説明

吸着固定装置

【課題】吸盤ユニットと台座で構成される吸着固定装置において、台座に加わったねじり力により吸盤ユニットの破損を防止する。
【解決手段】本実施の形態の吸着固定装置は、台座と、吸盤軸と吸盤からなる吸盤ユニットと前記台座の上面を摺動させて、前記吸盤軸を上下に移動可能なレバーとを備え、前記台座は、当該台座に加わったねじり力を前記吸盤に伝える当て部を設け、前記吸盤は、前記当て部から伝えられた前記ねじり力を受ける受け部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸盤を用いて床や壁に固定可能な吸着固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワンセグ放送が始まり、それを受信できるポータブル型テレビが開発されている。そのようなポータブル型テレビでワンセグ放送を視聴するためには、その専用台が必要となり、様々な形態のテレビ台が提案されている。例えば、ポータブル型テレビを確実に固定するために、吸盤を用いた台も提案されている。
【0003】
先行文献1に開示されている弾性吸着盤は、弾性吸着盤を変形させることで気密面に囲まれた密閉空間の体積を変化させるための摺動板、支柱の操作によって摺動板を動かすために摺動板上に立設された連結軸を有する。この弾性吸着盤は、摺動板をインサートした金型で弾性吸着盤を射出成形することで、両者が一体的に成形されている。このような構造の弾性吸着盤において、摺動板を弾性吸着盤から引き抜くような力が加えられると、弾性吸着盤の連結軸が突出している穴部が変形して拡大し、摺動板が脱落するという破損が発生しうる。先行文献1では、これを改善するために、摺動板に多数の透孔を設け、弾性吸着盤の成形時に弾性吸着盤の材料をこの透孔に流入させている。これにより、透孔に流入した弾性吸着盤の材料が閂の役割を果たし、この閂が破断しない限りは、摺動板が弾性吸着盤から脱落しないようになるので、摺動板の脱落強度が改善する。
【0004】
このような吸盤ユニットは、ポータブル型テレビを固定するために、そのテレビ台にも利用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−93743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の弾性吸着盤をテレビ台に適用しても、閂部の破断強度を上回る荷重が作用すると閂部が破損し、摺動板の脱落強度が低下してしまうという課題があった。特に、摺動板の透孔は吸盤の中心に近い部分にあるので、弾性吸着盤中心から遠い位置に、摺動板をねじるような外力が加わると、比較的小さな力でも閂部が破断してしまうという課題があった。このねじり力に対する閂部の強度は、透孔の断面積を上げるか、透孔を弾性吸着盤の中心からより遠い位置にすることで改善できるが、どちらの方法でも摺動板の径が拡大してしまい、弾性吸着盤をコンパクトにすることが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決すべく、摺動板に大きなねじり力が加わった場合でも、破損に至る前に吸着を自動的に解除することで、破損を防ぐことができる吸着固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の吸着固定装置は、台座と、吸盤軸と吸盤からなる吸盤ユニットと前記台座の上面を摺動させて、前記吸盤軸を上下に移動可能なレバーとを備え、前記台座は、当該台座に加わったねじり力を前記吸盤に伝える当て部を設け、前記吸盤は、前記当て部から伝えられた前記ねじり力を受ける受け部を設けるようにしたものである。
【0009】
このような構造とすることにより、台座に一定以上のねじり力が加わった場合には、当て部と受け部の接触により吸盤が変形し、吸着が解除されて吸着力が消滅するので、吸盤軸に加わるねじり力を一定以下にでき、吸盤ユニットの破損を防止できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、吸盤を吸着させた状態において、吸盤ユニットに破損強度を越えるねじり力が作用しない吸着固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1にかかる保吸着固定装置の斜視図
【図2】実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸着前の状態を示す断面図
【図3】実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸着後の状態を示す断面図
【図4】実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸盤軸の斜視図
【図5】実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸盤ユニットを示す断面図
【図6】実施の形態1にかかる吸着固定装置の吸着状態における天面図
【図7】実施の形態1にかかる吸着固定装置において台座が回転したときを示す天面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸着固定装置の実施の形態について、ポータブルテレビを保持するスタンドを一例として、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に、実施の形態1にかかる吸着固定装置の斜視図を示す。
【0013】
図2に、実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸着前の状態の断面図を示す。
【0014】
図3に、実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸着後の状態の断面図を示す。
【0015】
図4に、実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸盤軸の斜視図を示す。
【0016】
図5に、実施の形態1にかかる吸着固定装置における吸盤ユニットの断面図を示す。
【0017】
吸着固定装置100は、台座101、吸盤ユニット102、レバー103、レバー回転軸104で構成される。
【0018】
台座101は、貫通穴105、カム動作面106、気密リブ107、保持部108、回転当て109からなる。保持部108は、図示しないポータブルテレビを保持する。
【0019】
吸盤ユニット102は、複数の穴110を有する吸盤軸111と吸盤112からなる。吸盤112は、吸盤軸111に対してインサート成形することで作られる。このとき、インサート成形され作られた吸盤112は、吸盤軸111の複数の穴110に入り込んだ樹脂である閂部113を有し、この閂部で吸盤軸111と一体化している。吸盤112の一部には、後で説明する回転受け114が設けられている。吸盤軸111は、レバー連結用穴115が設けられている。
【0020】
レバー103は、操作部116、カム117、吸盤軸連結穴118からなる
なお、レバー回転軸104は、同軸線上に配置された吸盤軸連結用穴118とレバー連結用穴115とに挿入されているので、図2、図3では、重なり合っている。
【0021】
次に、吸着固定装置100の吸着動作を説明する。
【0022】
吸着固定装置100を吸着対象面119の上に置き、図2の吸着前の状態においてレバー103を方向Aに回転すると、カム117がカム動作面106上を摺動して吸盤軸連結用穴118を上に押し上げ、回動自在に連結されている吸盤軸111が引き上げられ、吸盤112が椀状に変形する。このとき、吸盤112は気密リブ107によって吸着対象面119に押し付けられて気密面120が形成される。これにより、吸盤112と気密面120と吸着対象面119に囲まれた密閉空間121内部の圧力が低下し、吸盤ユニット102は吸着対象面119に吸着する。以上の動作により、図2の吸着前の状態からレバー103を方向Aに回転させるだけで、図3の吸着後の状態に変化する。吸着後の状態から吸着前の状態に戻すためには、上記吸着動作の逆の手順で行うことが出来る。
【0023】
次に、吸着固定装置100の台座101にねじり力が加わった場合に、吸盤112にある閂部113が破損に至る前に、吸着が解除される様子を説明する。
図6は、吸着状態とした実施の形態1にかかる吸着固定装置100の天面図を示す。ただし、見易さのためにレバーを省いて図示している。
【0024】
台座101に方向Bの力を加えると、吸着対象面119と吸盤112との摩擦力が大きいために、台座101は吸盤軸111を中心として方向Cに回転を始め、台座101の回転当て109が、吸盤112の回転受け114に接触する。
【0025】
図7は、台座101が方向Cに回転した状態を示す。このとき、吸着状態での台座101への荷重によって台座101が回転し、回転当て109と回転受け114が接触している。
【0026】
この状態から、方向Bに力を加えていくと、回転当て109によって回転受け114が押され、吸盤112が歪められる。そして、密閉空間121を囲むように形成されていた気密面120が、部分的に吸着対象面119から持ち上げられ、密閉空間121に外部の空気が流入するので吸着が解除される。これにより、吸盤軸部111に過大なねじり力が作用することを防ぎ、吸盤ユニット102の破損を防止する効果が得られる。
【0027】
なお、本実施の形態では、回転当て109及び回転受け114は、気密リブ107の外側に設けられているが、例えばこれを内側に設けても同様の効果が得られる。
【0028】
また、本実施の形態では、回転当て109は円周の一箇所にのみ設けたが、複数個所に設けても同様の効果が得られる。
【0029】
また、本実施の形態において、台座101には保持部108を設けず、レバー103に保持機能を持たせた場合でも、その他の部位について同様の構造とすれば、同様の効果が得られる。
【0030】
さらに、回転当て109を台座101ではなく、レバー103に設ければ、レバー103に加えられた負荷による吸盤ユニット102の破損を防止する効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、吸盤を用いて床や壁に固定可能な吸着固定装置に関するものであって、吸盤ユニットの破損を防止することができる吸着固定装置を提供できる。そのため、本発明は、電子機器を保持することができる設置台に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
100 吸着固定装置
101 台座
102 吸盤ユニット
103 レバー
104 レバー回転軸
105 貫通穴
106 カム動作面
107 気密リブ
108 保持部
109 回転当て
110 吸盤軸の穴
111 吸盤軸
112 吸盤
113 閂部
114 回転受け
115 レバー連結用穴
116 操作部
117 カム
118 吸盤軸連結用穴
119 吸着対象面
120 気密面
121 密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
吸盤軸と吸盤からなる吸盤ユニットと
前記台座の上面を摺動させて、前記吸盤軸を上下に移動可能なレバーとを備え、
前記台座は、当該台座に加わったねじり力を前記吸盤に伝える当て部を設け、
前記吸盤は、前記当て部から伝えられた前記ねじり力を受ける受け部を設けることを特徴とした吸着固定装置。
【請求項2】
前記受け部は、前記当て部を挟むように構成されることを特徴とする請求項1の吸着固定装置。
【請求項3】
台座と、
吸盤軸と吸盤からなる吸盤ユニットと
前記台座の上面を摺動させて、前記吸盤軸を上下に移動可能なレバーとを備え、
前記レバーは、前記レバー回転軸で前記吸盤が設置面に吸着するように回動させたときに、当該レバーに加わったねじり力を前記吸盤に伝える当て部を設け、
前記吸盤は、前記当て部から伝えられた前記ねじり力を受ける受け部を設けることを特徴とした吸着固定装置。
【請求項4】
前記受け部は、前記レバーが前記レバー回転軸で前記吸盤が設置面に吸着するように回動させたときに、前記レバーを挟むように構成されることを特徴とする請求項3の吸着固定装置。
【請求項5】
保持対象物を保持する保持部とを備えることを特徴とする請求項1〜4に記載の吸着固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202761(P2011−202761A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72000(P2010−72000)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】