説明

噴流浴装置

【課題】人の親指による揉捏マッサージ感が得られる噴流浴装置を提供する。
【解決手段】浴槽と、浴槽の浴槽壁に開口され浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、加圧装置から供給される浴槽水を浴槽内に噴出させる噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、噴流ノズルは、回転体と、回転体の回転中心に対して偏心した位置に親指大の開口面積で形成され、回転体の回転に伴って回転中心のまわりの親指可動範囲内を移動する噴出口と、を有し、吸入口と噴出口との間の流路は大気との連通口に通じず、噴流ノズルは実質気泡を有しない噴流を浴槽水中に噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズルを備えた噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マッサージの方法として、按摩における母指揉捏法のような、施術部を母指(親指)腹を以って加圧し、その加圧した状態で筋線維に対して垂直方向あるいは輪状に揉捏する方法が知られており、筋肉組織の新陳代謝を盛んにする効果があると言われている。
【特許文献1】特開2007−215555号公報
【特許文献2】特開2003−116728号公報
【特許文献3】特開2000−60919号公報
【特許文献4】特開2007−167580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば特許文献1には、人体背面に対して押圧を加える施療子を機械的に可動させ、人の親指による揉捏マッサージを機械的に実現しようとしているマッサージ機が開示されている。しかしながら、人がマッサージを受けるに際して、寒い環境では被験者の筋肉は締まり、更には血流が悪い状態となるため、十分なマッサージ効果が得られないことが懸念される。
【0004】
入浴中の身体が温まった状態の被験者に対して噴流によるマッサージを行うものとして、例えば特許文献2、3に開示されるものがある。これらに開示されたノズルからは、気泡が混入された噴流が噴出されるが、気泡が人体に衝突することにより被刺激面内での押圧の強弱が生じ、被刺激面が一様に押される親指腹のようなやわらかい刺激感を得ることができない。更には、噴出された気泡が人体表面の刺激箇所周辺を沿うように浮上するため、被刺激面の輪郭がぼやけてしまい、刺激位置が不明瞭になってしまうことから、人の親指で押されながら刺激位置が移動するような揉捏の動きを感じにくかった。
【0005】
また、特許文献4には、回転体に開口形成され回転体の回転に伴って回転移動する流出口から気泡を含まない水流のみの噴流を噴出させるジェット噴射装置が開示されている。しかしながら、回転体には複数の流出口が開口しており、噴出される流量が複数の流出口に分散されるため、1穴あたりの流量が小さくなってしまい、人の親指で押されているような太く、一様にやわらかく、且つ強く押されるような感覚は得られ難かった。さらには、複数の流出口が開口していることによって、複数の噴流束が同じような軌跡を描いて人体表面上を移動し複数の箇所が同時に刺激されることから、人の親指で局部的に押されながらその押圧感が移動するような刺激を感じることはなかった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、人の親指による揉捏マッサージ感が得られる噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、前記加圧装置から供給される浴槽水を前記浴槽内に噴出させる噴流ノズルと、を備えた噴流浴装置であって、前記噴流ノズルは、回転体と、前記回転体の回転中心に対して偏心した位置に親指大の開口面積で形成され、前記回転体の回転に伴って前記回転中心のまわりの親指可動範囲内を移動する噴出口と、を有し、前記吸入口と前記噴出口との間の流路は大気との連通口に通じず、前記噴流ノズルは実質気泡を有しない噴流を浴槽水中に噴出することを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人の親指による揉捏マッサージ感が得られる噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の構成を示す模式図である。
【0010】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽1と、浴槽1の浴槽壁に開口された吸入口5と、循環路6、8と、循環路6、8の間に接続された加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁に設けられた例えば2つの噴流ノズル(以下、単にノズルともいう)11とを備える。
【0011】
浴槽1は、略平行に相対向する一対の長辺浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺浴槽壁4a、4bとを有する。
【0012】
吸入口5は一対の長辺浴槽壁3a、3bのうちの一方(図1に示す例では長辺浴槽壁3a)に形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路6へと吸い込まれる。
【0013】
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方に背をもたれかけて他方の短辺浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺浴槽壁に形成するのが望ましい。
【0014】
循環路6の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸込口に接続されている。循環路8の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は各ノズル11に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路6内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路8に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、各ノズル11の内部に流入する。なお、使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
【0015】
本実施形態では、一対の短辺浴槽壁4a、4bのうちの一方の例えば短辺浴槽壁4aに2つのノズル11を取り付けている。2つのノズル11は、短辺浴槽壁4a、4bの水平方向の中心線を挟んでその水平方向に互いに離間して並んで設けられている。上記中心線に対する各ノズル11の離間距離は略同じであり、また、2つのノズル11の設置高さは略同じ高さである。
【0016】
各ノズル11は浴槽1のあふれ縁より下で、噴流の噴出口を浴槽内に臨ませて短辺浴槽壁4aに対して保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽1内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽1内から溢れる部分の浴槽1の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、ノズル11からの噴流を浴槽1内に貯留された浴槽水中に噴出させることができる。
【0017】
吸入口5とノズル11の噴出口との間の流路は大気との連通口に通じず、ノズル11は実質気泡を有しない噴流、好ましくは水流のみからなる噴流を浴槽水中に噴出する。
【0018】
[第1の実施形態]
図2に、第1の実施形態に係るノズル11aの模式断面図を示す。このノズル11aは、図1に示すノズル11に対応する。
【0019】
ノズル11aは、主として、ノズル本体31、固定部材32、回転体33、ノズルカバー34を備える。図2において短辺浴槽壁4aの左側が浴槽内であり、右側が浴槽外側のリム下空間である。
【0020】
ノズル本体31はリム下空間で短辺浴槽壁4aを挟み込むようにして固定部材32に結合され、短辺浴槽壁4aに対して固定保持されている。
【0021】
ノズル本体31の上流側には例えばエルボ形状に屈曲した流水導入路43が設けられている。固定部材32及びこれに結合されたノズル本体31の下流側の大径部31aは筒状に形成され、この筒状の内部空間は、流水導入路43に連通し且つ流水導入路43の径よりも大きな径の空間となっている。
【0022】
その空間内には、円筒状の回転体33が設けられている。回転体33の軸中心には回転軸55が設けられている。回転軸55の両端は、ノズル本体31に設けた軸受37とノズルカバー34に設けた軸受36との間に両持ち支持されている。回転体33は、回転軸55に対して固定され回転軸55と共に回転する、もしくは固定された回転軸55に対してそのまわりに回転する。
【0023】
回転体33の上流側端部には、回転中心に対して対称的に広がるバッファ室46が形成されている。バッファ室46よりも下流側には、バッファ室46に連通する流路56が形成されている。この流路56は、回転体33における回転中心に対して偏心した位置に設けられている。
【0024】
図3は、回転体33を下流側から見た端面図である。流路56における上流側の入口56bの中心と、下流側の噴出口56aの中心とは、回転体33の回転面の周方向にずれており、回転体33は、流路56を通過する流水の反力によって回転する。
【0025】
図4は、ノズル11aを下流側の先端から見た模式図である。ノズルカバー34には、回転体33が設けられた空間と、浴槽内とを連通させる開口34aが形成され、その開口34aを通じて、回転体33の噴出口56aから浴槽内に噴流を噴出させることができる。
【0026】
開口34aの中心には、回転軸55の下流側端部を支持するための軸受36が設けられ、その軸受36は、放射状に設けられた複数本(図4の例では4本)の支持部材35によってノズルカバー34に対して保持されている。
【0027】
以上説明したように構成される本実施形態に係る噴流浴装置において、浴槽1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽1内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路6内へと吸い込まれる。この吸い込まれた浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路8を介して、図2に示すノズル11aの流水導入口44に導入される。
【0028】
流水導入口44から流水導入路43内に導入された加圧浴槽水は、流水導入路43を下流側へと導かれてその下流端の流水流入路45に至り、回転体33のバッファ室46に流れ込む。流水流入路45は、流水導入路43に比べ流路断面が縮小されており、そこで流れが加速されてバッファ室46内に流入する。
【0029】
バッファ室46内に流入した流水は、その下流側の流路56内を流れ、さらに噴出口56a及びノズルカバー34の開口34aを通過して、浴槽1内に貯留された浴槽水中に噴流として噴出する。
【0030】
ここで、流路56の軸方向の両端開口(入口56bと噴出口56a)が回転体回転面の周方向にずれるように、流路56が回転軸55に対して傾いているため、流路56内を流れる水流は回転体33の周方向速度成分を持ち、その水流の反力により回転体33が回転される。
【0031】
回転体33の回転に伴って、噴出口56aは、回転体33の回転中心のまわりを周方向に移動し、これにより、ノズル11aからは回転しながら浴槽水中を進む噴流(旋回噴流)が噴出される。
【0032】
ここで、噴出噴流束の移動(挙動)について、図5を参照して説明する。
【0033】
図5(a)に示すように、噴出口56aから水中に噴出された噴流において、噴流進行方向前方に設けられた被衝突体100に当たった部位を、本明細書において「噴出噴流の断面A」とする。この噴出噴流の断面Aは、入浴者に対する噴流の衝突部位を模したものである。なお、図5(b)は、被衝突体100及び噴出噴流の断面Aを正対する方向から見た模式図である。
【0034】
回転体33の回転に伴って、噴出噴流の断面Aの中心Cは、回転体33の回転中心Oのまわりに周方向に移動する。人体に対する噴流衝突位置が1箇所にとどまらずに移動しており、ノズル11aから噴出される噴流により受ける刺激位置が変化し、押圧力が加わったまま人体表面上を移動する「揉捏マッサージ」感を得ることができる。したがって、刺激を局所的に長時間受けた場合に生じる馴化が起こらず、さらには、気泡が混入されなくても変化に富んだ噴流刺激となり飽きがこない。
【0035】
一般に、狭い部位を複数本の噴流束で押されるよりも単一(1本)の噴流束で押される方が、押されている点を入浴者が認知しやすく押圧点が人体表面上を移動する感じを鋭敏に感じることができ、自然な指圧感を感じやすい。すなわち、人体の皮膚は、互いに接近した複数部位への同時刺激よりも、1部位への刺激の方が刺激の変化をより感じやすい。
【0036】
したがって、一つの回転体に複数の噴流流路(噴出口)があると互いに接近した2部位への同時刺激となり噴流の移動を感じにくいが、本実施形態では、一つの回転体33に一つの噴出口56aしか設けないことで、噴出噴流が人体表面上を移動する感じを得やすい。
【0037】
すなわち、例えば円もしくは輪を描く軌跡でもって1つの押圧刺激箇所が移動するので、母指揉捏(親指揉み)に似たマッサージ感が得られるようになる。ここで、噴流束の断面Aの面積(もしくは噴流束の太さ)は「親指大」に対応し、親指で揉捏マッサージされている感覚を実現するためには、1cm以上3cm以下の太さの噴流束で押しながら移動させるのが好ましく、よって噴出口56aの直径を1cm以上3cm以下とするのがよい。あるいは、噴出口56aの開口面積を、「親指大」に設定するとよい。これにより、噴流により受ける刺激が親指指圧の感触に近くなる。ここで「親指大」とは、親指指圧マッサージにおいて人体に対して触れて押圧力が作用する部分である親指腹面積に相当する。
【0038】
複数の噴出口から噴流を噴出した場合には、噴出される噴流の流量が複数の流路に分散され、1つの噴出口あたりから噴出される流量が小さくなってしまう。これに対して噴出口を1つにして、その1つの噴出口に流量を集中させて噴流噴出させることで、人の親指で押されているように太く、やわらかく、しっかりと押されるような感覚を得ることができる。親指指圧で得られるような十分な押圧強さを得るためには、噴出噴流の流量は30リットル/分以上とするのが好ましい。
【0039】
噴出口56aすなわち噴出噴流の断面Aは、回転体33の回転に伴って回転中心Oのまわりの所定範囲B(図5(b)において斜線で示す範囲)内を移動する。ここで範囲Bは「親指可動範囲」に対応し、「親指可動範囲」は、親指指圧マッサージにおいて施術者が掌あるいは親指の付け根を支持点(支持面)にして親指を円を描くように動かした際の親指の可動範囲に対応する。親指による揉捏マッサージのような動きを感じやすくするためには、上記範囲Bは、回転体33の回転中心Oを中心とした半径8cm以下の円内の範囲とするのが好ましい。
【0040】
さらに好ましくは、噴出噴流の断面中心が、図6に示すように、第1の範囲A1と第2の範囲A2とを繰り返して移動するように設定するのがよい。これは、例えば、噴流噴出中に噴出角度を変化させる構成を付加することで実現できる。
【0041】
図6において、噴出噴流の断面中心の移動軌跡をLで示す。また、第1の範囲A1は、半径が3cm以下の第1の円C1の円内であり、第2の範囲A2は、第1の円C1と中心を共有し、第1の円C1よりも直径が大きく、半径が8cm以下の第2の円C2の内側であって且つ第1の円C1の円内(第1の範囲A1)を除く範囲である。
【0042】
噴流刺激は同じ部位のみに受け続けると、馴化したり、押されっぱなしとなるため、もまれる感じは受けにくい。しかし、入浴者に対する噴流衝突部位が押したい部位(第1の範囲)だけでなく、その周囲(第2の範囲)にも移動するので、第1の範囲に押圧力が作用する感じと、その押圧力が解除される感じとを繰り返す実際の指圧マッサージに近いリズム感を実現でき、自然と指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感が得られる。
【0043】
噴流中に気泡が混入されていると、気泡が人体に衝突することにより、噴流断面Aによって押圧される被刺激面内で押圧力の強弱が生じ、被刺激面が親指腹で一様に押されるようなやわらかい刺激感を得ることができない。さらには、噴出された気泡が人体表面の被刺激箇所周辺を沿うように浮上するため、被刺激面の輪郭がぼやけてしまい、刺激位置が不明瞭になってしまうことから、人の親指で押されながら刺激位置が移動するような揉捏の動きを感じにくい。
【0044】
これに対して、本実施形態では、実質気泡を有しない、好ましくは水流のみからなる噴流を浴槽水中に噴出するため、気泡の影響を受けずに、人体表面での水流の移動を明瞭に感じることができ、水流で押されたまま人体表面上を移動する感じ、すなわち指で押されたまま人体表面上を移動するような揉捏マッサージ感を得ることができる。気泡を噴流中に混入しない場合、気泡を混入させた場合に比べて、被刺激面が概ね一様に押されることから、人の親指で押されているような太く、やわらかい指先の感触に近くなる。
【0045】
ここで、「実質気泡を有しない噴流」とは、水流のみからなる噴流が好ましいが、直径が数十μm以下の気泡(マイクロバブル、ナノバブル等)を含む噴流であってもよい。そのような直径が数十μm以下の気泡が噴流に含まれたとしても、人体表面での水流の移動を明瞭に感じることができる。
【0046】
また、噴流に気泡を混入しないため、吸入口5とノズル11の噴出口との間の流路は、大気との連通口(空気取り入れ口)に通じていない。この結果、空気が浴槽水の循環流路内に取り込まれる際の音や、気泡発泡音が発生せず、入浴者は静かな環境でよりリラックスして噴流マッサージを受けることができる。特に空気を混入する際に発生する気泡混入時の気液混合音は、大気との連通口を通して浴槽外へ伝播するが、本実施形態では、大気との連通口自身がないため、静かな環境でよりリラックスして噴流マッサージを受けることができる。
【0047】
また、噴流束(噴流断面A)の移動速度は、1〜10Hzの周波数を持つ信号を複数重ね合わせた不規則な周波数で時間変化するのがよく、より好ましい周波数範囲としては1〜6Hz程度がよい。このような周波数で噴流束の移動速度が変化することで、噴出刺激箇所の移動速度の変化を十分に感じることができ、親指による揉捏マッサージ刺激に似た自然な変化を持った刺激感が得られる。
【0048】
また、使用者は浴湯に浸かって身体が温まっており、筋肉が弛緩し、さらに血行が促進された状態で前述したような揉捏マッサージを受けることができ、マッサージ効果が向上する。
【0049】
回転体は、ラジアル方向(半径方向)の移動を規制されつつ回転可能に支持される必要がある。さらに、回転体は流入してくる水流によって下流側に付勢される力を受けるため、回転体の軸方向(スラスト方向)下流側への移動を規制する必要もある。
【0050】
回転体の軸中心に回転軸を固定させ、その回転軸の両端を軸受に両持ち支持させた構造とすれば、半径方向および軸方向の移動を規制しつつ回転体を回転させることができる。
【0051】
回転体の噴出口より下流に、回転軸の下流側端部を支持する軸受を設けるには、その軸受を支える構造が必要である。例えば、軸受を中心に放射状に延びるリブもしくは棒状の複数本の支持部材で軸受を保持する構成が考えられる。
【0052】
噴出口から噴出される噴流が直線状であれば、支持部と支持部との間の隙間を通過させて連続的に噴流を浴槽内へと噴出させることができる。しかし、回転体に設けた噴出口は回転体の回転に伴って周方向に移動し、その噴出口からは回転しながら浴槽内へと進む噴流が噴出されるため、噴出口の下流前方に上記支持部材があると、その支持部材に噴流が衝突して噴流が一時的に途切れ、人体が噴流により受ける押圧感が断続的になってしまうことが懸念される。すなわち、人の親指で押されながら連続的に押圧位置が移動する感じが得られにくくなることがあり得る。
【0053】
そこで、以下に示す実施形態では、噴出口より下流側に噴出噴流を遮る部分を設けず、噴流を途切れさせず連続的に浴槽内へと噴出させることのできるノズル構造としている。なお、以下に示す各実施形態において、前述した第1の実施形態も含め他の実施形態と共通する要素には同じ符号を付している。また、以下の各実施形態に示す各ノズル11b〜11dは、図1に示すノズル11に対応する。
【0054】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係るノズル11bの模式断面図である。また、図8は、ノズル11bを下流側の先端から見た模式図である。
【0055】
本実施形態では、回転体33の軸中心に設けられた回転軸58における上流側部分のみが軸受57に支持され、すなわち片持ち支持されている。したがって、回転体33より下流側で回転軸の下流側端部を支持する構造が不要となる。
【0056】
したがって、本実施形態では、噴出口56aの移動面(回転体33の下流側端面)と、噴出口56aよりも下流側に位置し浴槽内に臨むノズル先端開口62との間に、噴流を遮ることなく連続的に通過させる空間60が形成されている。この空間60は、噴出口56aを含む回転体33の下流側端面と、ノズルカバー61の内周壁面61aとによって囲まれ、ノズルカバー61の先端に形成されたノズル先端開口62を介して浴槽内に通じている。
【0057】
空間60内には、噴出口56aから噴出され回転しながら浴槽内へと進む噴流を遮るものは何もなく、噴出噴流は途切れることなく連続的に人体表面へと到達して、その噴流による押圧箇所が人体表面上を連続的に移動し、人の親指で揉捏マッサージをされている感じに近い感じを得やすくなる。
【0058】
また、筒状のノズルカバー61の内周面に段が形成されることで、フランジ状に径内方に突出した軸方向支持部63が設けられている。この軸方向支持部63は、回転体33の下流側端面における噴出口56aよりも径外方側の縁部を軸方向に受け、回転体33の軸方向下流側への移動を規制する。
【0059】
また、回転体33の下流側端面は、ノズル先端開口62よりも下流側(浴槽側)に飛び出さず、ノズル内部に収まっているため、使用中に回転体33に人体等が接触し、その回転を止めてしまうことが防止される。
【0060】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に係るノズル11cの模式断面図である。
【0061】
本実施形態でも、回転体33の軸中心に設けられた回転軸58における上流側部分のみが軸受57に支持され、すなわち片持ち支持されている。したがって、回転体33より下流側で回転軸の下流側端部を支持する構造が不要となる。
【0062】
したがって、本実施形態でも、噴出口56aの移動面(回転体33の下流側端面)と、噴出口56aよりも下流側に位置し浴槽内に臨むノズル先端開口62との間に、噴流を遮ることなく連続的に通過させる空間60が形成されている。この空間60内には、噴出口56aから噴出され回転しながら浴槽内へと進む噴流を遮るものは何もなく、噴出噴流は途切れることなく連続的に人体表面へと到達して、その噴流による押圧箇所が人体表面上を連続的に移動し、人の親指で揉捏マッサージをされている感じに近い感じを得やすくなる。
【0063】
また、本実施形態では、回転体33の外周面に、フランジ状に径外方に突出した段部33aが設けられている。ノズルカバー61には、上流側へと延びる筒部66が設けられ、この筒部66の上流側端部は、回転体33の段部33aを軸方向に受ける軸方向支持部66aとして機能する。この軸方向支持部66aに、回転体33の段部33aが当接することで、回転体33の軸方向下流側への移動が規制される。
【0064】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態に係るノズル11dの模式断面図である。
【0065】
回転体33の軸中心に回転軸58が固定され、その回転軸58における上流側部分のみが軸受77に支持され、すなわち片持ち支持されている。したがって、回転体33より下流側で回転軸の下流側端部を支持する構造が不要となる。
【0066】
したがって、本実施形態でも、噴出口56aの移動面(回転体33の下流側端面)と、噴出口56aよりも下流側に位置し浴槽内に臨むノズル先端開口62との間に、噴流を遮ることなく連続的に通過させる空間60が形成されている。この空間60内には、噴出口56aから噴出され回転しながら浴槽内へと進む噴流を遮るものは何もなく、噴出噴流は途切れることなく連続的に人体表面へと到達して、その噴流による押圧箇所が人体表面上を連続的に移動し、人の親指で揉捏マッサージをされている感じに近い感じを得やすくなる。
【0067】
また、回転軸58の上流側端部にはリング状の支持部材80が設けられている。この支持部材80は回転軸58に固定されている。また、軸受77には、上記支持部材80の下流側の端面に当接可能な軸方向支持部78が設けられている。この軸方向支持部78は、支持部材80を軸方向に受け、回転軸58を介して支持部材80と結合されている回転体33の軸方向下流側への移動を規制する。
【0068】
図7、9および10に示す各実施形態では、いずれも環状の面どうしの接触によって、回転体33の軸方向下流側への移動が規制される。また、回転体33や図10に示す支持部材80は回転しているため、これらは前述した軸方向支持部に対して回転しながら接触することになる。その接触面に作用する軸方向の力が変わらない場合、接触面積が小さい方が摩擦力が小さい。さらに、摩擦力が同じだとしても、回転中心(回転軸58)からの距離が近い方が回転抵抗は小さい。
【0069】
図10に示す第4の実施形態では、第2の実施形態(図7)および第3の実施形態(図9)よりも、回転中心に近い位置での接触であるので、その接触面における摺動摩擦による回転抵抗(摩擦モーメント)が、より小さくなる。このため、回転力の不足により、回転体33の回転が停止してしまう不具合が起こりにくい。
【0070】
また、図10に示すノズル構造においては、軸受77をノズルカバー71と一体に設けている。具体的には、ノズルカバー71の筒部72の上流側端部に対して、図示しない複数本の放射状に延びる支持部材を介して軸受77が保持されている。それら支持部材間には隙間73が存在し、この隙間73を通じて、流水導入路43から回転体33内へと流水が導入される。
【0071】
軸受77をノズルカバー71と一体に設けることで、ノズルカバー71に対して回転体33を装着してから、それをノズル本体31に組み付けることができ、着脱に要する手間が省け、清掃、メンテナンスが容易に行えるようになる。
【0072】
[第5の実施形態]
図11(a)は、第5の実施形態に係るノズル11eの模式断面図であり、図11(b)はそのノズル11eにおける回転体81の支持構造を示す模式横断面図である。
【0073】
本実施形態では、回転体81は、回転軸によってではなく、回転体81の外周側に設けられた転がり軸受(例えば、本実施形態においてはころ軸受90)によって半径方向の移動を規制されつつ回転自在に、上記ノズル本体31に対して支持されている。
【0074】
ころ軸受90は、ノズル本体31に対して固定される外輪部材83と、回転体81に対して固定される内輪部材84と、外輪部材83の内周面と内輪部材84の外周面との間に介在された複数のころ82とを有する。ころ82は、回転体81の軸方向に対して平行に延在する円筒もしくは円柱状に形成されている。なお、「転がり軸受」としては、ころ軸受に限らず、玉軸受(ボールベアリング)のような球が内輪部材と外輪部材との間に内在するものを用いてもよい。
【0075】
なお、この構造においても、前述した実施形態のように、回転体81の軸方向下流側への移動を規制する構成を設ける必要がある。あるいは、ころ軸受90自体に、そのような構造(例えば外輪部材83に、回転体81の下流端面縁部に当接するストッパーのようなものなど)を設けてもよい。
【0076】
前述した各実施形態において、回転体が1回転する間に回転速度を速くしたり遅くしたり変化させると、人の親指によるマッサージのような(速度変化)強弱変化を感じやすくなる。回転体の回転速度、すなわち噴出噴流束の移動速度が遅い場合には、じっくりと力を加えられて押される感じを受け、回転速度(噴流束移動速度)が速い場合には、力を軽く抜かれたように感じる。
【0077】
例えば、図12に示すように、回転体33における周方向の一部に重り85を設けることで、回転体33の重心を回転中心Oに対して偏心させて、回転体33が1回転する間に回転速度の変化を生じさせることができる。
【0078】
この図12に示すように、回転体33の周方向を噴出口56aが設けられた側とそうでない側とに二分し、噴出口56aがない側に重り85を設けた場合には、重り85が鉛直下方(重力方向)へと下がるときに移動速度(回転速度)が速くなり、そのときは噴出口56aは鉛直上方に上がるため、噴出口56aが鉛直上方に上がるときに移動速度(回転速度)が速くなる。このため、心臓から遠ざかる方向にマッサージを行う按摩手技のような噴流刺激を実現することができる。
【0079】
逆に、噴出口56a側に重り85を設けて噴出口56a側に重心を偏らせた場合には、噴出口56aが鉛直上方に上がるときに移動速度が遅くなり、指で揉み上げているようなマッサージ感を実現することができる。
【0080】
さらに、図1に示す2つのノズル11の各々の回転体33に設けた流路56の周方向の傾きが、図13(a)に示すように反対になるようにすると、2つの回転体33は互いに反対方向に回転する。なお、図13(b)は、前述した図5(b)と同様に、回転体33の回転に伴う噴出噴流断面Aの移動の様子を示す。
【0081】
図13の構成の場合、背骨の左右両側を同時に親指マッサージするような刺激感が得られる。さらに、各々の回転体33には、噴出口56aに対する位置関係を同じにして重り85が設けられているため、噴流を噴出していない回転停止状態では、重力によって重り85を設けた部分が自然と下に位置し、回転開始位置(噴流断面Aの位置)が左右の回転体33で同じになる。これにより、2つの回転体33の回転の位相をそろえることができ(逆方向に同期して回転させることができ)、実際の指圧マッサージにおける両手を使った親指マッサージに近いマッサージ感が得られる。
【0082】
なお、前述した各実施形態におけるノズルの回転体は、モータにより回転駆動させてもよいが、流体反力により回転駆動させる構成の場合、機構が単純化され安価に製作が可能である。
【0083】
前述した各実施形態において、気泡を含まない噴流を噴出させるにあたっては、浴槽水の循環路内に空気を取り入れる機構そのものを設けないことで実現できる。あるいは、浴槽水の循環路内に空気を取入可能な配管を設け、さらにその配管を開閉するバルブを設けた構成を採用した場合であっても、そのバルブを閉じることによって、気泡を含まない噴流の噴出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の構成を示す模式図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るノズルの模式断面図。
【図3】同ノズルにおける回転体の下流側の端面図。
【図4】同ノズルを下流側の先端から見た模式図。
【図5】本発明の実施形態において噴出噴流束の移動(挙動)を説明するための模式図。
【図6】噴出噴流束のさらに他の移動(挙動)形態を説明するための模式図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るノズルの模式断面図。
【図8】同ノズルを下流側の先端から見た模式図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るノズルの模式断面図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るノズルの模式断面図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るノズルの模式図。
【図12】本発明の実施形態に係るノズルの回転体に重りを設けて、1回転の間で回転速度の変化が生じるようにした回転体の模式図。
【図13】図12に示す回転体を2つ水平方向に並設させ、互いに回転方向を逆にしたときの作用を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0085】
1…浴槽、5…吸入口、7…加圧装置、11,11a〜11e…噴流ノズル、33,81…回転体、56a…噴出口、62…ノズル先端開口、85…重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水が吸い込まれる吸入口と、
前記吸入口から浴槽水を吸入し加圧して吐出する加圧装置と、
前記加圧装置から供給される浴槽水を前記浴槽内に噴出させる噴流ノズルと、
を備えた噴流浴装置であって、
前記噴流ノズルは、
回転体と、
前記回転体の回転中心に対して偏心した位置に親指大の開口面積で形成され、前記回転体の回転に伴って前記回転中心のまわりの親指可動範囲内を移動する噴出口と、
を有し、
前記吸入口と前記噴出口との間の流路は大気との連通口に通じず、前記噴流ノズルは実質気泡を有しない噴流を浴槽水中に噴出することを特徴とする噴流浴装置。
【請求項2】
前記噴出口の移動面と、前記噴出口よりも下流側に位置し前記浴槽内に臨むノズル先端開口との間に、噴流を遮ることなく連続的に通過させる空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の噴流浴装置。
【請求項3】
前記噴流ノズルは、
前記回転体の回転軸の上流側部分を片持ち支持する軸受と、
前記回転体における前記噴出口よりも径外方側の部分を軸方向に受け、前記回転体の軸方向下流側への移動を規制する軸方向支持部と、
を有することを特徴とする請求項2記載の噴流浴装置。
【請求項4】
前記噴流ノズルは、
前記回転体の軸中心に固定された回転軸と、
前記回転軸の上流側端部に設けられた支持部材と、
前記回転軸の上流側部分を片持ち支持すると共に、前記支持部材を軸方向に受け、前記回転体の軸方向下流側への移動を規制する軸受と、
を有することを特徴とする請求項2記載の噴流浴装置。
【請求項5】
前記回転体は、その外周側に設けられた転がり軸受によって半径方向の移動を規制されつつ回転自在に支持されていることを特徴とする請求項2記載の噴流浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−219726(P2009−219726A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68800(P2008−68800)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】