説明

吸着剤の製造方法

【課題】 豊富に存在するカルシウム化合物を用いて中和し、安定的に製造できるカルシウムが残留するところの水酸化第二鉄系沈殿物を利用する、砒素、アンチモン等の重金属の吸着性能に優れた、吸着剤の製造方法の提供。
【解決手段】 その吸着剤の製造方法は、塩化第二鉄等の第2鉄塩水溶液を消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーで中和し、中和後得られたカルシウムが残留する水酸化第二鉄系沈殿物を乾燥することを特徴とするものである。
また、その吸着剤は、乾燥後の水酸化第二鉄系沈殿物中のCaの残留量が1〜18%であることが好ましく、更に中和は、pHが6以上になるまで、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを添加するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水酸化第二鉄系吸着剤の製造方法に関する。より詳しくは、鉄塩水溶液を中和することにより得られる、砒素又はアンチモン等の金属のオキソ酸イオン(すなわち酸素酸イオン)を好適に吸着することができる水酸化第二鉄系吸着剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩に伴って、ますます各種各様の化学物質が製造・使用され、その製造過程あるいは使用過程において、それら化学物質が大気、河川、海洋等の環境中に放出することを完全に回避することは困難であり、このような化学物質の人体、生態系に与える悪影響が懸念される。
そのようなことから、我が国では平成5年3月に水質基準が改訂されて、要監視項目が追加され、重金属として、砒素、モリブデン、アンチモン等が新たに指定された。
【0003】
この砒素、モリブデン、アンチモン等の重金属イオンを水質系から分離除去する実用可能な手法は従前においては皆無であったとし、これを分離・除去できるとする水酸化鉄系沈殿生成物からなる吸着剤が最近開発されている(特許文献1)。
この吸着剤は、鉄イオン溶液にアルカリを加えることにより得られる非晶質の水酸化鉄系の沈殿物からなるものである。
【0004】
ところで、環境問題が益々厳しくなった今日においては、環境中で広く汚染が認められる元素として砒素が最も注目されている。
また、休廃止鉱山内で湧水し流出する坑内水、硫黄鉱山に染み込んだ雨水が地下水となって流れ込む河川、温泉の噴出水、またはその利用後の排水が流入する河川等においても砒素が少量含有されているものがあり、その場合において、水のpHが4未満にまで達する強度に酸性化していることがあり、その場合には、砒素の除去は特に難しいものとなっている。
【0005】
そのような中で、水酸化鉄系沈殿生成物からなる吸着剤は、従前のように重金属のオキソ酸イオンが含有される汚染水を中和沈澱処理するのではなく、直接汚染イオンである砒素のオキソ酸イオンを吸着分離することができることから、本出願人企業は着目し、これを用いて強酸性の水中に鉄イオンと共に含有されるヒ酸イオンに対し分離することを試みたところ意外にも良好に吸着・分離できることを見出した(特許文献2)。
【0006】
そして、本出願人は、この問題を解決すべく鋭意研究開発に努め、その過程において、第二鉄化合物を中和して得られる水酸化第二鉄系吸着剤が、強酸性の水中に鉄イオンと共に含有される砒素を含有するイオンを良好に吸着・分離できることを見出した(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−334542号公報
【特許文献2】特開2005−270933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人企業の社員である本発明者らは、その後も第二鉄化合物の水溶液を中和して得られる水酸化第二鉄系吸着剤の特性に着目し、より高性能で、かつ豊富に存在し安定的に供給可能な反応原料を用いることにより製造することができる製造方法を開発すべく鋭意研究開発に努めている。
この第二鉄化合物水溶液の中和には、各種塩基性物質が使用できることが知られてはいるものの通常水酸化ナトリウム水溶液が使用されている。
【0008】
そのような中で、本発明者らは、この中和に国内に豊富に存在する資源である消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを用いた場合に、水酸化ナトリウムを中和に用いた場合に比し意外にも吸着性能の優れた吸着剤が得られることを見出した。
また、その原因を究明すべく鋭意検討したところ、中和により生成した水酸化第二鉄系沈殿物を固液分離し洗浄した場合に比し、固液分離したままの状態の沈殿物を乾燥した場合の方が吸着性能が優れていることが判明した。
【0009】
そして、その理由を究明すべく更に検討したところ、洗浄しない場合にはカルシウムが残留しており、その残留量が多い方が吸着能が優れていることも判明した。
また、この判明した事実を踏まえて、水酸化第二鉄系沈殿物を固液分離後洗浄してカルシウム含有量を低減した水酸化第二鉄系沈殿物に新たにカルシウム化合物を添加し、それについて吸着性能試験を行ったが、その場合には吸着性能の向上はみられなかった。
本発明者らは、これらの知見を基に開発に成功したものであり、吸着性能に優れ、豊富に存在する反応原料を用いて安定的に製造できる水酸化第二鉄系吸着剤の製造方法を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記課題を達成するための水酸化第二鉄系吸着剤の製造方法を提供するものであり、その吸着剤の製造方法は、第二鉄塩水溶液を消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーで中和し、中和後得られたカルシウムが残留する水酸化第二鉄系沈殿物を乾燥することを特徴とするものである。
また、その吸着剤は、脱水、乾燥後の水酸化第二鉄系沈殿物中のCaの残留量が1〜18%であることが好ましく、更に中和は、pHが6を超えるまで、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを添加するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法では、鉄化合物原料に塩化第二鉄溶液等の第二鉄塩水溶液を用い、その中和には消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを用い、中和後得られたカルシウムが残留する水酸化第二鉄系沈殿物を乾燥することを特徴とするものであり、これにより得られた水酸化第二鉄系吸着剤はカルシウムが残留することにより意外にも吸着性能に優れたものである。また、その原料に用いた消石灰又は炭酸カルシウムは国内に豊富に存在する資源であるから、安価に安定的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明について発明を実施するための最良の形態を含む実施の形態に関し詳述するが、本発明は、この実施の形態によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
本発明は、前記したとおり第二鉄塩水溶液を消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーで中和し、中和後得られた、カルシウムが残留する水酸化第二鉄系沈殿物を乾燥することを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、前記したとおり複数の知見に基づいて開発に成功したものである。
すなわち、第二鉄化合物を中和して得られる水酸化第二鉄系吸着剤は、砒素、アンチモン等の重金属のオキソ酸を吸着する優れた性能を有しており、それは水酸化ナトリウム、消石灰等の各種塩基性化合物を中和に用いることが知られているものの、本発明者が知る限り、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを中和に使用することを直接明示する文献は見当たらない。
【0014】
そのような中で、本発明者は、第二鉄化合物の中和に、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを用いて得られた水酸化第二鉄系沈殿物は、水酸化ナトリウムを中和に用いた場合に比し、優れた吸着性能を有することを見出した。
その原因を鋭意検討したところ、中和により生成した水酸化第二鉄系沈殿物を固液分離し洗浄した場合に比し、固液分離したままの状態の沈殿物を乾燥した場合の方が吸着性能が優れていることが判明した。
【0015】
さらに、その理由を究明すべく検討したところ、洗浄しない場合にはカルシウムが残留しており、その残留量が多い方が吸着能が優れていることも判明した。これらの判明した事実を踏まえて、水酸化第二鉄系沈殿物を固液分離後洗浄してカルシウム含有量を低減した水酸化第二鉄系沈殿物に新たにカルシウム化合物を添加し、それについても吸着性能試験を行ったが、その場合には吸着性能の向上はみられなかった。
【0016】
以上のことを踏まえて、本発明の製造方法に関し以下において詳述する。
本発明製造方法における主原料である第二鉄塩水溶液をなす第二鉄塩としては、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーと反応した後に、可溶性のカルシウム化合物が形成されるものであればよく、それには塩化第二鉄、硝酸第二鉄等が例示できる。
その反応時の第二鉄塩水溶液の濃度はFe3+として1〜8wt%がよく、好ましくはFe3+として1.8〜3.6wt%がよい。
また、反応時の消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーの濃度は7〜44wt%がよく、好ましくは17〜29wt%がよい。
【0017】
その中和反応においては、第二鉄塩水溶液中に消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを添加するのが反応操作上簡便で特に望ましいが、中和反応操作はそれに限定されるわけではなく、逆に消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリー中に第二鉄塩水溶液を添加することにより中和することも勿論可能であり、更に両者を同時に反応容器に供給しながら中和しても勿論よい。
【0018】
その中和反応は、水酸化第二鉄系沈殿物が生成できる範囲に到達した時点で終了しても、本発明の製造方法で製造する吸着剤は製造可能であり、それで中和反応を終了してもよいが、できる限り第二鉄塩原料を有効利用し、多くの水酸化第二鉄系沈殿物を生成するにはpHは6を超えるのが好ましく、より好ましくは7以上がよい。
すなわち、pHを7以上とすることにより、第二鉄塩は、ほぼ全量が水酸化され、その結果水酸化第二鉄系沈殿物にほぼ全量が転換できるので原料の有効利用上特に好ましい。
【0019】
本発明においては、中和後得られた水酸化第二鉄系沈殿物中にカルシウムが残留することが最大のポイントであり、この残留により脱水、乾燥後に生成する吸着剤にカルシウムが残留し、その結果本発明の製造方法で製造された吸着剤は優れた吸着能を有することになる。
その残留量は、最終的に製造された吸着剤中に、Caが1〜18wt%残留するのが好ましく、より好ましくは3〜15wt%残留するのがよい。
【0020】
この残留量を調節するには、固液分離する際の液体の分離を低減すればよく、例えば濾紙により濾過し、そのまま乾燥した場合にはCaが約10wt%残留することになる。
これ以上残留させたい場合には、濾過時間を短縮して濾液を一部残留した状態で乾燥することにより、よりカルシウムが残留した吸着剤を製造でき、更によりカルシウムを残留させたい場合には、固液分離を行うことなく乾燥することにより、より高濃度のカルシウムが残留した吸着剤を得ることができる。
【0021】
本発明の製造方法で製造された吸着剤は、砒素を始めとする各種金属の酸素酸イオン、すなわちオキソ酸イオンの吸着分離に優れた性能を発現することが特徴であり、処理対象となる各種金属酸素酸イオンには、砒素、アンチモン、セレン、モリブデン、クロム、マンガンあるいはタングステン等の金属の酸素酸イオンが例示でき、具体的には、砒素の酸素酸イオンの場合には、3価の酸素酸イオンである亜ヒ酸イオン(AsO2-)、5価の酸素酸イオンであるヒ酸イオン(AsO3-)が例示できる。
また、本発明の製造方法で製造された吸着剤は、金属の酸素酸イオンの吸着に有効であるだけでなく、非金属であるリンの酸素酸イオンに対しても優れた吸着性能を発現する。
【0022】
以下においては、本発明について、実施例に基づいて更に詳述する。なお、前記した知見は、この実施例における試験に基づいて得たものである。
本発明は、この実施例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【実施例1】
【0023】
この実施例では、塩化第二鉄溶液を消石灰過飽和スラリーで中和して、水酸化第二鉄系沈殿物を形成し、これを固液分離し、乾燥して吸着剤を作製し、これを用いて砒素のオキソ酸含有模擬液に対して吸着試験を行った。なお、砒素のオキソ酸含有模擬液は、亜ヒ酸ナトリウムを水に溶解して作製した。
その吸着試験の際には、中和後、前記沈澱物に対し洗浄を行う場合と、行わない場合の2通りの処理をし、それぞれ吸着剤を作製した。
また、比較のために水酸化ナトリウムで中和して作製した吸着剤についても同様の処理を行って2種の吸着剤を作製し、同様の吸着試験を行った。
【0024】
その際の吸着剤の具体的作製方法及び吸着試験方法は以下のとおりである。
市販の塩化第二鉄溶液(37%)を希釈して濃度5.7%の塩化第二鉄水溶液4690gを調製し、これに濃度366g/Lの消石灰過飽和スラリーをpHが7になるまで添加し、中和した。その際の消石灰過飽和スラリーの使用量は681gであった。
その中和後洗浄する場合については、ブフナーロートを用いてまず固液分離し、分離後水8Lを用いて洗浄を2回に分けて行った。それに続いて箱形送風乾燥機を用いて温度60℃で24時間乾燥を行った。
比較のために行った水酸化ナトリウムによる中和の場合には、濃度50%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる以外は、消石灰過飽和スラリーを用いる場合と同様に行った。
【0025】
本実施例では、前記したとおり塩化第二鉄水溶液の中和時には、塩化第二鉄水溶液に消石灰過飽和スラリーを添加するが、本発明においては、逆に消石灰過飽和スラリーに塩化第二鉄水溶液を添加し、中和してもよいことは勿論である。
さらに、この実施例では、中和はpHが7に上昇するまで消石灰過飽和スラリー等の混合を行っており、それがより好ましいが、本発明では中和は水酸化第二鉄系沈殿物が生成するまで行えばよく、7以上になるまで行うことを必要不可欠するものではない。
例えば、水酸化第二鉄系沈殿物はpH4.5程度で生成でき、中和時のpHはそれでもよいが、好ましくは6を超えるのがよく、より好ましくは7以上がよい。
【0026】
それらの吸着試験結果は表1に示すとおりである。
その結果によれば、塩化第二鉄溶液の中和に消石灰過飽和スラリーを用いる場合の方が、水酸化ナトリウムを用いた場合に比し、洗浄を行った場合、行わない場合のいずれの場合においても、砒素の吸着性能が優れていることが判る。
また、中和後洗浄を行うことなく、脱水・乾燥した場合の方が、洗浄を行った後に脱水・乾燥した場合に比し、砒素の吸着性能が優れていることも判る。
なお、表1における吸着剤1g当たりのAs吸着量は平衡濃度1ppmにおける値である。
【0027】
【表1】

【0028】
本実施例では、鉄塩として塩化第2鉄以外の鉄塩(具体的に硫酸第二鉄及び硝酸第2鉄)を用いた場合についても試験を実施しており、その結果を表2に示す。なお、表2における吸着剤No.5は、表1における吸着剤No.1と同じ試験である。また、表2において鉄塩及び中和剤が表1と一致していながら、両表におけるAsの吸着量が異なるのは洗浄・脱水条件が異なることによるものである。
なお、表2における吸着剤1g当たりのAs吸着量は平衡濃度1ppmにおける値である。
【表2】

【0029】
そして、これらの試験結果から、硝酸塩の場合は塩酸塩の場合と同様に優れた吸着能を発現することがわかるが、硫酸塩の場合には、中和後に硫酸カルシウム、すなわち難溶性の石膏が大量に生成し、塩化第二鉄を水酸化ナトリウムで中和した場合より、遙かに吸着能が低いことがわかる。
そのため、硫酸塩の場合には石膏が水酸化第二鉄系沈殿物に多量に混在し、最終的には作製された吸着剤中に多量に混在することなる。そのようなことから、本発明では、鉄塩は消石灰過飽和スラリー等で中和した際に可溶性カルシウム塩が形成されるものがよい。
【実施例2】
【0030】
この実施例2では、塩化第二鉄溶液を各種アルカリで中和して、水酸化第二鉄系沈殿物を形成し、これを乾燥して吸着剤を作製し、これを用いて砒素含有模擬液に対して吸着試験を行った。
その際には、水酸化第二鉄系沈殿物形成後に行う洗浄あるいは固液分離の程度を変え、すなわち洗浄の場合には使用洗浄水量を変化させ、残留カルシウム量の異なる数種の吸着剤を作製し、それを用いて吸着試験を行った。
また、固液分離の程度を変えるには、例えば実施例1における無洗浄の場合よりもカルシウム残留量を多くさせるには、脱水量を少なくすればよく、特にカルシウム残留の多いNo.21(表3参照)は脱水せずに直接乾燥したものである。
【0031】
その吸着試験結果を表3に示すと共に、合わせて図1に図示した。
その試験結果によれば、カルシウムの残留量が増加するにしたがって吸着量が増大し、残留量が所定値を超えると低減し始めることがわかる。この結果を実施例1の結果と対比すると、実施例1の洗浄を実施した場合(カルシウム濃度1.35%)と、無洗浄の場合(カルシウム濃度9.19%)の間に位置するカルシウム濃度において、優れた吸着性能が発現されていることがわかる。
なお、表3における吸着剤1g当たりのAs吸着量も表1及び2の場合と同様に平衡濃度1ppmにおける値である。
【0032】
【表3】

【0033】
すなわち、実施例1における洗浄を実施した場合には、砒素(3価のAs)の吸着量が31mgであったのが、実施例1における洗浄と、無洗浄の中間におけるカルシウム残留の場合には、砒素吸着量はいずれも40mg台に増加しており、特に実施例1における無洗浄の場合には砒素(3価のAs)の吸着量が55mgと最大になっていることが判る。
また、実施例1における無洗浄の場合よりもカルシウム残留量を多くした場合においても砒素の吸着量は40mg台を維持しているものの、残留カルシウム量が20%を超えた場合には、急激に砒素の吸着量が低減することがわかる。
【0034】
さらに、実施例2の吸着剤番号22ないし24の吸着剤は、実施例1の吸着剤の製造過程において、脱水、洗浄後に得られた水酸化第二鉄系沈殿物に表3に示すカルシウム化合物を添加混合して、カルシウム含有量を増加させものである。
その表3の吸着剤番号22ないし24の吸着量は、それらの吸着剤を用いて吸着試験を行った結果を示すものであり、これらの場合には、表3に示すとおり、無洗浄と同程度のカルシウムが含有されているもかかわらず、砒素の吸着量は洗浄操作を行った場合よりもかえって低減していることがわかる。
以上の試験結果を踏まえると、本発明では、カルシウム残留量は水酸化第二鉄系吸着剤の1〜18%が好ましい。
【0035】
前記のとおりであるから、本発明においては、塩化第二鉄化合物を消石灰過飽和スラリーにて中和して水酸化第二鉄系沈殿物を形成する際に、積極的にカルシウムを残留させ、その後乾燥して吸着剤を製造することにより、優れた吸着性能の吸着剤を得ることができる。
また、消石灰過飽和スラリーに代えて炭酸カルシウム過飽和スラリーにより中和した場合にも同様に優れた吸着性能が得られることを、本発明らは、消石灰過飽和スラリーの場合と同様に実際に試験を行い確認している。
さらに、この吸着性能の発現は、砒素に限定されるものではなく、そのことはアンチモン、セレン、モリブデン又はクロムを含有する模擬試験液を使って、本発明者らは確認している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例2における吸着試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二鉄塩水溶液を消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーで中和し、中和後得られたカルシウムが残留する水酸化第二鉄系沈殿物を乾燥することを特徴とする吸着剤の製造方法。
【請求項2】
第二鉄塩水溶液が塩化第二鉄水溶液又は硝酸第二鉄水溶液である請求項1記載の吸着剤の製造方法。
【請求項3】
脱水、乾燥後の水酸化第二鉄系沈殿物中にCaが1〜18%残留する請求項1又は2記載の吸着剤の製造方法。
【請求項4】
中和は、pHが6を超えるまで、消石灰又は炭酸カルシウムの過飽和スラリーを添加するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸着剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−233545(P2009−233545A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81475(P2008−81475)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】