説明

回路部材接続用接着フィルム梱包体及びその製造方法

【課題】長期間保管しても、回路部材接続用接着フィルムの形状、接着特性及びバックグラインド性を維持することが可能な回路部材接続用接着フィルム梱包体を提供すること。
【解決手段】本発明は、中空部を有する筒状の巻芯及び当該巻芯上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメント10と、積層体エレメント10を収容する梱包容器20と、を備える回路部材接続用接着フィルム梱包体100であって、中空部に乾燥剤を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部材接続用接着フィルム梱包体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造に用いられる回路部材接続用接着フィルムは、溶剤に溶解したワニス状の樹脂成分を支持体フィルム上に塗布し、乾燥により溶剤を除去して、形成される。このような回路部材接続用接着フィルムは、プラスチックや紙等からなる巻芯に巻き取って、ロール状の積層体エレメントとして保管される。
【0003】
この積層体エレメントは、ロール状に巻かれた回路部材接続用接着フィルムに埃等が付着して特性が低下することを抑制するために、梱包容器に密封して保管される。梱包容器を密封する前には、梱包容器中の気体を吸引したり、乾燥剤を入れたりして、空気中の水分の影響を極力低減することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−168190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、半導体チップの実装技術として、半導体チップを直接回路基板に接続するフェイスダウンボンディング方式に用いられる回路部材接続用接着フィルムの需要が益々高くなっている。しかし、このような回路部材接続用接着フィルムの接着剤層は、空気中の水分の影響によって、接着特性が低下する傾向がある。このため、従来の保存方法で回路部材接続用接着フィルムを保存した場合、保存期間が長期化すると、空気中の水分などの吸湿により接着特性が低下することが懸念される。
【0006】
一方で、特許文献1のように、梱包容器中に乾燥剤を入れると、回路部材接続用接着フィルムのように接着剤層を有するフィルムの場合、回路部材接続用接着フィルムのロールの表面に乾燥剤が接触して、回路部材接続用接着フィルムに凹凸が発生し、その凹凸によりバックグラインド時にウエハを精密に研磨できなくなったり、接着特性が低下したり、不良品になったりしてしまう可能性が懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間保管しても、回路部材接続用接着フィルムの形状、接着特性及びバックグラインド性を維持することが可能な回路部材接続用接着フィルム梱包体、及びそのような特性を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、中空部を有する筒状の巻芯及び当該巻芯上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメントと、積層体エレメントを収容する梱包容器と、を備える回路部材接続用接着フィルム梱包体であって、中空部に乾燥剤を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体を提供する。
【0009】
この回路部材接続用接着フィルム梱包体は、巻芯の中空部に乾燥剤を有していることから、回路部材接続用接着フィルムの吸湿とその表面における凹凸の発生が十分に抑制され、回路部材接続用接着フィルムの形状及び接着特性を長期間に亘って維持することができる。このため、表面が軟らかい回路部材接続用接着フィルムの保管に用いる回路部材接続用接着フィルム梱包体として特に有用である。
【0010】
本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体における梱包容器は、アルミニウムのコーティング層を有することが好ましい。これによって、梱包容器の内部への光の透過を抑制することができるため、回路部材接続用接着フィルムの接着特性を一層良好に維持することができる。
【0011】
本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体における梱包容器は、袋状であることが好ましい。これによって、梱包容器から積層体エレメントを容易に取り出すことができる。
【0012】
本発明の積層体エレメントは、ロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを挟むように、巻芯の両端に装着された一対のパッキンを備えており、上記パッキンの径方向断面の外径が、上記回路部材接続用接着フィルムのロールの横断面の外径よりも大きいことが好ましい。このようなパッキンを備えた積層体エレメントを梱包容器に収容して保管することによって、回路部材接続用接着フィルムの表面における凹凸の発生が一層抑制されることとなり、回路部材接続用接着フィルムの形状をより長期間に亘って一層良好に維持することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、中空部を有する筒状の巻芯、及び当該巻芯上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメント、並びに巻芯の中空部に配置された乾燥剤、を梱包容器に収容する収容工程と、梱包容器を封止する封止工程と、を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法によれば、巻芯の中空部に乾燥剤を配置した状態で梱包容器を封止していることから、回路部材接続用接着フィルムの吸湿とその表面の凹凸の発生が十分に抑制され、回路部材接続用接着フィルムの形状及び接着特性を長期間に亘って維持することが可能な回路部材接続用接着フィルム梱包体を製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法の上記封止工程において、巻芯の中空部に乾燥剤を配置した状態で、梱包容器の内部の気体の少なくとも一部を吸引して除去し、上記梱包容器をヒートシールで封止することが好ましい。これによって、回路部材接続用接着フィルムの接着剤層の吸湿が一層抑制されることとなり、回路部材接続用接着フィルムの接着特性及び形状を長期間に亘って一層良好に維持することが可能な回路部材接続用接着フィルム梱包体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期間保管しても、回路部材接続用接着フィルムの接着特性、形状及びバックグラインド性を維持することが可能な回路部材接続用接着フィルム梱包体、及びそのような特性を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の一実施形態を説明するため、その内部を透視して示す透視図である。
【図2】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の一実施形態に含まれる積層体エレメントを示す斜視図である。
【図3】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の一実施形態に含まれる巻芯、巻芯の中空部に配置された乾燥剤容器及び当該容器内に収容された乾燥剤を模式的に示す透視図である。
【図4】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の一実施形態に含まれる乾燥剤の乾燥剤用容器の概略図である。
【図5】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の別の実施形態に含まれる積層体エレメントを示す斜視図である。
【図6】本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる、回路部材接続用接着フィルムを模式的に示す断面図である。
【図7】回路部材接続用接着フィルムの接着剤層を、回路部材に貼り付ける工程を模式的に示す断面図である。
【図8】回路部材の電極が設けられている側とは反対側を研削して、薄化する工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の一実施形態の内部を透視して示す透視図である。回路部材接続用接着フィルム梱包体100は、積層体エレメント10と、該積層体エレメント10を収容する梱包容器20と、を備える。
【0020】
積層体エレメント10は梱包容器20の内部に収容されて密封されているため、長期間保管しても、回路部材接続用接着フィルムの接着特性を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0021】
梱包容器20は、回路部材接続用接着フィルムの吸湿を十分に抑制する観点から、梱包容器20は、水蒸気の透過率が十分に低減された防湿性を有するものであることが好ましい。水蒸気の透過率は、好ましくは15g/m/24時間以下であり、より好ましくは10g/m/24時間以下であり、さらに好ましくは2g/m/24時間以下である。水蒸気の透過率が15g/m/24時間を超えると、回路部材接続用接着フィルムの十分に優れた接着特性が損なわれてしまう場合がある。
【0022】
梱包容器20は、光による影響を抑制するために、水蒸気の透過率だけではなく、光の透過率も十分に低減されたものであることが好ましい。また、梱包容器20の光の透過率は、波長200〜800nmにおいて、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。これによって、回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメントを保存しても、接着特性が低下することを十分に抑制することができる。
【0023】
梱包容器20の具体例としては、アルミコーティングされたプラスチック製の袋などが挙げられる。梱包容器20が、アルミコーティングされていることにより、梱包容器の水蒸気の透過率及び光の透過率を低くすることができる。また、梱包容器20を後述するヒートシールで封止する場合、梱包容器20の外装の素材は、熱により溶着できるものが好ましい。このような素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックが挙げられる。これらの条件を満たす梱包容器の構造としては、例えば、ポリエステル層/AL(アルミニウム)層/PE(ポリエチレン)層が順次積層された、3層からなるフィルム状のものが好ましく、PET(ポリエチレンテレフタレート)層/SPE(サンドポリエチレン)層/AL(アルミニウム)層/SPE層/PE(ポリエチレン)層が順次積層された、5層からなるフィルム状のものがより好ましい。
【0024】
積層体エレメント10を梱包容器20内に収容して密封する際に、梱包容器20内の気体を吸引し、梱包容器20内気体を極力少なくするために、梱包容器20は、柔軟性のある材質で、袋状であることが好ましい。梱包容器20内の気体を少なくすることにより、回路部材接続用接着フィルムの吸湿を更に抑制することができる。また、梱包容器20は、優れた柔軟性を有する程度の厚さを有することが好ましい。ここでいう柔軟性とは、巻芯12に回路部材接続用接着フィルムをロール状に巻きつけた構造を有する積層体エレメント10に対して柔軟に変形できる程度の軟らかさをいう。このような柔軟性を有することによって、複雑な構造を有する積層体エレメントや、通常とは大きさが異なる積層体エレメントを用いた場合であっても、その構造に柔軟に対応することが可能となり、梱包容器内に残留する空気量を十分に少なくすることが可能となる。また、梱包容器20が袋状であると、積層体エレメント10を容易に取り出すことができる。梱包容器20の大きさは、積層体エレメント10全体を包むことのできる大きさを有するものであれば制限されない。
【0025】
梱包容器20内の気体体積は、水や水蒸気などの水分による影響を低減する観点から、少ない方が好ましい。梱包容器20内における気体体積は、梱包容器20の全容積の30体積%以下であることが好ましく、20体積%以下であることがより好ましく、10体積%以下であることがさらに好ましく、8体積%以下であることが特に好ましく、5体積%以下であることが最も好ましい。
【0026】
図2は、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体の梱包容器に収容される積層体エレメント10を示す斜視図である。積層体エレメント10は、筒状の巻芯12、及び当該巻芯12の円周面上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルム14を備える。
【0027】
図3は、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体が有する巻芯、巻芯の中空部に配置された乾燥剤容器及び当該容器内に収容された乾燥剤を模式的に示す透視図である。筒状の巻芯12の中空部13には、乾燥剤19が収容された乾燥剤用容器18が配置されている。
【0028】
回路部材接続用接着フィルム14が巻きつけられている巻芯12は、筒状の形状を有している。本実施形態では、巻芯12に巻きつけられる回路部材接続用接着フィルム14のシワの発生を十分に抑制するために、巻芯12は、円筒状の形状を有する。巻芯12は、中心部分に空洞である中空部13を有しており、その中空部13に乾燥剤19が収容された乾燥剤用容器18を有する。このように、運搬時等において、乾燥剤用容器18が巻芯12の中空部13のスペース内を動くことができるようになっているため、効率的に乾燥剤が水分除去作用を発揮することができる。
【0029】
巻芯12の材質は、水分が吸着されにくいものが好ましい。これによって、梱包時に梱包容器20内への水分持ち込み量を低減することができる。巻芯12の材質の好ましい例としては、プラスチック類、金属類などが挙げられる。これらのなかでも、梱包などの作業の効率を向上させる観点から、軽くて丈夫な素材であるABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
巻芯12の中空部に配置される乾燥剤用容器18は乾燥剤19を含有する。乾燥剤19の種類は、回路部材接続用接着フィルム14を梱包する梱包容器内の水分を取り除くことができるものであれば特に制限はない。例えば、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、五酸化二リン、濃硫酸、水酸化カリウム、金属ナトリウム、硫酸ナトリウム無水塩、硫酸銅無水塩、過塩素酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、強い吸湿作用を有する点で、塩化カルシウム及びシリカゲルがより好ましい。また、再利用が容易であるという点で、シリカゲルがさらに好ましい。
【0031】
乾燥剤用容器18としては、乾燥剤19の粒子が動きやすいという点において、多面体、四面体、略球状体、袋状体のものが好ましい。中でも、乾燥剤19の粒子が乾燥剤用容器18内の角などに一箇所に集まることがなく、よく動くことができるという点において、乾燥剤用容器18は角のない略球状体であることがより好ましい。
【0032】
また、乾燥剤19の粒子が乾燥剤用容器18内でよく混ざるといった観点から、多面体のものが好ましい。
【0033】
図6は、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる回路部材接続用フィルムを示す模式断面図である。回路部材接続用接着フィルム14は、支持基材103と該支持基材上に形成された接着剤層102とを備えることが好ましい。回路部材接続用接着フィルム14は、接着剤層上に保護フィルム101を備えることがより好ましい。回路部材接続用接着フィルム14の幅は、10〜50cmであることが好ましく、巻芯12への回路部材接続用接着フィルム14の巻き取り長さは、5〜50mであることが好ましい。回路部材接続用接着フィルム梱包体100は、巻芯12に回路部材接続用接着フィルム14をロール状に巻きつけた構造を有する積層体エレメント10を備えるため、広い面積の回路部材接続用接着フィルム14を保存することができ、保存スペースを低減することができる。
【0034】
回路部材接続用接着フィルムの接着剤層102は、下記接着剤組成物からなる層である。接着剤組成物は、主に高分子量成分、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の硬化剤を含む。接着剤組成物に、放射線により重合する機能を付与する場合には、上述の成分に加えて放射線重合性化合物及び光開始剤を含むことができる。
【0035】
高分子量成分は、単一又は複数のモノマーが重合し、直鎖又は直鎖から分岐した側鎖を有する高分子化合物であって、一般的な熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム等を含む。これらの高分子成分は、反応性の官能基を、主鎖中、主鎖の末端又は側鎖に含んでいてもよい。高分子量成分の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で2万〜100万である。重量分子量が100万を超えると、溶解性の低下を招き、接着剤組成物を溶剤に溶解させて調製することが困難になる傾向にある。一方、重量平均分子量が2万未満では、成膜性が乏しくなるため、他の成分と混合した後に膜状態の成型物を得ることが困難になる傾向にある。
【0036】
このような高分子量成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴムスチレン樹脂、スチレンブタジエン共重合体、(メタ)アクリル共重合体などが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、良好な耐熱性及びフィルム形成性を得る観点から、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂が好ましい。
【0037】
高分子量成分は、接着特性向上の観点から、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有してもよい。このような高分子量成分としては、例えば、グリシジル基を含有する(メタ)アクリル共重合体が好ましく、特にアクリルゴムが好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体や、エチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体などからなるゴムである。
【0038】
また、高分子量成分は、成膜性を有するとともに、未硬化時の回路部材接続用接着フィルムに優れた粘着性を付与するために、そのTg(ガラス転移温度)が20〜120℃であることが好ましい。Tgが20℃未満であるとき、室温での成膜性が低下し、これにより例えば半導体ウエハの加工中に回路部材接続用接着剤の変形が生じ易くなり、バックグラインド工程での半導体ウエハの加工やダイシング工程での個片化を行い難くなる場合がある。一方、Tgが100℃を超えるとき、回路部材接続用接着剤を半導体ウエハに貼り付ける際の貼付温度が100℃よりも高くなり、これによって貼り付け時に後述する熱硬化性樹脂の硬化反応が進んでしまい、半導体チップを回路基板に接続する際に流動性が低くなるため、接続不良の原因となるおそれがある。
【0039】
熱硬化性樹脂は、GPCで測定したスチレン換算の重量平均分子量で2万未満である。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、アクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の効果を良好に得る観点から、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。
【0040】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、加熱によって硬化を開始させる潜在性の硬化剤が好ましい。例えば、フェノール系、イミダゾール系、ヒドラジド系、チオール系、ベンゾオキサジン、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド、有機過酸化物系の硬化剤が好ましい。また、可使時間を長くする観点から、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型の硬化剤も好ましい。マイクロカプセル型硬化剤としては、硬化剤を核とし、この核がポリウレタン、ポリスチレン、ゼラチン、ポリイソシアネート等の高分子物質や、ケイ酸カルシウム、ゼオライト等の無機物、ニッケルや銅等の金属薄膜等の被膜によって実質的に覆われているものが例示される。マイクロカプセル型硬化剤は、その平均粒径が10μm以下であるものが好ましく、5μm以下のものがより好ましい。
【0041】
放射線重合性化合物は、放射線の照射により架橋し得る化合物である。放射線重合性化合物としては、種々のアクリレート樹脂が挙げられる。光開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0042】
接着剤組成物は、必要に応じて硬化促進剤、無機フィラー、導電粒子等のその他の成分を含んでいてもよい。無機フィラーを含むことにより、接着剤層の低吸湿率化、低線膨張係数化、高弾性化が可能となり、半導体パッケージの長期接続信頼性を向上することが可能となる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。無機フィラーの粒径の範囲は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0043】
導電粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面に設けられた金属層と、を備えるものであることが好ましく、金属層は、樹脂粒子に近い順に、銅又は銅合金を含有する第1の層と、パラジウムを含有する第2の層とが積層された構造を有することがより好ましい。導電粒子の平均粒径は基板の電極の最小の間隔よりも小さいことが必要で、電極の高さばらつきがある場合、高さばらつきよりも大きいことが好ましい。上記概念により1〜10μmであることが好ましく、2〜4μmであることがより好ましい。回路部材接続用接着フィルムは、異方導電性を有することが好ましい。
【0044】
接着剤層102は、上述の各成分を含む樹脂ワニスを、支持基材又は保護フィルム上に塗布し、これを乾燥することによって形成することができる。塗布方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
【0045】
樹脂ワニスを加熱して乾燥する際の温度条件は70〜150℃であることが好ましい。接着剤層102の厚さは、特に制限はなく、3〜200μmであることが好ましい。厚さが3μm未満であると、応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、200μmを超えると製造コストが上昇する上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0046】
支持基材103としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。支持基材103の厚さは、特に制限はないが、5〜250μmであることが好ましい。厚さが5μm未満であると、半導体ウエハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性があり、250μmを超えると製造コストが上昇するため好ましくない。また、支持基材の表面には粘着剤層を形成しておくこともできる。粘着剤層は、支持基材上で粘着剤溶液を乾燥することにより得ることができる。粘着剤溶液は、2−エチルヘキシルアクリレートやメチルメタクリレート等の主モノマーと、ヒドロキシエチルアクリレートやアクリル酸等の官能基モノマーを用いて溶液重合法にてアクリル共重合体を合成し、さらに、合成したアクリル共重合体と多官能イソシアネート架橋剤等とを配合することにより調製することができる。
【0047】
保護フィルム101としては、例えば、PET等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の「A−31」等のPETフィルムが挙げられる。保護フィルムは、厚さが10〜100μmであることが好ましく、30〜75μmであることがより好ましく、35〜50μmであることが特に好ましい。この厚さが10μm未満では塗工の際、保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると製造コストが上昇する傾向がある。
【0048】
図4は、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる乾燥剤用容器を示す概略図である。図4(a)は、乾燥剤用容器の上面図であり、図4(b)は、乾燥剤容器の側面図である。
【0049】
図4に示す乾燥剤用容器18は、袋状(例えば、両凸レンズ状)の形状を有することが好ましい。巻芯12の中空部13に乾燥剤用容器18を配置することができる。その場合、乾燥剤用容器18の上面図において、短辺の長さAが、巻芯12の横断面(径方向断面)の内径に対し、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。また、乾燥剤用容器18の上面図において、長辺の長さBが、巻芯12の横断面の内径に対し、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。なお、乾燥剤用容器18の厚さは、巻芯12内を動くことができる程度の厚さであることが好ましい。また、乾燥剤用容器18が、形状が変化しない材質で構成される場合、その大きさは、巻芯12の中空部13内を動くことができる大きさであることが好ましい。
【0050】
さらに、乾燥剤用容器18は発塵しにくい材質が好ましく、たとえば、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンのようなプラスチック材料や、不織布、無塵紙が好ましい。
【0051】
乾燥剤用容器18内で乾燥剤19が十分に動くことができるようにするため、乾燥剤用容器18における乾燥剤19の含有割合(乾燥剤用容器18の内容積に対する乾燥剤の体積割合)は、70体積%以下であることが好ましく、50体積%以下であることがより好ましい。乾燥剤用容器18内で乾燥剤19が動くことで乾燥剤19の粒子の吸湿面が効率よく交換され、乾燥剤の粒子のフレッシュな面が水分を含む気体にさらされやすい状態になる。
【0052】
なお、フレッシュな面が水分を含む気体にさらされやすい乾燥剤19とは、吸湿力のあるフレッシュな面が水分を含む気体にさらされやすい状態にある乾燥剤のことを示す。例えば、乾燥剤19の粒子が乾燥剤用容器18内で動くことができれば、動くことで乾燥剤19の粒子の吸湿面が効率よく交換され、フレッシュな面が水分を含む気体にさらされやすくなる。これにより、該乾燥剤19の粒子のフレッシュな面が梱包容器20内の水分に作用し、水分を十分に低減することができる。また、梱包容器20内で乾燥剤の粒子の乾燥剤用容器18が動くことで、乾燥剤19の粒子が乾燥剤用容器18内で動き、乾燥剤19の粒子のフレッシュな面がさらされやすくなり、梱包容器20内の水分を効率よく低減することができる。
【0053】
袋状の乾燥剤用容器18を用いる場合、乾燥剤用容器18の内容積は以下のようにして求めることができる。乾燥剤用容器18となる、口が開いた袋状の容器に、水面が口の縁にかかるまで、当該口から水を注ぎ入れた後、口を閉止する。なお、その時にあふれた水は捨てる。そして、容器内に残った水をメスシリンダーに移し、その体積を求める。この時の水の体積を乾燥剤用容器18の内容積とする。また、他の形状の容器の場合も、該容器の中に容器内全体が水で満たされるまで水を入れ、実際に乾燥剤19を封入する際と同じように蓋をし、容器内に残った水をメスシリンダーで測ることで該容器の内容積を求めることができる。
【0054】
本明細書において、乾燥剤の体積は、乾燥剤の見かけの比重と実際に用いた乾燥剤の質量とから算出することができる。乾燥剤の見かけの比重は、用いられる乾燥剤粒子の平均半径、及び平均質量から以下の式により算出することができる。
【0055】
乾燥剤の見かけの比重(g/cm)=1粒あたりの平均質量(g)/1粒あたりの平均体積(cm
【0056】
本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体100は、巻芯12の中空部13に乾燥剤19を有する乾燥剤用容器18を有しており、乾燥剤用容器18は巻芯12の内径よりも小さくなっている。このため、乾燥剤用容器18が中空部13内のスペースを動くことができる。乾燥剤用容器18が動くことで、乾燥剤用容器18内に封入された乾燥剤粒子が動き、乾燥剤粒子の吸湿面が効率よく交換される。そのため、乾燥剤19の粒子のフレッシュな面が水分を含む気体に曝露されやすい状態になり、梱包容器20内の水分を効率よく取り除くことができる。
【0057】
なお、保管期間中に、回路部材接続用接着フィルム14の劣化を十分に低減する観点から、梱包容器20内の水分量を、回路部材接続用接着フィルム100質量部に対して、1質量部以下にすることが好ましく、0.7質量部以下にすることがより好ましく、0.5質量部以下にすることがさらに好ましい。また、巻芯12の内部に存在する水分量及び回路部材接続用接着フィルム14が含有する水分量の合計水分量は、回路部材接続用接着フィルム100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体100は、回路部材接続用接着フィルム14の劣化の進行を抑制する観点から、低温で保存することが好ましい。具体的には、回路部材接続用接着フィルム梱包体100を冷蔵庫(5℃)で保存することが好ましく、冷凍庫(−30℃)で保存することがより好ましい。
【0059】
本発明における回路部材接続用接着フィルム梱包体は回路部材接続用接着フィルムの劣化を防止するという点において、低湿度の条件下で保存することが好ましい。湿度は低ければ特に制限はなく、相対湿度は20%RH以下であることがより好ましく、10%RH以下であることがさらに好ましい。
【0060】
次に、本発明の回路部材接続用接着フィルム梱包体の別の実施形態について説明する。図5は、本発明の別の実施形態である回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる積層体エレメントを示す斜視図である。本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体に収容される積層体エレメント11は、円筒状の巻芯12、当該巻芯12上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルム14、及び、巻芯12の両端部に、回路部材接続用接着フィルム14の積層ロールの側面と対向するように装着された一対の円筒状のパッキン16を備える。円筒状であるパッキン16の穴には、巻芯12が挿入されている。一対のパッキン16は、積層ロールを挟むようにして、巻芯12の両端部にそれぞれ固定されている。
【0061】
パッキン16の径方向断面の外径は、回路部材接続用接着フィルム14のロールの横断面(径方向断面)の外径よりも大きくなっている。すなわち、積層体エレメントの長手方向に直交するパッキンの断面が、回路部材接続用接着フィルム14のロールの横断面よりも大きくなっている。このような積層体エレメント11を、上記実施形態に係る梱包容器20内に収容して封止することによって、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体とすることができる。ここで、本実施形態において、パッキンの径方向断面の外径及びロールの横断面の外径とは、それらの外形の直径をいう。パッキン16の材質は特に制限されず、プラスチック製、樹脂製等、様々な材質のものを用いることができる。
【0062】
すなわち、積層体エレメント11は、ロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを挟むように、巻芯に装着された一対のパッキンを備えている。そして、パッキンの径方向断面の外径が、上記回路部材接続用接着フィルム14のロールの横断面の外径よりも大きいため、回路部材接続用接着フィルム梱包体を保管したり、輸送したりする際に、回路部材接続用接着フィルム14の表面に異物が接触することを防止することができる。
【0063】
本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体は、積層体エレメント11がパッキン16を有する点で、上記実施形態に係る回路部材接続用接着フィルム梱包体100と異なっている。パッキン16以外の構成は、上記実施形態と同様とすることができる。すなわち、巻芯12の中空部には、乾燥剤が収容された乾燥剤用容器が配置されている。これによって、長期間保管しても、回路部材接続用接着フィルム14の接着特性を維持することができる。また、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体の積層体エレメント11は、パッキン16を有していることから、回路部材接続用接着フィルム14の表面に凹凸が生じることを一層確実に抑制することができる。
【0064】
次に、本実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、中空部13を有する筒状の巻芯12、及び当該巻芯12に巻きつけた回路部材接続用接着フィルム14を有する積層体エレメント10、並びに乾燥剤19が収容された乾燥剤用容器18を、梱包容器20の内部に収容する収容工程と、中空部13に乾燥剤19が収容された乾燥剤用容器18を配置した状態で、積層体エレメント10を収容した梱包容器20の口を封止して、回路部材接続用接着フィルム梱包体100を得る封止工程とを有する。
【0065】
収容工程では、梱包容器20の内部に、積層体エレメント10を梱包容器20の開口部から挿入する。乾燥剤19が収容された乾燥剤用容器18は、積層体エレメント10とともに梱包容器20内に収容してもよいし、一旦積層体エレメント10を収容した後に、乾燥剤用容器18を梱包容器20内に収容された積層体エレメント10の中空部13内に収容してもよい。
【0066】
封止工程では、積層体エレメント10及び乾燥剤用容器18を収容した梱包容器20の開口部を、中空部13に乾燥剤用容器18を配置した状態でヒートシールによって封止する。これによって、回路部材接続用接着フィルム梱包体100を得ることができる。梱包容器20を封止する前に、真空ポンプなどを用いて梱包容器20内の水分を含む気体を除去して、梱包容器20内の水分を低減することが好ましい。なお、ヒートシールとは、梱包容器20の一部(開口部)に、熱と圧力を印加することによって梱包容器20を密封することを示す。
【0067】
上述の各実施形態の回路部材接続用接着フィルム梱包体は、例えば半導体の製造方法に使用することができる。以下に、その使用方法の一例を説明する。
【0068】
図7は、回路部材接続用接着フィルムの接着剤層を、回路部材に貼り付ける工程を模式的に示す断面図である。まず、回路部材接続用接着フィルム梱包体100の梱包容器20を開放し、積層体エレメント10を取り出す。そして、回路部材接続用接着フィルム14を所定の装置に配置し、保護フィルム101を剥がす。続いて、主面の一方に複数の回路電極120を有する半導体ウエハAを準備し、半導体ウエハAの回路電極が設けられている側に接着剤層102を貼り付け、支持基材103/接着剤層102/半導体ウエハAが順次積層された積層体を得る(図7を参照)。回路電極120には、ハンダ接合用のハンダバンプを設けられている。なお、回路電極120にハンダバンプを設けず、半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダバンプを設けることもできる。
【0069】
次に、図8に示されるように、半導体ウエハAの回路電極120が設けられている側とは反対側をグラインダー104によって研削し、半導体ウエハを薄化する。半導体ウエハの厚さは、例えば、10〜300μmとすることができる。半導体装置の小型化、薄型化の観点から、半導体ウエハの厚さを20〜100μmとすることが好ましい。また、支持基材103はバックグラインドテープとして機能することがあるが、支持基材103にバックグラインドテープを貼付けて半導体ウエハの研削を行うこともできる。
【0070】
その後、必要に応じて放射線の照射を行った後、ダイシングを行い、回路部材接続用接着フィルムが貼り付けられた半導体素子を得ることができる。上記半導体素子は、別の回路電極を有する支持部材と熱圧着されることにより、回路電極同士が電気的かつ機械的に接続される。以上の工程を経て、半導体装置を製造することができる。
【0071】
回路部材接続用接着フィルムは、半導体装置等に使用され、長期間保管した後も、接着特性及び形状を維持することができるため、上記のような過酷な加工工程にあっても、半導体装置等の歩留まりを十分に高くすることができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、巻芯12の形状は、円筒状に限定されるものではなく、筒状であれば角筒状等であってもよい。また、パッキン16の形状も円筒状に限定されるものではなく、角筒状等であってもよい。パッキン16の穴の形状は、特に限定されず、巻芯12の外形(外側の形状)に嵌合する形状であることが好ましい。なお、パッキンの径方向断面の外径、及びロールの横断面の外径は、パッキン16及びロールの外形が円筒状でない筒状(角筒状等)である場合、それぞれの断面の外形に外接する外接円の直径をいう。また、乾燥剤用容器18は、巻芯12の形状が角筒状等である場合、図4(a)における短辺の長さAが、巻芯12の軸方向と直交する断面の内形(内側の形状)の内接円の直径に対し、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。同様に、図4(a)における乾燥剤用容器18の長辺の長さBが、巻芯12の軸方向と直交する断面の内形の内接円の直径に対し、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0073】
実施例及び比較例を用いて本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
(製造例1)
[保護フィルム/接着剤層/支持基材の積層構造を有する回路部材接続用接着フィルムの作製]
グリシジル基含有アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:−7℃)100質量部に対し、高純度特殊多官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:1032−H60、エポキシ当量:169)160質量部、アミノ基含有トリアジン変性クレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:LA−3018、エポキシ当量:151)140質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−DPH)30質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物(四国化成株式会社製、商品名:2PZ−CN)3質量部、光開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、商品名:Irg−184)1.5質量部の質量比率で準備し、これらをシクロヘキサノンに加えて攪拌混合し、更に真空脱気することにより、樹脂ワニスを得た。
【0075】
次に、上記樹脂ワニスを、保護フィルムである表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンテトロンフィルムA−31、厚さ:50μm)上に乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布し、加熱乾燥して接着剤組成物からなる接着剤層を形成した。具体的には、マルチコーター(株式会社ヒラノテクノシード社製)を用い、前室乾燥温度/乾燥風量=90℃/5.0m/秒、後室乾燥温度/乾燥風量=110℃/10m/秒、塗工速度=0.2m/分の条件で作製した。
【0076】
次いで、上記接着剤層上に、支持基材として軟質ポリオレフィンフィルム(ロンシール工業株式会社製、商品名:POF−120A、厚さ:100μm)をラミネートすることにより保護フィルム(表面離型処理ポリエチレンテレフタレート)、接着剤層及び支持基材からなる回路部材接続用接着フィルム(長さ25m)を得た。
【0077】
(製造例2)
[保護フィルム/接着剤層/バックグラインドテープの積層構造を有する回路部材接続用接着フィルムの作製]
主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸を用いて、溶液重合法にてアクリル共重合体を得た。この合成したアクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は−38℃であった。このアクリル共重合体100質量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、商品名:コローネートHL)を10質量部配合した粘着剤溶液を調製した。そして、粘着剤溶液をポリオレフィンフィルム(厚さ100μm)の上に乾燥時の粘着剤厚さが10μmになるように塗工し、乾燥した。更に、シリコーン系離型剤を塗布した二軸延伸ポリエステルフィルムセパレータ(厚さ25μm)を粘着剤面にラミネートした。この粘着フィルムを室温で1週間放置して十分にエージングを行い、バックグラインドテープを得た。
【0078】
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:FX293)25質量部に対し、液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名エピコート:828)を35質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(旭化成エレクトロニクス株式会社製、商品名:HX3941HP)を40質量部の質量比率で準備し、これらをトルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解した。さらに、大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al・5SiO、比重2.4)100質量部を加えて撹拌して分散し、樹脂ワニスを得た。
【0079】
次に、保護フィルムである表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックス、厚さ:50um)上にロールコータを用いて、塗工速度=2m/分で塗布した後、乾燥温度/乾燥風量=80℃/7.0m/秒に設定した乾燥機を用いて4分間乾燥し、表面離型処理ポリエチレンテレフタレート上に接着剤組成物からなる厚さ30μmの接着剤層(長さ25m)を形成した。その後、上記のバックグラインドテープを常温〜60℃の条件で貼り合わせ、保護フィルム、接着剤層及びバックグラインドテープからなる回路部材接続用接着フィルムを得た。
【0080】
(実施例1)
製造例1で得られた回路部材接続用接着フィルムを、プラスチック製の円筒状の巻芯(内径:78mm、外径:88mm、幅:300mm)に巻き取った。これによって、巻芯上に、保護フィルム、接着剤層、支持基材(又はダイシングテープ)がこの順で積層された回路部材接続用接着フィルムが、支持基材を外側にしてロール状に巻きつけられた積層体エレメントを得た。
【0081】
得られた積層体エレメントを、外側からPET(ポリエチレンテレフタレート)層、SPE(サンドポリエチレン)層、AL(アルミニウム)層、SPE層、及びPE(ポリエチレン)層が順次積層された複合フィルム(厚さ:140μm、透湿度:0.1〜0.29g/30日間=0.01〜0.03g/m/24時間(計算値))からなる袋状の梱包容器(横×縦:310mm×600mm)の中に収容した。
【0082】
次に、シリカゲルが収容された、2つの袋状の乾燥剤用容器(豊田化工株式会社製、商品名:MP5G)を、積層体エレメントの巻芯の中空部内に配置した。そして、巻芯の中空部に上記乾燥剤用容器を配置した状態で、梱包容器の開口をヒートシールにより封止して、梱包容器を密封し、回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる乾燥剤用容器は、巻芯の中空部内を移動することが可能な状態であった。
【0083】
なお、上記乾燥剤に収容されていたシリカゲルの質量は5g、真比重は2.2、体積は2.3cmであり、乾燥剤用容器(袋状)の内部容積は15cm(サイズ:56mm×70mm)であった。また、乾燥剤用容器に収容されているシリカゲル粒子の性状(使用前)及び含有量は次の通りであった。なお、シリカゲル粒子の平均半径及び平均質量は、粒子10個の計測値から求めた平均値である。また、乾燥剤用容器中において、シリカゲル粒子は移動可能な状態であった。
【0084】
シリカゲル粒子の平均半径:1.6mm
シリカゲル粒子の平均質量:0.026g/個
シリカゲル粒子の見かけの密度:1.5g/cm、(平均質量と平均半径とから算出)
シリカゲル粒子の合計体積:3.3cm、(シリカゲル粒子の合計質量/シリカゲルの見かけの密度=5(g)/1.5(g/cm)で算出)
乾燥剤用容器中におけるシリカゲル粒子の含有量:3.3/15×100=22体積%
【0085】
(実施例2)
梱包容器の開口をヒートシールにより封止する前に、ポリシーラー(富士インパルス株式会社製)を用いて袋の内部を真空引きしたこと以外は、実施例1と同様にして、回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。
【0086】
(実施例3)
実施例1と同様にして、積層体エレメントを作製した。次に、乾燥剤用容器として、袋状のポリエチレン(横×縦:85mm×120mm、容器内容積:172cm)に、乾燥剤の粒子のサイズよりも小さなサイズの穴を数ヶ所開けたものを準備した。この穴を開けた袋に、乾燥したシリカゲル(中粒状(青色)、和光純薬工業株式会社製)100g(シリカゲル体積:62.5cm)を収容し、ヒートシールにより袋の口を閉じた。シリカゲルを収容した袋を、乾燥剤として、積層体エレメントの巻芯の内部(中空部内)に配置した。そして、実施例1と同様にして、巻芯の内部にこの乾燥剤を配置した状態で、梱包容器の開口をヒートシールにより封止して、梱包容器を密封し、回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。回路部材接続用接着フィルム梱包体に含まれる乾燥剤は、巻芯の中空部内を移動することが可能な状態であった。
【0087】
なお、乾燥剤用容器に収容されているシリカゲル粒子の性状(使用前)及び含有量は次の通りであった。シリカゲル粒子の平均半径及び平均質量は、粒子10個の計測値から求めた平均値である。尚、乾燥剤用容器中において、シリカゲル粒子は移動可能な状態であった。
【0088】
シリカゲル粒子の平均半径:1.8mm
シリカゲル粒子の平均質量:0.038g/個
シリカゲル粒子の見かけの密度:1.6g/cm(平均質量と平均半径とから算出)
シリカゲル粒子の合計体積:62.5cm(シリカゲル粒子の合計質量/シリカゲル粒子の見かけの密度=100g/1.6(g/cm)で算出)
乾燥剤用容器中におけるシリカゲル粒子の含有量:62.5/172×100=36体積%
【0089】
(実施例4)
梱包容器の開口をヒートシールにより封止する前に、ポリシーラー(富士インパルス株式会社製)を用いて袋の内部を真空引きしたこと以外は、実施例3と同様にして、回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。
【0090】
(実施例5)
製造例1で得られた回路部材接続用接着フィルムの代わりに製造例2で得られた回路部材接続用接着フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。
【0091】
(比較例1)
乾燥剤が収容された乾燥剤用容器を、回路部材接続用接着フィルムのロールの表面と接触するように配置したこと以外は、実施例2と同様にして回路部材接続用接着フィルム梱包体を作製した。
【0092】
(比較例2)
実施例1と同様にして、積層体エレメントを作製した。その後、積層体エレメントを梱包しなかった。
【0093】
<保管後の回路部材接続用接着フィルムの評価>
(回路部材接続用接着フィルム梱包体の保管)
実施例1〜5及び比較例1で作製した回路部材接続用接着フィルム梱包体、及び比較例2で作製した積層体エレメントを以下の保管条件により暗所にて保管し、保管後の回路部材接続用接着フィルムの評価を以下の条件で行った。
保管条件A
保管温度:20℃、保管湿度:40%RH、保管時間:96時間
保管条件B
保管温度:5℃、保管湿度:25%RH、保管時間:1ヶ月
【0094】
(バックグラインド性)
実施例1〜5及び比較例1〜2で作製し、上述の保管条件で保管した回路部材接続用接着フィルムを、80℃に加熱されたラミネーターを用いてシリコンウエハ(回路面SiO膜有、厚さ:625μm)上に貼り付けて、積層体を得た。これをバックグラインダーに配置し、厚さが280μmとなるまでシリコンウエハの裏面を研削(バックグラインド)した。研削したウエハを目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいてバックグラインド性を評価した。
a:厚さが均一でウエハの破損及びマイクロクラックの発生がない。
b:厚さが不均一でウエハの破損及びマイクロクラックの発生がある。
c:フィルムがウエハに貼りつかず、評価できなかった。
【0095】
(接着特性)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた回路部材接続用接着フィルムがシリコンウエハ上に積層された積層体の接着剤層に対し、紫外線を用いて照度15mW/cmで500mJの露光を行った。露光後のウエハにダイシングテープを貼り付け、支持基材を剥離した後に6.5mm×6.5mmのサイズにダイシングし、接着剤付半導体チップを得た。
【0096】
実施例5で得られた回路部材接続用接着フィルムが積層されたウエハの研削面に対し、ダイシングテープを貼りつけ、バックグラインドテープを剥離した後に6.5mm×6.5mmのサイズにダイシングし、接着剤付半導体チップを得た。
【0097】
得られた接着剤付半導体チップを、接着剤が付いていない半導体チップ(縦×横:10mm×10mm、厚さ:400μm)上に、250℃、0.5MPa、10秒の条件でダイボンディングし、更に175℃、2時間の加熱により後硬化した。こうして評価用サンプルを得た。
【0098】
得られた評価用サンプルを265℃の熱板上で30秒間保持した後、チップとチップとの剪断接着強度を万能型ボンドテスター(dage社製、商品名:SERIES4000)を用いて、速度50μm/秒、ハイト50μmの条件で測定した。下記の基準に基づいて接着特性を評価した。評価結果及び測定値を表1に示す。
a:剪断接着強度の値が2.0MPa以上
b:剪断接着強度の値が1.0MPa以上2.0MPa未満
c:剪断接着強度の値が1.0MPa未満
【0099】
【表1】

【0100】
実施例1〜5の回路部材接続用接着フィルム梱包体は、所定期間保管した後でも、形状が変わっておらず、良好なバックグラインド性を示した。また、接着特性も良好であった。すなわち、実施例1〜5の回路部材接続用接着フィルム梱包体は、いずれも、回路部材接続用接着フィルムの形状と接着特性を良好に維持できることが確認された。それに対し、比較例1は梱包容器と積層体エレメントとの間に乾燥剤用容器を配置したため、フィルムに凹凸が出現しバックグラインド性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0101】
10,11…積層体エレメント、12…巻芯、13…中空部、14…回路部材接続用接着フィルム、16…パッキン、18…乾燥剤用容器、19…乾燥剤、20…梱包容器、100…接着フィルム梱包体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する筒状の巻芯、及び当該巻芯上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメントと、前記積層体エレメントを収容する梱包容器と、を備える回路部材接続用接着フィルム梱包体であって、
前記中空部に乾燥剤を有する回路部材接続用接着フィルム梱包体。
【請求項2】
前記梱包容器はアルミニウムのコーティング層を有する、請求項1に記載の回路部材接続用接着フィルム梱包体。
【請求項3】
前記梱包容器は袋状である、請求項1又は2に記載の回路部材接続用接着フィルム梱包体。
【請求項4】
前記積層体エレメントは、ロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを挟むように、前記巻芯の両端に装着された一対のパッキンを備えており、
前記パッキンの径方向断面の外径が、前記回路部材接続用接着フィルムのロールの横断面の外径よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着フィルム梱包体。
【請求項5】
中空部を有する筒状の巻芯、及び当該巻芯上にロール状に巻きつけられた回路部材接続用接着フィルムを有する積層体エレメントと、前記巻芯の中空部に配置された乾燥剤と、を梱包容器に収容する収容工程と、
前記梱包容器を封止する封止工程と、
を有する、回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法。
【請求項6】
前記封止工程では、前記梱包容器の内部の気体の少なくとも一部を吸引して除去し、前記梱包容器をヒートシールで封止する、請求項5に記載の回路部材接続用接着フィルム梱包体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−105361(P2011−105361A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264082(P2009−264082)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】