説明

商品陳列ケース

【課題】吊り下げて陳列する際の作業性が良く、また、多数積み重ねて梱包する際に余分な梱包容積が不要となる商品陳列ケースを提供する。
【解決手段】ケース1の背面板5に上端部が開放された吊り下げ片収納凹部7が設けられ、この収納凹部7の左右両側面に上端の閉塞した上下方向のガイド溝8が設けられる。吊り下げ孔12と、前記ガイド溝8に係合する係合部13とを有する吊り下げ片3が前記収納凹部7に所定のスライド範囲をもって上下方向にスライド自在に収納される。この吊り下げ片3が前記収納凹部の上端に引き上げられた状態で、吊り下げ片3の吊り下げ孔12がケース1の上端部から突き出す。突き出した吊り下げ孔12を商品陳列台などの吊り下げ棒30に通し、商品陳列ケースを吊り下げて陳列することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商品を収納して陳列する商品陳列ケースに関する。特に、商品を収納した状態で吊り下げて陳列する商品陳列ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、化粧用品や、文具などの小型の商品は、透明または半透明のプラスチック製の蓋を備えた商品陳列ケースに入れられ、これらの商品の入った商品陳列ケースが、店頭に陳列され販売されている。
【0003】
上記の商品陳列ケースを店頭に陳列するために、商品を入れた商品陳列ケースを上端部に吊り下げ孔を設けたフィルム製の袋に入れ、その袋の吊り下げ孔に先端が上向きに折り曲げられた吊り下げ棒を通すことにより、商品陳列台に吊り下げて陳列するものがある。また、ある程度厚みのある商品陳列ケース自体に前後方向に貫通する吊り下げ孔を設け、この吊り下げ孔に商品陳列台の吊り下げ棒を通してその容器を吊り下げて陳列するものもある。
【0004】
上記のフィルム製の袋に入れて陳列する商品陳列ケースは、これをあらかじめフィルム製の袋に入れる作業が必要となるため作業性が悪く、また、そのフィルム製の袋を必要とする分コスト高となるという問題があった。
【0005】
上記の商品陳列ケース自体に吊り下げ孔を設けた商品陳列ケースは、上向きに曲げられた吊り下げ棒の先端部分にその吊り下げ孔を通す際に、商品陳列ケース自体にある程度の厚みがある場合には、商品陳列ケースを傾けた状態を保ちながら通す必要があるだけでなく、多数の商品陳列ケースを吊り下げるには時間がかかり、作業性が悪いという問題があった。また、その吊り下げ孔を形成する専用スペースが必要なことから、その分デッドスペースとなる。さらに、前記商品陳列ケースを多数重ねて梱包すると、吊り下げ孔の周辺部分によって、余分な梱包容積が必要になるという問題があった。
【0006】
上記の問題を解決するために、従来から、蓋を備えたケースの上端部に吊り下げ部を突き出して設けた商品陳列ケースが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−276938号公報
【0007】
上記特許文献1の商品陳列ケースは、板状の吊り下げ部を根元で折り曲げることができ、その折り曲げた吊り下げ部がケース上端面からはみ出さないように形成されたものである。これにより、この商品陳列ケースを吊り下げる際には、その吊り下げ部を起こして、前述の吊り下げ棒などに通して吊り下げることができるだけでなく、前記吊り下げ部は板状に形成されたものであるため、商品陳列ケースを傾けずに吊り下げることができる。
【0008】
また、ケースの上端部に吊り下げ部が突き出して設けられているので、商品陳列ケースの商品収納スペースが確保でき、デッドスペースがなくなる。また、この商品陳列ケースは、梱包する際に、その吊り下げ部を折り曲げた状態で順次重ねることができるので、余分な梱包容積を小さくすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1の商品陳列ケースは、その吊り下げ部の根元部分を他の部分よりも肉厚を薄く形成することで折り曲げることができるものの、その頻度が増えると肉厚の薄い部分が破断し、吊り下げ部がちぎれてしまうおそれがあった。
【0010】
また、この商品陳列ケースを吊り下げるには、いちいち吊り下げ部を起こす必要があるだけでなく、その吊り下げ部を起こした状態に保って吊り下げる必要があるので、多数の商品陳列ケースを吊り下げる場合に、時間がかかるという問題があった。
【0011】
さらに、この商品陳列ケースは、折り曲げた吊り下げ部がケースから突き出しているので、梱包するため重ねると、折り曲げた吊り下げ部の厚み分だけ、余分な梱包容積が必要となる。
【0012】
そこで、この発明は、吊り下げて陳列する際の作業性が良く、また、多数重ねて梱包する際に余分な梱包容積が不要となる商品陳列ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明では、蓋を備えたケースに吊り下げ部が突き出して設けられた商品陳列ケースにおいて、前記吊り下げ部は、前記ケースと別体の吊り下げ片からなり、この吊り下げ片はフック部を有し、前記ケースの背面部に上端部が開放された吊り下げ片収納凹部が設けられ、前記吊り下げ片が前記吊り下げ片収納凹部に所定のスライド範囲をもって上下方向にスライド自在に収納され、前記スライド範囲は、前記吊り下げ片が前記吊り下げ片収納凹部の上端に引き上げられた状態で、その吊り下げ片のフック部が前記ケースの上端部から突き出す範囲に設定された構成を採用した。
【0014】
この構成によると、上記吊り下げ片を吊り下げ片収納凹部の上端部に引き上げると、前記吊り下げ片のフック部が前記ケースの上端部よりも上に突き出す。この突き出した吊り下げ片のフック部に吊り下げ棒を通すことで商品陳列ケースを吊り下げて陳列することができる。
【0015】
一方、上記吊り下げ片を吊り下げ片収納凹部の下端部にスライドさせると、吊り下げ片が吊り下げ片収納凹部に収納されるので、吊り下げ片の上端部がケースの上端部から突出せず、この商品陳列ケースを多数重ねて梱包しても、その梱包容積は、重ねた商品陳列ケース自体の容積分ですみ、余分な梱包容積を省くことができる。
【0016】
また、上記構成において、上記吊り下げ片収納凹部に上記吊り下げ片がスライド自在に係合するガイド溝が形成され、このガイド溝の上端部に、上方に向かって開口幅が小さく形成されたくさび部が設けられ、前記吊り下げ片が前記吊り下げ片収納凹部の上端部に引き上げられた場合に、前記吊り下げ片の係合部が前記くさび部に挟持された構成を採用することもできる。
【0017】
これにより、吊り下げ片が吊り下げ片収納凹部の上端部に引き上げられると、この吊り下げ片がガイド溝のくさび部に挟持され、そのフック部が前記ケースの上端部よりも上に突き出した状態で保たれる。このため、吊り下げ片のフック部を吊り下げ棒などに通すことで容易に商品陳列ケースを吊り下げて陳列することができる。
【0018】
また、上記ケースの左右両側壁の内側にガイド部が対向して設けられ、この各ガイド部に仕切り板が着脱自在に取り付けられた構成とすると、所定の長さを有する商品を前記仕切り板とケース下面との間で揃えて収納することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、以上のように構成したので、上記吊り下げ片をそのフック部がケースの上端部よりも上に突き出した状態に保つことができ、そのフック部を吊り下げ棒などに通して、商品陳列ケースを容易に吊り下げて陳列することができるので、吊り下げる際の作業性が向上する。
【0020】
また、吊り下げ片を吊り下げ片収納凹部の下端部にスライドさせると、吊り下げ片の上端部がケースの上端部から突出しないので、この商品陳列ケースを多数重ねて梱包しても、梱包容積が重ねた商品陳列ケース自体の容積分ですみ、余分な梱包容積が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
商品陳列ケースは、図1、図2に示すように、プラスチック製の透明なケース1と、このケース1に嵌め合わされる蓋2と、ケース1にスライド自在に取り付けられる吊り下げ片3と、前記ケース1内部に取り付けられる仕切り板4とから構成され、商品陳列台などの吊り下げ棒30に前記吊り下げ片3を通して吊り下げて陳列されるものである。
【0022】
上記ケース1は、上部に半円部分を有する矩形の背面板5と、その背面板5の外縁の全周にわたり突き出して設けられる側壁6と、前記背面板5の半円部分に凹んで設けられる上端が開放した吊り下げ片収納凹部7とからなる。
【0023】
上記側壁6は、ケース1の背面板5の外縁から所定幅内側に直角に突き出して設けられる。これにより、上記蓋2をケース1に嵌め合わせた際に、背面板5の外縁に蓋2の側壁11の端部が当たるので、背面板5の吊り下げ片収納凹部7に収納される吊り下げ片3が蓋2の側壁11に当たらない。
【0024】
上記背面板5の吊り下げ片収納凹部7(以下、収納凹部という。)は、図3に示すように、背面板5の半円部分に所定幅aおよび所定深さをもって凹んで設けられ、その上端部が開放したものである。この収納凹部7の左右両側面には、上端が閉塞する上下方向のガイド溝8、8が設けられる。
【0025】
上記ガイド溝8、8は、その上端部にくさび部16が設けられる。このくさび部16は、その開口幅が上端部に向かって小さくなるように形成されたものである(図6参照)。そのくさび部16の開口幅は、後述する吊り下げ片3の係合部13の厚みよりも小さく形成され、ガイド溝8のその他の部分の開口幅は、前記吊り下げ片3の係合部13の厚みよりも大きく形成される。これにより、吊り下げ片3の係合部13をガイド溝8に係合して、この吊り下げ片3を収納凹部7で上下方向にスライドさせることができる。
【0026】
また、この吊り下げ片3を上方にスライドさせ、その係合部13を収納凹部7のガイド溝8、8の上端部に移動させると、ガイド溝8のくさび部16に係合部13が挟持され、吊り下げ片3が収納凹部7の上端部で保持される。保持された吊り下げ片3は、その吊り下げ孔12がケース1の上端から突き出しているので、この吊り下げ孔12に吊り下げ棒30を通して、商品陳列ケースを傾けることなく容易に吊り下げることできる。なお、図5(b)に示すように、前記ガイド溝8と連通する成形穴15は、前記ケース1のガイド溝8を押出し成形で形成するためのものである。
【0027】
上記ケース1に嵌め合わせられる蓋2は、図2に示すように、透明のプラスチック製であり、上記ケース1の背面板5と同形の前面板9の外縁に側壁11が突き出して設けられたものである。この側壁11は、上記ケース1の側壁と同じ高さに形成される。これにより、この蓋2をケース1に嵌め合わせることができる。
【0028】
上記ケース1の収納凹部7に取り付けられる吊り下げ片3は、図3に示すように、板状に形成され、上端部分にはフック部となる吊り下げ孔12が、下端部分には二股に形成された係合部13、13がそれぞれ左右方向に突き出して設けられたものである。この吊り下げ片3の幅bは、上記ケースの収納凹部7の左右方向の幅aよりも小さく設定され、かつ係合部13、13の外側の幅cは、上記ケースの収納凹部7の左右方向の幅aよりも大きく設定される。これにより、吊り下げ片3の係合部13、13を、互いに内向きにたわませて収納凹部7のガイド溝8、8に係合させると、吊り下げ片3を収納凹部7内で所定のスライド範囲hをもって上下方向にスライドさせることができる(図4、図5参照)。なお、前記吊り下げ片3の上端部の吊り下げ孔12を、鉤状のフック部としてもよい。
【0029】
また、上記吊り下げ片3は、図3に示すように、その上下方向の長さeが上記ケース1の収納凹部7の長さdよりも短く設定され、かつ、その各係合部13、13の突き出した部分の上端部から吊り下げ孔12の下端部までの距離gが、前記収納凹部7のガイド溝8上端部から収納凹部7上端部までの距離fよりも長く設定される。
【0030】
上記の設定により、前記吊り下げ片3を収納凹部7の上端に引き上げると、吊り下げ片3の吊り下げ孔12が前記ケース1の上端部よりも上に位置することとなる。このため、この突き出した吊り下げ片3の吊り下げ孔12に吊り下げ棒30を通すことで商品陳列ケースを吊り下げて陳列することができる。一方、前記吊り下げ片3を収納凹部7の下端に押し下げると、吊り下げ片3の上端部が前記ケース1の上端部から突出しない(図4、図5参照)。このため、この商品陳列ケースを多数重ねて梱包しても、その梱包容積は、重ねた商品陳列ケース自体の容積分ですみ、余分な梱包容積を省くことができる。
【0031】
上記ケース1の左右両側壁6の内側には、図2に示すように、対向するガイド部14が
設けられる。この各ガイド部14には、上記商品陳列ケースを吊り下げた状態での前後方向に溝が設けられ、この溝に仕切り板4が着脱自在に差し込まれる。これにより、所定の長さを有する商品を前記仕切り板4とケース1下面との間で複数個揃えて収納することができる。また、前記仕切り板4を取り外して、ケース1の商品収納スペースを大きくして、長さの異なる商品を混在して収納することもできる。
【0032】
商品陳列ケースは、以上のように構成されるものであり、次にその使用方法を説明する。
まず、上記吊り下げ片3の各係合部13を互いに接近する内向きにたわませて、吊り下げ孔12を上向きにして、係合部13をケース1の収納凹部7のガイド溝8、8に係合させる。これにより、この吊り下げ片3を収納凹部7で上下方向にスライドさせることができる。
【0033】
次に、必要に応じて仕切り板4をケース1のガイド部14に差し込み、陳列する商品をケース1内に収納して、蓋2をケース1に嵌め合わせる。その後、ケース1から蓋2が外れないようにするために粘着テープなどで固定する。
【0034】
次に、図6に示すように、吊り下げ片3を上向きにスライドさせる。上記収納凹部7のガイド溝8は、上述のように、その開口幅が上端部に向かって小さくなるように形成されているので、吊り下げ片3が収納凹部7の上端部にスライドされると、吊り下げ片3が収納凹部7の上端部で保持される。
【0035】
上記収納凹部7の上端部で保持された吊り下げ片3は、その吊り下げ孔12がケース1から上方に突き出しているものである。このため、商品陳列台などの吊り下げ棒30に吊り下げ孔12を通し、商品陳列ケースを傾けることなく吊り下げて陳列することができるので、商品陳列ケースを吊り下げる際の作業性が向上する(図1参照)。
【0036】
また、図4、図5に示すように、吊り下げ片3を下端までスライドさせると、この吊り下げ片3はケース1の上端から突き出さない。このため、商品を収納した商品陳列ケースを梱包するために積み重ねても、その梱包容積は、重ねた商品陳列ケース自体の容積分ですみ、余分な梱包容積を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態の商品陳列ケースを示す斜視図
【図2】同上の商品陳列ケースの蓋側前方から見た分解斜視図
【図3】同上の商品陳列ケースのケース側背面から見た分解斜視図
【図4】同上の吊り下げ片が下端に移動した状態を示す斜視図
【図5】(a)同上の図4のA−A線における商品陳列ケースの断面図、(b)同上の図4のB−B線における商品陳列ケースの断面図
【図6】同上の商品陳列ケースの吊り下げ片収納凹部の拡大斜視図
【符号の説明】
【0038】
1 ケース
2 蓋
3 吊り下げ片
4 仕切り板
5 背面板
6 側壁
7 吊り下げ片収納凹部
8 ガイド溝
9 前面板
11 側壁
12 吊り下げ孔
13 係合部
14 ガイド部
15 成形穴
16 くさび部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋(2)を備えたケース(1)に吊り下げ部が突き出して設けられた商品陳列ケースにおいて、
上記吊り下げ部は、上記ケース(1)と別体の吊り下げ片(3)からなり、この吊り下げ片(3)はフック部(12)を有し、上記ケース(1)の背面板(5)に上端部が開放された吊り下げ片収納凹部(7)が設けられ、前記吊り下げ片(3)が前記吊り下げ片収納凹部(7)に所定のスライド範囲をもって上下方向にスライド自在に収納され、前記スライド範囲は、前記吊り下げ片(3)が前記吊り下げ片収納凹部(7)の上端に引き上げられた状態で、その吊り下げ片(3)のフック部(12)が前記ケース(1)の上端部から突き出す範囲に設定されたことを特徴とする商品陳列ケース。
【請求項2】
上記吊り下げ片収納凹部(7)に上記吊り下げ片(3)がスライド自在に係合するガイド溝(8)が形成され、このガイド溝(8)の上端部に、開口幅が上方に向かって小さく形成されたくさび部(16)が設けられ、前記吊り下げ片(3)が前記吊り下げ片収納凹部(7)の上端部に引き上げられた場合に、前記吊り下げ片(3)の係合部(13)が前記くさび部(16)に挟持されたことを特徴とする請求項1に記載の商品陳列ケース。
【請求項3】
上記ケース(1)の左右両側壁の内側にガイド部(14)が対向して設けられ、この各ガイド部(14)に仕切り板(4)が着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の商品陳列ケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate