説明

回虫糞便抗原の検出

糞試料中に回虫が存在するか否かを検出するための組成物、装置、キット、および方法。本発明の組成物、装置、キット、および方法を使用して、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫にも感染している可能性がある哺乳動物由来の糞試料中に、回虫が存在するか否か確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、動物中の回虫を検出するための組成物、装置、キット、および方法に関する。より詳しくは、本発明は、糞試料中に回虫が存在するか否かを検出するための組成物、装置、キット、および方法に関する。さらにより詳しくは、本発明は、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫抗原も含んでいる可能性がある糞試料中に、回虫抗原が存在するか否かを検出するための抗体組成物、装置、キット、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術の記載
回虫の腸管感染は、動物中でよく起こることであり、もし治療せずにいると、重大な病気や死さえも引き起こしうる。回虫に感染した動物を、あるタイプの寄生虫(蠕虫)感染を有するとして診断することは比較的容易であるが、原因虫として特異的に回虫を同定することはより難しい。これは問題である。なぜなら、感染した動物の介護者が、回虫が特定の感染源であるという知識を有していると、回虫感染が最もよく治療されるからである。たとえば、そのような知識により、介護者は動物を、回虫に対して最も適した強力な薬を用いて治療することができ、よって、寄生虫感染に対して一般的に有効であるが、回虫に対して最も有効なわけではない薬または薬の混合物の使用を避けることができる。
【0003】
回虫感染を診断するための現在の方法は、第一に、糞試料の顕微鏡検査に関するものであり、糞の塗抹標本中に直接、または密度媒体中での浮遊によって卵および寄生虫の濃度を追跡する。この手順がよく採用されているにもかかわらず、この方法は重大な欠陥を有する。これらの顕微鏡を用いた方法は、時間を要し、特別な装置を必要とし、特異性が低い。また、これらの方法の結果の精度は、操作者の技術および専門的知識に非常に依存する。
【0004】
分類学的な区別は、一般的に、特定の虫種に対する、または虫種の定義した群に対する、一以上の抗体の一以上の抗原が、動物中に存在するかどうかを判定することにより、分子レベルにおいて行われうる。たとえば、ヒルらは(Veterinary Parasitology (1997), vol. 68, pp. 91-102)、ブタ由来血清中の鞭虫に特異的な抗体を検出するための酵素結合性免疫吸着測定(ELISA)法を開示している。ヒルらのテストは、回虫または鉤虫に感染したブタ由来の血清と交差反応していないが、該テストが心糸状虫に感染したブタ由来の血清と交差反応するかどうかは判定されていない。同様に、ヤマサキらは(J. Clin. Microbiology (2000), vol. 38, pp. 1409-1413)、ヒト血清中の回虫に特異的な抗体を検出するための組換え回虫抗原を利用した、ELISAテストを開示している。ヤマサキらのアッセイは鉤虫または心糸状虫と交差反応しないことが示されているが、鞭虫と交差反応するかどうかは判定されていない。ブンギロおよびカッペッロは(A. J. Trop. Med. Hyg. (2005), vol. 73, pp. 915-920)、実験用ハムスターモデル系においてセイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)による感染を検出するELISAを開示しているが、彼らのテストが一以上の回虫、鞭虫、および心糸状虫とも交差反応するかどうかは判定されていない。
【0005】
臨床医は、寄生虫に感染した動物を診断するためにこれらのアッセイを使用することに対して、ほとんど興味を示してこなかった。これらのアッセイが採用されなかった一つの理由は、研究者が、いずれのアッセイによっても、寄生虫のすべての他の主要なタイプを排除して、寄生虫の特定のタイプを特異的に検出できることを実証しなかったためである。たとえば、誰も、回虫を特異的に検出するが、鉤虫、鞭虫、および心糸状虫には交差反応を示さないアッセイを、まだ開発していない。単一の原因への動物の感染を特定することができないことにより、診断が不確実となり得、よって、最適以下の治療がされうる。
【0006】
さらに、これらのアッセイのいくつかは、血清試料中の抗原または抗体を検出するのに有用であることしか示していない。病気の動物から血清試料を得ることはたいてい実用的でないか、または難しいので、これは制限的である。たとえば、非協力的な動物の場合、血液を取り出すために動物を安定させることも難しいであろうし、また、ひどい病気の動物の場合、同様の目的のために動物を臨床医のオフィスまで運ぶことは非現実的だろう。したがって、特定の寄生虫タイプの有無を調べることは、糞便のような、容易に取得可能で、動物を運ぶ必要がない、動物の材料を用いてより好ましく行われる。糞試料中に存在する抗原は、糞便抗原と呼ばれる。本発明の主題である寄生虫抗原の場合、糞便抗原は、宿主動物の糞試料中に存在する寄生虫抗原である。
【0007】
これらのアッセイのいくつかに固有の他の制限は、それらが、特異的な組換え抗原の生産および精製を伴うことである。具体的には、かかる抗原を生産し精製するのに必要な工程は費用と時間がかかるので、これは制限的である。
【0008】
したがって、必要なものは、糞試料中に回虫が存在するか否かを検出するための組成物、装置、キットおよび方法である。必要とされる組成物、装置、キットおよび方法は、さらに、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫を含有する糞試料中に回虫が存在するか否か、を特異的に検出できるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、ポリクローナル抗体の予期しない性質の発見に、一部基づく。具体的には、回虫全体抽出物、回虫生殖器系抽出物、または回虫腸管抽出物に対して生じるポリクローナル抗体が、一以上の鞭虫、心糸状虫、および鉤虫に外寄生されている哺乳動物中の、回虫糞便抗原の有無を捕捉および検出するために使用できることが特定された。回虫、鞭虫、心糸状虫および鉤虫は関連する線形動物であり、これらの寄生虫のいずれの全体抽出物、回虫生殖器系抽出物、または回虫腸管抽出物に対して生じるポリクローナル抗体は、一以上の他の寄生虫、宿主抗原、または他の糞便の成分と交差反応をすると予測されていたことから、回虫に対するこの特異性は驚くべきものである。本発明は、本発明の抗体を、一以上の鞭虫、心糸状虫、および鉤虫にも外寄生されている可能性がある哺乳動物中の回虫糞便抗原の有無を特異的に捕捉および検出するように使用することができる、アッセイ条件を含む。
【0010】
本発明は、一の態様において、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、またはヒト等のような哺乳動物の糞試料中に回虫が存在するかどうかを検出するための装置である。本発明は、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫にも感染している可能性がある哺乳動物の糞試料中に回虫が存在するかどうかを検出するための装置を、さらに提供する。本発明の一の態様において、装置は固体担体を含むものであって、一以上の回虫抗原に特異的な一以上のポリクローナル抗体が、固体担体上に固定される。
【0011】
本発明のある態様において、本発明の装置は、側方流免疫学的装置(lateral flow immunoassay device)を含む。本発明の他の態様において、本発明の装置は、ELISA装置を含む。
【0012】
本発明は、抗体および抗体組成物も含む。より具体的には、本発明は、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫にも感染している可能性がある哺乳動物中の、回虫糞便抗原に特異的に結合することができるポリクローナル抗体に関する。本発明の抗体は、糞試料中の鉤虫、鞭虫、または心糸状虫抗原に実質的に結合しない。本発明は、かかる抗体を生産する方法をさらに含む。
【0013】
本発明は、糞試料中の回虫の有無を検出する方法でもある。該方法は、糞試料を抗体に接触させる工程、該糞試料中に回虫の糞便抗原があるかどうか捕捉および検出する工程を含む。検出工程は、抗原/抗体複合体の有無の検出を含んでもよい。該方法は、さらに、抗原/抗体複合体の抗原に結合する第2の抗体を提供する工程を含んでもよい。
【0014】
本発明は、哺乳動物から得た糞試料中の回虫糞便抗原を検出するためのアッセイキットを、さらに含む。したがって、キットは、本発明の一以上の組成物および/または装置を含むことができる。例えば、キットは、抗回虫抗体、および試料中の回虫抗原への抗体の結合を判定するための手段を含むことができる。一の特定例において、必要であるか適切であるならば、かかるキットは、固定された抗回虫抗体、一以上の抗原捕捉試薬(例えば、固定されていない標識化された抗原捕捉試薬や固定された抗原捕捉試薬)および洗浄試薬、ならびに検出試薬、および陽性対照試薬および陰性対照試薬を有する装置を含む。バッファー、対照等のような他の成分も、かかるテストキット中に含まれてもよい。キットは、本発明の一以上の方法を実施するための取扱説明書をさらに含んでもよく、キットと一緒に含まれている本発明の任意の装置を使用するための取扱説明書を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
【図1A】図1Aは、本発明のマルチウェルプレート装置を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aのプレートの1のウェルの拡大図を、そこに固定された抗体を表す例とともに示す。
【図2】図2は、第一の実験において本発明の方法に従うことにより、イヌ糞試料から得られた吸光度(OD)の値のグラフを示す。
【図3】図3は、第二の実験において本発明の方法に従うことにより、イヌ糞試料から得られたOD値のグラフを示す。
【図4】図4は、第三の実験において本発明の方法に従うことにより、イヌ糞試料から得られたOD値のグラフを示す。
【図5】図5は、第四の実験において本発明の方法に従うことにより、ネコ糞試料から得られた第一のOD値のグラフを示す。
【図6】図6は、第四の実験において本発明の方法に従うことにより、ネコ糞試料から得られた第二のOD値のグラフを示す。
【図7】図7は、第五の実験において本発明の方法に従うことにより、イヌ糞試料から得られた第一のOD値のグラフを示す。
【図8】図8は、第五の実験において本発明の方法に従うことにより、イヌ糞試料から得られた第二のOD値のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、一の態様において、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、またはヒト等のような哺乳動物における腸管回虫感染を検出するための装置である。該装置は、一以上の鉤虫、鞭虫、および心糸状虫にも感染している可能性がある哺乳動物由来の糞試料中に、回虫糞便抗原が存在するか否かを検出するのを助けるように配置される。本発明の一の態様において、装置は固体担体を含み、回虫全体抽出物、回虫生殖器系抽出物、および/または回虫腸管抽出物に対して生じ、一以上の回虫抗原に特異的である一以上のポリクローナル抗体が該固体担体に固定される。固体担体は、例えば、側方流装置中のプレートまたは基板とすることができる。
【0017】
図1Aおよび1Bに示す通り、本発明の装置は、例えば、複数のウェル12を含むマルチウェルプレート10である。各ウェル12は、回虫に特異的なポリクローナル抗体16を固定するための固体担体14を提供する。プレート10は、限定するものではないが、イムロン1B96穴プレート(Immulon 1B 96-well plate)とすることができる。あるいは、該装置は、米国特許5,726,010に記載されているような側方流アッセイとすることもできる。
【0018】
一般に「抗トキソカラ属抗体(anti-Toxocara pAB)」と名付けられる、固体担体14上に固定されたポリクローナル抗体16は、トキソカラ属の種の全体抽出物、または、トキソカラ属の種の生殖器系の全体もしくは一部、腸管系の全体もしくは一部等のような部分抽出物を、ウサギ等の動物に投与し、その動物から血清を採取し、抗トキソカラ属抗体を精製することにより生産される。具体的には、抗トキソカラ属抗体は、プレート10のウェル12の固体担体14上に、物理的吸着により固定される。抗トキソカラ属抗体が、行われうる任意の工程により洗い流されないように、および、本発明の方法が実施されている間、糞試料中の抗原の抗トキソカラ属抗体への特異的な結合が、固体担体14または他の装置表面により妨げられないように、固体担体14上への抗トキソカラ属抗体の固定が行われる。本発明の装置10は、本発明の方法によって回虫抗原を検出するのに適しており、該方法はELISAアッセイを行うことを含んでもよい。
【0019】
本発明の方法を使用して、試料中の一以上の回虫抗原を検出することができる。本発明の方法において使用されるテスト試料は、糞試料である。本発明の方法を使用して、例えば、ネコ、イヌ、ウシ、またはヒト等のような任意の哺乳動物由来の糞試料をテストすることができる。
【0020】
本発明の装置10は、固体担体14上に固定された抗トキソカラ属抗体を含んでいるが、本発明の方法とともに使用して、糞試料中の回虫を検出することができる。具体的には、動物の活動性回虫感染は、一以上の回虫糞便抗原を、装置10の固体担体14上に固定された抗トキソカラ属抗体を用いて検出することにより診断されうる。「回虫糞便抗原」は、抗トキソカラ属抗体に特異的かつ安定に結合できる、糞試料中に存在する任意の回虫成分である。したがって、回虫糞便抗原は、回虫全体、回虫の卵、回虫の断片、回虫から分泌された、排泄された、もしくは脱落した産物、またはそれらの混合物とすることができる。
【0021】
「特異的」または「安定に結合」とは、抗トキソカラ属抗体が回虫糞便抗原を認識し、抗トキソカラ属抗体が回虫糞便抗原に、他の糞便抗原(例えば、回虫ではない寄生虫由来の糞便抗原)よりも大きなアフィニティーで結合することを意味する。特異的に結合することは、当該技術分野で周知の方法論、例えばELISAまたはラジオイムノアッセイ(RIA)を用いてテストすることができる。本発明の方法において、回虫抗原はELISAによって検出される。本発明のELISA法の具体例は、以下の通りである。本発明は、具体的なELISA法について記載されているが、当業者は別の、追加の、または代用のELISA工程が、基本的な狙いから逸脱することなく使用されうることがわかると理解される。
【0022】
本発明の方法は、5つの実験を一緒に含む2つの実施例を参照して具体的に記載されるが、それらに限定されていると解釈されない。
【0023】
実施例A
以下の材料および方法を使用して、下記の実験1、2、3、および4に記載されているデータを生成した。
【0024】
ポリクローナル抗体の調製。ポリクローナル抗体「抗トキソカラ属抗体」(IgG)は、ウサギ中で回虫(イヌ回虫(Toxocara canis))全体抽出物(Antibody Systems Inc.、ハースト、テキサス)に対して産生され、標準的な方法を用いることにより血清から精製された。つまり、破壊された回虫全体の抽出物は、感染したイヌから回虫を回収し、それらを洗浄し、溶液中に再懸濁することにより調製された。次に、再懸濁された寄生虫は、組織均質化(tissue homogenization)により破壊され、遠心によりペレット状にされて、溶液に再懸濁された。この再懸濁液はウサギに投与され、免役されたウサギ由来の血清が回収された。抗トキソカラ属抗体は、Gタンパク質アフィニティークロマトグラフィーによるIgG抗体の単離によって、免役されたウサギの血漿から精製された。
【0025】
ネコおよびイヌの感染および抗蠕虫治療。すべての4つの実験のため、健康なネコまたはイヌに、回虫(トキソカラ)、鉤虫(イヌ鉤虫((Ancylostoma canium))、または鞭虫(イヌ鞭虫(Trichuris vulpis))の、約150−300個の仮性の卵を経口投与することにより、寄生線形動物感染をもたらした。(具体体には、イヌ回虫(Toxocara canis)はイヌに投与された回虫であり、ネコ回虫(Toxocara cati)はネコに投与された回虫であった。)実験2のために、心糸状虫(イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis))に自然感染しているとわかっているイヌから糞試料が回収された。さらに、実験3および4のみのために、スイス、バーゼルのノバルティスアニマルヘルス株式会社から市販されている駆虫薬であるInterceptor(登録商標)を用いて、製品のプロトコールに従って、イヌは感染後91日に処置され、ネコは感染後56日に処置された。当業者には、Interceptor(登録商標)が回虫、鉤虫、鞭虫、および心糸状虫のイヌおよびネコからの除去に有効であることは周知である。感染は、これらのイヌおよびネコから得られた糞試料中の、寄生虫の卵を顕微鏡観察することによって確認された。顕微鏡観察により寄生虫の卵がないとわかった糞試料を生成したイヌ及びネコは、感染していないと考えられた。
【0026】
イヌおよびネコの糞試料の調製。寄生虫感染していないとわかっている、または回虫、鉤虫、鞭虫、または心糸状虫のいずれか一つに感染しているとわかっているイヌおよびネコが、糞試料の源を提供した。新鮮で保存処理されていないイヌまたはネコの糞試料由来の試料(約1グラム)を、希釈液4ml中に懸濁した(「希釈液」は、0.05M トリス塩基; 1mM EDTA; 0.45% カトン(Kathon); 16mg/ml 硫酸ゲンタマイシン; 0.05% Tween−20; 40% ウシ胎児血清; 10% ウサギ血清; および5%マウス血清)。懸濁液は4000rpmにて20分間遠心されて、第一の上清が生成された。第一の上清は12000rpmにて5分間遠心されて、第二の上清が生成され、本明細書ではこれを「糞抽出物」と呼ぶ。
【0027】
ELISAアッセイ。精製された抗トキソカラ属抗体(5μg/ml; 100μl/ウェル)は、物理的吸着によって、イムロン1B96穴プレート(Immulon 1B 96-well plate)上に、4℃にて一晩で固定された。その次に、プレートを、0.1M トリスpH7.0中1% BSAを用いて、4℃にて一晩、ブロッキングし、続いて室温にて乾燥させた。約100μlの糞抽出物を各ウェルに加え、室温にて1時間インキュベートした。当業者に周知の標準的な方法に従って、ウェルを、PBS−Tween20溶液を用いて5回洗浄した。遊離の抗トキソカラ属抗体は、クロスリンカーであるサクシニミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)を用いてコンジュゲートを作ることにより、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識化され、このコンジュゲート10μg/mlを、96穴プレートの各ウェルに添加した。室温での30分のインキュベーション時間に続いて、当業者に周知の標準的な方法に従って、結合していないコンジュゲートを、PBS−Tween20溶液を用いてウェルから洗い流した。次に、50μlTMBLUE(登録商標)ペルオキシダーゼ基質(SeraCare Life Sciences、ウエストブリッジウォーター、マサチューセッツ)を各ウェルに添加し、プレートを10分間室温にてインキュベートした。各酵素反応を0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて停止させ、10分間インキュベーションした後、96穴プレートの各ウェルの吸光度(OD)値を、A650にて、ELISAプレートリーダーを用いることにより、標準的な分光光度法の技術によって測定した。この準備において、96穴プレートの特定のウェルから得られたOD値は、ウェル中に存在する、特異的に結合された抗原の量に正比例した。
【0028】
実験1
抗トキソカラ属抗体は、イヌ糞試料中の回虫に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫には特異的に結合しない。
【0029】
抗トキソカラ属抗体が、イヌにおける回虫、鉤虫、および/または鞭虫の糞便抗原に特異的に結合するかどうかを判定することが、実験1の目的だった。実験1において得られた20のイヌ糞試料のOD測定を図2に示す。具体的には、これらの糞試料は、寄生虫に感染していないとわかっている5匹のイヌ(negLCZ5 d62、negRCZ5 d87、negSBY5 d62、negSVY5 d62、および negTIY5 d62)、回虫に感染しているとわかっている5匹のイヌ(round+KWZ5 d62、round+QKZ5 d62、round+RYZ d62、round+SPY5 d69、およびround+WHY5 d62)、鉤虫に感染しているとわかっている5匹のイヌ(hook+LEY5 d62、hook+OGY5 d62、hook+RKY5 d62、hook+SKZ5 d62、およびhook+SXZ5 d62)、および鞭虫に感染しているとわかっている5匹のイヌ(whip+KXZ5 d87、whip+REY5 d85、whip+RQZ5 d85、whip+SEZ d85、およびwhip+TGZ d85)から得られた。糞試料は、感染後62日(「d62」)、感染後69日(「d69」)、感染後85日(「d85」)、または感染後87日(「d87」)のいずれかにおいて得られた。各特定のイヌのために選択した、特定の感染後の日数は、顕微鏡観察により判定する時に、寄生虫の卵の排出量がピークレベルである日またはピークレベルに近い日を基礎とした。
【0030】
未感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料の測定された平均ODは、それぞれ0.091、0.099、および0.172(これらの試料のひとつずつの測定されたODは<0.25だった)であり、これは、抗トキソカラ属抗体が、これらの試料のいずれにおいても、抗原に特異的に結合しなかったことを示している。反対に、回虫感染イヌ由来の糞試料の平均ODは、1.40であり、鞭虫感染試料から得られたものよりも約8倍高く、未感染および鉤虫感染試料の両方から得られたものよりも約15倍高かった。これらのデータは、抗トキソカラ属抗体が、一以上の回虫抗原に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫の糞便抗原のいずれにも特異的に結合しないことを示している。
【0031】
実験2
抗トキソカラ属抗体は、イヌ糞試料中の心糸状虫に特異的に結合しない。
【0032】
実験2の目的は、抗トキソカラ属抗体が、心糸状虫糞便抗原に特異的に結合するかどうか判定することであった。第二の実験において得られた25のイヌ糞試料についてのOD測定は、図3に示す。具体的には、図3は、寄生虫感染していないことがわかっているイヌ3匹(negILS 11、negILS 12、およびnegILS 13)、心糸状虫に自然感染していることがわかっているイヌ7匹(negTRS 403、negTRS 404、negTRS 405、negTRS 406、negTRS 583、negTRS 749、およびnegTRS 868)、回虫に自然感染していることがわかっているイヌ11匹(round+ILS 10、round+ILS 18、round+ILS 20、round+ILS 22、round+ILS 29、round+ILS 32、round+ILS 36、round+ILS 38、round+ILS 41、round+ILS 67、およびround+ILS 51)、鉤虫に自然感染していることがわかっているイヌ2匹(hook+ILS 9およびhook+ILS 23)、および鞭虫に自然感染していることがわかっているイヌ2匹(whip+ILS 34およびwhip+ILS 39)に由来する糞試料をテストした結果として得られたデータを示す。
【0033】
未感染、心糸状虫感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料の平均ODは、それぞれ0.058、0.061、0.074、および0.074(これらの試料のひとつずつの測定されたODは0.101以下だった)であり、これは、抗トキソカラ属抗体が、これらの試料のいずれにおいても、抗原に特異的に結合しなかったことを示している。反対に、回虫感染イヌ由来の糞試料の平均ODは、0.599であり、未感染および心糸状虫感染試料において測定されたものよりも約10倍高く、鞭虫感染試料および鉤虫感染試料の平均ODよりも約8倍高かった。抗トキソカラ属抗体が、一以上の回虫抗原に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫の糞便抗原のいずれにも特異的に結合しないことのさらなる確認を提供することに加え、この第2の実験は、抗トキソカラ属抗体が、いかなる心糸状虫糞便抗原にも特異的に結合しないことを示している。
【0034】
実験3
抗トキソカラ属抗体は、イヌが活動性回虫感染を有する場合にだけ、イヌ由来糞試料中の回虫を検出する。
【0035】
抗トキソカラ属抗体は、回虫に特異的に結合するが、鉤虫、鞭虫、または心糸状虫には結合しないことが判定されるとすぐに、実験3は行われ、抗トキソカラ属抗体は適切な時においてのみ(つまり、宿主動物が活動性回虫感染を有する場合のみ)回虫を検出するかどうか判定された。この目的に向けて、ELISAデータは、実験1および2に記載された、未感染イヌおよび回虫感染イヌのすべてから得られた。具体的には、データは、感染の一日前(「−1」)、ならびに感染後23、31、38、44、48、52、93、および105日における、これらの回虫感染動物のすべてまたは一部から得られた糞試料から作られた。これらの糞試料の顕微鏡観察は、感染後38、44、48、52、および93日に得られた試料は実質的に回虫の卵に感染していたが、感染後−1、23、31、および105日は感染していなかったことを示した。(感染後23日および31日において回虫の卵が実質的になかったことは、イヌにおける回虫のライフサイクルと一致する。つまり、経口投与された寄生虫の卵は、イヌ糞物質において、導入から約1ヶ月後までは相当数では現れないことは、当該技術分野では周知である。さらに、感染後105日において回虫の卵が実質的になかったことは、感染後91日において投与された駆虫剤治療によるものと予測される。)
【0036】
図4に示すとおり、回虫は、本発明の方法によって、回虫の卵に実質的に感染していると顕微的に判定された糞試料(つまり、感染後38、44、48、52、および93日に得られた試料)においてのみ検出された。具体的には、感染後−1、23、31、および105日(回虫の卵が実質的にないと顕微的に判定されている)のそれぞれにおける回虫感染イヌ由来の糞試料から作成された平均OD値は、<0.180だった。感染後38、44、48、52、および93日のそれぞれにおける回虫感染イヌ由来の糞試料から作成された平均OD値は、1.316、1.842、1.896、2.295、1.104であり、卵のない試料の約6倍から約12倍の範囲でODが増大することを示している。
【0037】
したがって、実験3は、宿主動物が活動性回虫感染を有する場合にだけ、抗トキソカラ属抗体が特異的に回虫糞便抗原に結合することを示している。
【0038】
実験4
抗トキソカラ属抗体は、ネコ糞試料中の回虫糞便抗原に特異的に結合し、試料を採取されたネコが活動性回虫感染を有する場合にだけ、結合する。
【0039】
実験4の目的は、抗トキソカラ属抗体が、ネコ中の回虫の糞便抗原に特異的に結合するかどうか判定することであった。
【0040】
未感染ネコおよび回虫感染ネコから得られた糞試料を測定したOD値を、それぞれ図5および6に示す。具体的には、図5は、75日間にわたって未感染ネコ由来の糞試料を用いて測定した、平均OD値(および標準偏差)を示す。(図5に示されている各OD値は、6回の別々のELISA反応において同一の糞試料から得られた、6つのOD値の平均である。)同一の6匹の未感染ネコは、C081-N、C098-N、C118-N、C091-N、C097-N、およびC106-Nと名付けるが、これらから得られたデータは、−1日(つまり、鉤虫感染動物に鉤虫感染を投与する一日前)および54日、ならびにその間で選択された日について示されている。さらに、これら6匹のうち3匹のネコ、つまり、C081-N、C098-N、およびC118-Nから得られたデータは、60日、68日、および74日の各日についても示されている。
【0041】
図6は、78日間にわたって鉤虫感染ネコから採取された糞試料を用いて作成された、平均OD値(および標準偏差)を示す。(図6に示されている各OD値は、6回の別々のELISA反応において同一の糞試料から得られた、6つのOD値の平均である。)同一の6匹の未感染ネコは、C085-R、C087-R、C104-R、C096-R、Cl00-R、およびC 107- Rと名付けるが、これらから得られたデータは、−1日(つまり、動物に回虫感染を投与する一日前)および54日、ならびにその間で選択された日について示されている。さらに、これら6匹のうち3匹のネコ、つまり、C085-R、C087-R、およびC104-Rから得られたデータは、60日および77日、ならびにその間で選択された日についても示されている。
【0042】
図5を参照すると、未感染ネコについて測定された平均OD値の平均は、−1日および74日、ならびにその間で選択された日の各日について、0.059以下であった。図6を参照すると、回虫感染ネコについて測定された平均OD値の平均は、−1日および34日、ならびにその間で選択された日の各日について、0.053以下であった。40日において、回虫感染ネコについて測定された平均OD値の平均は0.312であり、−1日および74日、ならびにその間で選択された日の各日について未感染ネコにおいて見られたもの、および−1日および34日、ならびにその間で選択された日の各日について回虫感染ネコにおいて見られたものよりも約10倍高い。さらに、感染後42、46、48、50、および54日において回虫感染ネコのいくつかについて測定されたいくつかの平均OD値は、−1日および74日、ならびにその間で選択された日の各日について未感染ネコにおいて見られたもの、および−1日および34日、ならびにその間で選択された日の各日について回虫感染ネコにおいて見られたものよりも数倍高かった。
【0043】
これらのデータは、抗トキソカラ属抗体が、回虫の一以上の糞便抗原に特異的に結合することを示している。これらのデータは、さらに、抗トキソカラ属抗体を用いてネコが回虫に感染しているか否かを判定することができることを示している。
【0044】
実験4の他の目的は、抗トキソカラ属抗体が、ネコが活動性回虫感染を有する場合にだけ、回虫を検出するかどうか判定することであった。
【0045】
感染後60日の回虫感染ネコから採取された糞試料の顕微鏡観察は、試料が回虫の卵をあまり含まないことを示し、感染後63、68、70、74、および77日の鉤虫感染ネコから採取された糞試料の顕微鏡観察は、試料が回虫の卵を実質的に含まないことを示した。感染後60日における卵の中程度な減少、および感染後63、68、70、74、および77日における卵の実質的な減少は、感染後56日において投与された駆虫剤治療のためであったと予測される。図6を参照すると、回虫感染ネコについて測定された平均OD値の平均は、これらの動物から採取された糞試料中の、卵の数の観察された減少と一致していた。具体的には、駆虫剤治療の後の日におけるこれらのイヌについて測定された平均OD値の平均は、0.063(60日)以下であった。
【0046】
これらのデータは、抗トキソカラ属抗体が、回虫の一以上の糞便抗原に特異的に結合することを示す。これらのデータは、さらに、抗トキソカラ属抗体を使用して、ネコが活動性回虫感染を有するか否かを判定しうることを示している。
【0047】
実施例B
下記の材料および方法を使用して、以下に記載される実験5に記載されているデータを作成した。
【0048】
ポリクローナル抗体の調製。抗トキソカラ属抗体(IgG)の第一の調製物は、ウサギにおいて、回虫(T. canis)腸管由来抽出物に対して産生され、抗トキソカラ属抗体(IgG)の第二の調製物は、ウサギにおいて、回虫(T. canis)生殖器由来抽出物に対して産生された。両調製物を、標準的な方法を用いて血清から精製した。(明確にするため、腸管に対して産生された抗トキソカラ属抗体を、より具体的に「抗TGUT抗体(anti-TGUT pAB)」と呼び、生殖器に対して産生された抗トキソカラ属抗体を、より具体的に「抗TOVA抗体(anti-TOVA pAB)」と呼ぶ。)つまり、解剖されたメスの回虫の腸管またはオスおよびメスの生殖器由来の抽出物は、感染したイヌから回虫を回収し、それらを洗浄し、そして組織を解剖することにより調製された。組織は液体窒素中で粉砕され、プロテアーゼ阻害剤を含むハンクス液中に懸濁された。この懸濁液をウサギに投与し、免役されたウサギ由来の血清を回収した。抗TGUT抗体および抗TOVA抗体は、免役されたウサギの血漿から、Gタンパク質アフィニティクロマトグラフィーによりIgG抗体を単離することによって、精製された。
【0049】
イヌの感染および抗蠕虫治療。実験5のために、回虫(T. canis)、鉤虫、または鞭虫それぞれの約150−300個の仮性の卵を、健康なイヌに経口で投与することにより、寄生線形動物感染をもたらした。これらのイヌから得られた糞試料中の、寄生虫の卵の顕微鏡観察によって、感染が確認された。顕微鏡試験によって寄生虫の卵がないとわかった糞試料を産生したイヌは、感染していないと考えられた。
【0050】
ELISAアッセイ。精製した抗TGUT抗体および抗TOVA抗体(3−9μg/ml;100μl/ウェル)を、物理的吸着によりイムロン1B96穴プレート上に、一晩、4℃にて、固定した。次にプレートを、0.1MトリスpH7.0中1%BSAを用いて、4℃で一晩ブロッキングし、室温で乾燥させた。約100μlの糞抽出物(上記の通りに調製)を各ウェルに加え、室温にて1時間インキュベートした。ウェルは、当業者に周知の標準的な方法に従って、PBS-Tween 20溶液で5回洗浄した。遊離の抗TGUT抗体および抗TOVA抗体は、SMCCを用いてコンジュゲートを作ることにより、HRPで標識化した。このコンジュゲート3−9μg/mlを、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。室温にて30分間のインキュベーションに続いて、結合していないコンジュゲートは、当業者に周知の標準的な方法に従って、PBS-Tween 20溶液を用いてウェルから洗浄された。次に、50μlのTMBLUE(登録商標)ペルオキシダーゼ基質(SeraCare Life Siences、ウエストブリッジウォーター、マサチューセッツ)を各ウェルに添加して、プレートを10分間、室温にてインキュベートした。10分間のインキュベーションに続いて0.1%SDSを用いて各酵素反応を停止させた後、96穴プレートの各ウェルのOD値を、A650において、標準的な分光光度技術によりELISAプレートリーダーを用いて測定した。この準備において、96穴プレートの特定のウェルについて得られたOD値は、ウェル中に存在する、特異的に結合された抗原の量に正比例した。
【0051】
実験5
抗TGUT抗体および抗TOVA抗体のそれぞれは、イヌ糞試料中の回虫に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫のどちらにも特異的に結合しない。
【0052】
実験5の目的は、具体的には「抗TGUT抗体」と呼ばれる、回虫の腸管に対して産生された抗体、および/または具体的には「抗TOVA抗体」と呼ばれる、回虫の生殖器系に対して産生された抗体が、回虫、鉤虫、および/または鞭虫の糞便抗原に特異的に結合するかどうかを判定することであった。実験5において得られた16のイヌ糞試料についてのOD測定は、図7および図8のそれぞれに示す。(図7は、抗TGUT抗体を用いて得たOD値を示し、図8は抗TOVA抗体を用いて得たOD値を示す。)具体的には、これらの糞試料は、寄生虫感染していないことがわかっているイヌ4匹(negTIY5 d62、negSVY5 d62、negSBY5 d62、およびnegLCZ5 d62)、回虫に感染していることがわかっているイヌ4匹(round+QKZ5 d62、round+SPY5 d62、round+RYZ d69、およびround+WHY5 d69)、鉤虫に感染していることがわかっているイヌ4匹(hook+LEY5 d76、hook+OGY5 d76、hook+SXZ5 d84、およびhook+SKZ5 d69)、および鞭虫に感染していることがわかっているイヌ4匹(whip+SEZ d62、whip+KXZ5 d69、whip+RQZ5 d62、およびwhip+REY5 d62)から得られた。糞試料は、感染後62日(「d62」)、69日(「d69」)、76日(「d76」)、または84日(「d84」)、の各日において得られた。各特定のイヌについて選択された特定の感染後の日は、顕微鏡観察により判定したとき、寄生虫卵の排出量がピークレベルまたはピークレベルに近い日を基礎とした。
【0053】
具体的には図7を参照すると、抗TGUT抗体について、未感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料の測定された平均ODは、それぞれ0.075、0.083、および0.082(これらの試料のひとつずつの測定されたODは<0.096だった)であり、これは、抗TGUT抗体が、これらの試料のいずれにおいても、抗原に特異的に結合しなかったことを示している。反対に、回虫感染イヌ由来の糞試料の平均ODは、0.385であり、未感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料から得られたものよりも約4から5.5倍高かった。これらのデータは、抗TGUT抗体が、一以上の回虫抗原に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫の糞便抗原のいずれにも特異的に結合しないことを示している。
【0054】
具体的には図8を参照すると、抗TOVA抗体について、未感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料の測定された平均ODは、それぞれ0.588、0.820、および0.590だった(これらの試料のひとつずつの測定されたODは<0.916だった)。反対に、回虫感染イヌ由来の糞試料の平均ODは、3.244であり、未感染、鉤虫感染、および鞭虫感染試料から得られたものよりも約4.5から5倍高かった。これらのデータは、抗TGUT抗体が、一以上の回虫抗原に特異的に結合するが、鉤虫または鞭虫の糞便抗原のいずれにも特異的に結合しないことを示している。
【0055】
本発明の組成物、装置、および方法が、特定の実施態様および特定の実施例について記載されているが、本発明の装置および/または方法に対する変形も、本発明の精神および範囲から外れることなく行うことができると理解される。たとえば、抗トキソカラ属抗体以外のポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、または抗体のフラグメントは、抗トキソカラ属抗体と置換されうる。回虫に特異的な他のポリクローナル抗体を、たとえば、回虫に特異的な一以上の抗原を動物に投与することによって調製することができる。さらに、抗トキソカラ属抗体はウサギ中で産生されたが、ポリクローナル抗体は、たとえば、ヒトもしくは他の霊長類、マウス、ラット、モルモット、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバ、イヌ、ネコ、ニワトリ、またはウマ中でも産生させることができる。本発明の装置において使用される抗体は、たとえばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む、任意の抗体クラスとしてもよい。抗体を調製し、特徴付ける手段は、当該技術分野で周知である。たとえば、Dean, Methods Mol. Biol. 80:23-37 (1998); Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79 (1994); Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88 (1994); Gullick, MethodsMol. Biol. 32:389-99 (1994); Drenckhahn et al. Methods Cell. Biol. 37:7-56 (1993); Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992); Wright et al Crit. Rev. Immunol. 12:125-68(1992)参照。
【0056】
本発明の装置、方法、およびキットにおいて使用される抗体は、単鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結合フラグメントとすることもできる。抗体の抗原結合フラグメントは、未変成の抗体の抗原結合部位または可変領域を含む未変成の抗体の部分であり、該部分は、未変成の抗体のFc領域の定常重鎖ドメインがない。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')、およびFvフラグメントが挙げられる。
【0057】
本発明の装置において使用される抗体は、たとえば、共有結合性にまたは非共有結合性に、直接にまたは間接に、抗体を固体担体に結合させることを含む、当該技術分野で知られている方法論によって、固体担体上に固定されてもよい。したがって、記載した実施態様において、抗トキソカラ属抗体は、物理的吸着(つまり、化学的なリンカーを使用しない)によって固体担体に結合されるが、抗トキソカラ属抗体または他の抗体は、当業者によく知られている任意の化学的結合(つまり、化学的なリンカーを使用する)の方法によって、固体担体に固定してもよいことが意図される。
【0058】
装置の固体担体は、限定するものではないが、ポリスチレン96穴プレートである。固体担体は、任意の、回虫に特異的な抗体の固定に適した材料であってもよい。たとえば、固体担体は、ビーズ、粒子、チューブ、ウェル、プローブ、ディップスティック、ピペットチップ、スライド、繊維、メンブレン、紙、天然もしくは修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、プラスチック、マグネタイト、または当業者によく知られているその他適した材料とすることができる。
【0059】
本発明の装置は、限定するものではないが、ELISAアッセイを行うのに適した装置でもある。例えば、装置は、側方流アッセイを行うのに適したものとしてもよい。本発明において有用な側方流アッセイを行うのに適した例となる装置は、米国特許5,726,010に記載されており、これは、参照により完全に本明細書に組み込まれる。よって、側方流アッセイを行うための装置は、SNAP(登録商標)装置とすることができ、該装置はIDEXX Laboratories, Inc.、ウエストブルック、メーン州から市販されている。
【0060】
装置は、本発明の装置に適用する前に糞試料と混合しうる、一以上の標識化された抗原捕獲試薬を任意に含んでもよい。標識化された抗原試薬を含む場合、標識化された抗原捕獲試薬は、装置の固体表面上に堆積または乾燥させてもさせなくてもよい。「抗原捕獲」とは、興味のある抗原に特異的な任意の化合物を意味する。標識化された抗原捕獲試薬は、糞試料に添加されるか装置上に先に堆積されるかにかかわらず、例えば、回虫抗原に特異的な標識化された抗体としてもよい。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした回虫特異的抗体は、標識化された抗原捕獲試薬として使用することができる。
【0061】
装置は、例えば装置がSNAP(登録商標)装置を含む場合等に、反応ゾーン(固相)から結合していない材料(例えば未反応の糞試料および結合していない抗原捕獲試薬)を輸送する、または、例えば装置が96穴プレートを含む場合等に、反応ゾーン(固相)から結合していない材料(例えば未反応の糞試料および結合していない抗原捕獲試薬)の除去を促進する液体試薬を、任意に含んでもよい。液体試薬は、洗浄試薬にして結合していない材料を反応ゾーンから除去するためだけに役立ててもよく、または、検出試薬を含んで、結合していない材料の除去および抗原検出の促進の両方に役立ててもよい。例えば、酵素とコンジュゲートされた抗原捕獲試薬の場合、検出試薬は、反応ゾーン(固相)において酵素−抗体コンジュゲートと反応すると検出可能なシグナルを作る基質を含む。または、放射性分子、蛍光分子、または光吸収分子とコンジュゲートした、標識化された抗原捕獲試薬の場合、検出試薬は、単に、結合していない標識化試薬を洗浄することにより、反応ゾーンにおいて複合体形成の検出を促進する洗浄液として働く。
【0062】
液体試薬は、さらに限られた量の「阻害剤」、つまり、検出可能な最終産物の発達を阻害する基質を含んでもよい。限られた量とは、検出可能な最終産物が作られる時、ほとんどまたはすべての過剰の結合していない材料が、第二の領域から輸送されるまで、最終産物の発達を十分に阻害する阻害剤の量として定義される。
【0063】
本発明の装置は、抗原結合試薬とは違う場所に固定されたさまざまな結合試薬を含んでもよい。例えば、標識化された抗体の種特異的(例えば回虫特異的)抗体部分、または抗原捕獲試薬、または酵素−標識化試薬の酵素部分を認識する免疫試薬(抗体、抗原、またはペプチド)は、装置中の試薬の生存率を評価する陽性対照として、含まれうる。たとえば、陽性対照は、例えばヤギまたはマウス中で産生された抗西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体としてもよい。さらに、試薬、例えば抗原−抗体複合体の抗体部分が由来する種の、免疫されていないメンバーから単離された抗体は、免疫複合体(つまり、抗原−抗体複合体)形成の特異性を評価する陰性対照として、含まれうる。
【0064】
糞試料中の回虫を検出することが意図されることに加え、本発明の装置は、任意に一以上の診断テストが行われることを目的としてもよい。例えば、固体担体は、一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、または一以上の細菌の検出用試薬を含んでもよい。一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、または一以上の細菌の検出用試薬は、例えば、一以上の抗体、または一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、もしくは一以上の細菌に特異的な一以上の抗体によって認識される一以上の抗原とすることができる。
【0065】
本発明の方法において、回虫感染の検出は、糞試料中に一以上の回虫抗原があるかないかを検出することにより、達成される。テストする糞試料の可溶性部分は、当該技術分野において知られた任意のプロトコルによって回収してもよい。例えば、前述した特定のプロトコルに加え、試料の可溶性部分は、ろ過、遠心、または単純な試料の混合後の重量沈降(gravimetric settling)を用いて、回収してもよい。
【0066】
本発明は、糞試料を、一以上の回虫抗原に特異的な一以上の抗体に、抗原/抗体複合体、つまり、免疫複合体を形成することが可能な条件下で接触させる工程を含む。すなわち、抗体は、糞試料中に存在する回虫抗原に特異的に結合する。当業者は、抗原/抗体複合体結合を検出するために使用されるアッセイおよび条件に詳しいだろう。例えば、抗原/抗体複合体は、抗原/抗体複合体に結合する二次抗体を用いて検出されうる。試料における回虫抗原と抗回虫抗体との複合体の形成は、当該技術分野において知られた、任意の適した方法を用いて検出されうる。さらに、抗体−抗原複合体の量は、当該技術分野において知られた方法論によって検出することができる。対照試料中で形成されるよりも高いレベルは、回虫感染を示す。
【0067】
本発明の方法のその他の工程は、回虫抗原に特異的な固定された抗体を含む本発明の装置に糞試料を適用する工程、および糞試料中の回虫抗原の有無を検出する工程を含んでもよい。回虫の抗原に特異的な抗体は、直接または間接に、マイクロタイターウェル、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、カラム、マトリックス、メンブレン、合成もしくは天然繊維(例えば、ガラス、またはセルロースを主成分とする材料、またはポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステル等のような熱可塑性ポリマー)からなる繊維性マット、特定の材料(例えば、ガラスまたは様々な熱可塑性ポリマー)からなる焼結構造物(sintered structure)、ニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホン等(一般に、実際は合成)からなるキャストメンブレンフィルム(cast membrane film)などのような固体担体または基板に結合させてもよい。これらの基板材料のすべては、例えば、フィルム、シート、またはプレート等のような適した形で使用してもよく、または、例えば紙、ガラス、プラスチックフィルム、または織物などのような適当な不活性担体上にコートされ、結合され、または積層されてもよい。固相にペプチドを固定するために適した方法としては、イオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用等が挙げられる。
【0068】
しかしながら、本発明の方法は、固相または基板を使用することを含む必要はない。例えば、方法は、固相または基板の使用を必要としない免疫沈降法を含むことができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施態様において、抗体に結合した酵素コンジュゲートなどのような指示薬が検出可能な反応を触媒するときに、抗原/抗体複合体は検出される。任意に、シグナル生成化合物を含む指示薬は、検出可能な抗原/抗体/試薬複合体を形成することが可能な条件下で、抗原/抗体複合体に適用されてもよい。任意に、抗体は、抗原/抗体複合体の形成前に、指示薬を用いて標識化されてもよい。
【0070】
具体的には、本発明の方法のいくつかにおける抗原/抗体複合体または抗原/抗体/指示薬複合体の形成は、放射分析、比色分析、蛍光分析、サイズ分離、または沈降によって検出することができる。抗原/抗体複合体の検出は、シグナル生成化合物を含む指示薬に共役する二次抗体の添加によっても達成されうる。ポリペプチド/抗体複合体に関連するシグナル生成化合物(標識)を含む指示薬は、前述の方法を用いて検出することができ、該指示薬としては、発色剤、酵素コンジュゲートのような触媒、フルオレッセインやローダミンなどのような蛍光化合物、およびジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、ルミノールなどのような化学発光化合物、放射性元素、直接可視標識(direct visual labels)、ならびにコファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。酵素コンジュゲートの例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。特定の標識の選択は重大ではないが、単独で、または一以上の追加の基質と共に、シグナルを生成することを可能とする。
【0071】
二次抗体を含め、抗体は、例えば、蛍光ラベル、化学発光ラベル、放射性ラベル、酵素ラベル、コロイド性粒子ラベル、放射性同位体ラベル、および生物発光ラベルを含む、当該技術分野において知られている任意の種類のラベルを用いて標識化されてもよい。本発明の様々な実施態様において、本発明の一以上の抗体は、酵素、コロイド性粒子、放射性核種、またはフルオロフォアで標識化される。粒子性のラベルは、例えば、回虫抗原に特異的な抗体とコンジュゲートした着色ラテックス粒子、色素ゾル、または金ゾルとすることができる。
【0072】
本発明の方法として、限定するものではないが、ELISA、RIA、免疫蛍光アッセイ(IFA)、赤血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、およびマイクロタイタープレートアッセイ(マイクロタイタープレートの一以上のウェル中で行われる任意のアッセイ)を含む、限定するものではないが、競合、直接反応、またはサンドイッチタイプアッセイに基づいた方法が挙げられる。本発明の一のアッセイは、例えば、SNAP(登録商標)装置を用いて行われうる、可逆性フロークロマトグラフィー結合アッセイ(reversible flow chromatographic binding assay)を含む。米国特許5,726,010参照。
【0073】
本発明の方法は、サンドイッチまたは競合タイプの特異的結合アッセイを容易にする。サンドイッチアッセイにおいては、抗原捕獲試薬が、反応ゾーン中に固定される。これらの抗原捕獲試薬は、テストされている糞試料中の抗原に特異的に結合しうる。具体的には、これらの抗原捕獲試薬は、もし糞試料中に存在すれば、回虫由来の抗原に特異的に結合する。試料由来の抗原の結合につづき、抗原捕獲試薬/抗原複合体は、任意の適した方法によって検出される。例えば、複合体は、標識化された特異的な結合試薬(例えば、酵素−抗体コンジュゲート)と反応し、抗原が検出されうる(例えば、基質と反応すると)。
【0074】
本発明の方法の他の実施態様において、競合アッセイが行われる。競合アッセイにおいて、抗原捕獲試薬は反応ゾーンに固定され、試料由来の抗原および標識化された抗原(例えば、抗原−酵素コンジュゲート)と同時に接触する。反応ゾーンにおいて検出されたラベルの量は、試料中の抗原の量に反比例する。
【0075】
本発明のいくつかの実施態様において、一または複数の回虫抗原に特異的な抗体は、固相または基板に結合される。回虫由来の抗原を含んでいる可能性がある糞試料は、基板に添加される。回虫に特異的に結合する抗体が添加される。抗体は、固相上で使用される同じ抗体でもよいし、異なる源または種由来でもよい。さらに、これらの抗体は、例えば、酵素コンジュゲートのように指示薬に結合させてもよい。各添加の前に、洗浄工程が行われうる。発色団または酵素の基質を添加して、発色させることができる。発色反応は停止され、色は、例えば、分光計を用いて定量することができる。
【0076】
本発明の他の実施態様において、一または複数の回虫抗原に特異的な抗体は、固相または基板に結合される。回虫由来の抗原を含んでいる可能性がある糞試料は、基板に添加される。回虫の抗原を特異的に結合する、二次抗種抗体を添加する。これらの二次抗体は、固相抗体とは異なる種に由来する。二次抗体を特異的に結合し、固相抗体には特異的に結合しない、三次抗種抗体が添加される。三次抗体は、酵素コンジュゲートなどのような、指示薬を含んでもよい。各添加の前に、洗浄工程が行われうる。発色団または酵素の基質を添加して、発色させることができる。発色反応は停止され、色は、例えば、分光計を用いて定量することができる。
【0077】
特定の例において、本発明の方法は、調製された糞試料を、第一の領域(試料適用ゾーン)において装置のフローマトリックスに添加することにより、側方流アッセイ装置である装置と共同して実施される。調製された糞試料は、フローマトリックスの第二の領域へ、毛細管現象によって液体流路中を運ばれ、ここでは、特定のラベルが結合して糞試料中の抗原との第一の複合体を形成することができる。特定のラベルは、例えば、回虫抗原に特異的な抗体とコンジュゲートした着色ラテックス粒子、色素ゾル、または金ゾルとすることができる。第一の複合体は、フローマトリックスの第三の領域に運ばれ、ここでは、回虫抗原を特異的に結合する抗体が異なる場所で固定される。固定された抗体と第一の複合体との間で、第二の複合体が形成される。第二の複合体の一部である特定のラベルは、直接可視化されうる。
【0078】
回虫抗体は、反応ゾーン(固相)中に固定された抗原捕獲試薬としてもよい。第二の抗原捕獲試薬、つまり、ラベルにコンジュゲートした第二の回虫抗体は、試料が装置に添加される前に試料に加えてもよく、または、第二の抗原捕獲試薬は装置に組み込むことができる。例えば、標識化された抗原捕獲試薬は、試料適用ゾーンと固相との間の液体伝達(fluid communication)を提供する液体流路上に、堆積または乾燥させてもよい。標識化された抗原捕獲試薬とテスト試料との接触は、標識化された抗原捕獲試薬の溶解をもたらしうる。
【0079】
本発明は、さらに、糞試料中の回虫を検出するためのアッセイキット(例えば、製品の品目)を含む。したがって、キットは、本発明の一以上の装置を含んでもよい。例えば、キットは、抗回虫抗体、および試料中の回虫抗原への抗体の結合を判定するための手段を含むことができる。一の特定の例において、そのようなキットは、必要であるか適切であるならば、固定された抗回虫抗体、一以上の抗原捕獲試薬(例えば、固定されていない標識化抗原捕獲試薬、および固定された抗原捕獲試薬)、および洗浄試薬、ならびに検出試薬、陽性および陰性対照試薬を有する装置を含む。当業者に知られているバッファー、対照等のような他の成分も、かかるテストキット中に含まれてもよい。アッセイの感度を実質的に最適化する試薬溶液の濃度を提供するように、様々な試薬の相対量を変化させることができる。特に、試薬は、溶解すると、試料と混合するのに適切な濃度を有する試薬溶液を提供する乾燥粉末として、通常、凍結乾燥されて、提供されうる。本発明の抗体、アッセイ、およびキットは、例えば、患者における回虫感染の個々のケースの診断において、および回虫の流行の疫学的研究において、有用である。キットは、本発明の一以上の方法を実施するための取扱説明書をさらに含んでもよく、キットと一緒に含まれている本発明の任意の装置を使用するための取扱説明書を含んでもよい。
【0080】
回虫感染を検出するための本発明の方法は、他の診断アッセイと組み合わせて、他の生物または条件の存在を検出することができる。例えば、本発明のアッセイは、一以上の回虫ではない寄生虫の糞便感染、一以上の寄生虫ではない寄生生物の糞便感染、一以上のウイルス、または一以上の細菌、一以上の血液によって感染する寄生虫、潜血、またはそれらの組み合わせを検出する試薬と組み合わせることができる。単一のアッセイ装置において2以上の固有の結合部位(例えば、SNAP(登録商標)アッセイ装置上の2の固有のスポットなど)を提供することによって、本発明は、単一の試料由来の2以上の生物を検出することが可能となる。一の実施態様において、単一の試料由来の3つの生物の過去または現在の感染を検出するための、3の固有のスポットがある(スポットは、抗原または抗体結合試薬である)(すなわち、同じ、単一の試料は、単一の装置上の3つの捕獲試薬に存在する)。
【0081】
ここに実例を用いて記載された発明は、ここに具体的に開示されていない任意の要素、限定がなくても実施することができる。したがって、例えば、各例において、「含む」、「実質的に〜からなる」、および「からなる」の用語は、他の2の用語を用いて置換することができ、それらの元の意味は維持される。採用された用語および表現は、限定ではなく、記載の用語として使用される。かかる用語および表現の使用において、示され、記載された特徴、またはそれらの一部の同等物を排除する意図はないが、クレームされた発明の範囲内において、様々な改良は可能であると認識される。よって、本発明は好ましい実施態様により具体的に記載されているが、ここに開示された概念の随意的な特徴、改良、および変化は、当業者によって用いられると理解されるべきであり、かかる改良および変化は、明細書および添付の特許請求の範囲により定義されたように、本発明の範囲内であると見なされると理解されるべきである。
【0082】
また、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは他の選択肢のグループの観点から記載されている場合、当業者は、本発明はマーカッシュグループまたは他のグループの、任意の各メンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されていると認識する。
【0083】
本発明の説明を助ける多くの例が記載された。しかしながら、様々な改良が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われうると理解される。したがって、他の実施態様も、ここに添付された特許請求の範囲内である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の回虫抗原に特異的な抗体であって、鉤虫、鞭虫、および心糸状虫からなる群の少なくとも一つに由来する糞便抗原に交差反応しない、該抗体。
【請求項2】
抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
抗体が、回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、または回虫生殖器系抽出物を用いて免役することにより得られる、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、または回虫生殖器系抽出物を得る回虫が、イヌ回虫(Toxocara canis)である、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
一以上の回虫抗原が、イヌ回虫またはネコ回虫(Toxocara cati)に由来する、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
哺乳動物の糞試料中に回虫が存在するか否かを検出するための、固体担体を含む装置であって、一以上の回虫抗原に特異的な一以上の抗体が、固体担体上に固定されている、該装置。
【請求項7】
一以上の回虫抗原に特異的な一以上の抗体が、鉤虫、鞭虫、および心糸状虫からなる群に由来する糞便抗原には特異的でない、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
一以上の抗体が、回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、または回虫生殖器系抽出物を用いて免役することにより得られる、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、および回虫生殖器系抽出物を得る回虫が、イヌ回虫である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
一以上の抗体がポリクローナル抗体である、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
一以上の抗体の一以上が標識化されている、請求項6に記載の装置。
【請求項12】
装置が、酵素結合免疫吸着測定装置である、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
酵素結合免疫吸着測定装置が、側方流免疫アッセイ装置である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
哺乳動物がイヌまたはネコである、請求項6に記載の装置。
【請求項15】
装置が、さらに、一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、および一以上の細菌からなる群の、一以上を検出するための一以上の試薬を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項16】
一以上の回虫抗原が、イヌ回虫またはネコ回虫に由来する、請求項6に記載の装置。
【請求項17】
哺乳動物の糞試料中に回虫が存在するか否かを検出する方法であって、
a.糞試料を、一以上の回虫抗原に特異的な一以上の抗体と接触させる工程;および
b.一以上の回虫抗原が存在するか否かを検出する工程、または一以上の回虫抗体/抗原複合体が存在するか否かを検出する工程、
を含む、該方法。
【請求項18】
一以上の抗体が、回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、または回虫生殖器系抽出物を用いて免役することにより得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、および回虫生殖器系抽出物を得る回虫が、イヌ回虫である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
一以上の抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がイヌまたはネコである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
一以上の抗体/抗原複合体が存在するか否かを検出する工程が、さらに、一以上の抗体/抗原複合体に結合する二次抗体を提供する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
一以上の抗体の一以上が標識化されている、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
二次抗体が標識化されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
一以上の抗体が固体担体上に固定されている、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
固体担体が、酵素結合免疫吸着測定装置の一部を形成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酵素結合免疫吸着測定装置が、側方流免疫アッセイ装置である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
糞試料を、一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、および一以上の細菌からなる群の、一以上を検出するための一以上の試薬と接触させる工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、および一以上の細菌のいずれか一つ、またはすべてを検出するための試薬が、一以上の抗体、または一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、もしくは一以上の細菌に特異的な抗体によって認識される一以上の抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
一以上の回虫抗原が、イヌ回虫またはネコ回虫に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物における腸管回虫感染を診断する方法であって、
a.哺乳動物から糞試料を得る工程;
b.糞試料を、一以上の回虫抗原に特異的な一以上の抗体と接触させる工程;
c.一以上の回虫抗原が存在するか否かを検出する工程、または一以上の回虫抗体/抗原複合体が存在するか否かを検出する工程;および
d.一以上の回虫抗原が存在するか否かの検出、または一以上の回虫抗体/抗原複合体が存在するか否かの検出に基づいて、哺乳動物を、回虫感染を有しているまたは有していないと診断する工程
を含む、該方法。
【請求項32】
一以上の抗体が、回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、または回虫生殖器系抽出物を用いて免役することにより得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
回虫全体抽出物、回虫腸管抽出物、および回虫生殖器系抽出物を得る回虫が、イヌ回虫である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
一以上の抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物がイヌまたはネコである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
一以上の抗体/抗原複合体が存在するか否かを検出する工程が、さらに、一以上の抗体/抗原複合体に結合する二次抗体を提供する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
一以上の抗体の一以上が標識化されている、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
二次抗体が標識化されている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
一以上の抗体が固体担体上に固定されている、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
固体担体が、酵素結合免疫吸着測定装置の一部を形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
酵素結合免疫吸着測定装置が、側方流免疫アッセイ装置である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
糞試料を、一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、および一以上の細菌からなる群の、一以上を検出するための一以上の試薬と接触させる工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、および一以上の細菌のいずれか一つ、またはすべてを検出するための試薬が、一以上の抗体、または一以上の回虫ではない寄生虫、一以上の寄生虫ではない寄生生物、一以上のウイルス、もしくは一以上の細菌に特異的な抗体によって認識される一以上の抗原である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
一以上の回虫抗原が、イヌ回虫またはネコ回虫に由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
哺乳動物の試料中の一以上の回虫糞便抗原を検出するためのキットであって、請求項6から15のいずれか1項に記載の装置、および一以上の抗原の検出に十分な一以上の試薬を含む、該キット。
【請求項46】
一以上の試薬が、一以上の指示薬、一以上の抗体標識化合物、一以上の抗体、一以上の抗原捕獲試薬、一以上の阻害剤、および一以上の洗浄試薬からなる群から選択される、請求項45に記載のキット。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530071(P2010−530071A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512191(P2010−512191)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/007363
【国際公開番号】WO2008/156648
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)