説明

回転伝達装置、発電装置及び移動装置

【課題】回転駆動力発生装置から発生される回転駆動力を負荷に伝達する簡便な構造の回転伝達装置を提供する。
【解決手段】回転伝達装置10は、固定部19aに形成される磁石12a〜磁石12fの磁極面と、回転板14に固着される磁石13a〜磁石13gの磁極面とが対面して配置されている。そして、磁石12a〜磁石12fの磁極面と磁石13a〜磁石13gの磁極面との間の空隙に回転板11が配置されている。磁石12a〜磁石12fの磁極面の極性と磁石13a〜磁石13gの磁極面の極性とは同一極性とされている。磁石12a〜磁石12fの個数と磁石13a〜磁石13gの個数は異なる数とされている。回転板11は導電性を有しており、孔部が設けられ、その孔部の位置はいずれかの磁極面に対面する位置とされている。このような構成を採用することによって、第1の回転板と第2の回転板との間で回転力を相互に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転伝達装置、発電装置及び移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動力発生装置から発生される回転駆動力を負荷に伝達するに際しては、回転伝達装置を介する場合がある。この場合には、回転伝達装置は、負荷の特性と回転駆動力発生装置の特性とをマッチングさせるために利用され、装置の動作の最適化がなされる。例えば、自動車においては、複数の歯車を組み合わせて形成されるギヤとクラッチ板からなる機械的な回転伝達装置が用いられ、エンジン(内燃機関)からの回転駆動力を車輪に効率良く伝えようになされている。また、近年では、コイルと磁石との間に生じる電磁力を利用する回転伝達装置である電磁クラッチも利用されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転伝達装置を示す図である。
【図2】第1の磁極面が形成される固定部を示す図である。
【図3】第2の磁極面が形成される第1の回転板を示す図である。
【図4】孔部を設けた第2の回転板を示す図である。
【図5】回転伝達装置を用いた発電装置を示す図である。
【図6】移動装置を備えた移動体を示す図である。
【図7】変形例の回転伝達装置を示す図である。
【図8】変形例の回転伝達装置を用いた発電装置を示す図である。
【図9】別の変形例の回転伝達装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態の回転伝達装置)
図面を引用して実施形態の回転伝達装置の詳細なる説明をおこなう前に、実施形態の回転伝達装置の概要をまず説明する。
【0015】
実施形態の回転伝達装置では、固定部に形成される第1の磁極面と、第2の磁極面を有する第1の回転板とが対面して配置されている。そして、第1の磁極面と第2の磁極面との間の空隙に第2の回転板が配置されている。第1の磁極面の磁極の極性と第2の磁極面の磁極の極性とは同一極性とされおり、第1の磁極面の磁極の個数と第2の磁極面の磁極の個数とは異なる数とされている。第2の回転板は導電性を有しており、孔部が設けられ、その孔部の位置は第1の磁極面または前記第2の磁極面のいずれかの磁極面に対面する位置とされている。このような構成を採用することによって、第1の回転板と第2の回転板との間で回転力を相互に伝達することができる。第1の回転板と第2の回転板との間で回転力を相互に伝達するには、第1の回転板の回転中心点から伸びる第1の回転シャフトと第2の回転板の回転中心点から伸びる第2の回転シャフトとを設けて、この回転シャフトを介して回転力を相互に伝達することができる。また、円板状の形状を有する第1の回転板の外周部に第1のプーリを押圧し、円板状の形状を有する第2の回転板の外周部に第2のプーリを押圧し、第1のプーリと第2のプーリを介して回転力を伝達することもできる。
【0016】
以下、図1〜図4を参照して、実施形態の回転伝達装置について説明をする。
【0017】
図1は、実施形態の回転伝達装置10の断面を示す図である。回転伝達装置10は、磁極面(第1の磁極面)が形成される固定部19と、磁極面(第2の磁極面)が形成される回転板(第1の回転板)14と回転板(第2の回転板)11とを主要構成部としている。
【0018】
固定部19は固定部(第1の固定部)19aと固定部(第2の固定部)19bとを有しており、回転伝達装置10を構成する各部材を組み立てた後に固定部19aと固定部19bとが図1に示す状態で接合される。固定部19aの最下部面(図1の下方の面)は平面とされ、第1の磁極面が形成されている。固定部19aには回転板11を回転可能とするための軸受け15が配されている。固定部19bには回転板14を回転可能とするための軸受け16が配されている。図1では、後述する磁石12a〜磁石12fを代表して磁石12が記載されており、磁石13a〜磁石13gを代表して磁石13が記載されている。
【0019】
図2は、第1の磁極面が形成される固定部19aを示す図である。図2では、第1の磁極面が形成される面側から見た固定部を示している。第1の磁極面は、固定部19aの平面上に6個の磁石である磁石12a、磁石12b、磁石12c、磁石12d、磁石12e、磁石12fをビス等で固着して形成される。磁石12aと磁石12bとの離間距離は、磁石12bと磁石12cとの離間距離と等しくされ、同様にして、すべての磁石は等しい離間距離を有して、軸受け15の中心を中心点として描く円の円周に沿って配置されている。
【0020】
磁石12a〜磁石12fの表面によって形成される第1の磁極面は、平坦面とされ、回転板11の一方の面(表面)に対面している。磁石12a〜磁石12fの回転板11に対面する側の磁石の極性はN極とされている。一方、磁石12a〜磁石12fの固定部19aに固着される側の磁石の極性はS極とされている。
【0021】
図3は、第2の磁極面が形成される第1の回転板である回転板14を示す図である。図3では、第2の磁極面が円周に沿って形成される面側から見た回転板14を示している。回転板14は円板状の平板であり、例えば、アルミニューム等の導電材料で形成されている。
【0022】
第2の磁極面は、回転板14を形成する平面板14a上に7個の磁石である磁石13a、磁石13b、磁石13c、磁石13d、磁石13e、磁石13f、磁石13gをビス等で固着して形成される。平面板14aは円板状の形状とされている。磁石13aと磁石13bとの離間距離は、磁石13bと磁石13cとの離間距離と等しくされている。同様にして、すべての磁石は等しい離間距離を有して、回転シャフト(第1の回転シャフト)18(図1を参照)の回転軸中心を中心点として描く円の円周に沿って配置されている。第2の磁極面の円周の直径と第1の磁極面の円周の直径とは等しくされている。磁石12a〜磁石12fと磁石13a〜磁石13gとはすべて同一の形状、磁気特性を有する磁石である。回転板14と回転シャフト18とは固着金具20によって結合されており、上述した円周の中心を通過する垂線の方向に回転シャフト18の軸が伸びるように配置されている。
【0023】
磁石13a〜磁石13gの表面によって形成される第2の磁極面は、平坦面とされ、回転板11の裏面に対面している。磁石13a〜磁石13gの回転板11に対面する側の磁石の極性はN極とされている。一方、磁石13a〜磁石13gの平面板14aに固着される側の磁石の極性はS極とされている。
【0024】
図4は、孔部を設けた回転板(第2の回転板)11を示す図である。図4では、回転板14の側から見た回転板11を示している。回転板11は、アルミニュームの円板形状の平板とされており、孔部11a、孔部11b、孔部11c、孔部11d、孔部11e、孔部11fが設けられている。孔部11a〜孔部11fの各々の位置は、固定部19aに固着される磁石12a〜磁石12fの各々の位置と一致するものとされており、孔部の個数は6個とされている。回転板11と回転シャフト17(図1を参照)とは固着金具21によって結合されており、上述した円周の中心を通過する垂線の方向に回転シャフト17の軸が伸びるように配置されている。
【0025】
つまり、実施形態の回転伝達装置10は、固定部19aに形成される磁石12a〜磁石12fの磁極面と、回転板14に固着される磁石13a〜磁石13gの磁極面とが対面して配置されている。そして、磁石12a〜磁石12fの磁極面と磁石13a〜磁石13gの磁極面との間の空隙に回転板11が配置されている。磁石12a〜磁石12fの磁極面の極性と磁石13a〜磁石13gの磁極面の極性とは同一極性とされている。磁石12a〜磁石12fの個数と磁石13a〜磁石13gの個数は異なる数とされている。回転板11は導電性を有しており、孔部が設けられ、その孔部の位置はいずれかの磁極面に対面する位置とされている。
【0026】
本願の願書に記載の発明者(以下、発明者と省略する)は種々の実験を繰り返して、このような、従来はまったく知られていない新規な構成を有する回転伝達装置10の回転シャフト17と回転シャフト18と間で相互に回転力が伝わり、極めて効率よく回転力を伝達することを見出した。つまり、図1において、回転シャフト17を矢印の方向に回転させると、回転シャフト18も矢印の方向に回転するのである。そして、回転シャフト17を矢印の反対方向に回転させると、回転シャフト18も矢印の反対方向に回転するのである。さらに、回転シャフト18を矢印の方向に回転させると、回転シャフト17も矢印の方向に回転し、回転シャフト18を矢印の反対方向に回転させると、回転シャフト17も矢印の反対方向に回転するのである。
【0027】
特に回転シャフト17の側から回転駆動力を与えて回転力を伝達する場合においては、回転板11の重さは回転板14よりも軽く、回転モーメントが小さく、また、後述するロック状態(回転角度によっては回転時の抵抗が大きくなる現象であり、コギングとも称する)も生じることがなく、回転シャフト18に結合される負荷が大きい場合にも、小さな力で回転シャフト17の回転を開始させることができる。
【0028】
また、発明者は、第1の磁極面の個数(磁石の個数)と第2の磁極面の個数(磁石の個数)とを種々に変化させて、最も回転の伝達効率が高い組み合わせを最終的に見いだした。まず、第1の磁極面の個数(磁石の個数)と第2の磁極面の個数(磁石の個数)とが異なる場合に滑らかに回転力が伝達されることを見出した。一方、第1の磁極面を構成する磁極面の個数(磁石の個数)と第2の磁極面を構成する磁極面の個数(磁石の個数)とが等しい場合(両者の比が1の場合)には、回転板14には、滑らかな回転が阻害される回転のロック状態が発生して、特に回転数が低い場合に効率的に回転を伝達することができないとの結果を得た。次に、第1の磁極面の個数と第2の磁極面の個数との比が1以外の整数である場合、すなわち、一方の磁極面の個数で他方の磁極面の個数が割り切れる場合、には、より軽度ではあるが、なお、ロック状態が発生するとの結果を得た。さらに、第1の磁極面の個数を整数で除した数(約数)と第2の磁極面の個数を整数で除した数(約数)が等しくなる場合(公約数が存在する場合)には、その大きさは、さらに軽減されるものの依然としてロック状態が発生するとの結果を得た。
【0029】
そして、ロック状態の発生を防止する観点からの望ましい組み合わせは、一方の磁極面の個数が偶数であれば、他の磁極面の個数が奇数であるとの結果を得た。そして、最も望ましい組み合わせは、一方の磁極面の個数と他の磁極面の個数との異なりが1個であるとの結果を得た。このような理由で、実施形態では、第1の磁極面の個数を6個、第2の磁極面の個数を7個としている。また、第1の磁極面の個数を7個、第2の磁極面の個数を6個とする場合にも同様の効果が得られることも確認している。
【0030】
また、回転板11に設けた孔部の各々の位置は、固定部19aに固着される磁石12a〜磁石12fの各々の位置と一致するものとするのみならず、平面板14a上に固着される磁石13a〜磁石13gの各々の位置と一致するようにしても同様の効果を得ることができることも確認している。
【0031】
また、回転板11(第2の回転板)から回転板14(第1の回転板)に回転力を伝達し、回転板14(第1の回転板)から回転板11(第2の回転板)に回転力を伝達する可逆的な作用が得られることから、上述した、回転シャフト17と回転シャフト18とを用いることなく他の機構によっても回転力を伝達することができる。例えば、図示はしないが、固定部19に外部に対する開放部を設けて、一方の回転板にプーリを押圧してこのプーリの中心から伸びる軸に回転力を付与し、さらに、他方の回転板にプーリを押圧してこのプーリの中心から伸びる軸から回転力を得るような構成を採用することもできる。
【0032】
(実施形態の発電装置)
図5は、実施形態の発電装置30の断面を示す図である。発電装置30は、上述した回転伝達装置10と同様の構成を有する回転伝達装置部40を備え、さらに、回転駆動力発生装置部50と発電機部60とを備えている。回転伝達装置部40の各部については、上述した回転伝達装置10の各部と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。また、回転板114は上述した回転板14に対応し、回転板111は上述した回転板11に対応するものである。図1の回転伝達装置10と図6の回転伝達装置部40とにおける各部の差異は、作用の本質的な異なりを生じるものではない。各部の相違点については後述する。また、図1に示す固定部19に替えて、図5では、固定板41と固定板42と側部支持材71aで形成される外囲部が用いられている。この外囲部は、固定部19と同様の機能を有する。
【0033】
図5に示すように、発電装置30では、回転伝達装置部40と回転駆動力発生装置部50と発電機部60とは一体に形成されている。回転駆動力発生装置部50は回転駆動力発生装置51を有しており、回転駆動力発生装置51は下部固定板52に固着されている。回転駆動力発生装置51の回転シャフト54と回転伝達装置部40の回転シャフト17とは、ジョイント73で連結され、回転駆動力発生装置51で発生する回転力が回転伝達装置部40に伝達されるようになされている。ここで、回転駆動力発生装置51として内燃機関、例えば、2サイクルエンジンを採用する場合には、回転速度が低い領域ではトルクが小さいという特性を有している。
【0034】
また、発電機部60は、回転子と固定子とからなる通常の発電機61、例えば、同期発電機である。同期発電機の回転子に接続される回転シャフト67は、軸受け64を貫通して回転するようになされている。また、同期発電機の固定子は上部固定板65に固着されている。回転伝達装置部40の回転シャフト18と発電機部60の回転シャフト67とは、ジョイント74で連結され、回転伝達装置部40からの回転力が発電機61の回転子に伝達されるようになされている。同期発電機は、回転子側には磁石(図示せず)、固定側にはコイルを巻回した磁極コア(図示せず)を有する構成が通常採用されるので、磁石と磁極コアとが引き合いロック状態を生じる。
【0035】
ここで、側部支持材71aと、側部支持材71bと、側部支持材71cとによって、下部固定板52と固定板41と固定板42と上部固定板65との相対位置は固定されたものとなされている。このようにして、回転伝達装置部40を介して回転駆動力発生装置部50からの回転力を発電機部60に伝達している。
【0036】
回転駆動力発生装置51として内燃機関、発電機61として同期発電機を採用する場合に、回転伝達装置部40の効果が顕著なものとなるのでこのような場合についての動作の説明をする。
【0037】
回転伝達装置部40を介することなく、例えば、回転シャフト54と回転シャフト67とを直結して回転駆動力発生装置部50からの回転力を発電機部60に伝達する場合には、内燃機関の始動直後は回転数が低く、したがってトルクも小さい。一方、同期発電機はロック状態であるので、内燃機関の始動が極めて困難となる。
【0038】
一方、実施形態に示すように、回転伝達装置部40を介する場合には、内燃機関の回転シャフト54は回転シャフト17に接続される回転板11を楽に回転させることができる。そして、内燃機関は楽に回転数を上昇させ所望の回転数に設定することができる。回転板11が回転を開始するとこの回転力は、上述したようにして、回転板14に伝達され、回転シャフト18と回転シャフト67とを介して発電機61に伝達され発電を開始する。このようにして、滑らかに発電装置30は起動するのみならず、回転伝達装置部40の伝達効率が極めて良好であるために、発電装置30としても高効率であることを発明者は実験によって確認をしている。
【0039】
なお、回転駆動力発生装置部50からの回転力は、回転シャフト17、または、回転シャフト18のいずれに伝達するようにしても、内燃機関の始動は容易である。上述したように、回転シャフト17に結合される回転板111は、回転シャフト18に結合される回転板114のように磁極面を有さない。したがって、回転板111は、回転板114に比較して、回転モーメントが小さく、また、ロック状態が生じることがない。この性質を利用して、回転駆動力発生装置部50の回転シャフト54からの回転力を回転伝達装置部40の回転シャフト17に伝え、回転シャフト18からの回転を、回転シャフト67を介して発電機61に伝えることによって、さらに、内燃機関の始動を容易としている。
【0040】
また、回転シャフト17を介して回転駆動力発生装置51からの回転力を伝達することなく、回転板111にプーリ(図示せず)を押圧してこのプーリの中心から伸びる軸を回転シャフト54として回転駆動力発生装置51からの回転力を伝達するようにしても良い。同様に、回転シャフト17を介して回転力を発電機部60に伝達することなく、回転板114にプーリ(図示せず)を押圧してこのプーリの中心から伸びる軸を回転シャフト67として回転力を発電機部60に伝達するようにしても良い。要は、回転板114または回転板111のいずれか一方の回転板に回転駆動力発生装置51で発生された回転力を伝達し、他方の回転板から発電機部60に回転力を供給するようにすれば、発電装置としての目的を達することができるのである。
【0041】
発明者が実験に際して採用した主要部分の寸法及び材料名を以下に示す。なお、図5は構造の把握ができるようにするための図であり、図5に示す各部の実際の寸法に対応するものではない。まず、外囲部を構成する各部について説明をする。上部固定板65、固定板41、固定板42の各々は、220mm(ミリメートル)×220mmの寸法を有し、厚さ8mmのアルミニューム板を3枚積層したものである。下部固定板52は、220mm(ミリメートル)×220mmの寸法を有し、厚さ12mmのアルミニューム板である。側部支持材71aは、直径12mmで長さ112mmのアルミニューム管であり、4隅を支持するように4本用いている。側部支持材71bは、直径12mmで長さ63mmのアルミニューム管であり、4隅を支持するように4本用いている。側部支持材71cは、直径12mmで長さ150mmのアルミニューム管であり、4隅を支持するように4本用いている。
【0042】
回転板114は、直径200mmで厚さ17mmのアルミニュームで平面板114aを形成し、磁極面は、7個のネオジュウム磁石113a〜ネオジュウム磁石113g(図5では、ネオジュウム磁石113で代表して示している)を等間隔に配置している。磁極面の極性はN極としている。各々のネオジュウム磁石は直径25mmで厚さは10mmの円柱形状である。この回転板114は、図1における回転板14に対応するものである。このようにして第1の回転板を形成している。
【0043】
固定板41の上に直径200mmで厚さ20mmの台座119aを固着して、その上に8個のネオジュウム磁石112a〜ネオジュウム磁石112h(図5では、ネオジュウム磁石112で代表して示している)を等間隔に配置している。磁極面の極性はN極としている。各々のネオジュウム磁石は30mm×30mmで厚さは10mmの立方体である。このようにして第1の磁極面を固定板41の上に形成している。
【0044】
回転板111は直径200mmで厚さ6mmのアルミニュームで形成して、第1の磁極面の個数に合わせて、8個の孔部が設けられている。
【0045】
第1の磁極面、すなわち、ネオジュウム磁石112a〜ネオジュウム磁石112hの各々の表面と回転板111の対面する表面(表面)との離間距離は、8mmに設定し、第2の磁極面、すなわち、ネオジュウム磁石113a〜ネオジュウム磁石113gの各々の表面と回転板111の対面する表面(裏面)との離間距離は、8mmに設定している。
【0046】
回転シャフト17、回転シャフト18、回転シャフト54、回転シャフト67は各々が直径10mmのステンレスとしている。また、軸受け16、軸受け15は各々、ステンレス製のボールベアリング軸受けとしている。
【0047】
(実施形態の移動装置)
図6は、別の実施形態として、回転伝達装置10(回転伝達装置部)を利用した移動装置91を備えた船舶(移動体)90を示す図である。この船舶90は、スクリュー92を回転することによって推進力を発生する。この移動装置91は、上述した回転伝達装置10を備え、さらに、回転駆動力発生装置部96と推進力発生装置部として機能するスクリュー92とを備えている。回転駆動力発生装置部96は、例えば、内燃機関である。回転伝達装置10の回転シャフト17は回転駆動力発生装置部96の回転シャフト94とジョイントで連結され、回転伝達装置10の回転シャフト18は回転シャフト93とジョイントで連結されている。このようにして、回転駆動力発生装置部96からの回転力がスクリュー92に伝達されるようになされている。
【0048】
このような船舶90では、最初にスクリュー92を回転させるときには船舶90は停止しており、スクリュー92が回転を開始する場合の抵抗が大きい。このような場合において、回転伝達装置10を用いることによって、回転開始時の負荷が大きく、内燃機関の起動トルクが小さい場合でも、効果的に内燃機関の始動が可能となり、効率良く回転力を伝達できるという利点を有する。
【0049】
なお、上述したと同じ理由によって、回転駆動力発生装置部96の回転シャフト94からの回転力を回転伝達装置10の回転シャフト17に伝え、回転シャフト18からの回転を、回転シャフト93を介してスクリュー92に伝えることによって、さらに、内燃機関の始動を容易としている。また、このような移動体においても、上述した実施形態におけると同様に回転板に押圧されるプーリを用いて回転力を伝達することもできる。
【0050】
上述した、実施形態の回転伝達装置に限らず、同一の技術思想に基づいて様々な変形例が可能である。以下に、実施形態の回転伝達装置の変形例を示す。
【0051】
(実施形態の回転伝達装置の変形例)
図7は、図1に示す回転伝達装置10の変形例を示す図である、図7に示す回転伝達装置100は、回転伝達装置10A(第1段階の伝達装置)と回転伝達装置10B(第2段階の伝達装置)とが直列に接続して形成されている。回転伝達装置10Aと回転伝達装置10Bとのいずれもが、回転伝達装置10と基本的には同一の構成を有している。
【0052】
回転伝達装置10Aは、磁極面(第2の磁極面)が形成される回転板(第1の回転板)14Aと回転板(第2の回転板)11Aと固定部の磁石と主要構成要素としている。図7には、回転伝達装置10Aの固定部の磁石を代表して磁石13Aが記載されている。回転伝達装置10Bは、磁極面(第2の磁極面)が形成される回転板(第1の回転板)14Bと回転板(第2の回転板)11Bと固定部の磁石と主要構成要素としている。図7には、回転伝達装置10Bの固定部の磁石を代表して磁石13Bが記載されている。
【0053】
回転伝達装置10A(第1段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Aと、回転伝達装置10B(第2段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Bと、がシャフトで接続されることによって、回転伝達装置10A(第1段階の伝達装置)と回転伝達装置10B(第2段階の伝達装置)とは直列に接続されている。
【0054】
回転伝達装置10A(第1段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Aの直径は、回転伝達装置10B(第2段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Bの直径よりも小さなものとされ、回転伝達装置10A(第1段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Aの直径は、回転伝達装置10B(第2段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Bの直径よりも小さなものとされている。そして、駆動力はシャフト107から加えられて、シャフト106に伝達される。ここで、回転板11Aの直径は小さいので、慣性モーメントは小さく、シャフト107から加えられる駆動力が小さい場合にも、回転板11Aは回転を開始することができる。
【0055】
つまり、第1の回転伝達装置の第1の回転板と、第2の回転伝達装置の第2の回転板とをシャフトで接続して、第1の回転伝達装置の第2の回転板に駆動力を加えて、第2の回転伝達装置の第1の回転板から回転力を得る回転伝達装置において、第1の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径を、第2の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径よりも小さくすることによって、回転の起動が、1段階の回転伝達装置よりもより容易となる回転伝達装置を構成することができることとなる。
【0056】
図8は、このような回転伝達装置100を用いる発電機を示す図である。回転駆動力発生装置部50と発電機部60とは、図5に示すと同一の構造である。回転伝達装置10Aと回転伝達装置10Bとは、図7に示すと同様の構造をしている。回転駆動力発生装置部50からの駆動力はシャフト107に伝えられ、シャフト106からの回転は発電機部60に伝えられるようになされている。このようにして、図8に示す2個の回転伝達装置を有する発電機は、図5に示す1個の回転伝達装置を有する発電機よりも起動がより容易になる。
【0057】
(実施形態の回転伝達装置の別の変形例)
図9は、図1に示す回転伝達装置10のさらに別の変形例を示す図である、図9に示す回転伝達装置110は、回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)と、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)と、回転伝達装置10B(第3段階の伝達装置)と、が直列に接続して形成されている。図7に示す回転伝達装置10Aと回転伝達装置10Bとの前段にさらに、回転伝達装置10Cを付加したものである。回転伝達装置10Cは、回転伝達装置10と基本的には同一の構成を有している。
【0058】
回転伝達装置10Cは、磁極面(第2の磁極面)が形成される回転板(第1の回転板)14Cと回転板(第2の回転板)11Cと固定部の磁石と主要構成要素としている。図9には、回転伝達装置10Cの固定部の磁石を代表して磁石13Cが記載されている。
【0059】
回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Cと、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Aと、がシャフトで接続され、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Aと、回転伝達装置10B(第3段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Bと、がシャフトで接続されることによって、回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)と回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)と回転伝達装置10B(第3段階の伝達装置)とは直列に接続されている。
【0060】
回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Cの直径は、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Aの直径よりも小さなものとされ、回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Cの直径は、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Aの直径よりも小さなものとされている。図7を参照して説明したように、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Aの直径は、回転伝達装置10B(第3段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Bの直径よりも小さなものとされ、回転伝達装置10A(第2段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Aの直径は、回転伝達装置10B(第3段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Bの直径よりも小さなものとされている。
【0061】
そして、駆動力はシャフト117から回転伝達装置10C(第1段階の伝達装置)の回転板(第2の回転板)11Cに加えられて、最終的には、(第3段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)14Bに接続されるシャフト116に伝達される。ここで、回転板11Cの直径は、回転板11Aの直径よりもさらに小さいので、回転板11Cの慣性モーメントは、回転板11Aの慣性モーメントよりもさらに小さく、シャフト117から加えられる駆動力が小さい場合にも、回転板11Cは、さらに容易に回転を開始することができる。
【0062】
同様にして、3段階以上についても、任意の複数段の回転伝達装置を直列に接続した回転伝達装置を実現することができる。つまり、第1段階の回転伝達装置、第2段階の回転伝達装置、第3段階の回転伝達装置、・・・第L段階の回転伝達装置と直列に接続する。そして、第1段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板よりも、第2段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径を大きくし、第2段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板よりも、第3段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径を大きくし、・・・・第(L−1)段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板よりも、第L段階の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径を大きくする。
【0063】
このように、順次、後段の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径を、前段の回転伝達装置の第1の回転板及び第2の回転板の直径よりも大きくし、駆動力を第1段階の伝達装置の第2の回転板から加えられ、最終的には、(第L段階の伝達装置)の回転板(第1の回転板)に接続されるシャフトに伝達される。このようにして、第1段階の回転伝達装置から第L段階の回転伝達装置まで順に回転を伝達しながら、第L段階の出力側に重負荷が接続されていても、第1段階の回転伝達装置から容易に重負荷を回転させることができるようになる。
【0064】
実施形態の回転伝達装置は、発電機、移動体、以外であっても、同様な課題を有する産業機器、民生機器に広範囲に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定個数からなる所定極性の第1の磁極面が円周に沿って形成される固定部と、
前記所定個数とは異なる個数からなる前記所定極性と同極性の第2の磁極面が円周に沿って形成され、前記第1の磁極面に対面して回転可能とされる第1の回転板と、
前記第1の磁極面または前記第2の磁極面に対面する位置に孔部を有し、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との間で回転可能とされる第2の回転板と、
を備える回転伝達装置。
【請求項2】
前記第1の磁極面と前記第2の磁極面の各々は、
等間隔に配置される複数個の磁石によって形成され、
前記第1の磁極面または前記第2の磁極面の一方の磁極面が偶数個の磁石によって形成され、
他方の磁極面が奇数個の磁石によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記第1の磁極面を形成する磁石の個数と前記第2の磁極面を形成する磁石の個数とが1個異なることを特徴とする請求項2に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
さらに、前記第1の回転板に結合され前記円周の中心を通過する垂線方向に伸びる第1の回転シャフトと、
前記第2の回転板に結合され前記円周の中心を通過する垂線方向に伸びる第2の回転シャフトと、を具備する請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
回転伝達装置部を介して回転駆動力発生装置部からの動力を発電機部に伝達して電力に変換する発電装置であって、
前記回転伝達装置部は、
所定個数からなる所定極性の第1の磁極面が円周に沿って形成される固定部と、
前記所定個数とは異なる個数からなる前記所定極性と同極性の第2の磁極面が円周に沿って形成され、前記第1の磁極面に対面して回転可能とされる第1の回転板と、
前記第1の磁極面または前記第2の磁極面に対面する位置に孔部を有し、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との間で回転可能とされる第2の回転板と、を備え、
前記第1の回転板または前記第2の回転板のいずれか一方の回転板に前記回転駆動力発生装置部で発生された回転力を伝達し、
他方の回転板から前記発電機部に回転力を供給する発電装置。
【請求項6】
回転伝達装置部を介して回転駆動力発生装置部からの動力を推進力発生装置部に伝達して推進力を発生する移動装置であって、
前記回転伝達装置部は、
所定個数からなる所定極性の第1の磁極面が円周に沿って形成される固定部と、
前記所定個数とは異なる個数からなる前記所定極性と同極性の第2の磁極面が円周に沿って形成され、前記第1の磁極面に対面して回転可能とされる第1の回転板と、
前記第1の磁極面または前記第2の磁極面に対面する位置に孔部を有し、前記第1の磁極面と前記第2の磁極面との間で回転可能とされる第2の回転板と、
前記第1の回転板に結合され前記円周の中心を通過する垂線方向に伸びる第1の回転シャフトと、
前記第2の回転板に結合され前記円周の中心を通過する垂線方向に伸びる第2の回転シャフトと、を備え、
前記第1の回転板または前記第2の回転板のいずれか一方の回転板に前記回転駆動力発生装置部で発生された回転力を伝達し、
他方の回転板から前記推進力発生装置部に回転力を供給する移動装置。
【請求項7】
請求項1に記載の第1段階の回転伝達装置と、請求項1に記載の第2段階の回転伝達装置とを有して形成され、前記第1の回転伝達装置の第1の回転板と、前記第2の回転伝達装置の第2の回転板とをシャフトで接続して、前記第1の回転伝達装置の第2の回転板に駆動力を加えて、前記第2の回転伝達装置の第1の回転板から回転力を得る回転伝達装置であって、
前記第1の回転伝達装置の前記第1の回転板及び前記第2の回転板の直径は、前記第2の回転伝達装置の前記第1の回転板及び前記第2の回転板の直径よりも小さくされることを特徴とする回転伝達装置。















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−287771(P2009−287771A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101716(P2009−101716)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(501456593)