説明

哺乳動物の胚または卵子の凍結保存方法

【課題】 凍結・融解後の哺乳動物胚の受胎率を向上することができる、哺乳動物の胚または卵子の凍結保存方法を提供すること。
【解決手段】 哺乳動物胚の凍結方法は、静磁場及び交流電磁場の両者を作用させた環境下で哺乳動物の胚または卵子を凍結することを含む。
【効果】 従来法では凍結保存に不向きであった体内由来低ランク胚や体外受精胚、性判別操作及びクローン操作などの体外における物理的ダメージを受けた胚であっても、凍結・融解後の受胎率を大幅に向上することができる。また、本発明によれば、凍結・融解による細胞のDNA損傷を軽減できるため、未受精卵子を凍結保存する際に本発明を適用することにより、凍結・融解後の卵子の品質を高めることができ、該卵子を受精させ、得られた受精卵又は胚を着床させる場合の受胎率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は哺乳動物の胚または卵子の凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物胚の凍結保存技術は、世界中のあらゆる研究機関で受胎率向上に関する検討が行われている。例えば牛胚凍結技術では、AoyagiらあるいはDochiらが開発した牛胚用緩慢凍結液(Aoyagi et al. Theriogenology. 1996;45:165, Dochi et al. Theriogenology. 1998;49:1051-1058)を用いることによって、凍結・融解後の高い受胎率が得られることが報告され、フィールドにおいても臨床応用が進み現在広く普及している。
【0003】
しかしながら、現在開発されている凍結保存技術も十分なものではなく、品質の高い胚であれば凍結・融解後にも望ましい受胎率を得ることができるが、低ランク胚は凍結保存に適しておらず、凍結・融解後の受胎率は極めて低くなる。また、胚の細胞の一部を取り出して性判別を行なった性判別胚や体細胞クローン技術によって作製した体細胞クローン胚の場合には、胚が体外において物理的なダメージを経験しており、これらの胚を凍結・融解させると受胎率は著しく低下する。
【0004】
近年、磁場などのエネルギーが農業・食品産業において高い関心を集めている。実際に畜産・水産分野では磁場による精子の生存性の影響が調べられており、1990年、Formickiらはサケ精子を静磁場環境下に曝露したところ、アクティベーション精子の割合が有意に高くなることを報告した(Pol. Arch. Hydrobiol. 1990;37: 439-447)。また、桝田は豚精子を(日豚会誌. 1995;32:203-205)、菅らは牛精子を(第87回日本畜産学会大会号. 1993:269)静磁場環境下で凍結し、融解後の生存率と活力を調べたところ、曝磁を行っていない対照区と比較して有意に高い値を示した。また、食品関係で磁場を利用した発明としては、株式会社アビーが開発したCells Alive System(米国特許番号: US6,250,087B1)がある。これは、磁場を負荷した凍結庫内で温度を急速に下降させ食材を凍結させるものであり、凍結・融解後でも食材の品質の劣化を防止することが報告されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許6,250,087B1, 登録日: 2001年1月26日
【特許文献2】米国特許第5,504,002号、登録日:1996年4月2日
【非特許文献1】Aoyagi Y, Konishi M, Takedomi T, Itakura H, Itoh T, Yazawa S. Effect of lipid rich bovine serum albumin on direct transfer of frozen-thawed bovine embryo. Theriogenology. 1996;45: 165 (abstract)
【非特許文献2】Dochi O, Yamamoto Y, Saga H, Yoshiba N, Kano N, Maeda J, Miyata K, Yamauchi A, Tominaga K, Oda Y, Nakashima T, Inohae S. Direct transfer of bovine embryos frozen-thawed in the presence of propylene glycol or ethylene glycol under on-farm conditions in an integrated embryo transfer program. Theriogenology. 1998; 49: 1051-1058.
【非特許文献3】Formicki K, Sobocinski A, Winnicki A. Motility of spermatozoa of Danube salmon(Hucho Hucho L.), exposed to magnetic field prior to activation. Pol. Arch. Hydrobiol. 1990;37: 439-447
【非特許文献4】桝田博司. 凍結・融解後の豚精子の生存性に及ぼす曝磁の影響. 日豚会誌. 1995;32:203-205.
【非特許文献5】菅大助,阿賀嶺勲,新城明久,千葉好夫. ウシ精子の生存率に及ぼす静磁場の影響. 第87回日本畜産学会大会号. 1993:269.
【非特許文献6】Konca K, Lankoff A, Banasik A, Lisowska H, Kuszewski T, Gozdz S, Koza Z, Wojcik A. A cross-platform public domain PC image-analysis program for the comet assay. Mutat. Res. 2003; 534: 15-20.
【非特許文献7】Notomi T, Okayama H, Masubuchi H, Yonakawa T, Watanabe K, Amino M, Hase T. Loop-mediated isothermal amplification of DNA. Nucleic. Acids. Res. 2000; 28: E63.
【非特許文献8】Gustafsson H, Jaakma U, Shamsuddin M. Viability of fresh and frozen-thawed biopsied bovine embryos. Acta. Vet. Scand. 1994;35: 217-222.
【非特許文献9】Shea BF. Determining the sex of bovine embryos using polymerase chain reaction results: A six-year retrospective study. Theriogenology 1999;51: 841-854.
【非特許文献10】Satake T. Effect of pulsed electromagnetic fields (PEMF) on osteoblast-like cells. Alterations of intracellular Ca2+. Kanagawa Shigaku. 1990; 24: 692-701.
【非特許文献11】Diniz P, Shomura K, Soejima K, Ito G. Effects of pulsed electromagnetic field (PEMF) stimulation on bone tissue like formation are dependent on the maturation stages of the osteoblast. Bioelectromagnetics 2002; 23: 398-405.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凍結・融解後の哺乳動物胚の受胎率を向上することができる、哺乳動物の胚または卵子の凍結保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、哺乳動物胚または卵子を静磁場及び交流電磁場を組み合わせた磁場環境下で凍結させることにより、該哺乳動物胚を受胚個体へ移植した際の受胎率を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、静磁場及び交流電磁場の両者を作用させた環境下で哺乳動物の胚または卵子を凍結することを含む、哺乳動物胚の凍結方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来法では凍結保存に不向きであった体内由来低ランク胚や体外受精胚、性判別操作及びクローン操作などの体外における物理的ダメージを受けた胚であっても、凍結・融解後の受胎率を向上することができる。また、本発明によれば、凍結・融解による細胞のDNA損傷を軽減できるため、未受精卵子を凍結保存する際に本発明を適用することにより、凍結・融解後の卵子の品質を高めることができ、該卵子を受精させ、得られた受精卵又は胚を着床させる場合の受胎率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、哺乳動物の胚または卵子を凍結させる過程の一部または全部において、静磁場及び交流電磁場の両者を哺乳動物胚に作用させることを特徴とする。磁場の強さは、受胎率向上の観点から、静磁場が好ましくは5〜150G程度、さらに好ましくは10G〜40G程度、交流電磁場が好ましくは0.5〜5G程度、さらに好ましくは1G〜4G程度である。なお、磁場の強さは、市販のガウスメーターにより測定することができる。また、交流電磁場の周波数は好ましくは1〜30Hz程度、さらに好ましくは6Hz〜18Hz程度である。静磁場及び交流電磁場は、凍結工程(胚又は卵子を封入したストローを溶媒中で冷却して凍結させる工程)の時間の50%以上の時間、作用させることが好ましく、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは凍結工程の全過程(100%)において作用させることが好ましい。
【0011】
本発明の方法では、好ましくは、常用されている凍結液に浮遊した胚又は卵子を、常用されている凍結ストロー内に入れ、これを溶媒中に浸漬して哺乳動物胚を凍結させる。溶媒中で凍結を行なうことにより冷却速度を容易に制御できるので好ましい。溶媒は所望の低温まで液体の状態を維持できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にはメタノールなどのアルコール溶媒が用いられており、本発明でもそれらを好ましく用いることができる。冷却速度は、特に限定されないが、この分野において通常用いられているまたは用いられ得る緩慢凍結法などの凍結法を参照して、対象とする哺乳動物胚の種や発達段階等に応じて自由に定めることができる。例えば、本発明の実施例では、下記に示すとおり−5℃で15分間維持した後、-0.5〜-0.6℃/分のスピードでおよそ60分間にわたって-32.5℃まで温度を下降させ、すみやかに液体窒素中に保管したが、これに限定されるものではない。また、凍結液は、胚の凍結保存に一般的に用いられる市販の凍結液を好ましく用いることができる。
【0012】
本発明の方法は、哺乳動物の胚または卵子を対象とする。哺乳動物の種は、何ら限定されるものではなく、例えばウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマのような大型家畜、マウス、ラットのような齧歯動物、イヌ、ネコのような愛玩動物、ヒト、サル等の霊長動物を例示することができるがこれらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の方法の対象となる哺乳動物胚は、いかなる方法で得た卵に由来するものでも良く、自然交配、人工授精若しくは体外受精により得られた受精卵に由来するものの他、受精卵または体細胞を用いたクローン技術により得られた卵(本明細書では「クローン卵」と呼ぶ)に由来するものも包含される。ここで「クローン技術により得られた卵」とは、除核したレシピエント卵に、体細胞の核(体細胞クローンの場合)又は受精卵の核(受精卵クローンの場合)を移植して得られた卵である。なお、本明細書において「胚」という語は、受精卵又はクローン卵の種々の発生段階を広く包含し、具体的には卵割前の単細胞の卵(受精卵又はクローン卵)から脱出胚盤胞期までの胚を包含する。
【0014】
下記実施例により具体的に明らかにされるように、本発明の凍結方法を哺乳動物胚に適用することにより、従来法を適用した場合よりも凍結保存後の哺乳動物胚の受胎率を飛躍的に向上させることができ、従来法では解決できなかった低ランク胚や性判別胚などの凍結保存に伴う受胎率の低下の問題を解決することができる。また、本発明の方法によれば、凍結・融解によるDNA損傷を抑えることができるため、未受精の卵子を凍結保存する際に本発明の方法を適用すれば、凍結・融解後の卵子の品質低下を防止することができ、ひいては該卵子を融解し、受精させ、着床させる場合の受胎率が向上する。
【0015】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0016】
参考例1
CASアルコールバス式緩慢凍結プログラムフリーザー
アルコールバスのサイズは縦25 cm、横35 cm、深さ20 cmとし、その周囲に0.5〜15mT(5〜150G)の静磁場と0.05〜0.5mT(0.5〜5G)の電磁場空間を作り出す装置を配置した。交流電磁場は、アルコールバスの周囲にコイル線をめぐらせ、交流電流を流すことにより形成される構造になっている。出力装置は静磁場のみの空間と静磁場と電磁場が組み合わされた空間を作り出すことが可能であり、周波数(6〜30Hz)を変化させることによりさまざまな強さで目的の物質に曝磁させることができる。また、凍結作業時の冷却速度もコントロールすることもできる。
【0017】
牛胎子繊維芽細胞の準備
牛胎子繊維芽細胞は妊娠49日齢の黒毛和種胎子から樹立された。回収された細胞は10% 牛胎子血清(以下FBS,Filtron,Australia)を含むダルベッコの修飾イーグル培地 (以下D-MEM,Gibco BRL,USA)培地中で数回継代培養し、0.25%トリプシン(Gibco BRL,USA)処理により細胞を回収した後セルバンカー(Nippon Zenyaku Kyoto Co. Ltd., Kooriyama, Japan)に浮遊させ、-80℃のディープフリーザー内で凍結保存した。凍結保存された細胞は10cmプラスチックシャーレ(Falcon,USA)に播種し、1度継代して再び対数増殖期に増殖した状態で実験に用いた。
【0018】
牛胎子繊維芽細胞の凍結
0.25%トリプシン処理により剥離回収した牛胎子繊維芽細胞を牛胚用緩慢凍結液(非特許文献1)に浮遊させ、0.25mlプラスチックストロー(Straw 1/4 cc, Specialty products Inc., TX)に2 x 106個/mlの濃度で封入した。CAS-F区および対照区(磁場なし)の緩慢凍結プログラムフリーザー(以下Control-F,EYELA,東京理化社製)の凍結プログラムは次のように設定した。それぞれの-5℃に維持したメタノールバス中にストローを投入し、細いピンセットで植氷した後、そのまま15分間維持した。その後、-32.5℃まで-0.5〜-0.6℃/分のスピードで温度を下降させ、すみやかに液体窒素中に保管した。CAS-F区のストローはメタノールバス中に投入してから液体窒素中に保管する直前まで常時、静磁場のみあるいは静磁場+電磁場空間で曝磁させた。その際の静磁場の強さは約20G、交流電磁場の強さは約2Gであった。また、交流電磁場の周波数は6Hzであった。
【0019】
Comet assayによるDNA損傷評価
凍結・融解後の牛胎子繊維芽細胞のDNA損傷評価はComet assayを用いて行った。25〜30℃の温湯中で融解した牛胎子繊維芽細胞は洗浄後、1x105個/mlになるように濃度を調整し、Comet LMAgarose (1%低温融解アガロース; Trevigen, MD)と1:10の割合で混合した。直ちにCometSlide (Trevigen)上に75μlの細胞懸濁液をのせサンプルエリアを完全に覆うようにピペットの先端で広げた。スライドは4℃・暗所で10分間放置した後、10% DMSO(v/v)を含むLysis Solution (Trevigen)に浸し4℃で30〜60分間静置した。さらにアルカリ性溶液(pH > 13)に浸し、室温・暗所に20分間放置した。電気泳動(1 Volt/cm,300mM,60分間)は500mM EDTAを含むアルカリ性溶液中で行った。電気泳動終了後、70%エタノールに5分間浸し、風乾後SYBR Green (Trevigen)染色を行い、蛍光顕微鏡で無作為に選抜したComet状の細胞の写真を撮った。Comet状細胞はCASP software(非特許文献6)を用いて全長を計算し、パラメーター化されたComet頭部先端から尾部末端の値を比較した。
【0020】
統計解析
統計処理はStudent's t検定とを用いて行った。
【0021】
結果
CAS-Fで凍結された体細胞の融解後のDNA損傷度は,静磁場のみおよび静磁場+電磁場区ともに、Control-Fより有意に小さかった(静磁場181+/-28,静磁場+電磁場173+/-20およびControl-F 203+/-45,P<0.01)。また、静磁場+電磁場区のDNA損傷度は静磁場のみ曝磁させた区より有意に小さかった(P<0.05,図1)。これらのことから、静磁場のみ、さらには静磁場+交流電磁場への曝磁は体細胞に何らかの影響を与え対照区と比較して凍害を軽減することが示された。
【実施例1】
【0022】
牛体内由来胚の回収
供胚牛への過剰排卵処置は発情徴候確認後、黄体期である発情周期の中期からFollicle Stimulating Hormone(FSH,アントリンR-10,川崎製薬、Japan)を3日あるいは4日間漸減的に投与し、Prostaglandin(PGF,プロナルゴンF、ファルマシア・アップジョン、Japan)投与により発情誘起を行った。人工授精はスタンディング発情を確認した日の夕方に行い、胚回収は発情確認から7日目に行った。実験には、国際受精卵移植学会(International Embryo Transfer Society,IETS)が定めるランク1の胚を供した。
【0023】
バイオプシーと性判別
回収・選抜された胚を0.1Mシュクロース添加修飾リン酸緩衝液(PBS)中に入れ、シャーレ(Corning,USA)底面に付着させることにより保定した。金属刃(AB Technology,USA)を装着したマイクロマニピュレーター(AB Technology,USA)を用いて胚の5〜10細胞を透明帯ごと分離した。この5〜10個の分離細胞をサンプリングし、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification、栄研化学、Japan、非特許文献7)法による性判別を行った。バイオプシーを行った胚は、5% 子牛血清(CS,Invitrogen,USA)添加した発生培地中で培養し、性判別終了後直ちにCAS-F(静磁場+電磁場)あるいはControl-Fにより凍結した。耐凍剤は牛胚用緩慢凍結液(非特許文献1)を用い、参考例1と同様の冷却プログラムで凍結した。
【0024】
凍結胚の融解・培養
数日間液体窒素中で凍結保存した性判別胚は、空気中で約10秒間保持した後、25〜30℃温湯中に投入することで融解を行った。ストローから5% FBS(Hyclone,USA)添加ダルベッコのリン酸緩衝液(以下D-PBS,Invitrogen,USA)中へ押し出された胚は、同液で数回洗浄した後、5% CS添加発生培地中で培養を行い、融解後24時間目の生存率を観察した。
【0025】
TUNEL法による胚のDNA断片化評価
融解後24時間目の胚のDNA断片化評価は、DNAの3‘OH末端にターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ (TdT)を用いてビオチンで標識したdUTPをとりこませ、このビオチンを発色させるTUNEL法(TdT-mediated dUTP nick end labeling)を用いて行った。生存している胚を1mg/ml Polyvinyl Alcohol(以下PVA)を含むPBS(以下PVA-PBS)で洗浄し、4% パラホルムアルデヒドを含むPBS中で、その後0.1% Triton X-100溶液中でそれぞれ1時間ずつ固定した。PVA-PBS中で胚を洗浄後、TUNEL reaction medium(Roche,Swiss)中で1時間培養した。PVA-PBSで洗浄した胚は、50μg/ml RNase処置を1時間行い、0.5% Propidium Iodide染色後、蛍光顕微鏡でDNA断片化評価および総細胞数をカウントした。
【0026】
受胚牛への移植
受胚牛は、ホルスタイン種未経産牛の発情日を0日目とした7日目にCAS-FあるいはControl-Fで凍結保存された性判別胚を融解後直ちに黄体側の子宮角へダイレクト移植を行い、超音波妊娠診断装置(50S Tringa,Pie Medical,Netherlands)を用いて30日目の受胎率を観察した。
【0027】
統計解析
統計処理はStudent's t検定とχ2検定を用いて行った。
【0028】
結果
静磁場+電磁場空間において性判別胚を凍結し、融解後24時間目の生存率と細胞数を表1に示した。CAS-F,Control-F区の融解後24時間目の生存率はそれぞれ100%(20/20)、74%(20/27)でありCAS-F区が高い値を示した。また、細胞数もCAS-F区が130±22個とControl-F区(83±16個)と比較して有意に高い値を示した(P<0.01)。さらに凍結融解後のDNA断片化率についてもCAS-F区が有意に低い値を示した(CAS-F 7+/-2%、Control-F 24+/-10%、P<0.01)。CAS-Fで凍結した性判別胚の30日目における受胎率は、79%(15/19)とControl-F区(45%、9/20)と比較して高い傾向にあった(表2)。
【0029】
【表1】

a,b: 異符号間に有意差あり(P<0.01)
【0030】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】参考例においてComet Assayにより測定した、磁場なし、静磁場のみ及び静磁場と交流電磁場下における、体細胞凍結後のDNA損傷度を比較して示す図である(異符号間に5%水準で有意差あり)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場及び交流電磁場の両者を作用させた環境下で哺乳動物の胚または卵子を凍結することを含む、哺乳動物の胚または卵子の凍結方法。
【請求項2】
前記交流電磁場の周波数が1Hz〜30Hzである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記静磁場の強さが5G〜150Gである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記交流電磁場の強さが0.5G〜5Gである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記凍結を、アルコールバス中で行なう請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記胚が受精卵若しくはクローン卵又はそれらが卵割して脱出胚盤胞期胚になるまでの間の胚である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記胚または卵子がウシ由来である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記胚が性判別胚である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−124978(P2007−124978A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322235(P2005−322235)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】