説明

噛合チェーン式進退作動装置

【課題】チェーン駆動時の騒音の発生とチェーン摩耗によるチェーン寿命の低下とを回避するとともに噛み合い直前状態にある噛合チェーン同士の干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現する噛合チェーン式進退作動装置を提供すること。
【解決手段】一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値Rmaxに円弧状チェーン軌道OL1、0R1の曲率半径R1を設定し、しかも噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート111、111同士と一対のフック状外歯プレート112、112同士とをそれぞれ非干渉状態とするように一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRの範囲K1、K2を設定した噛合チェーン式進退作動装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動体を高速で進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置として、相互に噛み合って一体的に駆動される一対の噛合チェーン、所
謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を移動させる駆動装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132483号公報(特許請求の範囲、図5参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7に示すように、上述の駆動装置と同様の構成を採用した噛合チェーン式昇降装置200では、一対の噛合部チェーンガイド231、231で一対の噛合チェーン210、210をガイドした状態で一対の噛合チェーン210、210を相互に噛み合わせる領域においてチェーン軌道OL2、OR2を急激に変化させるため、一対の噛合チェーン210、210の股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部232に高速駆動する噛合チェーン210が衝突することで生じる衝突音などの騒音を発生させてしまうとともにこの衝突で発生する噛合チェーン及びチェーン位置決めガイド部232間の摩擦力増大に伴うチェーン摩耗によるチェーン寿命の低下を回避し、しかも噛み合い直前状態にある噛合チェーン同士の干渉、より具体的にはチェーン軌道の曲率半径が大きいことに起因して生じる噛合チェーン同士の干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現することを困難にさせてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部に噛合チェーンを衝突させてしまうことで生じる衝突音などの騒音の発生を回避するとともにチェーン寿命を延ばし、しかも噛み合い直前状態にある噛合チェーン同士の干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現する噛合チェーン式進退作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態でチェーン剛直化方向に沿って一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から相互に噛み合わせる噛合完了位置まで前記一対の噛合チェーンをそれぞれガイドする一対の噛合部チェーンガイドを形成したチェーンガイドとを備えている噛合チェーン式進退作動装置であって、前記一対の噛合部チェーンガイドが、前記噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向に延びている状態でそれぞれ前記チェーン剛直化部分をガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分と、前記第1噛合部チェーンガイド部分に連通した状態で前記噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向の反対方向に延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれの円弧状チェーン軌道をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分と、該一対の第2噛合部チェーンガイド部分のそれぞれに連通した状態で前記一対の噛合チェーンのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分とから構成され、前記一対の第2噛合部チェーンガイド部分のガイド面が、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値に前記一対の噛合チェーンの円弧状チェーン軌道の曲率半径を設定するように形成され、前記一対の第2噛合部チェーンガイド部分の範囲が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート同士と一対のフック状外歯プレート同士とをそれぞれ非干渉状態とするように設定されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記駆動用スプロケットが、前記チェーン剛直化部分の側方から前記一対の噛合チェーンの一方に係合することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0008】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部が、前記チェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン剛直化方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態でチェーン剛直化方向に沿って一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から相互に噛み合わせる噛合完了位置まで前記一対の噛合チェーンをそれぞれガイドする一対の噛合部チェーンガイドを形成したチェーンガイドとを備えていることにより、一対の噛合チェーンの進退動作に応じて被駆動体を駆動することができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0011】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、一対の噛合部チェーンガイドが、噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向に延びている状態でそれぞれ前記チェーン剛直化部分をガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分と、第1噛合部チェーンガイド部分に連通した状態で前記噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向の反対方向に延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれの円弧状チェーン軌道をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分と、これら一対の第2噛合部チェーンガイド部分のそれぞれに連通した状態で前記一対の噛合チェーンのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分とから構成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分のガイド面が、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値に前記一対の噛合チェーンの円弧状チェーン軌道の曲率半径を設定するように形成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分の範囲が、一対の噛合チェーンの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート同士と一対のフック状外歯プレート同士とをそれぞれ非干渉状態とするように、より具体的にはプレートのフック部分同士の干渉を抑制するように設定されていることにより、第2噛合部チェーンガイド部分のガイド面に対する一対の噛合チェーンの衝突を回避した状態で一対の噛合チェーンの噛み合わせ動作を行うため、一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部に噛合チェーンを衝突させてしまうことで生じる衝突音などの騒音の発生を回避するとともにこの衝突を一因とするチェーン寿命低下を回避し、しかも噛み合い直前状態にある噛合チェーン同士の干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現することができる。
【0012】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、駆動用スプロケットがチェーン剛直化部分の側方から一対の噛合チェーンの一方に係合することにより、噛合チェーンの多角形運動を回避するため、高速且つ円滑なチェーン駆動を実現することができる。
【0013】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部がチェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることにより、一対の噛合チェーンを相互に噛み外して分岐させたチェーン噛み外れ部分だけでなく、一対の噛合チェーンを相互に噛み合せて剛直化させたチェーン剛直化部分をチェーン位置決めガイド部で支持するため、一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から剛直化させた状態に至るまで一対の噛合チェーンをガイドして一層高速且つ円滑にチェーンを駆動することができる。
【0014】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン剛直化方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることにより、直線状延長部分が前後一対の連結ピンのピン間距離の範囲内でチェーン剛直化部分をガイドするため、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせるまでの範囲内でのみ一対の噛合チェーンをガイドする場合に比べてより高速且つ円滑にチェーンを駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の全体斜視図。
【図2】図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【図3】噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図4】図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の正面図。
【図5】図4の一部を拡大した拡大図。
【図6】図4に対応した変形例に係る正面図。
【図7】従来の噛合チェーン式昇降装置における駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートとチェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態でチェーン剛直化方向に沿って一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から相互に噛み合わせる噛合完了位置まで一対の噛合チェーンをそれぞれガイドする一対の噛合部チェーンガイドを形成したチェーンガイドとを備え、一対の噛合部チェーンガイドが、噛合完了位置からチェーン剛直化方向に延びている状態でそれぞれチェーン剛直化部分をガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分と、第1噛合部チェーンガイド部分に連通した状態で噛合完了位置からチェーン剛直化方向の反対方向に延びて一対の噛合チェーンのそれぞれの円弧状チェーン軌道をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分と、一対の第2噛合部チェーンガイド部分のそれぞれに連通した状態で一対の噛合チェーンのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて一対の噛合チェーンのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分とから構成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分のガイド面が、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値に前記一対の噛合チェーンの円弧状チェーン軌道の曲率半径を設定するように形成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分の範囲が、一対の噛合チェーンの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート同士と一対のフック状外歯プレート同士とをそれぞれ非干渉状態とするように、より具体的にはプレートのフック部同士の干渉を抑制するように設定されているものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
また、噛合チェーンは、チェーン幅方向に対向する一対のフック状内歯プレートとこれらフック状内歯プレートの外側にそれぞれ配置された一対のフック状外歯プレートとを有して構成されたリンクユニットをチェーン長手方向にそれぞれ多数連結してなる複数列のチェーンユニットから構成されていてもよいし、単列のチェーンユニットから構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明に係る噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0018】
以下、図1乃至図5に基づいて本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100を説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の全体斜視図であり、図2は、図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図であり、図3は、噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図4は、図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の正面図であり、図5は、図4の一部を拡大した拡大図である。
【0019】
まず、図1乃至図3を参照しながら、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100の基本的な構成を説明する。
図1乃至図3に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン幅方向Wに沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレート111、111とチェーン幅方向Wに沿って一対のフック状内歯プレート111、111の外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレート112、112とを前後一対の連結ピン113、113によってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態でチェーン剛直化方向Aに沿って一体に剛直化してチェーン剛直化部分110Aを形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーン110L、110Rと、一対の噛合チェーン110L、110Rを進退自在に駆動する駆動用スプロケット120と、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み外した状態から相互に噛み合わせる噛合完了位置Pまで一対の噛合チェーン110L、110Rをそれぞれガイドする一対の噛合部チェーンガイド131L、131Rを形成したチェーンガイド130とを備えていることにより、一対の噛合チェーン110L、110Rの進退動作に応じて被駆動体Tを駆動するようになっている。
より具体的には、噛合チェーン式進退作動装置200は、図1に示すように、重量物(図示していない)を搭載する被駆動体Tを設置床面Gに対して垂直に昇降させるものである。
【0020】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、設置床面Gに据え付けたベースプレート140と、駆動軸121を中心にして駆動用スプロケット120を回転させる従動側スプロケット152に動力を伝達する動力伝達チェーン151と、この動力伝達チェーン151を駆動する駆動源としての駆動モータ150とを備え、ワークなどの重量物を搭載した被駆動体Tを一対の噛合チェーン110L、110Rで直接的に支持して押し上げるようになっている。
また、駆動用スプロケット120は、噛合チェーン110Lを構成するブシュ114に係合するように設計されている。
【0021】
次に、図1乃至図5を参照しながら、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100の最も特徴とする構成の具体的な形態を詳しく説明する。
図1乃至図5に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100では、一対の噛合部チェーンガイド131L、131Rが、噛合完了位置Pからチェーン剛直化方向Aに延びている状態でそれぞれチェーン剛直化部分110Aをガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分131AL、131ARと、第1噛合部チェーンガイド部分131AL、131ARに連通した状態で噛合完了位置Pからチェーン剛直化方向Aの反対方向に延びて一対の噛合チェーン110L、110Rのそれぞれの円弧状チェーン軌道OL1、OR1をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRと、これら一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRのそれぞれに連通した状態で一対の噛合チェーン110L、110Rのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて一対の噛合チェーン110L、110Rのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分131CL、131CRとから構成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRのガイド面が、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値Rmaxに一対の噛合チェーン110L、110Rの円弧状チェーン軌道OL1、0R1の曲率半径R1を設定するように形成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRの範囲K1、K2が、一対の噛合チェーン110L、110Rの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート111、111同士と一対のフック状外歯プレート112、112同士の先端部がそれぞれ非干渉状態とするように、より具体的にはプレートのフック部同士の干渉を抑制するように設定されている。
これにより、第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRのガイド面に対する一対の噛合チェーン110L、110Rの衝突を回避した状態で一対の噛合チェーン110L、110Rの噛み合わせ動作を行うため、噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110L、110Rの股間領域E1に設けられたチェーン位置決めガイド部132に高速で駆動する噛合チェーン110L、110Rを衝突させてしまうことで生じる衝突音などの騒音の発生を回避するとともにこの衝突を一因とするチェーン寿命低下を回避し、しかも噛み合い直前状態にある噛合チェーン110L、110R同士の干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現するようになっている。
なお、一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRの範囲K1、K2は、例えば、噛合直前状態にあるフック状内歯プレート111、111同士とフック状外歯プレート112、112同士とについてクリアランスδを設けるように、後述するチェーン係合仮想平面Sすなわち噛合完了位置Pを含む平面内に存在する円中心点C1、C2を基準にした角度α、βで規定されている。
また、本実施例では、第3噛合部チェーンガイド部分131CL、131CRのそれぞれについて円中心点C3、C4に対するチェーン軌道の曲率半径R2が曲率半径R1より大きいため、噛合チェーン式進退作動装置100におけるより高速且つ円滑なチェーン駆動が実現されるようになっている。
また、第3噛合部チェーンガイド部分131CL、131CRは、第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRにそれぞれ滑らかに連通した状態で直線状に形成されていてもよい。
【0022】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100では、駆動用スプロケット120が、チェーン剛直化部分110Aの側方から一対の噛合チェーン110L、110Rの一方すなわち噛合チェーン110Lに係合することにより、噛合チェーン110L、110Rの多角形運動を回避するため、噛合チェーン式進退作動装置100は、高速且つ円滑なチェーン駆動を実現するようになっている。
【0023】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100では、一対の噛合チェーン110L、110Rの股間領域E1に設けられたチェーン位置決めガイド部132が、チェーン剛直化部分110Aの中空領域E2に直線状に延びていることにより、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み外して分岐させたチェーン噛み外れ部分だけでなく、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み合せて剛直化させたチェーン剛直化部分110Aをチェーン位置決めガイド部132で支持するため、噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み外した状態から剛直化させた状態に至るまで一対の噛合チェーン110L、110Rをガイドして一層高速且つ円滑にチェーンを駆動するようになっている。
【0024】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100では、チェーン位置決めガイド部132のうちチェーン剛直化方向Aに直交して駆動用スプロケット120の駆動軸121を含むチェーン係合仮想平面Sから中空領域E2に延びている直線状延長部分132Aの長さL1が、前後一対の連結ピン113、113のピン間距離d以上であることにより、直線状延長部分132Aが前後一対の連結ピン113、113のピン間距離dの範囲内でチェーン剛直化部分110Aをガイドするため、噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み合わせるまでの範囲内でのみ一対の噛合チェーン110L、110Rをガイドする場合に比べてより高速且つ円滑にチェーンを駆動するようになっている。
【0025】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合部チェーンガイド131L、131Rが、噛合完了位置Pからチェーン剛直化方向Aに延びている状態でそれぞれチェーン剛直化部分110Aをガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分131AL、131ARと、第1噛合部チェーンガイド部分131AL、131ARに連通した状態で噛合完了位置Pからチェーン剛直化方向Aの反対方向に延びて一対の噛合チェーン110L、110Rのそれぞれの円弧状チェーン軌道OL1、OR1をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRと、これら一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRのそれぞれに連通した状態で一対の噛合チェーン110L、110Rのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて一対の噛合チェーン110L、110Rのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分131CL、131CRとから構成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRのガイド面が、一対の噛合チェーン110L、110Rを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値Rmaxに一対の噛合チェーン110L、110Rの円弧状チェーン軌道OL1、0R1の曲率半径R1を設定するように形成され、一対の第2噛合部チェーンガイド部分131BL、131BRの範囲K1、K2が、一対の噛合チェーン110L、110Rの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート111、111同士と一対のフック状外歯プレート112、112同士とをそれぞれ非干渉状態とするように、より具体的にはプレートのフック部同士の干渉を抑制するように設定されていることにより、一対の噛合チェーン110L、110Rの股間領域E1に設けられたチェーン位置決めガイド部132に噛合チェーン110L、110Rを衝突させてしまうことで生じる衝突音などの騒音の発生を回避するとともにこの衝突を一因とするチェーン寿命低下を回避し、しかも噛合直前状態にある噛合チェーン110L、110Rの干渉を回避した状態で高速且つ円滑なチェーン駆動を実現することができるなど、その効果は甚大である。
【0026】
次に、図6を参照しながら、上述した噛合チェーン式進退作動装置100の変形例を説明する。
図6は、図4に対応した変形例に係る正面図である。
なお、以下では、上述した噛合チェーン式進退作動装置100と共通する部分に共通の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0027】
図6に示すように、本変形例に係る噛合チェーン式進退作動装置は、直線状延長部分132Bの長さL2が、前後一対の連結ピン113、113のピン間距離dの2倍以上であることにより、チェーン剛直化方向Aに沿って3本以上の連結ピン113に直線状延長部分132Aの側面を対向させてこれら連結ピン113を直接的にまたはブシュ114或いはローラを介して間接的に支持するため、噛合チェーン110L、110Rの脈動(上下動)、振動及び騒音の発生をより確実に回避した状態で高速且つ円滑に噛合チェーン110L、110Rを駆動するようになっている。
【符号の説明】
【0028】
100 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
110L、110R、210 ・・・ 噛合チェーン
110A ・・・ チェーン剛直化部分
111 ・・・ フック状内歯プレート
112 ・・・ フック状外歯プレート
113 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
120、220 ・・・ 駆動用スプロケット
121、221 ・・・ 駆動軸
130、230 ・・・ チェーンガイド
131L、131R、231 噛合部チェーンガイド
131AL、131AR ・・・ 第1噛合部チェーンガイド部分
131BL、131BR ・・・ 第2噛合部チェーンガイド部分
131CL、131CR ・・・ 第3噛合部チェーンガイド部分
132、232 ・・・ チェーン位置決めガイド部
132A、132B ・・・ 直線状延長部分
140 ・・・ ベースプレート
150 ・・・ 駆動モータ
151 ・・・ 動力伝達チェーン
152 ・・・ 従動側スプロケット
200 ・・・ 噛合チェーン式昇降装置
C1、C2、C3、C4 ・・・ 円中心点
d ・・・ ピン間距離
E1 ・・・ 一対の噛合チェーンの股間領域
E2 ・・・ 中空領域
G ・・・ 設置床面
K1、K2 ・・・ 一対の第2噛合部チェーンガイド部分の範囲
L1、L2 直線状延長部分の長さ
OL1、OR1 ・・・ 円弧状チェーン軌道
OL2、OR2 ・・・ チェーン軌道
P ・・・ 噛合完了位置
R1 ・・・ 円弧状チェーン軌道OL1、0R1の曲率半径
R2 ・・・ 第3噛合部チェーンガイド部分におけるチェーン軌道の曲率半径
S ・・・ チェーン係合仮想平面
T ・・・ 被駆動体
W ・・・ チェーン幅方向
δ ・・・ クリアランス
α、β ・・・ 角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態でチェーン剛直化方向に沿って一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から相互に噛み合わせる噛合完了位置まで前記一対の噛合チェーンをそれぞれガイドする一対の噛合部チェーンガイドを形成したチェーンガイドとを備えている噛合チェーン式進退作動装置であって、
前記一対の噛合部チェーンガイドが、前記噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向に延びている状態でそれぞれ前記チェーン剛直化部分をガイドする一対の第1噛合部チェーンガイド部分と、前記第1噛合部チェーンガイド部分に連通した状態で前記噛合完了位置から前記チェーン剛直化方向の反対方向に延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれの円弧状チェーン軌道をそれぞれ規定する一対の第2噛合部チェーンガイド部分と、該一対の第2噛合部チェーンガイド部分のそれぞれに連通した状態で前記一対の噛合チェーンのチェーン噛み外れ方向に沿って相互に遠ざかるように延びて前記一対の噛合チェーンのそれぞれのチェーン噛み外れ部分をそれぞれガイドする一対の第3噛合部チェーンガイド部分とから構成され、
前記一対の第2噛合部チェーンガイド部分のガイド面が、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせ可能な曲率半径の最大値に前記一対の噛合チェーンの円弧状チェーン軌道の曲率半径を設定するように形成され、
前記一対の第2噛合部チェーンガイド部分の範囲が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作時に噛み合い直前状態にある一対のフック状内歯プレート同士と一対のフック状外歯プレート同士とをそれぞれ非干渉状態とするように設定されていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項2】
前記駆動用スプロケットが、前記チェーン剛直化部分の側方から前記一対の噛合チェーンの一方に係合することを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項3】
前記一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部が、前記チェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項4】
前記チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン剛直化方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーン式進退作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35615(P2013−35615A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170389(P2011−170389)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)