説明

和式便器用椅子

【課題】本発明は、安定性が高く、製造コストを低く抑えることができる和式便器用椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】和式便器の上に据え付けられる和式便器用椅子2であって、座面部3と周胴部4とからなり、該周胴部4の左右側下縁には該和式便器用椅子2を該和式便器の上に横向きに据え付けたときに該和式便器の左右側突縁を収容する切欠き部5が設けられており、該周胴部4の後部下縁には該和式便器の前覆い部を収容する収容凹部7が設けられている和式便器用椅子2を提供する。この場合、該切欠き部5には切欠きカバー6が着脱可能に取り付けられており、該収容凹部7には凹部カバー8が着脱可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和式便器の上に据え付けられる和式便器用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、和式便器の上に据え付けられる和式便器用の椅子として、和風便器を覆って床に固定される固定部本体と、該固定部本体に対して任意の方向に取付け可能に固着された筒状体の回転部本体とを有する和風便器用洋風腰掛が提供されている。
上記の和風便器用洋風腰掛では、固定部本体に対して回転部本体を回動させて、狭いトイレの部屋に合わせて任意に向きを変更することができる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公昭62−36480号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、固定部本体に対して回転部本体を回転させた場合、特に90度回転させた場合に、和風便器用洋風腰掛の安定性が低下するという問題があった。また上記従来の構成では、固定部本体と回転部本体とがそれぞれ別体とされており、かつ、それら相互の取付け部分の構造が複雑であるため、製造コストが高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、和式便器1の上に据え付けられる和式便器用椅子2であって、座面部3と周胴部4とからなり、該周胴部4の左右側下縁には該和式便器用椅子2を該和式便器1の上に横向きに据え付けたときに該和式便器1の左右側突縁28を収容する切欠き部5が設けられており、該周胴部4の後部下縁には該和式便器1の前覆い部27を収容する収容凹部7が設けられている和式便器用椅子2を提供するものである。
該切欠き部5には切欠きカバー6が着脱可能に取り付けられており、該収容凹部7には凹部カバー8が着脱可能に取り付けられていることが望ましい。
また、該座面部3には中央孔9が設けられており、該中央孔9からはガイド筒11が垂設されており、該ガイド筒11の下端開口部10は略四角形状とされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の和式便器用椅子2では、該和式便器用椅子2を90度回転させて使用した場合、すなわち、該和式便器用椅子2を和式便器1の上に横向きに据え付けた場合であっても、周胴部4の左右側下縁に設けられた切欠き部5が該和式便器1の左右側突縁28に嵌合するので、該和式便器用椅子2の安定性が高い。また、本発明の和式便器用椅子2は一体品であり、構造がシンプルであるため、製造コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図8に示す一実施例によって説明する。
図1〜図3に示すように、和式便器1の上に据え付けられる和式便器用椅子2は、座面部3と周胴部4とを有している。該周胴部4の左右側下縁には略四角形状の切欠き部5が四個設けられており、該切欠き部5には該切欠き部5の形状に対応した略四角形状の切欠きカバー6がそれぞれ上下摺動可能かつ着脱可能に取り付けられている。
また、該周胴部4の後端下縁には略半円形状の収容凹部7が設けられており、該収容凹部7には該収容凹部7の形状に対応した略半円形状の凹部カバー8が上下摺動可能かつ着脱可能に取り付けられている。
【0008】
一方、該座面部3の中央には中央孔9が設けられており、該中央孔9からは略四角形状の下端開口部10を有するガイド筒11が垂設されている。本実施例では、該ガイド筒11の下端開口部10の幅(対辺間寸法)は和式便器1の幅(左右側突縁28の内寸)よりも小さく設定されており、排泄物等の汚物が和式便器1の外側に飛散するのを防止することができるようにされている。
また、該座面部3の上面後部にはヒンジ部12が設けられており、該ヒンジ部12を介して便座13と便蓋14が跳ね上げ可能に蝶着されている。なお、該ヒンジ部12の内部にはオイルダンパー(図示せず)が設けられている。
更に、該座面部3の上面後縁には当接凸部15が設けられており、便蓋14を跳ね上げた場合に該便蓋14の背面(上面)が該当接凸部15に当接することにより、該跳ね上げた便蓋14がそれ以上後側に倒れるのを防止している。
【0009】
本実施例では、該周胴部4の左右前側部分には足引き凹部16が設けられており、該足引き凹部16によって使用者が立ち上がる際に足を引くためのスペースを確保されている。
また、該周胴部4の下部の四隅にはアンカーボルト孔17が設けられており、該アンカーボルト孔17を介してアンカーボルト(図示せず)をトイレの床面等に打ち込むことにより、該和式便器用椅子2を安定に固定することができる。
更に、該周胴部4の前側上縁部には手掛り凹部18が設けられており、使用者は該手掛り凹部18から手を差し入れて該便蓋14を跳ね上げる際の手掛りとすることができる。
また更に、該周胴部4の下面の所定箇所にはゴム製の滑り止め部材(図示せず)が取り付けられている。
【0010】
図4に示すように、該周胴部4の切欠き部5には係止板19が設けられており、該係止板19の中央部には係止孔20が設けられている。一方、該切欠きカバー6の裏面の上縁中央部からは係止杆21が垂設されており、該係止杆21の下端部には係止爪22が設けられている。
本実施例では、該切欠きカバー6の係止杆21を該切欠き部5の係止板19の係止孔20内に挿通して、該切欠きカバー6を該切欠き部5に上側から摺動させて取り付けるようにされている。
そして、該切欠き部5に該切欠きカバー6を取り付けた状態では、該切欠きカバー6は上下摺動可能かつ着脱可能とされており、該切欠きカバー6が過度に上方に摺動しようとした場合には、該切欠きカバー6の係止杆21の係止爪22が該切欠き部5の係止板19の係止孔20の周縁に係止して、該切欠きカバー6が該切欠き部5から外れることが防止されている。
【0011】
図5に示すように、該周胴部4の収容凹部7の左右両側下縁部には凸段部23が設けられており、該凸段部23の内側面には嵌合溝24が凹設されている。一方、該凹部カバー8の左右両側下縁部には凹段部25が設けられており、該凹段部25の外側面には嵌合凸条26が凸設されている。
本実施例では、該凹部カバー8の嵌合凸条26を該収容凹部7の嵌合溝24に嵌合させて、該凹部カバー8を該収容凹部7に上側から摺動させて取り付けるようにされている。該収容凹部7に該凹部カバー8を取り付けたとき、該凹部カバー8の凹段部25と該収容凹部7の凸段部23とは当接した状態とされている(図2参照)。
そして、該収容凹部7に該凹部カバー8を取り付けた状態では、該凹部カバー8は上下摺動可能かつ着脱可能とされている。
【0012】
図6に示すように、上記の和式便器用椅子2を和式便器1の向きに沿って使用する場合には、周胴部4の切欠き部5に切欠きカバー6を取り付けるとともに、周胴部4の収容凹部7の凹部カバー8を取り外し、該和式便器1の前覆い部27を該収容凹部7に嵌合して収容する。
このように該和式便器用椅子2を和式便器1に据え付けることにより、使用者は該和式便器用椅子2に腰掛けて、和式便器1を洋式便器のように使用することができる。
【0013】
図7に示すように、上記の和式便器用椅子2を和式便器1の上に横向きに据え付ける場合には、周胴部4の収容凹部7に凹部カバー8を取り付け、該和式便器用椅子2を90度回転させて和式便器1の上に据え付ける。このとき、図8に示すように、該切欠きカバー6は該和式便器1の左右側突縁28に下側から押されて自然に上方に摺動し、該和式便器1の左右側突縁28は該周胴部4の切欠き部5に嵌合して収容される。
このように該和式便器用椅子2を90度回転させて和式便器1に据え付けることにより、トイレの部屋の構造や広さ等に制約がある場合であっても、使用者は該和式便器用椅子2に腰掛けて、和式便器1を洋式便器のように使用することができる。
この場合、該和式便器用椅子2の向きを変える作業は、該和式便器用椅子2を持ち上げて90度回転させて再び据え付ければよいため、大きな労力を要することもなく容易である。
【0014】
上記の和式便器用椅子2では、該和式便器用椅子2を90度回転させて使用した場合、すなわち、該和式便器用椅子2を和式便器1の上に横向きに据え付けた場合であっても、周胴部4の左右側下縁に設けられた切欠き部5が該和式便器1の左右側突縁28に嵌合するので、該和式便器用椅子2の安定性が高い。
また、上記の和式便器用椅子2は一体品であり、構造がシンプルであるため、製造コストを低く抑えることができる。
【0015】
該切欠き部5には切欠きカバー6が着脱可能に取り付けられているので、該和式便器用椅子2を和式便器1の向きに沿って使用する場合に、該切欠き部5を該切欠きカバー6で覆うことによって、該切欠き部5から臭気が外部へ漏れるのを防止することができるとともに、該和式便器用椅子2の美観を損なうことがない。
また、該収容凹部7には凹部カバー8が着脱可能に取り付けられているので、該和式便器用椅子2を90度回転させて使用した場合、すなわち、該和式便器用椅子2を和式便器1の上に横向きに据え付けた場合に、該収容凹部7を該凹部カバー8で覆うことによって、該収容凹部7から臭気が外部へ漏れるのを防止することができるとともに、該和式便器用椅子2の美観を損なうことがない。
【0016】
更に、該ガイド筒11の下端開口部10が略四角形状とされており、該ガイド筒11の下端開口部10の幅(対辺間寸法)が和式便器1の幅(左右側突縁28の内寸)よりも小さく設定されているいるので、和式便器用椅子2は横向きに使用する場合でも、該ガイド筒11の下端開口部10が和式便器1の左右側突縁28と干渉することがない(図6および図7参照)。
なお、該ガイド筒の下端開口部10の形状は円形とされていてもよいが、大きな開口面積を確保して、汚物の付着によるガイド筒10汚れを少なくすることができるので、該ガイド筒の下端開口部10の形状は略四角形状のほうが好ましい。
【0017】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0018】
例えば、本実施例以外、図9に示すように、該周胴部4の左右側下縁には略四角形状の切欠き部5が四個設けられており、該切欠き部5には該切欠き部5の形状に対応した略四角形状の切欠きカバー6がそれぞれ回動可能かつ着脱可能に取り付けられていてもよい。
この場合、該切欠きカバー6の左右両側上縁部には回転軸29が外側に向けて差し出されて設けられており、また、該周胴部4の切欠き部5の左右両側下縁部には当接片30が内側に向けて差し出されて設けられている。
【0019】
また、本実施例以外、図10に示すように、該周胴部4の左右側下縁には略半円形状の切欠き部5が四個設けられており、該切欠き部5には該切欠き部5の形状に対応した略半円形状の切欠きカバー6がそれぞれ着脱可能に取り付けられていてもよい。
この場合、該切欠きカバー6の周縁部には当接段部31が設けられており、該切欠きカバー6の左右両端部からは係止片32が設けられており、該係止片32の先端には係止爪33が設けられている。一方、該周胴部4の切欠き部5の周縁部には当接段部34が設けられており、該周胴部4の当接段部34の一部には係止切欠き部35が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、安定性が高く、製造コストを低く抑えることができる和式便器用椅子として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】和式便器用椅子の斜視図である。
【図2】和式便器用椅子の後側からの斜視図である。
【図3】和式便器用椅子の分解斜視図である。
【図4】切欠き部および切欠きカバーの分解斜視図である。
【図5】収容凹部および凹部カバーの分解斜視図である。
【図6】和式便器用椅子を和式便器の向きに沿って使用した状態を示す説明平面図である。
【図7】和式便器用椅子を和式便器の上に横向きに据え付けた状態を示す説明平面図である。
【図8】切欠き部および切欠きカバーの説明斜視図である。
【図9】他の実施例の切欠き部および切欠きカバーの説明斜視図である。
【図10】更に他の実施例の切欠き部および切欠きカバーの説明斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 和式便器
2 和式便器用椅子
3 座面部
4 周胴部
5 切欠き部
6 切欠きカバー
7 収容凹部
8 凹部カバー
9 中央孔
10 下端開口部
11 ガイド筒
27 前覆い部
28 左右側突縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
和式便器の上に据え付けられる和式便器用椅子であって、座面部と周胴部とからなり、該周胴部の左右側下縁には該和式便器用椅子を該和式便器の上に横向きに据え付けたときに該和式便器の左右側突縁を収容する切欠き部が設けられており、該周胴部の後部下縁には該和式便器の前覆い部を収容する収容凹部が設けられていることを特徴とする和式便器用椅子。
【請求項2】
該切欠き部には切欠きカバーが着脱可能に取り付けられており、該収容凹部には凹部カバーが着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の和式便器用椅子。
【請求項3】
該座面部には中央孔が設けられており、該中央孔からはガイド筒が垂設されており、該ガイド筒の下端開口部は略四角形状とされている請求項1または請求項2に記載の和式便器用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−87721(P2006−87721A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277814(P2004−277814)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】