説明

和室用の床昇降装置

【課題】 茶室等の小規模建物向きに、簡単な仕組みで安価に、且つ安全に利用でき、しかも必要なときだけ部屋の畳面に椅子式に座ることができる使い勝手の良い、和室用の床昇降装置を提供する。
【解決手段】 人が立ち姿勢で乗る昇降動作部1と、この昇降動作部1の上面1aを、常時は部屋の畳面3と同じ高さに配置すると共に、下降動作時に利用者4の膝下の高さだけ畳面3から下降させて配置する動作機構2とで形成する。昇降動作部1は、上面1aを畳で形成する。動作機構2を、装置本体8の四隅に回転自在に立てたボールネジ5と、このボールネジ5にモータ7の回転力を伝達するチェーン6とを備えて形成する。各ボールネジ5に昇降動作部1の四隅を夫々螺合させる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、床昇降装置に関し、更に詳しくは建物内で例えば炉や据え付けテーブルの傍に設け、部屋の畳面に椅子式に座ることが可能になるよう形成した和室用の床昇降装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の床昇降装置としては、例えば劇場のステージに設けられ、人を乗せる昇降動作部が、ステージと地階との間で昇降動作するよう形成されたものがある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところで例えば本来、正座して客をもてなすことが礼儀とされる茶室では、炉が部屋の畳面と同じ高さにきられているため、膝を故障して正座ができないと、茶を点てることができないのが通例である。
【0004】
而してこの種の建物において、炉の傍を単に堀り炬燵状に形成し、椅子式に座って茶を点てることができるよう構成するのでは、膝に故障がない人が茶を点てる場合も、椅子式の座り方を常に強いることになり、又この場合は部屋の畳面に足を垂らす凹部が常に露出するため、例えば茶室の場合はその正式な雰囲気を損なうことになる、という問題がある。
【0005】
又この種の建物は、個人的家庭的な使用に供されるものであるから、昇降の仕組みを簡単化して安価に提供でき、簡便、手軽に利用できるよう、構成されているのが望ましい。
【0006】
しかるに従来品は、上記のように設備が大掛かりであったから、コストが高くつき、又茶室のように個人的な使用に供される小規模建物で、椅子式の座り形を行えるものではなかった。
【0007】
本考案は、このような従来の実状に鑑み、提案されたものである。
従って本考案の課題は、茶室等の小規模建物向きに、簡単な仕組みで安価に、且つ安全に利用でき、しかも必要なときだけ部屋の畳面に椅子式に座ることができるよう形成した使い勝手の良い、和室用の床昇降装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記の課題を解決するために、次のような技術的手段を採る。
【0009】
即ち本考案は、図1に示されるように、人が立ち姿勢で乗る昇降動作部1と、この昇降動作部1の上面1aを、常時は部屋の畳面3と同じ高さに配置すると共に、下降動作時に利用者4の膝下の高さだけ畳面3から下降させて配置する動作機構2とで形成され、上記の昇降動作部1は上面1aが畳で形成され、上記の動作機構2が、装置本体8の四隅に回転自在に立てられたボールネジ5と、このボールネジ5にモータ7の回転力を伝達するチェーン6とを備えて形成され、上記の各ボールネジ5に上記昇降動作部1の四隅が夫々螺合されたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
ここで昇降動作部1の上面1aを利用者4の膝下の高さだけ部屋の畳面3から下降させて配置する仕方としては、例えば昇降動作部1を検出するリミットスイッチ、光スイッチ等のセンサを、利用者4の膝下の高さに応じて予め適宜個所に配設し、上記センサからの検出信号でモータ7を停止させる方法や、モータ7の駆動時間を予め設定する方法がある。
【0011】
又請求項1記載の本考案の場合は、モータ7を制御するためのワイヤレス発信器14(図5参照)を備えて形成されるのが好ましい(請求項2)。
【0012】
この場合は、モータ7を電波や赤外線で遠隔制御でき、制御スイッチの壁面等への取り付けを省略できるから、より使い勝手が良くなる、という利点がある。
【0013】
又本考案装置は、昇降動作部1の下方の、装置本体8の内部空間8c(図8等参照)が、部屋の床下の空間Sと連通状に形成されるのが好ましい(請求項3)

【0014】
この場合は、昇降動作部1の下降時に、装置本体8の内部空間8cの空気を部屋の床下に逃すことができるから、これによれば昇降動作を円滑化できるだけではなく、昇降動作部1の畳が湿気るのを防止できる。
【0015】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の好適な一実施形態を添付図面に従って説明する。
【0016】
図1等において、1は、人が立ち姿勢で乗る昇降動作部である。この昇降動作部1は、上面1aが畳で形成され、この実施形態では平面視で縦350(mm)
、横450(mm)の長方形状に形成されている。
【0017】
2は、昇降動作部1の上面1aを、常時は例えば茶室等の部屋の畳面3と同じ高さに配置すると共に、下降動作時に利用者4の膝下の高さだけ畳面3から下降させて配置する動作機構である。この動作機構2は、ボールネジ5と、このボールネジ5にモータ7の回転力を伝達するチェーン6とを備えて形成されている。
ボールネジ5は、装置本体8の四隅に回転自在に立てられている。
【0018】
上記のチェーン6は、図4に示されるように、この実施形態ではモータ7の回転軸7aから装置本体8の一方の側のボールネジ5に架け渡された短いチェーン6aと、又一方の側のボールネジ5から他方の側のボールネジ5に架け渡された長いチェーン6bとで形成されている。
又上記のモータ7は、可逆回転自在に形成され、この実施形態では、装置本体8の片側に、回転軸7aを下向きにして取り付けられている。
【0019】
9は、昇降動作部1の四隅に形成された突き出し部である。昇降動作部1は、この突き出し部9を介してボールネジ5に螺合されている。上記装置本体8の対向する側板8aには、ボールネジ5に対応する位置に、上記の突き出し部9を上下方向に案内するスリット8bが縦方向に形成されている。
【0020】
又本考案装置は、図8等に示されるように、昇降動作部1の下方の、装置本体8の内部空間8cが、部屋の床下空間Sと連通状に形成されている。この実施形態の場合は、具体的には装置本体8の下部に開口部8dが形成され、この開口部8dが、受け皿状容器10Aと、底に通気孔10bを有する箱型容器10Bとの間の隙間10aを介して床下空間Sと連通するよう形成されている。なおこの実施形態では、受け皿状容器10Aと箱型容器10Bとを介して装置本体8が据え付けられているが、本考案装置の据え付け形態はこれに限られず、その他例えば箱型容器10Bを省略して受け皿状容器10Aに設置するのでも良い。
【0021】
又図1において、LS1は、昇降動作部1の上昇端を検出するリミットスイッチである。このリミットスイッチLS1は、常時はその動作片がスイッチ11の接点に触れた状態にあり、上記の突き出し部9によって接点が離されると、その検出信号を制御部12に出力するよう構成されている。
【0022】
LS2は、昇降動作部1の下降端を検出するリミットスイッチである。このリミットスイッチLS2は、利用者4の膝下の高さに合わせて予め上記のリミットスイッチLS1の下方の適宜位置に設けられている。そしてこのリミットスイッチLS2は、常時は動作片がスイッチ13の接点に触れ、上記突き出し部9の下降動作で接点が離されると、検出信号を制御部12に出力するよう構成されている。
【0023】
14(図5参照)は、モータ7を制御するためのワイヤレス発信器である。このワイヤレス発信器14は、昇降動作部1を上昇させるためのボタン14aと、下降させるためのボタン14b、及び電源ボタン14c等を備え、この実施形態では電波を発信するよう構成されている。なお制御部12は、ワイヤレス発信器14から発信された電波を受信する受信器や、上記のリミットスイッチLS1、LS2からの信号を受けてモータ7に駆動信号を出力する制御回路等を備えて形成され、この実施形態では茶室の側壁に取り付けられている。
【0024】
なお15(図7参照)は、茶室に設けられた炉である。この実施形態の本考案装置は、この炉15の傍に配設されている。
【0025】
次に本考案装置の作用を説明する。
先ず本考案装置を使用するときは、昇降動作部1に乗り、ワイヤレス発信器14の下降ボタン14bを押す。すると、モータ7が駆動し、昇降動作部1がボールネジ5に沿って下降する。
【0026】
具体的には、図4に示されるように、例えばモータ7の回転軸7aが図面上、右回転すると、短いチェーン6aが夫々同方向に回転し、一方の側のボールネジ5を、夫々同方向に回転させる。又長いチェーン6bを介して一方の側のボールネジ5と連動するよう形成された他方の側のボールネジ5が、同方向に回転する。この結果各ボールネジ5に螺合した昇降動作部1が、ボールネジ5に沿って下降する。
【0027】
そして昇降動作部1の突き出し部9が、リミットスイッチLS2に触れると、このリミットスイッチLS2から信号が制御部12に出力され、この信号を制御部12が受けると、モータ7に停止信号が送られる。その結果モータ7が停止し、昇降動作部1が利用者4の膝下の高さに配置される。従って利用者4は、この状態で部屋の畳面3に腰掛け、例えば茶を点てる(図8参照)。
【0028】
又昇降動作部1を上昇させる場合は、ワイヤレス発信器14の上昇ボタン14aを押す。するとモータ7が逆回転し、ボールネジ5を左回転させる。その結果昇降動作部1が、上昇する。そして突き出し部9が、リミットスイッチLS1の接点を切ると、このリミットスイッチLS1から信号が出力し、この信号を受けて制御部12からモータ7に停止信号が送られ、モータ7が停止する。この場合昇降動作部1は、ボールネジ5と螺合しているから、上面1aが部屋の畳面3と面一の状態で保持され、落下が防止される。
【0029】
【考案の効果】
以上説明したように本考案の場合は、昇降動作部に乗ると、膝の高さだけ下降し、部屋の畳面に椅子式に座ることができる。
従ってこれを使用すれば、膝の悪い人でも例えば茶室で茶を点てることができ、又普段は部屋の畳面と昇降動作部の上面が同じ高さになるよう形成されているから、正座姿勢で茶を点てることができるだけではなく、茶室の正式な雰囲気を損なうこともない、という実用上優れた効果を奏する。
【0030】
又本考案は、動作機構が、装置本体の四隅に回転自在に立てられたボールネジと、このボールネジにモータの回転力を伝達するチェーンとで形成され、上記昇降動作部の四隅が上記のボールネジに螺合されたものである。
【0031】
従って本考案の場合は、安定した姿勢で昇降動作できるだけではなく、上昇端で停止した昇降動作部はボールネジと螺合した状態にあるから、例えば落下防止用のストッパー機構を設けることなく、その停止姿勢を保持できる。その結果これによれば、構造の簡単化、簡素化を図ることができ、その分、安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案装置の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同上装置の正面図である。
【図3】同上装置の背面図である。
【図4】同上装置の動作機構を説明するための要部断面図である。
【図5】同上装置の要部構成図である。
【図6】同上装置の設置状態を説明するための側面図である。
【図7】同上装置の配設された茶室の要部斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線における使用状態時の断面図である。
【図9】図7のIX−IX線における断面図である。
【符号の説明】
1 昇降動作部
1a 上面
2 動作機構
3 部屋の畳面
4 利用者
5 ボールネジ
6 チェーン
7 モータ
8 装置本体

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 人が立ち姿勢で乗る昇降動作部と、この昇降動作部の上面を、常時は部屋の畳面と同じ高さに配置すると共に、下降動作時に利用者の膝下の高さだけ畳面から下降させて配置する動作機構とで形成され、上記の昇降動作部は上面が畳で形成され、上記の動作機構が、装置本体の四隅に回転自在に立てられたボールネジと、このボールネジにモータの回転力を伝達するチェーンとを備えて形成され、上記の各ボールネジに上記昇降動作部の四隅が夫々螺合されたことを特徴とする和室用の床昇降装置。
【請求項2】 モータを制御するためのワイヤレス発信器を備えて形成されたことを特徴とする請求項1記載の和室用の床昇降装置。
【請求項3】 昇降動作部の下方の装置本体の内部空間が、部屋の床下の空間と連通状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の和室用の床昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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