説明

吸着担体および体外循環用カラム

【課題】
有用な白血球の除去を抑制しつつ、異常に活性化し増殖した白血球を効率よく除去することに好適に使用し得る吸着材およびそれを用いた血液処理カラムの提供。
【解決手段】
水不溶性担体を含む foxp3、CD4およびCD25陽性白血球の吸着率が40%以下、および/またはCD123陽性白血球の吸着率が60%以上であることを特徴とする白血球吸着材。吸着材形状は繊維、膜、中空糸及びビーズから選ばれ、この白血球吸着材を容器に充填してなる血液処理カラムは、白血球除去療法に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液中から白血球を除去する、いわゆる白血球除去療法に好適に用いられる吸着材および血液処理カラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、異常に活性化し、また、増殖した白血球による自己の細胞の破壊や障害が原因とされる疾患として、慢性関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病・悪性貧血、アジソン病、萎縮性胃炎、溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、多発性硬化症などの自己免疫疾患や、花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックなどのアレルギー疾患やあり、これらの治療法として、ステロイドの投与などの薬物療法や、血液中から過剰な免疫細胞(白血球)を除去する血球成分除去療法が行われている。
【0003】
自己免疫疾患においては増殖した白血球が疾患に関与しているが、foxp3、CD4およびCD25陽性白血球(本発明において、foxp3、CD4およびCD25の全てが陽性となっている白血球を指す。)については、体内の免疫応答に関して重要な役割を担っていることが知られている。一方、アレルギー疾患においては、CD123陽性白血球(本発明において、CD123が陽性となっている白血球を指す。)が健常な状態と比較して有意に増殖していることが知られており、CD123陽性白血球のこれらの疾患に対する関与が示唆されている。
【0004】
これまでの、血球成分除去療法を目的とした白血球除去、顆粒球除去を目的としたカラム(特許文献1,2)は、これらのカラムの担体において、白血球そのものの除去、顆粒球そのものの除去には効率化が施されているが、正常な、異常に活性化していない白血球についても除去しているため、残存した細胞の正常化が不十分となる。
【特許文献1】特開昭60−193468号公報
【特許文献2】特開平5−168706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、有用な白血球の除去を抑制しつつ、異常に活性化し増殖した白血球を効率よく除去することに好適に使用し得る吸着材およびそれを用いた血液処理カラムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.水不溶性担体を含む、血液からCD123陽性白血球を選択的に吸着する用途に用いられる白血球吸着材。
2.水不溶性担体を含む、foxp3、CD4およびCD25陽性白血球の吸着率が40%以下、および/またはCD123陽性白血球の吸着率が60%以上であることを特徴とする白血球吸着材。
3.形状が繊維、膜、中空糸及びビーズから選ばれることを特徴とする前記1または2に記載の白血球吸着材。
4.繊維径が4〜10μmの繊維あるいは中空糸、および/またはビーズ粒子の表面の突起の径が4〜10μmのビーズを含むことを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の白血球吸着材。
5.白血球除去療法に用いられることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の白血球吸着材。
6.前記1〜5のいずれかに記載の白血球吸着材を容器に充填してなる血液処理カラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の材料で、過剰に活性化、また増殖した顆粒球や単球などの人体に不要な白血球を効率よく除去することにより、自己免疫疾患やアレルギー疾患などの血液処理や治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明における白血球吸着材は、水不溶性担体を含むものであり、血液からCD123陽性白血球を選択的に除去する用途に用いられるものである。「血液からCD123陽性白血球を選択的に除去する」とは、血液を吸着材に接触させたとき、体内の免疫応答に関して重要な役割を担うリンパ球に比較して、CD123陽性白血球をより高い吸着率で除去することをいい、好ましくは全体的な白血球の吸着率(CD123陽性白血球を含めた全ての白血球の数としての吸着率)に比較してCD123陽性白血球の吸着率がより高いことをいう。なお、本発明で言うリンパ球とは、いわゆるリンパ球の総称として使っている。シスメックス社製XT−1800iVを用いて行った細胞分類に準じ、B細胞やT細胞などを区別したものではない。一方、本発明の白血球吸着材は「foxp3、CD4およびCD25陽性白血球を非選択的に除去する」用途にも用いられるが、これは、各種疾患に関与する顆粒球の吸着率に比較して、foxp3、CD4およびCD25陽性白血球全体の白血球の吸着率(foxp3、CD4およびCD25陽性白血球を含めた全ての白血球の数としての吸着率)をより低い吸着率で除去することをいい、好ましくは、全体的な白血球の吸着率に比較してfoxp3、CD4およびCD25陽性白血球をより低い吸着率で除去することをいう。すなわち、本発明の白血球吸着材は、「CD123陽性白血球を選択的に除去することが求められる用途」もしくは「foxp3、CD4およびCD25陽性白血球を非選択的に除去することが求められる用途」またはこれら両方の用途に用いられるものである。かかる用途の具体例としては、自己免疫疾患、アレルギー疾患の治療用途があげられる。かかる具体的な自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病・悪性貧血、アジソン病、萎縮性胃炎、溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、多発性硬化症などがあげられ、また、具体的なアレルギー疾患としては、花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックなどがあげられる。
【0010】
本発明における白血球吸着材によるfoxp3、CD4およびCD25陽性白血球の吸着率は、40%以下であることが望ましく、30%以下がより好ましい。かかる吸着率が40%を超えると、人体に必要な免疫応答のバランスが崩れ、増殖した白血球による自己の細胞の破壊や障害が原因とされる疾患が悪化する。
【0011】
なお、ここでいうfoxp3、CD4およびCD25陽性白血球の吸着率とは、foxp3、CD4およびCD25のすべてが陽性となった白血球の吸着率であり、3種合わせての全体の吸着率を意味するものではない。
【0012】
本発明における白血球吸着材によるCD123陽性白血球の吸着率は、60%以上であることが望ましく、70%以上がより好ましい。かかる吸着率が60%未満であると、各種疾患に対する期待する治療効果が得られない。
【0013】
また、本発明における吸着率とは、血球を例に取る場合、吸着材を充填した内容積2mlのカラムに血液25mlを37℃で1時間、流速1.3ml/minで循環させた前後の血球数を血球分析装置により測定して、以下の式より算出し、小数点以下の数値を四捨五入して求められるものである。なお上記比率から血液量、血液の流速を算出することにより、カラムの大きさを変更しても構わない。
【0014】
吸着率(%)=[(カラム循環前の血液中の血球数)−(カラム循環後の血液中の血球量)]/(カラム循環前の血液中の血球量)×100
なお、本発明の吸着材は、血球を吸着する作用を有するものであるが、さらに濾過作用を有するものであってもよい。この場合の上記吸着率の算出対象は、吸着により血液中から除去される血球だけでなく濾過により除去される血球も含まれることになる。
【0015】
かかる吸着材の基本的な構成としては、水不溶性担体が好ましく用いられる。
【0016】
本発明で用いる水不溶性担体としては、水に不溶で、官能基を固定化できるものであればよく、特に制限されない。また、水不溶性担体は水不溶性の材料からなるものであるが、本発明における水不溶性材料とは、実質上、あるいはその大部分が水に溶けない性質の材料を意味し、60分間水中に入れた場合の重量減量が初期重量の2%未満の材料を指す。生体適合性の観点からは、ポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン系化合物が好ましく、ポリアミドや、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステルも好ましい。
本発明において、水不溶性担体の形状としては特に限定されないが、粉末、粒子、繊維、フィルム等の各種成型品をあげることができる。加工性や、血液処理カラムとしたときの圧力損失等の点から、繊維、膜、中空糸又はビーズの形状、または、これらの形状の組み合わせであることが好ましい。
【0017】
異常に活性化した白血球を吸着除去させるためには、水不溶性担体として用いる、これら繊維、中空糸及びビーズ粒子の表面の突起の径としては10μmを超えるとCD123陽性白血球の吸着率が低下してしまうため、実用上20μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましい。また、4μmより径が小さくなると、foxp3およびCD4およびCD25陽性白血球についても吸着除去が起こるため、4μm以上であることが好ましい。ただし、血球の除去以外の目的で混合した繊維構造体などの径はこの限りではない。なお、ここでいう繊維径は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で1000〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入し算出することで求められるものをいう。
【0018】
本発明においては、異常に活性化した白血球を効率よく除去するために、水不溶性担体に官能基を固定化したもの、もしくは官能基を固定化した水不溶性担体を基材にコーティング等したものが好ましい。中でも、上記水不溶性担体に、官能基として4級アンモニウム塩もしくは直鎖状アミノ基またはこれら両方(以下、4級アンモニウム塩等という。)を固定化したものが好ましい。4級アンモニウム塩等を水不溶性担体に固定化するための反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などをあげることができるが、とりわけ、活性ハロゲン基、中でも、ハロアセチル基は、製造が容易な上に、反応性が適度に高く、4級アンモニウム塩等の固定化反応が温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので好ましい。
【0019】
固定化される官能基としては4級アンモニウム塩等が好適であり、これらは、それぞれ3級アミノ基がポリマーに化学的に結合した状態のもの、あるいはアンモニア、1〜2級アミノ基のいずれかがポリマーに化学的に結合した状態のものを意味する。さらに、1〜3級アミノ基としては、炭素数で言うと、窒素原子1個当たり炭素数18以下であるものが反応率向上のために好ましい。さらに、1〜3級アミノ基の中でも、窒素原子1個当たり炭素数3以上18以下、とりわけ、4以上14以下のアルキル基を持つ3級アミノ基から得られる4級アンモニウム基を結合したものが白血球とともにサイトカインをも吸着するという観点から優れている。かかるサイトカインとしては、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、血管新生増殖因子(VEGF)および免疫抑制酸性蛋白(IAP)からなる群から選ばれる少なくとも1種のサイトカインがあげられる。これらは、すべて白血球除去療法適用が考えられている、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性関節リウマチなどでその病態への関与が指摘されているサイトカイン等である。かかる3級アミノ基を有する化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミンなどがあげられる。
【0020】
また、かかる直鎖状アミノ基を有する化合物の具体例としてはジアミノエタン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N−メチル−2, 2’−ジアミノジエチルアミン、N−アセチルエチレンジアミン、1, 2−ビス(2−アミノエトキシエタン)等に代表されるアルキルアミン類などが用いられるが、好ましくはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミンに代表されるエチレンイミン類が用いられる。より好ましくは窒素原子数が1〜10個であるエチレンイミン類が用いられる。なお、本発明でいう直鎖状アミノ基については、一部分岐がある構造のものも含む。
【0021】
本発明における4級アンモニウム塩等の結合の水不溶性担体の繰り返し単位あたりにおける密度は、水不溶性担体の化学構造および用途により異なるが、少なすぎるとその機能が発現しない傾向にあり、一方、多すぎると、固定化後の担体の物理的強度が悪くなり、吸着材としての機能も下がる傾向にあるので、該密度は水不溶性担体の繰り返し単位あたり0.01〜2.0モル、より好ましくは0.1〜1.0モルがよい。
【0022】
前述の通り、吸着材の形状としては特に限定はないが、カラムとして用いる場合には、ビーズ、繊維、膜、中空糸が好ましく、さらに、形態としては繊維を編織した編地、織物や不織布等の繊維構造物が好ましい。水不溶性担体がそれのみで形態保持できれば単独での使用も可能であるし、形態保持性が低ければ適当な基材にコーティングなどの方法で固定したり、他の吸着材と混合して一つのカラムとして用いることもできる。固定化あるいは混合などの操作は、上記形状に加工する前に行ってもよい。
【0023】
本発明の吸着材においては、形態は特に不織布とすることが好ましい。その場合、不織布の嵩密度は、大きすぎると目づまりしやすく、逆に小さすぎると形態保持性が悪くなるので、0.02〜0.15g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.15g/cmであるものが使用される。
【0024】
本発明において用いられる不織布は、単独繊維から製造されるものであってもよいが、特に好ましくは海島型複合繊維から製造される。すなわち、かかる複合繊維を用いて公知の方法によって不織布にしてから、この不織布を、形態保持性を良くするため、および嵩密度を調整するために、ニードルパンチした後、海成分を溶解することによって、容易に製造することができる。
【0025】
水不溶性担体として好ましい素材は前述の通りであるが、単独で使用可能な4級アンモニウム塩および/または直鎖状アミノ基ポリマーの具体例としては、ポリ(p−フェニレンエーテルスルホン):−{(p−C)−SO−(p−C)−O−}n−やユーデル・ポリスルホン:−{(p−C)−SO−(p−C)−O−(p−C)−C(CH−(p−C)−O}−のほか、−{(p−C)−SO −(p−C)−O−(p−C)−O}−、−{(p−C)−SO−(p−C)−S−(p−C)−O}−、−{(p−C)−SO−(p−C)−O−(p−C)−C(CF−(p−C)−O}−などで代表されるポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、アクリルポリマーなどで、かつ、アミノ基を共有結合により固定化できる反応性官能基を持つものが使用される。そのなかでも、ポリスルホン系重合体は安定性が高く、また形態保持性が良いので好ましく用いられる。
【0026】
具体的な例としては、クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン、クロルアセトアミドメチル化したユーデル・ポリスルホン、クロルアセトアミドメチル化したポリエーテルイミドなどが使用される。さらに、これらのポリマーは有機溶媒に対し可溶であるものが、成型のしやすさの上から、特に好ましく使用される。
【0027】
本発明の吸着材は、官能基として4級アンモニウム塩および/または直鎖状アミノ基等を選定して、これを固定化したポリマーを水不溶性担体自体を繊維、中空糸及びビーズに成形して製造することの他、繊維、中空糸及びビーズ、特に生産性の面から好ましくは不織布等の基材に4級アンモニウム塩および/または直鎖状アミノ基を有するポリマをコーティングすることによって製造することもできる。その際に、該ポリマーを溶媒、たとえば塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,Nージメチルホルムアミドなどに溶かし、これらの溶液に該不織布を浸したのち、該溶媒を蒸発させることにより容易に製造される。
【0028】
また、4級アンモニウム塩および/または直鎖状アミノ基を水不溶性担体に固定化する際の反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが好ましく用いられる。
【0029】
本発明の血液処理用カラムは、本発明の吸着材をカラム容器に充填することによって製造することができる。カラム容器としては、公知の血液処理用カラムの容器を用いることができる。カラムの構成としては、吸着材を平板状に形成したものを重ねて充填したカラム、吸着材が円筒形状に巻かれてなる円筒状フィルターが両端部に血液入口と血液出口とを有する円筒容器に納められているカラム、また、吸着材が円筒状にまかれてなる中空円筒状フィルターがその両端部を封止された状態で血液入口と血液出口とを有する円筒状容器に納められ、かつ容器の血液出口は前記中空円筒状フィルターの外周部に通じる部位に設けられ、容器の血液出口は前記中空円筒状フィルターの内周部に通じる部位に設けられているカラムが好ましい。そのなかでも、円筒中空状フィルターを用いたカラムは、血液中の活性化白血球の大部分が、円筒形状フィルターの外周部の大きな面積の不織布によって迅速に除去され、除去されずに残ったわずかな活性化白血球も、円筒形状フィルターの内周部における小さな面積の不織布によっても十分に除去されるというように、効率的な活性化白血球除去が可能であるので、最も好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、発明の内容が実施例に限定されるものではない。なお、繊維径は不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5400LV)で1000〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、 それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入し算出した。
(不織布1)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=44:44:12
この繊維85重量%(直径30μm)と、直径20μmのポリプロピレン15重量%からなるシート状物を作製した後、ニードルパンチすることによって不織布を得た(不織布1)。
(不織布2)
次に、この不織布1を90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して、海成分の「エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル」を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が5μmで、嵩密度が0.05g/cm(総目付250g/m)の不織布を作製した(不織布2)。
(中間体1)
次に、ニトロベンゼン600mLと硫酸390mLの混合液にパラホルムアルデヒド3gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、75.9gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに5gの上記不織布2を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールでよく洗った後、水洗し、乾燥して、7.0gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を得た。
(吸着体1)
N,N−ジメチルオクチルアミン50gとヨウ化カリウム8gを360mLのジメチルスルホキシド(DMF)に溶かした溶液に5gの中間体1を浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。加熱後の繊維をイソプロパノールで洗浄後、1mol/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥して、8.3gのジメチルオクチルアンモニウム化繊維(吸着体1)を得た。
(吸着体2)
テトラエチレンペンタミン0.7gとトリエチルアミン6.4gを360mLのジメチルスルホキシドに溶かした溶液に5gの中間体1を30℃のバス中で3時間加熱した。加熱後の繊維をメタノールで洗浄後、水洗して、テトラエチレンペンタミン化繊維(吸着体2)を得た。
[実施例1]
健常者ボランティアの血液50mlをヘパリン採血し、以下の検討を行った。
【0031】
吸着材1を150mg採って内容積2mlのカラムに充填し、37℃で1時間、流速1.3ml/minで上記血液25mlを循環した後、血球の組成を自動血液分析器で調べた。次式から吸着率を算出し、小数点以下の数値を四捨五入して値を求めた。
【0032】
吸着率(%)=[(カラム循環前の血液中の血球数)−(カラム循環後の血液中の血球数)]/(カラム循環前の血液中の血球数)×100
上記循環前後の血液100μLにPE anti−human foxp3 Staining Kit(BAY BIOSCIENCE 株式会社製)、FITC anti−human CD4(BAY BIOSCIENCE 株式会社製)、phycoerythrin−Cy5 anti−human CD25(BAY BIOSCIENCE 株式会社製)を使用してfoxp3、CD4およびCD25をそれぞれ蛍光ラベルした後に、それぞれFACS溶血試薬(ベクトンディッキンソン株式会社製)を加えて30分間暗所で反応させ、溶血処理を行った後に、遠心分離し、燐酸緩衝生理食塩水を用いて血球を洗浄した。その後、フローサイトメーター(ベクトンディッキンソン株式会社製、FACSCalibur)を用い、foxp3、CD4およびCD25陽性白血球を調べた。また、PE anti−human CD123(BAY BIOSCIENCE 株式会社製)を使用して CD123を蛍光ラベルした後にFACS溶血試薬(ベクトンディッキンソン株式会社製)を加えて30分間暗所で反応させ、溶血処理を行った後に、遠心分離し、燐酸緩衝生理食塩水を用いて血球を洗浄した。その後、フローサイトメーターを用い、CD123陽性白血球を調べた。リンパ球吸着率20%、顆粒球吸着率78%、単球吸着率78%であり、foxp3およびCD4およびCD25陽性白血球吸着率25%、CD123陽性白血球吸着率71%であった。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
吸着体2を用い、実施例1と同様の実験を行った。
その結果、リンパ球吸着率6%、顆粒球吸着率51%、単球50%吸着率であり、foxp3およびCD4およびCD25陽性白血球吸着率23%、CD123陽性白血球吸着率61%であった。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
不織布2を用い、実施例1と同様の実験を行った。
その結果、リンパ球吸着率20%、顆粒球吸着率60%、単球72%吸着率であり、foxp3およびCD4およびCD25陽性白血球吸着率34%、CD123陽性白血球吸着率70%であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
不織布1を用いて、実施例1と同様の試験を行った(血液量は25ml)。リンパ球吸着率9%、顆粒球吸着率10%、単球12%吸着率であり、foxp3およびCD4およびCD25陽性白血球吸着率11%、CD123陽性白血球吸着率11%であった。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性担体を含む、血液からCD123陽性白血球を選択的に吸着する用途に用いられる白血球吸着材。
【請求項2】
水不溶性担体を含む、foxp3、CD4およびCD25陽性白血球の吸着率が40%以下、および/またはCD123陽性白血球の吸着率が60%以上であることを特徴とする白血球吸着材。
【請求項3】
形状が繊維、膜、中空糸及びビーズから選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の白血球吸着材。
【請求項4】
繊維径が4〜10μmの繊維あるいは中空糸、および/またはビーズ粒子の表面の突起の径が4〜10μmのビーズを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白血球吸着材。
【請求項5】
白血球除去療法に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の白血球吸着材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の白血球吸着材を容器に充填してなる血液処理カラム。

【公開番号】特開2007−313288(P2007−313288A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267461(P2006−267461)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】