説明

回復能を有する再プログラムされた細胞の作製

細胞及び/又は核移植ユニット及び/又は幹細胞を、培養においてそのような化合物を個々に若しくは組合せで用いて処理する方法が記述されている。その方法により、ゲノムは包括的に低メチル化され、細胞の分化及び/又は発生能若しくは可能性は回復される。さらに、ゲノムを脱メチル化することにより回復された分化能(全能性、多能性、又は多分化能性)を得た再プログラムされた細胞をin vitroで作製する方法が記述されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、細胞生物学、幹細胞、細胞分化、体細胞核移植、及び細胞を基にした薬物療法学の分野に関する。より明確には、本発明は、細胞再プログラミング及び細胞を基にした薬物療法学のための方法並びに生成物に向けられている。単離及び培養の方法、並びに、単離された細胞の治療用途も提供されている。
【背景技術】
【0002】
最近の食餌研究により、メチル基供与体の状態、一炭素代謝、及びDNAメチル化の間における相互作用が説明されてきた[1〜12]。DNAメチル化は、発生の状態及び分化能に関与している[13〜19]。さらに、体細胞核移植(SCNT)により誘導された再プログラミング及び通常の受精と関連した再プログラミングのための明確な必要条件は、DNA脱メチル化である[20]。これに関しては、以下の背景技術により検討されている。
【0003】
多細胞生物の発生の間、細胞及び組織によって、得られる遺伝子発現のプログラムは異なる。これらの異なる遺伝子発現パターンは、DNAメチル化、ヒストン修飾、及び種々のクロマチン結合蛋白質等のエピジェネティックな修飾により実質的に調節されているように思われる[21、22]。このように、多細胞生物内の各細胞型は、細胞が分化する又は細胞周期を抜けると「確定」になると考えられている特有のエピジェネティックな特徴を有している。
【0004】
しかし、一部の細胞は、正常な発生又はある種の疾患状態中に、主要のエピジェネティックな「再プログラミング」を行う。再プログラミングは、核におけるエピジェネティックマークの除去を必要とし、その後、異なるマークの確立が起こる[23〜25]。例えば、受精時に、配偶子のエピジェネティックマークが消去され、分化全能性及び胚発生に必要とされる胚のマークと置き換えられる。再プログラミングは、親由来のインプリントが消去され、分化全能性を回復する始原生殖細胞においても起こる。癌細胞及び分化転換する細胞も、再プログラミングを行うと考えられている。最後に、劇的な再プログラミングは、生殖クローニング及び幹細胞治療の目的のために、SCNTに続いて必要とされる[26〜33]。
【0005】
最近では、正常発生及びSCNTにおけるエピジェネティックな再プログラミングに対する新たな見識が得られてきた。再プログラミングの機構及び必要とされる因子に対する見識は未だに基本的であるが、基礎知識は、今や、より詳細な概念を発展することができ、新規の商業的機会を提供するであろう機械論的な態様を調査するために新規の実験的アプローチを考案できる段階に達している。in vivo(受精及び胚形成)及びin vitroにより誘導されたSCNT再プログラミングの簡潔な要約は以下に続く。
【0006】
エピジェネティックな再プログラミング及び発生
In Vivo再プログラミング−受精:
DNAメチル化:マウスでは、受精時に、親ゲノムは、独特なエピジェネティックマーク及びクロマチン組織を有する種々の細胞周期の段階にある。成熟した精子により伝えられた父系ゲノムは、単一のコピーであり、プロタミンと共に密に凝縮されている。母系のゲノムは、中期IIで止められ、その2つのコピーゲノムがヒストンと共に凝縮されている。受精の際、プロタミンはヒストンに置き換えられ、母系ゲノムは減数分裂を完了する。ヒストン獲得後、親ゲノムは、間接的な免疫蛍光検査[34]及び重亜硫酸塩のシークエンシング[35]により検出されるように、ゲノム全体にわたるDNAメチル化の喪失を受ける。DNA複製が親の前核で始まる前に、脱メチル化は完了する。しかし、ゲノムの全領域がこの段階で脱メチル化されるわけではないことに注目すべきである。卵母細胞の細胞質は、精子のクロマチンにおける特定の配列種類を特異的に標的にする又は除外する脱メチル化因子を含むと信じられている。
【0007】
ヒストン修飾:母系クロマチンは組織化され、DNAメチル化及びクロマチン修飾は受精時に豊富になる。これらは、活性及び抑圧的な状態に関連する核ヒストン修飾もクロマチン蛋白質も含む。例えば、主としてアセチル化リジン及びH3K4me等の活性な状態に関連するヒストン修飾は、女性の前核に存在している[34、36、37]。H3K9me2/3、H3K27me1、及びH4K20me3等の、主として抑圧的なクロマチン状態に関連する異質染色質の修飾も存在する。
【0008】
男性の前核に関連するヒストンは、非常にアセチル化されている[34、36]。しかし、ヒストンの取込み後すぐに、H3K4me1、H3K9me1、及びH3K27me1は検出可能である[37〜39]。これは、DNAメチル化が男性の前核内になお存在している場合に起こる。親ゲノムに起こっている進行性のヒストン修飾は、母系ゲノムと同等のクロマチン状態をおそらく生じている。
【0009】
着床前発生
受動的な脱メチル化:マウスでは、1つの細胞から胚盤胞期まで、包括的なDNAメチル化においてさらなる変化がある。DNAメチル化は卵割毎に次第に減少し、この喪失はDNA複製に依拠している[40、41]。卵母細胞から受け継いだDNMT1蛋白質であるDnmt1oは、始めの3つの卵割中に除外され[42、43]、受動機構によるメチル化の喪失の原因となる。
【0010】
ヒストン修飾:ヒストン修飾が受動DNA脱メチル化中に再プログラミングされる程度は、現在は明らかではない。
【0011】
エピジェネティックな非対称及び細胞系譜へのコミットメント
メチル化:哺乳動物の胚形成における最初の細胞系譜分配の事象は、桑実期で起こり、胚盤胞において内部細胞塊(ICM)及び栄養外胚葉(TE)を形成する。細胞運命決定の機構は、知られていない。興味深いことに、2細胞割球はまだ全能性であるが、第4細胞期までに(マウスにおいて)、細胞系譜バイアスは減少する全能性に基づいて存在する[44]。胚外細胞系譜と胚の細胞系譜のDNAメチル化における包括的な違いが検知され、その違いは、早くも、能動及び受動な脱メチル化の組合せがTEにおいてメチル化の低状態を生じる胚盤胞期で検知可能である。これとは対照的に、ICMでは、DNMT3bによりおそらく引き起こされる新規のメチル化のために、包括的なメチル化のレベルが増加される。そのDNMT3bは、新規のDNAメチルトランスフェラーゼであり、TEではなく胚盤胞ICMで検知可能である[34]。
【0012】
ヒストン修飾:マウスでは、ヒストンH3K9me3はICM内で異質染色質の病巣を標識し、H3K27me1、me2、及びme3はTEよりもICM内でより豊富である[38]。不活性なX染色体及び特定のインプリントされた領域は、H327me及びH3K9meによりTE内で標識される。通常、DNAメチル化のように、TEと比べてより高いレベルの特異的で抑圧的なヒストンメチル化マークがICM内でも発見される。このようにして、エピジェネティックな非対称は発生のために必要とされる。
【0013】
体細胞核移植:実験的にエピジェネティックマークを改変する1つの方法は、SCNT又はクローニングによるものである。SCNTでは、核DNA材料が除去されている(「除核」と呼ばれることが多い)卵母細胞環境において、分化した体細胞核が全能性の状態へと再プログラムされることが必要とされる。多様な種由来のクローン化された胚及び成体において調べられた全てのエピジェネティックマークは異常を示し、大部分のSCNT胚も所有する明確なエピジェネティック特性において互いに異なることから、SCNTにより誘導されたエピジェネティックな再プログラミングは、偶然で確率的な過程であると示されている[30〜33,45]。
【0014】
さらに、SCNT胚の発生は非常に変わりやすく、大多数が発生の全ての段階で死滅し、生き残っても種々の異常を有してしまう。後の妊娠の段階または期間まで発達したものの多くが、胎盤異常を有し、子宮外の生活に対する乏しい順応力から、相当な割合が周産期に死滅する。クローン化された動物の子孫は正常であると思われるため、大部分のクローンにおける発生上の問題は、おそらく、エピジェネティックな欠陥により引き起こされる。SCNT胚の発生の異常もエピジェネティックな異常も、調査されるのが早いほどより深刻な傾向があり、異常の少ないものが後の段階まで生き残る[46]。
【0015】
クローン化された子孫及びSCNT胚において記述されたエピジェネティックな欠陥には、X不活化[47、48]、インプリンティング[49〜51]、DNAメチル化(包括的な遺伝子座も特定の遺伝子座も)[36、47、52、53]、ヒストンアセチル化[43]、メチル化[43]、並びに、鍵となり多能性及び発生的に重要な遺伝子であるOct4の再活性化の失敗[55〜57]などを含む遺伝子発現の変化[54]における誤りが挙げられる。
【0016】
従って、SCNTにより誘導される再プログラミングは、少なくとも2つの重要な必要条件を有していると思われる。その条件とは、核蛋白質の除去及び体細胞DNAの脱メチル化であり、後者が最も重要であることは明らかである。例えば、ソモンソン(Somonsson)&ガードン(Gurdon)は、メチル化された体細胞核がマウス胸腺細胞からツメガエル卵母細胞に注入された場合、Oct4発現のかなりの遅れを観察した[20]。その遅れは、核が核移植に先だって除蛋白された場合に減少した。しかし、例えばバクテリアプラズミド等のメチル化されていないDNAが注入された場合、検知可能な遅れはなかった。これは、全ての抑圧的蛋白質が核から除去された場合に、実質的な遅れはなお起こり、DNAは、転写が続いて起きる前に、脱メチル化されなければならないことを示している。さらに、Dnmt1の低形質の対立遺伝子を使用して、ブレロッヒ(Blelloch)等は、ドナー体細胞の脱メチル化が、in vitroでのクローニングの能率を良くし、胚性幹細胞の作製を改善したことを実証した。それにより、分化された細胞の分化及び発生能の回復は、減少されたDNAメチル化により可能になることが示されている[136]。
【0017】
DNAからメチル化を除去する機構は理解されていない:DNAからのメチル化(又は、そのためにヒストン)の除去は、機械論的に理解されていない。接合体における親ゲノムのDNAメチル化の喪失は、おそらく、酵素により触媒された活性な脱メチル化になることである。卵母細胞も、移入された体細胞核を積極的に脱メチル化でき、活性が存在していると示唆している。直接シチジン環のC5位置にあるメチル基を除去する(直接脱メチル化)、又は、シチジン基から除去する(間接脱メチル化)いくつかの候補生化学経路が提案されてきた。現在まで、メチル基を除去する明白な方法は、記載されておらず、確証されてもいない。
【0018】
脱メチル化への間接的な経路は、DNA修復を必要とする:例えば、チミジンDNAグリコシラーゼ等のDNAグリコシラーゼ及びメチル結合ドメイン蛋白質4は、通常、5meCの自発性脱アミノ化から生じると考えられているT:G不適正塩基対を修復する。より最近では、活性化により誘導されたシチジンデアミナーゼ及びシチジンデアミナーゼであるApobec1が5meCをTに脱アミノ化し、これらの酵素が卵母細胞及び生殖細胞において発現されていることが示されてきた。塩基除去修復と連結されたシチジンデアミナーゼのこの活動により、理論上は、DNA複製は無くても脱メチル化できるが、それでも、初期の接合体において大規模な塩基除去修復が必要とされる。
【0019】
環境因子:拡大する根拠の主体から、食餌等の変更可能な環境因子がDNAメチル化に影響を及ぼすことができると示唆されている。例えば、メチルが補われた食餌を出生前に摂食することにより、子孫におけるDNAメチル化及び遺伝子の表現型発現のレベルを増加することができる。マウスにおける毛色は、アグーチ遺伝子発現により決定される。これは、毛包におけるアグーチ遺伝子の末端反復配列のDNAメチル化状態により決定される。この領域が過剰メチル化されている場合、マウスは野ネズミ色であり、マウスが低メチル化である場合、マウスは黄色である。妊娠中の雌マウスが、亜鉛、メチオニン、ベタイン、コリン、葉酸、及びビタミンB12が豊富のメチルが補われた食餌を与えられた場合、アグーチ末端反復配列のメチル化状態に変更があり、黄色の毛を持つ子はできなかった[58]。このように、子宮内での栄養分への曝露により、子孫におけるゲノムのエピジェネティックな修飾は生じうる。
【0020】
DNAメチル化における葉酸の役割:水溶性のB−ビタミンである葉酸は、DNAメチル化状態において重要で調節的な役割を果たしている。葉酸の唯一の生化学的機能は、一炭素部分の移動の媒介となることであり[59〜61]、従って、一炭素代謝において中心的役割を担っていることである。葉酸の欠乏がネズミの肝臓にゲノム及び遺伝子特異的低メチル化を引き起こし、その程度は葉酸の減少の激しさ及び期間に依拠しているように思われることが、動物試験によりさらに示されてきた[62、63]。DNA低メチル化は、低葉酸食餌のヒトのリンパ球においても確認され、葉酸過多により逆になることもできる[64]。しかし、DNAメチル化に関する葉酸の欠乏の効果は、非常に複雑でもある。例えば、葉酸の欠乏は、DNMT1の減少の有無を問わず、正常若しくは腫瘍性組織において、全体のゲノムDNAメチル化レベル、又は、2種類の候補遺伝子、E−カドヘリン及びp53のメチル化レベルに影響を及ぼさなかった。
【0021】
一炭素代謝
DNAメチル化の調節におけるSAM:SAH比の重要性及び栄養分の役割:栄養分の入手可能性は、DNAメチル化の調節において重要な役割を果たすことができる。さらに、一炭素代謝に関与する因子も、メチル基の供給、従って、メチル化の過程の生化学経路に影響を及ぼすことから、メチル化状態においておそらく重要な役割を果たす。食餌から供給された、コリン及びメチオニン形状のメチル基、又は、葉酸依存性一炭素プールから供給されたメチル基は、メチル基転移反応において基質として働くために、S−アデノシルメチオニン(SAM)に活性化されなければならない。S−アデノシルホモシステイン(SAH)はメチル基転移反応の生成物及びSAM依存性メチルトランスフェラーゼの強力な阻害物質であるため、SAM:SAHの比は、メチル基転移能力の重要な指標である[65、66]。割合が高い場合、メチル化の可能性は高い。割合が低い場合、メチル化の可能性は低い。葉酸の欠乏のみで、SAMプールを減少させるために十分な摂動力であることは周知である。このことにより、SAH−ホモシステイン相互変換の平衡は実際にSAH合成を好むために、SAHの細胞レベルは増加する。従って、ホモシステイン代謝が阻害された場合に、葉酸欠乏のように、細胞SAHレベルは増加する。増加したSAHは、メチルトランスフェラーゼの活性を阻害し、その結果、DNAメチル化反応を阻害する。
【0022】
グリシン−N−メチルトランスフェラーゼ(GNMT)がメチル基転移反応を最適化する:細胞質酵素GNMTは、SAM:SAH比の調節によりメチル基転移反応を最適化するために機能する。メチル基が豊富で、SAMレベルが上げられた場合、GNMTは、グリシンからサルコシンを形成することにより、過剰のメチル基を処分する。SAMも、5−メチルテトラヒドロ葉酸(5−メチル−THF)の合成を司る酵素である5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ(MTHFR)を阻害することにより、一炭素プールから生じたメチル基の供給を減少させる[67、68]。5−メチル−THFは、そのメチル基をホモシステインに供与してメチオニンを形成する葉酸補酵素である。5−メチル−THFはGNMTにも結合してその活性を阻害するため[69、70]、SAMによるMTHFRの阻害のために生じる5−メチル−THFレベルの減少により、GNMTの活性は増加する。GNMTを活性化する因子は、DNAメチルトランスフェラーゼを含むメチルトランスフェラーゼを下方調節する。
【0023】
現在まで、培養における細胞のGNMTの活性化がDNAメチル化を減少するという仮説を検証したという報告はない。しかし、いくつかの報告には、齧歯類におけるGNMTの食餌操作が記載されている[71〜73]。例えば、ビタミンA及びビタミンA誘導体、例えばオールトランスレチノイン酸(ATRA)が補足された食餌は、ネズミの肝細胞におけるGNMT活性及び低メチル化のDNAを増加し、食餌性葉酸、コリン、ベタイン、及びビタミンB6&12における減少も、特定の組織においてDNAメチル化を減少させた。このように、メチオニンの操作により成分は循環され、メチル供与体の栄養分入手可能性を調整することにより、DNAを脱メチル化する及び能力を回復するために可能なin vitroの方法が表されている。現在までに、一炭素代謝に関与する成分を改変すること、栄養分の入手可能性を変更すること、及び/又は、GNMTを変更することにより、再プログラムする又は再プログラミングの能力を変更する先の試みは報告されていない。
【0024】
細胞の再プログラミングを誘導する最新の方法:哺乳動物における細胞の再プログラミングを誘導する最新の方法は、核再プログラミング、細胞抽出物に対するより少ない程度の曝露、細胞型の融合、及び核蛋白質の除去を含むSCNTに主として依拠している。しかし、これらの方法のうち、能率のよい再プログラミングに必要とされるDNAメチル化レベルの減少における主要な律速段階を克服したものはない。
【0025】
核再プログラミング非能率:一般的に能率が悪い又は遅い核再プログラミングは、クロマチンの状態及び特にDNAの脱メチル化に依拠している。例として、SCNTクローニングには、ドナー細胞遺伝子発現を停止させ、胚パターンの遺伝子発現を活性化させるために、遺伝子発現の能率のよい再プログラミングが必要とされる。再プログラミングは、SCNTの直後に起こる早期の事象によって開始される可能性があるが、発生が卵割及びおそらく原腸形成を介して進むに従い次に続いていくということが最近の観測により示されている。再プログラミングは遅い進行性であるため、NTユニットは受精した胚に比べて特徴を劇的に変更する。
【0026】
上記の核移植の方法は、業界では一般的に既知であり、幹細胞の分化を導くために適用されてきた、又は、適用されている。しかし、ほぼ全ての適用が、核移植技術に依拠している。ゲロン(Geron)(Menlo Park CA)は、胚性幹細胞を使用して神経細胞及び心筋細胞を作製し、幹細胞を操作して他種の組織を作製することに前進を遂げてきた。Infigen.Inc.社(DeForest WI)も、家畜クローニング応用に初めて導いたいくつかの核移植特許を受けた。
【0027】
核移植の能率を増進するための他の試みにおいて、MIT,Whitehead Instituteのラドルフ ヤニッシュ博士(Dr.Rudolph Jaenisch)は、cDNAマイクロアレイを使用して、特に核移植における核再プログラミングの分子分類基準を確立した。ヤニッシュ博士の第一焦点は、癌等のヒト疾患に対して、癌を再プログラミングすること、及び、エピジェネティックな再プログラミングを改良するための戦略を計画することである。彼の主要な活動は、DNAメチル化及びメチル化されたゲノムの再プログラミングを確立する機構を理解することに焦点をあわせられた。ヤニッシュ博士は、ドナー細胞株のDNMT1をノックアウトし、その株を用いてNTユニットを作製することによりメチル化が欠けている、核移植により生じたユニットを発達させることを試みている[136]。
【0028】
Temple Universityのキース レイサム博士(Dr.Keith Latham)は、どのように非能率な再プログラミングはクローン化された胚に影響を及ぼすか調査している。レイサム博士の研究は、第一に、クローニング後の表現型における変化を調査するなど、生理学的なデータに焦点を合わせている[137、139]。
【0029】
Harvard Universityのケビン エガン博士(Dr.Kevin Eggan)は、核移植をモデルとして用いて、どのようにして成体細胞の発生の運命は回復(再プログラム)できるのかを評価し、2005年には、ヒト皮膚細胞を胚性幹細胞と融合させてハイブリッドを作製することにより大きく取りあげられた。そのハイブリッドは、幹細胞に類似し、幹細胞のように働き、患者に合わせた遺伝子的に匹敵する幹細胞を作製するための基板を潜在的に築いている[138]。
【0030】
調査中である、幹細胞又は幹細胞様の細胞を作製するための他の方法には、Reproductive Genetics Institute(In vitro Fertilization Clinic, Chicago, IL)のウリ ベルリンスキー(Uri Verlinsky)の策略がある。ベルリンスキーは、体細胞の分子が体細胞と同じ種類の細胞へ幹細胞の分化を導くという理論のもと、体細胞を幹細胞と融合させるために細胞融合工程を用いた方法を使用している。ベルリンスキーは、伝えられるところによると、彼の新しいStemBrid(stem/hybrid)技術を用いて10個の胚性幹細胞株を作製した。胚は使用されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、細胞の包括的なDNAメチル化を減少させることにより細胞分化能を回復する方法に向けられている。
【0032】
本発明のさらなる目的は、包括的に低メチル化されたゲノム並びに分化のための細胞の回復能(例えば、多能性、多分化能性、及び/又は全能性)を生じるために、培養における細胞、及び/又は核移植(NT)ユニット、及び/又は幹細胞の処置に向けられ、新しい細胞型へと分化する細胞の能力として定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、真核細胞を再プログラムする方法に向けられ、当該方法は、ステップ(a)として、真核細胞におけるS−アデノシルメチオニン対S−アデノシルホモシステイン比(SAM対SAH比)を減少させるステップを含む。SAM対SAH比を、0.1以下、好ましくは0.5以下、及び最も好ましくは1.00以下まで減少させることができる。ステップ(a)は、SEQID番号:1〜41からなる群から選択されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含むことができる。さらに、ステップ(a)は、真核細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させることを含むことができる。ステップ(a)は、細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量のレチノイン酸に前記細胞を接触させることも含むことができる。さらに、当該方法は、ステップ(b)として、真核細胞内のDNAにおける5−メチルシトシンのレベルを減少させるステップを含む。ステップ(a)及び(b)を同時に行うことは本発明の範囲内である。ステップ(b)は、真核細胞内のDNAメチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制することも含んでいる。ステップ(b)は、前記細胞をDNAメチルトランスフェラーゼ阻害物質に接触させることも含むことができる。さらに、ステップ(b)は、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成された低分子干渉リボ核酸(siRNA)に前記細胞を接触させることを含むことができる。
【0034】
本発明は、真核細胞を再プログラムする方法にも向けられ、当該方法は、ステップ(a)として、真核細胞内のDNAメチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制するステップ;並びに、同時に、ステップ(b)として、真核細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を増加させるステップを含む。ステップ(a)は、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含むことができる。ステップ(a)は、抑制に効果的な量の、細胞内のDNAにおける5−メチル化シトシンを少なくとも約5%だけ減少させるよう抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAに前記細胞を接触させることも含むことができる。ステップ(b)は、細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量のレチノイン酸に前記細胞を接触させることを含むことができる。ステップ(b)は、オールトランスレチノイン酸に前記細胞を接触させることも含むことができる。さらに、ステップ(b)は、レチノイン酸受容体に結合する化合物に前記細胞を接触させることを含むことができる。ステップ(a)及び(b)に加えて、当該方法は、ステップ(c)として、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ並びにシスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼからなる群から選択された細胞内の酵素の発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制するステップを含むことができる。SEQID番号:1〜41からなる群から選択されたsiRNAに前記細胞を接触させることは、本発明の範囲内である。
【0035】
本発明は、さらに、真核細胞における分化能を変更する方法に向けられている。当該方法は、ある量のsiRNAに前記真核細胞をin vitroで接触させることを含む。そこで、前記siRNAは、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されるが、ただし、siRNAはグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現を抑制しない。さらに、その量は、ゲノム全域にわたるDNA脱メチル化を誘導するのに効果的であり、細胞の分化能は増加する。その真核細胞は、幹細胞、前駆細胞、体細胞、及び体細胞核移植に提起された細胞(NT細胞)からなる群から選択される。この方法は、DNAメチルトランスフェラーゼ1(Dnmt1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)、及びDNAメチルトランスフェラーゼ3b(Dnmt3b)からなる群から選択されたDNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む。当該方法は、さらに、グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量の化合物、レチノイン酸又はオールトランスレチノイン酸等に前記細胞を接触させることを含む。前記細胞を、siRNA及びオールトランスレチノイン酸を組合せで含む組成物に接触させることもできる。
【0036】
本発明は、さらに、分化細胞における分化能を増加させる方法に向けられている。当該方法は、組成物に分化細胞をin vitroで接触させることを含む。前記組成物は、(i)ノックダウンに効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成された低分子干渉リボ核酸(siRNA);(ii)ノックダウンに効果的な量の、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ及びシスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼからなる群から選択された酵素の発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNA;並びに、(iii)グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的な化合物、の組合せを含む。そこで、前記細胞は、該細胞内のゲノム全域にわたるDNA脱メチル化を誘導するのに効果的な時間の間、前記組成物に接触し、それによって細胞の分化能は増加する。当該方法は、DNAメチルトランスフェラーゼ1(Dnmt1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)、及びDNAメチルトランスフェラーゼ3b(Dnmt3b)からなる群から選択されたDNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAを含む組成物に前記細胞を接触させることを含む。グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、若しくは発現及び活性両方を増加させるのに効果的なその化合物は、レチノイン酸又はオールトランスレチノイン酸である。前記細胞は、SEQID番号:1〜41からなる群から選択されたsiRNAに接触させられる。
【0037】
本発明は、さらに、細胞の発生能を決定する方法に向けられている。当該方法は、細胞におけるSAM対SAH比を決定することを含み、約1.0未満のSAM対SAH比は、細胞の発生能が増加されたことを示している。当該方法は、細胞のDNAに存在するシトシン残基のメチル化を測定することを含み、約10%未満のメチル化は、細胞の発生能が増加されたことを示している。
【0038】
本発明は、さらに、細胞における分化能を調節する方法を含む。当該方法は、ステップ(a)として、細胞におけるSAM対SAH比を約1.0未満に維持するステップ;及び、(b)細胞のDNAにおけるシトシン残基のメチル化を約40%未満に維持するステップを含む。請求項34に記載の方法は、ステップ(a)として、細胞におけるSAM対SAH比を約0.5未満に維持するステップ;及び、ステップ(b)として、細胞のDNAにおけるシトシン残基のメチル化を約20%未満に維持するステップを含む。
【0039】
本発明は、さらに、分化細胞における分化能を増加させるための細胞培地に向けられている。前記分化細胞は当該培地内に配置され、当該培地は、細胞の生存率を維持するのに十分な基本培地を、当該細胞培地に存在するメチル供与体の活性を減少させる因子と組み合わせて含んでいる。前記因子は、ホモシステイン及びオールトランスレチノイン酸からなる群から選択される。あるいは、前記因子は、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAである。
【0040】
本発明は、細胞分化に影響を及ぼす化合物を同定する方法にも向けられている。当該方法は、ステップ(a)として、細胞のDNAにおいてメチル化されたシトシンの割合を少なくとも約5%だけ減少させるステップであり、前記細胞が前記減少の前に第一の表現型を有する、ステップ;及び、ステップ(b)として、細胞におけるSAM対SAH比を約1.0未満に減少させるステップ;及び、ステップ(c)として、細胞の分化に影響を及ぼすのではないかと思われる化合物に前記細胞を接触させるステップ;及び、ステップ(d)として、細胞の第一の表現型を、ステップ(c)後の細胞の表現型と比較するステップを含み、第一の表現型とは異なる表現型のステップ(c)後の出現は、前記化合物が細胞分化に影響を及ぼすことを示している。ステップ(a)は、細胞のDNAにおけるメチル化されたシトシンの割合を少なくとも約5%だけ減少させることを含むことができる。ステップ(a)は、細胞のDNAにおけるメチル化されたシトシンの割合を約10%だけ減少させることも含むことができる。前記細胞は、転写における変化をモニターするためにレポーターシステムを含むことができる。前記レポーターシステムは、ルシフェラーゼ活性、ベータラクタマーゼ活性、及びベータガラクトシダーゼ活性からなる群から選択された酵素活性の存在を測定する。
【0041】
本発明は、細胞分化能を回復する方法に向けられ、
(a)in vitroでメチル供与体を減少させることにより、体細胞核、細胞、及び/又は細胞のうち特定の部分におけるDNAメチル化を減少させるステップ;
(b)SAM:SAH比並びにDNAメチル化のレベルを減少させるGNMT遺伝子の発現及び/又は酵素活性を増加させるステップ;
(c)MTHFR及び/又はシスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼ(Cbs)等の特定の酵素の発現及び/又は活性を減少させることによりSAM:SAH比を減少させるステップ;
(d)Dnmt1、3a、及び/又は3bを含むDNAメチルトランスフェラーゼの活性を減少させるステップ;
(e)SAM:SAH比を下げるために、in vitroでホモシステイン及び/若しくはSAHレベルを、グルカゴン、又は関連する因子を増加させるステップ(減少されたSAM:SAH比はメチル化を減らすことになる);
(f)SAM:SAH比を減少させるためにグルタチオンレベルを激減させるステップ;
(g)メチル化を減少させるために、上記因子を1又は複数取り込む制限された培地を開発するステップ(メチル供与体が欠乏している培地、ホモシステインが添加された培地等);
(h)ベータラクタマーゼレポーター遺伝子及び/若しくは他の生存可能なレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、ベータグルコシダーゼ、若しくはその他)の使用に基づいて新たなアッセイを開発し、GNMT遺伝子の転写を誘導する因子又はGNMT活性を促進する他の因子若しくは活性を同定する因子を同定するステップ;並びに
(i)ベータラクタマーゼレポーター遺伝子及び/若しくは他の生存可能なレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、ベータグルコシダーゼ、若しくはその他)の使用に基づいて新たなアッセイを開発し、DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子の転写を減少させる因子又はDNAメチルトランスフェラーゼの活性を減少させる他の因子若しくは活性を同定する因子を同定するステップ;
を含んでいる。
【0042】
本発明は以下を含むが、それに限定されない:
(a)ゲノムを脱メチル化することにより、回復された分化能(全能性、多能性、多分化能性)を有する再プログラムされた細胞のin vitroでの作製を可能にする特殊化された培地及び細胞培養を含む新たな研究の手段;
(b)これらの培地及び培養物により作製され、研究又は治療上の応用に使用することができる新たな幹細胞類似の細胞;
(c)細胞の回復分化能に対するGNMT発現若しくは他の活性の影響力を評価するための、ベータラクタマーゼレポーター遺伝子、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、及び/又は他の関連するレポーター遺伝子を用いたGNMT発現をモニターするための新たなアッセイ系;
(d)細胞の回復分化能に対するDNAメチルトランスフェラーゼ発現若しくは他の活性の影響力を評価するための、ベータラクタマーゼレポーター遺伝子、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、及び/又は他の関連するレポーター遺伝子を用いたDNAメチルトランスフェラーゼ発現をモニターするための新たなアッセイ系;
(e)体細胞核移植の能率を増進すること;並びに
(f)SCNT再構成胚(又はユニット)からの胚性幹細胞の誘導を増進すること
実施形態は以下を含む:
(a)GNMT転写及び活性を増加させ、SAM:SAH比及び細胞のメチル化能力を減少させ、分化及び/若しくは発生能を回復させるATRAを用いて、現存する市販の培地又は他の培地を処理する;
(b)DNAメチル化のレベルを減少させるRNA干渉技術を用いてDNAメチルトランスフェラーゼ1、3a、及び/若しくは3bのノックダウンを可能にするために、現存する市販の培地又は他の培地を改変する;
(c)SAM:SAH比及びDNAメチル化を減少させるRNA干渉技術、アンチセンス、又は他のノックダウン技術を用いて、MTHFR及び/若しくはCbsのノックダウンを可能にするために、現存する市販の培地又は他の培地を改変する;
(d)SAM:SAH比及びDNAメチル化を減少させるGNMTの転写、蛋白質発現、並びに活性を増加させるために、現存する市販の培地又は他の培地を改変する;
(e)メチル供与体及び/若しくはホモシステイン及び/若しくはSAHのレベルを変更することによりSAM:SAH比を減少させるために、現存する市販の培地又は他の培地を改変する
本発明の背後にある理論的根拠のための1つの説明に固守されることを望むことなく、食餌、培地、又は葉酸依存性一炭素プールから供給されるメチル基は、正常な機能にとって不可欠であることが信じられている。メチル基欠乏により、メチル基転移反応は下方調節される。食餌(又は培地)から供給されるコリン及びメチオニンの形状のメチル基、又は、葉酸依存性一炭素プールから供給されるメチル基は、数多くのメチル基転移反応において基質として働くために、SAMに活性化されなければならない。SAHはメチル基転移反応の生成物であり、大部分のSAM依存性メチルトランスフェラーゼの強力な阻害物質であるため、SAM/SAHの比は、メチル基転移能力の重要な指標である。従って、SAMの細胞内の供給は、メチル基転移において重大であるが、この比の調節も重要である。
【0043】
細胞質酵素GNMTは、SAM/SAH比の調節によりメチル基転移反応を最適化するために機能する。メチル基が豊富で、SAMレベルが上げられた場合、GNMTは、グリシンから本質的に不活性の代謝産物サルコシンを形成することにより、過剰のメチル基を処分する。SAMも、5−メチル−THFの合成を司る酵素であるMTHFRを阻害することにより、一炭素プールから生じたメチル基の供給を減少させる。5−メチル−THFは、そのメチル基をホモシステインに供与してメチオニンを形成する葉酸補酵素である。5−メチル−THFはGNMTにも結合してその活性を阻害するため、SAMによるMTHFRの阻害のために生じる5−メチル−THF量の減少により、GNMTの活性は増加する。逆に、メチル基及びSAMが減少した状況下では、MTHFRの阻害は除去され、5−メチル−THF濃度並びに後のGNMTの阻害は増加される。このことは、メチル基入手可能性に障害が生じた場合に、重要なメチル基転移反応のためにメチル基が保存されることを確実にしている。従って、不適切にGNMTを活性化する因子は、数多くの、適切なメチル化状態の維持において重要であるメチルトランスフェラーゼを下方調節する可能性がある。
【0044】
本発明は、新しく、より効果的で、能率的な細胞再プログラミングの方法の開発を促進する必要性により推進された。そのような方法は、幹細胞を含む治療上役に立つ細胞の発見及び開発、幹細胞及び他の細胞を基にした治療研究を促進するための新たな研究手段、貴重な動物又は絶滅の危機に瀕した動物の繁殖、並びに、高価な遺伝子改変された動物の作製に強い影響を与える。
【0045】
本発明は、現用の方法を用いた、細胞を脱分化してその細胞を新たな細胞に再分化する問題を解決する方へ向けられている。特に、主としてSCNTに基づいた現用の方法は、非常に能率が悪く、その結果は信頼できないものである。新たな発明は、核移植の利用及びそれに伴う制限を避けている。SCNTユニットは、能率の悪い細胞再プログラミングの一因となる包括的な脱メチル化の欠乏を含むDNAメチル化調節の欠点を示している。本発明は、この特定の問題を克服している。
【0046】
本発明は、再構築後必要とされる脱分化(包括的な脱メチル化)プロセスを改良することにより、絶滅の危機に瀕した動物、付加価値を持つ家畜、及びES細胞の誘導体の作製のためのSCNTを可能にし、その能率も増進する。
【0047】
本発明は、免疫拒絶及び胚性幹細胞の利用に伴う物質の限られた起源という重大な問題を克服する新たな細胞を基にした薬物療法学の開発も可能にする。脱分化及び新たな細胞型への再分化のために患者自身の体細胞の利用を可能にすることにより、本発明は、多種の開始細胞型から細胞の免疫と適合性のある起源を提供する。
【0048】
さらに、幹細胞研究の分野は、脱分化状態で細胞を維持する又は細胞を特異的な系譜に沿って分化させるための細胞培養物及び培地が不適切であることにより、現時点では非常に制限されている。本発明と関連する経路、蛋白質、及び関係のある分子は、これらの制限を克服する新たな培養物及び培地の開発を可能にする。同様に、本発明は、分化及び再分化の新たなマーカー、並びに、再生医療薬物候補をスクリーニングするための新たな方法を提供および高めることにより創薬を早める新たな分化細胞株を作製する能力を提供する。
【0049】
細胞を基にした薬物療法学の分野は、出発物質の起源が限られ、並びに、GMP/GMLガイドラインに基づいた単離及び拡大の方法は高価であるため、現時点では非常に制限されている。例えば、糖尿病患者においてインシュリンを産生するために島細胞の移植を必要とする新たな細胞治療を適用する場合に、現用の方法では、たった1人の患者に十分な細胞を提供するために少なくとも2人の死体提供者が必要とされた。本発明は、使用される出発物質及び所望の生成物の量を著しく改善することにより、これらの欠点を克服することに当てられている。さらに、そのような細胞は、移植患者に有害な免疫拒絶を誘導するという固有のリスクを保有している。本発明は、出発物質の起源として患者自身の細胞を使用する機会を提供することにより、この問題を克服することに当てられている。
【0050】
本発明は、DNAメチル化を調節することにより、再プログラミングの進行を促進できる方法の方へ向けられている。DNAメチルトランスフェラーゼの発現及び/又は活性を変更するように意図された方法は、SAM:SAH比を変更することにより再プログラミングの能率を増進する重大な効果を有しうる。1つの方法は、鍵となる酵素の発現をレチノイン酸(RA)及びレチノイド等の化合物を用いて特異的に変更することにより、メチル基代謝の調節を変更することである。ATRA及び他のレチノイド化合物の施用は、GNMTを誘導並びに活性化し、DNAのメチル化を含めたSAM依存性メチル基転移反応に欠陥を生じさせ、結果としてゲノムDNAを低メチル化させる。他の研究者は、5−アザシチジン及び5−アザ−2’−デオキシチジン等のメチル化阻害物質を使用して、DNAメチル化レベルを減少並びに抗腫瘍効果を提供してきた[82]。
【0051】
別の方法は、培養において体細胞内でデメチラーゼを過剰発現させることである。現在までに、活性なデメチラーゼは確証されていない。
【0052】
従来の方法よりも有利となる本発明の鍵となる利点には以下が挙げられる:
本発明は、核移植の利用を必要とせず、従って、核再プログラミング及び実際の細胞発生における非能率を避けている。
【0053】
本発明は、細胞分化のための出発物質として胚性幹細胞の利用に依拠しない。従って、出発物質の入手可能性における重大な制限障害を克服している。
【0054】
本発明は、胚及び成体幹細胞培養系を改良するために使用し、自然分化を最小化することができる。
【0055】
本発明は、新たな再生細胞治療の開発のために胚性幹細胞又は他の異物に依拠せず、従って、患者による免疫拒絶の可能性を最小化する。
【0056】
本発明は、単純な栄養上の方法により自然な代謝プロセスを利用する。従って、5’−アザシチジン及びアザシタジン(azacitadine)(AzaCとして、及び、商標VIDAZAのもとPharmion of Boulder社により製造されるとしても既知である)等の化合物により誘導される細胞毒性の影響、又は、遺伝子導入系を用いて活性なデメチラーゼを過剰発現させる等、遺伝子の変化を必要としているといった失敗の一因となりうる複雑因子の数を減少させる。
【0057】
本発明は、SCNTを改良するために使用することができる。
【0058】
本発明を使用して、SCNTにより生じた胚(ユニット)からのES細胞の誘導体をより能率的に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下の、添付の図面と共に記述された本発明の好ましい実施形態の詳細説明から、本発明の目的及び利点はより完全に見えてくる。

略語及び定義
本明細書においてそうでないと記述しない限り、以下の定義及び略語はこの開示中適用される:
ATRAは、オールトランスレチノイン酸を意味する。
【0060】
Cbsは、シスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼを意味する。
【0061】
細胞再プログラミングは、末期的に分化した細胞を、その細胞が新たな細胞型に分化する可能性を有する状態に回復させるプロセスを意味する。
【0062】
培地又は増殖培地は、細胞の増殖を支持する能力がある適切な培地を意味する。
【0063】
脱メチル化培地又は脱メチル化増殖培地は、DNAの脱メチル化を誘導するように細胞の増殖を支持する能力がある適切な培地を意味する。
【0064】
分化は、胚発生中に細胞を構造的及び機能的に特殊化させるプロセスを意味する。
【0065】
DMSOは、ジメチルスルホキシドを意味する。
【0066】
DNAは、デオキシリボ核酸を意味する。
【0067】
DNAメチル化は、真核生物のDNAにおけるシトシン(DNAに存在する4種類の窒素性の塩基の1つ)へのメチル基(CH3基)の結合を意味する。これは、外来性のDNAを破壊するために産生された酵素及び化学物質から自己のDNAを保護する方法として、並びに、DNAにおける遺伝子の転写を調節する方法として日常的に行われる。
【0068】
DNMTは、DNAメチルトランスフェラーゼを意味する。
【0069】
エピジェネティックは、ヌクレオチド配列を変更することなく、機能を遺伝的に変更するDNAの状態を意味する。エピジェネティックな変化は、DNAのヌクレオチド配列を変えることなく、メチル化及び脱メチル化等、DNAの修飾により引き起こすことができる。
【0070】
FRETは、蛍光共鳴エネルギー転移を意味する。
【0071】
GAPDHは、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素を意味する。
【0072】
GNMTは、グリシン−N−メチルトランスフェラーゼを意味する。
【0073】
H3K4meは、Lys4でのヒストンH3のメチル化を意味する。
【0074】
H3K9me2/3は、ヒストンH3上のリジン9等の特定のリジン残基のジ/トリメチル化を意味する。
【0075】
ヒストンは、染色体に存在する蛋白質分子の種類を意味し、核内に収まるようにDNAを凝縮することに司る。原核生物は、ヒストンを有していない。しかし、サーモプラズマ属(古細菌ドメインのうち細胞壁を欠いたメンバー)のDNAは、真核生物のヒストンに非常に似た、大変基本的なDNA結合蛋白質により包囲されている。
【0076】
IBMXは、イソブチルメチルキサンチンを意味する。
【0077】
ICMは、内部細胞塊を意味する。
【0078】
「ノックダウン」は、遺伝子の特異的な方法で遺伝子の発現を抑制することを意味する。1または複数の「ノックダウンされた」遺伝子を有する細胞は、ノックダウン生物又は単に「ノックダウン」と呼ばれる。
【0079】
MDSは、骨髄異形成症候群を意味する。
【0080】
MTHFRは、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼを意味する。
【0081】
卵母細胞は、減数分裂により4個の一倍体細胞へ分裂し、発生する女性の生殖細胞を意味する。その一倍体細胞は、精細胞により受精することができる1個の卵細胞を形成する。
【0082】
多能性は、3種類の胚葉の細胞型又は一次組織型に分化する能力があることを意味する。
【0083】
RAは、レチノイン酸を意味する。
【0084】
再プログラミングは、核におけるエピジェネティックマークの除去に続き、異なるエピジェネティックマークを確立することを意味する。多細胞生物における発生の間、細胞及び組織によって、得られる遺伝子発現のプログラムは異なる。これらの異なる遺伝子発現パターンは、DNAメチル化、ヒストン修飾、及び他のクロマチン結合蛋白質等のエピジェネティックな修飾により実質的に調節されているように思われる[22、23]。このように、多細胞生物内の各細胞型は、細胞が分化する又は細胞周期を抜けると「確定」になり不変になると慣例的に考えられている特有のエピジェネティックな特徴を有している。しかし、一部の細胞は、正常な発生又はある種の疾患状態中に、主要のエピジェネティックな「再プログラミング」を行う。
【0085】
RNAは、リボ核酸を意味する。
【0086】
RT−PCRは、逆転写のポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
【0087】
SAHは、S−アデノシルホモシステインを意味する。
【0088】
SAMは、S−アデノシルメチオニンを意味する。
【0089】
SCNTは、体細胞核移植を意味する。
【0090】
siRNAは、低分子干渉RNAを意味し、短鎖干渉RNA又はサイレンシングRNAとしても既知である。
【0091】
体細胞は、(特に卵細胞又は精細胞等、新たな生物が発生することができる種々の細胞全てである生殖細胞に対立するものとして)体の組織、器官等に分化された生物の細胞全てを意味する。
【0092】
TEは、栄養外胚葉を意味する。
【0093】
全能性は、完全な胚又は器官に発達する能力があることを意味する。
【0094】
TZDは、チアゾリジンジオンを意味する。
【0095】
本発明は、分化能を回復し、治療用細胞の自己起源として使用することができるように、患者の成体幹細胞若しくは完全に分化した体細胞の脱メチル化を誘導する;又は、脱メチル化された細胞を使用して、SCNTの能率を増進し、治療の目的で使用されることになる患者特異的ES細胞をより能率的に作製する。
【0096】
本発明は、特に、特殊化された細胞株及び特殊化された細胞培養に向けられている。両方を得る方法は、本発明にとって重大である。基本的な感覚からでも、その方法は、再プログラムされた細胞株を生じる脱メチル化ステップを含んでいることがわかる。脱メチル化を可能にする因子は、細胞培地内に含ませる。その細胞培地は、新たな細胞型に分化することができる細胞を作製するために使用される。
【0097】
本発明は、分化及び/若しくは発生能を回復する程度までDNAメチル化レベルを減少させるように、ATRA及び/若しくはsiRNAを添加することができる細胞培地、又は、十分に調整された成分に向けられている。その分化及び/若しくは発生能は、それだけに限定されないが、サイトカイン等の特定の分化因子、増殖因子、転写因子で誘導する、並びに/又は、SCNTのために脱メチル化された細胞を使用することにより回復される。
【0098】
本発明は、ゲノムを脱メチル化することにより回復された分化能(全能性、多能性、多分化能性)を有した再プログラムされた細胞のin vitroでの作製に向けられている。実施形態は以下を含む:
(a)ATRA、siRNA、及び/又は類似の若しくは関連する分子で処理するステップ;
(b)阻害のために干渉RNA技術、アンチセンス、若しくは他の機構を用いて、DNAメチルトランスフェラーゼ1、3a、及び/又は3bをノックダウンするステップ;
(c)干渉RNA技術を用いて、MTHFR及び/又はCbsをノックダウンするステップ;
(d)GNMTの転写、蛋白質発現、及び活性を増加させるステップ;
(e)in vitroでホモシステインのレベルを上げるステップ;
(f)SAHのレベルを上げるステップ;
(g)SAMのレベルを下げるステップ;
(h)それだけには限定されないが、葉酸塩、メチオニン、コリン、ベタイン、ビタミンB6及びB12等のメチル供与体のレベルを下げるステップ;
(i)SCNTを改良するために細胞を使用するステップ;並びに
(j)SCNT再構築ユニット(胚)からES細胞をより能率的に誘導するために細胞を使用するステップ
細胞:本発明の目的において、単数又は複数の「細胞」という用語は、特に反対に限定されない限り、いかなる体細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、核移植(NT)ユニット、及び幹細胞様の細胞も含む。器官及び組織の移植のための有望な起源は、幹細胞技術の発展に見いだされている。理論上、幹細胞は、自己複製する細胞分裂を行って無限に表現型及び遺伝子型の同一な娘細胞を生じることができ、さらに、最終的には、少なくとも1つの最終細胞型に分化できる。患者自身の細胞から組織又は器官を作製することにより、移植組織を作製し、感染又は組織拒絶という付随するリスクなしに異種移植に関連する利点を提供することができる。
【0099】
幹細胞は、遺伝子治療の結果を改善する期待も提供している。患者自身の幹細胞は、in vitroで遺伝子改変することができ、次に、所望の遺伝子産物を産生するためにin vivoに再導入できる。これらの遺伝子改変幹細胞は、体内の特定部位での移植用又は全身投与用に、分化して多数の細胞型を形成するために誘導される可能性を有している。あるいは、異種幹細胞は、移植患者の主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC)を発現させる又は全く発現させないために遺伝子改変でき、不随する拒絶のリスクなしにドナーから移植患者へのそれらの細胞の移植を可能にする。
【0100】
幹細胞は、広範囲で不明瞭な増殖能力を有し、いくつかの細胞系譜に分化し、移植の後で組織を再配置することができる細胞として定義される。無制限の自己複製及び多能性分化能を有することから、典型的な幹細胞は胚性幹(ES)細胞である。これらの細胞は、胚盤胞の内部細胞塊由来、又は、移植後の胚の始原生殖細胞(胚性生殖細胞又はEG細胞)から得ることができる。ES及びEG細胞は、マウスから、より最近ではヒト以外の霊長類及びヒトからも得られた。ES細胞がマウスの胚盤胞又は他の動物の胚盤胞に導入された場合、ES細胞はマウス(動物)の全組織の一因となることができる。ES及びEG細胞が出生後の動物に移植された場合、それらの細胞は奇形腫を生じ、その多能性をここでも実証している。ES及びEG細胞は、抗体であるSSEA1及びSSEA4を用いて陽性染色により同定することができる。
【0101】
分子レベルで、ES及びEG細胞は、これらの未分化細胞に対して非常に特異的であるいくつかの転写因子を発現する。これらの転写因子には、Oct−4及びRex−1が挙げられる。LIF−R並びに転写因子Sox−2及びRox−1も存在するが、後者2つの転写因子はES細胞以外でも発現する。Oct−4は、原腸未形成胚、卵割初期胚、胚盤胞の内部細胞塊の細胞、及び胚性癌(EC)細胞で発現する転写因子である。細胞がin vitroで分化するよう誘導された場合にOct−4は下方調節され、さらに、成長した動物において、oct−4は生殖細胞内のみに存在する。いくつかの研究により、Oct−4はES細胞の未分化の表現型の維持に必要とされ、胚形成及び分化における初期段階の決定において主要な役割を果たしていることが示されてきた。Oct−4は、Rox−1と組み合わせて、Znフィンガー蛋白質Rex−1の転写活性化を引き起こし、未分化状態でESを維持するためにも必要とされている。さらに、Sox−2は、ES/EC細胞の未分化状態を保つため、及び、マウス(ヒトではない)ES細胞を維持するためにOct−4と共に必要である。ヒト又はマウスの始原生殖細胞は、LIFの存在を必要とする。ES細胞の別の特徴は、これらの細胞に無限の自己複製能力をin vitroで提供するテロメラーゼの存在である。
【0102】
幹細胞は、いくつかの器官組織において確認されてきた。最も特徴づけられているのは、造血幹細胞である。これは、中胚葉由来の細胞であり、細胞表面マーカー及び機能的特徴に基づいて精製されてきた。骨髄、血液、臍帯血、胎児の肝臓及び卵黄嚢から単離されるこの造血幹細胞は、移植患者の命のために造血を再度開始し、複数の造血性系譜を生じる始原細胞である[93〜100]。造血幹細胞が致死量の放射線にさらされた動物又はヒトに移植された場合、その造血幹細胞は、赤血球、好中球マクロファージ、巨核球、及びリンパ球の造血細胞プールを再配置することができる。in vitroで、造血幹細胞を少なくとも数度自己複製する細胞分裂を行うために誘導し、さらに、in vivoで見られるのと同じ系譜に分化すために誘導することができる。従って、この細胞は、幹細胞の基準を満たしている。しかし、造血系譜の細胞を形成するためだけに分化する幹細胞は、例えば、高用量の化学療法薬物により損傷を受けた心臓又は肺組織等、他の損傷を受けた組織の修復のための細胞の起源を提供することはできない。
【0103】
広く研究されてきた第二の幹細胞は、神経幹細胞である[101〜103]。神経幹細胞は、胎児の脳の脳室下帯及び嗅球内で初めて確認された。最近まで、成体脳は幹細胞の能力を有する細胞をすでに含んでいないと信じられていた。しかし、齧歯類、より最近ではヒト以外の霊長類及びヒトにおけるいくつかの研究により、幹細胞は成体脳に存在し続けることが示されてきた。これらの幹細胞はin vivoで増殖でき、少なくとも一部の神経細胞をin vivoで連続的に再生することができる。神経幹細胞をex vivoで培養した場合、その神経幹細胞を増殖するよう誘導でき、並びに、異なる種類のニューロン及びグリア細胞に分化するよう誘導することができる。脳に移植された場合は、神経幹細胞を植え付けることができ、神経細胞及びグリア細胞を生じることができる。従って、この細胞も、幹細胞の定義を満たすことができる。
【0104】
幹細胞と命名されている第三の組織特異的細胞は、フリデンシュタイン(Fridenshtein)により初めて記載された間葉性幹細胞(MSC)である[104]。本来、胚性中胚葉由来で成体骨髄から単離される間葉性幹細胞は、筋肉、骨、軟骨、脂肪、ストロマ、及び腱を形成するよう分化できる。胚形成の間、中胚葉は、肢芽中胚葉、骨、軟骨、脂肪、骨格筋、及びおそらく内皮を生じる組織に発達する。中胚葉は、心筋、平滑筋、又は、内皮及び造血始原細胞からなる血島を生じることができる内臓中胚葉にも分化する。従って、原始中胚葉又は間葉性幹細胞は、いくつかの細胞及び組織型の起源を提供できる。いくつかの間葉性幹細胞が単離されてきた[105〜117]。記載されてきた多くの間葉性幹細胞のうち、全てが、間葉系起源のものであると一般的に考えられている分化細胞のみを形成する制限された分化を実証した。現在までで、報告された最も多分化能な間葉性幹細胞は、ピッテンガー(Pittenger)等により単離された細胞であり、その細胞は、SH2SH4CD29CD44CD71CD90CD106CD120aCD124CD14CD34CD45表現型を発現する。この細胞は、間葉起源のいくつかの細胞型を形成するよう分化する能力があるが、その細胞を単離したチームが、造血細胞は拡大された培養物において確認されなかったと留意したように、明らかに間葉系譜の細胞に分化する能力に限定されている。
【0105】
消化管幹細胞、上皮幹細胞、及び卵円形細胞とも呼ばれている肝幹細胞を含む他の幹細胞が同定されてきた[119〜121]。これらの細胞のうち大部分が他に比べよく特徴づけられていない。
【0106】
ES細胞と比較すると、組織特異的幹細胞は自己複製能力が低い。これらの細胞は複数の系譜に分化するが、多能性ではない。組織特異的細胞が上記のES細胞のマーカーを発現するかどうかを扱った研究はない。さらに、これらの細胞が非常に豊富な集団を多数得ることは幾分困難であるため、組織特異的幹細胞におけるテロメラーゼ活性の程度は十分に調査されていない。
【0107】
最近まで、器官特異的幹細胞は、同じ組織の細胞のみに分化することができると考えられていた。いくつかの最近の文献によると、成体器官特異的幹細胞には異なる組織の細胞に分化する能力がありうると示唆されている。いくつかの研究によると、骨髄移植時に移植された細胞は、骨格筋に分化することができると示されている[122〜123]。このことは、骨髄に存在する間葉細胞にありうる分化能の範囲内であると考えることができる。ジャクソン(Jackson)は、筋衛生細胞は、ここでも臓側中胚葉内の表現型におけるスイッチである造血細胞に分化できると発表した[124]。他の研究によると、ある胚葉(例えば、臓側中胚葉)由来の幹細胞は、胚形成中に異なる胚葉から得られたと考えられる組織に分化することができると示されている。例えば、骨髄移植を受けたヒト又は動物で検出される内皮細胞又はそれらの前駆体は、少なくとも一部は骨髄提供者由来である[125〜126]。このように、臓側中胚葉ではなくMSC等の内臓中胚葉に由来する子孫は、注入される骨髄と共に移植される。さらに驚くべきことに、肝上皮細胞及び胆管上皮細胞はドナー骨髄由来であると齧歯類でもヒトでも実証した報告がある[127〜129]。同様に、3つのグループが、神経幹細胞は造血細胞に分化することができると示してきた。最後に、クラーク(Clarke)等は、胚盤胞に注入された神経幹細胞はキメラマウスの全組織の一因になりうると報告した[130]。
【0108】
異種の胚性幹細胞から作製された組織及び器官の移植には、細胞をさらに遺伝子改変して特定の細胞表面マーカーの発現を阻害する、又は、化学療法の免疫抑制因子の使用を続けて移植による拒絶から保護することが必要とされている。このように、胚性幹細胞の研究は移植用器官の起源が限られているという問題に対する有望な新解決手段を提供しているが、異種細胞又は組織の移植に耐えるための免疫抑制の必要性に不随する問題及びリスクは残る。大多数の人口を対照とする治療に備えて免疫と適合性がある細胞を提供するために、推定20個の免疫学的に異なる系統の胚性幹細胞が確立される必要がある[132]。
【0109】
胚からではなく成長した個体から細胞を自己又は同種幹細胞の起源として使用することは、移植胚性幹細胞の使用に付随する組織の不適合性という問題を克服し、並びに、胚性幹細胞研究に付随する倫理上のジレンマも解決する。組織移植のために同種幹細胞を使用することに不随する最大の欠点は、これまでのところその制限された分化能にある。いくつかの幹細胞が十分に成長した生物、特にヒトから単離されているが、これらの細胞は、多分化能性であると報告されているにもかかわらず、複数の細胞型に分化する能力は限られていると実証されている。
【0110】
複数の分化能を有する幹細胞が以前に他の研究者等により単離されてきたが、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、骨格筋、内皮、ストロマ、平滑筋、心筋、神経細胞、及び造血細胞を含む種々の系譜の幅広い細胞型に分化する能力を有する脱メチル化された細胞は記載されていない。細胞及び組織移植並びに遺伝子治療が期待される治療上の進歩を提供することであった場合、患者特異的治療用細胞のための起源、又はより能率的なSCNT用ドナー細胞、又は特定の系譜に沿った分化の誘導に寄与するために使用される可能性がある分化因子若しくは化合物のスクリーニング用物体として、回復された又は拡大された分化及び/若しくは発生能を有する脱メチル化された細胞が必要とされる。
【0111】
細胞培地:本発明は、細胞培地と、増殖因子と、細胞のDNA脱メチル化を誘導する方法並びに脱メチル化された細胞の培養物を増殖及び維持する方法とを利用する。培地は細胞の増殖及び維持を提供し、添加の因子及び有用な組合せの因子をスクリーニングするために使用することができる。本明細書で提供されている細胞培地、増殖因子、及び方法を用いて細胞を実質的に未分化の状態で増殖させる能力は、複数の遺伝子改変を有する細胞株を作製する能力を含む重要な利益を(遺伝子治療の応用と同様に)重要な治療上の応用と共に提供する。
【0112】
細胞培地は、脱メチル化された細胞の増殖を支持するのに効果的な増殖培地;脱メチル化された細胞の増殖を支持するのに効果的な栄養素血清;非必須及び必須のアミノ酸、並びにピルビル酸塩を含むことができる。随意に、細胞培地は還元剤も含むことができる。
【0113】
本発明の実施において役に立つ適切な培地の制限しない別の例は、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)の主成分で調製された種々の増殖培地を含む。DMEMは、ウシ胎児血清、グルタミン、及び/又はピルビン酸ナトリウムを含む種々の栄養補助剤で補うことができる。DMEMは、15%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、及び1mMピルビン酸ナトリウムを含むことが好ましい。
【0114】
適切な培地の別の例は、グルコース及びリン酸を含まない改変されたヒト卵管液培地(HTF)であり、15%胎児血清、0.2mMグルタミン、0.5mMタウリン、及び0.01mMの以下のアミノ酸:アスパラギン、グリシン、グルタミン酸、システイン、リジン、プロリン、セリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸で補われている。
【0115】
増殖因子:増殖培地は、脱メチル化された細胞の増殖及び生存能力を維持するのに効果的な栄養分を供給するいかなる血清又は血清を基にした溶液も含むことができる。そのような血清の例として、限定することなく、ウシ胎児血清(FBS及びFCS)が挙げられる。例えば、FBSは、約1%から約25%までの間の濃度で提供できる。特に、FBSは、約2.5%から約20%までの間の濃度で提供できる。1つの実施形態では、脱メチル化された細胞は10%FBSで増殖する。
【0116】
増殖因子は、脱メチル化された細胞の培養物の実質的に未分化の状態での誘導及び維持に寄与するために提供されることもできる。そのような増殖因子の主体性及び効果的な濃度は、本明細書に記載の方法又は細胞培養分野の技術者には既知の技術を用いて決定することができる。例えば、1または複数の以下の因子:10μMのホルスコリン([3R−(3α,4αβ,5B,6B,6aα.,10α.,10αβ,10α)]−5−(アセチルオキシ)−3−エテニルドデカヒドロ−6,10,10b−トリヒドロキシ−3,4a,7,7,10a−ペンタメチル−1H−ナフト[2,1−b]ピラン−1−オン)、10μMのコレラトキシン、0.1mMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、1mMのジブチリルアデノシンサイクリック一リン酸(dbcAMP)を規定された終濃度で使用することができる。別の実施形態では、増殖因子は、約1〜10ng/mlの範囲における塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)であり、より明確には、ヒト組換え型塩基性線維芽増殖因子(bFGF)である。
【0117】
別の因子は、ヒト胎児性癌(EC)細胞の培養物から得られた増殖培地である。特定の例では、ヒトNTERA−2EC細胞(ATCC受入番号CRL1973)は、10%ウシ胎児血清で補われたDMEMにおいてコンフルエンスまで増殖される、又は、マウスES細胞は、15%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、1000U/mlLIFで補われたDMEMにおいてコンフルエンスまで増殖される。増殖培地は、何日もの間毎日収穫され、0.22ミクロンの濾過器にかけられ、−80℃で凍結される。このヒトEC又はマウスESで「条件づけられた」培地は、脱メチル化された細胞の増殖及び生存能力に対する効果により判断されたように、経験的に決定された量で脱メチル化増殖培地に添加される。
【0118】
別の実施形態では、増殖培地は、シグナル伝達gp130と結合する受容体に結合することにより、又は、直接gp130に結合することにより、gp130を活性化するリガンドを含む。例えば、約1000U/mlから2000U/mlのヒト組換え型白血病抑制因子(LIF)又は10U/mlのオンコスタチン−Mを使用することができる。
【0119】
組織培養抗生物質:一般的に、胚性生殖(EG)培地は、ペニシリン及びストレプトマイシン等、一般的に使用される組織培養抗生物質も含有する。従って、効果的な量の因子がこれらの基礎液のうちいずれかに毎日追加され、本発明のヒトEG増殖培地が調製される。「効果的な量」という用語は、細胞培養分野の技術者に共通の判断を用いて、又は、本明細書において提供されている技術により、ヒトEG細胞におけるヒトEG増殖及び生存能力に対する有益な効果を可能にするような記述された因子の量を意味する。
【0120】
一般的に、脱メチル化培地も、ペニシリン及びストレプトマイシン等、一般的に使用される組織培養抗生物質を含有する。従って、効果的な量のこれらの因子がこれらの基礎液のうちいずれかに毎日追加され、本発明の脱メチル化増殖培地が調製される。本明細書において使用される「効果的な量」という用語は、細胞培養分野の技術者に共通の判断を用いて、又は、本明細書において提供されている技術により、細胞の脱メチル化及び生存能力に対する有益な効果を可能にするような記述された因子の量である。
【0121】
範囲:表1は、本発明の細胞培地において有用な成分の範囲を提供している。
【0122】
表1
【0123】
【表1】


以下の表2に記述されているように、本発明で使用することができる細胞培地の例は、アルファ−MEM(Chemicon International社,Temecula,CA)である。
【0124】
表2
【0125】
【表2】



培養のための一般的な技術
分子遺伝学及び遺伝子工学における一般的な方法は、サムブルック(Sambrrok)等の最新版[84]、ミラー&カロス(Miller&Calos)[85]、並びにF.M.オースベル(F.M.Ausubel)等[86]に記載されている。細胞生物学、蛋白質化学、及び抗体法は、J.E.コリガン(J.E.Colligan)等[87]、J.S.ボニファシノ(J.S.Bonifacino)等[88]、及びJ.E.コリガン(J.E.Colligan)等[89]で見つけることができる。本開示において言及されている遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、及び道具は、BioRad社(Hercules,CA)、Stratagene社(La Jolla,CA)、Invitrogen Corporation社(Carlsbad, CA)、ClonTech社(Mountain View,CA)、及びSigma−Aldrich社(St.Louis,MO)等の販売業者から入手可能である。
【0126】
細胞培養方法は、一般的に、フレッシュニー(Freshney)[90]、M.A.ハリソン&I.F.ラエ(M.A.Harrison&I.F.Rae)[91]、及びK.タルクセン(K.Turksen)[92]に記載されている。細胞培養の備品及び試薬は、Gibco/BRL社(Gaithersburg,MD)、NalgeneNunc International社(Rochester,NY)、Sigma Chemical Co社(St.Louis,MO)、Hyclone社(Logan,UT)、Chemicon International社(Temecula,CA)、及びICN Biomedical社(Costa Mesa,CA)等の販売業者から入手可能である。
【0127】
脱メチル化された細胞は、支持細胞に加えてプレート上で増殖することができる。あるいは、支持細胞を、初めにコンフルエンスまで増殖し、次にさらなる増殖を防ぐために(例えば、照射により)有糸分裂的に不活化することができる。あるいは、脱メチル化された細胞を、支持細胞層なしで増殖することができる。そのような方法は、一組の細胞、すなわち、脱メチル化された細胞による増殖のみのモニターを必要とするため、細胞培養の管理を単純化するという利点を有している。
【0128】
確立された脱メチル化された細胞の培養:脱メチル化された細胞は、確立されると、種々の技術を用いて上記の条件づけられた培地のもとで培養することができる。1つの例では、容器は無条件の培地において支持細胞を保持している。溶解された支持細胞のマトリックスは、標準法を用いて調製される。次に、培養されることになる脱メチル化された細胞は、条件付けられた培地と共にマトリックスの上に添加される。あるいは、脱メチル化された細胞を、当分野では既知の方法を用いて、生支持細胞上で増殖することができる。次に、脱メチル化された細胞の増殖はモニターされ、培養された細胞が分化した程度が決定される。アルカリホスファターゼのマーカーを使用して、どの細胞が分化したかを確かめることができる。十分な数の細胞が分化した場合、又は、培養物がコンフルエンスまで増殖した場合、少なくとも一部の未分化細胞を継代培養させることができる。細胞を継代培養させるための決定及びそのような継代培養を実現するための技術は、当分野では周知の標準技法を用いて行うことができる。
【0129】
培養における体細胞の脱分化:細胞は、1若しくは複数のメチル供与体又は補酵素(葉酸塩、ベタイン、コリン、ビタミンB6、ビタミンB12及びメチオニン)が欠乏した、又は、増加した量のホモシステイン若しくはSAHを含有する注文設計された増殖培地において増殖する。製法は、Chemicon InternationalSpecialty Media社(Phillipsburg,NJ)又はAmerican Type Culture Collection(ATCC)推薦の培地に基づく。
【0130】
欠乏又は補充の式は以下の表3に示されている。
【0131】
表3
【0132】
【表3】

例として、培地を10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び0.1%ファンギゾンで補うことができる。調製ウシ胎児血清(Invitrogen社)を葉酸塩欠乏培地に添加し、血清中の葉酸を除去する。細胞は、37℃、湿度95%、及び5%COの状態で維持される。培地は3〜4日毎に変えられ、細胞は90%までの培養密度で繰返し6週間まで継代培養される。終点として、減少したシトシンメチル化レベル、減少したSAM:SAH比、並びに、増加したGNMT発現、活性、及び蛋白質存在量が挙げられる。
【0133】
Dnmt活性及びシトシンメチル化を阻害するために、細胞を以下の培地で増殖する:
(a)Dnmt1、2、3a、及び/又は3bsiRNA(Dharmacon Inc社)で処理された培地;
(b)RG108(Analytical Systems Laboratory,LSU School of Veterinary Medicine)で処理された培地;
(c)5−AzadCyd(Sigma社)で処理された培地
製造者の手順に従ったsiRNA形質移入の簡単な説明が以下に提供される。
【0134】
GNMT合成及び活性を促進するために、細胞をATRA(Sigma社)で処理された培地で増殖する。露光からATRAを保護するために、弱められた照明でこの手法を行い、さらに、処理フラスコを箔で包む。
【0135】
ヒストン脱アセチル化を阻害し、脱メチル化を誘導するために、細胞をTSA及び/又はVPA(Sigma社)で処理された培地で増殖する。以下の表4において、それだけに限定されないが、処理濃度が列挙され、条件が示されている。
【0136】
表4
【0137】
【表4】

細胞は、37℃、湿度95%、及び5%COの状態で維持される。培地は3〜4日毎に新たな処理で変えられ、細胞は90%までの培養密度で繰返し6週間まで継代培養される;例外には以下のDnmtsiRNA形質移入法を参照。細胞の生存能力/細胞毒性及び増殖率は、相対的な細胞数により決定される。終点として、減少したシトシンメチル化レベル、減少したSAM:SAH比、増加したGNMT発現、活性、及び蛋白質存在量、並びに、減少したDnmt発現が挙げられる。
【0138】
DnmtsiRNA形質移入:DharmaFECT(Dharmacon Inc社)形質移入試薬、Dnmt1、2、3a、及び/又は3bsiRNA(Dharmacon Inc社)、シクロフィリンbsiRNA(陽性対照siRNA)、又はショウジョウバエ標的外siRNA(陰性対照siRNA)を含有する増殖培地内で、約70〜80%の培養密度で、細胞は形質移入される。Dnmt2は、機能しうると決定されてなく、追加の対照として作用する可能性もある。形質移入は、製造者の手順に従って実行される。細胞を形質移入培地内で48時間培養する。製造者の推奨値に従って、細胞毒性を24時間後に観察する場合、形質移入培地は増殖培地と取り替えられ、培養は24時間追加で続けられる。48時間の培養の後80%の生存能力を示す穴は、分化に使用される。
【0139】
別の実施形態
本発明は、ベータガラクタマーゼ(Galactamase)、ルシフェラーゼ、ベータグルコシダーゼ、又はその他のレポーター遺伝子の使用に基づいた新たなアッセイの開発にも向けられている。そのアッセイは、細胞分化能の脱メチル化及び回復に対するGNMT発現及び/又は活性の影響をモニターする能力を提供する。
【0140】
本発明は、さらに、脱分化されたドナー細胞を用いたSCNTにおける新規の方法の開発に向けられている。
【0141】
本発明は、SCNT再構築ユニット(胚)から胚性幹細胞を誘導する新規の方法の開発にも向けられている。
【0142】
実施例
以下の実施例は、単に、本発明のより完全な理解に寄与するために含まれている。実施例は、本明細書に記述された発明の範囲をいかなる方法でも制限することはない。
【0143】
実施例1−ウシの体細胞メチル化に対するRAの作用:
ウシ連続核移植ドナー体細胞(生きた動物の作製に成功しておらず、低い胚盤胞発生率(<10%、P<0.001)及び低い妊娠開始率(<1%、P<0.05)により特徴づけられた細胞株)を、増殖培地(CON)、又は、DMSO若しくはATRA(DMSO媒体)で処理された増殖培地においてコンフルエントになるまでT−75フラスコ内で培養した。濃度10nM、50nM、及び100nMのATRAを使用した。ATRAの処理に続いて、細胞を収集し、その細胞からDNAを単離した。次に、そのDNAを、逆相HPLCのために、一つのヌクレオチドまで完全に消化した。セザー(Cezar)等により記載されているように逆相HPLCを行い[76]、メチル化されたシトシン残基の相対レベルを測定した。
【0144】
図1に示されているように、HPLCにより、100nMのATRAで処理された培地で培養した細胞におけるメチル化されたシトシンは、対照に比べて相対的に25%減少したことが明らかになった。DMSO又は10〜50nMのATRAで処理された培地で培養した細胞は、メチル化されたシトシンが対照に比べて8〜10%減少したことを示した。これらの結果により、ATRAが、連続核移植を介して得られた細胞等、再プログラミングに抵抗する細胞においてでもメチル化の状態をin vitroで減少できることが示された。
【0145】
図2で示されているように、リアルタイムRT−PCR分析により、SAM:SAH比及び細胞のメチル化能力を調節する鍵となる酵素、グリシン−N−メチルトランスフェラーゼ(GNMT)をコードする遺伝子の上方調節が実証された。(結果は、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水酵素(GAPD)に対するGNMTの比として描写されている。GAPD発現レベルは、GNMTの発現を既知のマーカーに正常化するために使用される。)図2に示されているようなGNMTの上方調節は、図1に示されているDNAメチル化の減少と同時に起こることに注目されたい。さらに、RT−PCRにより、最も診断に役立つ哺乳動物幹細胞/多能性マーカーであるOct4、並びに、Sox2及びnanog(データは示されていない)の上方調節と目立った発現が確証された。RT−PCR実験を商業的に入手可能な道具を用いて製造者の指示(TAQMAN−brand RT−PCRアッセイ、Applied Biosystems社、Foster City,CA)に従い行った。他の研究者等は、Oct4の脱メチル化はマウス体細胞核の能率的な再プログラミングの必要条件であると実証した[20]。
【0146】
これらのデータは、ATRAへの曝露によりGNMTの発現、並びに、おそらくGNMT酵素の活性は増加し、包括的な脱メチル化(Oct4プロモーターの脱メチル化及び後の発現を含む)を生じると示している。減少したDNAメチル化は脱分化と一致し、増加したOct4の発現は分化能の回復と一致する。本発明者の知る限りでは、本発明は、一炭素代謝を改変することにより、幹細胞マーカーを哺乳動物体細胞において誘導した最初の実証である。その結果は、哺乳動物細胞を誘導して通常未分化幹細胞にだけ存在するマーカーを発現することができ、従って、細胞は再プログラムして異なる細胞型に分化できると示したため重要である。
【0147】
実施例2−ウシの体細胞に対するRA及び脂肪生成誘導カクテルの作用:
分化能が回復されたかを決定するために、ウシ体細胞をCON、DMSO、又はATRA培地(実施例1と同じRA)においてコンフルエントになるまでT−75フラスコ内で培養した。ATRA処理に続いて、細胞をRNA単離のために収集し又は6穴プレートに移送して、DMEM、FBS、インシュリン、IBMX、及びデキサメタゾンを含んだ脂肪生成誘導カクテルにおいて培養した。IBMX除去し、48時間後にTZDを添加した。細胞を11〜12日間誘導培地に残し、次に、脂肪滴の存在を確かめるためにオイルレッドO(Aldrich社、Milwaukee,WI)で染色し、又は、RNA単離のために収集した。幹細胞マーカー(Oct4、Sox2、Nanog、AP)及び脂肪生成マーカー(PPARγ、LPL、FAS)のRT−PCRのためにcDNAにRNAを逆転写し、又は、GNMTのワンステップ定量リアルタイムRT−PCRにおいて直接使用した。グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水酵素(GAPDH)をノーマライズ/ハウスキーピング遺伝子として使用した。
【0148】
図3(a)に示されているように、ATRAへの曝露中、胚様体に著しく類似した構造の発生を含む重大な形態変化が観察された。図3(b)において矢印により示されているように、陽性オイルレッドO染色も誘導後に観察され、脂質の存在を示している。PCRによる遺伝子発現分析によって、脂肪細胞分化において既知のマーカーであるPPARγの誘導が明らかになった(データは示されていない)。これらの結果は、体細胞を誘導して他の細胞型に再分化できることを示唆しているため重要である。
【0149】
実施例3−初代培養肝細胞に対するRA及び脂肪生成誘導カクテルの作用:
初代培養ネズミ肝細胞を、50〜200nMATRAで処理した培地において増殖した。処理に続いて、脂肪生成誘導カクテル(実施例2に記述されている)をT−75フラスコに添加することを除いて、上記のウシ体細胞と同じ比較条件のもと細胞を培養した。ATRA処理中に形態変化が観察され、誘導培地への最初の曝露の後48時間以内に、これらの変化は明白になった。脂肪生成誘導培地への曝露後4日目までに、これらの形態変化は球状体発生の開始、及び、対照細胞では達成しない状態である培養密度により証明された明瞭な細胞の増殖により併発された。これらの観察により、終末に分化するこれらの初代培養肝細胞は、培養におけるATRA処理及び脂肪生成誘導培地への曝露に続いて細胞周期に再び入り、処理に続いて著しく増殖したことが示唆されている。
【0150】
実施例4−マウス体細胞に対するRA及び骨形成誘導カクテルの作用:
3T3L1細胞を、50〜200nMATRAで処理した培地において増殖した。ATRA処理に続いて、細胞を6穴プレートに移送して、DMEM、FBS、アスコルビン酸2−リン酸、デキサメタゾン、ベータグリセロリン酸、及びビタミンDを含有した骨形成誘導培地に21日間曝露した。図4(a)及び図4(b)に示されているように、骨形成誘導に続いて、骨芽細胞様の細胞に対する陽性染色(図4(a))及びリン酸カルシウムミネラル化(図4(b))が、それぞれアルカリホスファターゼ及びアリザリン染色を用いて観察された。図5に示されているように、RT−PCRにより、骨芽細胞特異的な分化のマーカーとして既知のオステオカルシン及びcbfa1の誘導が明らかになった。
【0151】
実施例5−干渉RNA技術を用いてDNAメチルトランスフェラーゼ1,3A、及び/又は3Bをノックダウンすることにより回復された分化能を有する細胞を生成する細胞培養物の作製、並びに、細胞株の作製:
干渉RNA技術を用いてDNAメチルトランスフェラーゼ1,3a、及び/又は3bをノックダウンすることで、DNAメチル化のレベルを減少した。培地を改変してsiRNA技術を組み入れることにより、選択的な遺伝子発現抑制を実現できる。基礎培地、その培地に対する特定の処理及び改変、並びに、ノックダウン能力を確かめるための方法を含むこの影響を得るための方法論は、以下に記述される。
【0152】
一炭素代謝を改変する、及び/又は、DNMT活性を阻害することにより、分化能を回復することができる包括的なDNA脱メチル化が誘導される。複数の系譜に再分化する能力を有する脱分化された細胞株を、包括的なエピジェネティックな再プログラミングにより作製することができる。どのようにしてこれが実現されるかは、予備調査により実証される。その予備調査は、siRNA技術を用いたDNMT遺伝子ノックダウンが、SCNTのためのウシドナー細胞株及びマウス線維芽細胞株における包括的なDNA脱メチル化に対して与える影響を分析するよう計画された。
【0153】
実施例5.1−ウシドナー体細胞メチル化及び発生能に対するDNAメチルトランスフェラーゼ1siRNA形質移入の作用:
屠殺場の卵巣から吸引されたウシ卵母細胞を、黄体ホルモン(10IU/ml;Sigma社)、エストラジオール(1mg/ml;Sigma社)、及びFBS(10%;Hyclone社、Logan,UT)で補われた成熟培地(培地199;Biowhittaker社)において、38.5℃の加湿された5%CO培養器内で一晩成熟させた。ファースバーグ(Forsberg)等により記載されているように[131]、ウシ核移植を行った。ロバート(Robert)等により使用されたDnmt1に対するヒトsiRNAは[140]、Dharmacon RNA Technologies(Lafayette,CO)に注文した。その配列は、AAGCAUGAGCACCGUUCUCC.dT.dT(SEQID番号:1)であった。これを、製造者の指示に従って、二重にし、さらに脱塩した。siRNAの形質移入が、リポフェクチン製造者手順に従い起こった。手短に、1Xユニバーサル緩衝液内の2μMsiRNAを、血清を含まない増殖培地(Opti−MEM;Invitrogen社)を有するリポフェクチン(Invitrogen社)形質移入試薬と混ぜ合わせた。(Invitrogen社)及びロバート(Robert)等[140]。形質移入に先立ち、40〜60%までコンフルエントになった細胞から培地を除去し、最終的な形質移入濃度が200nMsiRNA及び0.6%リポフェクチン形質移入試薬になるように、3mlの形質移入試薬液を添加した。
【0154】
細胞を37℃で24時間培養し、血清を含有するAminoMAXブランドの培地(Invitrogen社)で洗浄した。分析に先立ち、細胞を二度形質移入した。同時に生成した対照試料及び試験試料は、以下を含む:
1.
培地のみで処理した細胞
2.
形質移入試薬(リポフェクチン)のみで処理した細胞
3.
対照siRNA(LaminA/C;Dharmacon社)で処理した細胞
4.
試験siRNA(Dnmt1;Dharmacon社)で処理した細胞
以下の図及びレジェンドは、これらの研究を要約している。図6(a)及び図6(b)は、siRNAによるDnmt1のノックダウンを示している。SCNT用ウシドナー細胞におけるsiRNA処理の後、Dnmt1は能率的にノックダウンし(図6(a)、レーンD)、一方で、アクチン発現は影響を受けなかった(図6(a)、レーンG〜I)。これとは対照的に、ラミンsiRNAへの曝露により、ラミン発現はノックダウンされたが(図6(b)、レーンC)、Dnmt1はノックダウンされなかった(図6(a)、レーンC)。HPLC分析により、約40%の包括的なメチル化レベルの減少が、Dnmt1siRNAで処理された細胞において確証され、その後その細胞をSCNTに使用した。図6(c)は、対照(レーンA&B)と比較した場合の、少なくとも2細胞期まで持続したDnmt1のノックダウンを示し(レーンC〜F)、さらに、対照に比べ、胚盤胞発生率は有意に高かった(50%対21%、p<0.05)。
【0155】
実施例5.2−マウス体細胞メチル化に対するDNAメチルトランスフェラーゼ3bsiRNA形質移入の作用:
NIH3T3細胞を200nMマウスDnmt3bsiRNA(Dharmacon RNA Technologies、Lafayette,CO)で形質移入した。プールされたsiRNA配列は:GCAAUGAUCUCUCUAACGU(SEQID番号:2);GGAAUGCGCUGGGUACAGU(SEQID番号:3);UAAUCUGGCUACCUUCAAU(SEQID番号:4);GCAAAGGUUUAUAUGAGGG(SEQID番号:5)である。形質移入手順を、本質的には製造者により記載されているように、本発明において最適化した。手短に、1XsiRNA緩衝液内の2μMsiRNAを、血清を含まない増殖培地(DMEM;Hyclone社、Logan,UT)を有するDharmaFECT形質移入試薬と混ぜ合わせた。形質移入に先立ち、70〜80%までコンフルエントになった細胞から培地を除去し、表面を覆うように形質移入試薬液を添加した。最終的な形質移入濃度は、6穴プレートの1つの穴あたり全容積が2mlで、200nMsiRNA及び0.6%DharmaFECT形質移入試薬であった。
【0156】
細胞を37℃の5%COで24〜48時間培養した。全ての実験は、以下の対照及び試験試料を三組含んだ:
1.
未処理の細胞(培地のみ)
2.
モック形質移入(siRNAは無し;DharmaFECTのみ)
3.
陽性対照siRNA(サイクロフィリン)
4.
陰性対照siRNA(ショウジョウバエ標的外)
5.
試験siRNA(Dnmt3b)
Dnmt3bmRNA発現をリアルタイムRT−PCRにより(TAQMAN−brand RT−PCRキット及び以下の製造者の指示を用いて)決定した。結果は図7(a);n=2に示されている。メチル化レベルをHPLCにより決定した。結果は図7(b);n=3に示されている。
【0157】
図7(a)に示されているように、リアルタイムRT−PCRにより、対照の細胞に比べ、Dnmt3bsiRNAで形質移入された細胞におけるサイクロフィリンbに関連するDnmt3bmRNAレベルが79%減少したことが明らかになった。図7(b)に示されているように、HPLCにより、対照の細胞に比べ、Dnmt3bsiRNAで形質移入された細胞におけるメチル化されたシトシンが52%減少したことが明らかになった。これらのデータは、Dnmt3b遺伝子ノックダウンがメチル化状態をin vitroで減少できると示している。
【0158】
実施例6−ヒト及びマウス体細胞におけるDNAメチルトランスフェラーゼsiRNA形質移入のための新たな培地:
追加のヒト及びマウスDnmtsiRNAは、Dharmacon社(Lafayette,CO)から購入した。プールされたsiRNA配列は:
1.ヒトDnmt1:GGAAGAAGAGUUACUAUAA(SEQID番号:6);
GAGCGGAGGUGUCCCAAUA(SEQID番号:7);
GGACGACCCUGACCUCAAA(SEQID番号:8);
GAACGGUGCUCAUGCUUAC(SEQID番号:9);
2.ヒトDnmt3a:GCACAAGGGUACCUACGGG(SEQID番号:10);
CAAGAGAGCGGCUGGUGUA(SEQID番号:11);
GCACUGAAAUGGAAAGGGU(SEQID番号:12);
GAACUGCUUUCUGGAGUGU(SEQID番号:13);
3.ヒトDnmt3b:GAAAGUACGUCGCUUCUGA(SEQID番号:14);
ACAAAUGGCUUCAGAUGUU(SEQID番号:15);
GCUCUUACCUUACCAUCGA(SEQID番号:16);
UUUACCACCUGCUGAAUUA(SEQID番号:17);
4.マウスDnmt1:1−GGAAAGAGAUGGCUUAACA(SEQID番号:18);
GCUGGGAGAUGGCGUCAUA(SEQID番号:19);
GAUAAGAAACGCAGAGUUG(SEQID番号:20);
GGUAGAGAGUUACGACGAA(SEQID番号:21);
5.マウスDnmt3a:CGCGAUUUCUUGAGUCUAA(SEQID番号:22);
CGAAUUGUGUCUUGGUGGA(SEQID番号:23);
AAACAUCGAGGACAUUUGU(SEQID番号:24);
CAAGGGACUUUAUGAGGGU(SEQID番号:25);
である。
【0159】
全ての手順を、本質的には製造者により記載されているように、本発明において最適化する。手短に、1XsiRNA緩衝液内の2μMsiRNAを、血清を含まない増殖培地(DMEM;Hyclone社、Logan,UT)を有するDharmaFECT形質移入試薬と混ぜ合わせる。形質移入に先立ち、70〜80%までコンフルエントになる細胞から培地を除去し、表面を覆うように形質移入試薬液を添加する。最終的な形質移入濃度は、6穴プレートの1つの穴あたり全容積が2mlで、200nMsiRNA及び0.6%DharmaFECT形質移入試薬である。
【0160】
細胞を37℃の5%COで24〜48時間培養する。全ての実験は、以下の試料を三組含む:未処理の細胞、モック形質移入(siRNA無し、DharmaFECTのみ)、陽性対照siRNA(サイクロフィリンb)、陰性対照siRNA(ショウジョウバエ標的外)、及び試験siRNA。
【0161】
リアルタイムRT−PCRが遺伝子ノックダウンを確かめるために使用される。HPLCが相対的なシトシンメチル化レベルを測定するために使用される。
【0162】
実施例7−干渉RNA技術を用いてMTHFR及び/又はCbsをノックダウンする新たな培地:
干渉RNA技術を用いてMTHFR及び/又はCbsをノックダウンすることにより、SAM:SAH比並びにDNAメチル化を減少する。適切なsiRNAは商業的に購入し(Dharmacon RNA Technologies、Lafayette,CO)、製造者の指示に従って、二重にし、さらに脱塩される。プールされたヒト及びマウスsiRNA配列は:
ヒトMTHFR:AGUGAGAGCUCCAAAGAUA(SEQID番号:26);
GAAGUGAGUUUGGUGACUA(SEQID番号:27);
GACCAAAGAGUUACAUCUA(SEQID番号:28);
GCAAGUGUCUUUGAAGUCU(SEQID番号:29);
ヒトCbs:AGACGGAGCAGACAACCUA(SEQID番号:30);
CACCACCGCUGAUGAGAUC(SEQID番号:31);
GGACGGUGGUGGACAAGUG(SEQID番号:32);
GGAAGAAGUUCGGCCUGAA(SEQID番号:33);
マウスMTHFR:CGCCAUGGCUACAGAGUAA(SEQID番号:34);
GCGGAAACCAGCCUGAUGA(SEQID番号:35);
CAGAAGGCCUACCUCGAAU(SEQID番号:36);
CAUACGAGCUGCGGGUCAA(SEQID番号:37);
マウスCbs:GCAAACAGCCUAUGAGGUG(SEQID番号:38);
GCAAAGUCCUCUACAAGCA(SEQID番号:39);
GAUCGAAGAUGCUGAGCGA(SEQID番号:40);
CAACCCUUUGGCACACUA(SEQID番号:41);
である。
【0163】
陽性及び陰性siRNAは、Dharmacon社から購入し、直接形質移入に使用する。
【0164】
全ての手順を、本質的には製造者により記載されているように最適化する。手短に、1XsiRNA緩衝液内の2μMsiRNAを、血清を含まない増殖培地(DMEM;Hyclone社、Logan,UT)を有するDharmaFECT形質移入試薬と混ぜ合わせる。形質移入に先立ち、70〜80%までコンフルエントになる細胞から培地を除去し、表面を覆うように形質移入試薬液を添加する。最終的な形質移入濃度は、6穴プレートの1つの穴あたり全容積が2mlで、200nMsiRNA及び0.6%DharmaFECT形質移入試薬である。
【0165】
細胞を37℃の5%COで24〜48時間培養する。全ての実験は、以下の試料を三組含む:未処理の細胞、モック形質移入(siRNA無し、DharmaFECTのみ)、陽性対照siRNA(サイクロフィリンb)、陰性対照siRNA(ショウジョウバエ標的外)、及び試験siRNA。
【0166】
リアルタイムRT−PCRが遺伝子ノックダウンを確かめるために使用される。HPLCが相対的なシトシンメチル化レベルを測定するために使用される。
【0167】
実施例8−GNMTの転写、蛋白質発現、及び活性を増加する新たな培地:
GNMTの転写、蛋白質発現、及び活性を増加することにより、SAM:SAH比並びにDNAメチル化は減少する。このことは、GNMT活性を増加する、及び/又は、SAM:SAH比を減少する等、ATRAと類似した作用を有する化合物、抽出物、分子の同定を必要とする。
【0168】
メチル供与体をin vitroで激減させることにより、SAM:SAH比及びDNAメチル化は減少する。培地は注文設計され、1若しくは複数のメチル供与体又は補酵素(葉酸塩、ベタイン、コリン、ビタミンB6、ビタミンB12、及びメチオニン、及び/若しくはその他)が欠如する;又は、増加した量のホモシステインを有する;又は、欠如したメチル供与体/補酵素及び/若しくは増加した量のホモシステインの組合せを有する。配合は、表5に示されているように、改変を有してHyclone社の1640培地(Hyclone社、Logan,UT)に基づいている。
【0169】
表5
【0170】
【表5】

実施例9−ホモシステインのレベルをin vitroで増加する培地:
ホモシステインのレベルをin vitroで増加することにより、SAM:SAH比及びDNAメチル化は減少する。培地は注文設計され、増加した量のホモシステイン;又は、欠如したメチル供与体/補酵素及び/若しくは増加した量のホモシステインの組合せを含む。配合は、表6に示されているように、改変を有してHyclone社の1640培地に基づいている。
【0171】
表6
【0172】
【表6】

減少若しくは激減されたレベルの特定のメチル供与体若しくは複数のメチル供与体を有する、又は、増加したレベルのホモシステイン又は減少若しくは激減されたレベルの特定のメチル供与体若しくは複数のメチル供与体と組み合わせた増加したレベルのホモシステインを含有する規定された培地において細胞を培養することにより、SAM:SAH比及びDNAメチル化は減少する。
【0173】
実施例10−GNMTプロモーターを用いたハイスループットアッセイ:
GNMTの発現を増加し、及び/又は、GNMTを活性化する因子は、おそらく、DNAメチルトランスフェラーゼを下方調節し、包括的なメチル化レベルを減少するものである。βラクタマーゼを基にしたアッセイ(及び/又は以下に記述された他のアッセイ)は、GNMT転写の誘導により、GNMT発現のインデューサー(並びにサプレッサー)を同定するために開発されている。
【0174】
βラクタマーゼアッセイ(Invitrogen社)を使用して、細胞を基にしたアッセイを開発する。その細胞を基にしたアッセイを使用して、一炭素代謝経路を介してDNA脱メチル化を誘導する薬物、分子、及び抽出物、並びに、in vitroで回復された多能性及び多分化能性の細胞株の再分化を誘導する薬物、分子、及び抽出物を同定することができる。最初の目的は、GNMTの発現を誘導する薬物、分子、及び抽出物をスクリーンするために使用することができる細胞を基にしたアッセイを開発することである。
【0175】
このアッセイの基礎は、GeneBLAzer技術(Invitrogen社)である。そのGeneBLAzer技術は、ハイスループットスクリーニングのために生細胞染色、蛍光活性化セルソーティングとの適合性、レシオメトリック読み出し、及び最適化されたプラットフォームを提供する膜浸透性の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を基にした基質(CCF2−AM)に基づいた遺伝子レポーターシステムである。405nmでのCCF2の励起により、それぞれ、CCF2基質分子におけるFRETの欠如のため、青/緑色の放出物が生じる。細胞浸透性のCCF2−AMは、セファロスポリン核により連結された2個のフルオロフォア、7−ヒドロキシクマリン、及びフルオレセインからなっている。
【0176】
405nmでのクマリンの励起は、530nmで緑色の蛍光光線を放射するフルオレセイン部分にFRETを生じる。βラクタマーゼにより、CCF2−AM基質分子のセファロスポリン核内にあるβラクタム部分は2個の独立したフルオロフォアに切断され、FRETは崩壊する。
【0177】
405nmでの細胞の励起は、460nmで検知されるクマリンによる青色の蛍光放出を生じる。細胞にβラクタマーゼが存在することにより、緑色の蛍光細胞は青色の蛍光細胞へと変化する。このように、異なる放出特徴を有する細胞をFACS分析中に収集することができる。
【0178】
ヒトGNMTの5’上流領域を含む1.8kbのDNA断片を、ゲノムDNAからPCR増幅する。使用されるプライマーは:
Pr4546:5’−GGGGTACCAGCATCTT−3’(SEQID番号:42)及び
Pr6391:5’−GCGAGATCTCCTGCGCCGCGCCTGGCT−3’(SEQID番号:43)である。
【0179】
PCRの条件は、1.5mMMgCl、200nmプライマー、60℃での1分間のアニーリングステップを35サイクル、72℃での2分間の延長、及び35サイクルである。
【0180】
増幅後、SDS及びEDTAをそれぞれ0.1%及び5mMまで添加する。DNAを、2.5M酢酸アンモニウム及び70%エタノールで沈殿させる。断片をKpnI及びBglIIで消化し、ゲル電気泳動後にアガロースから溶出により単離する。その断片を、βラクタマーゼMコード配列(blaM)遺伝子を担時するベクターp7−blaMに結合する。リポフェクタミン2000ブランドの試薬(Invitrogen社)を形質移入試薬として用いて、そのコンストラクトをCHO−K1細胞に形質移入する。挿入断片無しのベクターを陰性の対照として形質移入する。ゼオシン(Zeocin)への耐性により安定した細胞を選択する。10%炭処理血清、pen/strep、及び10mMHEPES緩衝液を有するフェノールレッドを含まないMEM−α培地において細胞を増殖する。
【0181】
βラクタマーゼ低発現を有するクローンを、FACS分析により選択する。細胞を、FACS緩衝液[リン酸緩衝食塩水(PBS)、5%炭処理FBS]で2回トリプシン処理及び洗浄し、さらに細胞浸透性のFRETを基にした基質(CCFs−AM)に適切なGeneBLAzer技術を用いて1×10細胞/mlの濃度で載せ、暗い場所で1時間穏やかに振盪する。
【0182】
細胞を遠心分離により回収し、同じ細胞濃度のFACS緩衝液において再懸濁する。細胞をベクトン−ディッキンソンFACStarplusセルソーター(Franklin Lakes,NJ)を用いて分別する。アルゴンUVレーザーを用いて基質に載せられた細胞を励起させる。反応している緑色の蛍光を有するクローンを、200g/mlゼオシン(Zeocin)を有する増殖培地を含んでいる96穴プレートに収集し、最終的な細胞集団が6×106になるまで増殖する。安定した細胞株をATRAで処理することにより、誘導能を調べる。
【0183】
先の実験により、GNMT転写のATRAに対する容量反応が実証されている。この反応を、アッセイが成功しているかどうかの判断基準として使用する。特に、3倍の誘導が100nMATRAでの処理により検出され、リアルタイムPCRにより確かめられた場合に、アッセイは成功していると考えられる。ATRA誘導性のβラクタマーゼ発現を有するクローンを同定し、さらなる開発のために使用する。
【0184】
ルセリフェラーゼ(Luceriferase)、ベータガラクトシダーゼ、又はその他のレポーター遺伝子を使用した類似の処理を用いたアッセイを利用することも本発明の範囲内である。
【0185】
本発明は、本明細書において例示され記述された部分の特定の構成及び配置に制限されないが、請求項の範囲内でそのような改変された形状を含むことが理解されたい。
【0186】
本国際出願は、2005年8月1日に出願した米国仮出願番号第60/704,465号に基づく優先権を主張するものであり、60/704,465号の全内容を本国際出願に援用する。
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[配列表]




















【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】増殖培地のみ(CON)、DMSOで処理された増殖培地(DMSO)、及び、オールトランスレチノイン酸で処理された増殖培地(ATRA)においてコンフルエンスまで成長した後のウシ連続核移植ドナー体細胞におけるシトシンメチル化の相対レベルを描写するグラフである。実施例1を参照。
【図2】増殖培地のみ(CON)、DMSOで処理された増殖培地(DMSO)、及び、オールトランスレチノイン酸で処理された増殖培地(ATRA)においてコンフルエンスまで成長した後のウシ連続核移植ドナー体細胞におけるGNMT遺伝子発現のレベル(リアルタイムPCRにより測定)を示すグラフである。実施例1を参照。
【図3】実施例2に記述されているように処理されたウシの細胞を示す写真である。図3(a)はATRAで処理された後の細胞を示している。図3(b)はATRA処理に続くオイルレッドO(脂質用の一般的な染色)を用いた陽性染色後の細胞を示している。実施例2を参照。
【図4】実施例4に記述されているように、ATRAに続いて骨形成誘導培地で処理されたマウスの3T3L1細胞を示す写真である。図4(a)は、アルカリホスファターゼ染色を用いた骨芽細胞様の細胞検査で陽性と出た細胞を描写している。図4(b)は、アリザリン染色を用いてリン酸カルシウムミネラル化を示す細胞を描写している。
【図5】ATRAに続いて骨形成誘導培地で処理されたマウスの3T3L1細胞におけるオステオカルシン及び骨芽細胞特異的マーカーであるcbfa1の遺伝子発現を示す(RT−PCRによる)ゲルの写真である。実施例4を参照。
【図6】実施例5に記述されているように、siRNAによるDnmt1遺伝子のノックダウンを示すゲルの写真である。図6(a)は、Dnmt1siRNAを用いたDnmt1の特異的ノックダウンを描写している。図6(b)は、ラミンsiRNAを用いたラミンの特異的ノックダウンを描写している。図6(c)は、図6(a)に示されているDnmt1のノックダウンを示すゲルで、Dnmt1が少なくとも2細胞期まで持続した写真である。実施例5を参照。
【図7】実施例5.1に記述されているように、マウスNIH3T3体細胞のメチル化に対するDNAメチルトランスフェラーゼ3bsiRNA形質移入の効果を示すグラフである。図7(a)は、対照と比較してDnmt3bmRNAレベルが79%減少したことを示すリアルタイムPCRの結果を描写している。図7(b)は、細胞内のメチル化されたシトシンが52%相対的に減少したことを示すHPLCの結果を描写している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞を再プログラムする方法であって:
(a)前記真核細胞におけるS−アデノシルメチオニン対S−アデノシルホモシステイン比(SAM対SAH比)を減少させるステップを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって:
(b)前記真核細胞内のDNAにおける5−メチルシトシンのレベルを減少させるステップをさらに含む方法。
【請求項3】
ステップ(a)及び(b)を同時に行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、前記真核細胞内のDNAメチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)が、前記細胞をDNAメチルトランスフェラーゼ阻害物質に接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成された低分子干渉リボ核酸(siRNA)に前記細胞を接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、SEQID番号:1乃至41からなる群から選択されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、前記真核細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)が、前記細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量のレチノイン酸に前記細胞を接触させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記SAM対SAH比を0.1以下まで減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記SAM対SAH比を0.5以下まで減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記SAM対SAH比を1.00以下まで減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
真核細胞を再プログラムする方法であって:
(a)真核細胞内のDNAメチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制するステップ;並びに、同時に、
(b)前記真核細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性を増加させるステップ;
を含む方法。
【請求項14】
ステップ(a)が、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)が、抑制に効果的な量の、細胞内のDNAにおける5−メチル化シトシンを少なくとも約5%だけ減少するよう抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAにその前記細胞を接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)が、前記細胞内のグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量のレチノイン酸に前記細胞を接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)が、オールトランスレチノイン酸に前記細胞を接触させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)が、レチノイン酸受容体に結合する化合物に前記細胞を接触させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)及び(b)と同時に、(c)5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ並びにシスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼからなる群から選択された前記細胞内の酵素の発現、活性、又は発現及び活性を特異的に抑制するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
SEQID番号:1乃至41からなる群から選択されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
真核細胞における分化能を変更する方法であって、当該方法は、ある量のsiRNAに前記真核細胞をin vitroで接触させることを含み、前記siRNAは、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されるが、ただし、前記siRNAはグリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現を抑制せず、さらに、前記量は、ゲノム全域にわたるDNA脱メチル化を誘導するのに効果的であり、細胞の分化能が増加する方法。
【請求項22】
前記真核細胞が、幹細胞、前駆細胞、体細胞、及び体細胞核移植に提起された細胞(NT細胞)からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
DNAメチルトランスフェラーゼ1(Dnmt1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)、及びDNAメチルトランスフェラーゼ3b(Dnmt3b)からなる群から選択されたDNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的なある量の化合物に前記細胞を接触させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
レチノイン酸に前記細胞を接触させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
オールトランスレチノイン酸に前記細胞を接触させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
siRNA及びオールトランスレチノイン酸を組合せで含む組成物に前記細胞を接触させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
分化細胞における分化能を増加させる方法であって、当該方法が、組成物に分化細胞をin vitroで接触させることを含み、前記組成物は:
(i)ノックダウンに効果的な量の低分子干渉リボ核酸(siRNA)であって、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNA;
(ii)ノックダウンに効果的な量の、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ及びシスタチオン(Cystathione)ベータシンターゼからなる群から選択された酵素の発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNA;並びに、
(iii)グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的な化合物;
の組合せを含み、
前記細胞内のゲノム全域にわたるDNA脱メチル化を誘導するのに効果的な時間の間、前記組成物に前記細胞を接触させ、それによって細胞の分化能が増加する、方法。
【請求項29】
DNAメチルトランスフェラーゼ1(Dnmt1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)、及びDNAメチルトランスフェラーゼ3b(Dnmt3b)からなる群から選択されたDNAメチルトランスフェラーゼの発現を特異的に抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAを含む組成物に前記細胞を接触させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的な前記化合物がレチノイン酸である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
グリシン−N−メチルトランスフェラーゼの発現、活性、又は発現及び活性両方を増加させるのに効果的な前記化合物がオールトランスレチノイン酸である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
SEQID番号:1乃至41からなる群から選択されたsiRNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
細胞の発生能を決定する方法であって、当該方法が、前記細胞におけるSAM対SAH比を決定することを含み、約1.0未満のSAM対SAH比は、前記細胞の発生能が増加されたことを示す、方法。
【請求項34】
前記細胞のDNAに存在するシトシン残基のメチル化を測定することをさらに含み、約10%未満のメチル化は、前記細胞の発生能が増加されたことを示す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細胞における分化能を調節する方法であって:
(a)前記細胞におけるSAM対SAH比を約1.0未満に維持するステップ;及び、
(b)前記細胞のDNAにおけるシトシン残基のメチル化を約40%未満に維持するステップ;
を含む方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって:
(a)前記細胞における前記SAM対SAH比を約0.5未満に維持するステップ;及び、(b)前記細胞のDNAにおけるシトシン残基のメチル化を約20%未満に維持するステップ;
を含む方法。
【請求項37】
分化細胞における分化能を増加させるための細胞培地であって、前記分化細胞は当該培地内に配置され、前記細胞の生存率を維持するのに十分な基本培地を、当該細胞培地に存在するメチル供与体の活性を減少させる因子と組み合わせて含む細胞培地。
【請求項38】
前記因子が、ホモシステイン及びオールトランスレチノイン酸からなる群から選択される、請求項37に記載の細胞培地。
【請求項39】
前記因子が、抑制に効果的な量の、DNAメチルトランスフェラーゼの発現を抑制するために必要な大きさで形成されたsiRNAである、請求項37に記載の細胞培地。
【請求項40】
細胞分化に影響を及ぼす化合物を同定する方法であって:
(a)細胞のDNAにおいてメチル化されたシトシンの割合を少なくとも約5%だけ減少させるステップであり、前記細胞が前記減少の前に第一の表現型を有する、ステップ;
(b)前記細胞におけるSAM対SAH比を約1.0未満に減少させるステップ;次に、
(c)細胞の分化に影響を及ぼすのではないかと思われる化合物に前記細胞を接触させるステップ;及び、
(d)前記細胞の第一の表現型を、ステップ(c)後の前記細胞の表現型と比較するステップであって、第一の表現型とは異なる表現型のステップ(c)後の出現は、前記化合物が細胞分化に影響を及ぼすことを示す、ステップ;
を含む方法。
【請求項41】
ステップ(a)が、前記細胞の前記DNAにおけるメチル化されたシトシンの割合を少なくとも約5%だけ減少させることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(a)が、前記細胞の前記DNAにおけるメチル化されたシトシンの割合を約10%だけ減少させることも含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、転写における変化をモニターするためにレポーターシステムを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記レポーターシステムが、ルシフェラーゼ活性、ベータラクタマーゼ活性、及びベータガラクトシダーゼ活性からなる群から選択された酵素活性の存在を測定する、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【公表番号】特表2009−502201(P2009−502201A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525122(P2008−525122)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029944
【国際公開番号】WO2007/016566
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508115015)ニューポテンシャル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】