説明

吸込口体、電気掃除機

【課題】床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体を提供する。
【解決手段】本吸込口体1は、吸込口本体2と、この吸込口本体2の上側が開放されこの吸込口本体2の下部をなす下ケース4と、この下ケース4の上部の後側を覆い、下ケース4との間で接続管3を回転自在に挟持する上ケース5とを備え、回転ブラシの上方で吸込室の天井部をなす上ケース5の一部には、回転ブラシの長手方向に沿って通気開口10が設けられ、この通気開口10を適宜閉塞する移動部としての回動部材11が設けられ、回動部材11の下方への移動により、通気開口10が開放され、この通気開口10を介して、隙間上部の家具などの底板に付着した塵埃を吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸込口体およびこれを用いた電気掃除機に係り、特に、吸込口体本体の吸込室の天井部の一部が下方に動く移動部を備えた吸込口体およびこれを用いた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気掃除機は、電動送風機を収容した掃除機本体を備え、この掃除機本体には、電動送風機の吸込側に連通する集塵部が設けられ、この集塵部は、掃除機本体に形成された本体吸込口と連通し、さらに、この本体吸込口には、ホース体、延長管および吸込口体としての床ブラシが順次連通接続される。
【0003】
従来の床ブラシは、吸込口本体内に回転ブラシを設け、さらに、この回転ブラシに面する吸込口本体の下面に吸込口を設けているが、吸込口本体の丈を低く(薄く)することができないため、床と家具などとの上下の隙間が狭い場合、吸込口体(床ブラシ)の丈が高いため、隙間の掃除を行うことができないという問題があった。
【0004】
なお、吸込口本体の前方端部から上面に亘り吸込口本体に重ねて設けた補強部材を設けることで、前面からの衝撃に対して吸込口本体と補強部材にて外郭を保持することができ、回転ブラシの周囲空間を一定に保持し、かつ回転ブラシの回転軸中心のずれを無くし吸引・集塵性能を安定させる吸込口体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載の吸込口体は、その丈を低くすることができないため、狭い上下の隙間の掃除を行うことができない。また、吸込口本体の前部に軸回りに回動可能なカバーを設け、このカバーが後退した際に清掃部材がカバーに接触し、壁際などにある塵埃を掻き上げることのできる吸込口体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、この特許文献2に記載の吸込口体は、壁際などにある塵埃を掻き上げることができるが、その丈を低くすることができないため、狭い上下の隙間の掃除を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−272652号公報
【特許文献2】特開2006−187640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体およびこれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る吸込口体は、吸込口本体と、この吸込口本体に設けられ、天井部の一部が下方に動く移動部を備えた吸込室と、この吸込室に収容され、天井部の下方に位置する回転清掃体と、前記吸込室に連通する接続管とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電気掃除機は、電動送風機を収容した掃除機本体と、この掃除機本体に対して前記電動送風機の吸込側に連通接続される前記吸込口体とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸込口体によれば、床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体を提供することができる。
【0012】
また、本発明に係る電気掃除機によれば、床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体を用いた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の電気掃除機の概念図。
【図2】本発明の第1実施形態の吸込口体の斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態の吸込口体の縦断面図。
【図4】本発明の第1実施形態の吸込口体の吸込室近傍を拡大して示す開口閉塞状態の縦断面図。
【図5】本発明の第1実施形態の吸込口体の吸込室近傍を拡大して示す開口開放状態の縦断面図。
【図6】本発明の第2実施形態の吸込口体の縦断面図。
【図7】本発明の第2実施形態の吸込口体の使用状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る吸込口体およびこれを用いた電気掃除機について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の電気掃除機51は、掃除機本体52を備え、この掃除機本体52は、内部に収容された電動送風機53の駆動にて生じる吸気風とともに吸い込んだ塵埃を、集塵部(図示省略)に捕集する。
【0016】
また、掃除機本体52には、電動送風機53の動作を制御する制御手段としての図示しない制御回路が収容されているとともに、外部から空気を吸引する本体吸込口54が前部に開口される。この本体吸込口54には、可撓性を有し湾曲可能な細長略円筒状のホース体55が連通接続される。
【0017】
このホース体55の先端には、電動送風機53の動作モードなどが選択可能な手元操作部56が設けられる。この手元操作部56には、掃除する際に作業者が把持する把持部57が基端側に向けて突設され、この把持部57には、制御回路に所定の信号を送信して掃除機本体52内の電動送風機53などを複数の動作モードに設定する複数の設定ボタン58が設けられている。
【0018】
さらに、手元操作部56の先端には、伸縮自在な細長略円筒状の延長管59が着脱自在に連通接続される。すなわち、延長管59は、ホース体55を介して電動送風機53の吸込側に連通接続される。また、この延長管59の先端には、例えば室内の被掃除面としての床面の絨毯などの上に載置させて、この絨毯上の塵埃を吸い込む本発明の吸込口体としての吸込口体(床ブラシ)1が着脱自在に連通接続されている。
【0019】
従って、吸込口体1は、延長管59、ホース体55および本体吸込口54を介して、電動送風機53の吸込側に連通接続される。
【0020】
図2に示すように、吸込口体1は、横長の吸込口本体2と、この吸込口本体2の後部に回動自在に設けられる接続管3とを備える。
【0021】
吸込口本体2は、上側が開放されこの吸込口本体2の下部をなす下ケース4と、この下ケース4の上部の後側を覆い、下ケース4との間で接続管3を回転自在に挟持する上ケース5とを備える。
【0022】
図3および図4に示すように、下ケース4には、前端部に、回転清掃体である回転ブラシ6を収容する横長四角形状の吸込室7が幅方向に延びて切り欠き形成され、さらに、吸込室7に連通して下吸込口8Aが形成され、下ケース4の前面には前吸込口8Bが設けられる。
【0023】
吸込室7は連通路Rによって、接続管3に連通される。
【0024】
回転ブラシ6は吸込室7の両側を画定する軸受部(図示省略)に軸支される。
【0025】
回転ブラシ6は、いずれも図示省略のモータあるいは負圧によって回転され、取付部材としての略円柱状の回転ブラシ組立6aの周囲に、複数の清掃部材6bが取り付けられる。回転ブラシ組立6aは合成樹脂などにより形成され、この回転ブラシ組立6aの外周面には、各清掃部材6bの基端側を保持する溝部6cが、周方向に略均等に螺旋状に形成されている。清掃部材6bは、拭取部材であるブレード、ブラシ毛、あるいはこれらの組み合わせなどであり、基端側が回転ブラシ組立6aの溝部6cにそれぞれ保持されることにより、回転ブラシ組立6aの外周面に対して、この回転ブラシ組立6aの軸方向に沿う螺旋壁状で、かつ回転ブラシ組立6aの径方向に先端側が突出している。
【0026】
図4および図5に示すように、一方、回転ブラシ6の上方で吸込室7の天井部をなす上ケース5の一部には、回転ブラシ6の長手方向に沿って通気開口10が設けられる。
【0027】
さらに、通気開口10には、この通気開口10を適宜閉塞する移動部としての回動部材11が設けられる。この回動部材11は板状で側面視弧状をなし、表面に整流及び流通用の複数の長い溝11aが通気開口10に向かって延びて設けられ、前側側部で軸12により回動自在に支持され、弾性体としてのスプリング13により、上方に付勢されて通気開口10の閉塞状態を保ち、回動部材11が上方からスプリング13に抗して押圧されることで、下方に回動し、吸込口体1の丈が低くなるとともに、通気開口10は開放される。
【0028】
スプリング13は吸込室7の負圧によって、回動部材11が下方に移動し、通気開口10が開放されない程度の弾性強度を有する。
【0029】
回動部材11を軸支し、スプリング13により、上方に付勢するので、簡単な構造で通気開口10を開閉できる。
【0030】
回動部材11は軟質部材で形成するのが好ましい。
【0031】
再び図2および図3に示すように、下ケース4の外周には、下ケース4に比べて柔らかい材質からなるバンパー部材14a、14b(図2)が設けられ、また、下ケース4には補助車輪15が設けられる。
【0032】
さらに、下ケース4の前吸込口8Bの両側には、突出部16が設けられ、この突出部16の下端面には起毛布17が取付けられ、吸込口体1の両側の塵埃を掻き取る。
【0033】
次に本発明に係る電気掃除機を用いた掃除について、図4および図5を参照して説明する。
【0034】
掃除の際には、まず、作業者は、掃除機本体52の本体吸込口54に、ホース体55、延長管59および吸込口体1を順次連通接続する。
【0035】
さらに、作業者が、掃除機本体52から電源コードを引き出して図示しないコンセントに接続した後、把持部57を把持して所定の設定ボタン58を操作すると、この設定ボタン58により設定された動作モードに応じて電動送風機53が駆動される。
【0036】
通常の使用状態では、スプリング13の作用により、回動部材11は閉塞した状態が保たれる。
【0037】
そして、作業者は、把持部57を把持して床面上で吸込口体1を前後に走行させる。
【0038】
吸込口体1の走行により、下吸込口8Aおよび前吸込口8Bから含塵空気を吸い込む。
【0039】
下吸込口8Aおよび前吸込口8Bから吸い込まれた含塵空気は、吸込室7、延長管59、ホース体55および本体吸込口54を介して、電動送風機53に吸込まれ、集塵部で除塵される。
【0040】
一方、床と家具などとの上下の狭い隙間を掃除する場合、吸込口体1を隙間に挿し入れるが、図5に点線図示するように、隙間上部の家具などの底板Pなどに当接する回動部材11は、上方から押圧され、スプリング13に抗して、下方に移動(回動)される。
【0041】
このとき、回動部材11は軟質部材で形成されているので、家具などの底板Pを傷付けることがない。
【0042】
回動部材11の下方への移動により、吸込口体1の丈が低くなり、吸込口体1を隙間のより奥まで挿し入れることができる。これにより、隙間をより奥まで掃除をすることができる。
【0043】
また、回動部材11の下方への移動により、通気開口10が開放され、この通気開口10を介して隙間上部の家具などの底板Pに付着した塵埃を吸引する。
【0044】
このとき、回動部材11の表面に複数の長い溝11aが設けられているので、家具などの底板と回動部材11の表面間で流通が妨げられることなく、含塵空気は効率よく通気開口10に吸い込まれる。
【0045】
さらに、吸込口体の丈全体を低くすることで、吸込効率が低下し、騒音を発する吸込口体とは異なり、本吸込口体1は、隙間を掃除するときのみ吸込口体1の丈を低くする構造であるので、より多く使用される通常の使用状態では、通気路が狭められることがなく、吸込効率が低下したり、騒音を発することがない。
【0046】
なお、本第1実施形態では、回動部材を上方からの押圧力で下方に回動するようにしたが、外部から作動制御されるソレノイドあるいはモータを用いて回動するようにしてもよい。
【0047】
本第1実施形態の吸込口体によれば、床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体が実現する。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態に係る吸込口体について説明する。
【0049】
本第2実施形態は、第1実施形態が天井部の一部が下方に動く移動部を回動部材で形成するのに対して、移動部を弾性部材で形成する。
【0050】
図6および図7に示すように、回転ブラシ6の上方で吸込室7の天井部には、移動部として、変形部11Aが形成される。この変形部11Aは、例えば、弾性軟質合成樹脂からなり、上ケース5とともに一体に成形されるか、変形部11Aのみが弾性軟質合成樹脂で形成され、上ケース5に一体的に取り付けられる。なお、変形部の変形、復帰を確実にするために、常時上方に付勢する板バネを変形部の裏面に取り付けてもよい。
【0051】
掃除時、通常の使用状態では、図6に示すように、変形部11Aは通常の位置にあり、より多く使用される通常の使用状態では、通気路が狭められることがなく、吸込効率が低下したり、騒音を発することがない。
【0052】
また、床と家具などとの上下の狭い隙間を掃除する場合、吸込口体1を隙間に挿し入れるが、図7に点線図示するように、隙間上部の家具などの底板Pなどに当接する変形部11Aは、上方から押圧され、弾性を有する変形部11Aは、下方に移動(変形)される。
【0053】
このとき、変形部11Aが弾性軟質部材で形成されているので、家具などの底板を傷付けることがない。
【0054】
変形部11Aの下方への移動により、吸込口体1の丈が低くなり、吸込口体1を隙間のより奥まで挿し入れることができる。これにより、隙間をより奥まで掃除をすることができる。
【0055】
なお、他の構成は図4に示す吸込口体と異ならないので、同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
本第2実施形態の吸込口体によれば、床と家具など狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体が実現する。
【0057】
また、本発明の電気掃除機によれば、電動送風機を収容した掃除機本体と、この掃除機本体に対して電動送風機の吸込側に連通接続される第1実施形態および第2実施形態の狭い上下の隙間を掃除できる吸込口体とを具備した電気掃除機が実現する。
【符号の説明】
【0058】
1 吸込口体
2 吸込口本体
3 接続管
4 下ケース
5 上ケース
6 回転ブラシ
7 吸込室
8A 下吸込口
8B 前吸込口
9 軸受部
10 通気開口
11 回動部材
11a 溝
12 軸
13 スプリング
14a、14b バンパー部材
15 補助車輪
16 突出部
17 起毛布
51 電気掃除機
52 掃除機本体
53 電動送風機
54 本体吸込口
55 ホース体5
56 手元操作部
57 把持部
58 設定ボタン
59 延長管
R 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口本体と、
この吸込口本体に設けられ、天井部の一部が下方に動く移動部を備えた吸込室と、
この吸込室に収容され、天井部が下方に位置する回転清掃体と、
前記吸込室に連通する接続管とを備えることを特徴とする吸込口体。
【請求項2】
前記移動部が下方に動いたとき、前記天井部に通気開口が形成されることを特徴とする請求項1に記載の吸込口体。
【請求項3】
前記移動部の表面に前記通気開口に向かって延びる複数の長い溝が設けられることを特徴とする請求項2に記載の吸込口体。
【請求項4】
前記移動部は軟質部材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸込口体。
【請求項5】
前記移動部は、板体からなり、この板体はその前側側部で前記通気開口に回動可能に支持されかつ、弾性体で上方に付勢されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸込口体。
【請求項6】
電動送風機を収容した掃除機本体と、
この掃除機本体に対して前記電動送風機の吸込側に連通接続される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吸込口体とを具備することを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−172563(P2010−172563A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19970(P2009−19970)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】