説明

咳を助ける装置及び方法

本発明は、振動圧力に基づいて咳を助ける装置11を提供する。振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含む。装置10は、制御ユニット11を有し、制御ユニット11は、外部環境から肺系統を分離するために閉じられるべきバルブ13を制御するために、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する第1の判定ユニット111と、肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定する第2の判定ユニット112と、咳を始めるために開かれるべきバルブ13を制御するために、振動呼気気流の開始を検出する検出ユニット113と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咳(咳嗽)を助ける装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、及び嚢胞性線維症(CF)のような医学的状態において、過剰な量の肺粘液と呼ばれる粘弾性物質が、患者の肺に作られることがある。過剰な肺粘液は、肺感染症、低下した肺機能、吸入された薬剤の低減される効果等の増大する機会により、深刻な問題を引き起こすことが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、過剰な肺粘液の除去は、患者の健康状態にとって非常に有益である。通常、患者は、特別なやり方で咳をする(指導される咳と呼ばれる)又は特別なパターンで呼吸する(ハフィングと呼ばれる)ように命じられるが、両方とも、所望の効果をもたらさないことが多い。
【0004】
今日、咳を助ける振動装置が、肺粘液のクリアランスを高めるために、嚢胞性繊維症及び慢性閉塞性肺疾患患者のために提供されている。振動は、肺の気道を振動させるために、口腔を通じて肺に送られる空気振動圧力でありうる。振動は更に、例えば高周波数胸部壁振動(High Frequency Chest Wall Oscillations、HFCWO)のように、胸郭及び筋肉を通じて肺に送られる機械的振動圧力でありうる。
【0005】
しかしながら、今日の振動装置に基づいて、振動が、肺の気道に生成されると、周期的振動気流が生成されるが、周期的振動気流の方向が、咳の最中、咳(呼気)気流の方向と異なることがありえ、これは、咳の邪魔をすることがある。
【0006】
本発明の目的は、咳を効果的に助ける(補助する、assisting)装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
振動圧力に基づいて咳を助ける装置は、制御ユニットを有する。振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を有する。制御ユニットは、外部環境から肺系統を分離するために閉じられるべきバルブを制御するために、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する第1の判定ユニットと、肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定する第2の判定ユニットと、咳を始めるために開かれるべきバルブを制御するために、振動呼気気流の開始を検出する検出ユニットと、を有する。
【0008】
利点は、本発明の装置がより効果的に咳を助けることが可能であることである。
【0009】
本発明は更に、咳を助ける装置に対応する方法を提供する。
【0010】
本発明は更に、咳を助ける方法において使用されるコンピュータプログラムを提供する。
【0011】
本発明の詳細な説明及び他の見地が以下に与えられる。
【0012】
本発明の上述の及び他の目的及び特徴は、添付の図面に関連して考察される以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による咳を助ける装置を概略的に示す図。
【図2】咳の呼気気流の速度と時間との間の相関を示す図。
【図3】振動気流の速度と時間との間の相関を示す波形を示す図。
【図4】本発明の一例による、肺系統に適用される機械的振動圧力及び口腔を通じて検出される空気圧を概略的に示す図。
【図5】本発明の別の例による、口腔を通じて肺系統に適用される空気振動圧力及び口腔を通じて検出される空気圧を概略的に示す図。
【図6】本発明の一実施形態による、咳を助ける方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面全体を通じて同様の部分を示すために、同一の参照数字が使用されている。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による、咳を助ける装置を概略的に示している。
【0016】
装置10は、振動圧力に基づいて咳を助けるために使用される。装置10は、制御ユニット11と、肺系統に周期的振動気流を生じさせるように肺系統を振動させる振動ユニット12と、制御ユニット11によって制御されるバルブ13と、を有し、前記バルブは、口腔を通じて肺系統を外部環境に接続するために開かれ、又は外部環境から肺系統を分離するために閉じられることができる。
【0017】
振動ユニット12は、制御ユニット11と一体化されることができ、装置10に含められることができる。例えば、振動ユニット12は、空気振動圧力ユニットである。振動ユニット12によって供給される空気振動圧力は、肺系統の気道を振動させるために、口腔を通じて肺系統に送られる。
【0018】
代替として、振動ユニット12は、装置10とは別個のものでありえ、制御ユニット11と一体化されない。例えば、振動ユニット12は、機械的圧力振動ユニットである。機械的振動圧力は、例えば高周波数胸部壁振動(HFCWO)のように、胸郭及び筋肉を通じて肺系統に送られる。
【0019】
振動ユニット12は、肺系統の気道を振動させるために、振動圧力(図1にOPとして示される)を生成し、振動圧力は、肺系統の気道に、周期的振動気流を生じさせる。周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含む。
【0020】
制御ユニット11は、外部環境から肺系統を分離するために閉じられるべきバルブを制御するために、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する第1の判定ユニット111と、肺系統の内部空気圧(図1にIAPとして示される)が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定する第2の判定ユニット112と、咳を始めるために開かれるべきバルブ13を制御するために、振動呼気気流(図1にOEAとして示される)の開始を検出する検出ユニット113と、を有する。
【0021】
バルブ13は、制御ユニット11による制御動作に基づいて開閉されるように、制御ユニット11と一体化されることができる。バルブ13が、第1の判定ユニット111からの閉信号(図1にCSとして示される)に基づいて閉じられるように制御される場合、肺系統は、外部環境から分離され、外部空気は、肺系統に吸入されることができない;バルブ13が、検出ユニット113から開信号(図1にOSとして示される)に基づいて開かれるように制御される場合、肺系統の気道の粘液及び空気(図1にA&Mとして示される)が、咳をして吐き出され/外部環境に吐出されることができ、外部空気(図1にAとして示される)が、肺系統の気道に吸入されることができる。
【0022】
肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいとき、肺系統は咳をする準備ができている;検出ユニット113が振動呼気気流の開始を検出する場合、バルブ13は、開かれるように制御される;バルブ13が開いている場合、周期的振動気流に従って振動呼気気流が始まると、肺系統が咳をし始める。予め規定された圧力閾値は、ユーザによって設定されることができ、予め規定された圧力閾値は、異なる人々の間でそれぞれ異なりうる。
【0023】
第1の判定ユニット111は、肺系統の吸気気流(図1にVIAとして示す)の速度が予め規定された速度閾値より低いとき、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定するように設計されうる。振動呼気気流は、少なくとも咳の開始時、咳の呼気気流と同期する。咳の開始時、咳は、肺系統の気道にピーク呼気気流を生じさせる。予め規定された速度閾値は、装置10の製造業者又はユーザによって設定されることができ、速度閾値は、ゼロでありえ、又はゼロ付近の他の値でありうる。
【0024】
吸気気流は、肺系統の吸気によって引き起こされる吸気気流のみを含むことができる。代替として、吸気気流は、肺系統の吸気によって引き起こされる吸気気流及び振動圧力によって引き起こされる振動吸気気流を含むことができる。
【0025】
第1の判定ユニット111は、肺系統の気道内の吸気空気の速度を収集するセンサを有することができ、第2の判定ユニットは、肺系統の内部空気圧を収集するセンサを有することができる。代替として、第1の判定ユニット111のセンサは、第2の判定ユニット112のセンサと一体化されることができる。
【0026】
図2は、咳の呼気気流の速度と時間との間の相関を示す図である。咳の開始時、例えば0.03秒のとき、呼気気流の速度は、約10l/s(リットル/秒)である。
【0027】
図3は、振動気流の速度と時間との間の相関を示す波形である。振動圧力は、肺系統の気道に周期的振動気流を生じさせ、振動気流の振動呼気気流及び振動気流の振動吸気気流は、周期的に変化する。最初の0.05秒に、振動圧力は、肺系統の気道に振動呼気気流(図3にOEAとして示される)を生じさせ、次の0.03秒に、振動圧力は、肺系統の気道に振動吸気気流(図3にOIAとして示される)を生じさせる。周期的振動気流の期間は、0.1秒、0.2秒、0.3秒等でありうる。
【0028】
本発明の一実施形態において:第1に、肺系統の内部空気圧は、予め規定された圧力閾値より大きく、肺系統は、咳をする準備ができている;第2に、周期的振動気流において、振動呼気気流が始まる;第3に、バルブ13が開かれる;第4に、肺系統は、咳をし始め、咳の開始時、例えば0.03秒に、肺系統の気道にピーク呼気気流を生じさせ、同期して、周期的振動気流において、振動呼気気流が始まる。
【0029】
図4は、肺系統に適用される機械的圧力振動(MOPとして示される)を概略的に示しており、本発明の一例により、肺系統の空気圧力(APとして示される)が口腔を通じて検出される。
【0030】
図5は、口腔を通じて肺系統に適用される空気振動圧力(AOPとして示される)を概略的に示しており、本発明の他の実施形態により、肺系統の空気圧力(AP)が口腔を通じて検出される。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態による咳を助ける方法を示すフローチャートである。方法は、振動圧力に基づいて咳を助けるように働き、振動圧力は、肺系統の気道に周期的振動気流を生じさせる。周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含む。方法は、以下のステップを含む。
【0032】
ステップ62は、外部環境から肺系統を分離するために閉じられるべきバルブ13を制御するために、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定するために実施される。判定ステップ62は、肺系統の吸気気流の速度が予め規定された速度閾値より低いとき、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定することが企図される。
【0033】
次のステップ63は、肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定するために実施される。
【0034】
次のステップ64は、咳を始めるために開かれるべきバルブ13を制御するために、振動呼気気流の開始を検出するために実施される。振動呼気気流は、少なくとも咳の開始時に、咳の呼気気流と同期する。
【0035】
方法は更に、肺系統の気道に周期的振動気流を生じさせるように肺系統を振動させるために振動圧力を生成するステップ61を更に含む。
【0036】
肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいとき、肺系統は、咳をする準備ができている;周期的振動気流において、振動呼気気流が始まる場合、バルブ13は開くように制御される;バルブ13が開いている場合、周期的振動気流に従って振動呼気気流が始まると、肺系統は咳をし始める。
【0037】
判定ステップ62は、肺系統の吸気気流の速度が予め規定された速度閾値より低いとき、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定することが企図される。振動呼気気流は、少なくとも咳の開始時、咳の呼気気流と同期する。
【0038】
吸気気流は、肺系統の吸気によって引き起こされる吸気気流のみを含むことができる。代替として、吸気気流は、肺系統の吸気によって引き起こされる吸気気流及び振動圧力によって引き起こされる振動吸気気流を含むことができる。
【0039】
振動圧力に基づいて咳を助ける方法において使用されるコンピュータプログラムであって、振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含み、方法は、
外部環境から肺系統を分離するために閉じられるべきバルブ(13)を制御するために、肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定するステップ62と、
肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定するステップ63と、
咳を始めるために開かれるべきバルブを制御するために、振動呼気気流の開始を検出するステップと、
を含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0040】
咳を助ける方法において使用される前記コンピュータプログラムにおいて、方法が更に、肺系統の気道に周期的振動気流を生じさせるように肺系統を振動させるために振動圧力を生成するステップを含む。
【0041】
振動圧力に対応する振動周波数は、10−20Hzのレンジ内にありうる。
【0042】
上述の実施形態は、本発明を説明するものであって制限するものではなく、当業者であれば、添付の請求項の範囲を逸脱することなく代替の実施形態を設計することが可能であることに注意すべきである。請求項において、括弧内に置かれた参照符号は、請求項を制限するものとして解釈されるべきでない。「含む、有する」という語は、請求項に又は説明に挙げられていない構成要素又はステップの存在を除外しない。構成要素に先行する「a」又は「an」という語は、このような構成要素の複数の存在を除外しない。本発明は、いくつかの互いに異なる構成要素を有するハードウェアのユニットによって及びプログラムされたコンピュータのユニットによって、実現されることができる。いくつかのユニットを列挙しているシステムの請求項において、これらのユニットのいくつかは、同じ一つのハードウェア又はソフトウェアのアイテムによって具体化されることができる。第1、第2及び第3等の語の使用は、いかなる順序も示さない。これらの語は、名前として解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動圧力に基づいて咳を助ける装置であって、前記振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、前記周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含み、前記装置は、制御ユニットを有し、前記制御ユニットは、
外部環境から前記肺系統を分離するために閉じられるべきバルブを制御するために、前記肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する第1の判定ユニットと、
前記肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定する第2の判定ユニットと、
咳を始めるために開かれるべき前記バルブを制御するために、前記振動呼気気流の開始を検出する検出ユニットと、
を有する装置。
【請求項2】
前記第1の判定ユニットは、前記肺系統の吸気気流の速度が予め規定された速度閾値より低いとき、前記肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記肺系統に前記周期的振動気流を生じさせるように前記肺系統を振動させるために前記振動圧力を供給する振動ユニットを更に有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
振動圧力に基づいて咳を助ける方法であって、前記振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、前記周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含み、前記方法は、
外部環境から前記肺系統を分離するために閉じられるべきバルブを制御するために、前記肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する第1の判定ステップと、
前記肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定する第2の判定ステップと、
咳を始めるために開かれるべき前記バルブを制御するために、前記振動呼気気流の開始を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
前記第1の判定ステップは、前記肺系統の吸気気流の速度が予め規定された速度閾値より低いとき、前記肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記肺系統に前記周期的振動気流を生じさせるように前記肺系統を振動させるために前記振動圧力を生成するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
振動圧力に基づいて咳を助ける方法において使用されるコンピュータプログラムであって、前記振動圧力は、肺系統に周期的振動気流を生じさせ、前記周期的振動気流は、振動呼気気流及び振動吸気気流を含み、前記方法が、
外部環境から前記肺系統を分離するために閉じられるべきバルブを制御するために、前記肺系統の吸気が終了しているかどうかを判定するステップと、
前記肺系統の内部空気圧が予め規定された圧力閾値より大きいかどうかを判定するステップと、
咳を始めるために開かれるべき前記バルブを制御するために、前記振動呼気気流の開始を検出するステップと、
を含む、コンピュータプログラム。
【請求項8】
前記肺系統に周期的振動気流を生じさせるように前記肺系統を振動させるために前記振動圧力を生成するステップを更に含む、請求項7に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−500052(P2013−500052A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521144(P2012−521144)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053292
【国際公開番号】WO2011/010279
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)