噴流浴装置
【課題】飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【解決手段】本発明の噴流浴装置は、対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧してノズルに送る加圧装置とを備え、複数のノズルは、一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含む。
【解決手段】本発明の噴流浴装置は、対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧してノズルに送る加圧装置とを備え、複数のノズルは、一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する一対の短辺側浴槽壁のそれぞれにノズルを設け、各ノズルから対向壁方向へ直線的に水流を生じさせる浴槽がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−178142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、噴流浴装置としては、直線的な噴流を人体に当ててその刺激によるマッサージを実現するものが主であり、特に刺激をより高めるには気泡入り噴流を噴出させることが有効であることもあって噴流噴出音が騒々しく、且つ噴流刺激を人体に受けながらの入浴ということで、長時間リラックスして噴流浴を楽しむことは難しかった。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、前記一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに送る加圧装置とを備え、前記複数のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の前記長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含むことを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。また、図2に同噴流浴装置における浴槽4の平面図を示す。
【0009】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、加圧装置であるポンプ7と、複数のノズル(第1のノズル11aと第2のノズル11b)とを備える。
【0010】
浴槽4は、略平行に対向する一対の長辺浴槽壁3a、3bと、略平行に対向する一対の短辺浴槽壁4a、4bとを有し、平面視が略矩形状または長円形状に形成されている。
【0011】
一対の長辺浴槽壁3a、3bのうちの一方には吸入口5が形成されている。吸入口5と、ポンプ7の吸込口との間には吸込管6が接続され、ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5から吸込管6へと吸い込まれる。
【0012】
一般に、入浴者200は、向かい合う一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺浴槽壁(図1に示す例では短辺浴槽壁4b)に背をもたれかけて、他方の短辺浴槽壁(図1に示す例では短辺浴槽壁4a)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺浴槽壁4a、4bに形成した場合には、入浴者200の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺浴槽壁3a、3bに形成するのが望ましい。
【0013】
ポンプ7の吐出口と各ノズル11a、11bとの間は吐出管8で接続され、ポンプ7は、吸入口5から吸込管6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出管8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、各ノズル11a、11bの内部に導入される。なお、使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0014】
本実施形態では、一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺浴槽壁4aに第1のノズル11aと第2のノズル11bを取り付けている。ここで、図2の平面視において、短辺浴槽壁4a、4bの水平方向の中心を通る中心線Cを1点鎖線で示す。2つのノズル11a、11bは、その中心線Cを挟んでその水平方向に互いに離間して並んで設けられている。上記中心線Cに対する各ノズル11a、11bの離間距離は略同じであり、また、2つのノズル11a、11bの設置高さは略同じ高さである。
【0015】
ノズル11a、11bが取り付けられた短辺浴槽壁4aの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者200は自然と図1に示すように、ノズル11a、11bが設けられた側の短辺浴槽壁4aに足を向け、反対側の短辺浴槽壁4bに背をもたれかけた姿勢で入浴する。
【0016】
ノズル11a、11bは、それぞれの噴出口26を浴槽4の内部に臨ませて、浴槽4のあふれ縁より下で短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、各ノズル11a、11bからの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0017】
浴槽4近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から吸込管6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、吐出管8を介して、各ノズル11a、11bの内部に導入される。各ノズル11a、11b内に導入された加圧浴槽水は、気泡を含まない噴流を、浴槽4内に貯留された浴槽水中に噴出する。
【0018】
図2を参照して前述した短辺浴槽壁4aの水平方向の中心を通る中心線Cと、第1の長辺浴槽壁3aとの間に、第1のノズル11aが設けられている。この第1のノズル11aは、一対の長辺浴槽壁3a、3bのうち自身に近い側の第1の長辺浴槽壁3aに向けて噴流の噴出を行う。
【0019】
第2のノズル11bは、上記中心線Cと、第2の長辺浴槽壁3bとの間に設けられている。この第2のノズル11bは、一対の長辺浴槽壁3a、3bのうち自身に近い側の第2の長辺浴槽壁3bに向けて噴流の噴出を行う。
【0020】
各ノズル11a、11bが長辺浴槽壁3a、3bに向けて噴流の噴出を行うということは、各ノズル11a、11bは、長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行な方向(長辺平行方向)には噴流を噴出しない。
【0021】
さらに具体的には、第1のノズル11aは、対向する他方の短辺浴槽壁4bと第1の長辺浴槽壁3aとが形成するコーナー部に向けた方向(図2において矢印a方向)と、自身が設けられた短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり中心線Cから第1の長辺浴槽壁3aに向かう方向(図2における矢印b方向)と、の間の範囲内(方向a、bも含む)に設定された方向に噴流を噴出する。
【0022】
同様に、第2のノズル11bは、対向する他方の短辺浴槽壁4bと第2の長辺浴槽壁3bとが形成するコーナー部に向けた方向(図2において矢印a方向)と、自身が設けられた短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり中心線Cから第2の長辺浴槽壁3bに向かう方向(図2における矢印b方向)と、の間の範囲内(方向a、bも含む)に設定された方向に噴流を噴出する。
【0023】
各ノズル11a、11bから前述した方向に噴流が噴出されると、図7(a)に模式的に示すように、浴槽4内において長辺浴槽壁3a、3b寄りの部分を、ノズル11a、11bが設けられた短辺浴槽壁4aから反対側の短辺浴槽壁4bに向けて流れる流れが形成される。したがって、ノズル11a、11bが設けられた短辺浴槽壁4aとは反対側の短辺浴槽壁4bに背を向け、ノズル11a、11b側に足を向けた姿勢で入浴している入浴者200の脇をすり抜けるような流れを形成することができる。
【0024】
また、その流れはノズル11a、11bから遠ざかるほど直進性を失い、入浴者200の手前あたりで長辺浴槽壁3a、3b側から中心線Cに向かう成分が大きくなり、その部分での流れの衝突により、入浴者200の胸部や腹部といった胴部の前側には、入浴者200側からノズル11a、11b側に向かう流れを形成することができ入浴者200の心肺等に圧迫感を与えない。
【0025】
以上のことから、入浴者200は、柔らかな水流につつまれたような水流のさわさわ感やゆらぎ感を感じることができ、噴流を人体に対して局所的に受けるよりも、飽き(馴化)がなく、長時間リラックスした噴流浴を楽しめる。
【0026】
第1のノズル11aと第2のノズル11bは、同じ高さに設置し、且つ高さ方向の噴流噴出角度(水平方向を0°の基準にした角度)を同じにすれば、第1のノズル11aから浴槽水中に噴流噴出されて形成された主流と、第2のノズル11bから浴槽水中に噴流噴出されて形成された主流どうしが浴槽水中同じ高さ(深さ)で衝突する作用にて、その衝突部で流れの方向が比較的高めの周波数で変化することに起因するさわさわ感が得られる。なお、第1のノズル11aと第2のノズル11bとで、上記高さ方向の噴流噴出角度が多少ずれても、それぞれのノズルからの主流は高さ(深さ)方向に、ある程度の幅を持っているので、それら主流どうしを衝突させることができ上記さわさわ感を得ることはできる。
【0027】
2つのノズル11a、11bのそれぞれから、図7(b)において点線で示すように、ノズル設置高さよりも上向きに噴流噴出が行われた場合には、2つの主流が長辺浴槽壁3a、3b寄りの水面近くを他方の短辺浴槽壁4bに向かって流れ、その他方の短辺浴槽壁4bにおける水面近くで互いに衝突する。
【0028】
2つのノズル11a、11bのそれぞれから、図7(b)において1点鎖線で示すように、ノズル設置高さよりも下向きに噴流噴出が行われた場合には、2つの主流が長辺浴槽壁3a、3b寄りの浴槽底面近くを他方の短辺浴槽壁4bに向かって流れ、その他方の短辺浴槽壁4bにおける底面近くで互いに衝突する。
【0029】
上向きに噴流噴出を行った場合と下向きに噴流噴出を行った場合は、短辺浴槽壁4bに背中を向けている入浴者の体の前側や脇にはさわさわ感を感じさせることができるものの、浴槽水中に形成される流れ及び衝突部分が、それぞれ水面付近と底面付近とに偏ってしまうので、背中全体にさわさわ感を感じさせることは難しくなる。
【0030】
これに対して、2つのノズル11a、11bを水面側及び底面側のいずれにも偏らない高さ位置に設置し、そのノズル設置高さから、図7(b)において実線で示すように、ほぼ水平に噴流噴出が行われた場合には、各ノズル11a、11bからの主流が上方向にも下方向にも広がりながら進んで短辺浴槽壁4bで互いに衝突し、その衝突流は水面側及び底面側のどちらにも偏らず、背中全体に広くさわさわ感を感じさせやすい。
【0031】
次に、図3は、図2を参照して前述した方向a〜方向bの範囲内で噴出方向を変えることができるノズルの一具体例を示す。この図3における第1のノズル51aは、図1、2における第1のノズル11aに対応する。同様に、図3における第2のノズル51bは、図1、2における第2のノズル11bに対応する。
【0032】
また、第1のノズル51aの水平断面図を図4に示す。以下、第1のノズル51aについて説明していくが、第2のノズル51bについても第1のノズル51aと同様に構成される。
【0033】
ノズル51aは、保持部材51を介して短辺浴槽壁4aに保持されている。保持部材51は、リング状の取付部材53を介して短辺浴槽壁4aに形成された開口に嵌め込まれている。
【0034】
保持部材51において、短辺浴槽壁4aの外側に突出する部分には流水導入部52が設けられている。流水導入部52は保持部材51の内部に通じ、その保持部材51の内部には外形略球状の可動体54が設けられている。可動体54には、保持部材51の内部空間に通じる噴出孔56が形成され、この噴出孔56は保持部材51の内部空間を介して流水導入部52と通じている。
【0035】
保持部材51における、浴槽内側の前端部にはガイド部材55が設けられている。ガイド部材55には、図3に示すように、水平方向に延びるガイド孔55aが形成されている。
【0036】
噴出孔56は円筒状の突出部57の内部に形成されており、その突出部57の先端側部分は、ガイド孔55aから浴槽内に突出し、その先端開口は噴出孔56に連通し浴槽水中に噴流を噴出させる噴出口56aとして機能する。
【0037】
可動体54は、保持部材51に対して回動自在に保持されているが、突出部57がガイド孔55aを貫いて浴槽内に突出していることから、ガイド孔55aの延在方向である水平方向以外の動きが規制されている。すなわち、突出部57は、他の方向への動きを規制されつつ水平方向のみに揺動可能となっている。突出部57の内部には噴流孔56が形成されているため、突出部57が水平方向に揺動することで、水平面内での噴流噴出角度を変えることができる。
【0038】
例えば、図4(a)は、噴出孔56の軸方向が、長辺方向(長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して平行な方向)から、第1のノズル51aに対して近い側の第1の長辺浴槽壁3a側に10°傾いた場合(噴出方向が10°)を示す。
【0039】
図4(a)の状態から、突出部57がさらに第1の長辺浴槽壁3a側に揺動した状態を図4(b)に示す。この状態は、噴出孔56の軸方向が短辺浴槽壁4aの水平方向に対して平行とされ、噴出方向が前述した図2におけるb方向に設定された場合を示す。
【0040】
この図3、4に示すノズル51a、51bは、噴出方向を切り換えるための可動部の移動が水平方向に規制されているため、使用者が突出部57をつまんで手動で噴出角度を切り換えるにあたって、高さ方向の角度変動が生じない。したがって、2つのノズル51a、51bは同じ高さ位置で水平方向に噴流噴出を行い、2つの流れが衝突する確実性が増し、確実にさわさわ感を得ることができる。
【0041】
次に、図5は、噴出方向を変えることができるノズルの他の具体例を示す。この図5における第1のノズル31aは、図1、2における第1のノズル11aに対応する。同様に、図5における第2のノズル31bは、図1、2における第2のノズル11bに対応する。
【0042】
また、第1のノズル31aの水平断面図を図6に示す。以下、第1のノズル31aについて説明していくが、第2のノズル31bについても第1のノズル31aと同様に構成される。
【0043】
ノズル31aは、保持部材32を介して短辺浴槽壁4aに保持されている。保持部材32は、リング状の取付部材37を介して短辺浴槽壁4aに形成された開口に嵌め込まれている。
【0044】
保持部材32において、短辺浴槽壁4aの外側に突出する部分には流水導入部33が設けられている。流水導入部33は保持部材32の内部に通じている。保持部材32における、浴槽内側の前端部には開口32aが形成され、その開口32aに外形略球状の可動体35が嵌り込んでいる。可動体35には、保持部材32の内部空間に通じる噴出孔36が形成され、この噴出孔36は保持部材32の内部空間を介して流水導入部33と通じている。噴出孔36の先端開口は浴槽内に臨み、浴槽水中に噴流を噴出させる噴出口36aとして機能する。
【0045】
この第1のノズル31aに対して遠い側にある第2の長辺浴槽壁3b側の、開口32aの外周側にはガイド34が設けられている。ガイド34は、この第1のノズル31aに対して近い第1の長辺浴槽壁3a側に湾曲しつつ浴槽内に突出している。
【0046】
可動体35は、開口32aの内周部とガイド34の内周部とによってガイドされつつ回動自在となっている。この可動体35の回動によって、噴出孔36の軸方向の角度が変わり、噴流噴出方向を変えることができる。
【0047】
例えば、噴出孔36の軸方向が長辺方向(長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して平行な方向)となっている図6(a)の状態から、可動体35を水平方向に第1の長辺浴槽壁3a側に回動させると、図6(b)に示ように、噴出孔36の軸方向が短辺浴槽壁4aの水平方向に対して平行とされ、噴出方向が前述した図2におけるb方向となる。
【0048】
このノズル31a、31bは、図3、4に示したノズル51a、51bのような水平方向のみの角度変更というような規制は受けず、高さ方向の角度変更も行える。したがって、使用状況や好みに応じて比較的自由に噴流噴出方向の設定を行える。
【0049】
ここで、本発明者等は、2つのノズル11a、11bから30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分の流量でそれぞれ噴流を噴出させ、そのときの浴槽水中における複数箇所(図2に示すA〜Eの5箇所)の位置における水面から100mmの深さの地点の流速の時間変化を測定した。なお、本測定に用いた2つのノズル11a、11bとしては、前述した図3、4に示した構造のノズル51a、51bを用いた。
【0050】
浴槽4全体の長手方向外寸は1600mm、短手方向外寸は800mmとした。浴槽4の長手方向内寸(一対の短辺浴槽壁4a、4bの内壁面間の距離)は1240mmとした。浴槽水は、内槽部底面から380mmの高さまで溜めた。また、2つのノズル11a、11bは、同じ高さ(内槽部底面から140mmの高さ)に設置し、それぞれの中心間距離が100mmになるように、短辺浴槽壁4a、4bの水平方向の中心を通る中心線Cを挟んで離間させた。
【0051】
測定位置Aは、入浴者200が背を向ける短辺浴槽壁4bの内壁面と入浴者200の背中との間における中心線C上の位置である。測定位置Bは、長辺浴槽壁3bの内壁面近傍であって短辺浴槽壁4bの内壁面から短辺浴槽壁4a側に100mm離間した位置である。測定位置Cは、測定位置Bから短辺浴槽壁4a側に520mm離間した長辺浴槽壁3bの内壁面近傍位置である。測定位置Dは、測定位置Bから短辺浴槽壁4a側に260mm離間した中心線C上の位置である。測定位置Eは、測定位置Dから短辺浴槽壁4a側に260mm離間した中心線C上の位置である。
【0052】
この測定は、以下に説明する比較例、実施例1、実施例2の3つのケースについて噴出方向を変えて行った。
【0053】
比較例は、各ノズル11a、11bから、長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行(中心線Cに対して略平行)な方向(長辺方向)に噴流を噴出した場合である。
【0054】
実施例1は、第1のノズル11aからは中心線Cに対して第1の長辺浴槽壁3a側に10°傾いた方向に噴流を噴出し、第2のノズル11bからは中心線Cに対して第2の長辺浴槽壁3b側に10°傾いた方向に噴流を噴出した場合である。
【0055】
実施例2は、第1のノズル11aからは、短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行に第1の長辺浴槽壁3aに向けた方向(図2における矢印b方向)に噴流を噴出し、第2のノズル11bからは、短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり第2の長辺浴槽壁3bに向けた方向(図2における矢印b方向)に噴流を噴出した場合である。
【0056】
図8の各グラフは、比較例についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表し、各グラフにおいて縦軸Yは流速(m/秒)を、横軸Xは時間(秒)を示す。縦軸の流速において、正の値はノズル11a、11bからこれが設けられたのとは反対側の短辺浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は正の場合とは逆方向、すなわち短辺側浴槽壁4bから短辺浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。また、横軸における時間は、ノズル11a、11bから吐水が行われていない状態(0秒)から吐水が開始された以降の時間経過を示す。
【0057】
図8の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図9〜11に示す。図9は噴出流量が30リットル/分の場合を、図10は噴出流量が50リットル/分の場合を、図11は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。
【0058】
図9〜11の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。各グラフの横軸Xは流速(m/秒)を示し、縦軸Yは流速の確率密度を示す。横軸の流速において、正の値はノズル11a、11bからこれが設けられたのとは反対側の短辺浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は正の場合とは逆方向、すなわち短辺側浴槽壁4bから短辺浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。
【0059】
同様に、図12の各グラフは、実施例1についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表す。
【0060】
図12の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図13〜15に示す。図13は噴出流量が30リットル/分の場合を、図14は噴出流量が50リットル/分の場合を、図15は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。図13〜15の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。
【0061】
同様に、図16の各グラフは、実施例2についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表す。
【0062】
図16の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図17〜19に示す。図17は噴出流量が30リットル/分の場合を、図18は噴出流量が50リットル/分の場合を、図19は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。図17〜19の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。
【0063】
比較例においては、図9、10に示すように、流量が30リットル/分、50リットル/分の場合には、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度のピークは0にあり、またその0付近に集中した狭い流速密度分布となっているため、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができない。なお、図11に示す流量が80リットル/分の場合には、入浴者200に向かって直進する流れが入浴者200の胸部で跳ね返る現象が顕著になり、測定位置Bの流速確率密度が負にピークを有する、すなわち入浴者200側から見て前方に向けて流れる成分が支配的となり、この場合でもやはり脇をすり抜ける流れによるさわさわ感は得られない。
【0064】
また、比較例においては、いずれの流量の場合でも、入浴者200の前方位置に対応する測定位置D、Eにおける流速確率密度は正側にピークを有する分布となっており、入浴者200の胸部や腹部に向けた強い流れがあり、入浴者200に圧迫感を与える。
【0065】
これに対して、図13〜15のグラフに表される実施例1では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度は正にピークを有する正側に偏った分布となっており、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができる。
【0066】
また、実施例1では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の前方位置に対応する測定位置D、Eにおける流速確率密度は負側にピークを有する分布となっており、入浴者200の前方からノズル11a、11b側に向かう流れが形成されるため、入浴者200の胸部や腹部に圧迫感を与えない。
【0067】
同様に、図17〜19のグラフに表される実施例2では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度は正にピークを有する正側に偏った分布となっており、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができる。ただし、流量の少ない30リットル/分の場合(図17)には、測定位置Bの流速確率密度のピークは0に近い値であり、他の場合よりはゆるやかに脇をすり抜ける流れとなる。
【0068】
また、実施例2では、流量が30リットル/分の場合(図17)における測定位置Dを除いて、測定位置D、Eにおける流速確率密度は負側にピークを有する分布となっており、入浴者200の前方からノズル11a、11b側に向かう流れが形成されるため、入浴者200の胸部や腹部に圧迫感を与えない。流量が30リットル/分の場合における測定位置Dは流速確率密度が0にピークがあり、ほとんど流れがないため、この場合でも入浴者200を圧迫する流れは形成されない。
【0069】
また、本実施形態では、各ノズル11a、11bは気泡無しの噴流を噴出するため、噴出音を静かにでき、また大気中からノズル内に気泡が吸入されるときの音もしない。したがって、より静かな環境で前述したさわさわ感を鋭敏に感じてリラックス効果を高めることができる。
【0070】
前述した測定位置A〜Eのうち、入浴者200の背中の後に位置する測定位置Aでは、入浴者200の両脇をすり抜けてきた流れが短辺浴槽壁4bに沿った方向の流れに変わってぶつかる部分である。ここで前述した測定は、長辺浴槽壁3a、3bに対して略平行な方向の流速測定であり、比較例、実施例1および実施例2共に、測定位置Aにおける流速確率密度のピークが0にあり、すなわち長辺浴槽壁3a、3bに対して略平行な方向の流れ成分がほぼ0である。
【0071】
しかし、測定位置Aでは、前述したように短辺浴槽壁4bに沿った方向の流れの衝突があることから、その短辺浴槽壁4bに沿った方向(前記中心線Cに対して略垂直な方向)における測定位置Aの流速を測定し、その流速確率密度分布を求めた。
【0072】
その流速確率密度分布のグラフを図20に示す。図20の各グラフにおいて、横軸Xは流速(m/秒)を、縦軸Yは流速の確率密度を示す。横軸における正と負の極性の違いは、流れの方向(ベクトル)が逆方向であることに対応する。
【0073】
図20の各グラフにおいて、「角度10°」は、各ノズル11a、11bから中心線Cに対してそれぞれ対応する長辺浴槽壁3a、3b側に10°傾いた方向に噴流を噴出した上記実施例1を示し、「短辺平行」は、各ノズル11a、11bから図2における矢印b方向に噴流を噴出した上記実施例2を示し、「長辺平行」は、各ノズル11a、11bから長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行(中心線Cに対して略平行)な方向に噴流を噴出した上記比較例を示す。
【0074】
また、実施例1、2、比較例のそれぞれについて、ノズル噴出流量を80リットル/分、50リットル/分、30リットル/分と変えて測定を行った。
【0075】
また、表1は、本測定で得られた流速データの解析結果を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1において、「差」は、流速最大値と流速最小値との差を示す。「割合」は、80リットル/分、50リットル/分、30リットル/分の各流量で上記「差」が最大となる値を100%とした場合の、これに対する割合を示す。
【0078】
また、図21〜図23は、横軸に流速変化の周波数(Hz)を、縦軸に流速レベル(dB)(対数表示)をとったグラフを示す。
【0079】
図21はノズル噴出流量80リットル/分の場合を、図22はノズル噴出流量50リットル/分の場合を、図23はノズル噴出流量30リットル/分の場合を示す。また、各図における(a)のグラフは「角度10°」の上記実施例1の場合を、(b)のグラフは「短辺平行」の上記実施例2の場合を、(c)のグラフは「長辺平行」の上記比較例の場合を示す。
【0080】
図20より、実施例1(角度10°)及び実施例2(短辺平行)は、比較例(長辺平行)に比べて正負両範囲に比較的広い流速の確率密度分布を示し、また、表1の結果も併せると、実施例1及び実施例2は、比較例に比べて、背中の後ろにおける短辺浴槽壁4bに沿った方向で流れの方向が大きく変化しており、背中の後ろでのさわさわ感を感じやすいと言える。
【0081】
また、図21〜図23より、比較例(長辺平行)の流速変化周波数は比較的低周波寄りであるのに対して、実施例1(角度10°)及び実施例2(短辺平行)は比較的高めの周波数領域で流速が細かく変化しており、これにより背中の後ろでのさわさわ感を感じやすいと言える。
【0082】
比較例(長辺平行)では、ノズル11a、11bからの噴出噴流が入浴者に向けて直進し、入浴者の胸部や腹部にぶつかった後、入浴者の前方側で上記中心線Cに対して横方向に広がるように流れて、入浴者の脇へ向かう流れ成分が少なくなるため、背後へのまわりこみも少なく、背中の後ろで流れの変化によるさわさわ感を感じにくい。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0084】
中心線Cを挟んで短辺浴槽壁4aにおける水平方向に並んで設けたノズルは一対に限らず、これらとは例えば設置高さを異ならせて別の対のノズルを設けるなど、複数対設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における浴槽の平面図。
【図3】同噴流浴装置におけるノズルの一具体例を示す模式図。
【図4】図3に示すノズルの水平断面図。
【図5】同噴流浴装置におけるノズルの他の具体例を示す模式図。
【図6】図5に示すノズルの水平断面図。
【図7】同噴流浴装置における一対のノズルから噴出された噴流の浴槽水中での流れを示す模式図。
【図8】比較例についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図9】比較例において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図10】比較例において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図11】比較例において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図12】実施例1についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図13】実施例1において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図14】実施例1において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図15】実施例1において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図16】実施例2についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図17】実施例2において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図18】実施例2において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図19】実施例2において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図20】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、測定位置Aにおける短辺浴槽壁に沿った方向の流速確率密度分布を示すグラフ。
【図21】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量80リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【図22】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量50リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【図23】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量30リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0086】
3a…第1の長辺浴槽壁、3b…第2の長辺浴槽壁、4…浴槽、4a,4b…短辺浴槽壁、5…吸入口、7…加圧装置(ポンプ)、11a…第1のノズル、11b…第2のノズル、26…噴出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する一対の短辺側浴槽壁のそれぞれにノズルを設け、各ノズルから対向壁方向へ直線的に水流を生じさせる浴槽がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−178142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、噴流浴装置としては、直線的な噴流を人体に当ててその刺激によるマッサージを実現するものが主であり、特に刺激をより高めるには気泡入り噴流を噴出させることが有効であることもあって噴流噴出音が騒々しく、且つ噴流刺激を人体に受けながらの入浴ということで、長時間リラックスして噴流浴を楽しむことは難しかった。
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、前記一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに送る加圧装置とを備え、前記複数のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の前記長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含むことを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飽きや馴化がなくリラックス効果を高めた噴流浴を実現する噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。また、図2に同噴流浴装置における浴槽4の平面図を示す。
【0009】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽4と、加圧装置であるポンプ7と、複数のノズル(第1のノズル11aと第2のノズル11b)とを備える。
【0010】
浴槽4は、略平行に対向する一対の長辺浴槽壁3a、3bと、略平行に対向する一対の短辺浴槽壁4a、4bとを有し、平面視が略矩形状または長円形状に形成されている。
【0011】
一対の長辺浴槽壁3a、3bのうちの一方には吸入口5が形成されている。吸入口5と、ポンプ7の吸込口との間には吸込管6が接続され、ポンプ7が駆動されると、浴槽4の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5から吸込管6へと吸い込まれる。
【0012】
一般に、入浴者200は、向かい合う一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺浴槽壁(図1に示す例では短辺浴槽壁4b)に背をもたれかけて、他方の短辺浴槽壁(図1に示す例では短辺浴槽壁4a)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺浴槽壁4a、4bに形成した場合には、入浴者200の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺浴槽壁3a、3bに形成するのが望ましい。
【0013】
ポンプ7の吐出口と各ノズル11a、11bとの間は吐出管8で接続され、ポンプ7は、吸入口5から吸込管6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出管8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、各ノズル11a、11bの内部に導入される。なお、使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0014】
本実施形態では、一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺浴槽壁4aに第1のノズル11aと第2のノズル11bを取り付けている。ここで、図2の平面視において、短辺浴槽壁4a、4bの水平方向の中心を通る中心線Cを1点鎖線で示す。2つのノズル11a、11bは、その中心線Cを挟んでその水平方向に互いに離間して並んで設けられている。上記中心線Cに対する各ノズル11a、11bの離間距離は略同じであり、また、2つのノズル11a、11bの設置高さは略同じ高さである。
【0015】
ノズル11a、11bが取り付けられた短辺浴槽壁4aの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者200は自然と図1に示すように、ノズル11a、11bが設けられた側の短辺浴槽壁4aに足を向け、反対側の短辺浴槽壁4bに背をもたれかけた姿勢で入浴する。
【0016】
ノズル11a、11bは、それぞれの噴出口26を浴槽4の内部に臨ませて、浴槽4のあふれ縁より下で短辺浴槽壁4aに保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽4内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽4内から溢れる部分の浴槽4の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、各ノズル11a、11bからの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
【0017】
浴槽4近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽4内に貯留された浴槽水が吸入口5から吸込管6内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、吐出管8を介して、各ノズル11a、11bの内部に導入される。各ノズル11a、11b内に導入された加圧浴槽水は、気泡を含まない噴流を、浴槽4内に貯留された浴槽水中に噴出する。
【0018】
図2を参照して前述した短辺浴槽壁4aの水平方向の中心を通る中心線Cと、第1の長辺浴槽壁3aとの間に、第1のノズル11aが設けられている。この第1のノズル11aは、一対の長辺浴槽壁3a、3bのうち自身に近い側の第1の長辺浴槽壁3aに向けて噴流の噴出を行う。
【0019】
第2のノズル11bは、上記中心線Cと、第2の長辺浴槽壁3bとの間に設けられている。この第2のノズル11bは、一対の長辺浴槽壁3a、3bのうち自身に近い側の第2の長辺浴槽壁3bに向けて噴流の噴出を行う。
【0020】
各ノズル11a、11bが長辺浴槽壁3a、3bに向けて噴流の噴出を行うということは、各ノズル11a、11bは、長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行な方向(長辺平行方向)には噴流を噴出しない。
【0021】
さらに具体的には、第1のノズル11aは、対向する他方の短辺浴槽壁4bと第1の長辺浴槽壁3aとが形成するコーナー部に向けた方向(図2において矢印a方向)と、自身が設けられた短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり中心線Cから第1の長辺浴槽壁3aに向かう方向(図2における矢印b方向)と、の間の範囲内(方向a、bも含む)に設定された方向に噴流を噴出する。
【0022】
同様に、第2のノズル11bは、対向する他方の短辺浴槽壁4bと第2の長辺浴槽壁3bとが形成するコーナー部に向けた方向(図2において矢印a方向)と、自身が設けられた短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり中心線Cから第2の長辺浴槽壁3bに向かう方向(図2における矢印b方向)と、の間の範囲内(方向a、bも含む)に設定された方向に噴流を噴出する。
【0023】
各ノズル11a、11bから前述した方向に噴流が噴出されると、図7(a)に模式的に示すように、浴槽4内において長辺浴槽壁3a、3b寄りの部分を、ノズル11a、11bが設けられた短辺浴槽壁4aから反対側の短辺浴槽壁4bに向けて流れる流れが形成される。したがって、ノズル11a、11bが設けられた短辺浴槽壁4aとは反対側の短辺浴槽壁4bに背を向け、ノズル11a、11b側に足を向けた姿勢で入浴している入浴者200の脇をすり抜けるような流れを形成することができる。
【0024】
また、その流れはノズル11a、11bから遠ざかるほど直進性を失い、入浴者200の手前あたりで長辺浴槽壁3a、3b側から中心線Cに向かう成分が大きくなり、その部分での流れの衝突により、入浴者200の胸部や腹部といった胴部の前側には、入浴者200側からノズル11a、11b側に向かう流れを形成することができ入浴者200の心肺等に圧迫感を与えない。
【0025】
以上のことから、入浴者200は、柔らかな水流につつまれたような水流のさわさわ感やゆらぎ感を感じることができ、噴流を人体に対して局所的に受けるよりも、飽き(馴化)がなく、長時間リラックスした噴流浴を楽しめる。
【0026】
第1のノズル11aと第2のノズル11bは、同じ高さに設置し、且つ高さ方向の噴流噴出角度(水平方向を0°の基準にした角度)を同じにすれば、第1のノズル11aから浴槽水中に噴流噴出されて形成された主流と、第2のノズル11bから浴槽水中に噴流噴出されて形成された主流どうしが浴槽水中同じ高さ(深さ)で衝突する作用にて、その衝突部で流れの方向が比較的高めの周波数で変化することに起因するさわさわ感が得られる。なお、第1のノズル11aと第2のノズル11bとで、上記高さ方向の噴流噴出角度が多少ずれても、それぞれのノズルからの主流は高さ(深さ)方向に、ある程度の幅を持っているので、それら主流どうしを衝突させることができ上記さわさわ感を得ることはできる。
【0027】
2つのノズル11a、11bのそれぞれから、図7(b)において点線で示すように、ノズル設置高さよりも上向きに噴流噴出が行われた場合には、2つの主流が長辺浴槽壁3a、3b寄りの水面近くを他方の短辺浴槽壁4bに向かって流れ、その他方の短辺浴槽壁4bにおける水面近くで互いに衝突する。
【0028】
2つのノズル11a、11bのそれぞれから、図7(b)において1点鎖線で示すように、ノズル設置高さよりも下向きに噴流噴出が行われた場合には、2つの主流が長辺浴槽壁3a、3b寄りの浴槽底面近くを他方の短辺浴槽壁4bに向かって流れ、その他方の短辺浴槽壁4bにおける底面近くで互いに衝突する。
【0029】
上向きに噴流噴出を行った場合と下向きに噴流噴出を行った場合は、短辺浴槽壁4bに背中を向けている入浴者の体の前側や脇にはさわさわ感を感じさせることができるものの、浴槽水中に形成される流れ及び衝突部分が、それぞれ水面付近と底面付近とに偏ってしまうので、背中全体にさわさわ感を感じさせることは難しくなる。
【0030】
これに対して、2つのノズル11a、11bを水面側及び底面側のいずれにも偏らない高さ位置に設置し、そのノズル設置高さから、図7(b)において実線で示すように、ほぼ水平に噴流噴出が行われた場合には、各ノズル11a、11bからの主流が上方向にも下方向にも広がりながら進んで短辺浴槽壁4bで互いに衝突し、その衝突流は水面側及び底面側のどちらにも偏らず、背中全体に広くさわさわ感を感じさせやすい。
【0031】
次に、図3は、図2を参照して前述した方向a〜方向bの範囲内で噴出方向を変えることができるノズルの一具体例を示す。この図3における第1のノズル51aは、図1、2における第1のノズル11aに対応する。同様に、図3における第2のノズル51bは、図1、2における第2のノズル11bに対応する。
【0032】
また、第1のノズル51aの水平断面図を図4に示す。以下、第1のノズル51aについて説明していくが、第2のノズル51bについても第1のノズル51aと同様に構成される。
【0033】
ノズル51aは、保持部材51を介して短辺浴槽壁4aに保持されている。保持部材51は、リング状の取付部材53を介して短辺浴槽壁4aに形成された開口に嵌め込まれている。
【0034】
保持部材51において、短辺浴槽壁4aの外側に突出する部分には流水導入部52が設けられている。流水導入部52は保持部材51の内部に通じ、その保持部材51の内部には外形略球状の可動体54が設けられている。可動体54には、保持部材51の内部空間に通じる噴出孔56が形成され、この噴出孔56は保持部材51の内部空間を介して流水導入部52と通じている。
【0035】
保持部材51における、浴槽内側の前端部にはガイド部材55が設けられている。ガイド部材55には、図3に示すように、水平方向に延びるガイド孔55aが形成されている。
【0036】
噴出孔56は円筒状の突出部57の内部に形成されており、その突出部57の先端側部分は、ガイド孔55aから浴槽内に突出し、その先端開口は噴出孔56に連通し浴槽水中に噴流を噴出させる噴出口56aとして機能する。
【0037】
可動体54は、保持部材51に対して回動自在に保持されているが、突出部57がガイド孔55aを貫いて浴槽内に突出していることから、ガイド孔55aの延在方向である水平方向以外の動きが規制されている。すなわち、突出部57は、他の方向への動きを規制されつつ水平方向のみに揺動可能となっている。突出部57の内部には噴流孔56が形成されているため、突出部57が水平方向に揺動することで、水平面内での噴流噴出角度を変えることができる。
【0038】
例えば、図4(a)は、噴出孔56の軸方向が、長辺方向(長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して平行な方向)から、第1のノズル51aに対して近い側の第1の長辺浴槽壁3a側に10°傾いた場合(噴出方向が10°)を示す。
【0039】
図4(a)の状態から、突出部57がさらに第1の長辺浴槽壁3a側に揺動した状態を図4(b)に示す。この状態は、噴出孔56の軸方向が短辺浴槽壁4aの水平方向に対して平行とされ、噴出方向が前述した図2におけるb方向に設定された場合を示す。
【0040】
この図3、4に示すノズル51a、51bは、噴出方向を切り換えるための可動部の移動が水平方向に規制されているため、使用者が突出部57をつまんで手動で噴出角度を切り換えるにあたって、高さ方向の角度変動が生じない。したがって、2つのノズル51a、51bは同じ高さ位置で水平方向に噴流噴出を行い、2つの流れが衝突する確実性が増し、確実にさわさわ感を得ることができる。
【0041】
次に、図5は、噴出方向を変えることができるノズルの他の具体例を示す。この図5における第1のノズル31aは、図1、2における第1のノズル11aに対応する。同様に、図5における第2のノズル31bは、図1、2における第2のノズル11bに対応する。
【0042】
また、第1のノズル31aの水平断面図を図6に示す。以下、第1のノズル31aについて説明していくが、第2のノズル31bについても第1のノズル31aと同様に構成される。
【0043】
ノズル31aは、保持部材32を介して短辺浴槽壁4aに保持されている。保持部材32は、リング状の取付部材37を介して短辺浴槽壁4aに形成された開口に嵌め込まれている。
【0044】
保持部材32において、短辺浴槽壁4aの外側に突出する部分には流水導入部33が設けられている。流水導入部33は保持部材32の内部に通じている。保持部材32における、浴槽内側の前端部には開口32aが形成され、その開口32aに外形略球状の可動体35が嵌り込んでいる。可動体35には、保持部材32の内部空間に通じる噴出孔36が形成され、この噴出孔36は保持部材32の内部空間を介して流水導入部33と通じている。噴出孔36の先端開口は浴槽内に臨み、浴槽水中に噴流を噴出させる噴出口36aとして機能する。
【0045】
この第1のノズル31aに対して遠い側にある第2の長辺浴槽壁3b側の、開口32aの外周側にはガイド34が設けられている。ガイド34は、この第1のノズル31aに対して近い第1の長辺浴槽壁3a側に湾曲しつつ浴槽内に突出している。
【0046】
可動体35は、開口32aの内周部とガイド34の内周部とによってガイドされつつ回動自在となっている。この可動体35の回動によって、噴出孔36の軸方向の角度が変わり、噴流噴出方向を変えることができる。
【0047】
例えば、噴出孔36の軸方向が長辺方向(長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して平行な方向)となっている図6(a)の状態から、可動体35を水平方向に第1の長辺浴槽壁3a側に回動させると、図6(b)に示ように、噴出孔36の軸方向が短辺浴槽壁4aの水平方向に対して平行とされ、噴出方向が前述した図2におけるb方向となる。
【0048】
このノズル31a、31bは、図3、4に示したノズル51a、51bのような水平方向のみの角度変更というような規制は受けず、高さ方向の角度変更も行える。したがって、使用状況や好みに応じて比較的自由に噴流噴出方向の設定を行える。
【0049】
ここで、本発明者等は、2つのノズル11a、11bから30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分の流量でそれぞれ噴流を噴出させ、そのときの浴槽水中における複数箇所(図2に示すA〜Eの5箇所)の位置における水面から100mmの深さの地点の流速の時間変化を測定した。なお、本測定に用いた2つのノズル11a、11bとしては、前述した図3、4に示した構造のノズル51a、51bを用いた。
【0050】
浴槽4全体の長手方向外寸は1600mm、短手方向外寸は800mmとした。浴槽4の長手方向内寸(一対の短辺浴槽壁4a、4bの内壁面間の距離)は1240mmとした。浴槽水は、内槽部底面から380mmの高さまで溜めた。また、2つのノズル11a、11bは、同じ高さ(内槽部底面から140mmの高さ)に設置し、それぞれの中心間距離が100mmになるように、短辺浴槽壁4a、4bの水平方向の中心を通る中心線Cを挟んで離間させた。
【0051】
測定位置Aは、入浴者200が背を向ける短辺浴槽壁4bの内壁面と入浴者200の背中との間における中心線C上の位置である。測定位置Bは、長辺浴槽壁3bの内壁面近傍であって短辺浴槽壁4bの内壁面から短辺浴槽壁4a側に100mm離間した位置である。測定位置Cは、測定位置Bから短辺浴槽壁4a側に520mm離間した長辺浴槽壁3bの内壁面近傍位置である。測定位置Dは、測定位置Bから短辺浴槽壁4a側に260mm離間した中心線C上の位置である。測定位置Eは、測定位置Dから短辺浴槽壁4a側に260mm離間した中心線C上の位置である。
【0052】
この測定は、以下に説明する比較例、実施例1、実施例2の3つのケースについて噴出方向を変えて行った。
【0053】
比較例は、各ノズル11a、11bから、長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行(中心線Cに対して略平行)な方向(長辺方向)に噴流を噴出した場合である。
【0054】
実施例1は、第1のノズル11aからは中心線Cに対して第1の長辺浴槽壁3a側に10°傾いた方向に噴流を噴出し、第2のノズル11bからは中心線Cに対して第2の長辺浴槽壁3b側に10°傾いた方向に噴流を噴出した場合である。
【0055】
実施例2は、第1のノズル11aからは、短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行に第1の長辺浴槽壁3aに向けた方向(図2における矢印b方向)に噴流を噴出し、第2のノズル11bからは、短辺浴槽壁4aの水平方向に対して略平行であり第2の長辺浴槽壁3bに向けた方向(図2における矢印b方向)に噴流を噴出した場合である。
【0056】
図8の各グラフは、比較例についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表し、各グラフにおいて縦軸Yは流速(m/秒)を、横軸Xは時間(秒)を示す。縦軸の流速において、正の値はノズル11a、11bからこれが設けられたのとは反対側の短辺浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は正の場合とは逆方向、すなわち短辺側浴槽壁4bから短辺浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。また、横軸における時間は、ノズル11a、11bから吐水が行われていない状態(0秒)から吐水が開始された以降の時間経過を示す。
【0057】
図8の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図9〜11に示す。図9は噴出流量が30リットル/分の場合を、図10は噴出流量が50リットル/分の場合を、図11は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。
【0058】
図9〜11の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。各グラフの横軸Xは流速(m/秒)を示し、縦軸Yは流速の確率密度を示す。横軸の流速において、正の値はノズル11a、11bからこれが設けられたのとは反対側の短辺浴槽壁4bに向かう方向の流れの流速を示し、負の値は正の場合とは逆方向、すなわち短辺側浴槽壁4bから短辺浴槽壁4aに向かう方向の流れの流速を示す。
【0059】
同様に、図12の各グラフは、実施例1についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表す。
【0060】
図12の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図13〜15に示す。図13は噴出流量が30リットル/分の場合を、図14は噴出流量が50リットル/分の場合を、図15は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。図13〜15の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。
【0061】
同様に、図16の各グラフは、実施例2についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を表す。
【0062】
図16の測定結果から流速の確率密度を計算した結果を図17〜19に示す。図17は噴出流量が30リットル/分の場合を、図18は噴出流量が50リットル/分の場合を、図19は噴出流量が80リットル/分の場合を示す。図17〜19の各図において、(a)のグラフは測定位置Aにおける流速の確率密度分布を示し、(b)のグラフは測定位置Bにおける流速の確率密度分布を示し、(c)のグラフは測定位置Cにおける流速の確率密度分布を示し、(d)のグラフは測定位置Dにおける流速の確率密度分布を示し、(e)のグラフは測定位置Eにおける流速の確率密度分布を示す。
【0063】
比較例においては、図9、10に示すように、流量が30リットル/分、50リットル/分の場合には、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度のピークは0にあり、またその0付近に集中した狭い流速密度分布となっているため、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができない。なお、図11に示す流量が80リットル/分の場合には、入浴者200に向かって直進する流れが入浴者200の胸部で跳ね返る現象が顕著になり、測定位置Bの流速確率密度が負にピークを有する、すなわち入浴者200側から見て前方に向けて流れる成分が支配的となり、この場合でもやはり脇をすり抜ける流れによるさわさわ感は得られない。
【0064】
また、比較例においては、いずれの流量の場合でも、入浴者200の前方位置に対応する測定位置D、Eにおける流速確率密度は正側にピークを有する分布となっており、入浴者200の胸部や腹部に向けた強い流れがあり、入浴者200に圧迫感を与える。
【0065】
これに対して、図13〜15のグラフに表される実施例1では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度は正にピークを有する正側に偏った分布となっており、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができる。
【0066】
また、実施例1では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の前方位置に対応する測定位置D、Eにおける流速確率密度は負側にピークを有する分布となっており、入浴者200の前方からノズル11a、11b側に向かう流れが形成されるため、入浴者200の胸部や腹部に圧迫感を与えない。
【0067】
同様に、図17〜19のグラフに表される実施例2では、いずれの流量の場合でも、入浴者200の脇の付近に対応する測定位置Bの流速確率密度は正にピークを有する正側に偏った分布となっており、脇をすり抜けるような流れによるさわさわ感を感じることができる。ただし、流量の少ない30リットル/分の場合(図17)には、測定位置Bの流速確率密度のピークは0に近い値であり、他の場合よりはゆるやかに脇をすり抜ける流れとなる。
【0068】
また、実施例2では、流量が30リットル/分の場合(図17)における測定位置Dを除いて、測定位置D、Eにおける流速確率密度は負側にピークを有する分布となっており、入浴者200の前方からノズル11a、11b側に向かう流れが形成されるため、入浴者200の胸部や腹部に圧迫感を与えない。流量が30リットル/分の場合における測定位置Dは流速確率密度が0にピークがあり、ほとんど流れがないため、この場合でも入浴者200を圧迫する流れは形成されない。
【0069】
また、本実施形態では、各ノズル11a、11bは気泡無しの噴流を噴出するため、噴出音を静かにでき、また大気中からノズル内に気泡が吸入されるときの音もしない。したがって、より静かな環境で前述したさわさわ感を鋭敏に感じてリラックス効果を高めることができる。
【0070】
前述した測定位置A〜Eのうち、入浴者200の背中の後に位置する測定位置Aでは、入浴者200の両脇をすり抜けてきた流れが短辺浴槽壁4bに沿った方向の流れに変わってぶつかる部分である。ここで前述した測定は、長辺浴槽壁3a、3bに対して略平行な方向の流速測定であり、比較例、実施例1および実施例2共に、測定位置Aにおける流速確率密度のピークが0にあり、すなわち長辺浴槽壁3a、3bに対して略平行な方向の流れ成分がほぼ0である。
【0071】
しかし、測定位置Aでは、前述したように短辺浴槽壁4bに沿った方向の流れの衝突があることから、その短辺浴槽壁4bに沿った方向(前記中心線Cに対して略垂直な方向)における測定位置Aの流速を測定し、その流速確率密度分布を求めた。
【0072】
その流速確率密度分布のグラフを図20に示す。図20の各グラフにおいて、横軸Xは流速(m/秒)を、縦軸Yは流速の確率密度を示す。横軸における正と負の極性の違いは、流れの方向(ベクトル)が逆方向であることに対応する。
【0073】
図20の各グラフにおいて、「角度10°」は、各ノズル11a、11bから中心線Cに対してそれぞれ対応する長辺浴槽壁3a、3b側に10°傾いた方向に噴流を噴出した上記実施例1を示し、「短辺平行」は、各ノズル11a、11bから図2における矢印b方向に噴流を噴出した上記実施例2を示し、「長辺平行」は、各ノズル11a、11bから長辺浴槽壁3a、3bの延在方向に対して略平行(中心線Cに対して略平行)な方向に噴流を噴出した上記比較例を示す。
【0074】
また、実施例1、2、比較例のそれぞれについて、ノズル噴出流量を80リットル/分、50リットル/分、30リットル/分と変えて測定を行った。
【0075】
また、表1は、本測定で得られた流速データの解析結果を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1において、「差」は、流速最大値と流速最小値との差を示す。「割合」は、80リットル/分、50リットル/分、30リットル/分の各流量で上記「差」が最大となる値を100%とした場合の、これに対する割合を示す。
【0078】
また、図21〜図23は、横軸に流速変化の周波数(Hz)を、縦軸に流速レベル(dB)(対数表示)をとったグラフを示す。
【0079】
図21はノズル噴出流量80リットル/分の場合を、図22はノズル噴出流量50リットル/分の場合を、図23はノズル噴出流量30リットル/分の場合を示す。また、各図における(a)のグラフは「角度10°」の上記実施例1の場合を、(b)のグラフは「短辺平行」の上記実施例2の場合を、(c)のグラフは「長辺平行」の上記比較例の場合を示す。
【0080】
図20より、実施例1(角度10°)及び実施例2(短辺平行)は、比較例(長辺平行)に比べて正負両範囲に比較的広い流速の確率密度分布を示し、また、表1の結果も併せると、実施例1及び実施例2は、比較例に比べて、背中の後ろにおける短辺浴槽壁4bに沿った方向で流れの方向が大きく変化しており、背中の後ろでのさわさわ感を感じやすいと言える。
【0081】
また、図21〜図23より、比較例(長辺平行)の流速変化周波数は比較的低周波寄りであるのに対して、実施例1(角度10°)及び実施例2(短辺平行)は比較的高めの周波数領域で流速が細かく変化しており、これにより背中の後ろでのさわさわ感を感じやすいと言える。
【0082】
比較例(長辺平行)では、ノズル11a、11bからの噴出噴流が入浴者に向けて直進し、入浴者の胸部や腹部にぶつかった後、入浴者の前方側で上記中心線Cに対して横方向に広がるように流れて、入浴者の脇へ向かう流れ成分が少なくなるため、背後へのまわりこみも少なく、背中の後ろで流れの変化によるさわさわ感を感じにくい。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0084】
中心線Cを挟んで短辺浴槽壁4aにおける水平方向に並んで設けたノズルは一対に限らず、これらとは例えば設置高さを異ならせて別の対のノズルを設けるなど、複数対設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図。
【図2】同噴流浴装置における浴槽の平面図。
【図3】同噴流浴装置におけるノズルの一具体例を示す模式図。
【図4】図3に示すノズルの水平断面図。
【図5】同噴流浴装置におけるノズルの他の具体例を示す模式図。
【図6】図5に示すノズルの水平断面図。
【図7】同噴流浴装置における一対のノズルから噴出された噴流の浴槽水中での流れを示す模式図。
【図8】比較例についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図9】比較例において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図10】比較例において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図11】比較例において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図12】実施例1についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図13】実施例1において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図14】実施例1において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図15】実施例1において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図16】実施例2についての、各測定位置A〜Eにおける、ノズル噴出流量30リットル/分、50リットル/分、80リットル/分ごとのそれぞれの流速の時間変化を示すグラフ。
【図17】実施例2において、噴流噴出流量30リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図18】実施例2において、噴流噴出流量50リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図19】実施例2において、噴流噴出流量80リットル/分の場合の各測定位置A〜Eにおける流速の確率密度分布を示すグラフ。
【図20】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、測定位置Aにおける短辺浴槽壁に沿った方向の流速確率密度分布を示すグラフ。
【図21】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量80リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【図22】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量50リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【図23】比較例、実施例1、2のそれぞれについて、噴流噴出流量30リットル/分の場合の測定位置Aにおける流速変化の周波数と流速レベルとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0086】
3a…第1の長辺浴槽壁、3b…第2の長辺浴槽壁、4…浴槽、4a,4b…短辺浴槽壁、5…吸入口、7…加圧装置(ポンプ)、11a…第1のノズル、11b…第2のノズル、26…噴出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、
前記一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、
前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに送る加圧装置とを備え、
前記複数のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の前記長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含むことを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記一対のノズルは、第1のノズルと第2のノズルとを有し、
前記一対の長辺浴槽壁は、前記第1のノズルに近い側の第1の長辺浴槽壁と前記第2のノズルに近い側の第2の長辺浴槽壁とを有し、
前記第1のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁に対向する他方の短辺浴槽壁と前記第1の長辺浴槽壁とが形成するコーナー部に向けた方向と、前記一方の短辺浴槽壁の前記水平方向に対して略平行であり前記中心位置から前記第1の長辺浴槽壁に向かう方向と、の間の範囲内に設定された方向に噴流を噴出し、
前記第2のノズルは、前記他方の短辺浴槽壁と前記第2の長辺浴槽壁とが形成するコーナー部に向けた方向と、前記一方の短辺浴槽壁の前記水平方向に対して略平行であり前記中心位置から前記第2の長辺浴槽壁に向かう方向と、の間の範囲内に設定された方向に噴流を噴出することを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項1】
対向する一対の短辺浴槽壁と、対向する一対の長辺浴槽壁とを有する浴槽と、
前記一対の短辺浴槽壁のうちの一方に設けられた複数のノズルと、
前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込み加圧して前記ノズルに送る加圧装置とを備え、
前記複数のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁における水平方向の中心線を挟んでその水平方向に並んで設けられ、それぞれノズル自身に近い側の前記長辺浴槽壁に向けて噴流の噴出を行う少なくとも一対のノズルを含むことを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記一対のノズルは、第1のノズルと第2のノズルとを有し、
前記一対の長辺浴槽壁は、前記第1のノズルに近い側の第1の長辺浴槽壁と前記第2のノズルに近い側の第2の長辺浴槽壁とを有し、
前記第1のノズルは、前記一方の短辺浴槽壁に対向する他方の短辺浴槽壁と前記第1の長辺浴槽壁とが形成するコーナー部に向けた方向と、前記一方の短辺浴槽壁の前記水平方向に対して略平行であり前記中心位置から前記第1の長辺浴槽壁に向かう方向と、の間の範囲内に設定された方向に噴流を噴出し、
前記第2のノズルは、前記他方の短辺浴槽壁と前記第2の長辺浴槽壁とが形成するコーナー部に向けた方向と、前記一方の短辺浴槽壁の前記水平方向に対して略平行であり前記中心位置から前記第2の長辺浴槽壁に向かう方向と、の間の範囲内に設定された方向に噴流を噴出することを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図20】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図20】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−153905(P2009−153905A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338139(P2007−338139)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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