吸着剤成型体とその製造方法
【課題】空気清浄機に使用される脱臭フィルターにおいて、低圧損で、高い脱臭性能を確保する脱臭フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】多価陽イオンを内包したマイクロカプセル5と、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを任意の形状に成型し、成型後にマイクロカプセル5を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で吸着剤成型体1を構成したものであり、脱臭性能が高く、低い圧力損失と意匠にあった脱臭フィルターを提供できるという作用を有する。
【解決手段】多価陽イオンを内包したマイクロカプセル5と、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを任意の形状に成型し、成型後にマイクロカプセル5を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で吸着剤成型体1を構成したものであり、脱臭性能が高く、低い圧力損失と意匠にあった脱臭フィルターを提供できるという作用を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の空気環境を清浄に保つ空気清浄機にて使用する脱臭フィルター、または風路を成型する成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸着剤成型体は、空気中の悪臭物質等を除去するためのフィルターとして、活性炭等の吸着剤をバインダーによってハニカム状等に成型したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その吸着剤成型体について図10を用いて説明する。
【0004】
図に示すように吸着剤成型体101は、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを圧縮成型し、基板と突起部分からなる成型体102を成型し、この成型体を積層することにより、ハニカム状の吸着剤成型体101を成型している。
【0005】
また、図11に示すように、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを押し出し成型してハニカム103を成型している。
【特許文献1】特開2003−1027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の吸着剤成型体は、バインダーとして熱可塑性樹脂が使用されており、吸着剤成型体内の吸着剤周囲をバインダーが塞ぎ、悪臭物質の吸着を阻害するととも、吸着剤成型体内の悪臭物質の拡散を阻害するという課題があり、バインダーによるこれら弊害を低減し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0007】
また、悪臭物質等を除去するために、悪臭物質等を除去する吸着剤の割合を多くする必要があり、悪臭物質等と吸着剤の接触効率を上げるために、吸着剤成型体の壁面厚みを薄くして悪臭物質等が壁面全体に拡散し易くする必要があるが、これらはいずれも、吸着剤成型体の強度低下を招くという課題があり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0008】
そして、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を添着する際に、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が必要であるという課題があり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が要求されている。
【0009】
また、アンモニア等の塩基性ガスを吸着除去するために、燐酸等の酸を添着するときは、酸が、アルギン酸ナトリウムを架橋することを阻害するという課題があり、酸の吸着剤成型体への浸漬添着に時間差を設けて、アルギン酸ナトリウムの架橋を阻害しないことが要求されている。
【0010】
また、吸着剤成型体の強度をより強くするということが要求されている。
【0011】
また、成型前の吸着剤とバインダー混合物の粘度が高いため、圧縮成型や押し出し成型時の圧力を高くする必要があり、射出成型や真空鋳型成型により吸着剤成型体を任意形状に成型することが困難であるという課題があり、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することや、射出成型や真空鋳型成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することが要求されている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、圧縮成型や押し出し成型のみならず、射出成型や真空鋳型成型によって任意形状に吸着剤成型体を成型することのできる吸着剤成型体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の吸着剤成型体は、上記目的を達成するために、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものである。
【0014】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0015】
また、他の手段は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって構成するものである。
【0016】
この手段により、成型時または成型後にアルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0017】
また、他の手段は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いたものである。
【0018】
この手段により、成型時または成型後に加熱溶融したホットメルトが吸着剤粒子間を接着し吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0019】
また、他の手段は、多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成するものである。
【0020】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0021】
また、他の手段は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成するものである。
【0022】
また、他の手段は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いるものであり、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる。
【0023】
また、他の手段は、第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせたものである。
【0024】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0025】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊するものである。
【0026】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0027】
また、他の手段は、成型体の補強材として、繊維状材料を用いたものである。
【0028】
この手段により、吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0029】
また、他の手段は、スラリーを射出成型によって任意形状に成型したものである。
【0030】
この手段により、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することや、射出成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0031】
また、他の手段は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法である。
【0032】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0033】
この手段により、吸着剤成型体を成型した後、吸着剤成型体に残存する金属イオン等の不純物を水洗除去することができる。
【0034】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0035】
また、他の手段は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、抗菌剤と、防カビ剤を水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものである。
【0036】
この手段により、吸着剤成型体に抗菌、防カビ効果を持たせることができるとともに、植物由来であるアルギン酸ナトリウムによる架橋構造の耐久性を向上することができる吸着剤成型体が得られる。
【0037】
また、他の手段は、抗菌剤、防カビ剤をマイクロカプセルに内包することにより、アルギン酸の架橋構造の形成を阻害する有機溶剤や多価陽イオンを利用することができ、抗菌剤、防カビ剤の使用範囲を広げることができる。
【0038】
また、他の手段は、 吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができ、容易に吸着剤成型体を成型することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0040】
また、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0041】
また、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0042】
また、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0043】
また、吸着剤成型体に各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を添着する際、成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができるとともに、工程の簡易化が図れる吸着剤成型体を提供できる。
【0044】
また、強度の大きな吸着剤成型体を提供できる。
【0045】
また、吸着剤成型体に各臭気ガスに特異吸着を示す複数の添着剤を添着する際、成型後に前記複数の添着剤の添着順序を調整可能となり工程の簡易化が図れる吸着剤成型体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の請求項1記載の吸着剤成型体は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度を確保し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる。
【0047】
また、本発明の請求項2記載の吸着剤成型体は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって構成するものであり、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、その後のマイクロカプセルの加熱溶融による破壊によって、多価陽イオンが成型体内に拡散し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋反応により吸着剤成型体を成型するという作用を有する。
【0048】
また、本発明の請求項3記載の吸着剤成型体は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いたものであり、成型時または成型後に加熱溶融したホットメルトが吸着剤粒子間を接着し吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0049】
また、本発明の請求項4記載の吸着剤成型体は、多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成するものであり、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0050】
また、本発明の請求項5記載の吸着剤成型体は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成するものである。
【0051】
また、本発明の請求項6記載の吸着剤成型体は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いるものであり、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる。
【0052】
また、本発明の請求項7記載の吸着剤成型体は、第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせたものであり、最初に多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルを破壊して、多価陽イオンを成型体内に拡散し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋反応により吸着剤成型体を成型し、次に燐酸を内包する第2のマイクロカプセルを破壊して燐酸を成型体内に拡散し、塩基性ガスに対し、特異吸着を付加した吸着性能を示す吸着剤成型体を成型するという作用を有する。
【0053】
また、本発明の請求項8記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊するものであり、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0054】
また、本発明の請求項9記載の吸着剤成型体は、成型体の補強材として、繊維状材料を用いたものであり、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンとの架橋構造架橋構造に繊維状材料が絡まり、強度を増強するという作用を有する。
【0055】
また、本発明の請求項10記載の吸着剤成型体は、スラリーを射出成型によって任意形状に成型したものであり、吸着剤成型体の成型後に、架橋構造が形成されるため、低い粘度により低い圧力で吸着剤成型体を成型できるという作用を有する。
【0056】
また、本発明の請求項11記載の発明は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法である。
【0057】
また、本発明の請求項12記載の発明は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法であり、吸着剤成型体を成型した後、吸着剤成型体に残存する金属イオン等の不純物を水洗除去することができる。
【0058】
また、本発明の請求項13記載の発明は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0059】
また、本発明の請求項14記載の発明は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、抗菌剤と、防カビ剤を水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、吸着剤成型体に抗菌、防カビ効果を持たせることができるとともに、植物由来であるアルギン酸ナトリウムによる架橋構造の耐久性を向上することができる吸着剤成型体が得られる。
【0060】
また、本発明の請求項15記載の発明は、抗菌剤、防カビ剤をマイクロカプセルに内包することにより、アルギン酸の架橋構造の形成を阻害する有機溶剤や多価陽イオンを利用することができ、抗菌剤、防カビ剤の使用範囲を広げることができる。
【0061】
また、本発明の請求項16記載の発明は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、一の架橋反応を実施可能な方法として、多価陽イオン溶液に浸漬することで容易に吸着剤成型体を成型することができる。吸着剤とアルギン酸ナトリウムを混合したスラリーは、まず、射出成型などの成型方法により形を整える。この成型体を多価陽イオン溶液を満たした槽に浸漬することによって、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンが架橋反応により化学変化し、強固な成型体を形作ることになる。
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0063】
(実施の形態1)
図1〜図4に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aと、架橋反応後にバインダーとなる架橋構造を形成するアルギン酸ナトリウム水溶液3と、アルギン酸ナトリウムのナトリウムと置換することにより初めて架橋反応させるための多価陽イオンとしての塩化カルシウム水溶液4を内包したマイクロカプセル5をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を吸着剤成型体を任意形状に形成するための型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5の壁8を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0064】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋構造が網目構造のバインダーを形成するため、例えば樹脂接着剤のようにガス体の流通の殆どないバインダーを使用するようなガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0065】
なお、本実施の形態では、アルギン酸ナトリウムを説明したが、アルギン酸プロピレングリコールエステルを用いても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0066】
また、吸着剤として活性炭粉末を説明したが、吸着剤として、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0067】
また、多価陽イオンとして塩化カルシウムを用いて説明したが、水酸化カルシウムでも、また、アルギン酸ナトリウムと架橋構造を形成する他の多価陽イオンであるアルミニウムイオン、鉄イオンを用いても良い。
【0068】
また、マイクロカプセルを破壊する手段として熱を用いているが、マイクロカプセルの壁面を、超音波によって破壊する材料、酸、アルカリ、または有機溶剤によって破壊する材料、加圧によって破壊する材料を用いても良い。
【0069】
また、マイクロカプセルはW/O/Wエマルジョンを利用し、有機溶剤を蒸発させて熱可塑性樹脂の壁面を形成するマイクロカプセルでも、スプレイドライヤーでカルシウム塩を含んだ溶融熱可塑性樹脂を噴霧し、カルシウム塩に熱可塑性樹脂がコートされたマイクロカプセルでも良く、マイクロカプセルの製法には拘らない。
【0070】
また、スラリーの加熱は、スラリーを型枠に流し込んでから加熱することで、説明したが、スラリーに分散後に加熱しはじめ、スラリーが任意の形状になった時点で、マイクロカプセルが破壊しても良い。
【0071】
(実施の形態2)
図5に示すように多価陽イオンとして塩化カルシウム水溶液4を内包し、壁9をホットメルトで形成されたマイクロカプセル10を用いて、吸着剤2として活性炭粉末2aと、アルギン酸ナトリウム水溶液3と前記マイクロカプセル10をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル10の壁9を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0072】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、溶融したホットメルトがホットメルト間およびホットメルトと活性炭粉末2a間に粘着接続し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0073】
(実施の形態3)
図6、図7に示すように、活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と塩化カルシウム水溶液4を内包したマイクロカプセル5と、尿素水溶液11を内包したマイクロカプセル12をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5、12の壁を破壊し、カルシウムイオン、尿素がスラリー6内に分散浸透される。
【0074】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造内に活性炭粉末2aを包含し、活性炭粉末2a内に尿素を添着する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋反応による架橋構造が網目構造であり、尿素のシッフ反応によるアルデヒドの特異吸着により、アルデヒドの脱臭能力を増強したこととなる。
【0075】
なお、特異吸着を示す添着剤として尿素を用いて説明したが、アニリン、エチレン尿素を用いても良く、グラフト重合剤を用いても良く、他の臭気成分に特異吸着を示す添着剤をマイクロカプセルに内包して、脱臭効果の増強を図ることとなる。
【0076】
(実施の形態4)
図8に示すように、活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と塩化カルシウム水溶液4を内包し、熱可塑性樹脂Aを壁面に持つ第1のマイクロカプセル13と、燐酸を内包し、熱可塑性樹脂Aより融点の高い熱可塑性樹脂Bを壁面に持つ第2のマイクロカプセル14をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を熱可塑性樹脂Aの融点以上で熱可塑性樹脂Bの融点以下で加熱することで第1のマイクロカプセル13の壁を破壊しカルシウムイオンをスラリー6内に分散浸透し、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造が形成されてから、型枠7を熱可塑性樹脂Bの融点以上で加熱して、第2のマイクロカプセル14の壁を破壊し燐酸が吸着剤成型体1内に含浸し、吸着剤成型体1に添着される。
【0077】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋反応が起こる以前に、燐酸とアルギン酸ナトリウムが反応すると凝集し、水に不溶な架橋構造を形成することを阻害する。そのため、最初に水に不溶なアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造を形成した後に、燐酸を吸着剤成型体に浸漬し、アンモニアに特異吸着を示す、燐酸を吸着剤成型体に添着し、脱臭効果の増強を図ることとなる。
【0078】
なお、溶融温度の違う2種類の熱可塑性樹脂を用い、マイクロカプセルの破壊を温度の高低で順番付けることで説明したが、マイクロカプセルの破壊を、圧力、超音波照射、マイクロ波照射、酸、アルカリ、有機溶剤を付与して破壊し、それらのマイクロカプセルの壁材を破壊する工程を順序付け実施しても良い。
【0079】
また、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を、異なる方法によって壁面が破壊される材料を組み合わせて用いても良い。例えば、第1のマイクロカプセルを超音波によって破壊される材料とし、第2のマイクロカプセルの壁面を酸によって破壊される材料とする。この場合には、スラリー6を型枠7に流し込んだ後、超音波にかけて、まず第1のマイクロカプセルを破壊する。その後、酸洗して第2のマイクロカプセルを破壊する方法によって吸着剤成型体が得られる。
【0080】
また、マイクロカプセルの種類は2種類に限定するものでなく、3種類以上を組み合わせても良い。
【0081】
また、カルシウムイオンの内包したマイクロカプセルの破壊後、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋反応が起こるが、その際、ナトリウムイオンがアルギン酸ナトリウムから分離するが、このナトリウムイオンや他の塩素等不要物が吸着剤の細孔内に留まり、吸着阻害物として作用する場合は、吸着剤成型体を成型後、この吸着剤成型体を水洗しナトリウムイオンを除去し、その後、他のマイクロカプセルを破壊して、特異吸着を示す他の成分を添着することができる。
【0082】
(実施の形態5)
図9に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と、マイクロカプセル5と、繊維状材料15をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5の壁8を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0083】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋構造が網目構造に繊維状材料が入り込んで絡み合い、この架橋構造を繊維状材料が補強し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0084】
(実施の形態6)
吸着剤とアルギン酸ナトリウム水溶液と、マイクロカプセルとニーダーで分散してスラリーを作成し、スラリーを射出成型し、任意の形状に成型し、その後、射出成型体を加熱することで、任意形状の吸着剤成型体を得られる。
【0085】
この手段により、マイクロカプセルの破壊後、初めて架橋構造を形成するため、それ以前はスラリー粘度を低く保つこととなり、射出成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低く、吸着剤成型体の接触効率を高くすることが可能な例えば、ハニカムやスリット状に成型可能であり、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる。
【0086】
なお、射出成型によって吸着剤成型体を成型することを説明したが、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することができるため、真空鋳型成型、圧縮成型、押し出し成型を用いて吸着剤成型体を任意形状に成型しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
任意の形状の吸着剤成型体が成型できるので、圧力損失が少なく、脱臭効果の高い脱臭フィルターや、通風路が構成でき、送風装置を内装した空調機器の全般に使用が可能であり、また、水等の液体浄化分野において使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態の吸着剤成型体の斜視図
【図2】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図3】同マイクロカプセルの断面図
【図4】同スラリーの内部状態を示す図
【図5】本発明の第2の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図6】本発明の第3の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図7】同スラリーの内部状態を示す図
【図8】本発明の第4の実施の形態のスラリーの内部状態を示す図
【図9】本発明の第5の実施の形態のスラリーの内部状態を示す図
【図10】従来の圧縮成型による吸着剤成型体断面図
【図11】同押し出し成型によるハニカムの斜視図
【符号の説明】
【0089】
1 吸着剤成型体
2 吸着剤
3 アルギン酸ナトリウム水溶液
4 塩化カルシウム水溶液
5、10 マイクロカプセル
6 スラリー
7 型枠
8、9 壁
11 尿素水溶液
12 マイクロカプセル
13 第1のマイクロカプセル
14 第2のマイクロカプセル
15 繊維状材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の空気環境を清浄に保つ空気清浄機にて使用する脱臭フィルター、または風路を成型する成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸着剤成型体は、空気中の悪臭物質等を除去するためのフィルターとして、活性炭等の吸着剤をバインダーによってハニカム状等に成型したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その吸着剤成型体について図10を用いて説明する。
【0004】
図に示すように吸着剤成型体101は、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを圧縮成型し、基板と突起部分からなる成型体102を成型し、この成型体を積層することにより、ハニカム状の吸着剤成型体101を成型している。
【0005】
また、図11に示すように、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを押し出し成型してハニカム103を成型している。
【特許文献1】特開2003−1027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の吸着剤成型体は、バインダーとして熱可塑性樹脂が使用されており、吸着剤成型体内の吸着剤周囲をバインダーが塞ぎ、悪臭物質の吸着を阻害するととも、吸着剤成型体内の悪臭物質の拡散を阻害するという課題があり、バインダーによるこれら弊害を低減し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0007】
また、悪臭物質等を除去するために、悪臭物質等を除去する吸着剤の割合を多くする必要があり、悪臭物質等と吸着剤の接触効率を上げるために、吸着剤成型体の壁面厚みを薄くして悪臭物質等が壁面全体に拡散し易くする必要があるが、これらはいずれも、吸着剤成型体の強度低下を招くという課題があり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0008】
そして、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を添着する際に、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が必要であるという課題があり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が要求されている。
【0009】
また、アンモニア等の塩基性ガスを吸着除去するために、燐酸等の酸を添着するときは、酸が、アルギン酸ナトリウムを架橋することを阻害するという課題があり、酸の吸着剤成型体への浸漬添着に時間差を設けて、アルギン酸ナトリウムの架橋を阻害しないことが要求されている。
【0010】
また、吸着剤成型体の強度をより強くするということが要求されている。
【0011】
また、成型前の吸着剤とバインダー混合物の粘度が高いため、圧縮成型や押し出し成型時の圧力を高くする必要があり、射出成型や真空鋳型成型により吸着剤成型体を任意形状に成型することが困難であるという課題があり、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することや、射出成型や真空鋳型成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することが要求されている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、圧縮成型や押し出し成型のみならず、射出成型や真空鋳型成型によって任意形状に吸着剤成型体を成型することのできる吸着剤成型体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の吸着剤成型体は、上記目的を達成するために、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものである。
【0014】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0015】
また、他の手段は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって構成するものである。
【0016】
この手段により、成型時または成型後にアルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0017】
また、他の手段は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いたものである。
【0018】
この手段により、成型時または成型後に加熱溶融したホットメルトが吸着剤粒子間を接着し吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0019】
また、他の手段は、多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成するものである。
【0020】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0021】
また、他の手段は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成するものである。
【0022】
また、他の手段は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いるものであり、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる。
【0023】
また、他の手段は、第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせたものである。
【0024】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0025】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊するものである。
【0026】
この手段により、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0027】
また、他の手段は、成型体の補強材として、繊維状材料を用いたものである。
【0028】
この手段により、吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0029】
また、他の手段は、スラリーを射出成型によって任意形状に成型したものである。
【0030】
この手段により、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することや、射出成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0031】
また、他の手段は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法である。
【0032】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0033】
この手段により、吸着剤成型体を成型した後、吸着剤成型体に残存する金属イオン等の不純物を水洗除去することができる。
【0034】
また、他の手段は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0035】
また、他の手段は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、抗菌剤と、防カビ剤を水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものである。
【0036】
この手段により、吸着剤成型体に抗菌、防カビ効果を持たせることができるとともに、植物由来であるアルギン酸ナトリウムによる架橋構造の耐久性を向上することができる吸着剤成型体が得られる。
【0037】
また、他の手段は、抗菌剤、防カビ剤をマイクロカプセルに内包することにより、アルギン酸の架橋構造の形成を阻害する有機溶剤や多価陽イオンを利用することができ、抗菌剤、防カビ剤の使用範囲を広げることができる。
【0038】
また、他の手段は、 吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができ、容易に吸着剤成型体を成型することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0040】
また、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0041】
また、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低くくし、悪臭物質と吸着剤成型体の接触効率を高くし、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0042】
また、成型装置の簡易化や耐久性向上のため、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0043】
また、吸着剤成型体に各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を添着する際、成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができるとともに、工程の簡易化が図れる吸着剤成型体を提供できる。
【0044】
また、強度の大きな吸着剤成型体を提供できる。
【0045】
また、吸着剤成型体に各臭気ガスに特異吸着を示す複数の添着剤を添着する際、成型後に前記複数の添着剤の添着順序を調整可能となり工程の簡易化が図れる吸着剤成型体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の請求項1記載の吸着剤成型体は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度を確保し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる。
【0047】
また、本発明の請求項2記載の吸着剤成型体は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって構成するものであり、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、その後のマイクロカプセルの加熱溶融による破壊によって、多価陽イオンが成型体内に拡散し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋反応により吸着剤成型体を成型するという作用を有する。
【0048】
また、本発明の請求項3記載の吸着剤成型体は、マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いたものであり、成型時または成型後に加熱溶融したホットメルトが吸着剤粒子間を接着し吸着剤成型体の強度をより強くする吸着剤成型体を成型することができる吸着剤成型体が得られる。
【0049】
また、本発明の請求項4記載の吸着剤成型体は、多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成するものであり、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0050】
また、本発明の請求項5記載の吸着剤成型体は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成するものである。
【0051】
また、本発明の請求項6記載の吸着剤成型体は、第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いるものであり、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる。
【0052】
また、本発明の請求項7記載の吸着剤成型体は、第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせたものであり、最初に多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルを破壊して、多価陽イオンを成型体内に拡散し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの架橋反応により吸着剤成型体を成型し、次に燐酸を内包する第2のマイクロカプセルを破壊して燐酸を成型体内に拡散し、塩基性ガスに対し、特異吸着を付加した吸着性能を示す吸着剤成型体を成型するという作用を有する。
【0053】
また、本発明の請求項8記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊するものであり、吸着剤成型体を成型後に前記添着剤を浸漬等で添着するという追加工程が不要となり、成型時に既に添着することで工程の簡易化が図れる吸着剤成型体が得られる。
【0054】
また、本発明の請求項9記載の吸着剤成型体は、成型体の補強材として、繊維状材料を用いたものであり、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンとの架橋構造架橋構造に繊維状材料が絡まり、強度を増強するという作用を有する。
【0055】
また、本発明の請求項10記載の吸着剤成型体は、スラリーを射出成型によって任意形状に成型したものであり、吸着剤成型体の成型後に、架橋構造が形成されるため、低い粘度により低い圧力で吸着剤成型体を成型できるという作用を有する。
【0056】
また、本発明の請求項11記載の発明は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法である。
【0057】
また、本発明の請求項12記載の発明は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法であり、吸着剤成型体を成型した後、吸着剤成型体に残存する金属イオン等の不純物を水洗除去することができる。
【0058】
また、本発明の請求項13記載の発明は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法である。
【0059】
また、本発明の請求項14記載の発明は、多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、抗菌剤と、防カビ剤を水で分散したものを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、吸着剤成型体に抗菌、防カビ効果を持たせることができるとともに、植物由来であるアルギン酸ナトリウムによる架橋構造の耐久性を向上することができる吸着剤成型体が得られる。
【0060】
また、本発明の請求項15記載の発明は、抗菌剤、防カビ剤をマイクロカプセルに内包することにより、アルギン酸の架橋構造の形成を阻害する有機溶剤や多価陽イオンを利用することができ、抗菌剤、防カビ剤の使用範囲を広げることができる。
【0061】
また、本発明の請求項16記載の発明は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成したものであり、一の架橋反応を実施可能な方法として、多価陽イオン溶液に浸漬することで容易に吸着剤成型体を成型することができる。吸着剤とアルギン酸ナトリウムを混合したスラリーは、まず、射出成型などの成型方法により形を整える。この成型体を多価陽イオン溶液を満たした槽に浸漬することによって、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンが架橋反応により化学変化し、強固な成型体を形作ることになる。
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0063】
(実施の形態1)
図1〜図4に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aと、架橋反応後にバインダーとなる架橋構造を形成するアルギン酸ナトリウム水溶液3と、アルギン酸ナトリウムのナトリウムと置換することにより初めて架橋反応させるための多価陽イオンとしての塩化カルシウム水溶液4を内包したマイクロカプセル5をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を吸着剤成型体を任意形状に形成するための型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5の壁8を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0064】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋構造が網目構造のバインダーを形成するため、例えば樹脂接着剤のようにガス体の流通の殆どないバインダーを使用するようなガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0065】
なお、本実施の形態では、アルギン酸ナトリウムを説明したが、アルギン酸プロピレングリコールエステルを用いても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0066】
また、吸着剤として活性炭粉末を説明したが、吸着剤として、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0067】
また、多価陽イオンとして塩化カルシウムを用いて説明したが、水酸化カルシウムでも、また、アルギン酸ナトリウムと架橋構造を形成する他の多価陽イオンであるアルミニウムイオン、鉄イオンを用いても良い。
【0068】
また、マイクロカプセルを破壊する手段として熱を用いているが、マイクロカプセルの壁面を、超音波によって破壊する材料、酸、アルカリ、または有機溶剤によって破壊する材料、加圧によって破壊する材料を用いても良い。
【0069】
また、マイクロカプセルはW/O/Wエマルジョンを利用し、有機溶剤を蒸発させて熱可塑性樹脂の壁面を形成するマイクロカプセルでも、スプレイドライヤーでカルシウム塩を含んだ溶融熱可塑性樹脂を噴霧し、カルシウム塩に熱可塑性樹脂がコートされたマイクロカプセルでも良く、マイクロカプセルの製法には拘らない。
【0070】
また、スラリーの加熱は、スラリーを型枠に流し込んでから加熱することで、説明したが、スラリーに分散後に加熱しはじめ、スラリーが任意の形状になった時点で、マイクロカプセルが破壊しても良い。
【0071】
(実施の形態2)
図5に示すように多価陽イオンとして塩化カルシウム水溶液4を内包し、壁9をホットメルトで形成されたマイクロカプセル10を用いて、吸着剤2として活性炭粉末2aと、アルギン酸ナトリウム水溶液3と前記マイクロカプセル10をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル10の壁9を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0072】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、溶融したホットメルトがホットメルト間およびホットメルトと活性炭粉末2a間に粘着接続し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0073】
(実施の形態3)
図6、図7に示すように、活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と塩化カルシウム水溶液4を内包したマイクロカプセル5と、尿素水溶液11を内包したマイクロカプセル12をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5、12の壁を破壊し、カルシウムイオン、尿素がスラリー6内に分散浸透される。
【0074】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造内に活性炭粉末2aを包含し、活性炭粉末2a内に尿素を添着する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋反応による架橋構造が網目構造であり、尿素のシッフ反応によるアルデヒドの特異吸着により、アルデヒドの脱臭能力を増強したこととなる。
【0075】
なお、特異吸着を示す添着剤として尿素を用いて説明したが、アニリン、エチレン尿素を用いても良く、グラフト重合剤を用いても良く、他の臭気成分に特異吸着を示す添着剤をマイクロカプセルに内包して、脱臭効果の増強を図ることとなる。
【0076】
(実施の形態4)
図8に示すように、活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と塩化カルシウム水溶液4を内包し、熱可塑性樹脂Aを壁面に持つ第1のマイクロカプセル13と、燐酸を内包し、熱可塑性樹脂Aより融点の高い熱可塑性樹脂Bを壁面に持つ第2のマイクロカプセル14をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を熱可塑性樹脂Aの融点以上で熱可塑性樹脂Bの融点以下で加熱することで第1のマイクロカプセル13の壁を破壊しカルシウムイオンをスラリー6内に分散浸透し、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造が形成されてから、型枠7を熱可塑性樹脂Bの融点以上で加熱して、第2のマイクロカプセル14の壁を破壊し燐酸が吸着剤成型体1内に含浸し、吸着剤成型体1に添着される。
【0077】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋反応が起こる以前に、燐酸とアルギン酸ナトリウムが反応すると凝集し、水に不溶な架橋構造を形成することを阻害する。そのため、最初に水に不溶なアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋構造を形成した後に、燐酸を吸着剤成型体に浸漬し、アンモニアに特異吸着を示す、燐酸を吸着剤成型体に添着し、脱臭効果の増強を図ることとなる。
【0078】
なお、溶融温度の違う2種類の熱可塑性樹脂を用い、マイクロカプセルの破壊を温度の高低で順番付けることで説明したが、マイクロカプセルの破壊を、圧力、超音波照射、マイクロ波照射、酸、アルカリ、有機溶剤を付与して破壊し、それらのマイクロカプセルの壁材を破壊する工程を順序付け実施しても良い。
【0079】
また、第1、第2のマイクロカプセルの壁面を、異なる方法によって壁面が破壊される材料を組み合わせて用いても良い。例えば、第1のマイクロカプセルを超音波によって破壊される材料とし、第2のマイクロカプセルの壁面を酸によって破壊される材料とする。この場合には、スラリー6を型枠7に流し込んだ後、超音波にかけて、まず第1のマイクロカプセルを破壊する。その後、酸洗して第2のマイクロカプセルを破壊する方法によって吸着剤成型体が得られる。
【0080】
また、マイクロカプセルの種類は2種類に限定するものでなく、3種類以上を組み合わせても良い。
【0081】
また、カルシウムイオンの内包したマイクロカプセルの破壊後、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンによる架橋反応が起こるが、その際、ナトリウムイオンがアルギン酸ナトリウムから分離するが、このナトリウムイオンや他の塩素等不要物が吸着剤の細孔内に留まり、吸着阻害物として作用する場合は、吸着剤成型体を成型後、この吸着剤成型体を水洗しナトリウムイオンを除去し、その後、他のマイクロカプセルを破壊して、特異吸着を示す他の成分を添着することができる。
【0082】
(実施の形態5)
図9に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム水溶液3と、マイクロカプセル5と、繊維状材料15をニーダーで分散してスラリー6を作成し、スラリー6を型枠7に流し込み、その後、スラリー6の入った型枠7を加熱することで、マイクロカプセル5の壁8を破壊し、カルシウムイオンがスラリー6内に分散浸透される。
【0083】
上記構成において、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、このアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンとの架橋構造が網目構造に繊維状材料が入り込んで絡み合い、この架橋構造を繊維状材料が補強し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0084】
(実施の形態6)
吸着剤とアルギン酸ナトリウム水溶液と、マイクロカプセルとニーダーで分散してスラリーを作成し、スラリーを射出成型し、任意の形状に成型し、その後、射出成型体を加熱することで、任意形状の吸着剤成型体を得られる。
【0085】
この手段により、マイクロカプセルの破壊後、初めて架橋構造を形成するため、それ以前はスラリー粘度を低く保つこととなり、射出成型によって、悪臭物質を含んだ流体を通過させる時の圧力損失を低く、吸着剤成型体の接触効率を高くすることが可能な例えば、ハニカムやスリット状に成型可能であり、意匠目的からも任意形状に吸着剤成型体を成型することができる。
【0086】
なお、射出成型によって吸着剤成型体を成型することを説明したが、より低い圧力で吸着剤成型体を成型することができるため、真空鋳型成型、圧縮成型、押し出し成型を用いて吸着剤成型体を任意形状に成型しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
任意の形状の吸着剤成型体が成型できるので、圧力損失が少なく、脱臭効果の高い脱臭フィルターや、通風路が構成でき、送風装置を内装した空調機器の全般に使用が可能であり、また、水等の液体浄化分野において使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態の吸着剤成型体の斜視図
【図2】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図3】同マイクロカプセルの断面図
【図4】同スラリーの内部状態を示す図
【図5】本発明の第2の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図6】本発明の第3の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図7】同スラリーの内部状態を示す図
【図8】本発明の第4の実施の形態のスラリーの内部状態を示す図
【図9】本発明の第5の実施の形態のスラリーの内部状態を示す図
【図10】従来の圧縮成型による吸着剤成型体断面図
【図11】同押し出し成型によるハニカムの斜視図
【符号の説明】
【0089】
1 吸着剤成型体
2 吸着剤
3 アルギン酸ナトリウム水溶液
4 塩化カルシウム水溶液
5、10 マイクロカプセル
6 スラリー
7 型枠
8、9 壁
11 尿素水溶液
12 マイクロカプセル
13 第1のマイクロカプセル
14 第2のマイクロカプセル
15 繊維状材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【請求項2】
マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項3】
マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いることにより、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる請求項2記載の吸着剤成型体。
【請求項4】
多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【請求項5】
第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成することができる請求項4記載の吸着剤成型体。
【請求項6】
第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いることにより、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる請求項5記載の吸着剤成型体。
【請求項7】
第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせた請求項4〜6いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項8】
第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊することを特徴とする請求項7記載の吸着剤成型体。
【請求項9】
吸着剤成型体の補強材として、繊維状材料を用いて、強度を増強することができる請求項1〜8いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項10】
スラリーを射出成型によって任意形状に成型し成型体を構成することができる請求項1〜9いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項11】
請求項2、3または9いずれかに記載の吸着剤成型体は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法。
【請求項12】
請求項4〜8いずれかに記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法。
【請求項13】
請求項7記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法。
【請求項14】
混合スラリーに、抗菌剤、防カビ剤を混合してなる請求項1〜3いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項15】
第2のマイクロカプセルは、芯材として抗菌剤、防カビ剤を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせた請求項4〜8いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項16】
吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【請求項1】
多価陽イオンを内包したマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【請求項2】
マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項3】
マイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いることにより、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる請求項2記載の吸着剤成型体。
【請求項4】
多価陽イオンを内包した第1のマイクロカプセルと、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、各臭気ガスに特異吸着を示す添着剤を芯材として内包する第2のマイクロカプセルを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルの壁面を破壊し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【請求項5】
第1、第2のマイクロカプセルの壁面を加熱によって破壊する材料によって成型体を構成することができる請求項4記載の吸着剤成型体。
【請求項6】
第1、第2のマイクロカプセルの壁面は、加熱によって破壊する材料として、ホットメルトを用いることにより、加熱溶融したホットメルトが成型体の強度を上げることができる請求項5記載の吸着剤成型体。
【請求項7】
第2のマイクロカプセルは、芯材として燐酸を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせた請求項4〜6いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項8】
第1のマイクロカプセル、第2のマイクロカプセルともに加熱によって破壊される壁面で構成され、第1のマイクロカプセルの壁面と第2のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面の融点を高くすることによって、成型体を構成後に第2のマイクロカプセルを破壊することを特徴とする請求項7記載の吸着剤成型体。
【請求項9】
吸着剤成型体の補強材として、繊維状材料を用いて、強度を増強することができる請求項1〜8いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項10】
スラリーを射出成型によって任意形状に成型し成型体を構成することができる請求項1〜9いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項11】
請求項2、3または9いずれかに記載の吸着剤成型体は、スラリーを型枠に流し込んだ後、型枠を加熱することによって、スラリーの温度を上げてマイクロカプセルの壁面を破壊して成型を行う吸着剤成型体の製造方法。
【請求項12】
請求項4〜8いずれかに記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセルを破壊してアルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を成型した後、水洗してナトリウムイオンを除去し、その後、第2のマイクロカプセルを破壊する吸着剤成型体の製造方法。
【請求項13】
請求項7記載の吸着剤成型体は、第1のマイクロカプセルは、破壊方法αで破壊される材料で壁面を形成し、第2のマイクロカプセルは、破壊方法βで破壊される材料で壁面を形成し、これらを混合したスラリーを成型し、破壊方法αで第1のマイクロカプセルの壁面を破壊した後、破壊方法βで第2のマイクロカプセルの壁面を破壊する吸着剤成型体の製造方法。
【請求項14】
混合スラリーに、抗菌剤、防カビ剤を混合してなる請求項1〜3いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項15】
第2のマイクロカプセルは、芯材として抗菌剤、防カビ剤を内包し、第2のマイクロカプセルの壁面と第1のマイクロカプセルの壁面を比較して、第2のマイクロカプセルの壁面が、第1のマイクロカプセルの壁面の後に破壊するようマイクロカプセルの壁面の材料を組み合わせた請求項4〜8いずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項16】
吸着剤と、アルギン酸ナトリウムを混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に多価陽イオン溶液に浸漬し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で成型体を構成することができる吸着剤成型体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−212464(P2008−212464A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55603(P2007−55603)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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