説明

噴霧容器

【課題】投薬の都度、薬液の噴霧回数を制限して投薬量を管理する。
【解決手段】薬液を収容する容器本体10と、ポンプ機構20と、ポンプ機構20を容器本体10の口部11に装着するアダプタ30と、アダプタ30に相対回転自在に収納するリング部材40と、ポンプ機構20の操作ロッドを押し操作するチップ52付きのノズル部材50とを設け、ノズル部材50は、リング部材40を指示位置からロック位置に至るまで押し操作ごとに歩進回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内蔵のポンプ機構による薬液の噴霧回数を制限して投薬ごとの投薬量を正確に管理することができる噴霧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
手動式のポンプ機構を内蔵する薬液の噴霧容器であって、噴霧回数を計数し、一定の噴霧回数以上の使用を禁止することができる噴霧容器が提案されている(特許文献1)。
【0003】
噴霧容器は、ポンプ機構を装着する薬液容器と、薬液容器を収納するキャリヤユニットと、てこ式の操作レバー付きのケーシングとを一体に組み合わせて構成されている。そこで、てこ式の操作レバーを操作し、キャリヤユニットを介して薬液容器を軸方向に駆動することによってポンプ機構を作動させ、薬液を外部に噴霧することができる。なお、キャリヤユニットは、ラチェット機構により1回の噴霧動作ごとに歩進回転し、一定数以上の歩進回転を禁止するようになっている。すなわち、噴霧容器は、薬液容器内の薬液の使い始めからの噴霧回数を計数し、使い終りの時期を管理することができるから、薬液容器内の薬液が少なくなり、1回の噴霧動作により所定量の薬液が噴霧できなくなっても使用を継続するという不具合を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−504280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、薬液の使い始めからの噴霧回数が計数できるだけであるから、たとえば1回当りの投薬量が制限される薬液の噴霧回数を投薬の都度計数して管理する用途に適用できないという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、ポンプ機構を装着する容器本体にアダプタ、リング部材、ノズル部材を組み合わせることによって、投薬の都度、ノズル部材の押し操作による薬液の噴霧回数を制限して投薬量を正確に管理することができる噴霧容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、薬液を収容する容器本体と、吐出孔を有する操作ロッドを軸方向に押し操作して作動させるポンプ機構と、ポンプ機構を容器本体の口部に装着するアダプタと、アダプタに相対回転自在に収納するリング部材と、ポンプ機構からの薬液を噴霧するチップを有し、操作ロッドを押し操作するノズル部材とを備えてなり、リング部材は、ノズル部材による指定回数の噴霧動作を指示する指示位置と、ノズル部材の押し操作を禁止するロック位置とに手動セット可能であり、ノズル部材は、リング部材を指示位置からロック位置に至るまで押し操作ごとに歩進回転させることをその要旨とする。
【0008】
なお、リング部材の内周には、上向きの斜面を有する歩進用の第1の係合片と、下向きの斜面を有する歩進用の第2の係合片とを押し操作の指定回数相当の組数だけ周方向に形成し、ノズル部材の外周には、押し操作ごとに第1、第2の係合片の各組に順に係合してリング部材を歩進回転させる係合突部を形成することができ、リング部材の内周には、係合突部が係合することによりノズル部材を押し操作不能にロックするロック用の係合片を形成することができる。
【0009】
また、リング部材には、ばね片を介して内向きに付勢する係合突起を形成し、アダプタには、係合突起が弾発的に係合することによりノズル部材の指定回数の最後の押し操作の完了位置からロック位置にまでリング部材を歩進回転させる横断面山形の係合部を形成してもよく、アダプタには、係合突起が弾発的に係合することによりリング部材を指示位置、ロック位置にセットするときクリック感を生じさせる係合凹溝を形成してもよい。
【0010】
さらに、リング部材には、ノズル部材の押し操作を無制限に許容する許容位置をロック位置と指示位置との間に設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、ポンプ機構は、アダプタを介して容器本体の口部に装着され、ノズル部材を介して操作ロッドを軸方向に押し操作して作動させることにより、ノズル部に付設するチップから薬液を外部に霧状に噴霧させることができる。なお、ポンプ機構は、復帰ばねを内蔵しており、ノズル部材は、押し操作して薬液を噴霧させると、押圧力を除去することにより復帰ばねを介して自動的に元の位置に戻る。すなわち、ノズル部材の押し操作は、各回ごとに往路の押し動作と復路の戻し動作とからなり、ポンプ機構は、ノズル部材を繰返し押し操作するだけで薬液の噴霧動作を繰り返すことができる。
【0012】
一方、リング部材は、指示位置、ロック位置に手動セット可能であり、ノズル部材は、リング部材を指示位置からロック位置に至るまで押し操作ごとに歩進回転させるから、投薬の都度、リング部材を指示位置にセットして噴霧動作を開始すれば、ノズル部材の指定回数の押し操作、すなわちノズル部材による指定回数の噴霧動作の完了によりリング部材がロック位置にまで回転し、それ以上の噴霧動作を自動的に禁止して薬液の噴霧回数を制限し、投薬ごとの投薬量を正確に管理することができる。ただし、ノズル部材による噴霧動作の指定回数は、あらかじめ1または2以上の任意の整数に設定するものとする。
【0013】
リング部材の内周に形成する歩進用の第1の係合片は、ノズル部材を押し操作すると、押し操作の往路においてノズル部材の外周の係合突部が上向きの斜面に係合してリング部材を歩進ピッチの1/2だけ歩進回転させ、歩進用の第2の係合片は、ノズル部材の押し操作の復路において係合突部が下向きの斜面に係合し、リング部材を歩進ピッチの残りの1/2だけ歩進回転させる。すなわち、ノズル部材を押し操作すると、ノズル部材の外周の係合突部は、押し操作の往路において第1の係合片の上向きの斜面に係合して歩進ピッチの前半の1/2だけリング部材を歩進回転させ、その後の押し操作の復路において、第2の係合片の下向きの斜面に係合して歩進ピッチの後半の1/2だけリング部材を歩進回転させ、ノズル部材の押し操作ごとにリング部材を所定の歩進ピッチずつ歩進回転させる。
【0014】
なお、第1、第2の係合片は、ノズル部材の押し操作の指定回数相当の組数が用意されており、したがって、ノズル部材の外周の係合突部は、リング部材を指示位置にセットすると、最初の第1の係合片の斜面の上方に位置し、ノズル部材の指定回数の押し操作の完了時点で、最後の第2の係合片の斜面の上端に位置する。ただし、ノズル部材の外周の係合突部は、ノズル部材の押し操作の往路、復路において、それぞれ第1の係合片の上向きの斜面、第2の係合片の下向きの斜面に順次係合してリング部材を一方向に歩進回転させるために、リング部材の歩進回転方向に頂部を有する横向き三角形に形成するものとする。ただし、ノズル部材の係合突部は、同様の歩進動作を達成できる限り、たとえば円形、横向き半円形などであってもよい。
【0015】
ノズル部材の外周の係合突部は、リング部材の内周に形成するロック用の係合片に係合することにより、ノズル部材を押し操作不能にロックすることができる。ただし、このときのリング部材は、ロック位置にあり、リング部材は、ノズル部材の押し操作が指定回数を完了したときに自動的にロック位置に移行する他、手動によりロック位置にセットすることができる。
【0016】
リング部材に形成する係合突起は、アダプタに形成する横断面山形の係合部に対し、ばね材を介して弾発的に係合することにより、ノズル部材の指定回数の最後の押し操作の完了位置からロック位置にまでリング部材を自動的に歩進回転させることができる。なお、このようにしてリング部材をロック位置に回転させることにより、指定回数を超えてノズル部材を押し操作したり、それにより指定回数を超えて薬液の噴霧動作をしたりすることを確実に防止することができる。
【0017】
リング部材の指示位置、ロック位置において、リング部材の係合突起が弾発的に係合してクリック感を生じさせる係合凹溝をアダプタに形成すれば、クリック感に基づいてリング部材を指示位置、ロック位置に容易に手動セットすることができる。なお、リング部材に許容位置を設けるときは、許容位置に対応する係合凹溝をアダプタに追加形成し、許容位置においてもクリック感を生じさせるものとする。
【0018】
なお、リング部材に許容位置を設けるときは、リング部材を許容位置にセットすると、ノズル部材を押し操作してもリング部材が歩進回転することがなく、ノズル部材を無制限に押し操作し、任意の噴霧回数だけ薬液を噴霧して投薬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】全体構成説明図
【図2】要部構成拡大断面説明図
【図3】要部分解斜視説明図
【図4】アダプタの構成説明図
【図5】リング部材の構成説明図
【図6】図2(A)のY1 −Y1 線矢視相当要部模式拡大断面図
【図7】図6のY2 −Y2 線矢視相当要部模式拡大断面図
【図8】動作説明図(1)
【図9】動作説明図(2)
【図10】動作説明図(3)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0021】
噴霧容器は、容器本体10、ポンプ機構20、アダプタ30、リング部材40、ノズル部材50を一体に組み立ててなる(図1、図2)。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれ一部破断正面図、上面図であり、図2(A)、(B)は、それぞれ図1(B)のX1 −X1 線矢視相当の動作説明縦断面図である。
【0022】
容器本体10は、上向きの口部11を有する円筒容器である。口部11の外周には、雄ねじ11aが形成されており、容器本体10には、図示しない所定量の薬液が収納されている。また、容器本体10には、ノズル部材50を覆う着脱自在のキャップ61が付属している。
【0023】
ポンプ機構20は、ねじ式のアダプタ30を介して容器本体10の口部11に装着されている。アダプタ30は、容器本体10の雄ねじ11aに適合する雌ねじ31を下半部に有し、雌ねじ31の上部には、中間壁32が形成されている。
【0024】
ポンプ機構20は、ケーシング22、ピストン23、操作ロッド24を同軸状に一体に組み立てて構成されている。ケーシング22には、ピストン23を上方に付勢する復帰ばね25が内装され、ケーシング22の下端には、容器本体10の底部に到達する薬液の吸引パイプ26が連結されている。
【0025】
ピストン23の下端部には、上向きのフレア23aが形成され、フレア23aは、ピストン23の上下に従ってケーシング22内を上下に摺動する。ケーシング22の上端部には、大径の計量用のカップ部22aが形成され、カップ部22aの上端縁には、外フランジ22bが形成されている。操作ロッド24の下端部には、カップ部22aの内面に沿って摺動する下向きのフレア24aが形成されている。ピストン23の下部には、軸穴23bが形成され、軸穴23bの上部は、ピストン23に装着する可撓性の弁体23cを介してカップ部22a内に開口している。なお、カップ部22aの上部には、容器本体10に連通する戻し口22cが形成されている。ピストン23の上半部は、操作ロッド24の下向き段付きの軸孔24bに上向きに挿入され、上端部のテーパ部を介して位置決めされている。
【0026】
ケーシング22は、アダプタ30を介し、パッキン27aとともに外フランジ22bが口部11の上端面に固定されている。また、操作ロッド24は、シール材27bを介してアダプタ30の中間壁32を下から上に摺動自在に貫通している。なお、操作ロッド24の軸孔24bは、吐出孔24cとして操作ロッド24の上端に開口している。
【0027】
リング部材40は、下半部の大径部をアダプタ30の中間壁32上に収納し、上半部の小径部を外部に露出している。リング部材40は、小径部の外周にローレット40a、40a…が形成され、アダプタ30の内面上端部の係合突部33、33…を介して抜止めされている。リング部材40は、アダプタ30に相対回転自在に収納されている。
【0028】
ノズル部材50は、下半部をリング部材40に収納するようにして、ポンプ機構20の操作ロッド24の先端に連結されている。操作ロッド24の吐出孔24cは、ノズル部材50の軸孔51に向けて開口しており、ノズル部材50の上端部には、連通孔51aを介して軸孔51に連通するチップ52が横向きに装着されている。ノズル部材50の斜めの上端面は、滑り止め用のリブ53a、53a…を形成する押圧面53に形成されている。ノズル部材50の内部には、径方向のガイド羽根54、54が形成され、ガイド羽根54、54は、アダプタ30の高い上向きの中心筒34に形成する上下方向のガイド溝34a、34aに対し、それぞれ切欠溝54aを介して上下に相対移動可能に組み合わされている。
【0029】
ノズル部材50の押圧面53を押すと、ノズル部材50は、リング部材40内に下降し(図2(B))、ポンプ機構20の復帰ばね25を押し縮めながら、操作ロッド24、ピストン23を下降させる。また、押圧面53に加える押圧力を除去すると、ピストン23、操作ロッド24、ノズル部材50は、復帰ばね25を介して元の上昇位置に自動的に戻る(図2(A))。そこで、たとえば容器本体10を手指で正立状態に把持し、親指または人差指によりノズル部材50の押圧面53に繰り返し押圧力を加えれば、ポンプ機構20は、吸引パイプ26を介して容器本体10内の薬液を吸引し、ノズル部材50のチップ52から外部に霧状に噴霧することができる。なお、このときのノズル部材50の押し操作は、片手操作が可能である。
【0030】
ポンプ機構20において、ピストン23の上向きのフレア23aは、ピストン23が上昇する際に薬液の吸引用の逆止弁として働き、そのとき、カップ部22a内が負圧になるため、ピストン23上の弁体23cは、ケーシング22内の薬液をカップ部22a内に流出させる。また、操作ロッド24の下向きのフレア24aは、操作ロッド24、ピストン23が下降する際に、カップ部22a内の薬液を軸孔24bに送り込み、吐出孔24c、ノズル部材50の軸孔51、連通孔51aを介してチップ52から霧状に噴霧させる。なお、軸孔24b内には、ピストン23との間に十分な隙間が形成されている。また、カップ部22aの戻し口22cは、操作ロッド24、ピストン23の下降時にカップ部22a内のエアまたは薬液の一部を容器本体10に戻す。すなわち、ポンプ機構20は、ノズル部材50を介して操作ロッド24を軸方向に押し操作して作動させ、ノズル部材50の押し操作の都度、一定量の薬液をチップ52から噴霧させることができる。
【0031】
なお、リング部材40は、ノズル部材50の指定回数の押し操作、すなわちノズル部材50による指定回数の噴霧動作を指示する指示位置、ノズル部材50の押し操作を禁止するロック位置、ノズル部材50の押し操作を無制限に許容する許容位置に手動で回転してセットすることができ、ノズル部材50は、リング部材40を指示位置からロック位置に至るまで押し操作ごとに歩進回転させる。また、以上の各機能を実現するために、ノズル部材50の外周下端に外向きの係合突部55、55を軸対称に形成し、リング部材40の内周に歩進用の第1、第2の係合片41、41…、42、42…などを周方向に配列して形成し、アダプタ30の中間壁32上に低い上向きの中間筒35を設け、アダプタ30の上部外周に表示窓36、36を軸対称に設けているので、以下、説明する。
【0032】
アダプタ30、リング部材40、ノズル部材50の組合せ状態を図3に示す。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれ図示方向を異ならせて示す分解斜視図である。なお、アダプタ30、リング部材40、ノズル部材50は、それぞれポリプロピレン、ABSなどの硬質のプラスチック材料により一体成形されている。
【0033】
アダプタ30の下半部は、径方向の連結片37、37…を介して連結する二重筒になっており(図4(D)、(E))、雌ねじ31は、内筒側に形成され、雌ねじ31の上方には、ポンプ機構20を装着する際のパッキン27a用の係合リブ38が形成されている。また、中間壁32の天面には、ポンプ機構20の操作ロッド24を貫通させるための小筒32aが垂設され、シール材27b用のシールリブ32bが小筒32aのまわりに形成されている。ただし、図4(A)、(D)は、それぞれアダプタ30の上面図、下面図であり、図4(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のX2 矢視、X3 矢視相当図であり、図4(E)、(F)は、それぞれ同図(A)のX4 −X4 線、X5 −X5 線矢視相当断面図である。
【0034】
アダプタ30の中間壁32上の中間筒35の上端は、外向きの斜面に形成されており(図4(E))、中間筒35の外周には、横断面山形の係合部35a、35a、上下方向の係合凹溝35b、35b…が形成されている(図4(A))。ただし、一対の係合部35a、35a、3本ずつ2組の係合凹溝35b、35b…は、中間筒35の外周に軸対称に配置されている。
【0035】
リング部材40の下半部の大径部の外周には、数字1、2…5の他、文字X、∞が軸対称に2組表示されている(図3、図5(B)、(C))。また、リング部材40の内周には、各5個ずつ2組の歩進用の第1、第2の係合片41、41…、42、42…の他、一対のロック用の係合片43、43、上下開放の凹溝45、45が軸対称に形成されている(図5(A)、(D)、(E))。なお、各ロック用の係合片43には、下向きのばね片44aの下端に内向きの係合突起44が形成され(図5(E)、(F))、各係合突起44は、ばね片44aを介して内向きに付勢されている。ただし、図5(A)、(D)は、それぞれリング部材40の上面図、下面図であり、図5(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のX6 矢視、X7 矢視相当図であり、図5(E)、(F)は、それぞれ同図(A)のX8 −X8 線矢視相当断面図、X9 −X9 線矢視相当端面図である。
【0036】
リング部材40をアダプタ30の中間壁32上に収納すると(図2)、リング部材40の内周の内向きの係合突起44、44は、リング部材40の回転位置に応じて、それぞれアダプタ30の中間筒35の外周の係合部35a、係合凹溝35b、35b…に弾発的に係合することができる(図6)。ただし、図6は、リング部材40を回転させて指示位置に手動セットした状態を図示しており、このとき、各係合突起44は、対応する係合部35aから時計回りに最も遠い係合凹溝35bに係合している。また、このとき、アダプタ30の各表示窓36には、リング部材40上の最大の数字5が表示されている(図1)。
【0037】
リング部材40の内周の歩進用の第1、第2の係合片41、41…、42、42…は、ロック用の係合片43、上下開放の凹溝45とともに、リング部材40の内周の1/2に対し、それぞれ図7のように配列形成されている。すなわち、第1の係合片41、41…は、それぞれ上向きの斜面41aを片側に有し、リング部材40の下端付近から上方に長く延びている。また、第2の係合片42、42…は、それぞれ下向きの斜面42aを片側に有し、第1の係合片41、41…の上方に、第1の係合片41、41…の間に対応させるようにして配置されている。また、ロック用の係合片43は、隣接する第2の係合片42の斜面42aに対応する斜面43aを片側に有し、凹溝45側に急な斜面43bが形成されている。また、凹溝45に隣接する第1の係合片41も、凹溝45側に短い斜面41bを有している。
【0038】
ノズル部材50の外周下端の係合突部55、55は、それぞれ横向き三角形に形成されている(図3)。係合突部55の頂部は、各第1、第2の係合片41、42の斜面41a、42aの形成方向と逆方向に向いている(図7)。リング部材40が指示位置にあってノズル部材50が押し操作されていないとき、各係合突部55は、リング部材40の凹溝45に隣接する第1の係合片41の上方の第2の係合片42寄りにあり、その上端は、第2の係合片42、42…の上端よりやや高く、その下端は、ロック用の係合片43の上端より僅かに高い位置にある。
【0039】
そこで、ノズル部材50を押し操作して薬液を噴霧させると、各係合突部55が下降して直下の第1の係合片41の斜面41aに係合し、リング部材40を所定の歩進ピッチの1/2だけ歩進回転させることができる(図7、図8(A1 )の各矢印方向、図8(A2 )、(B2 ))。なお、各係合突部55は、ノズル部材50の押し操作により第1の係合片41の斜面41aの下端の直下にまで下降し、次の第1の係合片41との間に進入する。
【0040】
その後、復帰ばね25を介してノズル部材50が元の位置に復帰するとき、各係合突部55は、直上の第2の係合片42の斜面42aに係合してリング部材40を同方向に歩進ピッチの1/2だけ歩進回転させるとともに、次の第2の係合片42との間にまで上昇する(図8(A3 ))。また、このとき、リング部材40の係合突起44、44は、それぞれ最初に係合していた係合凹溝35bから歩進ピッチ相当だけ時計回りに離れる(図8(B1 )〜(B3 ))。なお、このようにしてリング部材40が歩進ピッチだけ回転すると、アダプタ30の各表示窓36の表示が数字5から数字4に変化する(同図(A3 ))。
【0041】
そこで、ノズル部材50を再度押し操作して元の位置に復帰させると、リング部材40が同方向にさらに歩進ピッチだけ歩進回転し、各表示窓36の表示が数字3に変化する(図8(A3 )〜(A5 )、(B3 )〜(B5 ))。以下同様にして、ノズル部材50が5回目に押し操作された時点では、各係合突部55は、第1の係合片41とロック用の係合片43との間に入り込み(図9(A1 ))、リング部材40の各係合突起44は、アダプタ30側の対応する係合部35aの反時計回りの直近に位置している(同図(B1 ))。各係合突部55は、第1、第2の係合片41、41…、42、42…の各組に順に係合しながら昇降してリング部材40を歩進回転させるからである。
【0042】
つづいて、ノズル部材50を元の位置に復帰させると、各係合突部55は、直上の第2の係合片42の斜面42aと、ロック用の係合片43の斜面43aとの間を通ることによりリング部材40を歩進ピッチの1/2だけ歩進回転させ(同図(A2 ))、各係合突起44は、係合部35aのピークを横切るようにして乗り越える(同図(B2 ))。そこで、各係合突起44は、ばね片44aを介して内向きに付勢されるため、係合部35aの外面の斜面に弾発的に係合してリング部材40をさらに回転させ、係合部35aの時計回りに隣接する係合凹溝35bに係合するに至る(同図(B3 ))。なお、このとき、各係合突部55は、ロック用の係合片43の上方に相対的に進行して係合片43の上端に係合し(同図(A3 ))、ノズル部材50を押し操作不能にロックすることができ、各表示窓36には、文字Xが表示される。すなわち、図9(A3 )、(B3 )において、リング部材40は、ロック位置に自動セットされている。
【0043】
ロック位置のリング部材40は、さらに所定角度だけ手動回転させることにより、許容位置に手動セットすることができる(図9(A4 )、(B4 ))。このとき、ノズル部材50の各係合突部55は、リング部材40の上下開放の凹溝45上に位置し、リング部材40の各係合突起44は、アダプタ30の各係合部35aから時計回りに2番目に隣接する係合凹溝35bに係合する。なお、リング部材40を許容位置にセットすると、ノズル部材50は、各係合突部55が凹溝45内を上下にフリーに昇降することができ(図9(A4 )、(A5 )、(A4 ))、リング部材40を歩進回転させることなく、ノズル部材50を無制限に押し操作することができる。また、このとき、アダプタ30の各表示窓36には、文字∞が表示されている。なお、リング部材40は、ロック位置、許容位置の間を正逆に回転させ、両者に手動セット可能である。
【0044】
アダプタ30の中間筒35の外周の係合凹溝35b、35b…は、各係合部35aから時計回りにリング部材40のロック位置、許容位置、指示位置に順に対応している。また、各係合凹溝35bは、ばね片44aを介して内向きに付勢されている係合突起44が弾発的に係合する都度、軽いクリック感を発現することができる。一方、各表示窓36の文字X、∞は、それぞれリング部材40のロック位置、許容位置を示しており、数字5は、リング部材40の指示位置において、ノズル部材50の押し操作の指定回数、すなわちノズル部材50による噴霧動作の指定回数を示す。また、リング部材40を指示位置に手動セットしてノズル部材50を押し操作すると、押し操作の1ストロークごとに残りの噴霧動作可能回数が順次各表示窓36に数字表示される。
【0045】
ノズル部材50の押し操作、すなわちチップ52からの薬液の噴霧動作に伴うリング部材40、アダプタ30の相対位置関係の一連の変化を図7に倣って図示すると、図10のとおりである。図10において、ノズル部材50の押し操作に伴うリング部材40の歩進回転は、リング部材40に対する係合突部55の相対移動経路として図示されている。また、図10の最上段には、小さい横長の長方形の枠内の数字5、4…1、文字X、∞として、各表示窓36内に表示される数字、文字が併せて図示されている。
【0046】
以上の説明において、リング部材40を指示位置に手動セットした場合のノズル部材50の最大押し操作回数、すなわち噴霧動作の指定回数は、リング部材40の内周に形成する歩進用の第1、第2の係合片41、41…、42、42…の組数に一致する。そこで、第1、第2の係合片41、41…、42、42…の組数を変更することにより、ノズル部材50による噴霧動作の指定回数を任意に変更することができる。また、リング部材40の内周には、第1、第2の係合片41、41…、42、42…、ロック用の係合片43、凹溝45を半周ごとに2組を軸対称に設けるに代えて、3組以上のn組を(1/n)周ごとに等間隔に配置して設けてもよく、このとき、ノズル部材50の外周の係合突部55も、n個を等間隔に配置するものとする。ただし、nは、3以上の整数である。
【0047】
なお、第1、第2の係合片41、42、ロック用の係合片43、係合部35a、係合凹溝35b、ばね片44a、係合突起44、係合突部55などの一連の関係部材は、それぞれの機能を達成し得る限り、図示以外の任意の形態に変更してもよい。また、リング部材40に設ける許容位置は、これを省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、たとえば育毛剤や褥瘡の治療薬などのように、投薬ごとの投薬量を正確に管理すべき薬液を噴霧して投薬する用途に対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…容器本体
11…口部
20…ポンプ機構
24…操作ロッド
24c…吐出孔
30…アダプタ
35a…係合部
40…リング部材
41…第1の係合片
42…第2の係合片
41a、42a…斜面
43…係合片
44…係合突起
44a…ばね片
50…ノズル部材
52…チップ
55…係合突部

特許出願人 伸晃化学株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容する容器本体と、吐出孔を有する操作ロッドを軸方向に押し操作して作動させるポンプ機構と、該ポンプ機構を前記容器本体の口部に装着するアダプタと、該アダプタに相対回転自在に収納するリング部材と、前記ポンプ機構からの薬液を噴霧するチップを有し、前記操作ロッドを押し操作するノズル部材とを備えてなり、前記リング部材は、前記ノズル部材による指定回数の噴霧動作を指示する指示位置と、前記ノズル部材の押し操作を禁止するロック位置とに手動セット可能であり、前記ノズル部材は、前記リング部材を指示位置からロック位置に至るまで押し操作ごとに歩進回転させることを特徴とする噴霧容器。
【請求項2】
前記リング部材の内周には、上向きの斜面を有する歩進用の第1の係合片と、下向きの斜面を有する歩進用の第2の係合片とを押し操作の指定回数相当の組数だけ周方向に形成し、前記ノズル部材の外周には、押し操作ごとに前記第1、第2の係合片の各組に順に係合して前記リング部材を歩進回転させる係合突部を形成することを特徴とする請求項1記載の噴霧容器。
【請求項3】
前記リング部材の内周には、前記係合突部が係合することにより前記ノズル部材を押し操作不能にロックするロック用の係合片を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の噴霧容器。
【請求項4】
前記リング部材には、ばね片を介して内向きに付勢する係合突起を形成し、前記アダプタには、前記係合突起が弾発的に係合することにより前記ノズル部材の指定回数の最後の押し操作の完了位置からロック位置にまで前記リング部材を歩進回転させる横断面山形の係合部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の噴霧容器。
【請求項5】
前記アダプタには、前記係合突起が弾発的に係合することにより前記リング部材を指示位置、ロック位置にセットするときクリック感を生じさせる係合凹溝を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の噴霧容器。
【請求項6】
前記リング部材には、前記ノズル部材の押し操作を無制限に許容する許容位置をロック位置と指示位置との間に設けることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか記載の噴霧容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−4912(P2011−4912A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150506(P2009−150506)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)