説明

商品陳列用吊り下げ具

【課題】一つ孔の口紙に使用可能でありながら、外れにくく、しかも、変形しにくい商品陳列用吊り下げ具を提供する。
【解決手段】商品陳列用吊り下げ具1は、口紙2に形成されたフック取付孔5の右端5aが挿入される係合溝12と、取付孔左端5bが挿入される係合溝11とを備える。係合溝12は、導入部15と導入部から下方に分岐した挿入部16とを備え、挿入部16の入口16aには返し19が形成されている。導入部15の最奥部には、返し19に臨んで湾部20が形成されている。商品が引っ張られると、取付孔左端5bが斜面部11bを滑り降り口紙2が左方に移動する。これに伴い、取付孔右端5aが湾部20に入り込み、返し19によって口紙2がロックされる。これにより、取付孔右端5aが挿入部16に入り込みにくくなり、吊り下げ具1が口紙2から外れてしまうのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を展示販売する際に用いられる商品陳列用吊り下げ具に関し、特に、靴下や下着類などのように、スーパーや百貨店等において吊り下げて陳列、販売されている商品に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーや百貨店等においては、省スペースや見栄えの良さを考慮して、靴下や肌着、ハンカチ、パンティストッキング、文房具等の小物商品を陳列棚に吊り下げて陳列、販売を行っている。図8は、従来の商品陳列用吊り下げ具の一例の構成を示す説明図である。従来の吊り下げ具51は、ポリエチレン等の合成樹脂によって形成された鉤形のフックであり、図8に破線にて示したように口紙52に取り付けられて使用される。吊り下げ具51は、フック部53と、口紙52への装着部54とから構成され、装着部54には、2つの係合溝55,56が設けられている。口紙52は、一枚の紙片を2つ折りにして形成されており、その上辺部57には、吊り下げ具の取付孔58が開口形成されている。口紙52の内側には、靴下等の商品59が取り付けられる。
【0003】
吊り下げ具51は、次のようにして口紙52に取り付けられる。まず、吊り下げ具51の係合溝56を取付孔58の図中右端側に差し込み、係合溝56の奥まで挿入する。このとき、吊り下げ具51は、取付孔58内にて図中右側に寄った状態となり、係合溝55の開口端が取付孔58の左端側に対向する。次に、吊り下げ具51を図中右側にずらし、係合溝55を取付孔58の左端側に差し込む。この際、図8の吊り下げ具51では、係合溝56が段付形状となっているため、その左右の動きが段部56aによって規制され、吊り下げ具51が取付孔58から抜け出ないようになっている。
【0004】
一方、このような従来の吊り下げ具51は、吊り下げ具51が合成樹脂で形成されているため、紙製の口紙52と共に燃えるゴミとして廃棄できない。ところが、吊り下げ具51を紙にて製造すると、所望の強度を得るには、吊り下げ具の厚みや形状を現状よりもかなり大きくする必要がある。例えば、吊り下げ具51をバルカナイズドファイバなどにて形成した場合、吊り下げ陳列された商品を引っ張るなどしてフック部53が上方(特に、斜め上方)に引っ張られると、係合溝55,56が開き易くなるという問題が生じる。特に、係合溝56は、図中下方側の下辺部60のスパンSが長いため下方に開き易く、係合溝56が開いてしまうと、吊り下げ具51が口紙52から離脱し易くなる。
【0005】
そこで、本発明者は、紙製でありながら所望の強度を確保し得る特許文献1のような吊り下げ具を考案した。図9は、特許文献1のものを改良した吊り下げ具61の構成を示す説明図である。吊り下げ具61には、係合足62,63が形成されており、口紙64に設けられた取付孔65,66に取り付けられる。ここでは、吊り下げ具61は次のようにして口紙64に取り付けられる。まず、平面状に展開した口紙64に対し、係合足63を取付孔66に挿入する。その後、口紙64を図中矢示X方向に湾曲させ、係合足62を取付孔65に挿入する。そして、口紙64を元に戻すと、両係合足62,63が取付孔65,66に挿入され、係合足62,63の上縁が口紙64の裏側に係止される。
【0006】
これにより、吊り下げ具61は、口紙64に抜け止めされた状態で取り付けられ、その後、口紙64を折り曲げ、商品を取り付ける。このように、吊り下げ具61は、取付孔65,66に係合足62,63を挿入、係止するだけで口紙64に固定され、しかも、紙製でありながら従来の合成樹脂製品と同等の強度を得ることができる。このため、吊り下げ具61を使用した商品では、吊り下げ具61を口紙64と共に燃えるゴミとして廃棄することができ、吊り下げ具を分離して分別廃棄する手間を省くことができる。また、不燃廃棄物も減少するため、環境保全も図られる。
【特許文献1】特開2001-70109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、従来の吊り下げ具51は、来店者が商品を下に引っ張ると、図8において右方向にずれやすく、係合溝56の奥に口紙52が入り込んでしまう場合がある。特に、お客様が、吊り下げられている商品を手に取って見るなどし、商品が下に引っ張られ、図8において矢示Y方向に吊り下げ具51が引っ張られるとこの現象が生じ易い。その際、係合溝56の奥まで口紙52が入ると、係合溝55の開口端が取付孔58の左端側に臨んでしまい、吊り下げ具51が口紙52から容易に外れ得る状態となる。その状態で吊り下げ具51がさらに引っ張られると、図10に示すように、吊り下げ具51の一端が口紙52から脱出し、場合によっては、吊り下げ具51が外れてしまうおそれがある。
【0008】
これに対し、図9の吊り下げ具61では、口紙64を湾曲させながら取付孔65,66に取り付けるため、口紙64を折り曲げて商品を取り付けた後は、吊り下げ具61は口紙64から簡単には離脱しない。しかしながら、吊り下げ具61の場合、吊り下げ具61とは異なり、口紙64に2個の取付孔65,66が必要となるため、取付孔58が1個の従来の口紙52には吊り下げ具61を使用することはできない。すなわち、図9の吊り下げ具61を使用する場合には、従来とは異なる二つ孔の口紙を使用する必要があり、口紙製造用の型を新たに製作するか、従来の型を改造する必要が生じる。このため、吊り下げ具61は、従来の吊り下げ具51に比して、廃棄性やデザイン性に優れているにもかかわらず、初期製造コストが嵩むという問題があり、同様の性能で一つ孔に対応可能な製品が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、一つ孔の口紙に使用可能でありながら、外れにくく、しかも、変形しにくい商品陳列用吊り下げ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の商品陳列用吊り下げ具は、商品の包装体に取り付けられる装着部と、前記商品を吊り下げるための吊り下げ支持部とを備えてなる商品陳列用吊り下げ具であって、前記装着部は、前記包装体に形成された取付孔の一端側が挿入される第1係合溝と、前記取付孔の他端側が挿入される第2係合溝とを備える装着部とを備え、前記第1係合溝は、前記吊り下げ具の幅方向の一端部側に開口し中心方向に延伸する導入部と、前記導入部から下方に分岐して中心方向に延伸する挿入部と、前記挿入部の入口に形成された舌部と、前記舌部に臨んで前記導入部の最奥部に形成された湾部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、第1係合溝の挿入部入口に舌部を設けると共に、この舌部に臨んで導入部の最奥部に湾部を形成したので、お客様が商品を引っ張っても、取付孔の一端側が湾部に入り込み、包装体がそこでロックされ、吊り下げ具が取付孔から容易に離脱しない。つまり、包装体が湾部に入り込むと、舌部の作用により、包装体の下方への移動が規制され、取付孔の一端側が挿入部に入り込みにくくなり、吊り下げ具が包装体から外れにくくなる。
【0012】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部の最奥端を当該吊り下げ具の中心線Oよりも前記一端部側に配置しても良い。これにより、挿入部が吊り下げ具の中心より手前で止まり、従来の吊り下げ具の係合溝に比して係合溝の長さが短くなる。このため、第1係合溝の下側の第1下片部のスパンSが短くなり、第1下片部の上下方向への曲げ強度が向上する。
【0013】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記装着部を、前記第1係合溝の下側に配置された第1下片部と、前記第2係合溝の下側に配置された第2下片部とを備える構成とし、第1下片部の上下方向の幅を、前記挿入部の最奥端側の幅Tの方が前記挿入部の入口近傍の幅Tよりも広く(T>T)形成しても良い。これにより、第1下片部の基部の幅が広くなり、第1下片部の上下方向への曲げ強度が向上する。
【0014】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部の上縁を前記下片部の上縁よりも下方に形成しても良い。これにより、取付孔に当該吊り下げ具が装着された後、取付孔の一端側が挿入部に入り込みにくくなり、吊り下げ具が包装体から外れにくくなる。
【0015】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部を、最奥端側に向かって上方に湾曲した形状に形成しても良い。これにより、取付孔に当該吊り下げ具を装着する際に、取付孔の一端側の部位がスムーズに挿入部に導入され、吊り下げ具の装着性が向上する。
【0016】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記第2係合溝の奥部に、前記第2係合溝の上縁奥部側から下縁入口側に向かって延びる斜面部を設けても良い。これにより、当該商品陳列用吊り下げ具が引き上げられると、取付孔の他端側の部位がこの斜面部を滑り降りる。それに伴い、取付孔の一端側が吊り下げ具の中心部側に寄せられ湾部に嵌合する。
【0017】
前記商品陳列用吊り下げ具において、前記第1及び第2係合溝に挿入された前記包装体は、当該商品陳列用吊り下げ具を引き上げたとき、前記取付孔の他端側の部位が前記斜面部を下ると共に、前記取付孔の一端側の部位が前記湾部に嵌合するようにしても良い。これにより、商品が下に引っ張られるなどして吊り下げ具が引き上げられると、取付孔の一端側が湾部に嵌合してロックされ、吊り下げ具が取付孔から容易に離脱しなくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の商品陳列用吊り下げ具によれば、商品の包装体に取り付けられる装着部と、商品を吊り下げるための吊り下げ支持部とを備えてなる商品陳列用吊り下げ具であって、装着部に、包装体に形成された取付孔の一端側が挿入される第1係合溝と、取付孔の他端側が挿入される第2係合溝とを備える装着部とを設けると共に、第1係合溝に、吊り下げ具の幅方向の一端部側に開口し中心方向に延伸する導入部と、導入部から下方に分岐して中心方向に延伸する挿入部と、挿入部の入口に形成された舌部と、舌部に臨んで前記導入部の最奥部に形成された湾部とを設けたので、お客様が商品を引っ張っても、取付孔の一端側が湾部に入り込み、包装体をそこでロックすることができる。このため、取付孔の一端側が挿入部に入り込み、挿入部奥部まで進入するのを阻止でき、吊り下げ具が包装体から外れてしまうことを防止できる。従って、本発明の商品陳列用吊り下げ具を用いることにより、吊り下げ具をより確実に包装体に装着することが可能となる。
【0019】
また、本発明の商品陳列用吊り下げ具では、従来の吊り下げ具と同様に、一つ孔の包装体に取り付けることができ、その際、包装体の取付孔の寸法は、従前同様の寸法でも良い。このため、本発明の商品陳列用吊り下げ具の採用に当たり、新たな型を製作したり、従来の型を改造したりする必要はなく、初期コストが嵩むことなく、従来の一つ孔の包装体にそのまま使用することが可能となる。
【0020】
また、挿入部の最奥端を当該吊り下げ具の中心線Oよりも一端部側に配置することにより、挿入部が吊り下げ具の中心より手前で止まり、従来の吊り下げ具の係合溝に比して係合溝の長さが短くすることができる。このため、第1係合溝の下側の第1下片部のスパンSが短くなり、第1下片部の上下方向への曲げ強度が向上させることができ、従来品よりも薄い材料でも強度を確保することが可能となる。従って、従来品に比して材料費を抑えることができ、コストの低減と共に、資源の無駄使いをなくし、環境保全を図ることが可能となる。また、吊り下げ具自体の重量も軽減されるため、持ち運び易く、取付作業効率も向上し、運送費を節約できると共に、作業工数も削減され人件費も抑えられるため、従来品に比して資材製造コストを大幅に削減できる。
【0021】
さらに、装着部を、第1係合溝の下側に配置された第1下片部と、第2係合溝の下側に配置された第2下片部とを備える下部片とを有する構成とし、第1下片部の上下方向の幅を、挿入部の最奥端側の幅Tの方が挿入部の入口近傍の幅Tよりも広く(T>T)形成することにより、第1下片部の基部の幅が広くなり、第1下片部の上下方向への曲げ強度が向上し、前述同様の効果が得られる。
【0022】
加えて、挿入部の上縁を下片部の上縁よりも下方に形成することにより、取付孔に当該吊り下げ具が装着された後、取付孔の一端側が挿入部に入り込みにくくなり、取付孔一端側が挿入部奥部まで進入し、吊り下げ具が包装体から外れてしまうことを防止でき、吊り下げ具をより確実に包装体に装着することが可能となる。
【0023】
また、第2係合溝の奥部に、第2係合溝の上縁奥部側から下縁入口側に向かって延びる斜面部を設けることにより、当該商品陳列用吊り下げ具が引き上げられると、取付孔の他端側の部位がこの斜面部を滑り降り、それに伴い、取付孔の一端側が吊り下げ具の中心部側に寄せられ湾部に嵌合しロックされるので、吊り下げ具が取付孔から容易に離脱しなくなる。このため、吊り下げ具が包装体から外れてしまうことを防止でき、吊り下げ具をより確実に包装体に装着することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である商品陳列用吊り下げ具1(以下、吊り下げ具1と略記する)の構成を示す説明図である。本発明による吊り下げ具1は、口紙(包装体)2に取り付けられる装着部3と、フック部(吊り下げ支持部)4とから構成されている。吊り下げ具1は、装着部3により、口紙2のフック取付孔5に取り付けられる。口紙2には、靴下等の商品が取り付けられる。吊り下げ具1のフック部4は、展示用の支持棒(図示せず)に引っ掛けられる。これにより、商品の吊り下げ販売が可能となる。
【0025】
吊り下げ具1は、例えば、固い厚手の紙や木など、燃えるゴミとして廃棄可能な可燃物によって形成されている。当該実施例の吊り下げ具1では、素材として、約0.5mm厚のバルカナイズドファイバを使用している。このため、口紙2は、吊り下げ具1を分離することなく、使用後はそのまま燃えるゴミとして廃棄することができる。従って、吊り下げ具1を分離して分別廃棄する手間を省くことができると共に、従来のように合成樹脂を使用しないため、廃棄物による環境破壊の防止も図られる。なお、バルカナイズドファイバとは、セルロースを原料とした原紙を塩化亜鉛溶液中にて任意の厚さに積層させ、塩化亜鉛による繊維の膨潤作用を利用して自己接着させ、水洗、乾燥、圧搾、光沢付け等の工程を経て製造した紙である。
【0026】
装着部3には、係合溝11,12が設けられている。係合溝11(第2係合溝)は、吊り下げ具1の図中左側(幅方向他端部側)に形成されており、水平方向に延伸している。係合溝11の上側には上片部13、下側には下片部14(第2下片部)が形成されている。下片部14は上片部13よりも短くなっており、下片部先端14aは、上片部先端13aに対し、寸法Pだけ図中右側(吊り下げ具中心方向)に寄った位置に配置されている。係合溝11の幅は、口紙2の厚さ(約0.3mm)よりも大きくなっており、ここでは、口紙厚の3倍強の約1mmに形成されている。また、係合溝11の奥部11aには、斜面部11bが形成されている。斜面部11bは、図中左下方に向かって下る形で形成されており、係合溝11の上縁11c最奥部から、下縁11dの係合溝入口11e側(図中左側)に向かって延びている。
【0027】
係合溝12(第1係合溝)は、吊り下げ具1の図中右側(幅方向一端部側)に形成されており、導入部15と挿入部16の二段構造になっている。図2は、係合溝12の構成を示す拡大図である。図2に示すように、係合溝12の上側はフック部4の基部4a、下側は下片部17(第1下片部)となっている。下片部17は、係合溝11下方の下片部14と一体に形成されており、全体で下部片18を形成している。下片部17の幅Tは、先端側よりも中央側の方が幅広となっており、最奥端16b側(幅T)の方が挿入部16の入口16a近傍(幅T)よりも広くなっている(T>T)。
【0028】
導入部15は、吊り下げ具1の右端から水平方向に延伸しており、導入部15の上縁15aは、係合溝11の上縁11c(上片部13の下端に相当)と同じ位置に配置されている。導入部上縁15aの図中右端部は曲線部15bとなっており、導入部15の開口幅(導入部上縁15aと下片部上縁17aとの間の距離)は、口紙2の厚さよりも大きくなっている。
【0029】
挿入部16は、導入部15の奥部から下方に分岐し、一段下がった形で中心線O方向に延びており、最奥端16b側に向かって上方に湾曲した形状となっている。挿入部16の上縁16cは、下片部17の上縁17aよりも寸法Qだけ下方に位置している。挿入部16の入口16a左方側には、返し(舌部)19が突設されている。返し19の先端は円弧状となっており、その上方、すなわち、導入部15の最奥部には湾部20が形成されている。湾部20の幅(図中上下方向の寸法)は口紙2の厚さよりも大きくなっており、係合溝11と同様に約1mmに形成されている。また、返し19の先端部から湾部20の最奥部までの寸法Uは、約1〜2mm程度となっており、ここでは、幅より広く1.2mmに形成されている。
【0030】
挿入部16の最奥端16bは、吊り下げ具1の中心線Oよりも右側に配されている。つまり、挿入部16は、中心線Oを超えない位置で止まっている。最奥端16bと下片部先端14aとの間の寸法Rは、口紙2に形成されたフック取付孔5の幅W(11〜12mm程度)よりも若干小さく(約11mm)形成されている。
【0031】
このような吊り下げ具1は、次のようにして口紙2に取り付けられる。図3〜5は吊り下げ具1を口紙2に取り付ける過程を示す説明図、図6は吊り下げ具1を装着した口紙2に商品を取り付けた状態を示す説明図である。ここで、口紙2は、図3に示すように、長方形の紙片からなり、中央には、吊り下げ具1を取り付けるためのフック取付孔5が形成されている。また、口紙2の中央部には折り曲げ線21が設けられており、口紙2は、折り曲げ線21に沿ってコの字形に折り込まれ、上辺部22と側辺部23が形成される。図4に示すように、対向する側辺部23の間には靴下等の商品24の上部が挟持される。
【0032】
図3に示すように、吊り下げ具1は、平面状態(折り曲げていない状態)の口紙2に取り付けられる。フック取付孔5には上方から吊り下げ具1が取り付けられ、ここではまず、取付孔右端(一端側)5aに下片部17を挿入する。次に、吊り下げ具1を右方にスライドさせ、取付孔右端5aを導入部15内に入れ、そのまま、取付孔右端5aを挿入部16の最奥端16bまで挿入する。ここで、当該吊り下げ具1では、導入部15と挿入部16の入口16a近傍部分が、図2に示したように直線Lに沿って一直線上になっている。また、導入部上縁15aの入口近傍は曲線部15bとなっており、挿入部16の下縁16dの延長線Lが曲線部15bと交わる構成となっている。さらに、湾部20は直線Lの上方に外れた位置に存在する。このため、吊り下げ具1の取り付けに際し、取付孔右端5aを導入部15内に容易に挿入できると共に、平面状の口紙上辺部22は湾部20には入り込まず、取付孔右端5aは導入部15から挿入部16にスムーズに誘導される。さらに、挿入部16自体も湾曲形状となっているため、取付孔右端5aは挿入部16の奥までスムーズに導入される。
【0033】
図4に示すように取付孔右端5aを挿入部16に挿入し、取付孔右端5aが挿入部最奥端16bまで達すると、取付孔左端(他端側)5bと下片部先端14aが対向する。そこで、吊り下げ具1を下方に移動させ、下片部14を取付孔5内に挿入し、図5の状態とする。その後、吊り下げ具1を左方にスライドさせ、取付孔左端5bを係合溝11の奥部11aまで挿入する。これにより、吊り下げ具1が図1,6のような形で口紙2に取り付けられる。
【0034】
このように、吊り下げ具1は、従来の吊り下げ具51と同様に、一つ孔の口紙2に取り付けることができる。この際、口紙2のフック取付孔5の寸法は、従前同様の寸法で良く、吊り下げ具1の採用に当たり、新たな型を製作したり、従来の型を改造したりする必要はない。このため、吊り下げ具1では、初期製造コストが嵩むという問題はなく、従来の一つ孔の口紙2にそのまま使用できる。
【0035】
図7(a)(b)は、口紙2を取り付けた状態における装着部3の拡大図である。このような形で口紙2に取り付けられた吊り下げ具1では、図7(a)に示すように、口紙2の上辺部22が、係合溝11と、係合溝12の導入部15に収容される。この状態で、お客様が商品を引っ張ると、取付孔左端5bが斜面部11bを滑り降り、口紙2全体が左側に移動する(図7(b))。それに伴い、取付孔右端5aは、導入部15の湾部20に入り込み、返し19によって下方への移動が阻止され、そこでロックされる。また、口紙上辺部22の右側部分は、湾部20と、下片部上縁17a及び導入部上縁15aの間にて保持される。すなわち、口紙上辺部22が係合溝12側では二箇所で支持される。
【0036】
このように、吊り下げ具1では、係合溝11の奥部に斜面部11bを設けたので、商品が引っ張られたとき(吊り下げ具1が引き上げられたときも、相対的に見て同様)、口紙2が左方向に誘導され、それにより、取付孔右端5aが湾部20に導入される。つまり、斜面部11bによって、より確実に取付孔右端5aを湾部20に導くことができる。また、挿入部16の入口16aに返し19が設けられているため、取付孔右端5aが湾部20に入り込むと、返し19の作用により、口紙2の下方への移動が規制される。従って、取付孔右端5aが挿入部16に入り込みにくくなり、取付孔右端5aが最奥端16bに進入し、吊り下げ具1が口紙2から外れてしまうのを防止できる。これにより、従来の吊り下げ具51のように、吊り下げ具がずれて口紙から外れてしまうことがなく、吊り下げ具1をより確実に口紙2に装着することが可能となる。
【0037】
一方、取付孔右端5aが湾部20から脱出し、返し19を超えた場合でも、下片部上縁17aと挿入部上縁16cの間に高低差があるため(17aの方が16cより高い)、取付孔右端5aが挿入部16内に入り込みにくい。この場合、吊り下げ具1は、取付孔右端5aが挿入部16の最奥端16bまで移動しない限り、口紙2から外れることはない。従って、当該吊り下げ具1では、返し19の作用に加え、下片部上縁17aと挿入部上縁16cの間に高低差により、さらに口紙2から外れにくくなっている。発明者の試作によれば、本発明による吊り下げ具1を一旦口紙2に取り付けると、従来のような外し方では吊り下げ具1を口紙2から外すことはできず、特に、上辺部22の狭い口紙2では、口紙2を破らなけらば吊り下げ具1を取り外すことはできなかった。
【0038】
また、吊り下げ具1では、挿入部16が中心より手前で止まり、従来の吊り下げ具51の係合溝56に比して、係合溝12の長さが短くなっている。すなわち、片持ち状態となる下片部17のスパンSが従来品のスパンSに比して短く形成されている(S>S)。さらに、下片部17の幅Tは、挿入部16の入口16a近傍よりも、最奥端16b側の方が広くなっている(T>T)。このため、下片部17の上下方向への曲げ強度が従来品よりも高く、お客様が吊り下げ陳列されている商品を下方に引っ張っても、係合溝12が開きにくい。同様に、下片部先端14aが、上片部先端13aよりも中心に寄って配置されているため、下片部14のスパンS2が短くなり、係合溝11も開きにくい。従って、係合溝11,12が開いてしまい吊り下げ具が脱落してしまうのを防止でき、この点においても、吊り下げ具1がより確実に口紙2に装着される。
【0039】
加えて、当該吊り下げ具1では、強度向上に伴い、従来品よりも薄い材料でも強度を確保できる。このため、従来品が厚さ0.8〜1.0mm程度であるのに対し、吊り下げ具1では厚さ0.5mmでも問題ない。従って、従来品に比して材料費を抑えることができ、コストの低減と共に、資源の無駄使いをなくし、環境保全にも役立つ。また、吊り下げ具自体の重量も軽減されるため、持ち運び易く、取付作業効率も向上する。従って、運送費を節約できると共に、作業工数も削減され人件費も抑えられ、従来品に比して資材製造コストを大幅に削減できる。
【0040】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例における各種寸法はあくまでも一例であり、本発明の吊り下げ具が前記寸法に限定されないのは言うまでもない。例えば、フック取付孔5の寸法を11〜12mmとしたが、これはソックスの場合における標準寸法であり、商品が異なればその寸法も異なり、当然に吊り下げ具の寸法も変わってくる。また、吊り下げ具1の吊り下げ支持部の形状は、前述のフック形状には限られず、例えば、板状の吊り下げ部に支持棒の挿通孔を設けた形態でも良い。
【0041】
一方、前述の実施例では、吊り下げ具1を、バルカナイズドファイバにて形成したものを示したが、ボード紙とトレーシングペーパーを重ねて貼り付けたものや、薄紙を複数枚重ね合わせて形成したものを用いても良い。また、バルカナイズドファイバにトレーシングペーパーや一般紙等を貼り付けた構成としても良い。さらに、吊り下げ具の表面に、適宜、色彩や模様、商標等を印刷しても良い。なお、吊り下げ具1を、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂や、合成樹脂を配合した紙などにて形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例である商品陳列用吊り下げ具の構成を示す説明図である。
【図2】図1の商品陳列用吊り下げ具における係合溝の構成を示す拡大図である。
【図3】吊り下げ具を口紙に取り付ける際の過程を示す説明図である。
【図4】吊り下げ具を口紙に取り付ける際の図3に続く過程を示す説明図である。
【図5】吊り下げ具を口紙に取り付ける際の図4に続く過程を示す説明図である。
【図6】吊り下げ具を装着した口紙に商品を取り付けた状態を示す説明図である。
【図7】口紙を取り付けた状態の装着部の拡大図である。
【図8】従来の商品陳列用吊り下げ具の一例の構成を示す説明図である。
【図9】特許文献1の商品陳列用吊り下げ具を改良した吊り下げ具の構成を示す説明図である。
【図10】吊り下げ具の一端が口紙から脱出した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 商品陳列用吊り下げ具
2 口紙
3 装着部
4 フック部
4a 基部
5 フック取付孔
5a フック取付孔右端
5b フック取付孔左端
11 係合溝
11a 係合溝奥部
11b 斜面部
11c 係合溝上縁
11d 係合溝下縁
11e 係合溝入口
12 係合溝
13 上片部
13a 上片部先端
14 下片部
14a 下片部先端
15 導入部
15a 導入部上縁
15b 曲線部
16 挿入部
16a 挿入部入口
16b 挿入部最奥端
16c 挿入部上縁
16d 挿入部下縁
17 下片部
17a 下片部上縁
18 下部片
20 湾部
21 折り曲げ線
22 上辺部
23 側辺部
24 商品
51 吊り下げ具
52 口紙
53 フック部
54 装着部
55 係合溝
56 係合溝
56a 段部
57 上辺部
58 取付孔
59 商品
60 下辺部
61 吊り下げ具
62 係合足
63 係合足
64 口紙
65 取付孔
66 取付孔
O 吊り下げ具中心線
P 下片部先端と上片部先端との間の寸法
Q 挿入部上縁と下片部上縁との間の寸法
R 挿入部最奥端下片部先端との間の寸法
スパン
下片部スパン
下片部スパン
T 下片部幅
下片部基部側の幅
下片部端部側の幅
U 返し先端部から湾部最奥部までの寸法
W フック取付孔の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の包装体に取り付けられる装着部と、前記商品を吊り下げるための吊り下げ支持部とを備えてなる商品陳列用吊り下げ具であって、
前記装着部は、前記包装体に形成された取付孔の一端側が挿入される第1係合溝と、前記取付孔の他端側が挿入される第2係合溝とを備える装着部とを備え、
前記第1係合溝は、前記吊り下げ具の幅方向の一端部側に開口し中心方向に延伸する導入部と、前記導入部から下方に分岐して中心方向に延伸する挿入部と、前記挿入部の入口に形成された舌部と、前記舌部に臨んで前記導入部の最奥部に形成された湾部とを有することを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項2】
請求項1記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部の最奥端は、当該吊り下げ具の中心線Oよりも前記一端部側に配置されることを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項3】
請求項1または2記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記装着部は、前記吊り下げ具の前記一端部側に形成され前記第1係合溝の下側に配置された第1下片部と、前記吊り下げ具の前記他端部側に形成され前記第2係合溝の下側に配置された第2下片部とを備え、前記第1下片部の上下方向の幅は、前記挿入部の最奥端側の幅Tの方が前記挿入部の入口近傍の幅Tよりも広い(T>T)ことを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部の上縁は、前記下片部の上縁よりも下方に形成されてなることを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記挿入部は、最奥端側に向かって上方に湾曲した形状に形成されてなることを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記第2係合溝は、その奥部に、前記第2係合溝の上縁奥部側から下縁入口側に向かって延びる斜面部を有することを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。
【請求項7】
請求項6記載の商品陳列用吊り下げ具において、前記第1及び第2係合溝に挿入された前記包装体は、当該商品陳列用吊り下げ具を引き上げたとき、前記取付孔の他端側の部位が前記斜面部を下ると共に、前記取付孔の一端側の部位が前記湾部に嵌合することを特徴とする商品陳列用吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−167138(P2007−167138A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365348(P2005−365348)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(593187364)ト−タルプリント豊工業株式会社 (15)