呈色測定装置および方法
【課題】検体の粘性の違いにより増幅処理時に発生するノイズを低減する。
【解決手段】検体溶液が展開される不溶性担体12と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域TLを有する試験片の呈色状態を測定する際に、試験片10に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域TLに展開された後であってテスト領域TLの呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片10に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域TLおよびその周辺領域に供給する。
【解決手段】検体溶液が展開される不溶性担体12と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域TLを有する試験片の呈色状態を測定する際に、試験片10に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域TLに展開された後であってテスト領域TLの呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片10に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域TLおよびその周辺領域に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体溶液中の被験物質について定量的または定性的な測定を行う呈色測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断薬や毒物等の検査のために被験物質を含有する可能性のある検体溶液を試験片に送液し、イムノクロマトグラフ法を用いて被験物質について簡便かつ迅速に検査するデバイスが数多く開発されている(たとえば特許文献1参照)。たとえば特定の領域(テストライン)に被検物質(たとえば抗原)に特異的に結合する第1抗体が固定された多孔質体からなる不溶性担体上に被検物質と特異的に結合する標識化第2抗体に被検物質が存在する可能性のある検体を混合した検体溶液が展開される。すると、テストライン上において被検物質と第1抗体および第2抗体とによる抗原抗体反応が生じ、テストラインが着色もしくは発色し呈色状態になる。このテストラインの呈色状態を観察することにより、検体溶液に被検物質が存在するか否か定量的または定性的(陰性/陽性)な測定が行われる。
【0003】
さらに、テストラインの呈色状態を迅速かつ高感度に検出するために、増幅剤を用いた増幅処理を行うことが提案されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2には、上述した検体溶液が不溶性担体に展開した後に、銀イオン等の金属イオンを含む増幅剤を不溶性担体に展開させることにより、テストライン上の第1抗体−被検物質(抗原)−第2抗体の複合体に対し金属イオンが結合し、呈色状態を増幅させることが開示されている。また、増幅処理を行う前にテスト領域およびその周辺領域に対し洗浄液を展開してバックグランドにある標識物によるノイズを低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/007849号公報
【特許文献2】特開2009−216695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、不溶性担体に展開される検体の粘性は各検体毎に異なるものであって、粘性が高い検体もあれば粘性の低い検体も存在する。上述した洗浄工程において一定量の洗浄液を展開して洗浄を行うようにした場合、粘性が高い検体である場合には十分な洗浄を行うことができない場合がある。この状態で増幅処理を行ってしまうと、洗浄ムラやバックグランドノイズが発生し被検物質の分析精度が落ちてしまう場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、検体の粘性の違いにより増幅処理時に発生するノイズを低減することができる呈色測定装置および方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の呈色測定装置は、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定装置であって、試験片に注入された検体の粘性を検出する粘性検出手段と、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前にテスト領域およびその周辺領域を洗浄するための洗浄液を試験片に供給する洗浄液供給手段と、粘性検出手段により検出された検体の粘性が高ければ高いほど試験片に供給する洗浄液の量を多くするように洗浄液供給手段を制御する洗浄制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の呈色測定方法は、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、試験片に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域およびその周辺領域に供給することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、試験片は、テスト領域およびテスト領域が被検物質の存在により呈色状態になるものであればなんでもよく、たとえばクロマトグラフィ、特に抗原抗体反応を利用したイムノアッセイをクロマトグラフィに応用したイムノクロマトグラフィ法を用いたものであってもよい。さらに、テスト領域およびコントロール領域のパターン形状は問わず、たとえばライン状に形成されていてもよいし、所定のパターンを有するものであってもよい。
【0010】
また、呈色状態とは、被検物質によりテスト領域が発色もしくは変色する、もしくは検体溶液によりコントロール領域が発色もしくは変色するものであればよく、濃淡値は呈色状態の発色強度もしくは変色度合いを表すものであればよい。そして、読取手段は、呈色状態を濃淡値として読み取るものであればその構成を問わず、たとえば撮像素子を用いて試験片を画像として取得するものであってもよいし、試験片に光を照射しその反射光を受光する受光素子からなるものであってもよい。また、読取手段は、呈色状態の濃度変化を濃淡値として読み取るものであってもよいし、所定の波長の光(蛍光)の強度を濃淡値として読み取るものであってもよい。
【0011】
なお、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液の量を多くするものであればその方法を問わず、たとえば検体の粘性が高くなるほど洗浄時間を長くして洗浄液の量を多くするように制御してもよいし、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呈色測定装置および方法によれば、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、試験片に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域およびその周辺領域に供給することにより、テスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流し、増幅処理時にテスト領域において捕捉されていない残留物によるノイズを低減することができる。
【0013】
なお、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片へ洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであれば、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0014】
また、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであるとき、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示す模式図
【図2】本発明の呈色測定装置において用いられる試験片の一例を示す模式図
【図3】本発明の呈色測定装置において用いられる試験片の一例を示す模式図
【図4】本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示すブロック図
【図5】図4の検体処理手段の一例を示す模式図
【図6】図4の粘性検出手段において重量変化と粘性との関係の一例を示すグラフ
【図7】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄液量を増加させる様子を示すグラフ
【図8】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄時間を増加させる様子を示すグラフ
【図9】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄回数を増加させる様子を示すグラフ
【図10】本発明の呈色測定方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の呈色測定装置1の概略構成図である。呈色測定装置1は、たとえばイムノクロマトグラフィ技術を利用して被検物質の検出を行う試験片10の読取りを行うものであって、筐体2、デバイス挿入口3、情報出力手段4等を備えている。そして、検体溶液が点着された試験片がデバイス挿入口3に挿入され、試験片10において生じる呈色反応を光学的に読み取り、読取結果が情報入出力手段4に出力される。情報入出力手段4はたとえば液晶タッチパネルからなるオペレーションパネルであって、使用者はオペレーションパネルを介して測定のための基本的な設定を入力することができる。
【0017】
図2および図3は呈色測定装置1により読み取られる試験片10の一例を示す模式図である。なお、試験片10として、たとえば特開2009−139256号公報、特開2007−64766号公報等公知の技術を用いることができる。試験片10は、イムノクロマトグラフィ法を用いて被検物質の定量的もしくは定性的(陰性/陽性)の検査を行うためのデバイスであって、被検物質(所定の抗原)を視認可能に標識化するものである。この試験片10には被検物質が存在する可能性のある検体と標識化物質(第2抗体)とを混合させた検体溶液が点着される。
【0018】
試験片10は、上ケース10A、下ケース10B、不溶性担体12を有しており、上ケース10Aおよび下ケース10B内に不溶性担体12が収容されている。上ケース10Aには外部から検体溶液を不溶性担体12に点着するための貫通孔11と増幅液を不溶性担体12に点着するための貫通孔14とが形成されている。一方、下ケース10Bには不溶性担体12が固定されており、被検物質の定量的または定性的な測定を観察するための観察窓10Zが形成されている。さらに、下ケース10Bの表面には検体を識別情報(氏名等)や反応に必要な時間情報等を記録した文字情報、バーコード、ICタグ等の情報記憶手段15が設けられている。
【0019】
不溶性担体12はたとえばセルロース濾紙、硝子繊維、ポリウレタン等の吸収剤からなっており、点着された検体溶液は毛細管現象により一定の方向に流れる。不溶性担体12にはテスト領域TLとコントロール領域CLとが形成されている。テスト領域TLは、被検物質(抗体)に対して特異性を有する第1抗体がライン状に固定されたものであって(テストライン)、被検物質の存在により第1抗体−被検物質−第2抗体の結合体が形成されライン状に呈色する。一方、コントロール領域CLは、標識化抗体に反応する参照用抗原(もしくは抗体)が固定されており、検体溶液中の標識化抗体と反応しライン状に呈色する。したがって、コントロール領域CLの呈色状態を確認することにより、検体溶液がテスト領域TLおよびコントロール領域CL上を通過したか否かを判断することができる。
【0020】
さらに、試験片10は、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを上下方向(検体溶液の流路に略直交する方向)に挟むように、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを洗浄するための洗浄液の流路を形成する洗浄層13a、13bを備えている。洗浄層13a、13bは、不溶性担体12と同様の材料からなるものであって、洗浄層13a、13bと不溶性担体12とが接続している領域に洗浄液が流れる。したがって図3においてテスト領域TLおよびコントロール領域CLを含む周辺領域に洗浄液が流れることになる。
【0021】
そして、テスト領域TLおよびコントロール領域CLにおける反応が完了した後に、検体処理手段20から洗浄液が供給される。すると、毛細管現象によって洗浄液が洗浄層13aから洗浄層13b側へ流れ、洗浄層13aと13bとの間に存在するテスト領域TLおよびコントロール領域CLに洗浄液が流れる。これにより、テスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体を形成しなかった標識化抗体が除去される。
【0022】
また、上ケース10Aには検体処理手段20から金属イオン(銀コロイド等)を含有する増幅液を不溶性担体12に展開させるための貫通孔14が形成されている。そして、洗浄液による洗浄後に増幅液が不溶性担体12上に展開することにより、金属イオンがテスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体に付着し、呈色状態が増幅される。
【0023】
図4は本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示すブロック図である。図3の呈色測定装置1は、検体処理手段(洗浄液供給手段)20、読取手段21、判定手段22、粘性検出手段23、洗浄制御手段24を備えている。
【0024】
図5は検体処理手段20の一例を示す模式図であり、図4および図5を参照して検体処理手段20について説明する。検体処理手段20は検体の点着工程、洗浄工程および増幅工程において必要な各種溶液を試験片10に供給するものである。なお、図5の検体処理手段20は、試験片10に対し検体溶液、洗浄液、増幅液を自動的に点着する機能を有するものであって、事前に呈色測定装置1に対し試験片10、検体が収容された検体容器、洗浄液が収容された洗浄液容器、増幅液が収容された増幅液容器および各種溶液を分注する際に用いられる取り替え可能な複数のノズルチップ(サンプラチップ)NCがそれぞれ装填される。
【0025】
そして、検体処理手段20は、分析開始が指示された際にノズル保持部20aにノズルチップNCを装着し検体容器から検体溶液を抽出し試験片10に分注する。その後、所定期間経過後の洗浄工程において、検体処理手段20は洗浄容器から洗浄液を抽出し試験片10に分注する。したがって、検体処理手段20が洗浄液供給手段として機能する。さらに洗浄工程終了後の増幅工程において、検体処理手段20は増幅液容器から増幅液を抽出し試験片10に分注する。検体処理手段20は、各種容器から液体を抽出する際に所定時間の間一定圧力により吸引・吐出するものであり、結果として所定量の液体が試験片10に抽出・分注されることになる。
【0026】
図4の読取手段21は、観察窓10Zからテスト領域TLおよびコントロール領域CLの呈色状態を濃淡値として読み取るものであって、たとえばCCDやCMOS等の撮像素子からなっている。なお、読取手段21は、グレースケール値を濃淡値として読み取るものであってもよいし、RGBの各成分値を濃淡値として読み取るものであってもよいし、蛍光等の所定の色(波長成分)の強弱を濃淡値として読み取るものであってもよい。さらに、読取手段21は撮像素子からなる場合に限らず、観察窓10Zから生じる反射光や蛍光を受光する受光素子からなるものであってもよい。
【0027】
判定手段22は、読取手段21により読み取られたテスト領域TLおよびコントロール領域CLの濃淡値から被検物質の定性的または定量的な分析を行うものである。具体的には、判定手段22はコントロール領域CLの濃淡値から検体溶液が不溶性担体12上に正常に展開したか否かを判定する。また判定手段22はテスト領域TLの濃淡値から被検物質の量を判定し、もしくは陽性/陰性の判定を行う。そして、判定手段22による判定結果が情報出力手段4から出力される。
【0028】
粘性検出手段23は、試験片10に分注された検体溶液の粘性を検出するものである。ここで、粘性検出手段23は試験片10に分注された検体溶液の重量変化ΔWに基づいて検体溶液の粘性を検出する機能を有している。具体的には、図5のノズル保持部20aにはたとえば歪みゲージからなる重量計測手段60が取り付けられており、重量計測手段60により計測される検体容器に収容された検体溶液を試験片10に点着する前後の重量変化ΔWを計測する機能を有している。上述したように、検体処理手段20が検体容器から検体溶液を抽出する際には、一定期間一定圧力で抽出・分注するものであるが、検体溶液の粘性が異なれば検体溶液の抽出・分注される量は変化する。この性質に基づいて粘性検出手段23は重量変化ΔWに基づいて粘性を検出する。
【0029】
なお、重量計測手段60がノズル保持部20aに設けられている場合について例示しているが、試験片10を載置する部位に取り付け、試験片10の重量変化ΔWを計測する。また、図7において重量と粘性とが比例関係を有している場合について例示しているが、検体の種類や試薬の種類によっては指数関数もしくは累乗関数の関係を有する場合もある。このとき、記憶テーブルに指数関数等の関係が記憶されていればよい。
【0030】
さらに、図5に示すように、呈色測定装置1は検体の温度を検出する温度センサ61を有していてもよい。温度センサ61は検体処理手段20のノズル保持部20aに取り付けられており、検体容器から検体を抽出する際に温度センサにより検体の温度を計測する。一方、粘性検出手段23にはたとえば温度毎に重量と粘性との関係を示すテーブル(図6参照)が記憶されており、温度および重量に基づいて粘性が規定範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。これにより、純水や血液や血漿等の場合等の液体は温度によって粘度、動粘度、密度が異なる知見に基づき、重量のみならず温度も用いて精度良く粘性の検出を行うことができる。また、粘性検出手段23が重量変化ΔWに基づいて粘性を検出する場合について例示しているが、たとえば検体溶液の展開速度から粘性を検出するようにしてもよい。
【0031】
図4の洗浄制御手段24は、重量変化ΔWに応じて洗浄工程に使用する洗浄液の量を制御する機能を有している。具体的には、検体処理手段20は、図7に示すような検体(重量変化ΔW)と洗浄液量との関係を示すテーブルが予め記憶されており、このテーブルに基づいて洗浄工程において使用する洗浄液の量を決定する。あるいは図8に示すように、検体処理手段20から時間当たりに供給する洗浄液が決まっているような制御下において洗浄時間を長くすることにより洗浄工程における試験片10に供給される洗浄液の総量を増加させるものであってもよい。
【0032】
あるいは、図9に示すように、検体処理手段20は、粘性が設定しきい値以上になった場合には追加洗浄を行うようにしてもよい。この追加洗浄を行う際には、たとえば通常の洗浄工程における洗浄液の略半分の量の洗浄液を用いて追加洗浄を行うようにしてもよい。
【0033】
なお、図7から図9に示すテーブルは、たとえば異なる粘性の試験用溶液を用意し、それぞれ不溶性担体12に展開させた後に様々な洗浄液量、洗浄時間または洗浄回数で洗浄を行った結果を画像で確認し、画像上のムラ等に起因する濃度変化が所定値以下になる洗浄液量等を予め評価しておき、粘性と洗浄液量等の関係を求めたものである。また、図7および図8においては粘性と洗浄液量とが比例関係を有している場合について例示しているが、検体の種類や試薬の種類によっては指数関数もしくは累乗関数の関係を有する場合もある。このとき、記憶テーブルに指数関数等の関係が記憶されていればよい。
【0034】
このように、粘性に応じて試験片10に供給する洗浄液の量を制御することにより、検体溶液の粘性が高い場合であっても、テスト領域TLおよびコントロール領域CL以外のバックグランド領域BRに残存する検体溶液を確実に洗い流し、増幅処理により残存する検体溶液が増幅されるのを防止することができる。
【0035】
図10は本発明の呈色測定方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図10を参照して呈色測定方法について説明する。まず、呈色測定装置1に試験片10および検体容器等が装填され、検体処理手段20により試験片10に検体溶液が点着される(ステップST1、図5参照)。このとき、重量計測手段60により計測された検体溶液の分注前後の重量変化ΔWが粘性検出手段23により検出されることにより粘性が検出される(ステップST2)。そして、洗浄制御手段24において検体溶液の粘性に基づいて洗浄液の量が決定される(ステップST3、図7−図9参照)。
【0036】
試験片10に検体溶液を点着してから所定時間経過後に、試験片10に検体処理手段20から洗浄液が分注される(ステップST4)。この際、検体処理手段20において洗浄制御手段24が決定した洗浄液の量に基づいてテスト領域TLおよびコントロール領域CLの洗浄が行われる(図3参照)。そして、洗浄工程が終了すると、検体処理手段20により試験片10に対し増幅液が分注される(ステップST5、図5参照)。その後、読取手段21により増幅処理後のテスト領域TLの呈色状態が読み取られ、判定手段22によりテスト領域TLの濃淡値に基づく被検物質の定量的または定性的な分析が行われる(ステップST6)。
【0037】
上記実施の形態によれば、検体溶液が展開される不溶性担体12と、不溶性担体12に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域TLを有する試験片の呈色状態を測定する際に、試験片10に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域TLに展開された後であってテスト領域TLの呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片10に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域TLおよびその周辺領域に供給することにより、テスト領域TLおよびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流し、増幅処理時にテスト領域TLにおいて捕捉されていない残留物によるノイズを低減することができる。
【0038】
また、図8に示すように、洗浄制御手段24が、検体の粘性が高くなるほど検体処理手段(洗浄液供給手段)20から試験片10へ洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであれば、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0039】
さらに、図9に示すように、洗浄制御手段24が、検体の粘性が高くなるほど検体処理手段(洗浄液供給手段)20から試験片10に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであるとき、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0040】
本発明の実施形態は上記実施形態に限定されない。たとえば、上記実施の形態において、試験片は1本の判定ラインを有する場合について例示しているが、2本以上のテスト領域TLを有するものであってもよい。また、検体処理手段20が検体溶液を試験片に自動的に注入される場合について例示しているが、予め検体溶液が点着された状態で呈色測定装置1に装填されるものであってもよい。この場合、粘性検出手段23は、公知の手法により読取手段21により不溶性担体12における検体溶液の展開速度から粘性を検出するようにすればよい。
【0041】
また、上記実施の形態において、粘性が規定範囲外である場合に洗浄液の増減を行う場合について例示しているが、検体の流速を制御するために、検体注入時の圧力や引圧の変更、検体の温度制御などをしてもよい。
【0042】
さらに、粘性の検出が重量変化ΔWに基づいて行われる場合について例示しているが、たとえば図2および図3の不溶性担体12を画像センサ(読取手段21)でモニタし、検体の注入を開始した時間から検体が不溶性担体12の所定位置に到達した時間を計測し、検体の粘性を検出してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 呈色測定装置
10 試験片
12 不溶性担体
20 検体処理手段
21 読取手段
22 判定手段
23 粘性検出手段
24 洗浄制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体溶液中の被験物質について定量的または定性的な測定を行う呈色測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断薬や毒物等の検査のために被験物質を含有する可能性のある検体溶液を試験片に送液し、イムノクロマトグラフ法を用いて被験物質について簡便かつ迅速に検査するデバイスが数多く開発されている(たとえば特許文献1参照)。たとえば特定の領域(テストライン)に被検物質(たとえば抗原)に特異的に結合する第1抗体が固定された多孔質体からなる不溶性担体上に被検物質と特異的に結合する標識化第2抗体に被検物質が存在する可能性のある検体を混合した検体溶液が展開される。すると、テストライン上において被検物質と第1抗体および第2抗体とによる抗原抗体反応が生じ、テストラインが着色もしくは発色し呈色状態になる。このテストラインの呈色状態を観察することにより、検体溶液に被検物質が存在するか否か定量的または定性的(陰性/陽性)な測定が行われる。
【0003】
さらに、テストラインの呈色状態を迅速かつ高感度に検出するために、増幅剤を用いた増幅処理を行うことが提案されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2には、上述した検体溶液が不溶性担体に展開した後に、銀イオン等の金属イオンを含む増幅剤を不溶性担体に展開させることにより、テストライン上の第1抗体−被検物質(抗原)−第2抗体の複合体に対し金属イオンが結合し、呈色状態を増幅させることが開示されている。また、増幅処理を行う前にテスト領域およびその周辺領域に対し洗浄液を展開してバックグランドにある標識物によるノイズを低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/007849号公報
【特許文献2】特開2009−216695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、不溶性担体に展開される検体の粘性は各検体毎に異なるものであって、粘性が高い検体もあれば粘性の低い検体も存在する。上述した洗浄工程において一定量の洗浄液を展開して洗浄を行うようにした場合、粘性が高い検体である場合には十分な洗浄を行うことができない場合がある。この状態で増幅処理を行ってしまうと、洗浄ムラやバックグランドノイズが発生し被検物質の分析精度が落ちてしまう場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、検体の粘性の違いにより増幅処理時に発生するノイズを低減することができる呈色測定装置および方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の呈色測定装置は、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定装置であって、試験片に注入された検体の粘性を検出する粘性検出手段と、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前にテスト領域およびその周辺領域を洗浄するための洗浄液を試験片に供給する洗浄液供給手段と、粘性検出手段により検出された検体の粘性が高ければ高いほど試験片に供給する洗浄液の量を多くするように洗浄液供給手段を制御する洗浄制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の呈色測定方法は、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、試験片に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域およびその周辺領域に供給することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、試験片は、テスト領域およびテスト領域が被検物質の存在により呈色状態になるものであればなんでもよく、たとえばクロマトグラフィ、特に抗原抗体反応を利用したイムノアッセイをクロマトグラフィに応用したイムノクロマトグラフィ法を用いたものであってもよい。さらに、テスト領域およびコントロール領域のパターン形状は問わず、たとえばライン状に形成されていてもよいし、所定のパターンを有するものであってもよい。
【0010】
また、呈色状態とは、被検物質によりテスト領域が発色もしくは変色する、もしくは検体溶液によりコントロール領域が発色もしくは変色するものであればよく、濃淡値は呈色状態の発色強度もしくは変色度合いを表すものであればよい。そして、読取手段は、呈色状態を濃淡値として読み取るものであればその構成を問わず、たとえば撮像素子を用いて試験片を画像として取得するものであってもよいし、試験片に光を照射しその反射光を受光する受光素子からなるものであってもよい。また、読取手段は、呈色状態の濃度変化を濃淡値として読み取るものであってもよいし、所定の波長の光(蛍光)の強度を濃淡値として読み取るものであってもよい。
【0011】
なお、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液の量を多くするものであればその方法を問わず、たとえば検体の粘性が高くなるほど洗浄時間を長くして洗浄液の量を多くするように制御してもよいし、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呈色測定装置および方法によれば、検体溶液が展開される不溶性担体と、不溶性担体に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、試験片に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域に展開された後であってテスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域およびその周辺領域に供給することにより、テスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流し、増幅処理時にテスト領域において捕捉されていない残留物によるノイズを低減することができる。
【0013】
なお、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片へ洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであれば、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0014】
また、洗浄制御手段が、検体の粘性が高くなるほど洗浄液供給手段から試験片に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであるとき、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示す模式図
【図2】本発明の呈色測定装置において用いられる試験片の一例を示す模式図
【図3】本発明の呈色測定装置において用いられる試験片の一例を示す模式図
【図4】本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示すブロック図
【図5】図4の検体処理手段の一例を示す模式図
【図6】図4の粘性検出手段において重量変化と粘性との関係の一例を示すグラフ
【図7】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄液量を増加させる様子を示すグラフ
【図8】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄時間を増加させる様子を示すグラフ
【図9】図4の洗浄制御手段において粘性に応じて洗浄回数を増加させる様子を示すグラフ
【図10】本発明の呈色測定方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の呈色測定装置1の概略構成図である。呈色測定装置1は、たとえばイムノクロマトグラフィ技術を利用して被検物質の検出を行う試験片10の読取りを行うものであって、筐体2、デバイス挿入口3、情報出力手段4等を備えている。そして、検体溶液が点着された試験片がデバイス挿入口3に挿入され、試験片10において生じる呈色反応を光学的に読み取り、読取結果が情報入出力手段4に出力される。情報入出力手段4はたとえば液晶タッチパネルからなるオペレーションパネルであって、使用者はオペレーションパネルを介して測定のための基本的な設定を入力することができる。
【0017】
図2および図3は呈色測定装置1により読み取られる試験片10の一例を示す模式図である。なお、試験片10として、たとえば特開2009−139256号公報、特開2007−64766号公報等公知の技術を用いることができる。試験片10は、イムノクロマトグラフィ法を用いて被検物質の定量的もしくは定性的(陰性/陽性)の検査を行うためのデバイスであって、被検物質(所定の抗原)を視認可能に標識化するものである。この試験片10には被検物質が存在する可能性のある検体と標識化物質(第2抗体)とを混合させた検体溶液が点着される。
【0018】
試験片10は、上ケース10A、下ケース10B、不溶性担体12を有しており、上ケース10Aおよび下ケース10B内に不溶性担体12が収容されている。上ケース10Aには外部から検体溶液を不溶性担体12に点着するための貫通孔11と増幅液を不溶性担体12に点着するための貫通孔14とが形成されている。一方、下ケース10Bには不溶性担体12が固定されており、被検物質の定量的または定性的な測定を観察するための観察窓10Zが形成されている。さらに、下ケース10Bの表面には検体を識別情報(氏名等)や反応に必要な時間情報等を記録した文字情報、バーコード、ICタグ等の情報記憶手段15が設けられている。
【0019】
不溶性担体12はたとえばセルロース濾紙、硝子繊維、ポリウレタン等の吸収剤からなっており、点着された検体溶液は毛細管現象により一定の方向に流れる。不溶性担体12にはテスト領域TLとコントロール領域CLとが形成されている。テスト領域TLは、被検物質(抗体)に対して特異性を有する第1抗体がライン状に固定されたものであって(テストライン)、被検物質の存在により第1抗体−被検物質−第2抗体の結合体が形成されライン状に呈色する。一方、コントロール領域CLは、標識化抗体に反応する参照用抗原(もしくは抗体)が固定されており、検体溶液中の標識化抗体と反応しライン状に呈色する。したがって、コントロール領域CLの呈色状態を確認することにより、検体溶液がテスト領域TLおよびコントロール領域CL上を通過したか否かを判断することができる。
【0020】
さらに、試験片10は、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを上下方向(検体溶液の流路に略直交する方向)に挟むように、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを洗浄するための洗浄液の流路を形成する洗浄層13a、13bを備えている。洗浄層13a、13bは、不溶性担体12と同様の材料からなるものであって、洗浄層13a、13bと不溶性担体12とが接続している領域に洗浄液が流れる。したがって図3においてテスト領域TLおよびコントロール領域CLを含む周辺領域に洗浄液が流れることになる。
【0021】
そして、テスト領域TLおよびコントロール領域CLにおける反応が完了した後に、検体処理手段20から洗浄液が供給される。すると、毛細管現象によって洗浄液が洗浄層13aから洗浄層13b側へ流れ、洗浄層13aと13bとの間に存在するテスト領域TLおよびコントロール領域CLに洗浄液が流れる。これにより、テスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体を形成しなかった標識化抗体が除去される。
【0022】
また、上ケース10Aには検体処理手段20から金属イオン(銀コロイド等)を含有する増幅液を不溶性担体12に展開させるための貫通孔14が形成されている。そして、洗浄液による洗浄後に増幅液が不溶性担体12上に展開することにより、金属イオンがテスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体に付着し、呈色状態が増幅される。
【0023】
図4は本発明の呈色測定装置の好ましい実施形態を示すブロック図である。図3の呈色測定装置1は、検体処理手段(洗浄液供給手段)20、読取手段21、判定手段22、粘性検出手段23、洗浄制御手段24を備えている。
【0024】
図5は検体処理手段20の一例を示す模式図であり、図4および図5を参照して検体処理手段20について説明する。検体処理手段20は検体の点着工程、洗浄工程および増幅工程において必要な各種溶液を試験片10に供給するものである。なお、図5の検体処理手段20は、試験片10に対し検体溶液、洗浄液、増幅液を自動的に点着する機能を有するものであって、事前に呈色測定装置1に対し試験片10、検体が収容された検体容器、洗浄液が収容された洗浄液容器、増幅液が収容された増幅液容器および各種溶液を分注する際に用いられる取り替え可能な複数のノズルチップ(サンプラチップ)NCがそれぞれ装填される。
【0025】
そして、検体処理手段20は、分析開始が指示された際にノズル保持部20aにノズルチップNCを装着し検体容器から検体溶液を抽出し試験片10に分注する。その後、所定期間経過後の洗浄工程において、検体処理手段20は洗浄容器から洗浄液を抽出し試験片10に分注する。したがって、検体処理手段20が洗浄液供給手段として機能する。さらに洗浄工程終了後の増幅工程において、検体処理手段20は増幅液容器から増幅液を抽出し試験片10に分注する。検体処理手段20は、各種容器から液体を抽出する際に所定時間の間一定圧力により吸引・吐出するものであり、結果として所定量の液体が試験片10に抽出・分注されることになる。
【0026】
図4の読取手段21は、観察窓10Zからテスト領域TLおよびコントロール領域CLの呈色状態を濃淡値として読み取るものであって、たとえばCCDやCMOS等の撮像素子からなっている。なお、読取手段21は、グレースケール値を濃淡値として読み取るものであってもよいし、RGBの各成分値を濃淡値として読み取るものであってもよいし、蛍光等の所定の色(波長成分)の強弱を濃淡値として読み取るものであってもよい。さらに、読取手段21は撮像素子からなる場合に限らず、観察窓10Zから生じる反射光や蛍光を受光する受光素子からなるものであってもよい。
【0027】
判定手段22は、読取手段21により読み取られたテスト領域TLおよびコントロール領域CLの濃淡値から被検物質の定性的または定量的な分析を行うものである。具体的には、判定手段22はコントロール領域CLの濃淡値から検体溶液が不溶性担体12上に正常に展開したか否かを判定する。また判定手段22はテスト領域TLの濃淡値から被検物質の量を判定し、もしくは陽性/陰性の判定を行う。そして、判定手段22による判定結果が情報出力手段4から出力される。
【0028】
粘性検出手段23は、試験片10に分注された検体溶液の粘性を検出するものである。ここで、粘性検出手段23は試験片10に分注された検体溶液の重量変化ΔWに基づいて検体溶液の粘性を検出する機能を有している。具体的には、図5のノズル保持部20aにはたとえば歪みゲージからなる重量計測手段60が取り付けられており、重量計測手段60により計測される検体容器に収容された検体溶液を試験片10に点着する前後の重量変化ΔWを計測する機能を有している。上述したように、検体処理手段20が検体容器から検体溶液を抽出する際には、一定期間一定圧力で抽出・分注するものであるが、検体溶液の粘性が異なれば検体溶液の抽出・分注される量は変化する。この性質に基づいて粘性検出手段23は重量変化ΔWに基づいて粘性を検出する。
【0029】
なお、重量計測手段60がノズル保持部20aに設けられている場合について例示しているが、試験片10を載置する部位に取り付け、試験片10の重量変化ΔWを計測する。また、図7において重量と粘性とが比例関係を有している場合について例示しているが、検体の種類や試薬の種類によっては指数関数もしくは累乗関数の関係を有する場合もある。このとき、記憶テーブルに指数関数等の関係が記憶されていればよい。
【0030】
さらに、図5に示すように、呈色測定装置1は検体の温度を検出する温度センサ61を有していてもよい。温度センサ61は検体処理手段20のノズル保持部20aに取り付けられており、検体容器から検体を抽出する際に温度センサにより検体の温度を計測する。一方、粘性検出手段23にはたとえば温度毎に重量と粘性との関係を示すテーブル(図6参照)が記憶されており、温度および重量に基づいて粘性が規定範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。これにより、純水や血液や血漿等の場合等の液体は温度によって粘度、動粘度、密度が異なる知見に基づき、重量のみならず温度も用いて精度良く粘性の検出を行うことができる。また、粘性検出手段23が重量変化ΔWに基づいて粘性を検出する場合について例示しているが、たとえば検体溶液の展開速度から粘性を検出するようにしてもよい。
【0031】
図4の洗浄制御手段24は、重量変化ΔWに応じて洗浄工程に使用する洗浄液の量を制御する機能を有している。具体的には、検体処理手段20は、図7に示すような検体(重量変化ΔW)と洗浄液量との関係を示すテーブルが予め記憶されており、このテーブルに基づいて洗浄工程において使用する洗浄液の量を決定する。あるいは図8に示すように、検体処理手段20から時間当たりに供給する洗浄液が決まっているような制御下において洗浄時間を長くすることにより洗浄工程における試験片10に供給される洗浄液の総量を増加させるものであってもよい。
【0032】
あるいは、図9に示すように、検体処理手段20は、粘性が設定しきい値以上になった場合には追加洗浄を行うようにしてもよい。この追加洗浄を行う際には、たとえば通常の洗浄工程における洗浄液の略半分の量の洗浄液を用いて追加洗浄を行うようにしてもよい。
【0033】
なお、図7から図9に示すテーブルは、たとえば異なる粘性の試験用溶液を用意し、それぞれ不溶性担体12に展開させた後に様々な洗浄液量、洗浄時間または洗浄回数で洗浄を行った結果を画像で確認し、画像上のムラ等に起因する濃度変化が所定値以下になる洗浄液量等を予め評価しておき、粘性と洗浄液量等の関係を求めたものである。また、図7および図8においては粘性と洗浄液量とが比例関係を有している場合について例示しているが、検体の種類や試薬の種類によっては指数関数もしくは累乗関数の関係を有する場合もある。このとき、記憶テーブルに指数関数等の関係が記憶されていればよい。
【0034】
このように、粘性に応じて試験片10に供給する洗浄液の量を制御することにより、検体溶液の粘性が高い場合であっても、テスト領域TLおよびコントロール領域CL以外のバックグランド領域BRに残存する検体溶液を確実に洗い流し、増幅処理により残存する検体溶液が増幅されるのを防止することができる。
【0035】
図10は本発明の呈色測定方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図10を参照して呈色測定方法について説明する。まず、呈色測定装置1に試験片10および検体容器等が装填され、検体処理手段20により試験片10に検体溶液が点着される(ステップST1、図5参照)。このとき、重量計測手段60により計測された検体溶液の分注前後の重量変化ΔWが粘性検出手段23により検出されることにより粘性が検出される(ステップST2)。そして、洗浄制御手段24において検体溶液の粘性に基づいて洗浄液の量が決定される(ステップST3、図7−図9参照)。
【0036】
試験片10に検体溶液を点着してから所定時間経過後に、試験片10に検体処理手段20から洗浄液が分注される(ステップST4)。この際、検体処理手段20において洗浄制御手段24が決定した洗浄液の量に基づいてテスト領域TLおよびコントロール領域CLの洗浄が行われる(図3参照)。そして、洗浄工程が終了すると、検体処理手段20により試験片10に対し増幅液が分注される(ステップST5、図5参照)。その後、読取手段21により増幅処理後のテスト領域TLの呈色状態が読み取られ、判定手段22によりテスト領域TLの濃淡値に基づく被検物質の定量的または定性的な分析が行われる(ステップST6)。
【0037】
上記実施の形態によれば、検体溶液が展開される不溶性担体12と、不溶性担体12に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域TLを有する試験片の呈色状態を測定する際に、試験片10に注入された検体の粘性を検出し、検体溶液がテスト領域TLに展開された後であってテスト領域TLの呈色状態を増幅させるための増幅液を試験片10に供給する前に、検出した検体の粘性が高ければ高いほど洗浄液の量を多くテスト領域TLおよびその周辺領域に供給することにより、テスト領域TLおよびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流し、増幅処理時にテスト領域TLにおいて捕捉されていない残留物によるノイズを低減することができる。
【0038】
また、図8に示すように、洗浄制御手段24が、検体の粘性が高くなるほど検体処理手段(洗浄液供給手段)20から試験片10へ洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであれば、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0039】
さらに、図9に示すように、洗浄制御手段24が、検体の粘性が高くなるほど検体処理手段(洗浄液供給手段)20から試験片10に洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであるとき、粘性の高さに応じてテスト領域およびその周辺領域に残存するノイズ源を確実に洗い流すことができる。
【0040】
本発明の実施形態は上記実施形態に限定されない。たとえば、上記実施の形態において、試験片は1本の判定ラインを有する場合について例示しているが、2本以上のテスト領域TLを有するものであってもよい。また、検体処理手段20が検体溶液を試験片に自動的に注入される場合について例示しているが、予め検体溶液が点着された状態で呈色測定装置1に装填されるものであってもよい。この場合、粘性検出手段23は、公知の手法により読取手段21により不溶性担体12における検体溶液の展開速度から粘性を検出するようにすればよい。
【0041】
また、上記実施の形態において、粘性が規定範囲外である場合に洗浄液の増減を行う場合について例示しているが、検体の流速を制御するために、検体注入時の圧力や引圧の変更、検体の温度制御などをしてもよい。
【0042】
さらに、粘性の検出が重量変化ΔWに基づいて行われる場合について例示しているが、たとえば図2および図3の不溶性担体12を画像センサ(読取手段21)でモニタし、検体の注入を開始した時間から検体が不溶性担体12の所定位置に到達した時間を計測し、検体の粘性を検出してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 呈色測定装置
10 試験片
12 不溶性担体
20 検体処理手段
21 読取手段
22 判定手段
23 粘性検出手段
24 洗浄制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体溶液が展開される不溶性担体と、該不溶性担体に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定装置であって、
前記試験片に注入された前記検体の粘性を検出する粘性検出手段と、
前記検体溶液が前記テスト領域に展開された後であって該テスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を前記試験片に供給する前に該テスト領域およびその周辺領域を洗浄するための洗浄液を前記試験片に供給する洗浄液供給手段と、
前記粘性検出手段により検出された前記検体の粘性が高ければ高いほど前記試験片に供給する前記洗浄液の量を多くするように前記洗浄液供給手段を制御する洗浄制御手段と
を備えたことを特徴とする呈色測定装置。
【請求項2】
前記洗浄制御手段が、前記検体の粘性が高くなるほど前記洗浄液供給手段から前記試験片へ前記洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであることを特徴とする請求項1記載の呈色測定装置。
【請求項3】
前記洗浄制御手段が、前記検体の粘性が高くなるほど前記洗浄液供給手段から前記試験片に前記洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであることを特徴とする請求項1または2記載の呈色測定装置。
【請求項4】
検体溶液が展開される不溶性担体と、該不溶性担体に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、
前記試験片に注入された前記検体の粘性を検出し、
前記検体溶液が前記テスト領域に展開された後であって該テスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を前記試験片に供給する前に、検出した前記検体の粘性が高ければ高いほど前記洗浄液の量を多く前記テスト領域およびその周辺領域に供給する
ことを特徴とする呈色測定方法。
【請求項1】
検体溶液が展開される不溶性担体と、該不溶性担体に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定装置であって、
前記試験片に注入された前記検体の粘性を検出する粘性検出手段と、
前記検体溶液が前記テスト領域に展開された後であって該テスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を前記試験片に供給する前に該テスト領域およびその周辺領域を洗浄するための洗浄液を前記試験片に供給する洗浄液供給手段と、
前記粘性検出手段により検出された前記検体の粘性が高ければ高いほど前記試験片に供給する前記洗浄液の量を多くするように前記洗浄液供給手段を制御する洗浄制御手段と
を備えたことを特徴とする呈色測定装置。
【請求項2】
前記洗浄制御手段が、前記検体の粘性が高くなるほど前記洗浄液供給手段から前記試験片へ前記洗浄液を供給する時間を長くするように制御するものであることを特徴とする請求項1記載の呈色測定装置。
【請求項3】
前記洗浄制御手段が、前記検体の粘性が高くなるほど前記洗浄液供給手段から前記試験片に前記洗浄液を供給する回数を多くするように制御するものであることを特徴とする請求項1または2記載の呈色測定装置。
【請求項4】
検体溶液が展開される不溶性担体と、該不溶性担体に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域を有する試験片の呈色状態を測定する呈色測定方法であって、
前記試験片に注入された前記検体の粘性を検出し、
前記検体溶液が前記テスト領域に展開された後であって該テスト領域の呈色状態を増幅させるための増幅液を前記試験片に供給する前に、検出した前記検体の粘性が高ければ高いほど前記洗浄液の量を多く前記テスト領域およびその周辺領域に供給する
ことを特徴とする呈色測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−214864(P2011−214864A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80684(P2010−80684)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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