説明

吻合用の平らなクランプ

本発明の実施形態は、2つの内蔵間に吻合を迅速に形成する医療装置及び方法を提供している。該医療装置は、クランプを細長い部材に固定することを含んでいる。該方法は、細長い部材を介して2つの小孔間及びこれらの小孔内に前記の医療装置を位置決めし次いで配備するステップを含んでいる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して2つの内臓間に吻合を形成するための医療器具に関し、更に特定すると、胃空腸吻合術のような側側吻合の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的には、体液の流れの向きを向け直す目的で2つの内臓間に通路を形成するためにすなわち吻合を形成するために、胃腸(GI)外科手術が行われて来た。多くの異なる内臓間、例えば、空腸と胃(胃空腸吻合術)、胆管と十二指腸、小腸若しくは大腸の2つの部分、又は例えば肥満手術における内臓の種々の他の組み合わせを吻合する必要があることが認識されている。
【0003】
吻合を形成する外科手術においては、2つの組織が、例えば縫合糸かステープルか何らかのその他の固定手段のような固定子を使用して結合され且つ相互に固定されることが多い。固定子が配置されつつある間、各々の内臓の組織は、種々の手段を使用して相互に近接した状態に保持される。観血療法においては、この操作は、通常は医師が操作する把持具、鉗子、又はその他の組織保持器具よって行なわれる。腹腔鏡手術においてはこれと類似の器具が使用されるが、腹腔へのアクセスは2〜3の経皮“穴”へ挿入される器具の数が制限され、これは処置の技術的課題を遙かに大きくする点が相違する。
【0004】
これらのタイプのGI外科手術が行われるときに、壁の境界が破壊される可能性がある。従って、胸腔及び腹腔が、自然な状態ではこれらの位置に発生しない細菌を含むGI内容物によって汚染されないように大きな注意を払わなければならない。著しい汚染が生じた場合には、次いで、深刻な感染が起こり、これは深刻な病気につながり又は早期且つ積極的に治療されない場合には死につながり得る。
【0005】
これらの制約事項のうちの幾つかに対処し且つこのような外科手術の侵襲性を最少にするために、吻合形成のための磁気吻合器具(MAD)が開発された。例えば、MADは、金属製の枠によって取り囲まれている2つの磁石コアからなる。該2つの磁石コアは、間に吻合が形成されることが望まれている2つの内臓内に位置決めされる。これらのコア同士の磁気吸引力によって、2つの互いに隣接している内臓の壁が圧縮される。内蔵の壁が圧縮されることによって、2つの内臓間に吻合を形成するための虚血性壊死がもたらされる。MADを使用するときに、MADによって形成された吻合を維持するために、ステント又はその他の器具を挿入する二番目の処置を行なうことが時々必要である。かかる二番目の処置は、追加のコストを要し、患者及び医師に時間を取らせ、何らかの内視鏡処置に伴うある種の危険性を含んでいる。更に、MADを使用するときには、遠位の磁石を腸管通常は空腸内に配置しなければならず、これは、腸管管腔の使用を必要とする。腫瘍又は狭窄がある患者の場合には、その中を内視鏡及び/又は遠位の磁石を通過させることが難しい。更に、MADを使用するときには、吻合は、処置の際にすぐさま形成されるよりはむしろ幾日間かに亘って形成される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来の吻合形成技術の技術的課題を減らし且つ潜在的な危険性を最少にしつつ、2つの内臓間に吻合を迅速に形成する医療装置及び方法を提供している。吻合は、患者が医療施設を出る前に確実に形成され且つ経過処置の必要性を排除する。壁の境界の裂け目に対して付加的な保護が提供され、患者が医療施設内にいない間に吻合が分離した状態となるか又は漏れを形成する虞が最少となる。
【0007】
一つの実施形態によると、2つの内臓の組織を接合するための医療装置は、細長い部材の端部に各々が外側クランプ部材と内側クランプ部材とを備えている2つのクランプを備えている医療器具を固定するステップと、次いで該医療器具を2つの内臓の体壁を貫通して挿入するステップとを含んでいる。前記の内側クランプ部材は、間に吻合が形式されるのを可能にし且つ吻合を維持する大きさとされている内部空間を規定しており、一方、可動の外側クランプ部材と内側クランプ部材とは、2つの内臓を圧縮し且つこれらを密接状態に維持する。該医療器具は細長い部材の端部に保持され且つ管状のキャップを介して送り込まれるが、別の方法としては、該細長い部材自体が該医療器具を保持し且つ該医療器具を送り込む。更に、該医療器具は、別個の細長い部材例えば該細長い部材に沿って延びているカテーテル上に保持される。
【0008】
該医療器具の更に詳細な特徴によると、前記可動のクランプの各々は、外側のクランプ部材と内側クランプ部材とを備えており、これらのクランプ部材は、給送状態と配備状態との間で動き、これらのクランプ部材は配備状態に向かって付勢されている。配備状態においては、前記の外側クランプ部材と内側クランプ部材とは同一平面状である。給送状態においては、外側クランプ部材と内側クランプ部材とが平面から相対的に離れる方向に動いて、外側クランプ部材同士が互いに近接し且つ2つの内側クランプ部材が互いに近接するようになされている。
【0009】
2つの内臓間に吻合を形成する方法もまた本発明の教示に従って提供されている。一般的に、2つの内臓に2つの小孔が形成され、これらの小孔が互いに近接せしめられ、次いで、上記した2つのクランプを備えている医療器具が準備され且つこれらの小孔内に挿入される。該医療器具は、外側クランプ部材と内側クランプ部材とがこれらの間の2つの内臓の壁を圧縮し且つこれらの壁を相互に近接させて保持するように位置決めされる。
【0010】
該方法の更に詳細な特徴に従って、吻合の大きさは、ナイフ又はその他の切断器具を使用することによって迅速に広げられて内側クランプ部材によって規定されている内側空間内に配置されている2つの内臓の壁から余分の組織が切除される。この切除過程は内視鏡を使用してなされ、該切断器具は内視鏡の作動通路を介して導入される。
【0011】
本発明のその他の装置、方法、特徴、及び利点は、図面及び以下の詳細な説明を精査することによって当業者に明らかであるか又は明らかになるであろう。このような付加的な装置、方法、特徴、及び利点の全てが、本発明の範囲内に含まれ且つ特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、図面及び以下の説明を参照することによって更に良く理解できる。図面に示されている構成要素は、必ずしも等尺ではなく、その代わりに本発明の原理を図示するために強調されている。更に、図面においては、同じ参照番号は種々の図面を通して対応する部品を示している。
【0013】
【図1】図1は、吻合形成するために配備された状態にある医療器具の好ましい実施形態の斜視図である。
【0014】
【図2】図2は、給送形状にある図1に示している医療器具の斜視図である。
【0015】
【図3A】図3Aは、給送状態にある図1の医療器具と医療器具を配備させるための制御ワイヤとを備えている吻合を形成するための装置の部分断面側面図である。
【0016】
【図3B】図3Bは、給送状態にある図1の医療器具と医療器具を配備させるためのテザーとを備えている吻合を形成するための装置の部分断面側面図である。
【0017】
【図4】図4は、図1の医療器具が部分的に配備された状態の図3Aの装置の部分断面前面図である。
【0018】
【図5】図5は、図1の医療器具が完全に配備された状態の図3Aの装置の部分断面前面図である。
【0019】
【図6】図6は、吻合形成するための給送状態にある医療器具の別の実施形態の斜視図である。
【0020】
【図7】図7は、図6の医療器具が管状のキャップの一つの実施形態内に収納されている状態の吻合を形成するための装置の前面図である。
【0021】
【図8】図8は、医療器具が部分的に配備されている状態の図7の装置の前面図である。
【0022】
【図9】図9は、図6の医療器具が管状キャップ内に収納されている状態の管状キャップの別の実施形態の斜視図である。
【0023】
【図10】図10は、吻合を形成するために配備された状態にある医療器具の別の実施形態の斜視図である。
【0024】
【図11】図11は、組織内に配備されている図1の実施形態の頂面図である。
【0025】
【図12】図12は、吻合を広げるために追加の切開が行われた組織内に配備されている図1の実施形態の頂面図である。
【0026】
【図13】図13は、給送状態にある図10の医療器具を備えている吻合を形成するための装置の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願において、“近位”という用語は、医療処置中に概ね医師に近づく方向を指しており、一方、“遠位”という用語は、医療処置中に概ね医療専門家から遠ざかり且つ/又は患者の解剖学的構造内の目標部位に近づく方向を指している。
【0028】
図1〜図2を参照すると、例えば内視鏡による処理中に吻合を形成するための医療器具20の一つの実施形態が図示されている。本明細書に説明されているように、医療器具20は、吻合の周囲の組織をクランプし、該組織を開いた状態に保持し、並びに吻合を広げるのを補助するように機能する。医療器具20は、概ね第一のクランプ30と第二のクランプ40とを備えており、第一のクランプ30と第二のクランプ40とは、横軸線70と長手軸線72とを規定しており且つ横軸線70に沿って互いに反対側にすなわち長手軸線72に対して互いに対向して配置されている。第一のクランプ30は、第一の外側クランプ部材32と第一の内側クランプ部材34とを備えている。第一外側のクランプ部材32と第一の内側のクランプ部材34とは、中間部分22を介して互いに結合されている。第二のクランプ40は第二の外側クランプ部材42と第二の内側クランプ部材44と備えており、第二の外側クランプ部材42は中間部分22を介して第二の内側クランプ部材44に結合されている。
【0029】
図示されているように、外側クランプ部材と内側クランプ部材とは概ねU字形状であるが、これらの部材は、V字形状、半矩形形状、又はその他何らかの半環形状とすることができる。図示されているように、内側クランプ部材は、横軸線70に沿って外側クランプ部材内に同心状に配置されている。
【0030】
図1に示されているように、医療器具20は配備状態にあり、該配備状態においては、第一のクランプ部材30及び第二のクランプ40の外側クランプ部材32,42と内側クランプ部材34,44とは同一平面内にある。ここで使用されている同一平面とは、完全に平面状であること及び完全な平面から+/−30度離れた状態までを意味している。
【0031】
図2は、給送状態にある医療器具20を示しており、該給送状態においては、外側クランプ部材32,42と内側クランプ部材34,44とは、長手軸線72に向かって平面から回転していて、第一の外側クランプ部材32は第二の外側クランプ部材42に隣接しており、第一の内側クランプ部材34は第二の内側クランプ部材44に隣接している。クランプ部材は、典型的には横軸線70から約60°〜約110°回転せしめられる。
【0032】
図1及び2に示されている実施形態においては、クランプ部材は、図1に示されている配備状態を形成する状態に向かって付勢されている。医療器具20は、丸い又は矩形(平らな)断面形状を有している平らな金属好ましくはニチノールによって形成されているけれども、他の構造(例えば、丸いワイヤ)が使用されても良い。該金属の厚みは、約0.001〜約0.1インチ(約0.0254〜約2.54mm)、更に好ましくは約0.008〜約0.028インチ(約0.203〜約0.71mm)の範囲内であることが好ましい。例えば、医療器具20又はクランプ部材は、個々に、他の金属、金属合金、プラスチック、又は適切な弾性を有しているその他の材料によって作られて、該クランプ部材は該クランプ部材の本来の又は付加されている形状記憶特性に従って動くことができるようになされている。医療器具20又は該クランプ部材は、個々に、再吸収性の又は分解性の材料によって作られても良いが、該材料は、吻合の形成が完了するまで実質的に劣化せず又は構造的一体性を失わないのが好ましい。ここで使用されている再吸収性という用語は、組織及び/又は体液に接触したときに該組織及び/又は体液内に吸収される材料の機能を指している。当該技術においては多数の再吸収性材料が知られており、あらゆる適切な再吸収性材料が使用できる。例としては、再吸収性の単独重合体、共重合体、又は再吸収性高分子の混合物がある。ここに記載されている分解性という用語は、分解、劣化、吸収、及び排出のような消散が生じる機構に関係なく、医療的に妥当な長さの時間内に体内に埋め込まれたときに消散する材料の機能を指している。当該技術においては、多数の分解性の材料が知られており、あらゆる適当な分解性材料を使用することができる。例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリオキシプロピレングリコール糖質、並びにポリラクチック糖質がある。
【0033】
更に、医療器具20は、一つの金属の固体片を含むものとして示されている。代替的な実施形態においては、中間部分22は、当該技術において公知の取り付け器具、例えば、ヒンジ、ばね、又は当該技術において知られているその他の回転可能な結合部材とすることができる。これらの実施形態においては、クランプ部材は形状記憶特性を有している必要はない。更に、第一のクランプ30と第二のクランプ40とは、図1及び2に示されている単一の一体器具を形成しているけれども、医療器具20は2つの別個のクランプ部材(図示せず)を備えていても良く、又は4つの別個のクランプ部材(図示せず)を備えていても良い。
【0034】
再度図1を参照すると、内側空間74が外側クランプ部材と内側クランプ部材との間にある。外側クランプ部材と内側クランプ部材との間の距離Sは約0〜約8mmの範囲である。第二の内側空間76が第一の内側クランプ部材34と第二の内側クランプ部材44との間にある。2つの中間部分22間の水平距離Dは約20〜約25mmの範囲内であり、第一の内側クランプ部材34から第二の内側クランプ部材44までの距離Lは、約5mm〜約50mmまでの範囲内である。
【0035】
以下、吻合を形成するための医療装置66を図3A〜5を参照して説明する。医療器具装置は、吻合を形成し惹き起こし維持するための医療器具と、該医療器具を給送するための細長い部材と、任意であるが該医療器具を該細長い部材上又はその近くに保持するための管状のキャップとを備えている。図3Aに示されている一つの実施形態に従って、医療器具20は、管状キャップ64内に且つこの場合には内視鏡60である細長い部材の遠位端62に隣接して装填されている状態で示されている。内視鏡60は、当該技術において公知のあらゆるタイプの内視鏡とするか、別に場合には治療目的のために体内に挿入するのに適している何らかの可撓性の細長い部材とすることができる。医療器具20は、管状のキャップ64によって給送形状に保持されている。この実施形態においては、制御ワイヤ61が付属通路65内を通され且つ押し込み部材63に結合されている。押し込み部材63と組み合わせられている制御ワイヤ61は、外側クランプ部材32,42を管状のキャップ64の遠位端67を超えて遠位方向に動かして外側クランプ部材32,42がそれらの配備状態へと解放されるようにするために使用されている。制御ワイヤ61と押し込み部材63とは、次いで更に伸長せしめられて内側クランプ部材34,44を配備させる。別の方法として、医療器具20が内視鏡60自体内に装填されて、内視鏡60が医療器具20を給送形状に維持する。
【0036】
図4を参照すると、医療器具20は、第一の体壁50(例えば、胃)内の第一の小孔52及び第二の体壁56(例えば、小腸及び典型的には空腸)内の第二の小孔58内に遠位方向に挿入されて第二の体壁56の内部57の内側に当て付けられる。該装置の実施形態においては、制御ワイヤ61と押し込み部材63とは、医師によって所望の方向に進入せしめられ、その結果、外側クランプ部材32,42が管状のキャップ64の遠位端67を越えて動かされ、外側クランプ部材32,42がそれらの配備状態へと動かされる。外側クランプ部材32,42を解放してそれらの配備状態とすることによって、外側クランプ部材32,42は第二の体壁56の内側面に圧力をかける。
【0037】
図5を参照すると、装置66は後退せしめられていて、第二の体壁56が第一の体壁50に近接せしめられており、内側クランプ部材34,44は第一の体壁50の近位側に配置されている。制御ワイヤ61と押し込み部材63とは、更に伸長せしめられて内側クランプ部材34,44をそれらの配備状態へと解放して内側クランプ部材34,44が第一の体壁50の内側面に圧力をかけるようにしている。装置66全体が、択一的に又は制御ワイヤ61と共に近位方向に引っ張られ、第二の体壁56上での外側クランプ部材32,42の張力によって、内側クランプ部材34、44は管状のキャップ64との間の摩擦に打ち勝つことによって管状のキャップ64から引っ張られる。医療器具20はまた、内側クランプ部材34、44を外側クランプ部材32,42の遠位側に配置して内側クランプ部材34、44が第二の体壁56の内側57に配備され且つ外側クランプ部材32,42が第一の体壁50の内側51に配備されるように装填することもできる(図示せず)。
【0038】
医療器具20を2つの小孔52,58内に配備させるのを容易にする代替的な方法がある。その一つの実施形態が図3Bに示されている。この実施形態においては、医療器具20を管状のキャップ64から遠位方向外方へ動かすためにテザー(引き紐)が使用されている。テザーは、縫合糸又はストラップ又は当該技術において知られているその他の材料とすることができ、結束、受け留め、拡張、結び付け、若しくは当該技術において知られているその他の手段によって医療器具20に固定するか、又は単に隣接させて配置し且つ医療器具20と管状のキャップ64との間の摩擦によって係合せしめられる。図3Bに示されている実施形態においては、テザーは医療器具20に結び付けられている縫合糸69である。医師が縫合糸69を近位方向に引っ張ると、医療器具20は遠位方向に動かされ、その結果、外側クランプ部材32,42はもはや管状のキャップ64によって拘束されなくなり、これらの外側クランプ部材がそれらの配備状態へ動く。縫合糸69を更に近位方向に引っ張ることにより、ひとたびこれらが管状のキャップ64によって拘束されなくなると、内側クランプ部材34,44がそれらの配備状態へ動かされる。次いで、内視鏡60内の作動管腔(図示せず)の中を進入させた切断器具によって、医師によって切り離される。
【0039】
図6〜9を参照すると、該医療器具と管状のキャップとの代替的な実施形態が示されている。図6は、医療器具の代替的な実施形態20’を示している。医療器具20’においては、外側クランプ部材32’,42’と内側クランプ部材34’,44’とは、外側クランプ部材と内側クランプ部材32,42,34,44が医療器具20の中間部分22から回転している位置よりも中間部分22’から更に離れた位置で回転せしめられている。この回転位置の違いによって、医療器具20’は、図7に示されている後退可能なキャップ73及び図9に示されている管状のキャップ83内に更に良好に嵌合している。
【0040】
図7には、管状のキャップ64が後退可能なキャップ73とされている一実施形態が図示されている。後退可能なキャップ73は、固定されている端部75と後退させることができるフード77とによって構成されており、後退可能なフード77は固定されている端部75の外側に摺動可能形態で取り付けられている。後退可能なフード77は互いに対向している2つの制御ウイング86を備えており、2つの制御ウイング86は外側のクランプ部材32’及び42’をそれらの給送形状に維持している。後退可能なキャップ73は、内視鏡60上に配置されるか又は内視鏡60に沿って自由に又はガイドワイヤ(図示せず)上に延びているカテーテルのような別個の細長い部材上に配置されている。2つの外側の駆動ワイヤ79が後退可能なフード77に取り付けられている。図7〜8を参照すると、医師が駆動ワイヤ79を近位方向に引張り、該駆動ワイヤ79が、後退可能なフード77を近位方向に動かし且つ外側クランプ部材32’,42’を解放し且つ配備させる。内側クランプ部材34’,44’は、例えば上記した制御ワイヤ61と押し込み部材63とを使用して例えば医療器具20’を遠位方向に押すことによるか内視鏡60を近位方向へ引き離すことによって解放され且つ配備される。
【0041】
図9を参照すると、管状キャップ64の別の実施形態が示されている。図9は、2つの制御ウイング86’の内部に含まれている溝81を備えている管状のキャップ83を図示している。制御ウイング86’は外側のクランプ部材32’,42’を給送形状に維持している。溝81は、テザーを定位置に保持することによって、該テザーが管状のキャップ83と共に使用できるようにするのがより良い。別の方法として、図3A〜5に図示されているように完全な筒形のキャップが使用されても良い。他の形状及び設計が使用されても良く、かかる形状及び設計は当業者に知られている。
【0042】
以下において、吻合を形成する医療方法を図3A〜5及び11〜12を参照して説明する。医療器具20を完全に配備させて吻合を形成する前に、所望の内臓に小孔を形成しなければならず、該小孔は相互に近接するように引き寄せられなければならない。この目的を達成するための一つの方法は、図3A〜5に示されているように、内視鏡60の遠位端62において管状のキャップ64内に医療器具20を装填し、次いで、内視鏡を第一の内臓へと進入させるやり方である。切断器具(図示せず)が内視鏡60の作動管腔内を進入せしめられ、該切断器具は、第一の内臓の第一の体壁50に第一の小孔52を形成するために使用することができる。内視鏡60は更に第二の内臓へと進入せしめられ、前記の切断器具が使用されて第二の体壁56に第二の小孔58が形成される。外側クランプ部材32,42を上記したように配備させ、次いで、医療器具20、内視鏡60、及び管状キャップ64、並びに第二の体壁56が、第一の体壁50の第一の小孔52に向かって後退せしめられる。ひとたび医療器具20が適正に位置決めされて内側クランプ部材34,44が第一の体壁50の近位側に配置されると、内側クランプ部材34,44が上記したように解放されて吻合が形成される。
【0043】
該小孔はまた、医療器具20の挿入前に形成され且つ互いに近接した状態とされても良い。当該技術において公知のこれを行なう多くの方法があり、そのうち幾つかが2008年2月5日に出願された米国非仮特許出願第12/025,985号に記載されている。該米国特許出願は、これに言及することにより、その全体が本明細書に参考として組み入れられている。腹腔鏡手術又は観血療法及びこれらの形式の外科手術において使用される器具もまた、小孔を形成し且つ医療器具20の挿入準備のためにこれらの器具を相互に近接させて定位置に保持するために使用することができる。
【0044】
ひとたび小孔が形成され且つ医療器具20が上記し且つ図3A〜5に図示されているように細長い部材を介して配備されると、内側クランプ部材34,44によって第一の体壁50にかけられる力及び外側クランプ部材32,42によって第二の体壁56にかけられる力によって、これらの2つの体壁が圧縮され且つ相互に近接した状態に保持される。外側クランプ部材及び内側クランプ部材によって体壁にかけられる圧縮力によって該クランプ部材間に含まれている2つの内臓の組織の壊死がもたらされ、このようにして、組織の厚み及びクランプ部材用として使用される材料の厚みに応じて、数日又は一週間後に更に大きな吻合がもたらされる。比較的大きな吻合がすぐさま望まれる場合には、ナイフ又はその他の切断器具が使用されて内部80から第一の内側クランプ部材34の頂点に向かって横方向に切り込まれ、2つの体壁から組織が切除されて図12に図示されている比較的大きな開口82が形成される。更に、切開部が内部80から第二の内側クランプ部材44まで横方向に伸長せしめられて第二の比較的大きな開口84が形成され、その結果、1つの大きな連続した吻合部が形成される。
【0045】
以下において、吻合を形成するための代替的な方法を図4〜5,10及び13を参照して説明する。この方法においては、上記したようにして胃切開部が形成され、次いで、トルクケーブル112に取り付けられている2つのねじ牽引子110が、第一の体壁50の第一の小孔52内を進入せしめられ且つ図13に示されているように第二の小孔58の両側の第二の体壁56の近位側に係留される。次いで、医師は、内視鏡60を取り外し、係留されているねじ牽引子110とトルクケーブル112とを近位方向に伸長させ且つ患者の口から出るようにさせる。次いで、図10に示されているように、トルクケーブル112の周囲に嵌め込むための2つの大きな穴100を備えるように改造されている以外は医療器具20にほぼ等しい医療器具90が、図2に示されている医療器具20及び図6に示されている医療器具20’の給送状態に似た給送状態に拘束される。第一の内側クランプ部材98と第二の内側クランプ部材94との間の長さL’は、約5mm〜約50mmの範囲内であり、水平距離D’は約0mm〜約25mmの範囲内である。
【0046】
図13に示されているように、縫合糸114が穴102内に通されて内側クランプ部材98,94を互いに隣接した状態に保持した給送状態とし、別の縫合糸116が第一の外側クランプ部材96及び第二の外側クランプ部材92に設けられている穴104に通されて、これらのクランプ部材が互いに隣接した給送状態に保持され且つ内側クランプ部材98,94の遠位側に配置される。縫合糸114,116の代わりに、リング、バンド、又はその他の材料を使用しても良いことが当業者に知られている。給送状態にある医療器具90が、トルクケーブル112の近位端を医療器具90の大きな穴100内に挿入することによってトルクケーブル112上に装填される。
【0047】
依然として図13を参照すると、次いで、医療器具90は、トルクケーブル112の外周に沿って、第一の小孔52を通されて、外側クランプ部材96,92が第二の小孔58の中を進入せしめられるまで進入せしめられる。任意であるが、医師は、トルクケーブル112を近位方向に引っ張って第二の体壁56の組織を外側クランプ部材96,92の近くへと引っ張る。次いで、医師は、縫合糸116を引っ張るか又は切除することによって外側クランプ部材96,92を解放し、外側クランプ部材96,92を配備させ且つ第二の体壁56の内側面に圧力をかけさせる。次いで、医師は、第二の小孔58が第一の小孔52に隣接し且つ内側クランプ部材98,94が第一の小孔52に近接するまでトルクケーブル112を近位方向に引っ張る。次いで、医師は、同じ方法で内側クランプ部材98,94をそれらの配備状態へと解放する。すなわち、外側クランプ部材96,92が解放されて内側クランプ部材98,94が第一の体壁50の内側面に圧力をかけさせるやり方で行なわれる。次いで、医師は、ねじ牽引子110及びトルクケーブル112を、新しく形成された胃切開部から離れるように近位方向に引っ張ることによって取り外す。
【0048】
医療器具20、医療器具20’、又は医療器具90の取り外しは、自然な形で完了される。体壁50,56にかけられた圧力によって幾日かに亘って壊死が惹き起こされ、それによって、組み合わせられた内部80と開口82,84より若干大きい吻合が形成される。ある量の壊死が生じた後に、医療器具20,20’及び90は取り除かれ且つ自然に人体を通過する。或いは、医療器具20,20’及び90は、人体によって自然に分解されるように分解性又は再吸収性の材料によって作られる。
【0049】
これらの吻合形成処置中に、体壁50及び56の圧縮領域は、含まれている内臓に応じてGI内容物又はその他の体液の漏れを守るバリアを提供する。同様に、患者が医療機関から出る前に吻合が確実に形成されて追っかけの処置の必要性が排除されている。更に、内側クランプ部材34,44は吻合のサイズを維持しているので、開口部を維持するためにステントを挿入する第二の処置の必要性がない。
【0050】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したけれども、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物を参考にすること以外に限定されるべきではない。更に、ここに記載した利点は必ずしも本発明の唯一の利点ではなく、また、本発明の各実施形態がここに記載した利点の全てを達成できることが必ずしも期待できる訳ではない。
【符号の説明】
【0051】
20,20’ 医療器具、 22,22’ 中間部分、
30 第一のクランプ、
32,32’ 第一の外側クランプ部材、
34,34’ 第一の内側クランプ部材、
40 第二のクランプ、
42,42’ 第二の外側クランプ部材、
44,44’ 第二の内側クランプ部材、
50 第一の体壁、 51 第一の体壁の内部、
52 第一の小孔、 56 第二の体壁、
57 第二の体壁の内部、 58 第二の小孔、
60 内視鏡、 61 制御ワイヤ、
62 内視鏡の遠位端 63 押し込み部材、
64 管状のキャップ、 65 付属通路、
66 医療装置、 67 キャップの遠位端、
69 縫合糸、 70,70’ 横軸線、
73 後退可能なキャップ、 74 内側空間、
75 固定されている端部、 76 第二の内側空間、
77 後退可能なフード、 79 外側駆動ワイヤ、
80 内部、 81 溝、
82 大きな開口、 83 管状のキャップ、
84 大きな開口、 86,86’ ウイング、
90 医療器具、 92 第二の外側クランプ部材、
94 第二の内側クランプ部材、 96 第一の外側クランプ部材、
98 第一の内側クランプ部材、 100 大きな穴、
102 穴、 104 穴、
110 牽引子、 112 トルクケーブル、
114 縫合糸、 116 別の縫合糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内組織内での吻合の形成を補助する装置であり、
第一の外側クランプ部材と第一の内側クランプ部材とを備えており、配備形状と給送形状との間を作動可能であり、前記配備形状に向けて付勢されている、第一のクランプと、
第二の外側クランプ部材と第二の内側クランプ部材とを備えており、配備形状と給送形状との間を作動可能であり、前記配備形状に向かって付勢されている、第二のクランプと、を備えており、
前記第一のクランプの前記外側クランプ部材と内側クランプ部材とは、前記配備形状において同一平面内にあり、前記第二のクランプの前記外側クランプ部材と内側クランプ部材とは、前記配備形状において同一平面内にあり、
前記第一のクランプの前記外側クランプ部材と内側クランプ部材とは、前記給送形状においては、前記の同一平面から相対的に離れる方向に動かされ、前記第二のクランプの前記外側クランプ部材と内側クランプ部材とは、前記配備形状においては、前記の同一平面から相対的に離れる方向に動かされるようになされている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第一のクランプと第二のクランプとが単一部品として一体に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第一のクランプと第二のクランプとが直径方向で互いに反対側に位置している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第一のクランプと第二のクランプとの両方における前記内側クランプ部材と前記外側クランプ部材とが、共に環形状を形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記外側クランプ部材と内側クランプ部材との間に隙間が存在しており、該隙間が8mm未満の距離に亘っている、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第一の内側クランプ部材が第一の内側空間を規定しており、前記第二の内側クランプ部材が第二の内側空間を規定しており、該第一内側空間と第二の内側空間とが相互に連通している、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記第一及び第二のクランプが横軸を規定しており、該第一のクランプの前記内側クランプ部材と外側クランプ部材とが、前記横軸上の第一の点を中心として同心状に配列されており、前記第二のクランプの前記内側クランプ部材と外側クランプ部材とが前記横軸上の第二の点を中心して同心状に配列されている、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記第一のクランプの前記内側クランプ部材と外側クランプ部材とが、それらの端部においてヒンジ結合領域によって相互に結合されており、前記第二のクランプの前記内側クランプ部材と外側クランプ部材とは、それらの端部においてヒンジ結合領域によって相互に結合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第一のクランプと第二のクランプとが弾性材料によって形成されており、該弾性材料は、該第一のクランプと第二のクランプとがそれらの配備形状と給送形状との間を動くことを許容するように撓む材料である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
長手軸線を規定している細長い管状部材を更に備えており、前記第一及び第二のクランプが、それらの給送形状において前記細長い管状部材内に嵌合できる大きさとされている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第一のクランプと第二のクランプとを給送形状に維持するための管状のキャップを更に備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記管状のキャップが前記細長い管状部材の遠位端に配置されており且つ前記遠位端から近位方向に後退せしめられたときに前記第一のクランプと第二のクランプとを解放する、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
横方向に伸長していて第一の内側空間を規定している外側の環状部材と、
横方向に伸長していて前記第一の内側空間内に収容され、第二の内側空間を規定している内側の環状部材と、
前記外側環状部材と内側環状部材とを結合しており且つ前記外側環状部材と前記内側環状部材とが相対的に動くのを許容する構造とされているヒンジ結合領域と、を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
吻合を形成する方法であり、
第一の体壁に小孔を形成するステップと、
第二の体壁に小孔を形成するステップと、
装置を準備するステップであって、該装置は、
第一の外側クランプ部材と第一の内側クランプ部材とを備えており、配備形状と給送形状との間を作動可能であり、前記配備形状に向かって付勢されている第一のクランプと、
第二の外側クランプ部材と第二の内側クランプ部材とを備えており、配備形状と給送形状との間を作動可能であり、前記配備形状に向かって付勢されている第二のクランプと、を備えており、
該第一のクランプと前記第二のクランプとの前記外側クランプ部材と前記内側クランプ部材とは、前記配備形状において同一面内にあり、
前記給送形状においては、前記第一及び第二のクランプの前記外側クランプ部材が、該第一及び第二のクランプの前記内側クランプ部材から離れ且つ前記同一面から離れる方向に動かされるようになされており、
長手軸線を規定している細長い管状の部材であって、前記第一及び第二のクランプがそれらの給送形状において該細長い管状の部材内に嵌り込む大きさとされている、前記細長い管状の部材と、
を備えている、前記装置を準備するステップと、
前記装置を体管腔内に挿入するステップと、
前記第一及び第二のクランプの前記外側クランプ部材を、前記第二の体壁の小孔を通し、該外側クランプ部材が前記第二の体壁の遠位側上に位置するように位置決めするステップと、
前記配備形状において、前記外側クランプ部材を前記細長い管状部材から解放して、前記外側クランプ部材が相対的に横方向に遠ざかる方向に動いて前記第二の体壁の内側面を押圧するようにさせるステップと、
前記医療装置を近位方向に引っ張って、前記第二の体壁が前記第一の体壁に隣接する状態とさせるステップと、
前記配備形状において、更に前記細長い管状部材を後退させて、前記内側クランプ部材同士が相対的に遠ざかるように横方向に回転して前記第一の体壁の内側面を押し付けるようにさせるステップと、を含んでいる方法。
【請求項15】
前記細長い管状部材が、内視鏡の遠位端上に嵌め込まれた管状のキャップであり、前記細長い管状部材を後退させるステップが、該管状のキャップを前記内視鏡に対して近位方向に後退させるステップを含んでいる、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クランプ部材がそれらの配備形状においてかける圧力によって、前記第一の体壁の小孔が前記第二の体壁の小孔に隣接せしめられた状態に維持される、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記クランプが配備された後に、前記2つの体壁の組織を切断して前記小孔の大きさを広げるステップを更に含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記クランプ部材が、弾性材料であって、前記第一のクランプと第二のクランプとがそれらの配備形状と給送形状との間で動くのを許容するように撓む材料によって作られている、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記クランプ部材の圧力によって前記第一の体壁の組織と第二の体壁の組織とが壊死せしめられ、該壊死によって、前記第一のクランプと第二のクランプとが前記体壁から取り除かれ且つ体内を自然に通過するようにされる、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−509948(P2013−509948A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537903(P2012−537903)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053514
【国際公開番号】WO2011/056445
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】