説明

呼吸保護装置

瘻孔に嵌入される呼吸保護装置は、中央軸線、末端部、近端部、第1開口部(101、201、301)及び第2の開口部(102、202、302)を有し、前記第2の開口部(102、202、302)が前記近端部に配置され、前記第1開口部(101、201、301)が、前記第2の開口部(102、202、302)と離れた位置であって、吸入において、前記第2の開口部(102、202、302)より上流に位置するように配置されたフィルタ収容部(100、200、300)と、前記フィルタ収容部(100、200、300)に受容され、弾力性を有する熱―水分交換フィルタ(103、203、303)と、前記第1開口部(101、201、301)を囲うバルブシート(105、205、305)と、前記バルブシート(105、205、305)の円周方向に配置され、前記第1開口部(101、201、301)から離れる方向に軸方向で延び、前記第1開口部(101、201、301)から離れる方向に軸方向で延びる少なくとも1つのリブ(106、206、306)、及び中央軸線と直角をなす少なくとも一つの開口(108、208、308)を備えるレールと、中央軸線に横平面に配列され、閉位置において、閉鎖して前記バルブシート(105、205、305)と係合するように調整され、前記レール内において、閉位置および開位置の間で往復運動するように配置されるバルブ部材(109、209、309)と、軸方向の末端に前記バルブ部材(109、209、309)を開位置に押圧する復帰スプリングと、を備え、前記復帰スプリングは、前記熱―水分交換フィルタ(103、203)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に喉頭切除又は気管切開された人の瘻孔に用いられる呼吸保護装置に関し、呼吸保護装置は、少なくとも一つの吸気口及び少なくとも一つの放出口を有するハウジングを備え、使用中に気流が、人の周囲から吸気口に流入し、吸気口から放出口へ通過し、人の気管に流入し、呼吸保護装置は、ハウジング内に、少なくとも一つの吸気口と少なくとも一つの放出口の間に熱―水分交換器を含み、使用中の気流は、吸気口から放出口へ通過するときに、熱―水分交換器を通過する。
【背景技術】
【0002】
気管開口術(tracheostomy)は外科的処置であり、開口部は、首の前部の表面から気管へと形成される。この開口部は気管瘻孔(瘻孔、stoma)とよばれる。気管開口術の管は、瘻孔と気管との間に延在するように配置される。気管開口術は、例えば、神経系または呼吸経路に関連した損傷または疾患の結果として、十分な空気を得ることができなくなる機能不全が存在する場合に実施される。低肺活量の低下や呼吸器の必要性もまた、気管開口術を必要とする結果となる。
【0003】
喉頭切除術は、例えば、癌腫を処置するために用いられる外科的処置であり、これは喉頭(larynx)又は喉頭(voice box)を除去して、瘻孔を生成することを含む。この処置の結果、気管は咽頭に接続しなくなり、瘻孔に回される。この処置の後は、通常の鼻の機能は不可能となる。呼吸が通常に機能している被験者において、鼻および鼻腔に位置する粘膜は、吸い込んだ空気を調節するという点で重要な機能を果たす。複雑な経路と豊富な血液の供給は、吸入吸気の温度と湿度を上昇させ、肺の表面におけるこれらのパラメータとの相違を最小限にするのに役立つ。通常、いくらかの熱と湿気はまた、吸入空気が環境に排出される前に捕捉される。鼻道のこの粘膜はまた、細かな埃の粒子、汚染物質及び微生物のような特定のものを、吸入空気から除くのに役立ち、繊毛の動きは粘液及びいかなる粒子も肺から遠ざけるように移動させる。
【0004】
患者が喉頭切除術を受けたときには、事実上、すべての吸入空気は瘻孔を経由して肺に入り、鼻は事実上、吸入プロセスに関与しない。呼気は気管フィステルを通るか、あるいは、もしも人口発声器官(ヴォイスプレテーゼ)が装着されている場合には、瘻孔が塞がれて、呼気が人口発生器官を経由して咽頭及び口に廻され、患者が話すことを可能にする。呼気の流れが、瘻孔のバルブによって制御されることが望ましい。これらの状況において、そのバルブは呼吸している間は開き続けるように調整され、呼気の流れが少しでも増加すると、空気の流れをそらすために閉じられる。
【0005】
この点において、フィルタ装置および呼吸保護装置が、吸い込んだ空気を湿らせ、その吸い込んだ空気中の微粒子および細菌性の物質を取り除くことができるように開発されている。これは、鼻の機能に類似するものである。しかしながら、このような装置の製造に関するいくつかの問題が存在する。第1に、そのような装置のユーザは、サイズ(例えば、その装置の表面積など)をできるだけ小さく保ちつつ、質の良い保湿および濾過効果を必要とする。第2に、保湿効果および濾過効果を得るには、装置において、大きな表面積を必要とするとともに、大きな抵抗(resistance)が生じないようにする必要がある。これらの基準は相反するものであり、観察力の鋭い読者は既に理解することである。また、喉頭切除術を受けた人は、会話をしたいときには、指や親指をこれらの装置の上に押さえる必要があり、それによって、気管壁を介したこの装置および瘻孔を介する空気の流れを妨げ、ユーザの指からフィルタへ不純物が移動するため、不必要な汚染でフィルタに負担をかける。また、仮に、患者が意識不明となった場合、衣類等が、この装置を通る空気の流れを妨げることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
US5,738,095には、中央に位置するピストンにより装置の中央軸線に沿って移動可能なディスクとして形成された押しボタンを有する装置が開示されている。このようなディスクは、バネ装置に付勢され、装置の近端部のバルブシートと協同するために操作可能である。US5,738,095の装置は、軸方向において、装置の端部まで伸びて、軸方向の閉鎖力と装置の横断面の上方からの動作のみ許容するレールも備えている。これにより、装置の閉塞による危険を最小化する安全なメカニズムを提供する。しかしながら、中央に位置されたピストン及びバネ装置は、装置の有効なフィルタ量を減少させる。また、当該技術分野において、バネ装置は製造するのがより容易であるという利益がある。
【0007】
US6,772,758には、瘻孔に適用され、吸気口と瘻孔とを連通する熱―水分熱交換器本体を備えた呼吸保護装置が開示されている。閉鎖蓋が熱―水分交換器に取り付けられ、直接バルブシートと協同することによって、又は、バルブシートに対して熱―水分交換器を押し込むことによって、連通を閉鎖するために押下可能である。
しかしながら、熱―水分交換器と上記蓋との間には、接着剤が必要である。さらにまた、上記蓋が直接バルブシートと協同するためには、熱―水分交換器の一部が除外されなければならない。さもなければ、熱―水分交換器は、上記蓋とバルブシートとの間で圧迫され、熱―水分交換器が不必要に歪み、閉鎖動作の妨げとなる。
また、US6,772,758の装置は、当該装置の末端まで軸方向に伸び、軸方向の閉鎖力と装置の横断面の上方からの動作のみ許容するレールを欠いている。
【0008】
それ故、改良型の呼吸保護装置は、有益である。特に、呼吸保護装置のハウジング内に形成された空間において最大限の加湿効果を得ることができ、また、話している全ての期間において上記開口の上に指を置くことによるフィルタの過度の汚染がなく、また、接着剤のような、湿った環境や歪みの反復による劣化する傾向のある不適当な物質を用いる必要がなく、例えば、会話している間、患者が呼吸保護装置を閉鎖できる可能性を提供でき、小さく形成されているにもかかわらず、従来の呼吸保護装置よりも十分な抵抗力を有する呼吸保護装置を提供しつつ、優れた加湿効果を得ることが可能な呼吸保護装置を提供することも有利な点である。この呼吸保護装置は、呼吸保護装置が閉塞する危険を最小限にしつつ、製造容易なバネ装置を備える、ことも提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、上記の従来技術の不足を一つ以上、緩和し、軽減し、除去して、関連する種類の改良型の呼吸保護装置を提供する。
この目的のために、呼吸保護装置は、弾力性を有する熱―水分交換フィルタを蓋の開位置に圧入するという点を特徴とする。
【0010】
本発明の有利な特徴は、従属クレームにおいても定められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明が可能とするこれらの観点、特徴及び優位性は、添付図面が参照されつつ、以下の本発明の実施形態の記述から明らかになり、説明される。
【図1】本発明の一実施例の呼吸保護装置の断面図である。
【図2】(a)および(b)は、図1の実施例による呼吸保護装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施例の呼吸保護装置の断面図である。
【図4】本発明の一実施例による呼吸保護装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載は、呼吸保護装置、特に、咽頭摘出された、または気管を切開された人の瘻孔(この瘻孔はその人の気管と通じている)において用いられる呼吸保護装置に適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てる。
【0013】
本発明の一実施例による呼吸保護装置は、図1、2a及び2bに示される。そして、呼吸保護は、円筒状フィルタ収容部100を備える。
呼吸保護装置は、喉頭切除術か気管開口術を受けた人の瘻孔に用いられる呼吸保護装置であってもよい。
【0014】
円筒状フィルタ収容部100は、末端部、近端部および一端部から他端部まで中央軸線を有する。円筒状フィルタ収容部100は、第1開口部101および第2の開口部102を有する。これにより、使用中において気流は、患者の周囲から第1開口部101より、第2の開口部102へ通過することで、患者の気管に入る。
第2の開口部102は、呼吸保護装置の近端部に配置されている。そして、第2の開口部102は、例えば、フィルタ収容部100の近端部に配置されていてもよく、第1開口部101は、第2の開口部102から離れて位置する。すなわち、第1開口部101は、吸入中において、第2の開口部102の上流に位置する。
熱―水分交換フィルタ103は、円筒状フィルタ収容部100に受容されている。
フィルタ収容部100の第2の開口部102には、放射状又は斜めのアーム104が形成され、熱―水分交換フィルタ103を受容する留め具を形成していて、放射状又は斜めのアーム104と第2の開口部102の周辺との間の開口部は、吸入における呼吸用空気の放出口を構成し、その結果、放出における呼吸用空気の吸気口を構成する。
フィルタ収容部100の第2の開口部102が、第2の開口部102全体に伸びるアーム104を備えた場合、これらのアーム104は、近傍の熱―水分交換フィルタ103の移動を妨げることができる。これらのアーム104は、図2bに示すように、例えば、平行または実質的に平行となる互いに交差しない方法で配置されてもよい。このように配置されることで、アーム104は、第2の開口部102の清掃を簡単にする。
【0015】
第1開口部101は、円筒状フィルタ収容部100の第2の開口部102から離れた位置に、設けられている。
熱―水分交換フィルタ103は、呼吸保護装置が開位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内にその一部が位置し、呼吸保護装置が閉鎖位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内に全体が位置する。
第1開口部は、バルブシート105で囲まれている。
即ち、バルブシート105は、第1開口部周辺に配置される。
バルブシート105から放射状におよび/またはバルブシート105の円周方向に外側に向かってレールは、第1開口部101から軸方向に離れる方向に伸びている。レールは、第1開口部101から軸方向に離れる位置に伸びるリブ106を含む。
リング107は、リブ106を呼吸保護装置の末端に接続する。
リブ106同士の間であって、リング107の近傍には、開口108が形成されている。開口108は、少なくとも図1に示すように、ハウジング100の中央軸線と直交する方向に形成することができる。開口108は、放出における呼吸用空気の放出口を構成し、その結果、吸入における呼吸用空気の吸気口を構成する。
このように、熱―水分交換フィルタ103は、ハウジング100にける、開口108と第2の開口部102との間に位置する。これにより、吸入において気流は第2の開口部102から開口108へ通過するとき、熱―水分交換フィルタ103を通過する。
【0016】
リング107の近傍であって、バルブシート105から離れた位置に、バルブ部材、例えば、円形の蓋109が設けられている。円形の蓋109は、第1開口部101をカバーする表面エリアを有する。これにより、円形の蓋109は第1開口部101を閉じるようにバルブシート105の周囲に位置する。バルブ部材、例えば、蓋109は、このように、呼吸保護装置の中央軸線上であって、横断平面に配置されてもよい。バルブ部材109は、閉位置において、閉鎖してバルブシート105と係合するように調整され、レール内において、閉位置および開位置の間で往復運動するように配置される。円形の蓋109は、軸変位を考慮した直径を有するとともに、リブ106に囲まれた範囲において、円筒状フィルタ収容部100の中央軸線に関する横断平面に配置されている。
リング107の開口部は、蓋109が通過することを許容しない。これは、リング107の直径が、円形の蓋109の直径より小さい場合に達成される。
円形の蓋109には、周囲に、放射状に延出する突起110が形成され、突起110は、開口108と係合し、蓋109の末端部方向への軸方向の移動を止めることができる。蓋/バルブ部材109は、例えば、開位置において、レールによって、末端の動きが妨げられる。
【0017】
一実施例において、レール、例えば、リング107は、その内部に放射状に伸びる突起を備えている。この突起は、蓋109を適切な位置に保つ。
本実施例における蓋109上の突起110は、必要がなく、この種の可能性さえ除外されず、本発明の範囲内に含まれる。
【0018】
熱―水分交換フィルタ103は、可撓性/強い材料、例えば弾力性フォーム、である。さらにまた、熱―水分交換フィルタ103の寸法は、蓋109をリング107に向かって末端側に押圧するのに適した寸法である。熱―水分交換フィルタ103は、熱―水分交換器および復帰スプリングとして作用し、軸方向の末端に蓋109を開位置に押圧する。
話をするために、蓋109は、蓋109がバルブシート105に位置するか裁置され、そして、第1開口部101をカバーし、これにより、第1開口部が閉じるまで、指からの圧力を受ける。これにより、気管と周囲の環境との連通が閉じる。
呼吸保護装置は、それが衣類によってカバーされる場合であっても、このように閉じることができる。同時に、呼吸保護装置は、話をする間、指によってのどに対して押圧されるので、瘻孔から離れるのが防止される。
【0019】
放射状の斜めのアーム104と蓋109は、その形状のため、熱―水分交換フィルタ103を適所にある状態に保つ。熱―水分交換フィルタ103が同時にリターンスプリングとして作用することで、蓋109は、軽減されていた圧力の後、その開位置に弾性によって戻る。
【0020】
リング107内の軸方向、末端方向の力が、バルブ部材を閉じるために適用されなければならないところ、リブ106及びリング107は、バルブ部材が不注意により閉じてしまうリスクを低減する。
蓋109はその初期位置において熱―水分交換フィルタ103と接触し閉じているので、熱―水分交換フィルタ103の容量は、呼吸保護装置において最大であり、そして、呼吸保護装置が開くと、即ち、蓋109がその外側の非作動位置においてあるときに、呼吸用空気は、直接熱―水分交換フィルタ103と接触して、開口108を通過する。
【0021】
図2aおよび2bは、それぞれ、図1に示す実施例を上から見た斜視図、下から斜視図であり、斜めのアーム104、バルブシート105、リブ106、リング107、開口108、蓋109および突起110を、より明らかに確認する図である。
【0022】
本発明の他の実施例の呼吸保護装置は、図3に示される。そして、呼吸保護装置は、円筒状フィルタ収容部200を備える。呼吸保護装置は、喉頭切除術か気管開口術を受けた人の瘻孔に用いられる呼吸保護装置に適用できる。
【0023】
円筒状フィルタ収容部200は、末端部、近端部および一端部から他端部まで中央軸線を有する。円筒状フィルタ収容部200は、第1開口部201および第2の開口部202を有する。
吸入の間の気流は、第2の開口部202から第1開口部201を通って、患者の周囲から患者の気管を通過する。
第2の開口部202は、呼吸保護装置の近端部にある。第2の開口部202は、例えば、フィルタ収容部200の近端部にあってもよい。そして、第1開口部201は、第2の開口部202の中で離れた位置に配置される。これにより、吸入において、第1開口部201は、第2の開口部202より上流に配置される。
熱―水分交換フィルタ203は、円筒状フィルタ収容部200に受容されている。フィルタ収容部200の第2の開口部202は、熱―水分交換フィルタ203のための停止具材として、放射であるか斜めのアーム204を備えもよい。放射状又は斜めのアーム204と第2の開口部202の周辺との間の開口部は、吸入における呼吸用空気の放出口を構成し、放出における呼吸用空気の吸気口を構成する。
【0024】
円筒状フィルタ収容部200の第2の開口部202の離れた位置には、第1開口部201が設けられている。
熱―水分交換フィルタ203は、呼吸保護装置が開位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内にその一部が位置し、呼吸保護装置が閉鎖位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内に全体が位置する。
第1開口部は、バルブシート205に囲まれている。
即ち、バルブシート205は、第1開口部201周辺に配置される。
バルブシート205から放射状におよび/またはバルブシート205の円周方向に外側に向かってレールは、第1開口部201から軸方向に離れる方向に伸びている。レールは、第1開口部201から軸方向に離れる位置に伸びるリブ206を含む。
リング207は、リブ206を呼吸保護装置の末端に接続する。リブ206同士の間であって、リング207の近傍には、開口208が形成されている。開口208は、放出における呼吸用空気の放出口を構成し、その結果、吸入における呼吸用空気の吸気口を構成する。
熱―水分交換フィルタ203は、ハウジング200にける、開口208と第2の開口部202との間に位置する。これにより、吸入において気流は第2の開口部202から開口208へ通過するとき、熱―水分交換フィルタ203を通過する。
【0025】
実質的に、リング207と同じ横平面上であって、バルブシート205から離れた位置に、バルブ部材、例えば、円形の蓋209は、設けられている。円形の蓋209は、第1開口部201をカバーする表面エリアを有する。これにより、円形の蓋209は第1開口部201を閉じるようにバルブシート205の周囲に位置する。円形の蓋209は、軸変位を考慮した直径を有するとともに、円形の蓋209は、リブ206に囲まれた範囲において、円筒状フィルタ収容部200の横断平面に配置されている。円形の蓋209は、円形の可撓性カバー210に取り付けられている。可撓性カバー210の反発力によって、可撓性カバー210は押し下げ可能であり、軸方向近傍において、リング207に取り付けられるまで、蓋209をバルブシート205に閉鎖して適合するように押し込む。バルブ部材、例えば、蓋209は、そのとき、呼吸保護装置の中央軸線上であって、横平面に配置される。
バルブ部材209は、閉位置において、閉鎖してバルブシート205と係合するように調整され、レール内において、閉位置および開位置の間で往復運動するように配置されている。蓋/バルブ部材209は、例えば、開位置において、レールによって、末端の動きが妨げられる。
【0026】
別実施例によれば、円形の蓋209には、周囲に、放射状に延出する突起が形成され、突起は、開口208と係合し、蓋209の末端部方向における軸方向の移動を止めることができる。これにより、可撓性カバー210に対する過度の圧力を軽減できる。そして、たとえ、可撓性カバー210とリング207との間における、接着剤またはスナップ式の機能を備えるアタッチメントが破損したとしても、蓋209を適切な位置に保つことができる。
下記に示す効果において、呼吸保護装置の外観を変えるという可能性を提供すると共に、蓋209および可撓性カバー210の組合せは、蓋209およびバルブシート205の間における明らかな相互作用を提供する。
可撓性カバー210は、例えば、呼吸保護装置の外表面を滑らかにし、指への摩滅を最小化できる。また、可撓性カバー210は、レールと蓋209の間に異物が詰まることにより、呼吸が損なわれるというリスクを最小化できる。
【0027】
円形の可撓性カバー210は、リング207の周囲に取り付けられる。
熱―水分交換フィルタ203は、可撓性/強い材料、例えば弾力性フォーム、である。さらにまた、熱―水分交換フィルタ203の寸法は、蓋209を円形の可撓性カバー210に押圧するのに適した寸法である。例えば、熱―水分交換フィルタ203は、熱―水分交換器および復帰スプリングとして作用し、軸方向の末端に蓋209を開位置に押圧する。
話をするために、蓋209は、蓋209がバルブシート205に位置するか裁置され、そして、第1開口部201をカバーし、これにより、第1開口部が閉じるまで、指からの圧力を受ける。これにより、気管と周囲の環境との連通が閉じる。
呼吸保護装置は、それが衣類によってカバーされる場合であっても、このように閉じることができる。同時に、呼吸保護装置は、話をする間、指によってのどに対して押圧されるので、瘻孔から離れるのが防止される。
【0028】
放射状の斜めのアーム204と円形の可撓性カバー210は、その形状のため、熱―水分交換フィルタ203を適所にある状態に保つ。
熱―水分交換フィルタ203が同時にリターンスプリングとして作用することで、蓋209は、軽減されていた圧力の後、その開位置に弾性によって戻る。開位置において、蓋209は、可撓性カバー210により離れた位置に止められている。
【0029】
リング207内の軸方向、末端方向の力が、バルブ部材を閉じるために適用されなければならないところ、リブ206及びリング207は、バルブ部材が不注意により閉じてしまうリスクを低減する。
蓋209は、その初期位置において熱―水分交換フィルタ203と接触し閉じているので、熱―水分交換フィルタ203の容量は、呼吸保護装置において最大であり、そして、呼吸保護装置が開くと、即ち、蓋209がその外側の非作動位置にあるときに、呼吸用空気は、直接熱―水分交換フィルタ203と接触して、開口208を通過する。
【0030】
図4は、本発明の他の実施例の呼吸保護装置を示す。そして、呼吸保護装置は、円筒状フィルタ収容部300を備える。
呼吸保護装置は、喉頭切除術か気管開口術を受けた人の瘻孔に用いられる呼吸保護装置に適用できる。
【0031】
円筒状フィルタ収容部300は、末端部、近端部および一端部から他端部まで中央軸線を有する。中央軸線を有する。図1乃至3に示す実施例と同様に、円筒状フィルタ収容部300は、第1開口部301および第2の開口部302を有する。
吸入の間の気流は、第2の開口部302から第1開口部301を通って、患者の周囲から患者の気管を通過する。
第2の開口部302は、呼吸保護装置の近端部にある。第2の開口部302は、例えば、フィルタ収容部300の近端部にあってもよい。
そして、第1開口部301は、第2の開口部302の中で離れた位置に配置される。これにより、吸入において、第1開口部301は、第2の開口部302より上流に配置される。
熱―水分交換フィルタ303は、円筒状フィルタ収容部300に受容されている。
フィルタ収容部300の第2の開口部302は、熱―水分交換フィルタ303のための停止具材として、放射であるか斜めのアームを備えもよい。放射状又は斜めのアーム間の開口部および第2の開口部302の周辺は、吸入における呼吸用空気の放出口を構成し、その結果、放出における呼吸用空気の吸気口を構成する。
このことは、図1乃至3に示す実施例と同様である。
【0032】
円筒状フィルタ収容部300の第2の開口部302の離れた位置には、第1開口部301が設けられている。
熱―水分交換フィルタ303は、呼吸保護装置が開位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内にその一部が位置し、呼吸保護装置が閉鎖位置のときに、第1および第2の開口部の範囲内に全体が位置する。
第1開口部は、図1乃至3に示すバルブシート105又は205に対応するバルブシート305に囲まれている。即ち、バルブシート305は、第1開口部301周辺に配置される。
バルブシート305から放射状におよび/またはバルブシート305の円周方向に外側に向かってレールは、第1開口部301から軸方向に離れる方向に伸びている。レールは、第1開口部301から軸方向に離れる位置に伸びるリブ306を含む。
バー307は、呼吸保護装置の末端のリブ306に接続する。
リブ306同士の間であって、バー307の近傍には、開口308が形成されている。開口308は、放出における呼吸用空気の放出口を構成し、その結果、吸入における呼吸用空気の吸気口を構成する。
熱―水分交換フィルタ303は、ハウジング300にける、開口308と第2の開口部302との間に位置する。これにより、吸入において気流は第2の開口部302から開口308へ通過するとき、熱―水分交換フィルタ303を通過する。
【0033】
実質的に、バー307と同じ横平面上であって、バルブシート305から離れた位置に、バルブ部材、例えば、円形の蓋309は、設けられている。円形の蓋309は、第1開口部301をカバーする表面エリアを有する。これにより、円形の蓋309は第1開口部301を閉じるようにバルブシート305の周囲に位置する。円形の蓋309は、軸変位を考慮した直径を有するとともに、円形の蓋309は、リブ306に囲まれた範囲において、円筒状フィルタ収容部300の横断平面に配置されている。
【0034】
円形の蓋309は、蓋309の端の近傍に延びる、少なくとも2つの周辺フック要素310を備えている。
フック要素310は、蓋を適正な位置に保持するために、リップ311を把持するように形成されている。これにより、フック要素310がリップ311と係合したときには、蓋309の末端部方向における軸運動を妨げることができる。
蓋/バルブ部材309は、例えば開位置のフック要素310によって、末梢部の運動から妨げられる。
レールの末端における開放端を有する溝によって、フック要素310は、このレールの溝に嵌る。
【0035】
しかしながら、図1乃至4に示す実施例を組み合わせた実施例において、フック要素310が、リング107の近傍において、開口108を通って延び、リップ311を把持することも可能である。
【0036】
熱―水分交換フィルタ303は、可撓性/強い材料、例えば弾力性フォーム、である。さらにまた、熱―水分交換フィルタ303の寸法は、蓋309を、フック要素310が、蓋309の軸上及び末端の動きを止めるリップ311と係合するまで押圧するのに適した寸法である。
図1乃至3に示す熱―水分交換フィルタ103及び203と同様に、例えば、熱―水分交換フィルタ303は、熱―水分交換器および復帰スプリングとして作用し、軸方向の末端に蓋309を開位置に押圧する。
フック要素310と円形の蓋309は、その形状のため、熱―水分交換フィルタ303を適所にある状態に保つ。
熱―水分交換フィルタ303が同時にリターンスプリングとして作用することで、蓋309は、軽減されていた圧力の後、その開位置に弾性によって戻る。
【0037】
上記実施例と同様に、軸方向、末端方向の力が、バルブ部材を閉じるために適用されなければならないところ、図4の実施例に示すリブ306は、バルブ部材が不注意により閉じてしまうリスクを低減する。
蓋309はその初期位置において熱―水分交換フィルタ303と接触し閉じているので、熱―水分交換フィルタ303の容量は、呼吸保護装置において最大であり、そして、呼吸保護装置が開くと、即ち、蓋309がその外側の非作動位置においてあるときに、呼吸用空気は、直接熱―水分交換フィルタ303と接触して、開口を通過する。
【0038】
好ましくは、フック要素310は、蓋309周辺で互いに対向した位置に設けられ、これにより、蓋309を中心において、リブ306の末端の近傍と水平に維持する機能を改良できる。
【0039】
もう一つの実施例では、蓋309は、単一のフック要素310を備える。
これにより、蓋309を適正に保つ動作は、図4に示すフック要素310と、図1と2に示す少なくとも一つの突起110、即ち、開口308と協働する突起によって達成される。
【0040】
熱―水分交換フィルタ303は、図1〜3の実施例による熱―水分交換フィルタ103、203と同様熱―水分交換フィルタである。
熱―水分交換フィルタの材料は、流通通路の中に配置さる必要があるとともに、ランダムに配向された流通通路に対してオープン構造である必要がる。この材料は、リング107,可撓性カバー210又はバー307の方へ、蓋109、209、309をそれぞれ押すために、十分な弾性を有する材料である、紙、発泡プラスチック、異なる繊維でできている詰め物又はこれらの組み合わせで、構成されている。これは、水分を吸収している物質を含浸することもできる。さらにまた、材料の孔または割れ目がいかなる特別な方向性を有さない方が有利である。これにより、呼吸用空気は、意図した方向に屈折させるために、より多くの方向から上記材料を通過することができる。
【0041】
一実施例によれば、リブ106、206、306は、リング、例えば、リング107、207又はバー307に接続させないこともできる。その代わりに、リブ106、206、306は、蓋109、209、309を囲むために、その末端を内部に曲げてもよい。リブ206がリング207に接続しない場合、可撓性カバー210を直接リブ206に取り付けてもよい。
【0042】
一実施例において、呼吸保護装置のバルブ部材109、309または可撓性材料210は、呼吸保護装置の周囲に面する外表面において、使用中に押される部分に、中心ボス111、211を備える。中心ボス111、211は、呼吸保護装置で最高の閉鎖効果を得ることができるところに、使用者を誘導する。
本発明の実施例による呼吸保護装置は、公知の容器に挿入し、瘻孔に適用してもよい。
【0043】
上述の実施形態においては、喉頭切除術か気管開口術を受けた人の瘻孔において用いられる呼吸保護装置が記載されている。この呼吸保護装置は、少なくとも1つの流入口および少なくとも1つの流出口で構成されており、使用時に、空気の流れは、この人の周囲から、その流入口を介して流出口へ、そしてその人の気管へと流れる。
当業者に明らかであるように、特定的に開示されていなくとも、流入口および流出口は、既に開示された特定の流入口および流出口を単に分割することによって、流入口および流出口は増加された量に分割され得る。
【0044】
本発明の実施形態の要素および構成要素は、任意の適切な方法において物理的に、機能的に、および論理的に実施されてよい。実際には、その機能性は、単一のユニットで、複数のユニットで、または他の機能ユニットの一部として実施されてよい。よって、本発明は、単一のユニットにおいて実施されてよく、または、異なるユニット間において、物理的および機能的に分配されてよい。
【0045】
本発明は特定の実施形態を参照して上述されているが、本明細書において説明される特定の形態に限定されることを意図されてはいない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上述で特定されたもの以外の実施形態もまた、これらの添付された特許請求の範囲内で等しく可能である。
【0046】
特許請求の範囲内における用語「備える(含む)/備えている(含んでいる)(comprise/comprising)」は、他の要素または工程の存在を排除しない。
さらに、個々に挙げられてはいるが、複数の手段、要素、または方法工程は、例えば、単一のユニットまたはプロセッサによって実施されてよい。さらに、個々の特徴が異なる請求項において含まれてよいが、これらは、有利に組み合わせることも可能であってよく、異なる請求項において含まれることは、特徴の組み合わせが実行可能ではない、および/または有利ではないということを含意しない。さらに、単数の言及は複数を排除しない。
用語「1つの(a)」、「1つの(an)、」「第1の(first)」、および「第2の(second)」などは複数を除外しない。
特許請求の範囲における参照符号は、明瞭な例として単に提供されており、如何なる意味においても特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されてはならない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
瘻孔に嵌入される呼吸保護装置であって、
中央軸線、末端部、近端部、第1開口部(101、201、301)及び第2の開口部(102、202、302)を有し、
前記第2の開口部(102、202、302)が前記近端部に配置され、前記第1開口部(101、201、301)が、前記第2の開口部(102、202、302)と離れた位置であって、吸入において、前記第2の開口部(102、202、302)より上流に位置するように配置されたフィルタ収容部(100、200、300)と、
前記フィルタ収容部(100、200、300)に受容され、弾力性を有する熱―水分交換フィルタ(103、203、303)と、
前記第1開口部(101、201、301)を囲うバルブシート(105、205、305)と、
前記バルブシート(105、205、305)の円周方向に配置され、前記第1開口部(101、201、301)から離れる方向に軸方向で延び、前記第1開口部(101、201、301)から離れる方向に軸方向で延びる少なくとも1つのリブ(106、206、306)、及び中央軸線と直角をなす少なくとも一つの開口(108、208、308)を備えるレールと、
中央軸線に横平面に配列され、閉位置において、閉鎖して前記バルブシート(105、205、305)と係合するように調整され、前記レール内において、閉位置および開位置の間で往復運動するように配置されるバルブ部材(109、209、309)と、
軸方向の末端に前記バルブ部材(109、209、309)を開位置に押圧する復帰スプリングと、
を備え、
前記復帰スプリングは、前記熱―水分交換フィルタ(103、203)である呼吸保護装置。
【請求項2】
前記バルブ部材(109、209、309)は、前記レール(106、206)によって末端の運動から妨げられる請求項1に記載の呼吸保護装置。
【請求項3】
前記バルブ部材(109、209、309)は、前記バルブ部材(309)の周囲の端部に配置されたフック要素(310)により、末端の運度が妨げられ、
前記フック要素(310)は、前記フィルタ収容部(300)のリップ(311)の周囲を把持する請求項1又は2に記載の呼吸保護装置。
【請求項4】
前記レールの末端における開放端を有する溝によって、フック要素(310)は、前記レールの前記溝に嵌る請求項1又は2に記載の呼吸保護装置。
【請求項5】
前記レールの側壁は、前記開口(108、208、308)同士の間にリブ(106、206、306)を備える請求項1から4のいずれかに記載の呼吸保護装置。
【請求項6】
前記リブ(106)は、リング(107)と接続し、
前記バルブ部材(109)は、周囲に突起(110)を備え、
前記突起(110)は、前記開口(108)と係合し、前記バルブ部材(109)の末端部方向における軸方向の移動を止める請求項5に記載の呼吸保護装置。
【請求項7】
前記レールは、前記リブ(106)と接続するリング(107)を備え、
前記リング(107)の開口部は、前記バルブ部材(109)が通過することを許容しない請求項5に記載の呼吸保護装置。
【請求項8】
前記バルブ部材(209)は、可撓性材料(210)によって、前記レールの末端に取り付けられる請求項1に記載の呼吸保護装置。
【請求項9】
前記レールの側壁は、開口(208)同士の間にリブ(206)を備え、
前記リング(207)は、前記リブ(206)に接続され、
前記可撓性材料(210)は、前記リング(207)に取り付けられる請求項8に記載の呼吸保護装置。
【請求項10】
前記バルブ部材(209)は、周囲に突起が形成され、前記突起は、開口(208)をと係合し、前記バルブ部材(209)の末端部方向における軸方向の移動を止める請求項8に記載の呼吸保護装置。
【請求項11】
前記リブ(106)と接続するリング(107)を備え、
前記リング(107)の開口部は、前記バルブ部材(109)が通過することを許容しない請求項8に記載の呼吸保護装置。
【請求項12】
前記フィルタ収容部(100、200)は、前記第2の開口部(102、202)において、互いに非交差のアーム(104、204)を備え、
前記アーム(104、204)は、前記熱―水分交換フィルタ(103、203)のための停止具材を形成する請求項1から11のいずれかに記載の呼吸保護装置。
【請求項13】
前記バルブ部材(109)または前記可撓性材料(210)は、前記呼吸保護装置の周囲に面する外表面において、使用中に押される部分に、中心ボスを備える請求項1から12のいずれかに記載の呼吸保護装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510303(P2012−510303A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537987(P2011−537987)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065961
【国際公開番号】WO2010/060983
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(500180662)アトス メディカル アクティエボラーグ (5)