説明

回転充填層によりシリコンを精製する方法

【課題】トリクロロシランを含むシリコン原料を精製する方法を提供する。
【解決手段】先ず、不純物蒸気および他のクロロシランまたはシランを含む液体のシリコン原料をシリコン原料の沸点より低い温度の下で海綿状金属充填物107を有する第1の回転充填層100に通過させることにより、不純物蒸気および他のクロロシランまたはシランを液体のシリコン原料から分離する。次に、液体のシリコン原料を第2の回転充填層200に導入し、酸素204も導入することにより、沸点が高く、不純物を含むシロキサン複合体を形成する。最後に、分留により、シリコン原料から不純物を含むシロキサン複合体を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原料を精製する方法に関し、特に、回転充填層により、トリクロロシランまたはトリクロロシランと四塩化珪素の混合物を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子等級ポリシリコン(Electronic grade polysilicon:EGS)は、トリクロロシランまたはトリクロロシランと四塩化珪素の混合物からホウ素およびリンなどの不純物を除去することにより製造される。大部分の不純物は、分留法により、即座に除去することができるが、ホウ素およびリンなどの微量不純物は、通常、BCl、PCl、BまたはPHの形で存在し、これらの汚染物質を許容レベルにまで低減させるには、複数回の連続した分留ステップが必要である。その主な原因は、液体のトリクロロシランおよび四塩化珪素から不純物ガスの気泡を抽出するのが困難である上、不純物ガスが液体中に溶解する可能性があるからである。また、他の原因は、BClの沸点は、12.5℃であり、PClの沸点は、74.2℃であるため、32℃を超える温度でトリクロロシランを取り出すとき、ホウ素およびリンがトリクロロシランと共に出現する可能性があるからである。
【0003】
アルブレヒトなどが取得した特許文献1では、分離装置により、固体を分離する技術が開示されている。また、他の製造工程において、分離装置により、水中の酸素または他のガスを除去することが提案されている。ラムショーなどが取得した特許文献2では、回転テーブルにより、2種類の液体を効率よく物質移動させる方法および設備が開示されている。また、ダーネルなどが取得した特許文献3および特許文献4では、少量の酸素およびトリクロロシランガスを170℃または60℃〜300℃の高温反応させることにより、シリコン原料を精製する方法が開示されている。しかし、従来技術においては、回転テーブルにより、シリコン原料の不純物を除去する技術は存在しない。
【0004】
そこで、時間およびコストを掛けることなく、複数回の分留および高温反応により、シリコンを高純度に精製することができる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の従来技術の欠点を解決することができるシリコンの精製方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,616,245号
【特許文献2】米国特許第4,283,255号
【特許文献3】米国特許第4,374,110号
【特許文献4】米国特許第4,409,195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、従来技術の欠点が改善されたシリコン原料の精製方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、従来技術の欠点が改善されたトリクロロシランの精製方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、従来技術の欠点が改善された四塩化珪素の精製方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、従来技術の欠点が改善されたトリクロロシランと四塩化珪素の混合物の精製方法を提供することにある。
本発明の第5の目的は、従来技術の欠点が改善された、ホウ素およびリンを含むガス不純物または液体不純物を低温で除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明は、2つの回転充填層により、トリクロロシランを含むシリコン原料を精製する方法を提供するものである。本発明においては、ホウ素、リンなどを含む単一または複数の不純物を、塩化物、水素化物、或いは、ホウ素、リンなどを含む塩素と水素の中間複合体の形でシリコン原料から除去する。本発明は、(1)海綿状金属充填物を有する第1の回転充填層に、トリクロロシランおよび四塩化珪素を含む液体のシリコン原料を投入し、第1の回転充填層をシリコン原料の沸点温度未満に保持し、第1の回転充填層に如何なるガスも導入しないことにより、沸点がシリコン原料よりも低い不純物である水素化物蒸気および他のクロロシランまたはシランを液体のシリコン原料から分離し、それらをポンプによって抽出して再利用するか廃棄し、排出したシリコン原料を第2の回転充填層のシリコン原料入口に投入するステップと、(2)液体のシリコン原料を海綿状金属充填物を有する第2の回転充填層に投入し、第2の回転充填層をシリコン原料の沸点温度未満に保持し、酸素を上方から第2の回転充填層に導入し、第2の回転充填層のトリクロロシラン入口および酸素入口の流速を制御し、酸素のトリクロロシランに対するモル比を約0.005〜0.5に調整することにより、不純物であるシロキサン複合体を形成し、不純物である水素化物蒸気および他のクロロシランまたはシランを液体のシリコン原料から再び分離し、それらをポンプによって抽出して再利用するか廃棄するステップと、(3)シリコン原料の沸点よりも高い沸点の不純物であるシロキサン複合体を含む液体のシリコン原料を収集するステップと、(4)分留ステップにより、シリコン原料から不純物であるシロキサン複合体を除去するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
先ず、不純物蒸気および他のクロロシランまたはシランを含む液体のシリコン原料をシリコン原料の沸点より低い温度の下で海綿状金属充填物を有する第1の回転充填層に通過させることにより、不純物蒸気および他のクロロシランまたはシランを液体のシリコン原料から分離する。次に、液体のシリコン原料を第2の回転充填層に導入し、酸素も導入することにより、沸点が高く、不純物を含むシロキサン複合体を形成する。最後に、分留により、シリコン原料から不純物を含むシロキサン複合体を除去する。以上のステップにより、時間およびコストを掛けることなく、複数回の分留および高温反応により、シリコンを高純度に精製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による回転充填層を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による回転充填層を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施形態を図面に沿って詳細に説明する。
【0012】
図1を参照する。図1は、本発明の一実施形態による回転充填層を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態による回転充填層を示す上面図である。第1の回転充填層100は、チャンバ112と、トリクロロシラン、四塩化珪素またはトリクロロシランと四塩化珪素の混合物などを含む液体のシリコン原料を投入するのに使用されるシリコン原料入口101と、を含む。シリコン原料入口101の流速は、制御装置(図示せず)によって制御される。ガス出口102は、ポンプ(図示せず)に連通され、ガス不純物を抽出するのに使用される。第1の回転充填層100の酸素入口103は、閉じられている。軸シール109,110内の回転軸111の回転により、回転テーブル113が約1500rpmの回転速度で駆動されるとき、投入された液体のシリコン原料は、分配器108から回転テーブル113に進入した後、遠心力によって外側に飛散する。外側に飛散するとき、液体は、回転テーブル113中の海綿状金属充填物107によって阻止され、水滴または薄膜となる。これにより、ガス不純物が液体と分離しやすくなり、ガス出口102からガス不純物が抽出される。その結果、精製された液体のシリコン原料105中には、気泡が存在しない上、ガスが溶解していない。精製された液体のシリコン原料105は、シリコン原料出口106から排出される。
【0013】
第2の回転充填層200は、チャンバ212と、第1の回転充填層100のシリコン原料出口106から液体のシリコン原料を導入するのに使用されるシリコン原料入口201と、チャンバ212の上縁に配置され、酸素204を導入するのに使用される酸素入口203と、含む。酸素入口203の流速は、制御装置(図示せず)により制御される。ガス出口202は、ポンプ(図示せず)に連通され、ガス不純物を抽出するのに使用される。軸シール209,210内の回転軸211の回転により、回転テーブル213が約1500rpmの回転速度で駆動されるとき、導入された液体のシリコン原料は、分配器208から回転テーブル213に進入し、遠心力によって外側に飛散する。外側に飛散するとき、液体は、回転テーブル213中の海綿状金属充填物207によって阻止され、水滴または薄膜となる。これにより、ガス不純物が液体から再び分離し、ガス出口202から抽出される。その結果、液体のシリコン原料中には、気泡が存在しない上、ガスが溶解していない。酸素は、海綿状金属充填物207中において、低温の下で物質移動し、トリクロロシラン内のSi−Hと連鎖反応してSiOH粒子(species)を形成し、トリクロロシラン内の不純物と化合し、不純物であるシロキサン複合体を形成する。精製された液体のシリコン原料205は、シリコン原料出口206から排出される。
【0014】
シリコン原料の精製は、以下の工程により行われる。先ず、例えばトリクロロシランなどのシリコン原料をシリコン原料の沸点より低い温度に冷却する(トリクロロシランの場合32℃)。その後、シリコン原料を第1の回転充填層100のシリコン原料入口101から投入する。例えば、毎年1250トン生産する場合、トリクロロシランの流速を195g/secに制御し、回転テーブル113の回転速度を約1500rpmに制御する。液体のトリクロロシランが海綿状金属充填物107を通過するとき、液体が水滴または薄膜となり、PH、BまたはSiHなどのガス不純物が液体のシリコン原料から分離し、ガス出口102からガス不純物が抽出される。本工程においては、酸素がPH、BまたはSiHなどと反応するのを防止するために、酸素を導入しない。次に、液体のシリコン原料をシリコン原料出口106から第2の超高層回転充填層200に導入し、酸素も酸素入口203から導入する。このとき、トリクロロシランおよび酸素の流速を制御し、酸素のトリクロロシランに対するモル比を約0.005〜0.5に制御する。例えば、毎年1250トン生産する場合、トリクロロシランを195g/secに制御し、0.01モルの酸素を0.375g/secに制御する。これにより、酸素は、海綿状金属充填物107中において、低い温度の下で物質移動し、トリクロロシラン内のSi−Hと連鎖反応してSiOH粒子(species)を形成し、トリクロロシラン内に存在する不純物と化合し、不純物であるシロキサン複合体を形成する。この複合体は、トリクロロシランと比較して揮発しにくい。その後、後続の分留ステップにより、トリクロロシランから揮発しにくいホウ素、リンを含むシロキサン複合体を分離する。
【0015】
上述の各実施形態は、本発明の特徴を示すものであり、その目的は、当該技術を熟知するものが本発明の内容を理解し、実施することであり、本発明の範囲を限定することではない。従って、本発明の主旨を逸脱しない範囲における修飾または変更は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0016】
100 第1の回転充填層
101 シリコン原料入口
102 ガス出口
103 酸素入口
105 精製された液体のシリコン原料
106 シリコン原料出口
107 海綿状金属充填物
108 分配器
109 軸シール
110 軸シール
111 回転軸
112 チャンバ
113 回転テーブル
200 第2の回転充填層
201 シリコン原料入口
202 ガス出口
203 酸素入口
204 酸素
205 精製された液体のシリコン原料
206 シリコン原料出口
207 海綿状金属充填物
208 分配器
209 軸シール
210 軸シール
211 回転軸
212 チャンバ
213 回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転充填層により、トリクロロシランを含むシリコン原料を精製する方法であって、
ホウ素、リンなどを含む単一または複数の不純物を、塩化物、水素化物、或いは、ホウ素、リンなどを含む塩素と水素の中間複合体の形で前記シリコン原料から除去する方法であり、前記方法は、
海綿状金属充填物を有する第1の回転充填層に液体のシリコン原料を投入し、前記第1の回転充填層を前記シリコン原料の沸点温度未満に保持し、前記第1の回転充填層に如何なるガスも導入しないことにより、沸点が前記シリコン原料よりも低い不純物である水素化物蒸気および他のクロロシランまたはシランの蒸気を前記液体のシリコン原料から分離し、それらをポンプによって抽出して再利用するか廃棄し、排出したシリコン原料を第2の回転充填層のシリコン原料入口に投入するステップと、
前記液体のシリコン原料を海綿状金属充填物を有する第2の回転充填層に投入し、前記第2の回転充填層を前記シリコン原料の沸点温度未満に保持し、酸素を上方から第2の回転充填層に導入することにより、不純物であるシロキサン複合体を形成し、不純物である水素化物蒸気および他のクロロシランまたはシランの蒸気を液体のシリコン原料から再び分離し、それらをポンプによって抽出して再利用するか廃棄するステップと、
前記シリコン原料の沸点よりも高い沸点の不純物であるシロキサン複合体を含む液体のシリコン原料を収集するステップと、
分留ステップにより、シリコン原料から不純物であるシロキサン複合体を除去するステップと、を特徴とする回転充填層によりシリコンを精製する方法。
【請求項2】
前記シリコン原料は、トリクロロシランおよび四塩化珪素を含むことを特徴とする請求項1記載の回転充填層によりシリコンを精製する方法。
【請求項3】
前記酸素の前記トリクロロシランに対するモル比は、約0.005〜0.5であることを特徴とする請求項1記載の回転充填層によりシリコンを精製する方法。
【請求項4】
前記第2の回転充填層のトリクロロシラン入口および酸素入口の流速は、制御可能であることを特徴とする請求項1記載の回転充填層によりシリコンを精製する方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−241106(P2011−241106A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112834(P2010−112834)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(510135474)
【出願人】(510135485)
【出願人】(510135496)
【Fターム(参考)】