説明

回転印

【課題】複数の無端印字ベルトの中から、使用者が所望するベルトを容易に選択できる回転印を提供する。
【解決手段】回転自在に配設された複数の回転子12とその下端との間に、外表面に複数の印字が形成された複数の無端印字ベルト15を巻き掛けた回転印本体10と、前記回転印本体10の下端に、無端印字ベルト15が露出する窓孔19aが形成された固定印19と、前記回転印本体10を被装し、前記回転印本体10に対して上下方向および円周方向にスライド可能に配設された把持筒30とを有する回転印であって、前記把持筒30の上下方向スライド操作により、前記無端印字ベルト15に回転力を付与し、前記印字を1ピッチ回転させる回転機構と、前記把持筒30の円周方向スライド操作により、前記回転力を付与する無端印字ベルト15を複数から1つ選択する選択機構と、を設けたことを特徴とする回転印である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子に巻き掛けられた無端印字ベルトを有する回転印に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、年月日を印字するための回転印が広く用いられている。この特許文献1に示される回転印は、回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に無端印字ベルトを巻き掛けた回転印字体に、把持筒を上下スライド自在に被装し、この把持筒の下端に、前記無端印字ベルトの下端を露出させる窓孔が形成された固定印を設けたものである。この回転印を押印すると、無端印字ベルトに形成された印字及び固定印に形成された印字が同時に印字することができるようになっている。無端印字ベルトに形成された印字を切り替えるには、前記把持筒を上方にスライドさせて、前記回転子を露出させた状態で、前記回転子を指で回転させる。このように、回転子を指で回転させるため、指先が汚れてしまうという問題があった。
また、年月日を印字する回転印では、年月日のうち末尾の日は頻繁に切り替える必要があるが、指が太い人や、細かい部分が見え難い人にとって、回転子を指で回転させる作業は大変である。
【0003】
このような問題を解決するため、本出願人は先に、特願2008−252931号として、把持筒のスライド操作により、無端印字ベルトに回転力を付与し、印字体を1ピッチ回転させる回転機構を設けた回転印を出願しているが、この先願のものは、前記回転機構で回転できる印字ベルトが設計段階で既定されているため、使用する際、使用者は複数の無端印字ベルトの中から回転させたいベルトを選択することができなかった。
【特許文献1】特開2005−297574号公報
【特許文献2】特願2008−252931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決し、複数の無端印字ベルトの中から、使用者が所望するベルトを容易に選択できる回転印を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明の回転印は、回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に、外表面に複数の印字が形成された複数の無端印字ベルトを巻き掛けた回転印本体と、前記回転印本体の下端に、無端印字ベルトが露出する窓孔が形成された固定印と、前記回転印本体を被装し、前記回転印本体に対して上下方向および円周方向にスライド可能に配設された把持筒とを有する回転印であって、前記把持筒の上下方向スライド操作により、前記無端印字ベルトに回転力を付与し、前記印字を1ピッチ回転させる回転機構と、前記把持筒の円周方向スライド操作により、前記回転力を付与する無端印字ベルトを複数から1つ選択する選択機構と、を設けたことを特徴とする。
また、第2の発明は、前記把持筒の内筒面に、円周方向に延びる円周ガイド溝の下端に、上下方向に延びる複数の垂直ガイド溝を形成し、回転印本体の外周面に、前記円周ガイド溝および前記垂直ガイド溝と係合する誘導突起を形成し、前記把持筒を円周方向にスライドさせて、前記複数の垂直ガイド溝の中から1つを選択して、その上方に誘導突起を位置させる前記選択機構と、前記誘導突起を前記垂直ガイド溝の上下方向へ係合誘導させて、前記把持筒を上下方向にスライド操作させることを特徴とする第1の発明に記載の回転印である。
また、第3の発明は、把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、前記操作片の先端に無端印字ベルトの外表面と対向し係合する係合突起を設けて回転機構を構成したことを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の回転印である。
また、第4の発明は、把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、前記操作片の先端に回転子と対向し係合する係合突起を設けて回転機構を構成したことを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の回転印である。
また、第5の発明は、半径方向外側に膨出するラチェット爪が形成されたラチェット部材を、回転子と係合させた状態で同軸に配設し、把持筒の内部に前記ラチェット爪と噛合又は滑動する係合突起を形成し、前記把持筒を上方又は下方の一方にスライドさせると、前記ラチェット部材が一回転方向に回転し、回転子が供回りして、無端印字ベルトに回転力が付与されるように回転機構を構成したことを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の回転印である。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明は、把持筒のスライド操作により、無端印字ベルトに回転力を付与し、前記印字を1ピッチ回転させる回転機構を設けたので、把持筒を上方又は下方の一方にスライドさせる簡単な動作で、無端印字ベルトの印字を切り替えることが可能となった。また、回転子を直接触らなくても、印字を切り替えることができるので、指先が汚れない。さらに、回転印本体の下端に、無端印字ベルトが露出する窓孔が形成された固定印を設けたので、回転印とともに、固定印に形成された印字も同時に印字することができ大変便利である。
そして、前記把持筒の円周方向スライド操作により、前記回転力を付与する無端印字ベルトを複数から1つ選択する選択機構を設けたので、使用者は、年、月、日を印字するベルトの中から所望するベルトを選択することができるようになった。
【0007】
第2の発明は、円周ガイド溝の下端に複数の垂直ガイド溝を形成し、また、これら円周ガイド溝と垂直ガイド溝に係合する誘導突起を形成したので、把持筒を円周方向にスライドさせると、無端印字ベルトを複数から1つ選択する選択機構を実現することができ、また、誘導突起を垂直ガイド溝に位置させた状態で把持筒を上方又は下方の一方にスライドさせると、無端印字ベルトに回転力を付与する回転機構を実現することが可能となった。
【0008】
第3の発明は、把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、前記操作片先端に無端印字ベルトの外表面と対面し係合する係合突起を設けたので、把持筒を、上方又は下方の一方にスライドさせると、無端印字ベルトに回転力を付与する回転機構を実現することが可能となった。
【0009】
第4の発明は、把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、前記操作片の先端に回転子と対面し係合する係合突起を設けたので、把持筒を、上方又は下方の一方にスライドさせると、無端印字ベルトに回転力を付与する回転機構を実現することが可能となった。
【0010】
第5の発明は、半径方向外側に膨出するラチェット爪が形成されたラチェット部材を、回転子と係合させた状態で同軸に配設し、把持筒の内部に前記ラチェット爪と噛合又は滑動する係合突起を形成し、前記把持筒を上方又は下方の一方にスライドさせると、前記ラチェット部材が一回転方向に回転し、回転子が供回りして、無端印字ベルトに回転力が付与されるように構成したので、把持筒を、上方又は下方の一方にスライドさせると、無端印字ベルトに回転力を付与する回転機構を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ本発明第1の実施形態を示す。
図1は第1の実施形態の回転印51の外観図であり、図3は図1の断面図である。回転印51は、回転印本体10、把持筒30とから構成されている。回転印本体10に、把持筒30が上下方向スライド可能に被装している。ここで被装とは、被せるように取り付けることをいう。以下、各構成部品を詳細に説明する。
【0012】
回転印本体10は、枠状部材11、回転子12、支持部材13、無端印字ベルト15、固定印19、筐体20とから構成されている。枠状部材11は、断面形状「コ」字形状で、下側に開放した形状である。枠状部材11の内部に、複数の回転子12が、同軸に軸着している。回転子12は、操作円盤12aと、この操作円盤12aよりも外径の小さい係合筒12bが同軸に、一体となって形成されている。枠状部材11の下端には、断面形状「コ」字形状で、上側に開放した支持部材13が取り付けられている。
【0013】
それぞれの回転子12の係合筒12b及び、支持部材13の下端には、複数の無端印字ベルト15が巻き掛けられている。無端印字ベルト15の外表面には、長さ方向に沿って、複数の印字ブロック15aが突設されている。印字ブロック15aの表面には、数字や文字等の印字が形成されている。無端印字ベルト15の裏面と、回転子12の係合筒12bとは係合していて、使用者が、指等で操作円盤12aを回転させると、無端印字ベルト15も回転し、印字ブロック15aが切り替わるようになっている。
【0014】
筐体20は、筒状であり、内部に枠状部材11を収納した状態で保持している。筐体20の下端には、固定印19が設けられている。固定印19の中央には、断面形状が長方形状の窓孔19aが連通形成されている。固定印19の窓孔19aから無端印字ベルト15の下端が露出している。
図2に示されるように、筐体20の外周面上方には、誘導突起20aが設けられている。誘導突起20aは、次述する把持筒30に設けられる円周ガイド溝および垂直ガイド溝と係合するように設けられる。
【0015】
把持筒30は、下側が開放した有底筒状であり、筐体20に、円周方向及び上下方向にスライド可能に被装している。把持筒30の内筒面には、円周方向に延びる円周ガイド溝30hが設けられている。前記円周ガイド溝30hの下端には、上下方向(軸線と平行方向)に延びる複数の垂直ガイド溝30iが形成され、円周ガイド溝30hと複数の垂直ガイド溝30iは連なった状態に連設されている。これら円周ガイド溝及び垂直ガイド溝には、前記誘導突起20aが係合する。
前記把持筒30を筐体20に対して円周方向にスライドさせると、円周ガイド溝30hは誘導突起20aを係合誘導し、また、前記把持筒30を筐体20に対して上下方向にスライドさせると、垂直ガイド溝30iは誘導突起20aを係合誘導する。これにより、把持筒30は、筐体20に、円周方向及び上下方向にスライド可能に被装される。
【0016】
把持筒30が、筐体20に対して下側に位置している状態では、把持筒30が、回転子12を遮蔽しているので、回転印51で押印する際に、回転子12の操作円盤12aに触れることがなく、不用意に無端印字ベルト15に形成された印字ブロック15aが切り替わることがない。
【0017】
一方で、日付等を変更しようとするならば、把持筒30を筐体20に対して円周方向へスライドさせる。すると、筐体20の外周面上方に設けられた誘導突起20aは、把持筒30内壁面に設けられた、円周ガイド溝30hに係合誘導され、誘導突起20aは、最初は円周ガイド溝30hの端部30mに当接しているが、把持筒30のスライドとともに、垂直ガイド溝30iの上端に位置する。そして、この位置から、把持筒30を上方にスライドさせると、誘導突起20aは、垂直ガイド溝30iに係合誘導され、最終的に下端に到達し、この状態で、複数の回転子12の操作円盤12aが露出する。これにより、操作円盤12aを回転させることにより、無端印字ベルト15の印字ブロック15aを切り替えることができるようになっている。
ここで、円周ガイド溝30hの端部30m近傍に、一定の力を超えると誘導突起20aが乗り越えられるような係止片30jを設け、誘導突起20aが端部30mに到達したときに、前記係止片30jによって、誘導突起20aを一時的に係止可能にしておくと、把持筒30と筐体20の係止状態を維持させておくことができ、回転印51で押印する際に、不用意にガタつくことがなく有用である。
また、垂直ガイド溝30iの下方に、一定の力を超えると誘導突起20aが乗り越えられるような係止片30lを設け、誘導突起20aが垂直ガイド溝30iの下端に到達したときに、前記係止片30lによって、誘導突起20aを一時的に係止可能にしておくと、操作円盤12aが露出した状態を維持させておくことができ、日付等の変更をする際に有用である。
【0018】
前記垂直ガイド溝30iの数は、後述する回転機構の希望数だけ設ければよい。回転機構は、無端印字ベルトに回転力を付与し、印字を1ピッチ回転させる機構であるため、回転を希望する無端印字ベルトの数が、例えば図3(A)のように5本の場合は、垂直ガイド溝30iを5本設ければよく、5本中3本だけを希望する場合は、垂直ガイド溝30iを3本設ければよい。複数の垂直ガイド溝30iの間隔は、回転機構間の間隔と同一とする。
【0019】
前記複数の垂直ガイド溝30iの中から1つを選択する選択機構は、把持筒30を筐体20に対して円周方向へスライドさせた際、筐体20の外周面上方に設けられた誘導突起20aを、把持筒30のスライドとともに、複数の垂直ガイド溝30iの中から1つを選択して、その上方に位置させる機構である。
このとき、円周ガイド溝30hと垂直ガイド溝30iとの連設部分に、前記誘導突起20aが垂直ガイド溝30iの上部で一旦停止するように、係止片30kを設けてもよい。係止片30kは、一定の力を超えると誘導突起20aが乗り越えられるように設計する。このようにすると、誘導突起20aは、複数の垂直ガイド溝30iの上方で一旦停止しながら円周ガイド溝30h内を係合誘導するため、複数の垂直ガイド溝30iの中から1つを選択して、その上方に誘導突起20aを位置させる選択機構として有用である。
【0020】
ここで、図示しないが、前記筐体20に設けた誘導突起20aと、把持筒30に設けた円周ガイド溝および垂直ガイド溝の関係を逆にしてもよい。つまり、把持筒30の内筒面に誘導突起を設け、筐体20の外周面に、円周ガイド溝および垂直ガイド溝を設けてもよく、この場合、誘導突起は把持筒30の内筒面下方に設けられ、垂直ガイド溝は、筐体20の比較的下方に設けられた円周ガイド溝の上端から上方に向かって形成される。
【0021】
次に、前記無端印字ベルトに回転力を付与し、前記印字を1ピッチ回転させる回転機構について説明する。
第1の回転機構の実施形態は、図1の(A)に示されるように、把持筒30には、下側を底とする「U」字形状の連通溝30aが連通形成されている。連通溝30aの内側は、操作片30bとなっている。第1の実施形態では、把持筒30を、樹脂等の柔軟で弾性のある材質で構成しているので、操作片30bは内側に変形可能となっている。操作片30bを指等で押圧し内側に変形させた後に、指を離すと、操作片30bの弾性力により、元の形状に戻るようになっている。
【0022】
図3の(B)に示されるように、操作片30bの先端には、内側に突出し、無端印字ベルト15と対向する係合突起30cが突設されている。
【0023】
図4の(A)に示されるように、操作片30bを押圧すると、係合突起30cが、長さ方向隣接する印字ブロック15aの間に侵入し、印字ブロック15aと係合した状態となる。この状態で、把持筒30を上方にスライドさせると、無端印字ベルト15が1ピッチ分回転し、印字ブロック15aを切り替えることができる(図4の(B)の状態)。操作片30bの押圧を解除すると、係合突起30cが無端印字ベルト15に係合していないので、把持筒30を下方にスライドさせても無端印字ベルト15が回転することができない。
【0024】
前記回転機構は、複数の無端印字ベルトの中から希望するベルトに付与するように設計すればよい。例えば図3(A)のようにベルトが5本ある場合は、第1の回転機構を5本全てに設けてもよいし、2本に設けてもよい。
そして、前記選択機構によって複数の回転機構の中から所望の1つを選択し、前記第1の回転機構で、無端印字ベルトの印字を1ピッチ回転させればよい。
【0025】
前記選択機構で、誘導突起20aを複数の垂直ガイド溝30iの中から希望の1つを選択して、その上方に位置させたとき、前記係合突起30cが、回転を希望する回転機構に対向するように配置される。
第1の回転機構の場合は、前記係合突起30cが無端印字ベルト15と対向するように配置される。年月日が印字ブロック15aに形成されている回転印51では、前記係合突起30cは、前記年月日の無端印字ベルトの中から、前記選択機構で選択した無端印字ベルト15上に位置し、当該無端印字ベルト15の印字ブロック15aと係合するように構成する。
この場合、前記複数の垂直ガイド溝30iの間隔は、回転を希望する無端印字ベルト15の間隔と同一とする。
【0026】
尚、図に示した実施形態では、操作片30bを押圧し、係合突起30cを印字ブロック15aに係合させてから、把持筒30を上方にスライドさせて印字ブロック15aを切り替える回転印51について本発明を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、操作片30bを押圧することなく、把持筒30を上方にスライドさせ、この状態で、操作片30bを押圧して、係合突起30cと印字ブロック15aを係合させてから、把持筒30を下方にスライドさせて、印字ブロック15aを切り替える構成にしても差し支えない。
【0027】
また、図1の(B)に示されるように、把持筒30の外周面下端に表示片30nを設け、筐体20の対向する位置に表示用溝20bを設け、表示用溝20bの下端には年月日等の文字表示20cを設けてもよい。文字表示20cの位置を前記回転機構の位置と同一にすることで、前記選択機構によって前記回転機構を選択する際に、使用者が選択位置を外観から確認することができ有用である。
【0028】
次に、図5に第2の実施形態の回転印52の断面図を示し、第1の実施形態の回転印51と異なる点について説明する。
第2の実施形態の回転印52の係合突起30dは、操作片30bの先端に突設されていて、操作円盤12a上に対向するように配置される。年月日が印字ブロック15aに形成されている回転印52では、前記係合突起30dは、前記年月日の無端印字ベルトの中から、前記選択機構で選択した無端印字ベルトを回転させる回転子12の操作円盤12a上に位置し、図6の(A)に示されるように、操作片30bを押圧すると、係合突起30dが回転子12の操作円盤12aと係合する。この状態で、把持筒30を上方にスライドさせると、回転子12が回転し、無端印字ベルト15が1ピッチ分回転し、印字ブロック15aを切り替えることができる(図6の(B)の状態)。操作片30bの押圧を解除してから、把持筒30を下方にスライドさせると、回転印52で印字することができるようになる。
この場合、前記複数の垂直ガイド溝30iの間隔は、回転を希望する無端印字ベルトを回転させる操作円盤12aの間隔と同一とする。
【0029】
尚、図に示した状態では、操作片30bを押圧し、係合突起30dを操作円盤12aに係合させてから、把持筒30を上方にスライドさせて印字ブロック15aを切り替える回転印52について本発明を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、操作片30bを押圧することなく、把持筒30を上方へスライドさせ、この状態で、操作片30bを押圧して、係合突起30dと操作円盤12a係合させてから、把持筒30を下方にスライドさせて、印字ブロック15aを切り替える構成にしても差し支えない。
【0030】
次に、図7に第3の実施形態の回転印53の断面図を示し、第1の実施形態の回転印51と異なる点について説明する。
第3の実施形態では、一の回転子12と同軸に隣接して、ラチェット部材16が配設されている。このラチェット部材16は、一の回転子12と係合し、一体となって供回りするようになっている。年月日が、印字ブロック15aに形成されている回転印53では、ラチェット部材16を、前記年月日の無端印字ベルトの中から、希望するベルトに付与するように設計する。図7の(A)に示すように2本に設けてもよいし、5本全てに設けてもよい。
【0031】
図8にラチェット部材16の詳細図を示す。図8に示されるように、ラチェット部材16は、円盤状の本体16cの外側に、複数の弾性片16bが、本体16cの外周に沿って、形成されている。弾性片16bは、内側(本体16c側に)に変形可能となっていて、弾性片16bの弾性力により元の形状に復帰するようになっている。弾性片16bの先端には、半径方向外側に膨出するラチェット爪16aが形成されている。具体的には、ラチェット爪16aは、弾性片16bの先端側に向かって、徐々に外側に膨出する傾斜面16dが形成され、また、ラチェット爪16aの先端には、ラチェット16の回転方向と略垂直に交わる立て壁16eが形成される。
【0032】
図7の(B)に示されるように、把持筒30の内面のラチェット部材16と対面する位置には、上下方向にラック30eが形成されている。図7の(c)に示されるように、ラック30eは、水平に形成された水平面30fと、この水平面30fに対して傾斜している傾斜面30gとから構成されている。
【0033】
年月日が印字ブロック15aに形成されている回転印53では、前記ラック30eは、前記年月日の無端印字ベルトの中から、前記選択機構で選択した無端印字ベルトを回転させるラチェット部材16上に位置し、図7の(B)や(C)に示されるように、ラチェット部材16のラチェット爪16aは、把持筒30のラック30eと係合している。図に示される実施形態では、把持筒30を上方にスライドさせると、把持筒30の傾斜面30gが、ラチェット部材16の傾斜面16dを押圧し、ラチェット部材16の弾性片16bが内側に変形して、前記傾斜面30gと傾斜面16dが滑動し、ラチェット部材16のラチェット爪16aが、空回りするようになっている。
【0034】
一方で、把持筒30を上方にスライドさせた状態で、把持筒30を下側にスライドさせると、ラック30eの水平面30fとラチェット爪16aの立て壁16eが噛み合い、ラチェット部材16が回転するとともに、回転子12も回転して、無端印字ベルト15が1ピッチ分回転し、印字ブロック15aが切り替わるようになっている。
この場合、前記複数の垂直ガイド溝30iの間隔は、回転を希望する無端印字ベルトを回転させるラチェット部材16の間隔と同一とする。
【0035】
尚、以上説明した実施形態では、把持筒30を下方にスライドさせると、ラック30eの水平面30fとラチェット爪16aの立て壁16eが噛み合う構成であるが、把持筒30を上方にスライドさせると、ラック30eの水平面30fとラチェット爪16aの立て壁16eが噛み合い、ラチェット部材16が回転するとともに、回転子12も回転して、無端印字ベルト15の印字ブロック15aが切り替わるような構成にしても差し支えない。
【0036】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転印もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態の外観図である。
【図2】本発明把持筒の断面斜視図と筐体の斜視図である。
【図3】第1の実施形態の断面図である。
【図4】第1の実施形態の動作状態図である。
【図5】第2の実施形態の断面図である。
【図6】第2の実施形態の動作状態図である
【図7】第3の実施形態の断面図である。
【図8】ラチェット爪の詳細図である。
【符号の説明】
【0038】
10 回転印本体
11 枠状部材
12 回転子
12a 操作円盤
12b 係合筒
13 支持部材
15 無端印字ベルト
15a 印字ブロック
16 ラチェット部材
16a ラチェット爪
16b 弾性片
16c 本体
16d 傾斜面
16e 立て壁
19 固定印
19a 窓孔
20 筐体
20a 誘導突起
20b 表示用溝
20c 文字表示
30 把持筒
30a 連通溝
30b 操作片
30c 係合突起
30d 係合突起
30e ラック
30f 水平面
30g 傾斜面
30h 円周ガイド溝
30i 垂直ガイド溝
30j 係止片
30k 係止片
30l 係止片
30m 端部
30n 表示片
51 回転印(第1の実施例)
52 回転印(第2の実施例)
53 回転印(第3の実施例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に、外表面に複数の印字が形成された複数の無端印字ベルトを巻き掛けた回転印本体と、
前記回転印本体の下端に、無端印字ベルトが露出する窓孔が形成された固定印と、
前記回転印本体を被装し、前記回転印本体に対して上下方向および円周方向にスライド可能に配設された把持筒とを有する回転印であって、
前記把持筒の上下方向スライド操作により、前記無端印字ベルトに回転力を付与し、前記印字を1ピッチ回転させる回転機構と、
前記把持筒の円周方向スライド操作により、前記回転力を付与する無端印字ベルトを複数から1つ選択する選択機構と、
を設けたことを特徴とする回転印。
【請求項2】
前記把持筒の内筒面に円周方向に延びる円周ガイド溝を形成し、前記円周ガイド溝の下端に上下方向に延びる複数の垂直ガイド溝を形成し、
回転印本体の外周面に、前記円周ガイド溝および前記垂直ガイド溝と係合する誘導突起を形成し、
前記把持筒を円周方向にスライドさせて、前記複数の垂直ガイド溝の中から1つを選択し、前記選択した垂直ガイド溝の上方に前記誘導突起を位置させる前記選択機構と、
前記誘導突起を前記垂直ガイド溝の上下方向へ係合誘導させて、前記把持筒を上下方向にスライド操作させることを特徴とする請求項1に記載の回転印。
【請求項3】
把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、
前記操作片の先端に無端印字ベルトの外表面と対向し係合する係合突起を設けて回転機構を構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転印。
【請求項4】
把持筒に、内側に変形可能な操作片を形成し、
前記操作片の先端に回転子と対向し係合する係合突起を設けて回転機構を構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転印。
【請求項5】
半径方向外側に膨出するラチェット爪が形成されたラチェット部材を、回転子と係合させた状態で同軸に配設し、
把持筒の内部に前記ラチェット爪と噛合又は滑動する係合突起を形成し、
前記把持筒を上方又は下方の一方にスライドさせると、前記ラチェット部材が一回転方向に回転し、回転子が供回りして、無端印字ベルトに回転力が付与されるように回転機構を構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転印。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188530(P2010−188530A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32240(P2009−32240)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)