説明

回動方向判別機構付ロータリスイッチ

【課題】簡素化した構成で、操作軸の回動方向の高精度で確実な判別を可能としたロータリスイッチを提供する。
【解決手段】操作軸5を中心とする円弧上に沿って所定の角度αの等間隔で配設された少なくとも3個の固定接点3と、前記操作軸5によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動する複数の放射状に突設された接点片4を有する可動接点とからなり、操作軸5を回動したときに前記可動接点4の接点片のいずれか一つが固定接点3のいずれか1個と常に接続された状態となるよう構成され、前記操作軸の回動によって前記可動接点に印加された電位Hによって電位がHからLに変化した前記固定接点のアドレスの配列から、制御装置6で制御される回動方向判別手段が、前記ロータリスイッチの回動方向を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリスイッチの回動方向の判別機構に係わり、特に、固定接点が3個のみのロータリスイッチであってもその回動方向が判別できる回動方向判別機構付ロータリスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
2相インクリメンタル方式パルスエンコーダ等の左右回動検出方式は、その回動円板上に互いに位相のずれた2個のスリット列を設け、この2個のスリット列のスリットを固定されたフォトセンサにより検出して互いにその位相が90°(又は、1/2波長)ずれたA相及びB相パルスとして比較し、A相信号の立ち上がり時にB相信号がローレベルであればカウントアップし、逆にB相信号がハイレベルであればカウントダウンして回動方向を検出している。
【0003】
回動方向を検出できるロータリスイッチは上記パルスエンコーダの検出方式を応用したものが多く開示されている。
特許文献1は、その代表例であり、図8に示すように、回転自在なコード板103に周方向に所定の間隔を保って設けられた複数の欠落部118を有する摺動板116(119)と、同様に、周方向に所定の間隔を保って設けられた複数の可動接点115と、これら可動接点に接離可能な第1〜第3の摺動子片104a、104b、104cが配置されている。
【0004】
特許文献1において、コード板103が嵌合孔117を回転中心として回転すると、この回転動作中、第1の摺動子片104aは常にコモン電極115a上を摺動するが、第2の摺動子片104bはコード板の基材を構成する基板(図示せず)の表面から第1の櫛歯部115b上へ接触し、さらに基板の表面と第1の櫛歯部115bへの接触を繰り返していく。同様に、第3の摺動子片104cも基板の表面と第1の櫛歯部115bへの接触を繰り返していく。
【0005】
第2の摺動子片104bが第1の櫛歯部115bに接触すると、コモン電極115aと第1の櫛歯部115bを介して第1および第2の摺動子片104a,104b間が導通するため、これら両摺動子片104a,104bに接続された端子からA相信号用のパルスが検出される。
【0006】
また、第3の摺動子片104cが第1の櫛歯部115bに接触すると、コモン電極115aと第1の櫛歯部115bを介して第1および第3の摺動子片104a,104cが導通するため、これらの摺動子片104a,104cに接続された端子からB相信号用のパルスが検出される。
【0007】
第1の櫛歯部115bに対して第2の摺動子片104bと第3の摺動子片104cのどちらが先に接触するかはコード板103の回転方向によって逆になるため、A相信号とB相信号の立ち上がりパルスを判定することによってコード板103の回転方向が検出され、またパルス数をカウントすることによってコード板103の回転量が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−50638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1では、ロータリスイッチの回転方向検出のためコード板103に設けられた複数の可動接点115は、特許文献1の図8のように回転方向15°ステップの場合で間隔精度が求められる24個の櫛歯部が必要となり、さらに前記24個の櫛歯部と、固定接点としての摺動子片104a、104b、104cの順に操作軸と直角方向に配置することと、またその相互間隔を維持するためにはロータリスイッチの直径が大きくなり、また、摺動子片104b、104cの間隔精度から、操作軸の回転速度によってはA相信号とB相信号の立ち上がりパルス間隔が十分にとれず誤作動の原因になるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記背景技術の現状に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
【0011】
(1)操作者の操作で回動される操作軸を中心とする円弧上に沿って、所定の角度αで等間隔に配設された少なくとも3個の固定接点を持つ固定接点接続端子と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したとき前記固定接点のいずれか1個と常に接続された状態となるように前記操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点を持つ可動接点接続端子とを有するロータリスイッチと、
前記ロータリスイッチの前記可動接点接続端子と前記各固定接点接続端子に接続され、制御装置の制御によって前記操作軸の回動方向を判別する回動方向判別手段とを備えてなり、
前記可動接点接続端子には第1の電位L(又はH)が印加され、前記制御装置に接続された前記各固定接点接続端子には抵抗を介して第2の電位H(又はL)が印加され、また前記各固定接点の接続端子にはそれぞれのアドレスが付与され、前記操作軸の回動によって電位が第1の電位(又は第2の電位)に変化した前記固定接点接続端子の前記アドレスの配列に基づいて、前記回動方向判別手段によって前記ロータリスイッチの回動方向を判別することを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0012】
(2)前項(1)において、
前記ロータリスイッチに、前記操作軸の回動に連動する切替節度機構を備え、前記ロータリスイッチが、前記固定接点の所定の角度αで等間隔を保持して回動されたときに、前記操作者にクリック感触を与えることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0013】
(3)前項(1)又は(2)において、
前記制御装置は、
前記ロータリスイッチの回動によって選択される複数の回路、若しくは回路定数等の制御対象位置ごとにアドレスを付与し、前記ロータリスイッチの回動を検知して前記制御対象位置を順次切り替える制御対象切替手段と、
前記制御対象位置を表示する表示手段と、
前記制御対象切替手段によって切り替えられた前記制御対象位置のアドレスに連動して、対応する制御対象を示す表示を切り替える表示切替手段と、
前記制御対象位置のアドレスを記憶するメモリと、
を備えてなることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0014】
(4)前項(3)において、
前記制御装置に有する前記制御対象切替手段は、
前記ロータリスイッチの操作軸が反時計方向へ回動操作されたとき、当該操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがデクリメント(又はインクリメント)する方向の制御対象位置に当該制御対象を順次切り替え、
前記ロータリスイッチの操作軸が時計方向へ回動操作されたとき、
当該操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがインクリメント(又はデクリメント)する方向の制御対象位置に当該制御対象を切り替えることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0015】
(5)前項(3)又は(4)において、
前記制御装置は、
前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを反時計方向、又は時計方向の回動回数に対応して追加し、前記制御対象位置数を任意に設定できることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0016】
(6)前項(5)において、
前記制御装置によって前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを時計方向、又は反時計方向の回動回数に対応して追加したとき、
前記表示切替手段が、前記制御対象位置のアドレスに連動して、連続した明暗表示、前記アドレスに対応した任意の位置表示、又は数値表示等の位置表示を可能にすることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0017】
(7)前項(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の回動方向判別機構付ロータリスイッチが搭載された装置の電源がオフされた時、電源オフ直前に選択されていた前記制御対象位置のアドレスを前記メモリに記憶することを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【0018】
(8)前項(1)乃至(6)のいずれか1項において、
前記操作軸を中心とする円弧上に沿って所定の角度αで等間隔に配設された少なくとも3個の固定接点と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したとき、前記固定接点接続端子のいずれか1個と常に接続された状態となるよう前記操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点接続端子とで構成されたロータリスイッチを複数種の制御対象群に対応できるよう複数個備え、
前記複数のロータリスイッチの固定接点接続端子のアドレスを同じくする接続端子同士が並列に接続され、かつ各々の前記各接続端子には抵抗を介して前記第2の電位H(又はL)が付与されており、
前記制御装置へ前記付与された電位情報が入力され、
前記各ロータリスイッチの可動接点接続端子にはダイオードを介して前記制御装置へ接続されると同時に、当該可動接点接続端子それぞれにアドレスが付与され、
前記ダイオードを導通させることによって前記制御装置がどのアドレスの可動接点接続端子に対応する前記ロータリスイッチが回動操作されたのかを検知し、検知されたロータリスイッチごとに対応する操作軸の回動方向を前記回動方向判別手段によって判別し、判別された回動方向に基づいて当該ロータリスイッチが担当する前記制御対象群における制御対象位置の切り替えと、選択された制御対象位置の表示切替を行うことを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.本発明の請求項1の発明によれば、
操作者によって回動操作される操作軸を中心とする円弧上に所定の角度αで等間隔に配設された少なくとも3個の固定接点接続端子と、前記操作軸によって前記所定の角度α間隔を保持して回動し、かつ回動したとき前記固定接点接続端子のいずれか1個と常に接続された状態となるよう操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点接続端子とで構成されたロータリスイッチと、前記ロータリスイッチの可動接点接続端子と各固定接点接続端子に接続され、制御装置の制御によって前記操作軸の回動方向を判別する回動方向判別手段とを備えているので、
従来のような、制御対象の数に応じてロータリスイッチの固定接点数を設ける必要がなく、少なくとも3個の固定接点接続端子と、前記固定接点接続端子のいずれか1個と常に接続された状態となるように可動接点接続端子の接点片の必要数を形成するだけの簡単な構造で必要とされるロータリスイッチが製作でき、低コストの回動方向判別機構付ロータリスイッチを構築することができる。
【0020】
そして、前記可動接点接続端子には第1の電位L(Low Level:低電位)〔又は電位H(High Level:高電位)〕が印加され、前記各固定接点の接続端子には抵抗を介して第2の電位H(又はL)が印加され、また前記各固定接点接続端子にはそれぞれのアドレスが付与され、前記操作軸の回動によって電位が第1の電位:L(又はH)に変化した前記固定接点接続端子のアドレスの配列から、前記回動方向判別手段によってロータリスイッチの回動方向を判別できることから、背景技術で示した特許文献1に記載された考案のように、ロータリスイッチの回動方向を検出するために、A相信号の立ち上がり時にB相信号がローレベルであればカウントアップし、逆にB相信号がハイレベルであればカウントダウンするといった複雑で精度を要する機構は不要となり、簡単な構造のロータリスイッチで回動方向の判別ができ、低コストで、かつ回動方向の判別をコンピュータで行うため、チャッタリング、及び回転速度等に起因する誤作動もない回動方向判別機構付ロータリスイッチが構築できる。
【0021】
さらに、前記固定接点を3個とすれば、該固定接点3個の接続端子と可動接点の接続端子から合計4本のみの接続線を前記制御装置に接続するのみで操作軸の回動方向の判別を行うことができるので、著しく配線数を削減でき、かつプリント配線基板等にロータリスイッチを組み込んだ場合には、従来は両面配線基板又は多重配線基板の使用が必要であったが、片面配線基板で製作可能になるため、容易にコスト低減ができる。
【0022】
2.本発明の請求項2の発明によれば、
請求項1の効果に加えて、前記ロータリスイッチに、前記操作軸の回動に連動する切替節度機構を備え、前記ロータリスイッチが、前記固定接点の所定の角度αの等間隔を保持して回動したとき、前記切替節度機構によるクリック感触手段を備えているので、接点の切替と操作者に対するクリック感触との連動性が確実に得られる。なお、この種の切替節度機構(クリック感触発生機構)は、前記した特許文献1に開示されたような既知の構造のものであってよい。
【0023】
3.本発明の請求項3の発明によれば、
請求項1及び2の効果に加えて、前記制御装置が、前記ロータリスイッチの回動によって選択される複数の回路、若しくは回路定数等の制御対象位置ごとにアドレスを付与し、前記ロータリスイッチの回動を検知して前記制御対象位置を順次切り替える制御対象切替手段と、前記制御対象位置を表示する表示手段と、前記制御対象切替手段によって切り替えられた前記制御対象位置のアドレスに連動して表示を切り替える表示切替手段と、前記制御対象切替手段によって切り替えられた前記制御対象位置を表示する表示手段を備えているので、前記ロータリスイッチの操作によって選択された回路、若しくは回路定数等の制御対象位置が順次表示され、選択しようとする制御対象位置に迅速かつ正確に切り替えることができる。
【0024】
また、前記制御対象位置のアドレスを記憶するメモリを備えているので、前記回動方向判別機構付ロタリスイッチを搭載した装置の電源がオフされているときに前記ロータリスイッチが回動されたとしても、電源オフ直前に選択された制御対象位置のアドレスは保存され、前記装置再起動時にその制御対象位置のアドレスをメモリから読み出すことによって選択されていた制御対象位置を再現できる。
【0025】
4.本発明の請求項4の発明によれば、
請求項3の効果に加えて、前記制御装置が、
前記ロータリスイッチの操作軸を反時計方向へ回動操作したとき、操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがデクリメント(又はインクリメント)する方向の制御対象位置に、前記制御対象切替手段によって当該制御対象を順次切り替え、
前記ロータリスイッチの操作軸を時計方向へ回動操作したとき、操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがインクリメント(又はデクリメント)する方向の制御対象位置に前記制御対象切替手段によって当該制御対象を切り替えられるので、
前記ロータリスイッチの操作軸を反時計方向、あるいは時計方向へ回動操作しても、瞬時に目的とする前記制御対象位置に切り替えられ、かつ切替操作に連動して、表示手段に位置表示されるので、効率よく切り替え操作を進めることができる。
【0026】
5.本発明の請求項5の発明によれば、
請求項3及び4の効果に加えて、前記制御装置が、前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを時計方向、又は反時計方向の回動回数に対応して追加することによって、前記制御対象位置数を任意に設定できるので、きわめて細やかな制御が可能となり、例えば、オーディオ装置の音量調整や音質調整等を可変抵抗器の可変操作と同等な感触で制御できる。
【0027】
6.本発明の請求項6の発明によれば、
請求項5の効果に加えて、前記制御装置によって前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを反時計方向、又は時計方向の回動回数に対応して追加したとき、
前記表示切替手段が、前記制御対象位置のアドレスに連動して、連続した明暗表示、前記アドレスに対応した任意の位置表示、又は数値表示等の位置表示を可能にしているので、操作軸を1回転を超える回動操作をしても的確に制御対象位置を容易に視認することができる。
【0028】
7.本発明の請求項7の発明によれば、
請求項1乃至6の効果に加えて、前記回動方向判別機構付ロータリスイッチが搭載された装置において、当該装置の電源がオフされた時、電源オフ直前に選択されていた前記制御対象位置のアドレスを前記メモリに記憶するので、当該装置の電源オフ時に前記制御対象位置を切り替えるロータリスイッチの操作軸を間違って回動したとしても、装置の電源をオンにして再起動させた時には電源オフ直前に記憶されたアドレスの前記制御対象位置を選択した状態で装置が作動し、かつ、表示手段によりそのポジション番号が表示されるので、効率よく作業を進めることができる。
【0029】
また、左右回動方向を瞬時に判別すると同時に、前記回路、若しくは回路定数等の制御対象位置の切り替え選択を全て前記制御装置の判断で行っているので、操作軸を回動させる操作速度の如何を問わず、誤作動なく的確に目的とする位置を選択することができる。
【0030】
8.本発明の請求項8の発明によれば、
請求項3乃至7の効果に加えて、操作軸を中心とする円弧上に沿って所定の角度αの等間隔で配設された少なくとも3個の固定接点と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したとき前記固定接点のいずれか1個と常に接続された状態となるよう操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点接続端子とで構成されたロータリスイッチを複数種の制御対象群に対応できるよう複数個備え、
前記複数のロータリスイッチの固定接点接続端子のアドレスを同じくする接続端子同士が並列に接続され、かつ各々の各接続端子には抵抗を介して電位H(又はL)が付与され、そして前記制御装置へその電位情報が入力され、また前記各ロータリスイッチの可動接点接続端子にはダイオードを介して前記制御装置へ接続されると同時にそれぞれにアドレスが付与され、
前記ダイオードを導通させることによって前記制御装置がどのアドレスの前記ロータリスイッチが回動操作されたのかを検知し、検知されたロータリスイッチごとに操作軸の回動方向を前記回動方向判別手段によって判別し、その回動方向に基づいて当該ロータリスイッチが担当する前記制御対象群における制御対象位置の切り替えと、選択された制御対象位置の表示切替が行えるよう構成されているので、
前記複数個のロータリスイッチの前記操作軸の回動方向を判別するとともに、それぞれの回動方向に基づいて前記制御対象群の切り替えと、前記制御対象位置の表示を各ロータリスイッチごとに制御することができる。
【0031】
そして、前記複数のロータリスイッチの固定接点のアドレスを同じくする接続端子同士が並列に接続されているので、複数個の前記ロータリスイッチを備えながら、ロータリスイッチの固定接点を制御装置に接続する配線は、前記複数のロータリスイッチの内最も固定接点数の多いものにあわせた本数でよく、また各可動接点の接続端子からの配線を制御装置の回路へ接続するだけで済むので、配線数の激減により回路の簡素化とコスト削減ができる。
【0032】
また、前記複数のロータリスイッチによる各制御対象群の切替操作等が、一つの制御装置の回動方向判別手段、制御対象切替手段、及び表示切替手段を共有して行え、ロータリスイッチのそれぞれに制御装置を備える必要が無くなり、回路の簡素化とコスト削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1を説明する回動方向判別機構付ロータリスイッチの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1における回動方向判別機構付ロータリスイッチの動作を説明するフローチャート。
【図3】本発明の実施例1における回動方向判別機構付ロータリスイッチの固定接点が3個のときの動作説明図。
【図4】本発明の実施例1における回動方向判別機構付ロータリスイッチの固定接点が4個のときの動作説明図。
【図5】本発明の実施例2を説明する回動方向判別機構付ロータリスイッチを複数個使用した構成における回動方向判別機構のブロック図。
【図6】本発明の実施例3を説明する複数個のエンドレス型ロータリスイッチと、回動範囲規制型ロータリスイッチ等を併用した回動方向判別機構のブロック図。
【図7】本発明の実施例4を説明する複数個のエンドレス型ロータリスイッチと、複数個の回動範囲規制型ロータリスイッチ等を接続した回動方向判別機構のブロック図。
【図8】回動方向判別機構付ロータリスイッチの従来例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態を、実施例の図面を用いて詳細に説明する。
図1乃至図7において、1は回動方向判別機構付ロータリスイッチ、2はロータリスイッチ、3は固定接点、A、B,Cは固定接点の接続端子、4は可動接点の接点片、5は操作軸、6は制御装置(コンピュータ装置)、7はメモリ、8は電源監視手段、9は表示手段、10は回動方向判別手段、10’は回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段、11は表示切替手段、12は演算手段、13は制御対象切替手段、14は制御対象切替ポジション群、15はダイオード、16、16a、16cは回動範囲規制型ロータリスイッチ、17、17a、17bは連動型プッシュスイッチ、18は制御対象(0番〜N番)、19、19’、19”、19a’、19b’、19c’は表示手段(0番〜N番)、20、20a、20b、20cは回動範囲規制型ロータリスイッチの制御対象群、21は連動型プッシュスイッチ制御対象群、G、G’、G”は可動接点の接続端子、K1〜Knは制御対象位置、P1〜P9は表示ランプ、S11〜S21はステップである。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明の実施例1を説明する回動方向判別機構付ロータリスイッチ1の構成を示すブロック図である。本実施例におけるロータリスイッチ2は、固定接点3が、操作軸5を中心とする円弧上に沿って30°の角度間隔で3個配設され、可動接点の接点片4が90°の角度間隔で前記操作軸5を中心として放射状に4片突設され、操作軸5を時計方向又は反時計方向のいずれかに回動しても前記可動接点の接点片4の1片が常に前記固定接点のいずれかと接続されている。
【0036】
そして本実施例の回動方向判別機構付ロータリスイッチ1は、前記ロータリスイッチ2と、該ロータリスイッチ2の各固定接点に接続する固定接点接続端子A、B、Cが接続されたコンピュータ装置で構成される制御装置6と、前記制御対象位置に付されたポジション番号のアドレスを記憶するメモリ7と、前記回動方向判別機構付ロータリスイッチが搭載された装置の電源のオンオフを監視する電源監視手段8と、現在選択されている制御対象位置がいずれであるかを表示する表示手段9(本実施例では表示ランプP1〜P9)とで構成されている。
【0037】
前記制御装置6は、前記ロータリスイッチ2の操作軸の回動方向を判別するハードウエアとしての演算手段12(マイクロコンピュータ:マイコンで構成される)と、回動方向判別手段10、前記ロータリスイッチ2によって選択された複数の回路の切り替え、若しくは回路定数等の制御対象の制御対象切替ポジション群14(本実施例では、ポジションK1〜K9)を切替制御する制御対象切替手段13、及び前記制御対象の切替ポジション群14の数に対応し、前記制御対象位置に対応して表示ランプ位置(本事例では、表示ランプP1〜P9)を切替制御する表示切替手段11、及び演算手段12内の各ソフトウエアで構成されている。
【0038】
前記ロータリスイッチ2の可動接点の接続端子Gは制御装置6のグラウンド(GND(L)/接地)に接続されて常に電位L(Low Level)であり、前記制御装置6に接続された前記各固定接点3の接続端子A、B、Cにはそれぞれアドレスが付与され、電源VCCから抵抗を介して電位H(High Level)が印加されている。
【0039】
前記各固定接点3の接続端子A、B、Cは、前記演算手段12によってその電位変化が監視され、前記ロータリスイッチ2の操作軸5の回動によって可動接点片4と接続して電位がLに変化した固定接点の接続端子のアドレスの配列が、A→B、B→C、C→Aであれば左回り(反時計方向)、その逆でA→C、C→B、B→Aであれば、右回り(時計方向)の回動と、前記回動方向判別手段10によって判別している。
【0040】
本発明の回動方向判別機構付ロータリスイッチ1の動作の詳細を、図1の構成図、及び図2に実施例として示したフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
前記回動方向判別機構付ロータリスイッチ1は、ロータリスイッチ2に電源が供給されることによってその動作が「Start」する。
【0042】
「Start」後、まずステップS11で、前回電源オフ時に選択され、メモリ7に記憶されていた制御対象位置のアドレスがメモリ7から演算手段12に読み込まれ、それに伴って表示手段9の表示ランプP1〜P9の内、演算手段12にそのアドレスが読み込まれた制御対象位置に対応する表示ランプが点灯する。
演算手段12には、ダウンカウンタやタイマーが設けられている。
【0043】
次いでステップS12として、ロータリスイッチ2の3つの固定接点の接続端子A、B、Cの内、電源投入時に電位がLとなっている固定接点3の接続端子のアドレスが演算手段12に読み込まれる。
【0044】
続くステップS13では、前記ロータリスイッチ2の各固定接点3の接続端子のアドレス、制御対象ポジション群14の各制御対象位置に付与されたポジション番号のアドレス等を演算手段12に読み込む際の切替タイミング用として、カウント度数が減っていく前記ダウンカウンタの「タイマー設定」が前記タイマーに対して行われる。
【0045】
前記タイマーは、ロータリスイッチ2の急激な回動にも追従できるようその時間間隔は1msec〜10msec程度の値(本事例では、2msec)に設定される。
【0046】
次のステップS14は、演算手段12が電源の状態を監視する電源監視手段8を介してロータリスイッチ2への電源が遮断されたか否かを確認するステップであり、「電源切断?」に「No」であれば、次ステップS15へ進む。
【0047】
そして「電源切断?」が「Yes」ならば、ステップS21へ進み、その時点で選択されていた前記制御対象位置のポジション番号のアドレスをメモリ7に書き込んで動作を終了する。
【0048】
ステップS15は、先に設定したタイマーでのダウンカウンタの作動が終了しているか否かをチェックするステップであり、「タイマー終了?」が「Yes」であれば、ステップS16「タイマー設定」へ進み、「No」であればステップS14に戻り、ステップS14とステップS15とを繰り返えす。
【0049】
ステップS16「タイマー設定」では、ステップS15でタイマーの動作が終了していることが確認されたことにより、前記した時間にタイマーの再設定が行われる。
【0050】
ステップS17は、前記ロータリスイッチ2の3つの固定接点3の接続端子A、B、Cの電位に変化があったかどうかを前記回動方向判別手段10で検知させるステップであり、「Yes」であればステップS18へ進み、「No」であれば、ステップS14へ戻る。
【0051】
ステップS18は、電位変化した固定接点3の接続端子に付されたアドレスの配列によってロータリスイッチ2の回動方向が左回り(反時計方向)だったのか、右回り(時計方向)だったのかを、回動方向判別手段10で判別させるステップである。
【0052】
電位がLに変化した固定端子3の接続端子の移動方向が、「接続端子の電位変化はA→B、B→C、C→Aの左回り(反時計方向)か?」に対して「Yes」であればステップS19へ進み、「No」であれば右回り(時計方向)と判別してステップS20に進む。
【0053】
ステップS19では、前記ロータリスイッチ2の操作軸5を左回り(反時計方向)へ回動操作したとき、前記直前に選択されていた前記制御対象位置のポジション番号からポジション番号が減少(デクリメント)する方向に前記制御対象切替手段13の制御によって制御対象位置の切り替えが行われる。
【0054】
例えば、直前に選択されていた制御対象位置のポジション番号がK1であったとすれば、ロータリスイッチの操作によって制御対象位置はそのポジション番号K1からKn(本実施例の場合はK9)の制御対象位置へ切り替わり、以降はポジション番号が順次減少する方向(K9→K8→K7・・・)で切り替わっていく。これと同時に、表示手段9も選択された制御対象位置を示すものに切り替えられる。
【0055】
制御対象ポジション群14における制御対象位置の切り替え、及び表示手段9の切り替えが終了すると、ステップS14へ戻り、次にロータリスイッチが回動されるまでスタンバイ状態となる。
【0056】
ステップS18で、左回り(反時計方向)が「No」と判断された場合は、ステップS20へ進む。
【0057】
ステップS20では、前記ロータリスイッチ2の操作軸5を右回り(時計方向)へ回動操作したことに応じて、前記直前に選択されていた前記制御対象位置のポジション番号からポジション番号が増加(インクリメント)する方向に前記制御対象切替手段13の制御によって制御対象位置の切り替えが行われる。
【0058】
例えば、直前に選択されていた制御対象位置のポジション番号がKn(本実施例の場合はK9)であったとすれば、ロータリスイッチの操作によって制御対象位置はそのポジション番号KnからK1の制御対象位置へ切り替わり、以降はポジション番号が順次増加する方向(K9→K1→K2→K3→・・・)で切り替わっていく。これと同時に、表示手段9も選択された制御対象位置を示すものに切り替えられる。
【0059】
制御対象ポジション群14における制御対象位置の切り替え、及び表示手段9の切り替えが終了すると、ステップS14へ戻り、次にロータリスイッチが回動されるまでスタンバイ状態となる。
【0060】
本回動方向判別機能付ロータリスイッチ1の動作終了は、ロータリスイッチ2への電源供給をオフすることによって行われ、電源がオフされると、ステップS14で、演算手段12が電源監視手段8を介して「電源切断?」に対して[Yes]の判断を行いステップ21へ進む。
【0061】
ステップ21では、電源監視手段8が、電源スイッチがオフとされたことを検知し、電源が切断される直前に選択されていた制御対象位置のポジション番号のアドレスを演算手段12によってメモリ7へ書き込み、所定時間後に完全に電源をオフとし、「END」とする。
【0062】
本実施例1のロータリスイッチ2は、固定接点3が、操作軸5を中心とする円弧上に沿って角度30°間隔で3個配設され、可動接点の接点片4が、角度90°の間隔で、前記操作軸5を中心として放射状に4片の接点が突設されている例で、前記制御対象切替手段13によって切り替えられる制御対象ポジション群14に含まれる制御対象位置数は12以上(本例ではK1〜K9)となる。その具体的な配置のバリエーションを図3及び図4で説明する。
【0063】
図3に、前記固定接点3を操作軸5を中心とする円弧上に沿って所定の角度間隔で3個配設したロータリスイッチ2において、固定接点3の角度間隔と、可動接点の接点片4の数の相互関係が比較的簡単で製造しやすいものの例を示す。
(a)〜(f)は固定接点3が15°〜60°の角度間隔で、可動接点の接点片4の数を変化させた場合である。
(g)〜(i)は固定接点3が120°の角度間隔で、可動接点の接点片4の数を変化させた場合である。
【0064】
いずれの場合も、操作軸5を回動したとき可動接点片の一つが常に固定接点と接触している。また、制御対象切替ポジション群14の数は任意に設定できる。 すなわち、
図3(a)は固定接点間隔が15°で、可動接点の接点片が45°で8個のもの、
図3(b)は固定接点間隔が20°で、可動接点の接点片が60°で6個のもの、
図3(c)は固定接点間隔が24°で、可動接点の接点片が72°で5個のもの、
図3(d)は固定接点間隔が30°で、可動接点の接点片が90°で4個のもの、
図3(e)は固定接点間隔が40°で、可動接点の接点片が120°で3個のもの、
図3(f)は固定接点間隔が60°で、可動接点の接点片が180°で2個のもの、
図3(g)は固定接点間隔が120°で、可動接点の接点片が90°で4個のもの、
図3(h)は固定接点間隔が120°で、可動接点の接点片が180°で2個のもの、
図3(i)は固定接点間隔が120°で、可動接点の接点片が360で1個のものである。
上記図3(g)、(h)、(i)において、固定接点3の角度を120°間隔で配設すると、固定接点間の距離が開くことによりロータリスイッチ2のより小型化を図ることができる。
しかし、これに限定されることなく、所望の固定接点3の角度間隔と可動接点の接点片数を設定することも可能である。
【0065】
図4に、前記固定接点3を操作軸5を中心とする円弧上に所定の角度間隔で4個配設したロータリスイッチにおいて、固定接点3の角度間隔と、可動接点の接点片4の数の相互関係が比較的簡単で製造しやすいものの例を(a)〜(e)に示した。いずれの場合も、操作軸を回動したとき可動接点片の一つが常に固定接点と接触している。また、制御対象切替ポジション群14の数は任意に設定できる。すなわち、
図4(a)は固定接点間隔が15°で、可動接点の接点片が60°で6個のもの、
図4(b)は固定接点間隔が18°で、可動接点の接点片が72°で5個のもの、
図4(c)は固定接点間隔が22.5°で、可動接点の接点片が90°で4個のもの、
図4(d)は固定接点間隔が30°で、可動接点の接点片が120°で3個のもの、
図4(e)は固定接点間隔が45°で、可動接点の接点片が180°で2個のものである。
しかし、これに限定されることなく、所望の固定接点3の角度間隔と可動接点の接点片数を設定することができる。
【0066】
前記ロータリスイッチ2には、前記固定接点3の所定の角度αの等間隔を保持して回動したとき図示しない公知の切替節度機構によるクリック感触手段を備えている。
【0067】
前記ロータリスイッチの回動によって選択される複数の回路、若しくは回路定数等の制御対象としては、本回動方向判別機構付ロータリスイッチ1が搭載された装置の入・出力回路の切り替え、ローパスフィルタやバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタ等の選択切替、高・中・低音等の音質調整回路の選択切替、音量の制御等多岐にわたる。
【0068】
前記ロータリスイッチ2の接点切替のタイミングは、ブレーク・ビフォア・メーク方式でも、メーク・ビフォア・ブレーク方式でも構わない。
【0069】
前記ロータリスイッチ2がエンドレスに回動するする場合は、前記制御装置6が、前記ロータリスイッチ2の回動数をカウントし、前記制御対象位置K1〜K9のアドレスを時計方向、又は反時計方向の回動回数に対応して追加し、前記制御対象位置数をK1〜Knの任意数に設定できるので、きわめて細やかな制御が可能となり、例えば、オーディオ装置の音量調整や音質調整等を可変抵抗器の可変操作と同等な感触で制御できる。
【0070】
また、前記制御装置6によって前記ロータリスイッチ2の回動数をカウントし、前記制御対象位置K1〜K9のアドレスを時計方向、又は反時計方向の回動回数に対応してK1〜Knに追加したとき、前記表示切替手段11が、前記制御対象位置K1〜Knのアドレスに連動して、前記ロータリスイッチ2の回動に対応するように連続した明暗表示、あるいは前記ロータリスイッチ2の回動に対応するように前記アドレスに対応した任意の位置表示、又は液晶等の表示器による数値表示等の位置表示を可能にしている。操作軸5を1回転超えて回動操作しても上記表示を行えば的確に制御対処位置を容易に視認することができる。
【実施例2】
【0071】
本発明のロータリスイッチ2を複数個使用した回動方向判別機構付ロータリスイッチ1の実施例2について、図5のブロック図に基づいて説明する。
図5に示す本発明の実施例2では、0番〜N番の複数個のエンドレス型ロータリスイッチ2と、各エンドレス型ロータリスイッチ2に対応する0番〜N番の複数の制御対象群18と、それぞれの制御対象ポジション群14の中からいずれの制御対象位置(K1〜Kn)が選択されているかを表示する0番〜N番の複数の表示手段19と、回動方向判別手段10、表示切替手段11、制御対象切替手段13の演算手段12内のソフトウエア、及びハードウエアとしての演算手段12を備えた制御装置6と、メモリ7、及び電源監視手段8とで構成されている。
【0072】
各エンドレス型ロータリスイッチ2の並列接続された固定接点の接続端子A、B、Cは、演算手段12のI/Oポートへ接続され、かつプルアップ抵抗Rを介して電源VCCに接続されている。
【0073】
また、各エンドレス型ロータリスイッチ2の可動接点接続端子Gは、ダイオード15を介してそれぞれ演算手段12のI/Oポートへ接続されている。
【0074】
そして、前記各エンドレス型ロータリスイッチ2の操作によって、それぞれが対応する制御対象群18(0番〜N番)に含まれる制御対象位置の選択と、表示手段19(0番〜N番)の切替とを、制御装置6を介して行えられるよう構成されている。
【0075】
いま、番号0が付されたエンドレス型ロータリスイッチ2(以下0番ロータリスイッチと記し、他も同様にN番ロータリスイッチ等と記す)が回動されると、該0番ロータリスイッチが接続された演算手段12のI/Oポートの入力位置を認識し、図2に示したフローチャートにしたがって、回動方向判別手段10、制御対象切替手段13、及び表示切替手段11が所定どおり作動する。
【0076】
そして、0番〜N番ロータリスイッチ2のいずれかが複数個同時に回動されても、各ロータリスイッチ2の可動接点の接続端子Gのそれぞれが接続された演算手段12のI/Oポートの入力位置を認識し、図2に示したフローチャートにしたがって、回動方向判別手段10、制御対象切替手段13、及び表示切替手段11を所定どおり作動する。
【0077】
ダイオード15は、そのアノード側が各ロータリスイッチ2の可動接点接続端子Gに接続され、カソード側は演算手段12のそれぞれのI/Oポートの入力に接続され、0番〜N番のいずれか一つ目的のエンドレス型ロータリスイッチ2の回動を判断するためと演算手段12の保護用として作動する。
回動を判断する演算手段12のI/Oポートの電位をLにし、その他の演算手段12のI/Oポートの電位をHにすると、その他のロータリスイッチには電流が流れず回路的に切り離されるため、演算手段12が目的のエンドレス型ロータリスイッチ2の回動のみを認識することができる。
【0078】
ダイオード15を挿入しないと正常に動作しないばかりか、複数個のエンドレス型ロータリスイッチ2の固定接点の接続端子A、B、Cのいずれか同一の固定接点3の、例えば、0番のロータリスイッチ2の固定接点3の端子Aと、1番のロータリスイッチ2の固定接点3の端子Aが同時にそれぞれの可動接点片4と接続され、かつ演算手段12によって0番のロータリスイッチ2の回動接点の接続端子Gに電位Lが選択され、1番のロータリスイッチ2の回動接点の接続端子Gに電位Hが選択されると、1番のロータリスイッチ2の回動接点に接続されている演算手段12のI/Oポートから、0番のロータリスイッチ2の回動接点に接続されている演算手段12のI/Oポートへ大きな電流が流れるルートが形成され演算手段12が破損するため、ダイオード15が電流阻止用として作用する。
【0079】
前記複数のエンドレス型ロータリスイッチ2は、制御装置6に備えられた1個の回動方向判別手段10、1個の制御対象切替手段13、1個の表示切替手段11を共有し、前記複数の各エンドレス型ロータリスイッチ2の操作は、1個(又は、必要に応じて複数個)の演算手段12によって、その回動方向が認識され、制御対象群に含まれた制御対象位置の選択と、表示手段9の切替が実行される。
したがって、0番〜N番の各ロータリスイッチ2のそれぞれに回動方向判別手段10、制御対象切替手段13及び表示切替手段11を配設する必要はない。
【0080】
その他の構成、作用は実施例1に準ずる。
【実施例3】
【0081】
図7は、本発明の実施例3を説明するブロック図である。
本実施例は、図6のブロック図に示すように、前記ロータリスイッチ2(後述する回動範囲規制型のロータリスイッチと区別するため以後エンドレス型ロータリスイッチと記す)複数個と、回動範囲規制型のロータリスイッチ16、連動型(又は、複数のタクトスイッチ)プッシュスイッチ17の各1個を併用した回動方向判別機構付ロータリスイッチ1である。
【0082】
したがって、各エンドレス型ロータリスイッチ2に対応する複数の制御対象群18(0番〜N番)、回動範囲規制型ロータリスイッチの制御対象群20、連動型プッシュスイッチの制御対象群21と、それぞれの制御対象群の中から選択された制御対象位置のいずれかを表示する表示手段19(0〜N)、19’、19”と、
演算手段12内のソフトウエアとしての回動方向判別手段10、回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段10’、表示切替手段11、制御対象切替手段13と、及びハードウエアとしての演算手段12を備えた制御装置6と、メモリ7、及び電源監視手段8とで構成されている。
【0083】
前記回動範囲規制型ロータリスイッチ16の固定接点の接続端子A、B、Cは、前記各エンドレス型ロータリスイッチ2の固定接点の接続端子A、B、Cと並列接続され、可動端子G’はダイオード15を介して演算手段12のI/Oポートに接続される。
【0084】
前記回動範囲規制型ロータリスイッチ16は、3個の固定接点3と1個の可動接点で構成され、3個の固定接点間を可動接点が往復回動するものであり、前記固定接点の切り替えに伴う回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段10’の制御によって回動範囲規制型ロータリスイッチの制御対象群20に含まれる3つの制御対象位置の選択が行われる。
【0085】
本実施例における連動型プッシュスイッチ17は、3個のプッシュスイッチからなる3連式のプッシュスイッチ(又は、複数のタクトスイッチ)であって、その一方の端子には、前記ロータリスイッチ2の各固定端子に電源VCCからプルアップ抵抗Rを介して印加された電位が供給され、他方の接点は並列接続され、その接続端子G”はダイオード15を介して演算手段12のI/Oポートに接続されている。
【0086】
前記連動型プッシュスイッチ17は、そのいずれか一つのプッシュスイッチが導通状態になることによって、連動型プッシュスイッチの制御対象群21に含まれる3つの制御対象アイテムから、そのスイッチに対応した制御対象アイテムを選択し表示する。
【0087】
前記回動範囲規制型のロータリスイッチ16の各固定端子、及び前記連動型プッシュスイッチ17の電源VCCからプルアップ抵抗Rを介して電位が印加された各端子は、それぞれに付与されたアドレスで判断されるため、回動方向判別手段10は関与せず、回動範囲規制型のロータリスイッチ16の可動接点のいずれか、又は前記連動型プッシュスイッチ17のいずれのスイッチの接点が電位Lになったかを検知し、前記回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段10’、及び表示切替手段11により制御対象の選択と表示手段19’、19”の切り替えを行う。
【0088】
電流阻止用としてダイオード15の作用は実施例2と同様であり、その他の構成、作用は実施例1に準ずる。
【実施例4】
【0089】
図7は、本発明の実施例4を説明するブロック図である。
本実施例は、複数個のエンドレス型ロータリスイッチ2(0番〜N番)と、複数個の回動範囲規制型のロータリスイッチ16と、複数個の連動型プッシュスイッチ(又は、複数のタクトスイッチ)17を併用した回動方向判別機構付ロータリスイッチである。
【0090】
本実施例では、
(a)0番〜N番を付した複数のエンドレス型ロータリスイッチ2と、これに対応する0番〜N番の制御対象群18、及び0番〜N番の表示手段19と、
(b)固定接点をそれぞれ2つ、3つ、及び5つ備えた3個の回動範囲規制型ロータリスイッチ16a、16b、16cと、これに対応する各回動範囲規制型ロータリスイッチ制御対象群20a、20b、20cと、各制御対象群20a、20b、20cに含まれる制御アイテム数に対応した表示手段19a’、19b’、19c’と、
(c)4接点及び5接点の連動型プッシュスイッチ17a、17bと、各連動型プッシュスイッチ制御対象21と、各制御対象群21に含まれる制御アイテム数に対応した表示手段19”と、
(d)演算手段12内のソフトウエアとしての回動方向判別手段10、表示切替手段11、回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段10’、及びハードウエアとしての演算手段12を備えた制御装置6と、メモリ7と、電源監視手段8とで構成されている。
【0091】
(a)の前記0〜N個のエンドレス型ロータリスイッチ2と、前記制御装置6との接続及び作用は実施例2と同様であり説明を割愛する。
【0092】
(b)固定接点を2つ備えた回動範囲規制型のロータリスイッチ16aの固定接点の接続端子A、Bは、前記エンドレス型ロータリスイッチ2の固定接点の接続端子A、Bと並列接続されている。
【0093】
また、固定接点を3つ備えた回動範囲規制型ロータリスイッチ16の固定接点の接続端子A、B、Cは、前記エンドレス型ロータリスイッチ2の固定接点の接続端子A、B、Cと並列接続されている。
【0094】
そしてまた、固定接点を5つ備えた回動範囲規制型のロータリスイッチ16bの固定端子A、B、Cは前記エンドレス型ロータリスイッチ2の固定端子A、B、Cと並列接続され、増設された固定端子D、Eはそれぞれアドレスが付与され、同様に増設されたプルアップ抵抗Rを介してそれぞれ電源VCCに接続されている。
【0095】
(c)の4接点連動型プッシュスイッチ17の固定接点の接続端子A、B、Cは前記エンドレス型ロータリスイッチ2の固定端子A、B、Cと並列接続され、増設された固定端子Dはアドレスが付与され、同様に増設されたプルアップ抵抗Rを介してそれぞれ電源VCCに接続されている。
【0096】
また、5接点の連動型プッシュスイッチ17の固定接点の接続端子A、B、Cは前記エンドレス型ロータリスイッチ2の固定接点の接続端子A、B、Cと並列接続され、増設された固定端子D、Eはそれぞれアドレスが付与され、同様に増設されたプルアップ抵抗Rを介してそれぞれ電源VCCに接続されている。
【0097】
さらに、前記各回動範囲規制型のロータリスイッチ16a、16b、16c、及び各連動型プッシュスイッチ17a、17bの各可動接点の接続端子G’、G”は、各々ダイオード15を介して演算手段12のそれぞれのI/Oポートに接続されている。
【0098】
前記各回動範囲規制型のロータリスイッチ16a、16b、16cの各固定接点の接続端子A、B、C、D、E、及び前記各連動型プッシュスイッチ17a、17bの電位が印加された接点の接続端子A、B、C、D、Eは、これら端子に付与されたアドレスを演算手段12で読みとって判別されるため、回動方向判別手段10は関与せず、各スイッチの操作によって電位がLになった接続端子がA、B、C、D、Eのいずれなのかを演算手段12が検知し、前記回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段10’、及び表示切替手段11により制御対象アイテムの選択と、表示手段の切り替えが行われる。
【0099】
電流阻止用としてダイオード15の作用は実施例2と同様であり、その他の構成、作用は実施例1に準ずる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
操作軸を中心とする円弧上に所定の角度α間隔で配設された少なくとも3個の固定接点と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したとき前記固定接点のいずれか1個と常に接続された状態となるよう操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点とで構成されたロータリスイッチと、前記ロータリスイッチの可動接点接続端子と各固定接点接続端子に接続され、コンピュータの制御によって前記操作軸の回動方向を判別する回動方向判別手段とを備えているので、
例えば、オーディオ装置において、装置の入・出力回路の切り替え、ローパスフィルタやバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタ等の選択切替を24ステップのロータリスイッチで行う必要がある場合でも、前記ロータリスイッチの固定接点は、角度間隔15°で配設された3個を要するのみであり、また前記可動接点も前記回動軸を中心として放射状に突設された8つの接点片を備えたのみの簡単な構造で済むので、配線数の減少とも相まって低コストの回動方向判別機構付ロータリスイッチが構築できる。
【0101】
したがって、従来例で示したように、ロータリスイッチの回動方向を検出するために、A相信号の立ち上がり時にB相信号がローレベルであればカウントアップし、逆にB相信号がハイレベルであればカウントダウンして回動方向を検出するというような複雑で精度を要する機構は不必要である。
また、簡単な回動方向検出方式であるため低コストで提供でき、かつ、コンピュータを用いた制御装置による制御であるためチャッタリング及び回転速度等に起因する誤作動の発生がない回動方向判別機構付ロータリスイッチを構築することができる。
【0102】
なお、本発明は、各種装置に搭載し、その装置の入・出力回路の切り替え、ローパスフィルタやバンドパスフィルタあるいはハイパスフィルタ等の選択切替、オーディオシステムにおける高・中・低音等の音質調整回路の選択切替、音量の制御切り替え、オーディオ・ビデオシステムにおける上記音響諸元の切替え、映像・画像モードの切り替え等、多岐にわたる技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1:回動方向判別機構付ロータリスイッチ
2:ロータリスイッチ
3:固定接点
4:可動接点の接点片
5:操作軸
6:制御装置
7:メモリ
8:電源監視手段
9:表示手段
10:回動方向判別手段
10’:回動範囲規制型ロータリスイッチ、及び連動型プッシュスイッチの切替判別手段
11:表示切替手段
12:演算手段
13:制御対象切替手段
14:制御対象切替ポジション群
15:ダイオード
16、16a、16b、16c:回動範囲規制型ロータリスイッチ
17、17a、17b:連動型プッシュスイッチ
18:制御対象群(0番〜N番)
19、19’、19”、19a’、19b’、19c’:表示手段
20、20a、20b、20c:回動範囲規制型ロータリスイッチの制御対象群
21、20a、20b、20c:連動型プッシュスイッチの制御対象群
A、B,C、D、E:固定接点の接続端子
G、G’:可動接点の接続端子
G”:連動型プッシュスイッチの共通接点
K1〜K9:制御対象位置
P1〜P9:表示ランプ
S11〜S21:ステップ
103:従来例におけるコード板
104a、104b、104c:従来例における摺動子片
115:従来例における可動接点
115a:従来例におけるコモン電極
115b:従来例における櫛歯部
116、119:従来例における摺動板
118:従来例における欠落部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作で回動される操作軸を中心とする円弧上に沿って、所定の角度αで等間隔に配設された少なくとも3個の固定接点を持つ固定接点接続端子と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したときに前記固定接点のいずれか1個と常に接続された状態となるように前記操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点を持つ可動接点接続端子とを有するロータリスイッチと、
前記ロータリスイッチの前記可動接点接続端子と前記各固定接点接続端子に接続され、制御装置の制御によって前記操作軸の回動方向を判別する回動方向判別手段とを備えてなり、
前記可動接点接続端子には第1の電位L(又はH)が印加され、前記制御装置に接続された前記各固定接点接続端子には抵抗を介して第2の電位H(又はL)が印加され、また前記各固定接点の接続端子にはそれぞれのアドレスが付与されており、前記操作軸の回動によって電位が第1の電位(又は第2の電位)L(又はH)に変化した前記固定接点接続端子の前記アドレスの配列に基づいて、前記回動方向判別手段によって前記ロータリスイッチの回動方向を判別することを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロータリスイッチに、前記操作軸の回動に連動する切替節度機構を備え、前記ロータリスイッチが、前記固定接点の所定の角度αの等間隔を保持して回動されたときに、前記操作者にクリック感触を与えることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御装置は、
前記ロータリスイッチの回動によって選択される複数の回路、若しくは回路定数等の制御対象位置ごとにアドレスを付与し、前記ロータリスイッチの回動を検知して前記制御対象位置を順次切り替える制御対象切替手段と、
前記制御対象位置を表示する表示手段と、
前記制御対象切替手段によって切り替えられた前記制御対象位置のアドレスに連動して、対応する制御対象を示す表示を切り替える表示切替手段と、
前記制御対象位置のアドレスを記憶するメモリと、
を備えてなることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御装置に有する前記制御対象切替手段は、
前記ロータリスイッチの操作軸が反時計方向へ回動操作されたとき、当該操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがデクリメント(又はインクリメント)する方向の制御対象位置に当該制御対象を順次切り替え、
前記ロータリスイッチの操作軸が時計方向へ回動操作されたとき、当該操作直前に選択されていた前記制御対象位置からアドレスがインクリメント(又はデクリメント)する方向の制御対象位置に当該制御対象を切り替えることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記制御装置は、
前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを時計方向、又は反時計方向の回動回数に対応して追加し、前記制御対象位置数を任意に設定できることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御装置によって前記ロータリスイッチの回動数をカウントし、前記制御対象位置のアドレスを反時計方向、又は時計方向の回動回数に対応して追加したとき、
前記表示切替手段が、前記制御対象位置のアドレスに連動して、連続した明暗表示、前記アドレスに対応した任意の位置表示、又は数値表示等の位置表示を可能にすることを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいづれか1項に記載の回動方向判別機構付ロータリスイッチが搭載された装置の電源がオフされた時、電源オフ直前に選択されていた前記制御対象位置のアドレスを前記メモリに記憶することを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記操作軸を中心とする円弧上に沿って所定の角度αで等間隔に配設された少なくとも3個の固定接点と、前記操作軸によって前記所定の角度αの等間隔を保持して回動し、かつ回動したとき、前記固定接点接続端子のいずれか1個と常に接続された状態となるよう前記操作軸を中心として放射状に突設された複数の接点片からなる可動接点接続端子とで構成されたロータリスイッチを複数種の制御対象群に対応できるよう複数個備え、
前記複数のロータリスイッチの固定接点接続端子のアドレスを同じくする接続端子同士が並列に接続され、かつ各々の前記各接続端子には抵抗を介して前記第2の電位H(又はL)が付与されており、
前記制御装置へ前記付与された電位情報が入力され、
前記各ロータリスイッチの可動接点接続端子はダイオードを介して前記制御装置へ接続されると同時に、当該可動接点接続端子それぞれにアドレスが付与され、
前記ダイオードを導通させることによって前記制御装置がどのアドレスの可動接点接続端子に対応する前記ロータリスイッチが回動操作されたのかを検知し、検知されたロータリスイッチごとに対応する操作軸の回動方向を前記回動方向判別手段によって判別し、判別された回動方向に基づいて当該ロータリスイッチが担当する前記制御対象群における制御対象位置の切り替えと、選択された制御対象位置の表示切替を行うことを特徴とする回動方向判別機構付ロータリスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37782(P2013−37782A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170472(P2011−170472)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(391030583)アキュフェーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】