説明

喉頭マスク

【課題】胃液が肺に吸引されることは致命的な結果を招くことになるので、胃液が気管に確実に入らないようにする喉頭マスクを提供する。
【解決手段】患者に通気路を維持するための器具10であって、マスク12を有している。そのマスクはマスクが喉頭咽頭に位置するとき、喉頭にシールを形成しうるような弾性で柔軟な周縁部20,22を有している。それによって、喉頭への異質な流体の浸入を防ぐ。マスクの周縁部20,22は、マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、食道に流体を通じるようにするための少なくとも一つの空洞を画定する。その器具は、マスクが適切に喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管14を有している。通気管14はマスクから離れる方向に曲がっているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の中に通気路を維持するための器具に関する。 好ましい実施例において、本発明は、喉頭マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
可変の通気路を維持することは、麻酔状態において実行される外科手術中における患者の安全のために重要である。 外科手術中において可変の通気路を維持する方法としては、患者の気管内へチューブを挿入することによって長年行われてきた。 気管内チューブは、口または鼻の開口を経て喉頭に挿入された。 すなわち、声帯を経て気管に挿入された。 気管内チューブは声帯を経て挿入しなければならないため、気管内チューブを正確な場所に配置するのは、しばしば困難であった。
【0003】
英国特許2111394号明細書(米国特許4509514号明細書に対応するもの)は、患者に空気通路を維持するための器具を開示している。 その器具は人工通気路器具であると記載されている。 その器具は、喉頭部の後ろの空間に容易にフィットするような形状の中空マスクで、喉頭部を貫通することなく喉頭部の周囲をシールするように曲面状で一端が開口している可撓性のチューブからなる中空マスクを有している。 この器具の市販のものは、マスクの周囲に沿って伸びる、膨らむことが可能な襟を有している。 膨らむことが可能な襟は、襟が膨らむとき、喉頭部をシールするのに適している。 さらに、そのマスクはのどの背後を押圧し、それによって喉頭内のシール圧を増加することができる、膨らむことが可能な後部を有している。
【0004】
英国特許2111394号明細書は、マスクと膨らむことが可能な部分は、喉頭入口とのど後部の下部壁面の間の空間にぴったりと寄り添うと記載している。 のどの後部を形成する組織の壁は硬いので、マスクが膨らんで喉頭内周囲の組織に対してきつく押しつけて気密シールを形成する一方、マスクをしっかりと固定することができる。
【0005】
英国特許2111394号明細書に記載された器具を使用するに際しては、その器具を患者の口に挿入して、喉頭蓋を過ぎてのどを下降させ、マスクをのどの基部の末端部で支持し、閉じられた食道の上端部に位置させる。 マスク上の膨らむことが可能なリングは喉頭への入口の周りをシールするために膨らまされる。 このように、患者の通気路は安全で塞ぐものがなく、正圧を確保するか又は自然な息づかいをするために、喉頭マスクは一般的な麻酔のホース洗浄回路と直接的に接続することができる。
【0006】
患者が一般的な麻酔状態にあるとき、患者はしばしば仰向けの状態か又は脇腹を下にして水平状態に横たわっている。 一般的な麻酔状態にあるとき、体の反射作用は抑えられ、食道から胃の頂部を閉じる括約筋はリラックスしている。 従って、胃液(酸性である)は、食道を通って流れることができる。 胃液が肺に吸引されることは致命的な結果を招くことになるので、胃液が気管に確実に入らないようにすることは重要である。
【0007】
同様に、一般的な麻酔状態にある患者が、鼻、口又はのどの外科手術(例えば、扁桃腺摘出手術、内視鏡による鼻の手術)を受けているとき、唾液、血液および鼻の分泌液は咽頭、喉頭を経て気管に入り、その後、肺に達する。 また、これは危険な状態である。
【0008】
英国特許2111394号明細書に記載されたような喉頭マスクを使用するとき、本発明者は相当量の胃液がマスクの周りに集まるならば、その胃液がマスクのシールを通過して通路を形成し、肺に入ることを発見した。 胃液および酸が肺に入れば危険である。
【0009】
英国特許2111394号明細書に記載された喉頭マスクは、パイロットラインの欠陥のあるバルブにより、または膨らむことが可能なリングもしくは襟の破断により、膨らむことが可能なリングもしくは襟に漏れが起こるという問題を有している。 カフがしぼむことは、喉頭の周りのシールが失われ、胃酸が肺に入る可能性を増大するチャンスを大きくすることは明らかである。 カフがしぼまない正常な使用状態においても、胃からの大量の胃酸がカフの周りに集まり、酸の逃げ道がないので(咽頭−喉頭をブロックするカフによって)通気路に入る可能性が残されている。 現在使用されているマスクは、すべての患者、特に腹部の大きい患者が安全に使用できないという制限がある。
【0010】
上記問題点を最小化するために、英国特許2111394号の特許権者は喉頭部を全面的にシールするような二重のカフを有する喉頭マスクを導入した。 このマスクは、喉頭マスクの背後から伸びて食道に達する付加的なチューブを有していた。 このチューブはこの通路を経て挿入されたライルチューブによって胃酸が吸引されやすくした。 この喉頭マスクの食道チューブによる吸引によって、食道の組織が第二のチューブの入口に吸引されることが分かった。 これによって第二のチューブが塞がれ、胃酸が移動するのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許2111394号明細書
【特許文献2】米国特許4509514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二重のカフの喉頭マスクは、マスクの喉頭側へ通じている2つの付加的なチューブを有している。 これらのチューブは喉頭のシールを通過して通路を作ろうとする胃液を喉頭から除去するために使用できる。 しかし、チューブに吸引されることは、気管から麻酔ガスを除去する可能性があり、肺を虚脱させる可能性を増大する。 胃から生じる酸のすべてをうまく除去することは不可能である。 従って、マスク内の小径の開口よりも大径の通気路の方が流体が流れるときの抵抗が小さいので、酸は、大径の通気路(気管)に移動しやすい。
【0013】
上記の改善された喉頭マスクは、オーストラリア特許第630433号明細書に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の形態において、本発明は、患者の中に通気路を維持するためにマスクを有する器具を提供する。 マスクが喉頭咽頭に位置するとき、喉頭への異質な流体の浸入を防ぐために、そのマスクは喉頭にシールを形成しうるように弾性を有し且つ柔軟な周縁部形状を有している。 そのマスクの周縁部は、マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭咽頭と食道の間に流体を通じるようにするための少なくとも一つの空洞を画定する。 また、マスクが適切に喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る器具の側面図である。
【図2】図1に示す器具の正面図である。
【図3】図1に示す器具を上方から見た平面図である。
【図4】図1に示す器具を下方から見た底面図である。
【図5】図1に示す器具の背面図である。
【図6】図3のA−A線断面図である。
【図7】患者の喉頭咽頭に適切に挿入された本発明の器具の断面図である。
【図8】図6に類似する断面図であるが、本発明の別の実施例である。
【図9】図8に類似する断面図であるが、本発明のさらに別の実施例である。
【図10】本発明のさらに別の実施例の断面図である。
【図11】図10に示す器具の側面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施例である。
【図13】図12に示す器具の側面図である。
【図14】図1に示す器具を部分的に破断した側面図である。
【図15】喉頭咽頭に挿入されたときの本発明の器具の正面図である。
【図16】図15に示す器具の背面図である。
【図17】本発明の別の実施例の側面図である。
【図18】本発明のさらに別の実施例の側面図である。
【図19】本発明のさらに別の実施例の側面図である。
【図20】本発明の別の実施例のマスクの外周の下部を示す破断図である。
【図21】本発明の別の実施例の器具の正面部分の側面図である。
【図22】図21に示す器具の平面図である。
【図23】図21に示す器具の側面図である。
【図24】図21に示す器具の平面図である。
【図25】図21に示す器具を下方から見た底面図である。
【図26】図21に示す器具のマスク部分の全体の側面図である。
【図27】図21に示す器具の正面図である。
【図28】図21に示す器具の背面図である。
【図29】図21に示す器具の斜視図である。
【図30】患者に挿入されたときの図21に示す器具の断面図である。
【図31】本発明の別の実施例の側面図である。
【図32】図31に示す実施例の頂面図である。
【図33】図31に示す実施例の背面図である。
【図34】図31のA−A線に沿った断面図である。
【図35】図31に示す実施例の正面図である。
【図36】図31と本質的に同じ図であり、B−B線の位置を示すために表示した。
【図37】マスク正面から背面方向を見たときの図36のB−B線断面図である。
【図38】図35に示す喉頭マスクの正面図であるが、フードは除去されている。
【図39】図32に示す喉頭マスクの頂面図であるが、フードは除去されている。
【図40】本発明の別の実施例の喉頭マスクの断面図である。
【図41】一般的な喉頭マスクの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 … 器具
12 … マスク
14 … 通気管
16 … 空洞(窪み)
18 … フード
20、22 … 上向きの側壁
22a、22b … フラップ
22c … ギャップ
24、26 … 壁部分
28、30 … 下部の壁
32、34 … 空洞
36、38 … 縦方向の端部
40、42 … 開口
44 … 周縁部
46、48 … 流体管
50、52、54、56 … 付加的な孔
58、60、62、64 … 孔
66 … 空洞16のフロア
68 … コネクタ
70、70a、72、72a … 長孔
74、76 … 係止部材
78 … マスクの喉頭咽頭側の上部
84 … チューブ48の末端
86 … 突起
88 … 管状部材
90 … スポンジ材料
120 … 縦方向に伸びる部分
122、124 … 側壁
126 … フロア
128、130 … リブ
132 … 膜部材
134 … 開放端
136 … フランジ
200 … マスク
214、216 … 凹み
220 … 喉頭マスク
222 … 窪み
224 … カフ
240、242、244、246 … 半球状部分
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましくは、マスクの周縁部は、上向きの端部を有しており、上向きの端部は少なくとも一つの空洞を画定するのが好ましい。 それに代えて、マスクの周縁部は、マスクの喉頭側から離れてマスクの側面に沿って、且つマスクの外端に対して内側へ向かって伸びている壁部分を有することもできる。 その壁部分は、マスクの少なくとも一つの側面の一部に沿って伸びる。 その壁部分は、マスクの側面からマスクの喉頭側へ向かって伸びている内側部分を有することもできる。
【0018】
周縁部は、少なくとも一つの空洞を形成するために、周縁部を折り返した折り返し部分を備えることができる。 その折り返し部分は、マスクの少なくとも一つの側面の一部に沿って伸びている。
【0019】
少なくとも一つの空洞は、マスクの相対する端部に沿って伸びている二つの空洞を有するのが好ましい。
【0020】
別の実施形態において、その空洞は、マスクの周縁部に形成されるか又はマスクの周縁部を形成する一つ以上の溝によって形成される。 一つ以上の溝は、マスクの周縁部の上向きの端部と一体になっている開放端を有するのが好ましい。
【0021】
適切に挿入されたとき、マスクは、喉頭側と喉頭咽頭側を有している。 喉頭咽頭側は、喉頭咽頭の壁と接触するための接触部材を有するのが好ましい。 その接触部材は、喉頭咽頭の壁とマスクの周縁部の間に間隔をあけ、それによって喉頭にシールを形成するのが容易になる。
【0022】
その接触部材は、マスクに連結されるか、又はマスクに形成されたフードを備えることができる。 そのフードは、マスクの周縁部に沿って伸びている端部を有する。 それに代えて、接触部材は、マスクの喉頭側から伸びている一つ以上の突起を備えることもできる。 実際、接触部材は、マスクが適切に挿入されたとき、喉頭咽頭の壁と接触するマスクの喉頭咽頭側に位置する表面を有することができる。
【0023】
マスクは、少なくとも一つの空洞内に達する少なくとも一つの流体管を有し、少なくとも一つの流体管はマスクから離れる方向に伸び、少なくとも一つの流体管は、使用時に、マスクの喉頭咽頭側から流体を除去するのに適したものである。 一つの実施形態において、少なくとも一つの流体管はマスクの周縁部に位置する出口を有している。
【0024】
マスクは、少なくとも一つの空洞と流体によって通じる二つの流体管を有するのがより好ましい。 一つの管は、マスクの喉頭咽頭側から胃液、血または鼻の分泌液のような流体を除去するための吸引源を有し、他の管は大気からマスクの喉頭咽頭側に空気を導入するために設けられている。 この場合、外部から吸引することによってマスクの喉頭咽頭側から流体を除去することができる。 大気からマスクの喉頭咽頭側へ空気を導入するための第二の流体管をマスクが有することによって、喉頭咽頭の壁または食道の壁が少なくとも一つの空洞に吸引されるというような程度まで吸引レベルが増加することはない。
【0025】
流体管は、真空源または空気排出源と接続できるだけの十分な長さとすべきことが分かる。 マスクが挿入されたとき、流体管は、その基端部が患者の口の外側に位置するように十分長いことが好ましい。
【0026】
マスクは、さらに喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管を備えることができる。 マスクの喉頭側は、窪みを画定するのが好ましい。 通気管はこの窪みに流体を通じることができるのが好ましい。 喉頭咽頭にマスクを挿入して位置決めするのが容易な形状であれば、通気管は可撓性のものでもよく、剛性のあるものでもよい。
【0027】
マスクの喉頭側の窪みは、マスクの内壁によって画定することができる。 その内壁は、相対的に幅が大きい領域と相対的に幅が小さい領域を有するのが好ましく、相対的に幅が大きい領域は、マスクが挿入されたとき、窪みの中に凹みを形成し、その凹みは内壁と患者の喉頭蓋の間に間隙を形成する。 この実施形態において、マスクが喉頭蓋を折り返すようにして挿入されるならば、喉頭蓋は窪みを塞ぐことはできない。 このように、喉頭蓋はマスクの喉頭側への空気の流れを阻止できない。
【0028】
マスクの内壁は、通気路の深さの維持を容易にし、胃液が喉頭に浸入するのを防ぐようにシールを維持するために喉頭部の周囲に対する圧力を維持し、通気路に正圧による空気の流通を促すものであることが好ましい。 内壁の弾性と内壁の大きさの組合せは、これらの効果を得るために使用される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、マスクの末端部は、使用時に食道まで伸びる縦方向に伸びる部分を有している。 その縦方向に伸びる部分は、少なくとも一つの空洞と流体によって通じている。 縦方向に伸びる部分は、食道の上部まで伸びるのが好ましい。
【0030】
縦方向に伸びる部分は、少なくとも一つの空洞の末端を開放位置に偏倚させるような形状であるのが好ましい。
【0031】
縦方向に伸びる部分は、その上部に沿って開口部を有する通路を備えているのが好ましい。 この点に関し、通路の両側壁は互いに伸びるが、それぞれの上端において連結されないのが好ましい。 このように、縦方向に伸びる部分は、マスクの患者への挿入を容易にするように内側に折り畳むことができ、一旦折り畳んだ後、再び拡げることができる。
【0032】
別の実施形態において、縦方向に伸びる部分は管状部分を有する。
【0033】
縦方向に伸びる部分は、患者へのマスクの挿入を容易にし、一旦挿入された後、延長位置まで移動しうるように折り重ねるか又は折り畳むことができるコンチェルティーナ部分を備えることができる。 コンチェルティーナ部分は複数のリブを有することができる。 それに代えて、コンチェルティーナ部分は波形の管を有することができる。 さらに、縦方向に伸びる部分は複数の折り目を有することができる。
【0034】
縦方向に伸びる部分はマスクと一体に形成することもできるし、縦方向に伸びる部分はマスクと連結することもできる。 縦方向に伸びる部分はマスクの周縁部を縦方向に延長したものとすることもできる。 縦方向に伸びる部分はマスクの周縁部と連結することもできる。 さらに、縦方向に伸びる部分はマスクの上部と連結することもできる。
【0035】
患者へのマスクの挿入を容易にするために、マスクの基部の管状部は、マスクの基端部近くからマスクとは離れる方向に伸びている湾曲部を有するような形状とすることができる。
【0036】
マスクは、マスクの喉頭側に向かって曲がっている部分を有するような形状である通気管を備えることができる。 通気管は、マスクの基端部に隣接する領域において、マスクの喉頭側に向かって下方に曲がっていることが好ましい。 この実施形態に関して、一般的な喉頭マスクに必要とされる、麻酔専門医の指をマスクに近接させるか又は接触させることによって行われる外部からのガイドを必ずしも必要とすることなく、マスクを通気路内において喉頭に向けて移動させるように通気管が湾曲しているものであるとき、マスクの挿入はずっと容易になる。 第二の形態において、本発明は、患者の中に通気路を維持するためにマスクを有する器具を提供する。 マスクが喉頭咽頭に位置するとき、喉頭への異質な流体の浸入を防ぐために、そのマスクは喉頭にシールを形成しうるように弾性を有し且つ柔軟な周縁部形状を有している。 その末端に出口のある第一の流体管を有し、第一の流体管の出口はマスクが使用されているとき食道と流体によって通じ、その末端に開口のある第二の流体管を有し、第二の流体管の開口部は第一の流体管の開口部とは分離しており、第二の流体管の開口部はマスクが使用されているとき食道と流体によって通じ、第一の流体管は使用時のマスクの喉頭咽頭側から流体を除去するのに適したものであり、第二の流体管は使用時のマスクの喉頭咽頭側に流体を流通させるのに適したものであり、マスクが喉頭咽頭に適切に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管とを有している。
【実施例】
【0037】
添付図面は、本発明の好ましい実施例を示すためのものである。
【0038】
本発明は、添付図面に示されたすべての特徴に限定されるべきでない。
【0039】
図1から図6は、本発明の器具10を様々な方向から見た図であり、器具10はマスク12を有している。 通気管14は、その通気管の末端がマスクの喉頭側に形成された空洞16に通じるように、マスクに連結されるか又はマスクに形成される。 通気管14は、軟らかくて可撓性の管である。 また、その管は患者の体内への挿入を容易にし、適切な位置にその器具をセットできるような形状である剛性の管であってもよい。 通気管14はその器具が患者の体内に適切に挿入されたとき、喉頭および気管に気体を供給することができる。 喉頭および気管に供給される気体は、麻酔ガス、酸素に富んだ気体または活性のある気体を含むことができる。
【0040】
マスクの喉頭咽頭側の上部表面にはフード18を備えることができる。 この明細書において、用語「上部」は、マスクの喉頭咽頭側に関して使用され、用語「下部」は、マスクの喉頭側に関して使用される。 マスクの喉頭咽頭側が上向きの側壁20と22を有している。 図6に最もよく示されているように、上向きの側壁20と22はマスク12の最外端から伸びる壁部分を有している。 これらの壁部分はマスクの喉頭側から離れてマスクの内側に向かう方向に伸びている。 これらの壁部分は、図6において参照番号24と26で示されている。
【0041】
図6に最もよく示されているように、下部の壁28と30はマスクの最外端を経て上方へ向かい、壁部分24と26につながっている。 従って、壁部分24と26は、空洞16の内壁とともに空洞32と34を画定する。 便宜のために、空洞32と34は、以下、流体空洞と呼ぶことにする。
【0042】
図1、図2、図3および図5に最もよく示されているように、マスクの上部の上向きの側壁20、22より、マスクの縦方向の端部36と38の方が相当低い。 これは、上向きの側壁20と22の上部壁部分を構成する壁部分24と26がマスクの縦方向の末端に続いていないと言うことによって表現できる。 このようにして、開口または空間40がマスク12の末端に形成される。 同様に、開口42がマスク12の基端部に形成される。 開口40と42は流体空洞32および34と流体によって通じている。 このようにして、流体は、開口40、流体空洞32と34、および開口42を経て末端40から基端部42に向けて流れることができる。 同様に、胃管または他の管を開口42、流体空洞32、34及び開口40を経て患者の食道に挿入し、胃に到達させることができる。 流体空洞32と34は互いに流体によって通じている。
【0043】
図2と図6は、点線で画定された領域44を示している。 領域44はマスクの周縁部を含んでいる。 周縁部44は、マスクが患者の喉頭咽頭に適切にセットされたとき、マスクが喉頭にシールを形成するように弾性を有し且つ柔軟な部分であることが分かる。 マスクが適切に喉頭咽頭に挿入されたとき、周縁部は喉頭咽頭と食道の間に流体が通じるように、流体空洞32と34および開口40と42を画定する。
【0044】
図1から図6に示す器具10は二つの流体管46と48を備えている。 流体管46と48は、流体空洞32と34内の末端に通じている。 このようにして、流体空洞32と34に集められた流体は、流体管46と48の一方または両方から吸引することによって除去することができる。 流体管46と48の一方が吸引源に接続され、流体管46と48の他方が正圧気体源に接続されるか又は単に大気に通じていることが特に好ましい。 このように、流体管46と48の一方から吸引されると、流体管46と48の他方に空気が流れ、マスクの上側から流体が回収される一方、マスクの上側近くで吸引されるのを防ぐ。 この特徴によって、マスクの上側から流体が除去されるのを停止するような、食道および喉頭咽頭の軟らかい組織が吸引されて開口40および流体空洞32と34が塞がれることを防止する。
【0045】
マスクの周縁部、特に壁部分24と26は、使用時にマスクの上側からの流体の除去効率を高めるために、付加的な孔50、52、54、56を備えることができる。 付加的な孔の形状や大きさは任意である。 その孔の数、大きさおよび形状は本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲において変更することができる。
【0046】
フード18は、孔58、60、62、64を備えることができる。 使用時に、潤滑剤をそれらの孔に注入してマスクを所定の位置にセットしやすくすることができる。 そのフードの孔によって、マスクの周縁の壁部分がフードおよびフロアとともに自由に移動しやすくなる。
【0047】
最後に、図1ないし図6に関して、通気管14および流体管46と48は、切り詰められて短くなっていることが分かる。 実際の器具において、通気管14および流体管46と48は、図1ないし図6に示すものより相当長い。 これは図7に明瞭に示されている。
【0048】
図7は、器具10が患者の喉頭咽頭LPに適切に挿入された状態を示している。 通気管14および流体管46と48は、患者の口Mから伸びて十分に長いことが分かる。 通気管14は、その基端部にコネクタを備え、麻酔ガスのような気体源と連結することもできる。 流体管46と48は、適正なコネクタを備え、それらの管のうち少なくとも一つを真空源と連結することもできる。 しかし、上記したように、流体管46と48の一方のみを真空源に連結し、他方の管を大気に連通させてマスクの喉頭咽頭側に空気を供給するのが好ましい。
【0049】
マスク12を喉頭咽頭LPの所定の位置に挿入するために、フード18の孔58と60には適切な潤滑剤を塗布する。 マスク12は、口Mを経て喉頭咽頭LPに挿入できるような形状に変形される。 マスク12が喉頭咽頭LPに達すると、マスクの周縁部が弾性と柔軟性を有することによって伸びる。 マスク12の周縁部は弾性と柔軟性を有するので、それ自身喉頭Lの頂部にシールを形成する。 このようにして、外科手術中に異質な流体が喉頭Lに浸入することが避けられる。 これによって、胃液または他の異質な流体が喉頭Lおよび気管Tに浸入する危険性を減少するか又は避ける。 そうしなければ、異質な流体が肺に吸入されてしまう。 喉頭のシールは、マスク12を喉頭に入れることなく達成しうることが分かる。
【0050】
マスク12の末端部36は食道Oの上部まで伸びている。 その結果、図7に示すように、マスク12の末端部における開口40は食道Oと流体によって通じている。 同様に、マスク12の基端部の開口42は喉頭咽頭に通じており、それゆえ、マスクの喉頭咽頭側において、食道と喉頭咽頭の間に流体の流通が確保される。 食道Oの上端部に蓄積する胃液は、流体管46と48の一方を吸引源と接続することによって除去することができる。
【0051】
図8は図6に示すものと僅かに異なる実施例の拡大図である。 便宜のために、図6と図8に共通の特徴は、同じ参照番号を付している。 図8に示すように、フード18はコネクタ68を介して空洞16のフロア66と接続されている。 コネクタ68は、フード18の実際の長さ方向に沿って伸びている一体的に形成されたウェブとして示されている。 その代わりに、コネクタ68は空洞16のフロア66に連結されたウェブまたは一連の分離した突起部とすることもできる。 その連結は、適切な接着剤を使用して、インパルスウェルディングまたは当業者に知られている他の適切な接合手段によって達成することができる。
【0052】
上部壁部分24と26は、それぞれ、フード18の下部に形成される係止部材74と76を有するスリット70と72を備えている。 このようにして、フード18の端部はより確実に固定される。
【0053】
図9は図8に類似しているが、本発明のさらに別の実施例を示している。 便宜のために、図8の特徴と共通する図9の特徴には、同じ参照番号を付す。 図9から分かるように、図9ではフードが使用されていないという点において図8とは異なる。 その代わりに、マスクの喉頭咽頭側の上部78において、壁部分24と26を延長して、例えば、超音波溶接または適当な接着剤によって空洞16のフロア66に一体に接続されている。 この構成によって、フード18が不要になるだけでなく、流体空洞32と34が溝として形成される。 これとは対照的に、図6と図8に示す実施例においては、流体空洞32と34は、フード18と壁部分24、26を部分的に重複させることによって形成される。
【0054】
図10と図11は、図9に類似する別の実施例を示している。 図9と図10と図11において共通する特徴には同じ参照番号を付す。 図9と図10の主な差違は、図10の実施例はより平らになり、アスペクト比が広くなったことである。 図10の実施例の側面図が図11である。
【0055】
図12と図13は、本発明のさらに別の実施例を示している。 便宜のために、図10の特徴と共通する図12と図13の特徴には、同じ参照番号を付す。 図12の実施例は、流体空洞32と34を画定する溝が、壁部分24と26の上部を空洞16のフロア66の中心から離れた箇所において、空洞16のフロア66と接続することによって形成される点において図11とは異なる。 特に、壁部分24の端部はポイント80においてフロア66に取り付けられている(実際には、壁部分24の端部は空洞16のフロア66に対して線80に沿って取り付けられている)。 同様に、壁部分26の端部は空洞16のフロア66に対して線82に沿って取り付けられている。 図13は取り付け線80を明瞭に示している。
【0056】
図14は図1を部分的に破断した図である。 特に、図14においては、フード18の一部と上向きの側壁22と壁部分26の一部が取り除かれている。 これによって、流体管48の末端84を明瞭に見ることができる。 流体管48の末端84における開口部は上向きの側壁22および壁部分26の下部に位置している。 これによって、食道の組織が流体管48内に吸引されることによって、流体管48の末端部が塞がれるという恐れがなくなり、マスク12の喉頭咽頭側から胃液および他の異質な流体を除去しうるようになる。
【0057】
同様に、図14は食道経管を開口42から流体空洞32と34の一方を経て開口40に達せしめ、必要ならば、食道経管を食道に達するようにすることができる。
【0058】
図15および図16は、本発明の器具10の使用時の形状を示し、喉頭咽頭空間に挿入された状態に相当する。 これらの図から分かるように、末端開口40と42は流体空洞32および34として維持される。
【0059】
図17から図19は、本発明のさらに別の実施例を示している。 図17から図19において、流体空洞32、34および開口40、42は、図1ないし図16に示す実施例と同じように形成される。 しかし、マスクの上面は図17から図19において大きく変わっている。 特に、図17において、マスクの上側は複数の突起86を有している。 マスクを喉頭咽頭に挿入することができ、喉頭の開口部にシールを形成しうるようにマスクの周縁部と喉頭咽頭の壁の間に適当な間隙を保持できるように、上記突起は弾性で柔軟性がある。突起86は、例えば、(豚の首や背の)剛毛であってもよい。
【0060】
図18において、マスクの上部は多数の管状部材88によって形成されている。 これらの管状部材によって、マスクの周縁部を喉頭咽頭の壁に適切にセットすることができる。
【0061】
図19において、マスク12の上側はスポンジ材料90によって形成されている。
【0062】
図21から図30は、縦方向に伸びる部分を有する本発明の別の実施例を示している。
【0063】
この実施例は、図1から図16に示す実施例と共通する特徴を多数有している。 便宜と簡略化のために、図1から図16の特徴と共通する図21から図29の特徴には同じ参照番号を付し、さらに説明はしない。
【0064】
図21から図30に示す器具は、マスクの末端に縦方向に延びる部分120を有するという点において、図1から図16に示す器具と異なる。 フード18が空洞16の頂部に超音波溶接されているという点において、その実施例はさらに図1から図16に示す実施例と異なる。
【0065】
縦方向に伸びる部分は、共通するフロア126によって接続された2つの側壁122と124(図27参照)を有している。 各側壁122と124は、一連のリブ128と130を有している。膜部材132は側壁を形成するためにリブの間を伸びている。
【0066】
複数のリブおよび膜に組み込まれている側壁122と124によって縦方向に伸びる部分120が図23に示すように圧縮されるか又は折り曲げられ、患者の通気路への器具の挿入が容易になる。 器具が適切に挿入されると、縦方向に伸びる部分120はその延長部まで延長することができる。 この様子は図30に示されている。 図30において、縦方向に伸びる部分120は食道Oの上部まで伸びていることが分かる。
【0067】
図21から図28に示すように、縦方向に伸びる部分120は開放端134を有している。 開放端134は流体空洞32、34と流体によって通じている。
【0068】
図21から図30に示すように、縦方向に伸びる部分は食道の上部まで突出し、食道に蓄積する酸に対して容易に接近することができる。 縦方向に伸びる部分120の形状および弾性によって、マスクの末端が開口し続けることができ、食道に蓄積する酸に容易に接近できる。
【0069】
図29は、図21から図28に示す器具において、折り畳まれたマスクの周縁部とフードを示す。 図から分かるように、縦方向に伸びる部分120のフロアはマスク12の上面に連結されている。 同様に、フード18はフランジ136に沿ってマスク12の上面に連結されている。 図29に示す壁22は下方に向けて折り曲げられている。 図から分かるように、壁22はギャップ22cによって分離されたフラップ22aおよび22bを有する蝶々の形状の壁から形成されている。 蝶々形状の壁22によってマスクが食道の形状になじみやすくなり、気管の頂部において良好なシールが達成される。 流体管46と48がその長手方向に沿って伸びる長孔を有しているのが分かる。 この長孔は、単一の型で流体管を容易に製造できるように設計された。 使用時に、この長孔の基端部は、基端部において吸入が行われないということを避けるために閉じられる。 長孔の基端部の閉鎖は呼吸をする流体管の延長部を取り付ける間に使用される被覆によって達成される。 長孔のない流体管を製造しうることが分かり、もし必要ならば、空洞の内側にある長孔の末端部を開口させることもできる。 使用時に、長孔は壁22の下部に位置する(壁22が適切な位置にあるとき)。 この長孔によって各流体管の端部において過度に吸引されるのを防ぐことができ、マスクの空洞に集積する酸液を除去することができる。
【0070】
図21から図30に示すマスクにはいくらかの変形例を施すこともできる。 特に、縦方向に伸びる部分120はその上部の長手方向に沿って孔または空間を設けることができる。 縦方向に伸びる部分120は閉じた上面を有していることが分かる。 実際、縦方向に伸びる部分は、患者に挿入するときに圧縮でき、挿入された後に伸びる波形管で形成することができる。 縦方向に伸びる部分は、上部領域においてマスク12に取り付けることができる。 縦方向に伸びる部分120は、コンチェルティーナのような作用をするために、一連の折り畳みを備えることができる。
【0071】
図31から図40は、本発明の喉頭マスクのさらに別の実施例を示す。 図31から図40に示す喉頭マスクは、図21から図29に示す喉頭マスクと多くの共通の特徴を備えている。 説明の便宜と簡略化のために、同じ特徴には同じ参照番号を付することによって、これらの特徴のさらなる説明は必要でなくなる。
【0072】
図31から図39に示す実施例と図21から図29に示す実施例の主な差違は、参照番号200で示されるマスクの基端が曲面で形成されていることである。 特に、その曲がりは、参照番号200で示される領域において始まり、通気管14と吸入管46、48はマスクから伸びるに従って下方に曲がる。 これによって、マスク全体として、その側面が図1から図30に示すマスクより下方に位置する。 すなわち、これによって、図31から図39に示すマスクは患者への挿入がより容易になる。 このことは、図31と図26を比較し、図33と図27を比較することによって最も明瞭に示されている。
【0073】
一般的な喉頭マスクの使用時、喉頭マスクが軟口蓋を通過すると上方に移動しようとするので、喉頭マスクを通気路に挿入するのが難しいことが分かった。 対照的に、図31から図39に示すマスクはマスクの基端が曲がっているので挿入がずっと容易になり、特に、マスクの基部に存在する曲がりによって、マスクを挿入するときに軟口蓋を通過するや否やマスクを通気路に移動させやすくなる。
【0074】
図38と図39は、より明瞭にするためにフードを除去したマスクの詳細を示している。 上部壁24、26の形状および大きさは、フードをその位置に保持するのに役に立つ長孔70、70a、72、72aによって、図38と図39に明瞭に示されている。 本発明の器具はフードを備えなくてもよく、フードは本発明の好ましい特徴であることが分かる。 このように、図38と図39に示す器具は、図示されているように使用することができる。
【0075】
図40は挿入位置にある本発明のマスクの断面を示す。図40において、参照符号Eは喉頭蓋を示す。 図1から図39に示す実施例と共通している図40に示す実施例の特徴には、図1から図39において使用された参照番号と同じ参照番号を付す。
【0076】
図40に示す実施例は、喉頭空間に向かって開口している窪み16を示している。 窪み16は、矢印210で示すように幅または直径が減少した領域と、矢印212で示すように幅または直径が増加した領域を有している。 このように、窪み16は凹み214と216を画定する。 もし、喉頭蓋が図40においてEで示すように下方へ曲がっていれば、凹み214と216が下方へ曲がる喉頭蓋によって起こる通気路の閉塞を防ぎ、それによって通気路が開放された状態を確保することができる。 対照的に、図41に示す一般的な喉頭マスク220の窪み222は、凹みを有しない。 それゆえ、喉頭蓋Eが通気路を閉塞する。 図41に示す一般的な喉頭マスク220は、膨らむことができるカフ224を有している。
【0077】
図40に戻って、窪み16の高さ(例えば、参照番号31から矢印216までの窪みの高さ)とマスクを構成する材料の弾性によって、通気路の深さを維持し、喉頭へ浸入しようとする胃液に対するシールを確保し且つ通気路が正圧となるように、喉頭の周囲の領域に対する圧力を維持する。
【0078】
図40は多数の突起、特に、半球状部分240、242、244、246を示している。 これらの突起によって、壁部分24、26とフード18の下側との接触程度を最小化する。 これはマスクの挿入時の層間の接触を最小化し、層間の相対的な移動を可能にする。
【0079】
本発明の器具は、市販されている競合器具に対して多くの利点を有している。 特に、本発明の器具は喉頭の開口部をシールするための膨らんだカフまたは襟が必要でなくなる。 その代わりに、本発明の器具は喉頭にシールを形成できるような形状である弾性を有し且つ柔軟な材料からなるマスクの周縁部を備えている。 膨らむことができるカフまたは襟の使用を避けることによって、膨張のためのパイロットチューブを備える必要がないか、または収縮を避ける一方、膨張することができる一方向バルブを備える必要がない。
【0080】
マスクが喉頭咽頭に適切に挿入されたとき、喉頭咽頭と食道の間に流体が通じるように少なくとも一つの空洞を画定する周縁部を有する本発明の器具は、食道と喉頭咽頭の間で流体を自由に流通させる。 本発明の器具は、マスクの喉頭咽頭側から流体を除去することができる。 このようにして、マスクの喉頭咽頭側に流体が集積しないように、マスクを使用できる。 そして、生命を脅かす可能性を除去し、異質な流体が肺へ吸入されることを避けることができる。
【0081】
さらに、市販されている既存の器具と違って、喉頭咽頭と食道の間にいつでも連続的に流通が図られる。 これによって、本発明の器具は、末端開口からマスク内の流体空洞を経て過剰な流体が鼻の咽頭および口または鼻の空洞へと流れるとき、流体の噴出をうまく処理することができる。 過剰な流体はこれらの部分で吸引されるか、口または鼻孔から流出する。
【0082】
もし、吸引管を通して強く吸引されても、空洞の内側の吸引管の端部としての咽頭壁に付着することによって閉塞されにくくなる。
【0083】
大気に連通している流体管である通気管が存在することによって、空洞をずっと大気圧に保持できる。
【0084】
本発明の器具は簡単で、製造コストが安く、吸引管もしくは連通口を伴っても、伴わなくても製造できる。
【0085】
本発明の実施例として、喉頭の上部および喉頭咽頭壁と接触する器具の一部は、スポンジ材料製とするか又はスポンジ材料で被覆することができ、それによって、喉頭の上部および喉頭咽頭の壁に付加される圧力を減少することができる。
【0086】
本発明の器具は、いろいろな行為で使用することができる。 本発明の器具は、胃の内視鏡が困難なく流体空洞を通過しうるように、胃内視鏡検査で使用することができる。 食道聴診器または胃の吸引管は空洞を容易に通過することができる。
【0087】
胃を洗浄する必要がある中毒症状や意識を失った患者に対しては、大径の管を導入し、本発明の器具を使用して同時に患者の通気路を維持することができる。 食道を通して胃を膨らませる代わりに、過剰の空気を流通させることによって、本発明の器具は蘇生や正圧確保に使用することができる。 すべての場合において、食道から喉頭咽頭への流体の流路となるマスクの空洞は比較的低い流路抵抗であるから、流体を容易に流出させることができる。
【0088】
少なくともマスクの周縁部分は弾性を有し且つ柔軟な材料から製造される。 そのような材料は、変形されても変形力が除去されれば、元の形状に戻る形状記憶特性を有している。 この形状記憶特性はマスクの挿入を容易にし、一旦挿入されれば、マスクは喉頭の開口部にシールを形成し、空洞を開放状態に維持する。 さらに、挿入後、マスクが喉頭咽頭の空間を満たすように伸びるので、マスクによって付加される力は通気路の空洞を空間の中心に保ち、喉頭と対抗する状態にする。 これによって、気体が喉頭に適切に運ばれる。 さらなる利点として、挿入されるときマスクの相対する側面の端部が互いに離れるように押し合うので、喉頭咽頭の壁に対して力を及ぼし、マスクを中心に配置し、その位置を保持しようとする。
【0089】
マスクまたはマスクの周縁部を製造するために使用される適当な材料としては、ポリ塩化ビニル、ビニル重合体、熱可塑性エラストマーおよび他のエラストマーを含む。 この材料リストは限定的なものではなく、医学用途に適した弾性を有し且つ柔軟性のある材料も使用することができる。
【0090】
別の実施例として、周縁部はコンチェルティーナタイプの形状とすることができ、また、図20に示すように、一連のリブからなる形状とすることができる。 マスクの外周の下部を示す図20において、一連のリブ100が外周縁部20に形成されている。 そのリブは患者に挿入するために外周を変形させるのに役立つ一方、挿入時に喉頭咽頭の形状に外周を沿わせるように保持する機能も果たす。 同じ結果を得るためにマスクの周縁部に他の形状を採用しうることが分かる。 本発明はそのようなすべての形状を含んでいる。
【0091】
開示された発明は、明細書もしくは図面に記載されるか又は明細書もしくは図面から明かな個々の特徴の二つ以上の代替えのものも含むことが分かる。 それらの異なる組合せのすべては、本発明の様々な面を構成する。
【0092】
上記は本発明の実施例を記載したものであり、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、当業者が様々な変形をしうることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の中に通気路を維持するためにマスクを有する器具であって、そのマスクは、マスクが喉頭咽頭に位置するとき、喉頭にシールを形成しうるように弾性を有し且つ柔軟な周縁部形状を有し、それによって喉頭への異質な流体の浸入を防ぎ、マスクの周縁部は、マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、流体を食道に通じるようにするための少なくとも一つの空洞を画定し、マスクが適切に喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管とを有する器具。
【請求項2】
マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、少なくとも一つの空洞が喉頭咽頭と食道の間に流体を通じるようにする請求項1記載の器具。
【請求項3】
マスクの周縁部は上向きの端部を有し、この上向きの端部は少なくとも一つの空洞を画定する請求項1または2記載の器具。
【請求項4】
マスクの周縁部は、マスクの喉頭側から離れてマスクの側面に沿って、且つマスクの外端に対して内側に向かって伸びている壁部分を有する請求項1または2記載の器具。
【請求項5】
壁部分は、マスクの側面からマスクの喉頭側に向かって伸びている内側部分を有する請求項4記載の器具。
【請求項6】
マスクの周縁部は、マスクの側面に沿って折り返した折り返し部分を有し、それによって少なくとも一つの空洞を形成し、上記折り返し部分はマスクの少なくとも一つの側面の一部に沿って伸びている請求項1、2、3、4または5記載の器具。
【請求項7】
少なくとも一つの空洞は、マスクの相対する端部に沿って伸びている2つの空洞を有する請求項1、2、3、4、5または6記載の器具。
【請求項8】
空洞は、マスクの周縁部に形成されるか又はマスクの周縁部を形成する一つ以上の溝によって形成される請求項1または2記載の器具。
【請求項9】
一つ以上の溝が、マスクの周縁部の上向きの端部と一体になっている開放端を有する請求項8記載の器具。
【請求項10】
マスクは喉頭側と喉頭咽頭側を有し、その喉頭咽頭側は、マスクが挿入されたとき、喉頭咽頭の壁と接触するための接触部材を有し、その接触部材は喉頭咽頭の壁とマスクの周縁部の間に間隔をあけ、それによって喉頭にシールを形成するのが容易になる請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の器具。
【請求項11】
接触部材は、マスクに連結されるか又はマスクに形成されたフードを有する請求項10記載の器具。
【請求項12】
フードは、マスクの周縁部に沿って伸びている端部を有する請求項11記載の器具。
【請求項13】
接触部材は、マスクの喉頭側から伸びている一つ以上の突起を有する請求項10記載の器具。
【請求項14】
マスクは、さらに、少なくとも一つの空洞内に達する少なくとも一つの流体管を有し、少なくとも一つの流体管はマスクから離れる方向に伸び、少なくとも一つの流体管は、使用時に、マスクの喉頭咽頭側から流体を除去するのに適したものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の器具。
【請求項15】
少なくとも一つの流体管は、マスクの周縁部に位置する出口を有する請求項14記載の器具。
【請求項16】
マスクは、少なくとも一つの空洞と流体によって通じる二つの流体管を有する請求項14または15記載の器具。
【請求項17】
流体管は、真空源または空気排出源と接続できるだけの十分な長さを有する請求項16記載の器具。
【請求項18】
マスクは、さらに、マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管を有する請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17記載の器具。
【請求項19】
マスクの喉頭側は窪みを画定し、通気管は窪みと流体によって通じている請求項18記載の器具。
【請求項20】
マスクの喉頭側の窪みはマスクの内壁によって画定され、マスクの内壁は相対的に幅が大きい領域と相対的に幅が小さい領域を有し、相対的に幅が大きい領域は、マスクが挿入されたとき、窪みの中に凹みを形成し、その凹みは内壁と患者の喉頭蓋の間に間隙を形成する請求項19記載の器具。
【請求項21】
マスクの喉頭側の窪みはマスクの内壁によって画定され、マスクの内壁は通気路の深さの維持を容易にし、胃液が喉頭に浸入するのを防ぐようにシールを維持するために喉頭の周囲の領域に対する圧力を維持し、通気路に正圧による空気の流通を促すものである請求項19または20記載の器具。
【請求項22】
マスクの末端部は、使用時に食道まで伸びる縦方向に伸びる部分を有し、その縦方向に伸びる部分は、少なくとも一つの空洞と流体によって通じている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21記載の器具。
【請求項23】
縦方向に伸びる部分は、食道の上部まで伸びる請求項22記載の器具。
【請求項24】
縦方向に伸びる部分は、少なくとも一つの空洞の末端を開放位置に偏倚させるような形状である請求項22または23記載の器具。
【請求項25】
縦方向に伸びる部分は、その上部に沿って開口部を有する通路を備えている請求項24記載の器具。
【請求項26】
縦方向に伸びる部分は、管状部分を有する請求項24記載の器具。
【請求項27】
縦方向に伸びる部分は、患者へのマスクの挿入を容易にし、一旦挿入された後、延長位置まで移動しうるように、折り重ねるか又は折り畳むことができるコンチェルティーナ部分を有する請求項22、23、24、25または26記載の器具。
【請求項28】
コンチェルティーナ部分は、複数のリブ、波形の管または複数の折り目を有する請求項27記載の器具。
【請求項29】
縦方向に伸びる部分は、マスクの周縁部を縦方向に延長したものである請求項22、23、24、25、26、27または28記載の器具。
【請求項30】
マスクの基部の管状部は、マスクの基端近くからマスクから離れる方向に伸びている湾曲部を有するような形状である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29記載の器具。
【請求項31】
患者の中に通気路を維持するためにマスクを有する器具であって、そのマスクは、マスクが喉頭咽頭に位置するとき、喉頭にシールを形成しうるように弾性を有し且つ柔軟な周縁部形状を有し、それによって喉頭への異質な流体の浸入を防ぎ、マスクが喉頭咽頭に挿入されたとき、食道に流体を通じるようにするための少なくとも一つの空洞と、マスクが適切に喉頭咽頭に挿入されたとき、喉頭まで気体が達するようにマスクに連結されるか又はマスクに形成された通気管とを有する器具において、通気管はマスクの喉頭側に向かって曲がっている部分を有するような形状であることを特徴とする器具。
【請求項32】
通気管はマスクの基端部に隣接する領域において、マスクの喉頭側に向かって下方に曲がっている請求項31記載の器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate


【公開番号】特開2011−229926(P2011−229926A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−127813(P2011−127813)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2006−521346(P2006−521346)の分割
【原出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(506034891)
【出願人】(506034905)