説明

哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子を有する遺伝子組み換え動物

【課題】 哺乳動物においてミトコンドリア由来の活性酸素種(ROS)に起因する疾患を調べることを可能とするようなSDHC遺伝子に変異を有する遺伝子組み換え動物を提供すること。
【解決手段】 哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が導入されており、活性酸素種(ROS)を過剰産生し、成熟期以降に体重の減少を示し、かつ視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことを特徴とする、遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子を有する遺伝子組み換え動物に関する。より詳細には、本発明は、SDHC遺伝子に変異を有し、活性酸素種(ROS)を過剰産生し、成熟期以降に体重の減少を示し、かつ視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことを特徴とする遺伝子組み換え動物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、医学・薬学の発展により、多くの疾患が治療又は予防され、現代社会は長寿社会となっている。こうした状況下において、加齢とともに発症率が増加する癌や心臓血管障害、脳血管障害の三大疾患が日本人の死亡原因の約6割を占める。これら疾患の原因となる肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病や、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患には生体内酸化ストレスが深く関与していることが知られている。この生体内酸化ストレスの大部分は、エネルギー代謝の副産物としてミトコンドリアから発生する活性酸素が原因である。活性酸素は、ミトコンドリアに存在し、細胞内のエネルギー生産を担っている電子伝達系から電子が漏出し、近傍の酸素と反応することにより発生している。
【0003】
これら疾患の解明を目的とした研究には、自然な生体環境に近い状態での生体内酸化ストレスを負荷することが可能なモデル動物が必要不可欠である。しかしながら、現在の所、このようなモデル動物は存在せず、人為的に外部から酸化剤や細胞毒性を有する電子伝達系の阻害剤を投与するか、あるいは抗酸化系酵素を失活させるといった手法が主に使用されている。このようにミトコンドリアから発生する活性酸素の生体への直接の影響を証明する手段は存在せず、これら疾患発症の詳しいメカニズム解明は行われていなかった。
【0004】
本発明者らは、線虫やマウス培養細胞を用いた研究において、細胞内部から自然な生体環境に近い状態で生体内酸化ストレスを負荷する研究に成功している。これにより、ミトコンドリアから発生した活性酸素が老化や神経変性疾患の原因となる過剰なアポトーシスを誘導すること(Ishii N, Fujii M, Hartman PS, et al. A mutation in succinate dehydrogenase cytochrome b causes oxidative stress and aging in nematodes. Nature 1998;394:694-7.;Senoo-Matsuda N, Yasuda K, Tsuda M, et al. A defect in the cytochrome b large subunit in complex II causes both superoxide anion overproduction and abnormal energy metabolism in Caenorhabditis elegans. J Biol Chem 2001;276:41553-8.;Senoo-Matsuda N, Hartman PS, Akatsuka A, Yoshimura S, Ishii N. A complex II defect affects mitochondrial structure, leading to ced-3 and ced-4-dependent apoptosis and aging. J Biol Chem 2003;278:22031-6.)、さらに、癌発症の要因となる形質転換を高頻度に引き起こすことを明らかにしている(Ishii T, Yasuda K, Akatsuka K, et al. A mutation in the SDHC gene of complex II increases oxidative stress, resulting in apoptosis and tumorigenesis. Cancer Res. 2005; 65: 203-209)。
【0005】
【非特許文献1】Ishii N, Fujii M, Hartman PS, et al. A mutation in succinate dehydrogenase cytochrome b causes oxidative stress and aging in nematodes. Nature 1998;394:694-7.
【非特許文献2】Senoo-Matsuda N, Yasuda K, Tsuda M, et al. A defect in the cytochrome b large subunit in complex II causes both superoxide anion overproduction and abnormal energy metabolism in Caenorhabditis elegans. J Biol Chem 2001;276:41553-8.
【非特許文献3】Senoo-Matsuda N, Hartman PS, Akatsuka A, Yoshimura S, Ishii N. A complex II defect affects mitochondrial structure, leading to ced-3 and ced-4-dependent apoptosis and aging. J Biol Chem 2003;278:22031-6.
【非特許文献4】Ishii T, Yasuda K, Akatsuka K, et al. A mutation in the SDHC gene of complex II increases oxidative stress, resulting in apoptosis and tumorigenesis. Cancer Res. 2005; 65: 203-209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り生活習慣病(ガン、脳血管傷害など)をはじめ、多くの疾患に酸化ストレスが関与していることが示唆されているが、これまでは酸化ストレスを生体の外から与えた研究のみが行われていた。元来、酸化ストレスの多くはミトコンドリア電子伝達系においてエネルギー代謝の副産物として発生しており、外部からの酸化ストレスの研究は真の病気のメカニズムとは異なっていると考えられる。本発明は、哺乳動物においてミトコンドリア由来の活性酸素種(ROS)に起因する疾患を調べることを可能とするようなSDHC遺伝子に変異を有する遺伝子組み換え動物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、C.elegansのmev−1と同等の変異を有するSDHC遺伝子を導入した遺伝子組み換え動物を作製することに成功した。作製した遺伝子組み換え動物においては、活性酸素種スーパーオキシドアニオン(O2-)が過剰に産生しており、野生型動物と比較して、成熟期以降に体重の減少を示し、かつ視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことが確認された。これらの結果は、ミトコンドリア由来のROSが、老化や各種疾患に関与していることを示すものである。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が導入されており、活性酸素種(ROS)を過剰産生し、成熟期以降に体重の減少を示し、かつ視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことを特徴とする、遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【0009】
(2) 上記変異SDHC遺伝子が、C.elegansのcyt−1遺伝子がコードするタンパク質の71番目のアミノ残残基であるグリシンに対応するSDHC遺伝子がコードするタンパク質中のアミノ酸残基がグルタミン酸又はアスパラギン酸に置換している変異SDHC遺伝子である、(1)に記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【0010】
(3) 哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が、マウス由来の変異SDHC遺伝子である、(1)又は(2)に記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【0011】
(4) マウス由来の変異SDHC遺伝子によりコードされるタンパク質が、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質である、(1)から(3)の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【0012】
(5) (1)から(4)の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部を用いることを特徴とする、過剰の活性酸素種(ROS)を抑制する作用を有する物質のスクリーニング方法。
【0013】
(6) (1)から(4)の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物を、内在性酸化ストレスを起因とする生活習慣病のモデル動物として使用する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明による哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子を有する遺伝子組み換え動物は、遺伝子発現制御システムを用いており、ミトコンドリアから発生する活性酸素量を生体外部より任意に制御することが可能である。本発明の遺伝子組み換え動物は、体内から発生した酸化ストレスによる種々の疾患のメカニズムの解明や治療に大きく貢献が可能である。より具体的には、本発明の遺伝子組み換え動物は、ミトコンドリアから生じる内因性酸化ストレスを原因とする疾患のメカニズムの解明研究、ミトコンドリアから生じる内因性酸化ストレスを原因とする疾患の予防方法の確立、並びにミトコンドリアから生じる内因性酸化ストレスを原因とする疾患の治療方法の確立に有用である。上記の通り、本発明の遺伝子組み換え動物は、生活習慣病や高齢者疾患発症の分子メカニズムの解明に有用であり、さらに、これら疾患の診断・治療・予防薬の開発にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が導入されており、かつ活性酸素種(ROS)を過剰産生していることを特徴とする。より詳細には、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、SDHC遺伝子に変異を有しミトコンドリア電子伝達系より酸化ストレスが生じ、角膜異常や筋力低下にともなう行動異常を引き起こすことを特徴とする。本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、内在性酸化ストレスを起因とする生活習慣病のモデル動物として有用である。
【0016】
本発明で用いる変異SDHC遺伝子は哺乳動物由来のものであればよく、その由来は特に限定されないが、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ歯類由来の変異SDHC遺伝子の他、ニワトリ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、サル、ヒト等に由来する変異SDHC遺伝子を使用することができる。上記の中でも、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ歯類由来の変異SDHC遺伝子を使用することが好ましく、特にマウス由来の変異SDHC遺伝子を使用することが最も好ましい。
【0017】
哺乳動物由来のSDHC遺伝子は公知である。例えば、
マウス:BC005779(NCBI)(参考文献;Strausberg,R.L.,他、Generation and initial analysis of more than 15,000 full-length human and mouse cDNA sequences, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002))、及びNM_025321(NCBI)(参考文献;Paddenberg,R., 他、Essential role of complex II of the respiratory chain in hypoxia-induced ROS generation in the pulmonary vasculature, Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 284 (5), L710-L719 (2003))
ウシ:NM_175814(NCBI)(参考文献;Yu,L., 他、Cytochrome b560 (QPs1) of mitochondrial succinate-ubiquinone reductase. Immunochemistry, cloning, and nucleotide sequencing, J. Biol. Chem. 267 (34), 24508-24515 (1992)
ブタ:AJ300475(NCBI)(参考文献;Stratil,A.,他、Linkage and radiation hybrid mapping of the porcine gene for subunit C of succinate dehydrogenase complex (SDHC) to chromosome 4, Anim. Genet. 32 (2), 110-112 (2001))
ヒト:BC066329(NCBI)、BC033626(NCBI)及びBC020808(NCBI)(参考文献;Strausberg,R.L., 他、Generation and initial analysis of more than 15,000 full-length human and mouse cDNA sequences, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26), 16899-16903 (2002))、NM_003001(NCBI)(参考文献;Niemann,S., 他、Autosomal dominant malignant and catecholamine-producing paraganglioma caused by a splice donor site mutation in SDHC, JOURNAL Hum. Genet. 113 (1), 92-94 (2003))、 AF039589(NCBI)(参考文献;Elbehti-Green,A., 他、Characterization of the human SDHC gene encoding of the integral membrane proteins of succinate-quinone oxidoreductase in mitochondria, Gene 213 (1-2), 133-140 (1998))、D49737(NCBI)及びAB006202(NCBI)(参考文献; Hirawake,H., 他、Cytochrome b in human complex II (succinate-ubiquinone oxidoreductase): cDNA cloning of the components in liver mitochondria and chromosome assignment of the genes for the large (SDHC) and small (SDHD) subunits to 1q21 and 11q23, Cytogenet. Cell Genet. 79 (1-2), 132-138 (1997));
などを使用することができる。
【0018】
本発明で用いる変異SDHC遺伝子としては、ミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)の過剰産生を生じさせることができ、かつ細胞が致死的にならないものであれば任意の変異を有するSDHC遺伝子を使用することができる。本発明において、変異SDHC遺伝子とは、野生型SDHC遺伝子のDNA配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたものを意味し、具体的には、該遺伝子中の塩基配列の一部が欠損した遺伝子、該遺伝子の塩基配列の一部が他の塩基配列で置換された遺伝子、該遺伝子の一部に他の塩基配列が挿入された遺伝子などを用いることができる。欠失、置換または付加される塩基の数は、特に限定されないが、一般的には1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から5個程度、特に好ましくは1から3個、最も好ましくは1個である。このような塩基配列の欠失、置換または付加によって、SDHCのアミノ酸配列において、好ましくは1ないし20個程度、より好ましくは10個、より好ましくは1から5個程度、特に好ましくは1から3個、最も好ましくは1個のアミノ酸の欠失、置換または付加が生ずることになる。
【0019】
このような変異SDHC遺伝子の例としては、SDHC遺伝子のC.elegansにおけるホモログであるcyt−1遺伝子がコードするタンパク質の71番目のアミノ残残基であるグリシンに対応するSDHC遺伝子がコードするタンパク質中のアミノ酸残基が、グルタミン酸又はアスパラギン酸(特に好ましくは、グルタミン酸)に置換している変異SDHC遺伝子を挙げることができる。マウス由来の上記変異を有するSDHC遺伝子によりコードされるタンパク質としては、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。また、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子の一例を配列表の配列番号2に記載する。
【0020】
上記した変異SDHC遺伝子は、プライマーの作製、ゲノムDNAおよびcDNAの調整、PCR、クローニング及び酵素処理等を含む当業者に周知の遺伝子工学の手法により取得することができる。
【0021】
遺伝子組み換え動物(例えば、トランスジェニック動物など)を作製するための方法は当業者に公知である。例えば、Hogan,et al.,Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1986などを参照することができる。外来DNAを哺乳動物の生殖細胞に導入する技術は最初はマウスにおいて開発された(Gordon,et al.,PNAS,77:7380−84(1980);Gordon and Ruddle,Science,214:1244−46(1981);Palmiter and Brinster,Cell,41:343−45(1985);Brinster,et al.,PNAS,82:4438−42(1985)など)。本発明においても、これらの方法に準じて遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物を作製することができる。
【0022】
本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物の作製は、例えば、哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子をプロモーターの制御下に組み込んだ発現ベクターを受精卵などに導入することにより作製することができる。以下、哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子の導入により該遺伝子を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法について説明する。
【0023】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製のために用いる導入遺伝子としては、変異SDHC遺伝子を適当な哺乳動物用プロモーターの下流に連結した組換え遺伝子を使用することが好ましく、具体的には、本明細書中上記(1)に記載したものと同様のものを使用することができる。
【0024】
変異SDHC遺伝子の導入により変異SDHCを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、例えば、非ヒト哺乳動物の受精卵に変異SDHC遺伝子を導入し、当該受精卵を偽妊娠雌性非ヒト哺乳動物に移植し、当該非ヒト哺乳動物から変異SDHC遺伝子が導入された非ヒト哺乳動物を分娩させることにより作製することができる。
【0025】
非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ歯類の他、ニワトリ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、サル等を使用することができるが、作製、育成及び使用の簡便さなどの観点から見て、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ歯類が好ましく、そのなかでもマウスが最も好ましい。
【0026】
本発明で用いるトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、胚芽細胞と、生殖細胞あるいは体細胞とが、非ヒト哺乳動物またはこの動物の先祖に胚発生の段階(好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)において外来性の変異SDHC遺伝子を含む組み換え遺伝子を導入することによって作出される。変異SDHC遺伝子を含む組み換え遺伝子の構築は上記した通りである。
【0027】
受精卵細胞段階における変異SDHC遺伝子の導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように維持されるように行う。遺伝子導入後の作出動物の胚芽細胞において、変異SDHC遺伝子が存在することは、作出動物の後代がすべてその胚芽細胞および体細胞のすべてに変異SDHC遺伝子が存在することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに変異SDHC遺伝子を有する。
【0028】
本発明のトランスジェニック動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、当該遺伝子保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することができる。導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該遺伝子を過剰に有するように繁殖継代することができる。変異SDHC遺伝子の発現部位を同定するためには変異SDHC遺伝子の発現を個体、臓器、組織、細胞の各レベルで観察することができる。また、変異SDHCの抗体を用いた酵素免疫検定法によりその発現の程度を測定することも可能である。
【0029】
以下、トランスジェニック非ヒト哺乳動物がトランスジェニックマウスの場合を例に挙げて具体的に説明する。変異SDHC遺伝子をコードするcDNAをプロモーターの下流に含有する導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受精卵の雄性前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、偽妊娠雌性マウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスから前記cDNAを有する仔マウスを選択することによりトランスジェニックマウスを作製することができる。上記マウスの受精卵としては、例えば、129/sv、C57BL/6、BALB/c、C3H、SJL/Wt等に由来するマウスの交配により得られるものなら任意のものを使用できる。
【0030】
また、注入する導入遺伝子の数は受精卵1個当たり100〜3000分子が適当である。そしてまた、cDNAを有する仔マウスの選択は、マウスの尻尾等よりDNAを抽出し、導入した変異SDHC遺伝子をプローブとするドットハイブリダイゼーション法や、特異的プライマーを用いたPCR法等により行うことができる。
【0031】
また、本発明の変異SDHC遺伝子を有する遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物としては、上記したような変異遺伝子を導入するトランスジェニック動物だけでなく、相同組換え法によるヘテロ非ヒト哺乳動物も有用である。例えば、変異SDHC遺伝子を有するマウスを作製する場合は、野生型と変異型を1:1に競合させる手法としてトランスジェニックマウスを作製するより、相同組換えが行われたヘテロマウスを用いることが有用である。本明細書の実施例では、変異SDHC遺伝子を有するトランスジェニックマウスを作製したが、これは、変異の誘導、活性酸素発生をon-offのスイッチ形式し、正常な個体⇔活性酸素を過剰発生した個体を自由にコントロールすることを意図したものである。
【0032】
本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、変異SDHC遺伝子を発現することにより、活性酸素種(ROS)を過剰産生し、その結果として、好ましくは、野生型と比較してアポトーシスが誘導されていたり、野生型と比較して腫瘍形成能が増大しているという特徴を有している。従って、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、過剰の活性酸素種(ROS)を抑制する作用を有する物質のスクリーニングに利用可能なモデルであり、特に、アポトーシス抑制剤又は抗癌剤のスクリーニングに有用である。
【0033】
また以下の実施例で示す通り、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物の組織における活性酸素の蓄積量は、野生型動物に比べ顕著に増加していることが確認された。また、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、胎児期から成熟期における個体の成長が、野生型動物と比較し著しく遅く、成熟期以降、個体は徐々に小さくなる傾向を示した。これは、早老症を示唆する結果である。本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物では、早老症の表現型であると示される脊椎の湾曲が見られ、この影響により、直進しているときの歩幅に有意な減少が確認された。
【0034】
さらに本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、飼育観察から、眼球に白濁が確認された。また、マウス行動解析(オープン・フィールドテスト)の結果、視覚異常によるものと考えられる歩行異常(回転歩行)が確認された。さらに、角膜、網膜の組織切片解析から、異常が観察された。角膜では細胞体の減少、血管新生が確認された。また、網膜では細胞層や顆粒層の配列に乱れが確認された。上記の通り、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、視覚異常を示すことを特徴とする。
【0035】
さらに本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、筋肉の張力解析から、野生型動物と比較し顕著に筋力の低下が確認された。また、マウス行動解析(高架パイプ歩行テスト)の結果、パイプを渡り終える歩行時間に優位な増加が認められた。これらの結果は、パイプからの落下頻度の上昇やパイプの上で停止状態にいる時間が増加していたことが原因となった。これらの現象はパイプを握る握力低下、あるいは、恐怖心の増加によるものと考えられた。さらに、電子顕微鏡によるミトコンドリアの形態解析の結果、野生型動物に比べミトコンドリアの数の増大、巨大化が確認され横紋筋構造の筋繊維を破壊していることが確認された。上記の通り、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことを特徴とする。
【0036】
さらに本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物の雌マウスは、不妊であることが確認された。組織切片の解析結果から、野生型マウスでの卵胞内の卵母細胞は卵巣の外側に向かうにつれて規則正しく発生が進んでいるのに比べ、本発明の遺伝子組み換えマウス(mev-1マウス)での卵母細胞の発生過程は卵巣内の位置に関係なく不規則に進んでいた。これらの結果から、不妊の原因は、酸化ストレスにより、排卵にいたるまでの発生が正常におこなわれずに、卵子までの発生を正常に終了する卵母細胞が減少していることにあると予測された。上記の通り、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物は、生殖巣(卵巣)異常を示す。
【0037】
また、上記した本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物の一部としては、非ヒト哺乳動物の細胞、細胞内小器官、組織および臓器のほか、頭部、指、手、足、腹部、尾などが挙げられ、これらも全て本発明の範囲内に属する。
【0038】
本発明による過剰の活性酸素種(ROS)を抑制する作用を有する物質のスクリーニング方法は、変異SDHCを発現する本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物を用いて行うことができる。即ち、本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物(例えば、トランスジェニックマウスなど)に、被検物質を投与し、該トランスジェニック非ヒト哺乳動物の生理学的データを評価・検討することにより、該被検物質による活性酸素種(ROS)を抑制する作用を評価することができる。
【0039】
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質としては、例えば、核酸(たとえばDNA、RNAおよびアンチセンスRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド模倣体、低分子合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら被験物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。またペプチドライブラリーや化合物ライブラリーなど、多数の分子を含むライブラリーを被験物質として使用することもできる。
【0040】
本発明の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物に被験物質を投与する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられる。また、被験物質の投与量は、投与方法、被験物質の性質などにあわせて適宜選択することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1:
(A)実験方法
(1)SDHC遺伝子の推定アミノ酸配列
SDHC、cyt−1またはチトクロムb大サブユニットと称されるE.coli(受託番号:AE005250)、C.elegans(L26545−1)、Mus musculus(AK032458−1)、Bos taurus(S74803−1)、およびHomo sapiens(D49737−1)のアミノ酸配列、ならびにE.coli(受託番号:AE000175またはU00096)、C.elegans(NM_066882)、Mus musculus(NM_025321)、Bos taurus(NM_175814)およびHomo sapiens(NM_003001)の完全長cDNA(cds)のアミノ酸配列を、それぞれDDBJ/GenBank/EMBL、およびEntrez Nucleotide of National Center for Biotechnology Information(NCBI)から検索した。
【0042】
(2)マウスSDHCのcDNAのクローニング
C.elegansのcyt−1遺伝子のマウスホモログであるSDHCのDNA配列を、DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E-mail/homology.html)から取得した。野生型SDHCのPCR産物を、ICRマウス株の肝臓cDNAの鋳型から得て(プライマー:5'-GGG GAA TTC ATG GCT TTC TTG CTG AGA CAT GTC AGC(配列番号3)、および3’−GGG AAG CTT TCA CAG GGC GGC CAG CCC(配列番号4))、次いでpBluescriptII SK−ベクターのEcoRI−HindIII部位に挿入した。
【0043】
(3)mev−1変異型SDHC遺伝子の構築
変異対立遺伝子を、PCRで増幅した(プライマー:5'-GGG GAA TTC CTC TTC CCA TGG CAC TGT CCG AAT GCC(配列番号5)、および3’−GGG AAG CTT TCA CAG GGC GGC CAG CCC(配列番号6))。この5’プライマーは置換されたヌクレオチドを含有し、PCR産物は、野生型SDHC遺伝子を含むpBluescriptII SK−ベクターのEarI−HindIII切断部位で置換されていた。
【0044】
実施例2:mev−1変異型SDHC遺伝子を有するトランスジェニックマウスの作製
(A)mev-1 Conditional Transgenic mice のTransgene 作製
(1)PCR法を用いたサイトメガロウィルスプロモーター(PhCMV promoter)のDNA断片の増幅・単離
PCR法を用い、PhCMV promoterの両端に新規制限酵素認識サイトを挿入する(これをGene. 1とする)。PCRで使用した鋳型は、PhCMV promoterを含有するpcDNA3プラスミドベクターである。PCRで使用したプライマーは、5'primer Oligo nucleotide : ggg ggt acc aat att gct agc gag ctt ggc cca ttg cat acg ttg(配列番号7)、及び3'primer Oligo nucleotide : ggg ctc gag cac gtg aag ctt cgg atc cga att cgc tag cgg ggc cgc gga ggc tgg atc(配列番号8)である。
【0045】
pcDNA3プラスミドベクターをHindIII制限酵素処理および平滑末端処理し、Hind III制限酵素認識サイトを排除した(これをVector. 1とする)。
Vector. 1をKpnI-XhoI制限酵素処理し、同様に処理したGene. 1を挿入して、Vector. 2を作製した。
【0046】
(2)ポリアデニル酸シグナル(polyA)の付加
BamHI- HindIII制限酵素処理したSV40 polyAを、同様に処理したプラスミドベクター:Vector. 2へ挿入して、Vector. 3を作製した。
【0047】
(3)テトラサイクリン依存性転写活性化因子(rTetR-VP16)の付加
pUHD17プラスミドベクター(Clonetech)をBamHI-EcoRI制限酵素処理し、rTetR-VP16を取得し、同様の制限酵素処理したプラスミドベクター:Vector. 3へ挿入して、Vector. 4を作製した。
【0048】
(4)PCR法を用いたSV40 polyAのDNA断片の増幅・単離
PCR法を用い、SV40 polyAの両端に新規制限酵素認識サイトを挿入した(これを、Gene. 2とする)。PCRで使用した鋳型は、SV40 polyAを含有するpcDNA3又はpTREプラスミドベクターである。PCRで用いたプライマーは、5'primer Oligo nucleotide : ggg gga tcc aga cat gat aag(配列番号9)、及び3'primer Oligo nucleotide : ggg ggt acc ggg ccc aga tct ggt cga gct gat act tcc(配列番号10)である。pcDNA3プラスミドベクターをBamHI- KpnI制限酵素処理し、同様に処理したGene. 2を挿入して、Vector. 5を作製した。
【0049】
(5)テトラサイクリン依存性転写抑制因子発現ベクターの作製
Homo sapiens zinc finger protein 10; Kox1 gene (X52332)の転写抑制ドメイン(KRAB)をPCR法により増幅・単離した(これをGene. 3とする)。PCRで使用した鋳型は、HeLa細胞より抽出合成したcDNAである。PCRで用いたプライマーは、5'primer Oligo nucleotide : ggg gaa ttc aag ctt ggc ggt ggt gct ttg tct(配列番号11)、及び3'primer Oligo nucleotide : ggg gga tcc tta aac tga tga ttt gat ttc aaa tgc agt c(配列番号12)である。
【0050】
Gene. 3をBamHI-HindIII制限酵素処理し、同様に処理したテトラサイクリン依存性レセプター(TetR)を含有したpBluescriptIIへ挿入し、TetR-KRABを作製した(これをVector. 6とする)。プラスミドベクター:Vector. 6をBamHI-EcoRI制限酵素処理し、同様に処理したPhCMV pro.を含有したpBluescriptIIへ挿入し、PhCMV pro.- TetR- KRABを作製した(これをVector. 7とする)。プラスミドベクター:Vector. 7をXhoI-BamHI制限酵素処理し、同様に処理したプラスミドベクター:Vector. 5へ挿入して、Vector. 8を作製した。
【0051】
(6)テトラサイクリン依存性転写因子(PhCMV pro.- rTetR - VP16, PhCMV pro.- TetR - KRAB (Kox1))の連結
プラスミドベクター:Vector. 4及び8をそれぞれXhoI- ApaI制限酵素処理し、テトラサイクリン依存性転写活性化因子発現プラスミドベクター:Vector. 4へ、テトラサイクリン依存性転写抑制因子発現遺伝子を連結して、Vector. 9を作製した。
【0052】
(7)電子伝達阻害型=活性酸素過剰発生型遺伝子変異を挿入した(mev-1型)cyt-1遺伝子の作製(これをGene. 4とする)
mice ICR liver(ICR系統のマウス肝臓由来)cDNA を鋳型に、PCR法によりチトクロームb大サブユニット(cyt-1)のクローニングした。PCRで用いたプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg gaa ttc gcc gcc acc atg gct gcg ttc ttg ctg aga cat gtc agc(配列番号13)、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg aag ctt tct aga aaa tca cag ggc ggc cag ccc(配列番号14)である。上記により得られた、チトクロームb大サブユニットの増幅DNA断片をpBluescript II SK- plasmid vectorのMCS (multi cloning site : 制限酵素領域) EcoRI- XbaIへ導入した。大腸菌DH5αのコンピテントセルを作製し、そこへ上記プラスミドベクターの形質導入を行い目的遺伝子のPCR増幅断片の単離(サブクローニング)を行った。
【0053】
電子伝達阻害型=活性酸素過剰発生型遺伝子変異を挿入した(mev-1型)cyt-1遺伝子の作製は、プライマーとして、5' primer Oligo nucleotide : ggg gaa ttc ctc ttc cca tgg cac tgt ccg aat gcc(配列番号15)、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg aag ctt tct aga aaa tca cag ggc ggc cag ccc(配列番号16)を使用し、上記と同様にして、PCRおよび形質導入を行い、mev-1型cyt-1遺伝子の3'領域のサブクローニングを行った。
上記で作製した野生型cyt-1遺伝子全長サブクローニング用プラスミドベクターへ、EarI-XbaI制限酵素を用いて、mev-1型cyt-1遺伝子の3'領域を挿入して、mev-1型cyt-1遺伝子全長を作製した。
【0054】
(8)テトラサイクリン系遺伝子発現制御システム(TRE)を用いた目的遺伝子(mev-1型cyt-1遺伝子)発現用プラスミドベクターの作製
EcoRI-XbaI制限酵素処理したpTREプラスミドベクター (Clonetech) へmev-1型cyt-1遺伝子: Gene. 4を挿入して、Vector. 10を作製した。
pcDNA3プラスミドベクターをNruI-EcoRI制限酵素処理し、サイトメガロウィルスプロモター(CMV promoter)を排除したpcDNA3 ΔCMV pro.プラスミドベクターを作製(再度生じるEcoRIサイトも破壊する)した(これを、Vector. 11とする)。
Vector. 10をXhoI-XbaI制限酵素処理し、Tetracycline receptor Responsive element (TRE)- mev-1型cyt-1遺伝子を取得した。これを、同様にしてXhoI-XbaI制限酵素処理したVector. 11へ挿入して、Vector. 12を作製した。
【0055】
(9)プロモーター、転写調節領域内に存在するシスエレメントの効果を外部より絶縁するための働きをする遺伝子(beta-globin insulator sequence : insulator)の挿入 (パート1)。
PCR法によるinsulator DNA断片の増幅・単離した(これをGene. 5とする)。PCRで使用した鋳型は、ニワトリcDNAライブラリーである。PCRで使用したプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg gat atc ggg aca gcc ccc ccc caa ag(配列番号17)、及び、3' primer Oligo nucleotide : ggg gat atc ctc act gac tcc gtc ctg g(配列番号18)である。
上記で増幅したDNA断片: Gene. 5をEcoRV制限酵素処理し、同様にEcoRV制限酵素処理したpBluescriptII SK-プラスミドベクターへ挿入して、Vector. 13を作製した。上記プラスミドベクター:Vector. 13をEcoRV制限酵素処理し取得したinsulatorを、PvuII制限酵素処理したプラスミドベクター:Vector. 12へ挿入して、Vector. 14を作製した。
【0056】
(10)Tetracycline receptor Responsive element (TRE) を利用したテトラサイクリン遺伝子発現制御システム全長の作製
テトラサイクリン依存性転写因子(活性化因子、抑制因子)発現プラスミドベクター:Vector. 9、およびテトラサイクリン系遺伝子発現制御システム(TRE)を用いた目的遺伝子(mev-1型cyt-1遺伝子)発現用プラスミドベクターをそれぞれSspI - BglII制限酵素処理し、連結して、Vector. 15を作製した。
【0057】
(11)プロモーター、転写調節領域内に存在するシスエレメントの効果を外部より絶縁 するための働きをする遺伝子(insulator)の挿入 (パート2)
insulator含有pBluescriptII SK-プラスミドベクター:Vector. 13をEcoRV制限酵素処理し取得したinsulatorを、SspI制限酵素処理したプラスミドベクター:Vector. 15へ挿入して、Vector. 16を作製した。
【0058】
(12)プロモーター、転写調節領域内に存在するシスエレメントの効果を外部より絶縁 するための働きをする遺伝子(insulator)の挿入 (パート3)
insulator含有pBluescriptII SK-プラスミドベクター:Vector. 13をEcoRV制限酵素処理し取得したinsulatorを、PmlI制限酵素処理したプラスミドベクター:Vector. 16へ挿入して、Vector. 17を作製した。
【0059】
(13)プロモーター、転写調節領域内に存在するシスエレメントの効果を外部より絶縁するための働きをする遺伝子(insulator)の挿入 (パート4)
insulator含有pBluescriptII SK-プラスミドベクター:Vector. 13をEcoRV制限酵素処理し取得したinsulatorを、EcoRV制限酵素処理したプラスミドベクター:Vector. 17へ挿入して、テトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクター:Vector. 18を作製した。このVector. 18が、電子伝達阻害型=活性酸素過剰発生型;mev-1動物作製のための導入遺伝子である。
【0060】
(14)レポーター蛋白質(核移行緑色蛍光蛋白質:nlsGFP)遺伝子の挿入
PCR法によりnlsGFP DNA断片を増幅・単離した(これをGene. 6とする)。PCRで使用した鋳型は、GFPを含有するpEGFP-C1プラスミドベクターである。PCRで使用したプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg tct aga aat att aag ctt tgc ggc cgc atg ccc aag aag aag cgc aag gtg gag gac gcc atg gtg agc aag ggc gag(配列番号19)、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg ggt acc ggg ccc cgg atc cct tgt aca gct cgt cca tgc(配列番号20)である。上記で増幅・単離したnlsGFP遺伝子:Gene. 6をApaI - XbaI制限酵素処理し、同様に制限酵素処理したテトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクター:Vector. 18へ挿入して、Vector. 19を作製した。
【0061】
(15)レポーター蛋白質(Luciferase)遺伝子の挿入
PCR法によりLuciferase DNA断片を増幅・単離した(これを、Gene. 7とする)。PCRで使用した鋳型は、Luciferaseを含有したpCH110あるいはpMC1871プラスミドベクターである。PCRで使用したプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg gga tcc atg gaa gac gcc aaa aac(配列番号21) 、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg ggt acc ggg ccc tta caa ttt gga ctt tcc gc(配列番号22)である。上記で増幅・単離したLuciferase遺伝子:Gene. 7をApaI - BamHI制限酵素処理し、同様に制限酵素処理したテトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクター:Vector. 19へ挿入してVector. 20を作製した。
【0062】
(16)一種類のプロモーターより二種類のmRNAを発現することを可能にする遺伝子配列(IRES)の挿入する
IRES含有のpBluescriptII SK-プラスミドベクターをHindIII - NotI制限酵素処理し、IRESを取得した。これを、同様にしてHindIII - NotI制限酵素処理したテトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクター:Vector. 20へ挿入して、Vector. 21を作製した。Vector. 21は、テトラサイクリンシステムがinsulatorの効果により目的遺伝子の誘導発現が厳密に行えることを証明するための導入遺伝子(Tetracycline system Transgene (Insulator (+)):Tet system-Rep. Tg (+))である。また、Tetracycline system Transgene (Insulator (-)):Tet system-Rep. Tg (-))となるプラスミドベクターは、(9)、(11)〜(13)の工程を除いたものである。
【0063】
(17)テトラサイクリン依存性転写活性化因子(rTetR-VP16)の発現がPhCMVプロモーターによって制御されるプラスミドベクターの作製
PCR法を用いて、beta-globin 遺伝子イントロン2、エキソン3領域(beta-globin splice A/D)遺伝子を増幅・単離した(これをGene. 8とする)。PCRで使用した鋳型は、マウスcDNAライブラリーである。PCRで使用したプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg tct aga gcc tct gct aac cat gtt cat g(配列番号23) 、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg gaa tcc gaa ttc ttt gcc aaa atg atg aga cag cac(配列番号24)である。上記で増幅・単離したbeta-globin splice A/D遺伝子:Gene. 8をEcoRI - XbaI制限酵素処理し、またEcoRI - NheI制限酵素処理したテトラサイクリン依存性転写活性化因子発現プラスミドベクター:Vector. 4へ挿入して、Vector. 22を作製した。
【0064】
(18)テトラサイクリン依存性転写抑制因子(TetR-KRAB)の発現がPhCMVエンハンサー −アクチンプロモーターによって制御されるプラスミドベクターの作製
PCR法を用いたbeta-actinプロモーター領域(beta-actin pro.)遺伝子を増幅、単離した(これをGene. 9とする)。PCRで使用した鋳型は、マウスcDNAライブラリーである。PCRで使用したプライマーは、5' primer Oligo nucleotide : ggg gga tcc tac gta tcg agg tga gcc cca cgt tc(配列番号25) 、及び3' primer Oligo nucleotide : ggg gaa ttc tct aga gcc gcc ggt cac gcc aga ag(配列番号26)である。上記で増幅・単離したbeta-actin pro.遺伝子:Gene. 9をSnaBI - XbaI制限酵素処理し、同様に制限酵素処理したpcDNA3プラスミドベクターへ挿入して、Vector. 23を作製した。
【0065】
CMV enhancerにbeta-actin pro.を連結した(CMV enhancer- beta-globin pro.)。即ち、pcDNA3プラスミドベクター:Vector. 23、およびbeta-globin 遺伝子イントロン2、エキソン3領域(beta-globin splice A/D)遺伝子断片:Gene. 8をEcoRI - XbaI制限酵素処理し、Vector. 23へbeta-globin splice A/Dを挿入して、Vector. 24を作製した。
【0066】
テトラサイクリン依存性転写抑制因子プラスミドベクター:Vector. 8をNruI-KpnI制限酵素処理し、Vector. 8内に存在するpcDNA3プラスミドベクターのCMV pro.を排除した(これをVector. 25とする)。CMV enhancer- beta-globin pro.にbeta-globin splice A/Dを連結した(CMV enhancer- beta-globin pro.- beta-globin splice A/D) pcDNA3プラスミドベクター:Vector. 24をEcoRI- SpeI制限酵素処理し、同様に制限酵素処理した上記Vector. 25へCMV enhancer- beta-globin pro.- beta-globin splice A/Dを挿入した(これをVector. 26とする)。
【0067】
(19)テトラサイクリン系薬剤による遺伝子誘導発現制御を厳密に行うテトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクターの作製
テトラサイクリン依存性転写活性化因子(rTetR-VP16)の発現がPhCMVプロモーターによって制御されるプラスミドベクター:Vector. 22、およびテトラサイクリン依存性転写抑制因子(TetR-KRAB)の発現がPhCMV enhancer - actinプロモーターによって制御されるプラスミドベクター:Vector. 26をApaI- XhoI制限酵素処理しVector. 22へVector. 26を連結して、Vector. 27を作製した。
【0068】
上記プラスミドベクター:Vector. 27のPmlI制限酵素サイトへ、平滑末端(EcoRV制限酵素処理された)のinsulatorを挿入して、Vector. 28を作製した。上記プラスミドベクター:Vector. 28をNheI- NruI制限酵素処理し、同様にして制限酵素処理されたテトラサイクリンシステム完全長(一本化)プラスミドベクター:Vector. 21へ挿入して、Vector. 29を作製した。Vector. 29は、2段階での転写調節因子の競合(CMV enhancerへの転写因子の結合競合およびTREへのテトラサイクリン依存性転写調節因子の結合競合)によりテトラサイクリン系遺伝子誘導発現を厳密に制御することを可能とした本発明の導入遺伝子(Tetracycline system Transgene:Tet system-Rep Tg AD (+))である。
このTetracycline system Transgeneへmev-1型cyt-1遺伝子を導入してTet system- mev-1 Tg AD (+)を作製した。その構造を図11に示す。
【0069】
(B)mev-1 Conditionalトランスジェニックマウスの作製
上記(A)で作製したTet system- mev-1 Tg AD (+)を、マウスの前核期受精卵の雄性前核へ微量注入した。微量注入の方法は、マイクロインジェクション法の常法に従った。
(C)mev-1 Conditionalトランスジェニックマウスのスクリーニング
上記(B)の手法により得られた子マウスの尾部より、ゲノムDNAを抽出しPCR法によりTransgeneに含まれるmev-1型cyt-1遺伝子を増幅させた。mev-1型cyt-1遺伝子の増幅の有無により(結果を図1に示す)、mev-1 Conditional Transgenic miceのスクリーニングを行い、目的とするmev-1 Conditionalトランスジェニックマウスを取得した。
【0070】
実施例3:mev-1マウスの解析
実施例2で作製したマウスは任意の時期に導入遺伝子の発現を制御することのできるマウスである。実施例3では、胎児の発生時期より導入遺伝子の発現を誘導したときの結果を示す。
【0071】
(1)mev-1マウスの解析(活性酸素発生量、ミトコンドリア複合体活性の測定)
MPEC発光試薬をもちい、組織での活性酸素蓄積量の測定をおこなった。具体的には、筋肉、肝臓組織を溶媒 (210 mM mannitol, 70 mM sucrose, 0.1 mM EDTA and 5 mM Tris-HCl, pH 7.4)に10% (w/v)濃度になるよう加え、テフロン(登録商標)ホモジナイザーをもちいて粉砕した。これを遠心分離し、細胞質画分とミトコンドリア画分に分離抽出した。このそれぞれの画分を、反応液(50 mM HEPES-NaOH, pH 7.4, 2 mM EDTA)中に40マイクログラム分加え、0.7 (M のMPEC発光試薬と反応させ、AB-2200 type Luminescencer-PSN (ATTO, Tokyo)をもちいて発光量を測定することで活性酸素量を測定した。
【0072】
その結果を図2に示す。図2の結果から分かるように、組織が大きな肝臓・筋肉において解析をおこなった結果、その蓄積量は野生型のマウスに比べ顕著に増加していることが確認された。
【0073】
さらに、上記組織においてミトコンドリアの酵素活性測定をおこなった。詳しくはエネルギー代謝の中枢を担っている複合体I-IIIおよびII-IIIの酵素活性測定をおこなった。具体的には、上記と同様にミトコンドリア画分を抽出し、文献(Trounce IA, KimYL, Jun AS, Wallace DC. Assessment of mitochondrial oxidative phosphorylation in patient muscle biopsies, lymphoblasts, and transmitochondrial cell lines. Methods Enzymol 1996;264:484-509.)の測定方法に従い測定した。
【0074】
測定結果を図3に示す。図3の結果から分かるように、予想外なことに線虫のmev-1変異体、mev-1細胞株とは異なり、mev-1マウスでは、野生型と比較して優位な変化は確認されなかった。
【0075】
(2)mev-1マウスの解析(個体の大きさなどの観察結果)
飼育時の経過観察から、個体の大きさに変化が観察された。胎児期から成熟期における個体の成長が、野生型のマウスと比較し著しく遅く、線虫のmev-1変異体と同様の結果が得られた。さらに、成熟期以降、個体は徐々に小さくなる傾向にあった。個体の重量について、結果を示す(図1)。この結果は、早老症を示唆する結果となった。また、毛並み等の変化は見られなかったものの、早老症の表現型であると示される脊椎の湾曲が観察された(図1)。さらに、mev-1マウスが直進しているときの歩幅に有意な減少が確認された(図4)。これは、脊椎の湾曲の影響によるものと考えられた。
【0076】
(3)mev-1マウスの解析(視覚異常)
飼育観察から、眼球に白濁が確認された(図5)。また、マウス行動解析(オープン・フィールドテスト)の結果、視覚異常によるものと考えられる歩行異常(回転歩行)が確認された(図5)。オープン・フィールドテストは、50cm四方、高さ50〜60cmの台の上で動くマウスの行動範囲を測定した。マウスの足に墨汁を浸し、マウスの足跡の軌跡を3分間観察した。
【0077】
さらに、角膜、網膜の組織切片解析から、異常が観察された。角膜では細胞体の減少、血管新生が確認された(図6)。また、網膜では細胞層や顆粒層の配列に乱れが確認された(図6)。
【0078】
(4)mev-1マウスの解析(筋肉異常、情動行動異常)
筋肉の張力解析は、前足の筋力テストによる。具体的には、尻尾を引っ張られた状態で前足が重量測定器を掴んでいられたときの重量を測定することにより行った。上記した筋肉の張力解析の結果、mev-1マウスでは、野生型のマウスと比較し顕著に筋力の低下が確認された(図7)。
【0079】
マウス行動解析(高架パイプ歩行テスト)は、1mの高さに、3mm、6mmの金属パイプを架け、逃避台までの距離20cmを移動する時間を測定した。さらに、テスト間にスタート位置に静止してしまう回数、途中で落下する回数も測定した。
高架パイプ歩行テストの結果、パイプを渡り終える歩行時間に優位な増加が認められた(図8)。
【0080】
上記の結果は、パイプからの落下頻度の上昇やパイプの上で停止状態にいる時間が増加していた(図9)ことが原因となった。これらの現象はパイプを握る握力低下、あるいは、恐怖心の増加によるものと考えられた。
【0081】
さらに電子顕微鏡によるミトコンドリアの形態解析をおこなった。その結果を図10に示す。図10に示す結果から、mev-1マウスでは、野生型のマウスに比べミトコンドリアの数の増大、巨大化が確認され横紋筋構造の筋繊維を破壊していることが確認された。
【0082】
(5)mev-1マウスの解析(生殖巣(卵巣)異常)
mev-1メスマウスは不妊であることが確認された。また、組織切片の解析結果から、野生型マウスでの卵胞内の卵母細胞は卵巣の外側に向かうにつれて規則正しく発生が進んでいるのに比べ、mev-1マウスでの卵母細胞の発生過程は卵巣内の位置に関係なく不規則に進んでいた。これらの結果から、不妊の原因は、酸化ストレスにより、排卵にいたるまでの発生が正常におこなわれずに、卵子までの発生を正常に終了する卵母細胞が減少していることにあると予測された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、mev-1マウスの表現型を示す。
【図2】図2は、ミトコンドリアからのスーパーオキシドアニオンの蓄積量を示す。
【図3】図3は、mev-1マウスにおける複合体の酵素活性の測定結果を示す。
【図4】図4は、mev-1マウスにおける歩幅の変動を示す。
【図5】図5は、mev-1マウスにおける視覚異常と歩行異常を示す。
【図6】図6は、mev-1マウスにおける角膜血管新生及び混濁、並びに網膜の形成異常を示す。
【図7】図7は、mev-1マウスの筋肉の張力の変動を示す。
【図8】図8は、mev-1マウスにおける歩行の変動を示す。
【図9】図9は、mev-1マウスの歩行を示す。
【図10】図10は、mev-1マウスの筋肉におけるミトコンドリアの形態変化を示す。
【図11】図11は、Tet system- mev-1 Tg AD (+)の構造を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
SEQUENCE LISTING
<110> TOKAI UNIVERSITY
<120> A gene recombinant animal having a mutant SDHC gene derived from mammals
<130> A51400A
<160> 26
<210> 1
<211> 169
<212> PRT
<213> mouse
<400> 1
Met Ala Ala Phe Leu Leu Arg His Val Ser Arg His Cys Leu Arg Ala
1 5 10 15
His Leu Asn Ala Gln Leu Cys Ile Arg Asn Ala Ala Pro Leu Gly Thr
20 25 30
Thr Ala Lys Glu Glu Met Glu Arg Phe Trp Lys Lys Asn Thr Ser Ser
35 40 45
Asn Arg Pro Leu Ser Pro His Leu Thr Ile Tyr Lys Trp Ser Leu Pro
50 55 60
Met Ala Leu Ser Glu Cys His Arg Gly Ser Gly Ile Ala Leu Ser Gly
65 70 75 80
Gly Val Ser Leu Phe Gly Leu Ser Ala Leu Val Leu Pro Gly Asn Phe
85 90 95
Glu Ser Tyr Leu Met Phe Val Lys Ser Leu Cys Leu Gly Pro Thr Leu
100 105 110
Ile Tyr Ser Ala Lys Phe Val Leu Val Phe Pro Leu Met Tyr His Ser
115 120 125
Leu Asn Gly Ile Arg His Leu Leu Trp Asp Leu Gly Lys Gly Leu Ala
130 135 140
Ile Pro Gln Val Trp Leu Ser Gly Val Ala Val Val Val Leu Ala Val
145 150 155 160
Leu Ser Ser Gly Gly Leu Ala Ala Leu
165
<210> 2
<211> 510
<212> DNA
<213> mouse
<400> 2
atg gct gcg ttc ttg ctg aga cat gtc agc cgt cac tgc ctc cga gcc 48
Met Ala Ala Phe Leu Leu Arg His Val Ser Arg His Cys Leu Arg Ala
1 5 10 15
cac ctg aat gct cag ctt tgt atc aga aat gct gct cct ttg gga acc 96
His Leu Asn Ala Gln Leu Cys Ile Arg Asn Ala Ala Pro Leu Gly Thr
20 25 30
aca gct aag gag gag atg gag cgg ttc tgg aag aag aac acg agt tca 144
Thr Ala Lys Glu Glu Met Glu Arg Phe Trp Lys Lys Asn Thr Ser Ser
35 40 45
aac cgt cct ctg tct ccc cat ttg act atc tac aaa tgg tct ctt ccc 192
Asn Arg Pro Leu Ser Pro His Leu Thr Ile Tyr Lys Trp Ser Leu Pro
50 55 60
atg gca ctg tcc gaa tgc cac cga ggc tct gga ata gcc ttg agt gga 240
Met Ala Leu Ser Glu Cys His Arg Gly Ser Gly Ile Ala Leu Ser Gly
65 70 75 80
ggg gtc tct ctt ttt ggc ctg tcg gca ctg gtg ctt cct ggg aac ttt 288
Gly Val Ser Leu Phe Gly Leu Ser Ala Leu Val Leu Pro Gly Asn Phe
85 90 95
gag tcg tat ttg atg ttt gtg aag tcc ctg tgt ttg ggg cca aca ctg 336
Glu Ser Tyr Leu Met Phe Val Lys Ser Leu Cys Leu Gly Pro Thr Leu
100 105 110
atc tac tcg gct aag ttt gtg ctt gtc ttc ccg ctc atg tac cac tca 384
Ile Tyr Ser Ala Lys Phe Val Leu Val Phe Pro Leu Met Tyr His Ser
115 120 125
ctg aat ggg atc cga cac ttg cta tgg gac cta gga aaa ggc ctg gca 432
Leu Asn Gly Ile Arg His Leu Leu Trp Asp Leu Gly Lys Gly Leu Ala
130 135 140
ata ccc cag gtc tgg ctg tct gga gtg gcg gtc gtg gtt ctt gct gtg 480
Ile Pro Gln Val Trp Leu Ser Gly Val Ala Val Val Val Leu Ala Val
145 150 155 160
ttg tcc tct ggc ggg ctg gcc gcc ctg tga 510
Leu Ser Ser Gly Gly Leu Ala Ala Leu
165
<210> 3
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 3
ggggaattca tggctttctt gctgagacat gtcagc 36
<210> 4
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 4
gggaagcttt cacagggcgg ccagccc 27
<210> 5
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 5
ggggaattcc tcttcccatg gcactgtccg aatgcc 36
<210> 6
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 6
gggaagcttt cacagggcgg ccagccc 27
<210> 7
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 7
gggggtacca atattgctag cgagcttggc ccattgcata cgttg 45
<210> 8
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 8
gggctcgagc acgtgaagct tcggatccga attcgctagc ggggccgcgg aggctggatc 60
<210> 9
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 9
gggggatcca gacatgataa g 21
<210> 10
<211> 39
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 10
gggggtaccg ggcccagatc tggtcgagct gatacttcc 39
<210> 11
<211> 33
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 11
ggggaattca agcttggcgg tggtgctttg tct 33
<210> 12
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 12
gggggatcct taaactgatg atttgatttc aaatgcagtc 40
<210> 13
<211> 48
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 13
ggggaattcg ccgccaccat ggctgcgttc ttgctgagac atgtcagc 48
<210> 14
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 14
gggaagcttt ctagaaaatc acagggcggc cagccc 36
<210> 15
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 15
ggggaattcc tcttcccatg gcactgtccg aatgcc 36
<210> 16
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 16
gggaagcttt ctagaaaatc acagggcggc cagccc 36
<210> 17
<211> 29
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 17
ggggatatcg ggacagcccc cccccaaag 29
<210> 18
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 18
ggggatatcc tcactgactc cgtcctgg 28
<210> 19
<211> 81
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 19
gggtctagaa atattaagct ttgcggccgc atgcccaaga agaagcgcaa ggtggaggac 60
gccatggtga gcaagggcga g 81
<210> 20
<211> 42
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 20
gggggtaccg ggccccggat cccttgtaca gctcgtccat gc 42
<210> 21
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 21
gggggatcca tggaagacgc caaaaac 27
<210> 22
<211> 35
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 22
gggggtaccg ggcccttaca atttggactt tccgc 35
<210> 23
<211> 31
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 23
gggtctagag cctctgctaa ccatgttcat g 31
<210> 24
<211> 39
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 24
ggggaatccg aattctttgc caaaatgatg agacagcac 39
<210> 25
<211> 35
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 25
gggggatcct acgtatcgag gtgagcccca cgttc 35
<210> 26
<211> 35
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: primer
<400> 26
ggggaattct ctagagccgc cggtcacgcc agaag 35


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が導入されており、活性酸素種(ROS)を過剰産生し、成熟期以降に体重の減少を示し、かつ視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常を示すことを特徴とする、遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【請求項2】
上記変異SDHC遺伝子が、C.elegansのcyt−1遺伝子がコードするタンパク質の71番目のアミノ残残基であるグリシンに対応するSDHC遺伝子がコードするタンパク質中のアミノ酸残基がグルタミン酸又はアスパラギン酸に置換している変異SDHC遺伝子である、請求項1に記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【請求項3】
哺乳動物由来の変異SDHC遺伝子が、マウス由来の変異SDHC遺伝子である、請求項1又は2に記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【請求項4】
マウス由来の変異SDHC遺伝子によりコードされるタンパク質が、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質である、請求項1から3の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物またはその一部を用いることを特徴とする、過剰の活性酸素種(ROS)を抑制する作用を有する物質のスクリーニング方法。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載の遺伝子組み換え非ヒト哺乳動物を、内在性酸化ストレスを起因とする生活習慣病のモデル動物として使用する方法。




【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−314242(P2006−314242A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139588(P2005−139588)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】