吸湿体60と接触することを阻止させることのできるサイズないし形状に形成されている。面状吸湿体60には、ベース材としてポリプロピレン樹脂に、機能成分としてのシリカゲル粉末を分散させたものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品、電子部品のほか、水分の影響を受けて湿ることにより初期の性状や性能が損なわれるおそれのある種々の内容物を、湿らないように収容させておくことのできる対策を講じた吸湿性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品は、タブレットタイプや粉末タイプのものに限らず、空気中の水分に触れたり水分を吸収したりすると、その初期の形状や性状、性能などが維持されなくなってしまう。キャンディなどの食品についても、タブレットタイプや粉末タイプに限らず、同様のことが云える。また、電子部品のような工業製品にも、空気中の水分の影響から遮断して保管ないし保存することが要求されるものが多くある。
【0003】
従来、プラスチック容器に医薬品や食品といった湿気を嫌う内容物を収容しておくときには、たとえば和紙などの有孔シート材で作った袋にシリカゲル粒や生石灰などの乾燥剤を封入したもの(乾燥剤入り袋)を、内容物と共にプラスチック容器に収容させておくという手段が汎用されていた。
【0004】
また、蓋付きの容器本体を、外容器本体とこの外容器本体の内側に重なり状に挿着された乾燥樹脂内容器とによって形成し、乾燥樹脂内容器が発揮する吸湿性によって内容物が湿ることを防ぐようにしたプラスチック容器も知られていた(たとえば、特許文献1参照)。そして、ことの特許文献1には、上記乾燥樹脂内容器が、乾燥剤としての粒径5〜100μmの酸化カルシウムやアクリル系の高分子吸水体を、ベース樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などに混合分散させた構成を有していて、上記乾燥樹脂内容器は、上記のような乾燥剤を混合分散させたベース樹脂を、外容器本体内に二色射出成形法で一体成形することによって得られる、旨の記載がなされている。
【特許文献1】特開2007−269367(図1、0003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾燥剤入り袋を内容物と共にプラスチック容器に収容させておくという手段には、製造者にとっては、プラスチック容器に乾燥剤入り袋を投入する手間や乾燥剤入り袋を検品する手間などが余分に必要になるという問題があり、ユーザにとっては、乾燥剤入り袋に入っている乾燥剤を誤飲・誤食するおそれがあるという問題があるほか、乾燥剤入り袋自体が空のプラスチック容器とは別に個別にごみとして捨てられるためにゴミ量低減化の動きにも反するという問題がある。
【0006】
一方、上掲の特許文献1によって提案されているプラスチック容器では、容器本体の乾燥樹脂内容器の表面が、内容物を収容する内部空間に露呈しているため、プラスチック容器に収容した内容物が乾燥樹脂内容器の表面に接触する。
【0007】
ところが、プラスチック容器に収容した内容物が、そのプラスチック容器の乾燥樹脂内容器の表面に接触することは、内容物が人間の口に入る経口タイプの医薬品や食品などの経口物である場合には特に好ましくない。すなわち、乾燥剤をベース樹脂に分散混合させて成形されている乾燥樹脂内容器は、それに含まれる乾燥剤成分が、経時によりベース樹脂表面にブリードアウトしたり、ベース樹脂の摩耗によりベース樹脂表面に露出したりするおそれがあるために、内容物が乾燥樹脂内容器の表面に接触すると、その内容物に乾燥剤成分が付着してしまってそのまま人間の口に入ってしまって、場合によっては健康を害するといったことなどの、予期し得ない好ましくない状況を引き起こしてしまうというおそれがある。
【0008】
本発明は以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、上記した乾燥剤入り袋を用いる場合の問題を解消することができるだけでなく、特許文献1によって提案されているプラスチック容器によって発現するところの、内容物が乾燥剤成分に接触するおそれがあるという状況を改善することのできる吸湿性容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、吸湿性容器を、内容物を収容する密閉された内部空間を形作る樹脂成形体でなる容器壁と、この容器壁の内層部に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体と、上記容器壁の複数箇所に開設されて上記内部空間を上記面状吸湿体の表面に臨ませる孔部とを有して、その孔部を、上記内容物が入り込んで上記面状吸湿体と接触することを阻止させることのできるサイズないし形状に形成してある。
【0010】
吸湿性容器が上記構成を有していると、内容物は、樹脂成形体でなる容器壁に接触するだけで、その容器壁に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体に接触することはない。そのため、内容物が医薬品や食品などの経口物であっても、その内容物に面状吸湿体に含まれる吸湿成分(乾燥剤成分)が付着して口に入ってしまうという事態が起こり得ない。それにもかかわらず、内容物が収容される吸湿性容器の内部空間の水分ないし湿気は、面状吸湿体の吸湿性によって、容器壁の複数箇所に開設されて吸湿性容器の内部空間を面状吸湿体の表面に臨ませる孔部を通じてその面状吸湿体に吸収されて、内部空間や内容物が乾燥状態に保たれる。なお、本発明において、容器壁に閉じ込められている吸湿体は、シート状やプレート状といった面状の吸湿体に限定されていて、粉粒状の吸湿体(たとえば乾燥剤粉粒体そのもの)は除外される。これは、粉粒状の吸湿体が容器壁に閉じ込められているという構成は、上掲の特許文献1によって示されている乾燥樹脂内容器の構成と軌を一にすると考えられることによる。
【0011】
本発明では、上記面状吸湿体が、ベース材としての樹脂の層中に、機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤を分散させたものであってもよい。このような面状吸湿体は、ベース材としての樹脂と機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤とを、単軸又は二軸スクリューを用いて混練し、そのような混練工程を経た混練物を金型でシート状やプレート状といった面状に成形することによって得ることが可能である。
【0012】
本発明において、上記面状吸湿体は上記ベース材と上記乾燥剤との混練物を面状に成形してなり、その面状吸湿体に含まれる上記ベース材としての樹脂がポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂であり、上記機能成分としての乾燥剤がシリカゲル粉末であってもよい。ベース材としての樹脂には、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂のほか、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン−αオレフィン共重合体樹脂などのポリオレフィン系の樹脂が含まれる。
また、この面状吸湿体のベース樹脂は、容器壁を成形するのに用いる樹脂と溶着し合う性質、すなわち相溶性を持つ樹脂であることが望ましい。これは主に、樹脂をそのように選定することが、容器壁と面状吸湿体とを二色射出成形法で安価に同時成形する上で有益であることによる。ただし、面状吸湿体のベース樹脂が、容器壁を成形するのに用いる樹脂と相溶性を持たない樹脂であっても、その面状吸湿体を容器壁の内層部に閉じ込めることは可能である。たとえば、容器壁を別々に成形した外壁と内壁とに分け、それらの外壁と内壁とを、面状吸湿体を挟み込んだ後に溶着するという方法で面状吸湿体を容器壁の内層部に閉じ込めることが可能である。
【0013】
本発明では、上記容器壁が、内容物を収容する空間を形成している容器本体側の壁部と、この容器本体に具備された内容物の出入口を密閉する蓋体側の壁部とに分かれていて、上記面状吸湿体が、容器本体側の壁部と蓋体側の壁部とのうちのいずれか一方側の内層部又は両方の内層部に閉じ込めれているものであってもよい。このような吸湿性容器は、手のひらに収まる程度のサイズを有する可搬型の吸湿性容器として有益である。
【0014】
特に、上記容器本体側の壁部と上記蓋体側の壁部とが、それらの周方向の一箇所で、樹脂ヒンジ部を介して開閉可能に連結されていると共に、上記面状吸湿体が容器本体側の壁部に閉じ込められている、という構成を備えた吸湿性容器では、蓋体が容器本体から分離して紛失したりすることがなくなるという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る吸湿性容器は、容器壁に面状吸湿体が閉じ込められていて、吸湿性容器の内部空間の湿気が、容器壁に形成した孔部を通じて面状吸湿体に吸収されるようになっているので、内容物が面状吸湿体に直接に接触するという事態の起こる余地がない。そのため、仮に面状吸湿体の表面に乾燥剤がブリードアウトしていたとしても、ブリードアウトした乾燥剤が面状吸湿体に付着するという事態が起こらず、ましてや、ブリードアウトした乾燥剤が内容物と共にそのまま人間の口に入ってしまうというおそれがなくなる。その結果、内容物が医薬品や食品の場合に、乾燥剤の付着した内容物を経口したことが原因で知らず知らずのうちの健康が損なわれるという心配がなくなる。
【0016】
また、本発明に係る吸湿性容器は、容器本体の内容物の出入口を蓋体で開閉する構成とすることも容易であるほか、従来の乾燥剤入り袋を用いる場合の上記したような問題点を生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る吸湿性容器の要部の平面図、図2は図1のII−II線に沿う部分の断面図である。
【0018】
図例の吸湿性容器は、カップ形の容器本体10とこの容器本体10の出入口11を開閉するための蓋体50とを備えていて、図2に仮想線で示したように、蓋体50を容器本体10に装着することによって容器本体10の出入口11が湿気が入らないように蓋体50によって密閉される。このような密閉状態では、内部空間Sが容器壁1によって形作られている。したがって、この吸湿性容器において、容器壁1は、容器本体10側の壁部12と蓋体50側の壁部52とによって形成されている。
【0019】
容器本体10側の壁部12は、底壁部13とこの底壁部13の周囲から立ち上がった円筒状の胴部14とを有する樹脂成形体によって形成されていて、底壁部13の内層部には、その略全体に亘る大きさを有する円板形の面状吸湿体60が埋め込み状態で閉じ込められている。また、底壁部13の複数箇所、さらに具体的には、底壁部13における面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所には小さな円形の孔部61が開設されていて、これらの孔部61を通じて内部空間Sが面状吸湿体60の表面に臨んでいる。言い換えると、面状吸湿体60の表面の複数箇所が孔部61を通じて内部空間Sに露出している。
【0020】
面状吸湿体60はシート状やプレート状に成形されていて、たとえば厚さ1mm程度のシート状やプレート状に成形されている。この面状吸湿体60は、それ自体が吸湿性を発揮するけれども、上記した孔部61を通じて内部空間Sに露出している箇所以外の箇所では、底壁部13がその面状吸湿体60の表面を被覆している。したがって、面状吸湿体60は、孔部61を通じて内部空間Sの湿気を吸収するけれども、吸湿性容器の外部の湿気を吸収することはない。
【0021】
上記孔部61の大きさや形状は、内部空間Sに収容する内容物のサイズないし形状との関係で定められている。すなわち、1つの孔部61は、内容物が入り込んで面状吸湿体60と接触することを阻止させることのできるサイズないし形状に形成してある。図8にはこの点を説明的に示してあり、同図に示した円形の孔部61の直径Dを内容物のサイズないし形状との関係で適切に定めることにより、孔部61に内容物が入り込んで面状吸湿体と接触することを阻止し得るようにしてある。なお、孔部61の形状は円形に限定されない。要するに、内容物が入り込んで面状吸湿体と接触することを阻止し得るサイズ又は形状であればよい。孔部61の深さについても同様である。たとえば孔部61が円形であるときには、直径を1.2〜6mm程度、深さを0.7mm程度に定めることが可能である。
【0022】
上記面状吸湿体60には、ベース材としての樹脂の層中に、機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤を分散させたものを好適に用い得る。ベース材としての樹脂には、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂のほか、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン−αオレフィン共重合体樹脂などのポリオレフィン系の樹脂を用いることができるほか、金型を用いる成形法に適用することのできる他の種類の熱可塑性樹脂を用いることができる。機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤には、汎用的なシリカゲルや酸化カルシウム、高分子吸水体、生石灰などの粉末や粉粒体を用いることができる。
【0023】
この実施形態では、ベース材としての樹脂にポリプロピレン樹脂が用いられ、機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤にシリカゲル粉末が用いられていて、シリカゲル粉末がポリプロピレン樹脂の層中に一様に分散されている。
【0024】
以上の構成を有する吸湿性容器によると、医薬品や食品などの内容物を収容させた容器本体10に蓋体50を装着してその出入口11を密閉しておくと、容器壁1によって形作られている内部空間Sの水分が複数箇所の孔部61を通じて面状吸湿体60によって吸収される。そのため、内部空間Sや内容物が乾燥状態に保たれて内容物の湿りが防止される。
【0025】
また、内容物は、容器本体10の壁部12の内面や蓋体50の壁部52の内面に接触するだけであって、容器本体10の底壁部13に閉じ込められている面状吸湿体60に接触することはない。そのため、内容物が医薬品や食品などの経口物であっても、その内容物に面状吸湿体60に含まれる吸湿成分としてのシリカゲル粉末が付着して口に入ってしまうという事態が起こり得ない。
【0026】
図1又は図2に示した吸湿体容器では、容器本体10の底壁部13に円板状の面状吸湿体60を閉じ込め、かつ、底壁部13の複数箇所に開設した孔部61を通じて面状吸湿体60の表面を内部空間Sに臨ませてあるけれども、容器本体10の壁部12の内面や蓋体50の壁部52といった容器壁1に対する面状吸湿体60の閉じ込め箇所は、図1又は図2に示した例に限定されない。また、面状吸湿体60のサイズや形状も図1又は図2に示した例に限定されない。さらに、容器壁1に開設する孔部61の数やその並びパターンなども図1又は図2に示した例に限定されない。
【0027】
面状吸湿体60の形状には、円板形、平坦又は湾曲したなプレート状、湾曲したプレート状、円筒状といった種々の形状が含まれるけれども、粉粒状は面状吸湿体60の形状から除外される。これは、粉粒状という形状が本来的に面状ではなく、また、粉粒状の吸湿体が容器壁に閉じ込められているという構成は、冒頭で説明した特許文献1によって示されている乾燥樹脂内容器の構成と軌を一にするからである。
【0028】
図3は吸湿体容器の他の実施形態の要部を示している。この実施形態では、容器本体10の壁部12のうちの胴部14に円筒状の面状吸湿体60を閉じ込め、胴部14の複数箇所、さらに具体的には、胴部14における面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所に小さな円形の孔部61を開設してある。この実施形態によると、胴部14の複数箇所に開設されている孔部61を通じて内部空間Sが面状吸湿体60の表面に臨んでいる。言い換えると、面状吸湿体60の表面の複数箇所が孔部61を通じて内部空間Sに露出している。この実施形態では面状吸湿体60の形状が円筒状であるけれども、この点は、円筒状の面状吸湿体60を周方向で複数に分割することによって得られる短冊形の面状吸湿体を円筒状に並べて胴部14に閉じ込めておいてもよい。
【0029】
図3は容器本体10の壁部12のうちの胴部14に円筒状の面状吸湿体60を閉じ込めた実施形態を示しているが、さらに、容器本体10のカップ形の壁部12の底壁部13と胴部14とを含む略全体に亘って、カップ形の面状吸湿体60を閉じ込め、底壁部13と胴部14における面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所に小さな円形の孔部61を開設してもよい。この場合、複数箇所の孔部61を通じて内部空間Sが面状吸湿体60の表面に臨んでいる。言い換えると、面状吸湿体60の表面の複数箇所が孔部61を通じて内部空間Sに露出している。この実施形態では面状吸湿体60の形状がカップ形であるけれども、この点は、複数の板片状や円板状の面状吸湿体60をカップ形に並べて胴部14に閉じ込めておいてもよい。
【0030】
図3及び上記に示した各実施形態において、容器本体10の出入口11が、その容器本体10に装着した蓋体(不図示)によって密閉される点、容器壁1によって形作られている内部空間Sの水分が複数箇所の孔部61を通じて面状吸湿体60によって吸収されるので、内部空間Sや内容物が乾燥状態に保たれて内容物の湿りが防止される点、内容物は、容器本体10の壁部12の内面や蓋体50の壁部52の内面に接触するだけであって、容器本体10の底壁部13に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体60に接触することがないという点、などは図1及び図2を参照して説明した実施形態と同様である。
【0031】
図4はさらに他の実施形態に係る吸湿性容器を開いて示した平面図、図5は同吸湿性容器を閉じて示した側面図である。この実施形態の吸湿性容器では、皿形に成形された容器本体10側の壁部12と蓋体50側の壁部52とが、それらの周方向の一箇所で、樹脂ヒンジ部15を介して開閉可能に連結されている。そして、円板状の面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所に小さな円形の孔部61が開設されている。この実施形態によっても、樹脂ヒンジ部15を折り曲げて容器本体10の出入口11を蓋体50で図5のように密閉すると、容器壁1(上記各壁部12,52)によって形作られている内部空間Sの水分が複数箇所の孔部61を通じて面状吸湿体60によって吸収されるので、内部空間Sや内容物が乾燥状態に保たれて内容物の湿りが防止される。また、内容物は、容器本体10の壁部12の内面や蓋体50の壁部52の内面に接触するだけであって、容器本体10の底壁部13に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体60に接触することはない。また、この吸湿性容器には、蓋体50が容器本体10から分離して紛失したりすることがなくなるという利点がある。したがって、タブレットタイプの医薬品や食品を入れて持ち歩くのに有益であると云える。
【0032】
図6〜図7は容器壁1に閉じ込められた面状吸湿体60の種々の形態を示した説明図である。
【0033】
図6の例は、図2〜図3を参照して説明したものと同様の形態を示したものであって、容器壁1にプレート状の面状吸湿体60が閉じ込められていて、容器壁1における面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所に小さな円形の孔部61が開設されていて、これらの孔部61を通じて面状吸湿体60の表面が内部空間Sに臨んでいる。
【0034】
図7の例は、容器壁1に複数枚の面状吸湿体60が閉じ込められていて、容器壁1における面状吸湿体60の内側に重なり合っている部分の複数箇所に小さな円形の孔部61が開設されていて、これらの孔部61を通じて面状吸湿体60の表面が内部空間Sに臨んでいる。
【0035】
図6、図7を参照して説明したいずれの構成を採用した場合でも、容器壁1によって形作られている内部空間Sの水分が複数箇所の孔部61を通じて面状吸湿体60によって吸収されるので、内部空間Sや内容物が乾燥状態に保たれて内容物の湿りが防止される。また、内容物は、容器本体10の壁部12の内面や蓋体50の壁部52の内面に接触するだけであって、容器本体10の底壁部13に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体60に接触することはない。
【0036】
この発明に係る吸湿性容器に採用されている面状吸湿体60は、ベース材としての樹脂と機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤とを、単軸又は二軸スクリューを用いて混練し、そのような混練工程を経た混練物を金型でシート状やプレート状といった面状に成形することによって得ることが可能である。とりわけ、ポリプロピレン樹脂とシリカゲル粉末とを所定の配合比率で混合したものを二軸スクリューを用いて十分に混練し、その混練物を金型で面状に成形することによって得られた面状吸湿体60は、シリカゲル粉末がポリプロピレン樹脂の層表面にブリードアウトしにくい。そのため、このような面状吸湿体60を用いた上記吸湿性容器は、面状吸湿体60の機能成分であるシリカゲル粉末が容器壁1の孔部61を経て内部空間Sにこぼれ落ちなくなる。その結果、内部空間にこぼれ落ちたシリカゲル粉末が内容物に付着しないということが云え、それに見合って安全性なども向上する。
【0037】
容器壁1を成形するのに用いられる樹脂には、面状吸湿体60のベース樹脂が相溶性を示す種類のものを用いることが望ましい。容器壁1を成形するのに用いられる樹脂と面状吸湿体60のベース樹脂とが相溶性を示す性質を持っていると、容器壁1と面状吸湿体60とを二色射出成形法で安価に同時成形する上で有益であることによる。この二色成形法は、たとえば、面状吸湿体60の成形材料を金型に注入した後、それに重ねて容器壁1の成形材料としての樹脂を注入するという工程を行い、硬化後に成形品を離型するという方法である。
【0038】
図1〜図8では、説明の便宜上、同一又は相応する部分に同一の符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る吸湿性容器の要部の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う部分の断面図である。
【図3】吸湿体容器の他の実施形態の要部を示した縦断面図である。
【図4】他の実施形態に係る吸湿性容器を開いて示した平面図である。
【図5】図4の吸湿性容器を閉じて示した側面図である。
【図6】容器壁に閉じ込められた面状吸湿体の形態を示した説明図である。
【図7】容器壁に閉じ込められた面状吸湿体の他の形態を示した説明図である。
【図8】孔部のサイズないし形状の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
S 内部空間
1 容器壁
10 容器本体
11 内容物の出入口
12 容器本体側の壁部
15 樹脂ヒンジ部
50 蓋体
52 蓋体側の壁部
60 面状吸湿体
61 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する密閉された内部空間を形作る樹脂成形体でなる容器壁と、この容器壁の内層部に閉じ込められている吸湿性を発揮する面状吸湿体と、上記容器壁の複数箇所に開設されて上記内部空間を上記面状吸湿体の表面に臨ませる孔部とを有して、その孔部を、上記内容物が入り込んで上記面状吸湿体と接触することを阻止させることのできるサイズないし形状に形成してあることを特徴とする吸湿性容器。
【請求項2】
上記面状吸湿体が、ベース材としての樹脂の層中に、機能成分としての吸湿性を発揮する乾燥剤を分散させてなる請求項1に記載した吸湿性容器。
【請求項3】
上記面状吸湿体は上記ベース材と上記乾燥剤との混練物を面状に成形してなり、その面状吸湿体に含まれる上記ベース材としての樹脂がポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂であり、上記機能成分としての乾燥剤がシリカゲル粉末である請求項2に記載した吸湿性容器。
【請求項4】
上記容器壁が、内容物を収容する空間を形成している容器本体側の壁部と、この容器本体に具備された内容物の出入口を密閉する蓋体側の壁部とに分かれていて、上記面状吸湿体が、容器本体側の壁部と蓋体側の壁部とのうちのいずれか一方側の内層部又は両方の内層部に閉じ込めれている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した吸湿性容器。
【請求項5】
上記容器本体側の壁部と上記蓋体側の壁部とが、それらの周方向の一箇所で、樹脂ヒンジ部を介して開閉可能に連結されていると共に、上記面状吸湿体が容器本体側の壁部に閉じ込められている請求項4に記載した吸湿性容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23900(P2010−23900A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189576(P2008−189576)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(508223251)
【Fターム(参考)】