説明

噛合チェーン式進退作動装置

【課題】一対の噛合チェーンで支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で一対の噛合チェーンを高速で進退動するとともにチェーン剛直化部分の曲がりや座屈の発生を回避し、しかも駆動モータのサイズ増大に伴う装置全体のサイズ増大を回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供すること。
【解決手段】第1噛合チェーンユニット111、第2噛合チェーンユニット112及びチェーンガイドプレート113を備えている噛合チェーンモジュール110と、第1噛合チェーンユニット111の先端部に固定接続された被駆動体120と、第2噛合チェーンユニット112の先端部に固定接続されたベースプレート130とを備えている噛合チェーン式進退作動装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動物を設置面に対して駆動させる駆動装置に組み込まれる噛合チェーンモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の噛合チェーンを昇降用スプロケットで駆動し、チェーンの噛み合い及び噛み外れ動作に伴うチェーン進退動によって昇降テーブルを昇降させるもの(例えば、特許文献1参照。)がある。
また、アクチュエータ本体の約2倍のストロークで天板を駆動する電動アクチュエータがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107738号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2000−302385号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の昇降装置で昇降テーブルを高速で昇降させるためには、駆動モータの出力を昇降用スプロケットに中継する減速機構の減速比を小さくする必要があるため、昇降テーブル及びその上に載置される被昇降物を昇降可能な荷重すなわち一対の噛合チェーンで支持できる荷重が小さくなり、昇降テーブル及びその上に載置される被昇降物の荷重を支持した状態で一対の噛合チェーンを高速で進退動させる駆動力を出力するように駆動モータのサイズを大型化させる必要が生じ、昇降装置全体のサイズ増大を回避した状態で昇降テーブルの高速駆動を困難にさせてしまうという問題点があった。
また、一対の噛合チェーンを一組とする噛合チェーンユニットのみを用いて昇降テーブルを昇降させることを前提にして噛合チェーンユニットのストローク長すなわち一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせたチェーン剛直化部分を長くすると、チェーン剛直化部分の曲がりや座屈を生じさせ易くなってしまうという問題点があった。
なお、上述した各問題点は、一対の噛合チェーンのチェーン剛直化方向すなわち一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて剛直化させる方向が鉛直方向に沿っている場合に限定されず、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて剛直化させる方向が水平方向や斜め方向であっても生じうる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、一対の噛合チェーンで支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で一対の噛合チェーンを高速で進退動するとともにチェーン剛直化部分の曲がりや座屈の発生を回避し、しかも駆動モータのサイズ増大に伴う装置全体のサイズ増大を回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーンを有している第1噛合チェーンユニットと相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーンを有している第2噛合チェーンユニットと前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれに対応してチェーンガイド面を沿わせるように設けられて前記第1噛合チェーン対及び第2噛合チェーンをガイドする複数のチェーンガイドを形成したチェーンガイドプレートとを備え、前記第1噛合チェーンユニットおよび第2噛合チェーンユニットが、それぞれのチェーン噛み外れ部分を相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュールと、前記第1噛合チェーンユニットの先端部に固定接続された被駆動体と、前記第2噛合チェーンユニットの先端部に固定接続されたベースプレートとを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
請求項2に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1に記載の構成に加えて、前記チェーンガイドプレートが、前記複数のチェーンガイドを形成した単一の平板であり、前記相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分が、前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向に交差する方向に沿って剛直化することにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項3に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成に加えて、前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記チェーンガイドプレートに形成されたスプロケット収容溝に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項4に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、請求項3に記載の構成に加えて、前記駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンのチェーン屈曲部分に対して該チェーン屈曲部分の外側から係合していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項5に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記チェーンガイドが、前記チェーン噛み外れ部分を収納する曲線状チェーン収納部を有していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項6に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向が、前記ベースプレートを設置した設置面に直交する鉛直方向に対して平行であり、
前記噛合チェーンモジュールと前記被駆動体及びベースプレートのそれぞれに上端部及び下端部を固定接続したリンク機構の関節部とを相互に接続している接続機構が、前記チェーンガイドプレートに並列配置されているとともに前記チェーンガイドプレートに接続された側方プレートに固定接続され、前記関節部に固定接続されているとともに前記リンク機構の伸縮動作に応じて水平方向に移動する水平方向移動部が、前記接続機構に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明の噛合チェーン式進退作動装置によれば、相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーンを有している第1噛合チェーンユニットと相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーンを有している第2噛合チェーンユニットと前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれに対応してチェーンガイド面を沿わせるように設けられて前記第1噛合チェーン対及び第2噛合チェーンをガイドする複数のチェーンガイドを形成したチェーンガイドプレートとを備え、前記第1噛合チェーンユニットおよび第2噛合チェーンユニットが、それぞれのチェーン噛み外れ部分を相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュールと、前記第1噛合チェーンユニットの先端部に固定接続された被駆動体と、前記第2噛合チェーンユニットの先端部に固定接続されたベースプレートとを備えていることにより、一つの噛合チェーンユニットのみを進退動させて被駆動体を駆動させる駆動長に比べて第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向に沿って一つの噛合チェーンユニットのストローク長の2倍に被駆動体の駆動長を増大させるとともに相互に噛み合ったチェーン噛み外れ部分で第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットの進退動を同期させるため、第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットで支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で被駆動体を高速すなわち一つの噛合チェーンユニットで被駆動体を駆動する駆動速度の2倍で駆動するとともにチェーン剛直化部分の曲がりや座屈の発生を回避し、しかも駆動モータのサイズ増大を回避して装置全体のサイズ増大を回避することができる。
【0013】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置によれば、請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーンガイドプレートが、前記複数のチェーンガイドを形成した単一の平板であり、前記相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分が、前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向に交差する方向に沿って剛直化することにより、相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分を一体の剛体として第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットのそれぞれの進退動を同期させるため、第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットのそれぞれの進退動を別々に制御する場合に比べて第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットのそれぞれについて機械的及び電気的な同期をとる設計上の手間を回避した状態で第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットを高速で進退動させて被駆動体を高速駆動することができる。
【0014】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置によれば、請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記チェーンガイドプレートに形成されたスプロケット収容溝に配置されていることにより、第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれに別個の駆動用スプロケットを係合させる場合に比べて駆動モータから駆動用スプロケットに駆動力を伝達する動力伝達機構の構成を簡素化して部品点数増加を回避するため、装置全体のサイズ増大を一層回避するとともに第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向の2軸の噛合チェーンを同時に進退駆動して被駆動体を高速で駆動することができる。
【0015】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置によれば、請求項3に記載の噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンのチェーン屈曲部分に対して該チェーン屈曲部分の外側から係合していることにより、一方の噛合チェーン及び駆動用スプロケットの間で係合する歯数を増加させることができるため、駆動用スプロケットから一方の噛合チェーンに駆動用スプロケットの回転力すなわち一方の噛合チェーンに対する駆動力を確実に伝達した状態で第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットを安定して進退動させて被駆動体を高速駆動することができる。
【0016】
そして、本請求項5に係る噛合チェーン式進退作動装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーンガイドが、前記チェーン噛み外れ部分を収納する曲線状チェーン収納部を有していることにより、直線状のチェーンガイドにチェーン噛み外れ部分を収納する場合に比べてチェーンガイドプレートの設置スペース内で効率良くチェーン噛み外れ部分の収納スペースを設定するため、装置全体のサイズ増大をより一層回避することができる。
【0017】
そして、本請求項6に係る噛合チェーン式進退作動装置によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向が、前記ベースプレートを設置した設置面に直交する鉛直方向に対して平行であり、前記噛合チェーンモジュールと前記被駆動体及びベースプレートのそれぞれに上端部及び下端部を固定接続したリンク機構の関節部とを相互に接続している接続機構が、前記チェーンガイドプレートに並列配置されているとともに前記チェーンガイドプレートに接続された側方プレートに固定接続され、前記関節部に固定接続されているとともに前記リンク機構の伸縮動作に応じて水平方向に移動する水平方向移動部が、前記接続機構に設けられていることにより、リンク機構が第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットの進退動に応じた噛合チェーンモジュールの上下移動を阻害しないとともに噛合チェーンモジュールの横方向すなわち噛合チェーンモジュールからみて接続機構を設けた側から噛合チェーンモジュールを支持するため、第1噛合チェーンユニット及び第2噛合チェーンユニットのそれぞれで支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で被駆動体を高速で駆動するとともにチェーン剛直化部分の曲がりや座屈の発生をより一層回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンユニットの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面側斜視図。
【図3】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の背面側斜視図。
【図4】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面図。
【図5】本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンモジュールの正面図。
【図6】本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンモジュールの平面図。
【図7】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーンを有している第1噛合チェーンユニットと相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーンを有している第2噛合チェーンユニットと第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれに対応してチェーンガイド面を沿わせるように設けられて第1噛合チェーン対及び第2噛合チェーンをガイドする複数のチェーンガイドを形成したチェーンガイドプレートとを備え、第1噛合チェーンユニットおよび第2噛合チェーンユニットが、それぞれのチェーン噛み外れ部分を相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュールと、第1噛合チェーンユニットの先端部に固定接続された被駆動体と、第2噛合チェーンユニットの先端部に固定接続されたベースプレートとを備えているものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
また、第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれの一部であるチェーン噛み外れ部分同士は、再度噛合領域を形成しないでそのまま進退駆動されても構わない。
なお、以下に挙げる実施例は、本発明に係る噛合チェーン式進退作動装置に用いる2つの噛合チェーンユニットを鉛直方向に進退動させるものであるが、2つの噛合チェーンユニットを水平方向に進退動するように噛合チェーン式進退作動装置を壁面に設置して使用しても構わない。
【実施例】
【0020】
以下、図1乃至図7を参照しながら、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置100を説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンユニットの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面側斜視図であり、図3は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の背面側斜視図であり、図4は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の正面図であり、図5は、本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンモジュールの正面図であり、図6は、本発明の一実施例で用いられる噛合チェーンモジュールの平面図であり、図7は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の動作説明図である。
【0021】
まず、図1に基づいて、後述する噛合チェーン式進退作動装置100に用いられる第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112を詳細に説明する。
なお、第1及び第2噛合チェーンユニット111、112は、相互に同一の構成を有しているため、第1噛合チェーンユニット111の構成を詳細に説明し、第2噛合チェーンユニット112の詳細な説明を省略する。
図1に示すように、第1噛合チェーンユニット111は、チェーン幅方向DWに沿って離間配置される一対のフック状内歯プレート111RA、111RA及びこの一対のフック状内歯プレート111RA、111RAの外側にそれぞれ隣接配置されるフック状外歯プレート111RB、111RBを前後一対の連結ピン111RC、111RCでチェーン長手方向に多数連結して構成されている。
また、チェーン幅方向DWに沿って相互に対向する一対のフック状内歯プレート111RA、111RAは、連結ピン111RCを挿嵌したブシュ111RDを介して互いにチェーン幅方向DWに連結固定されている。
一対の第1噛合チェーン111R、111Lは、相互に対向配置した状態で後述の駆動用スプロケット140によって駆動されて噛み合って一体化するとともに噛み外れて分岐する。
なお、第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン対112R、112Lは、ブシュにローラが遊嵌されているローラチェーンタイプでも、ピンとプレートのみから構成されているタイプでも、いずれであってもよい。
【0022】
次に、図2乃至図7を参照しながら、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置100を詳細に説明する。
なお、本実施例では、チェーンガイドプレート113の上下端のそれそれから図7中の上下方向すなわち第1チェーン剛直化方向D1及び第2チェーン剛直化方向D2に第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112のそれぞれを長さL1だけ突出させた状態から駆動長L2だけ第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112をそれぞれ伸張させた状態を例に挙げて噛合チェーン式進退作動装置100の動作状態を説明する。
図2乃至図7に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向D1に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーン111R、111Lを有している第1噛合チェーンユニット111と相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向D1に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向D2に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーン112R、112Lを有している第2噛合チェーンユニット112と第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lのそれぞれに対応してチェーンガイド面113ASを沿わせるように設けられて第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lをガイドする複数のチェーンガイド113Aを形成したチェーンガイドプレート113とを備え、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112が、それぞれのチェーン噛み外れ部分111RH、111LH、112RH、112LHを相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュール110と、第1噛合チェーンユニット111の先端部に固定接続された被駆動体120と、第2噛合チェーンユニット112の先端部に固定接続されたベースプレート130とを備えていることにより、一つの噛合チェーンユニットのみを進退動させてテーブル等の被駆動体120を駆動させる駆動長L2に比べて第1チェーン剛直化方向D1及び第2チェーン剛直化方向D2に沿って一つの噛合チェーンユニットのストローク長の2倍すなわち駆動長L2の2倍に被駆動体120の駆動長ΔLを増大させるとともに相互に噛み合ったチェーン噛み外れ部分111RH及び112RH、111LH及び112LHで第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112の進退動を同期させるため、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112で支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で被駆動体120を高速すなわち一つの噛合チェーンユニットで被駆動体を駆動する駆動速度の2倍で駆動するとともにチェーン剛直化部分111G、112Gの曲がりや座屈の発生を回避し、しかも駆動モータMのサイズ増大を回避して装置全体のサイズ増大を回避するようになっている。
【0023】
この場合、第1噛合チェーンユニット111の先端部側から伝達された被駆動体120の荷重が第1噛合チェーンユニット111のチェーン剛直化部分111Gから同一軸線を経由して第2噛合チェーンユニット112のチェーン剛直化部分112Gまで一直線に伝達されるので、各噛合チェーンユニットに対してせん断力や曲げ力が働きにくく、チェーン式進退作動装置100は、より安定して第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112を進退駆動させることができる。
【0024】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーンガイドプレート113が、複数のチェーンガイド113Aを形成した単一の平板であり、相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分111RH及び112RH、111LH及び112LHが、第1チェーン剛直化方向D1及び第2チェーン剛直化方向D2に交差する方向DR及びDLすなわち水平方向DHに沿って剛直化することにより、相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分111RH及び112RH、111LH及び112LHを一体の剛体として第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112のそれぞれの進退動を同期させるため、噛合チェーン式進退作動装置100は、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112のそれぞれの進退動を別々に制御する場合に比べて第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112のそれぞれについて機械的及び電気的な同期をとる設計上の手間を回避した状態で第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112を高速で進退動させて被駆動体120を高速駆動するようになっている。
【0025】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lのうち一方の噛合チェーンすなわち第1噛合チェーン111Lに係合する駆動用スプロケット140が、チェーンガイドプレート113に形成されたスプロケット収容溝113Bに配置されていることにより、第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lのそれぞれに別個の駆動用スプロケットを係合させる場合に比べて駆動モータMから駆動用スプロケット140に駆動力を伝達する動力伝達機構の構成を簡素化して部品点数増加を回避するため、噛合チェーン式進退作動装置100は、装置全体のサイズ増大を一層回避するとともに第1チェーン剛直化方向D1及び第2チェーン剛直化方向D2の2軸の噛合チェーン111R及び111L、112R及び112Lを同時に進退駆動して被駆動体120を高速で駆動するようになっている。
なお、駆動用スプロケット140は、駆動モータMから直交ギアGSを介して駆動力を受けて回転し、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112を駆動する。
【0026】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、駆動用スプロケット140が、一方の噛合チェーンすなわち第1噛合チェーン111Lのチェーン屈曲部分CWに対してこのチェーン屈曲部分CWの外側から係合していることにより、一方の噛合チェーンすなわち第1噛合チェーン111L及び駆動用スプロケット140の間で係合する歯数を増加させることができるため、噛合チェーン式進退作動装置100は、駆動用スプロケット140から一方の噛合チェーンすなわち第1噛合チェーン111Lに駆動用スプロケット140の回転力すなわち第1噛合チェーン111Lに対する駆動力を確実に伝達した状態で第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112を安定して進退動させて被駆動体120を高速駆動するようになっている。
なお、駆動用スプロケット140は、4つのチェーン屈曲部分CWのいずれかの外側からチェーン屈曲部分CWに対応する噛合チェーンに係合していてもよい。
【0027】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーンガイド113Aが、チェーン噛み外れ部分111RH、111LH、112RH、112LHを収納する曲線状チェーン収納部113APを有していることにより、直線状のチェーンガイドにチェーン噛み外れ部分111RH、111LH、112RH、112LHを収納する場合に比べてチェーンガイドプレート113の設置スペース内で効率良くチェーン噛み外れ部分111RH、111LH、112RH、112LHの収納スペースを設定するため、噛合チェーン式進退作動装置100は、装置全体のサイズ増大をより一層回避するようになっている。
【0028】
また、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、第1チェーン剛直化方向D1及び第2チェーン剛直化方向D2が、ベースプレート130を設置した設置面Gに直交する鉛直方向DVに対して平行であり、噛合チェーンモジュール110と被駆動体120及びベースプレート130のそれぞれに上端部及び下端部を固定接続したパンタグラフ等のリンク機構160の関節部161とを相互に接続している接続機構150が、チェーンガイドプレート113に並列配置されているとともにチェーンガイドプレート113に接続された側方プレート151に固定接続され、関節部161に固定接続されているとともにリンク機構160の伸縮動作に応じて水平方向DHに移動する水平方向移動部152が、接続機構150に設けられていることにより、リンク機構160が第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112の進退動に応じた噛合チェーンモジュール110の上下移動を阻害しないとともに噛合チェーンモジュール110の横方向すなわち噛合チェーンモジュール110からみて接続機構150を設けた側から噛合チェーンモジュール110を支持するため、噛合チェーン式進退作動装置100は、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112のそれぞれで支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で被駆動体120を高速で駆動するとともにチェーン剛直化部分111G、112Gの曲がりや座屈の発生をより一層回避するようになっている。
なお、水平方向移動部152は、水平方向レール153に沿って図2及び図4中の矢印方向すなわち水平方向DHにスライドするように構成されている。
【0029】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向D1に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーン111R、111Lを有している第1噛合チェーンユニット111と相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向D1に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向D2に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーン112R、112Lを有している第2噛合チェーンユニット112と第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lのそれぞれに対応してチェーンガイド面113ASを沿わせるように設けられて第1噛合チェーン111R、111L及び第2噛合チェーン112R、112Lをガイドする複数のチェーンガイド113Aを形成したチェーンガイドプレート113とを備え、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112が、それぞれのチェーン噛み外れ部分111RH、111LH、112RH、112LHを相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュール110と、第1噛合チェーンユニット111の先端部に固定接続された被駆動体120と、第2噛合チェーンユニット112の先端部に固定接続されたベースプレート130とを備えていることにより、第1噛合チェーンユニット111及び第2噛合チェーンユニット112で支持可能な荷重の低下を生じさせない状態で被駆動体120を高速すなわち一つの噛合チェーンユニットで被駆動体を駆動する駆動速度の2倍で駆動するとともにチェーン剛直化部分111G、112Gの曲がりや座屈の発生を回避し、しかも駆動モータMのサイズ増大を回避して装置全体のサイズ増大を回避することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0030】
100 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
110 ・・・ 噛合チェーンモジュール
111 ・・・ 第1噛合チェーンユニット
111G ・・・ 第1噛合チェーンユニットのチェーン剛直化部分
111R、111L 第1噛合チェーン
111RA ・・・ フック状内歯プレート
111RB ・・・ フック状外歯プレート
111RC ・・・ 連結ピン
111RD ・・・ ブシュ
112 ・・・ 第2噛合チェーンユニット
112G ・・・ 第2噛合チェーンユニットのチェーン剛直化部分
112R、112L 第2噛合チェーン
113 ・・・ チェーンガイドプレート
113A ・・・ チェーンガイド
113AS ・・・ チェーンガイド面
120 ・・・ 被駆動体
130 ・・・ ベースプレート
140 ・・・ 駆動用スプロケット
150 ・・・ 接続機構
151 ・・・ 側方プレート
152 ・・・ 水平方向移動部
153 ・・・ 水平方向レール
160 ・・・ リンク機構
161 ・・・ リンク機構の関節部
CW ・・・ チェーン屈曲部分
D1 ・・・ 第1チェーン剛直化方向
D2 ・・・ 第2チェーン剛直化方向
DV ・・・ 鉛直方向
DH ・・・ 水平方向
DR、DL ・・・ 第1及び第2チェーン剛直化方向に対する交差方向
DW ・・・ チェーン幅方向
ΔL ・・・ 被駆動体の駆動長
L1 ・・・ 第1及び第2噛合チェーンユニットの突出長さ
L2 ・・・ 第1及び第2噛合チェーンユニットの駆動長
G ・・・ 設置面
GS ・・・ 直交ギア
M ・・・ 駆動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第1噛合チェーンを有している第1噛合チェーンユニットと相互に噛み合って対向配置した状態で第1チェーン剛直化方向に対して逆向きである第2チェーン剛直化方向に向かって一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで進退自在に駆動される一対の第2噛合チェーンを有している第2噛合チェーンユニットと前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのそれぞれに対応してチェーンガイド面を沿わせるように設けられて前記第1噛合チェーン対及び第2噛合チェーンをガイドする複数のチェーンガイドを形成したチェーンガイドプレートとを備え、前記第1噛合チェーンユニットおよび第2噛合チェーンユニットが、それぞれのチェーン噛み外れ部分を相互に噛み合わせるように配置されている噛合チェーンモジュールと、
前記第1噛合チェーンユニットの先端部に固定接続された被駆動体と、
前記第2噛合チェーンユニットの先端部に固定接続されたベースプレートと
を備えていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項2】
前記チェーンガイドプレートが、前記複数のチェーンガイドを形成した単一の平板であり、
前記相互に噛み合うチェーン噛み外れ部分が、前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向に交差する方向に沿って剛直化することを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項3】
前記第1噛合チェーン及び第2噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記チェーンガイドプレートに形成されたスプロケット収容溝に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項4】
前記駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンのチェーン屈曲部分に対して該チェーン屈曲部分の外側から係合していることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項5】
前記チェーンガイドが、前記チェーン噛み外れ部分を収納する曲線状チェーン収納部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項6】
前記第1チェーン剛直化方向及び第2チェーン剛直化方向が、前記ベースプレートを設置した設置面に直交する鉛直方向に対して平行であり、
前記噛合チェーンモジュールと前記被駆動体及びベースプレートのそれぞれに上端部及び下端部を固定接続したリンク機構の関節部とを相互に接続している接続機構が、前記チェーンガイドプレートに並列配置されているとともに前記チェーンガイドプレートに接続された側方プレートに固定接続され、
前記関節部に固定接続されているとともに前記リンク機構の伸縮動作に応じて水平方向に移動する水平方向移動部が、前記接続機構に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56764(P2013−56764A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197499(P2011−197499)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)