説明

呼吸回路システム

呼吸ガス供給システムから患者インターフェースへ呼吸ガスを供給するための呼吸回路システムである。該システムは、ホースと、該ホースに使用されるホース加熱システムとを有する被加熱導管と、複数のアダプタ要素とを備える。ホース加熱システムは、第1の所定電圧範囲内で動作するように設けられる。制御装置は、呼吸回路に使用され、第2の所定電圧範囲内で電圧を供給する。各アダプタ要素は、制御装置により供給される電圧を第2の範囲から第1の範囲へ調節するように設けられた少なくとも1つの電気部品を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸可能ガス(breathable gas)を呼吸可能ガス供給システムから患者インターフェース(patient interface)へ供給するための呼吸システム(respiratory system)において使用するための呼吸回路システムに関し、該呼吸回路システムは、被加熱導管を備え、該被加熱導管は、前記ガス供給システムと患者インターフェースとを接続可能なホースと、該ホースに使用され、該ホースを通過する呼吸可能ガスを加熱するために設けられたホース加熱システムと、を有し、該ホース加熱システムは、第1の所定電圧範囲内で動作するために設けられている。
【背景技術】
【0002】
本願で使用されるような「呼吸ガス供給システム」という用語は、ある量の呼吸ガスを患者に供給することができるシステムを意味し、次のものに限定されるものでないが、加湿器システムを有する呼吸ガス供給システム、単体の加湿器、加湿器を一体的に有するか又は有さない流れ発生器(すなわち、CPAP器、nPAP器(nPAP-machine)、人工呼吸器)、噴霧器、加湿器を一体的に有するか又は有さない酸素発生器または酸素濃縮器等を含む。
【0003】
呼吸ガス供給システムでは、患者インターフェースに呼吸ガスが送り込まれる。ドライノーズ、のどの渇きのような副作用が患者に及ぶことを避けるために、しばしば、空気が患者に送り込まれる前に加熱され、加湿される。従来の加湿器システムは、水を高温に温めることと、利用できる湿気を取り込んで、得られた水蒸気と空気の混合物を加湿器の温度に釣り合わせるために温水の上または中に吸気流(inspired air flow)を通すこととで構成される。呼吸ガスはホースを通して患者に導かれる。ホース内の凝縮(condensation)のリスクを低減するために、ホースは通常、ホースの長さに従った熱損失に対抗して呼吸ガスを加熱するように設けられたホース加熱要素を有する。
【0004】
現在、呼吸器系における呼吸ガスの加湿中において、一種類の加湿器のみと共に動作するように該加湿器用に設計された被加熱導管が使用される。一般に、従来の被加熱導管は、1つの特定の呼吸ガス供給システムのみと組み合わせて使用されるように設計される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、あらゆるタイプの呼吸ガス供給システムと組み合わせて使用され得る1つの汎用タイプの被加熱導管、すなわち、関連する加熱要素を備えたホースを提供することである。
【0006】
加えて、本発明の呼吸回路システムは、複数のアダプタ要素を備える。各アダプタ要素は、ホース加熱システムの電気コネクタに相補的な第1の電気コネクタと、呼吸ガス供給システムに使用される制御装置の出力コネクタに相補的な第2の電気コネクタとを有する。制御装置は、第2の所定電圧範囲内でホース加熱要素に電圧を供給するように設けられている。各アダプタ要素は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に少なくとも1つの電気部品を更に有し、該電気部品は、制御装置により供給される電圧を第2の範囲から第1の範囲へ調節するための所定の電気特性を有する。
【0007】
呼吸ガス供給システムに使用される制御装置の第2の所定電圧範囲は、異なる用途に使用されるシステムによって異なってもよく、また、同じ用途に使用されるが異なる製造業者によって製造されたシステムによって異なってもよい。実際、呼吸ガス供給システムの各制御装置は、システム特有の第2の所定電圧範囲内で動作する。一例として、これに限定されるものでないが、加湿器システムに使用される制御装置は、噴霧器システムに使用される制御装置と比較して異なる電圧で若しくは異なる電圧範囲内で動作してもよく、或いは、第1の製造業者の加湿器システムに使用される制御装置は、別の第2の製造業者の加湿器システムに使用される制御装置と比較して異なる電圧で若しくは異なる電圧範囲内で動作してもよい。
【0008】
従来の呼吸ガス供給システムにおいて、ホースと該ホースに関連づけられたホース加熱システムとは、個別の呼吸ガス供給システムの第2の所定電圧範囲内で動作するように個別に設計される。加えて、被加熱導管は、一定のホースの電気抵抗を有し、この電気抵抗と、関連づけられた呼吸ガス供給システムの第2の所定電圧範囲とが組み合わせられることで、被加熱導管のホースを通る呼吸ガスに所要の加熱エネルギーを送り込むことができる。被加熱導管が接続される呼吸ガス供給システムの種類に関係なく、そして呼吸ガス供給システムの第2の所定電圧範囲の値に関係なく、同じ量の加熱エネルギーを呼吸ガスに送り込むことができるようにするために、被加熱導管が接続される呼吸ガス供給システムを変更するときは、被加熱導管を、ホースの電気抵抗が異なる別の被加熱導管に取り換える必要がある。
【0009】
この問題を解決するために、本発明に係る呼吸回路システムは、複数のアダプタ要素を備える。アダプタ要素は、呼吸ガス供給システムに使用される制御装置と被加熱導管との間に設けられる。アダプタ要素は、制御装置により被加熱導管に供給される電圧を第2の所定電圧範囲から第1の所定電圧範囲へ調節することができる所定の電気特性を備えた電気部品を有する。第1の所定電圧範囲は、ホースの電気抵抗と組み合わされて、ホースを通る呼吸ガスに送り込まれる加熱エネルギーを決定する。呼吸ガス供給システムを変更するとき、そして、これにより第2の所定電圧範囲を変更するとき、ホースと該ホースに関連するホース加熱システムとは変更される必要がない。ホース加熱システムに供給される電圧を第2の所定電圧範囲から第1の所定電圧範囲へ変化させるように、アダプタ要素を別のアダプタ要素と取り換えるだけで十分である。
【0010】
したがって、本発明に係る呼吸回路システムは、1つの標準の被加熱導管と、関連するホース加熱要素を備えたホースとを、任意の特定の呼吸ガス供給システムにシステムをカスタマイズすることができる複数のアダプタ要素と組み合わせて使用することができる。結果として、被加熱ホースは、大量に特注生産することができ、より安価に製造することができる。
【0011】
アダプタ要素の少なくとも1つの電気部品は、当業者によって任意の好適な形に具体化することができる。好ましくは、少なくとも1つの電気部品は、一定または可変の電気抵抗を有する。一定の電気抵抗を使用すると、誤用のリスク、そして第2の所定電圧範囲と第1の所定電圧範囲との間の誤った調節のリスクを低減する利点がある。可変の電気抵抗を使用すると、1つの別個のアダプタ要素を、異なる固有の第2の電圧範囲で、すなわちいくつかの呼吸回路システムと組み合わせて使用することができる。
【0012】
任意的に、呼吸回路システムは、関連づけられた検知要素および/または通信要素を備えてもよい。これらのセンサは、例えば導管内に組み込まれてもよい。
【0013】
呼吸ガス供給システムに使用される制御装置は、呼吸ガス供給システム内に組み込まれてもよいし、独立した制御装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付図面において更に明らかに説明される。
【図1】本発明に係る呼吸回路システムの好ましい実施形態の電気図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、一定の電気抵抗Rを有する非加熱導管を備えた呼吸回路システムを示す。被加熱導管は、ホースと、該ホースに使用されるホース加熱システムとを備え、該ホース加熱システムは、前記ホースを通る呼吸ガスを加熱するように設けられている。図1に示される呼吸回路システムは、可変の電気抵抗RADを有するアダプタ要素を更に備える。アダプタ要素と被加熱導管とは直列に接続されている。呼吸回路システムは、加湿器システムに使用される制御装置に接続されており、該制御装置は所定の第2の電圧VHUMで動作する。アダプタ要素の電気抵抗RADを変化させることにより、被加熱導管を流れる電流Iを調節することができる。被加熱導管を流れる電流Iは、導管の電気抵抗Rと共に、呼吸ガスに供給される加熱エネルギーを決定する。このことは次の式から理解することができる。
【数1】

【0016】
したがって、アダプタ要素の電気抵抗RADは、被加熱導管へ加湿器により供給される電圧を、第2の所定電圧範囲から第1の所定電圧範囲へ、すなわち電圧VHUMから電圧Vへ調節するために選択され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸ガス供給システムから患者インターフェースへ呼吸ガスを供給するために呼吸器系において使用される呼吸回路システムであって、
該呼吸回路システムは被加熱導管を備え、
該被加熱導管は、
呼吸ガス供給システムと患者インターフェースとの間で接続可能なホースと、
該ホースに使用されるホース加熱システムであって、前記ホースを通って移動する呼吸ガスを加熱するために設けられたホース加熱システムと、を備え、
該ホース加熱システムは、第1の所定電圧範囲内で動作するように設けられ、
前記呼吸回路システムは複数のアダプタ要素を更に備え、
各アダプタ要素は、前記ホース加熱システムの電気コネクタに相補的な第1の電気コネクタと、前記呼吸ガス供給システムに使用される制御装置の出力コネクタに相補的な第2の電気コネクタと、を備え、
前記制御装置は、第2の所定電圧範囲内で電圧を供給するように設けられ、
各アダプタ要素は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に少なくとも1つの電気部品を更に備え、
該電気部品は、前記制御装置により供給される電圧を第2の電圧範囲から第1の電圧範囲へ調節するための所定の電気特性を有することを特徴とする呼吸回路システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気部品は電気抵抗を有することを特徴とする請求項1に記載の呼吸回路システム。
【請求項3】
前記電気抵抗は一定の抵抗値であることを特徴とする請求項2に記載の呼吸回路システム。
【請求項4】
前記電気抵抗は可変の抵抗値であることを特徴とする請求項2に記載の呼吸回路システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記呼吸ガス供給システム内に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の呼吸回路システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記呼吸ガス供給システムに使用される独立型の制御装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の呼吸回路システム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−525882(P2012−525882A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509033(P2012−509033)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056126
【国際公開番号】WO2010/128089
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511268443)
【氏名又は名称原語表記】PLASTIFLEX GROUP