説明

噴流式電解メッキ装置およびメッキ方法

【課題】本発明はメッキ速度を速めるとともに、メッキ厚のバラツキを小さくすることができるメッキ装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】下部よりポンプ11によりメッキ液を噴流させるためのメッキ液導入口15を有するカップ槽12と、このカップ槽12の中に水平に設けられ中央部に円形の穴14を有するアノード電極13と、カップ槽12の上部に設けられた被メッキ物16のメッキ処理面を下向きにして保持するカソード電極17とを備え、穴14の上面側径をa、穴14の下面側径をb、メッキ液導入口15の最小径をcとしたとき、b<c≦aを満たすように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品のメッキに用いられる噴流式メッキ装置およびメッキ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年各種電子部品の製造方法において、ウェハ状態で製造し、外部電極等をメッキで形成することが行なわれている。この工程において、量産性を考えるとメッキ形成速度とメッキ膜の均一性が重要となってくるため、噴流式のメッキ装置が使われるようになってきている。図2は、従来の噴流式のメッキ装置の断面図であり、下部よりポンプ1によりメッキ液を噴流させるためのメッキ液導入口5を有するカップ槽2とメッシュ状のアノード電極3と、カップ槽2の上部に設けられた被メッキ物6のメッキ処理面を下向きにして保持するカソード電極7とを備え、アノード電極3とカソード電極7との間に制御板4を設けることにより、メッキ厚の均一化を図っていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−158094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の制御板を用いてメッキ厚の均一化を図る方法は、メッキ成長速度が速い部分の成長速度を抑えることによって、均一化を図るものである。しかし、噴流によるメッキ液の攪拌を妨げることになり、電流効率の低下など、結果として全体のメッキ成長速度が遅くなり、量産性に課題が出てくる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、下部よりポンプによりメッキ液を噴流させるためのメッキ液導入口を有するカップ槽と、このカップ槽の中に水平に設けられ中央部に円形の穴を有するアノード電極と、前記カップ槽の上部に設けられた被メッキ物のメッキ処理面を下向きにして保持するカソード電極とを備え、前記穴の上面側径をa、前記穴の下面側径をb、前記メッキ液導入口の最小径をcとしたとき、b<c≦aを満たすように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、アノード電極に設けた穴の形状は下面から上面にかけて穴径が広がるテーパ状となっているため、穴を通ったメッキ液は被メッキ物に向かって広がりながら動いていく。このときアノード電極に設けた穴の形状によってメッキ液の動きは、垂直方向に円運動する渦流を伴いながら広がっていく。この渦流によって被メッキ物の周辺部分にもメッキ液が十分に供給されるため、メッキ速度を速めるとともに、メッキ厚のバラツキを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態における噴流式電解メッキ装置の断面図
【図2】従来のメッキ装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における噴流式電解メッキ装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態における噴流式電解メッキ装置の断面図であり、ポンプ11から送られたメッキ液が、メッキ液導入口15を通ってカップ槽12に送られる。カップ槽12の中ほどに水平に設置されたアノード電極13には中央部に円形の穴14が設けられており、この穴14を通ってポンプ11から送られたメッキ液が上方に供給される。カップ槽12の上部にカソード電極17が配置され、このカソード電極17に処理面を下向きにして被メッキ物16が保持されている。このようにした状態で、下からメッキ液を噴出させて被メッキ物16に到達させながら、アノード電極13とカソード電極17の間に電流を流すことにより、被メッキ物16に電解メッキ層を形成する。
【0011】
ここでアノード電極13は、厚さ約5mmの銅板からなり、中央部に下面側の径が約4mm、上面側の径が約12mmの円形の穴14が設けられている。すなわちこの穴14は、下面側から上面側にかけて径が広がるテーパ状となっている。またカップ槽12の下側につながるメッキ液導入口15の径を約10mmとしている。さらにアノード電極13上面から被メッキ物16の下面までの距離を約50mmとし、被メッキ物16として直径約100mmの円形のウェハを用いている。
【0012】
このように構成したメッキ装置で、硫酸と硫酸銅を主成分としたメッキ液をポンプによりメッキ液導入口15を通してカップ槽12内に供給する。カップ槽12からあふれたメッキ液は、回収され、ポンプ11に戻され、循環される。
【0013】
このようにすることにより、穴14を通ったメッキ液は被メッキ物16に向かって垂直方向に円運動する渦流18を伴いながら広がっていく。この渦流18によって被メッキ物16の周辺部分に当たるメッキ液の速度を早くすることができ、これによりメッキ厚の均一化と、メッキ形成速度の向上を図ることができる。
【0014】
メッキ液導入口15の最小径が穴14の最小径よりも小さいと、中心部分の流量が大きくなり、メッキ厚が被メッキ物16の中央部分で厚いものとなるため、メッキ液導入口15の最小径を穴14の最小径よりも大きくすることが必要である。
【0015】
以上のように、穴14の上面側径をa、穴14の下面側径をb、メッキ液導入口15の最小径をcとしたとき、b<c≦aを満たすようにすることにより、メッキ厚の均一化と、メッキ形成速度の向上を図ることができる。
【0016】
(実施例)
次に、具体的に形状を変えてメッキ形成を行なった結果について説明する。
【0017】
(表1)はメッキ液の流量、アノード電極13とカソード電極17との間に流す電流を一定として、穴14の上面側径aを変えていったときに、被メッキ物16に形成されたメッキ厚のバラツキを比較したものである。
【0018】
【表1】

【0019】
テーパを設けないもの(a=bのもの)では、メッキ厚のバラツキσが3.55μmと大きいのに対し、穴14の上面側径aを大きくしていくに従ってメッキ厚のバラツキσが小さくなっていくことが分かる。
【0020】
また、穴14の下面側端部と穴14の上面側端部とを結ぶ線と、アノード電極13とのなす角度θを、テーパを設けない90°から、テーパを設けることにより小さくしていくと、バラツキσは60°より小さくなると小さくなっていき、40°以下になると逆に大きくなることが分かる。これはテーパの角度を変えることにより、渦流18の発生のしかたが変わるためであり、60°以上では垂直のものに近くなり、40°以下ではテーパの効果が出にくくなるためである。したがって、角度θは、40°<θ<60°とすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る噴流式電解メッキ装置およびメッキ方法によれば、メッキ速度を速めるとともに、メッキ厚のバラツキを小さくすることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0022】
11 ポンプ
12 カップ槽
13 アノード電極
14 穴
15 メッキ液導入口
16 被メッキ物
17 カソード電極
18 渦流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部よりポンプによりメッキ液を噴流させるためのメッキ液導入口を有するカップ槽と、このカップ槽の中に水平に設けられ中央部に円形の穴を有するアノード電極と、前記カップ槽の上部に設けられた被メッキ物のメッキ処理面を下向きにして保持するカソード電極とを備え、前記穴の上面側径をa、前記穴の下面側径をb、前記メッキ液導入口の最小径をcとしたとき、b<c≦aを満たすように構成した噴流式電解メッキ装置。
【請求項2】
前記穴の下面側端部と前記穴の上面側端部とを結ぶ線と、前記アノード電極とのなす角度θを、40°<θ<60°とした請求項1記載の噴流式電解メッキ装置。
【請求項3】
下部よりポンプによりメッキ液を噴流させるためのメッキ液導入口を有するカップ槽と、このカップ槽の中に水平に設けられ中央部に円形の穴を有するアノード電極と、前記カップ槽の上部に設けられた被メッキ物のメッキ処理面を下向きにして保持するカソード電極とを備え、前記穴の上面側径をa、前記穴の下面側径をb、前記メッキ液導入口の最小径をcとしたとき、b<c≦aを満たすように構成し、前記メッキ液を噴流させることにより前記カップ槽内に渦流を発生させながらメッキを行なうメッキ方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77361(P2012−77361A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225342(P2010−225342)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)