説明

回転直交符号化によるスペクトラムアグリゲーション用の送信機、受信機、方法及びプログラム

【課題】複数の周波数帯域を有する複数の送信信号を、送信機内において合成して複数の最終的な送信信号を生成し、それら最終的な送信信号を同時に送信することによって拡散し、多重化して送信することが、周波数ダイバーシチゲインを向上させて伝送特性を向上させることができる、スペクトラムアグリゲーション用の送信機等を提供する。
【解決手段】周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルを、符号化前の送信シンボルとして、その送信シンボルに対してプリコーディングとして回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成し、複数のキャリアにそれぞれ対応する複数の、符号化後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信信号として複数の送信アンテナから、それら送信信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信し、それにより、スペクトラムアグリゲーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラムアグリゲーション(又はキャリアアグリゲーション若しくは周波数アグリゲーション)用の送信機及び受信機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信規格の発展に伴って、通信の大容量化が進んできている。特に、IMT-Advancedによれば、静止時に1Gbps、移動時でも数百Mbpsの伝送レートを達成することが目標とされている。この目標を達成するためには、周波数帯域幅が、100MHz程度、必要と考えられている。しかしながら、周波数リソースは既に逼迫しており、連続的な広帯域を一括で確保することは、非常に困難となっている。
【0003】
この問題を解決するため、スペクトラムアグリゲーションの技術がある。「スペクトラムアグリゲーション」とは、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリア信号を束ねて同時に送信する技術である。この技術によれば、周波数特性が異なる複数のキャリア信号を同時に利用することによって、広い周波数帯域を確保することができる。
【0004】
スペクトラムアグリゲーションシステムとして、伝搬特性の異なる複数の周波数帯域のチャネル信号を、ユーザのQoS(Quality Of Service)に応じてユーザに割り当てる技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、ユーザのQoSとして、ユーザが端末で起動するアプリケーション毎に必要な平均伝送速度、遅延(平均、最大遅延、ジッタなど)、フレーム誤り率、送信電力、最大伝送速度、最低保証伝送速度などが考慮される。各ユーザにQoSに応じた最適な周波数帯域を割り当てることができ、周波数リソースを効率的に運用することができる。
【0005】
また、ユーザに周波数リソースを割り当てる際、利用可能な周波数帯域の中から、高い周波数帯域から順に連続的に割り当てる技術がある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、システム全体で収容可能なユーザ数を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−094001号公報
【特許文献2】WO2006/088082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術は、各ユーザに対する周波数帯域の割当方式に基づくものである。従って、異なる周波数帯域のキャリア信号毎に独立した信号処理(例えば誤り訂正符号処理、変調処理、復調処理)が実行される。即ち、従来技術では、複数の周波数帯域を有する複数のキャリア信号が利用されるものの、それらキャリア信号が、送信機内で合成されることなく、送信される。
【0008】
そこで、本発明は、複数の周波数帯域を有する複数の送信信号を、送信機内で合成して複数の最終的な送信信号を生成し、それら最終的な送信信号を同時に送信することによって拡散し、多重化して送信することが、周波数ダイバーシチゲインを向上させて伝送特性を向上させることができる、スペクトラムアグリゲーション用の送信機、受信機、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信機であって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの各々の送信ビット系列を符号化する符号化器と、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成する変調器と、
異なるキャリアについての送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成する回転直交符号化手段と、
各キャリア毎に、符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施す周波数信号処理手段と、
複数のキャリアの送信信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する送信部と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと、第2の送信アンテナとを含み、
キャリア数Nは、2であり、
回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)により、回転直交符号化を行う
【数1】

θ:回転直交符号化のための回転角
s:第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s:第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s':第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
s':第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
ことも好ましい。
【0011】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
キャリア数Nは、N=2n(nは2以上の整数)であり、
回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列C2nを用いたプリコーディング(pre-coding)により、回転直交符号化を行う
【数2】

θ:回転直交符号化のための回転角
=1
ことも好ましい。
【0012】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
キャリア数Nは、N=3であり、
回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)により、回転直交符号化を行う
【数3】

θ、θ、θ:回転直交符号化のための回転角
ことも好ましい。
【0013】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
キャリア数Nは、N=2=4(n=2)であり、
回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列C4を用いたプリコーディング(pre-coding)により、回転直交符号化を行う
【数4】

θ、θ:回転直交符号化のための回転角
ことも好ましい。
【0014】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
回転角θは、当該送信機が採用する変調方式における信号点間距離を等間隔に配置するように決定されることも好ましい。
【0015】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
当該送信機がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を採用する場合、θ=tan-11/2とし、
当該送信機が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式を採用する場合、θ=tan-11/4とする
ことも好ましい。
【0016】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
当該送信機がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を採用する場合、θ1=tan-11/4、θ2=tan-11/2とし、
当該送信機が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式を採用する場合、θ1=tan-11/16、θ2=tan-11/4とする
ことも好ましい。
【0017】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機における他の実施形態によれば、
LTE(Long-Term Evolution)-Advancedの基地局に適用されることも好ましい。
【0018】
本発明によれば、複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信機であって、
複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルとしてそれぞれ、複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信する受信部と、
それら受信された複数の受信シンボルと、回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出する信号点検出手段と、
その検出された複数の信号点に基づき、複数の送信シンボルを復元する送信シンボル復元手段と
を有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信方法であって、
周波数帯域が互いに離れた複数キャリアの各々の送信ビット系列を符号化し、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成し、
異なるキャリアについての送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成し、
各キャリア毎に、符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施し、
複数のキャリアの信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって同時に送信する
ことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信方法であって、
複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの受信信号としてそれぞれ、複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信し、
それら受信された複数の受信シンボルと、回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出し、
その検出された複数の信号点に基づき、複数の送信シンボルを復元する
ことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、複数の送信信号を複数の送信アンテナからそれぞれ同時に送信する送信方法であって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルを、符号化前の送信シンボルとして、その送信シンボルに対してプリコーディングとして回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成し、
複数のキャリアにそれぞれ対応する複数の、符号化後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信信号として複数の送信アンテナから、それら送信信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する
ことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの各々の送信ビット系列を符号化する符号化手段と、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成する変調手段と、
異なるキャリアについての送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成する回転直交符号化手段と、
各キャリア毎に、符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施す周波数信号処理手段と、
複数のキャリアの送信信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルとしてそれぞれ、複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信する受信部と、
それら受信された複数の受信シンボルと、回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出する信号点検出手段と、
その検出された複数の信号点に基づき、複数の送信シンボルを復元する送信シンボル復元手段と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機、受信機、方法及びプログラムによれば、周波数ダイバーシチゲインを効果的に得ることによって伝送特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明の第1実施形態に従うマルチアンテナ式送信機及びマルチアンテナ式受信機が使用される通信システムを概念的に表す系統図である。
【図1B】本発明の第2実施形態に従う2個のシングルアンテナ式送信機の組合せ及びマルチアンテナ式受信機が使用される通信システムを概念的に表す系統図である。
【図2】第1実施形態に従う送信機を概念的に表す機能ブロック図である。
【図3】QPSK変調方式における回転直交符号の回転角θを表す複数の信号点を示す座標である。
【図4】16QAM変調方式における回転直交符号の回転角θを表す複数の信号点を示す座標である。
【図5】第1実施形態に従う受信機を概念的に表す機能ブロック図である。
【図6】第1実施形態についての回転角θに対するビット誤り率のカーブを表すグラフである。
【図7】第1実施形態についてのEb/Noに対するビット誤り率のカーブを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、それら図面については、互いに共通する複数の符号が、互いに共通する複数の要素を示すために使用される。
【0027】
図1Aは、本発明の第1実施形態に従うマルチアンテナ式送信機1及びマルチアンテナ式受信機2が使用される通信システムを概念的に表す系統図である。
【0028】
図1Aに示すように、送信機1は、互いに異なる第1及び第2の送信シンボルs、sを、第1及び第2の送信アンテナ151,152から、異なるキャリア(例えば、800MHz帯キャリア及び2GHz帯キャリアの組合せ)で送信している。
一方で、受信機2は、第1及び第2の受信アンテナ201,202について、それら第1及び第2の送信シンボルs、sをそれぞれ、第1及び第2の受信シンボルr、rとして受信し、その受信した受信シンボルr、rから、第1及び第2の送信シンボルs、sを復元する。
ここで、本実施形態について採用されている新規なスペクトラムアグリゲーション通信を、従来技術に用いられているMIMO(Multiple Input Multiple Output:多入力・多出力)方式の通信と比較して説明すると、MIMOは、複数の送信ビット系列が同一周波数帯で伝送されるのに対し、新規なスペクトラムアグリゲーション通信は、複数の送信ビット系列が異なる周波数帯で伝送されるため、新規なスペクトラムアグリゲーション通信は、MIMOとは異なる。
そのために、本実施形態については、送信機1の第1の送信アンテナ151から送信された第1の送信シンボルsは、受信機2の第1の受信アンテナ201のみによって受信される。同様に、送信機1の第2の送信アンテナ152から送信された第2の送信シンボルsは、受信機2の第2の受信アンテナ202のみによって受信される。
従って、本実施形態については、MIMO方式のように、送信機1の各送信アンテナ151,152から送信された1つの送信シンボルが、受信機2の全ての受信アンテナ201,202によって同時に受信されることはない。
尚、本実施形態については、第1の送信シンボルsの周波数帯域が800MHz、第2の送信シンボルsの周波数帯域が2GHzであるとして説明するが、勿論、利用可能な周波数帯域が、これに限定されるものではない。
【0029】
図1Aに示すように、1つの送信機(例えば基地局)1が、800MHz帯のキャリアと2GHz帯のキャリアの双方について同時に送信している。本実施形態については、送信機1は、キャリアアグリゲーション用のものであって、プリコーディング(pre-coding)方式の技術を取り入れる。
プリコーディング方式は、一般に、MIMO方式に適用されるSDM(Space Division Multiplex:空間分割多重)送信処理又はSTC(Space Time Coding)送信処理に適用される技術である。プリコーディング方式の一例が、米国特許出願公開公報2004/0218697号にも開示されている。
「プリコーディング方式」によれば、プリコーディングが採用し得る複数のパターンを集めたコードブックから選択することにより、最適なプリコーディング行列Wを決定し、そのプリコーディング行列Wを使用して、入力信号系列及び出力信号系列を符号化する(各送信シンボルにプリコーディング行列Wを重みとして乗算して、各送信シンボルとプリコーディング行列Wとを合成する)ものである。
【0030】
送信機1は、プリコーディング行列Wとして、回転直交符号を用いる。回転直交符号行列Cは、回転直交符号化のための回転角をθで表すと、以下の式のように表される。
【数5】

【0031】
送信機1は、原データの送信シンボルs、sに対して回転直交符号化処理(プリコーディング)をし、キャリア毎の送信アンテナ151,152から送信シンボルs'、s'を送信する。原データの送信シンボルs、sと、送信アンテナ151,152から出力される送信シンボルs'、s'とは、以下の送信シンボルの式の関係を有する。
【数6】

送信機1は、この式を用いて、送信シンボルs、sを、合成により、送信シンボルs'、s'に変換する。ここに、送信シンボルs'及びs'はいずれも、送信シンボルsのうちのある成分と、送信シンボルsのうちのある成分とが合成されたものである。
【0032】
送信機1から送信された後、送信シンボルs'、s'は、キャリア毎に、異なるチャネル(その特性(例えば、応答特性、チャネル状態情報CSI(channel state information)は、チャネル行列Hによって表される)を通過し、ノイズ(その特性は、ノイズ行列nによって表される)を受ける。即ち、以下のように表される。
800MHz帯の第1送信シンボル:
第1の送信アンテナ151と第1の受信アンテナ201との間における
第1のチャネルについてのチャネル特性値H、ノイズ成分n
2GHz帯の第2送信シンボル:
第2の送信アンテナ152と第2の受信アンテナ202との間における
第2のチャネルについてのチャネル特性値H、ノイズ成分n
尚、第1の送信アンテナ151と第2の受信アンテナ202との間における第3のチャネルについても、第2の送信アンテナ152と第1の受信アンテナ201との間における第4のチャネルについても、今回は、伝搬する信号を無視できるため、対応するチャネル特性値及びノイズ成分は、いずれも0となる。
【0033】
そして、受信機2の受信アンテナ201,202においてそれぞれ受信される2つの受信シンボルr、rは、以下の受信シンボルの式のように表される。
【数7】

尚、チャネル行列Hは、第1及び第2のチャネルについては、0ではない要素を有し、第3及び第4のチャネルについては、0である要素を有する正方行列である。
【0034】
受信機2は、2つの受信シンボルr、rに対して、最尤検出やMMSE(Minimum Mean Square Error)等化のようなチャネル推定を実行し、チャネル状態情報CSI(例えば、チャネル行列、ノイズ行列)を推定する。受信機2は、更に、その推定結果と、受信シンボルr、rとに基づき、上記の受信シンボルの式を解くことにより、原データの送信シンボルs、sを復元する。
ここで、前述の受信シンボルの式を展開すると、以下のように表される。
=H(scosθ+ssinθ)+n
=H(−ssinθ+scosθ)+n
【0035】
(scosθ+ssinθ)という括弧付き項と、(−ssinθ+scosθ)という括弧付き項とに着目すると、回転角θの値によって、各加算式についてsとsとが互いに算される比率が変わると共に、その信号点配置が決定される。
【0036】
第1の例示的なシナリオについては、s及びs共にQPSK変調方式を用いた場合、4点×4点=16点の信号点が形成される。16点の位置関係は、回転角θによって決定される。第2の例示的なシナリオについては、s及びs共に16QAM変調方式を用いた場合、256点の信号点が形成される。
第1のシナリオについては、回転角θによって決定された16点の信号点の相対的な信号位置関係は、H及びHの値にかかわらず、一定である。信号点間距離が2次元シンボル配置図(IQ平面)上について等間隔に配置されるように、回転角θを予め設定することができる。
複数のサブキャリアに対して回転直交符号化を行う技術の一例が、本出願人による米国特許出願12/148,084(公開公報2008/0225927)に開示されている。
尚、本実施形態については、回転角θが、送信機1ごとに、予め設定されるが、別の例については、受信機2が、送信機1と受信機2との間の通信セッションごとに、チャネル状態情報CSIを推定し、そのチャネル状態情報CSIに基づいて回転角θを、送信シンボルと受信シンボルとの間の実際の位相差を反映するように決定する。
【0037】
図1Bは、本発明の第2実施形態に従う2つのシングルアンテナ式送信機(基地局)501,502及びマルチアンテナ式受信機2が使用される通信システムを概念的に表す系統図である。
本実施形態は、上述の第1実施形態に対し、マルチアンテナ式送信機(基地局)1をキャリアごとに有する点を除き、共通する。
具体的には、本実施形態については、800MHz帯用の第1の基地局501と、2GHz帯用の第2の基地局502とがそれぞれ別に存在している。
受信機2は、第1の基地局501から送信シンボルs'を受信し、第2の基地局から送信シンボルs'を受信する。このとき、第1の基地局501と第2の基地局502とが互いに物理的に分離しているにもかかわらず、それら基地局501,502がそれぞれ送信する2つの送信シンボルs',s'間の関係が、第1実施形態におけるものと共通となるように、第1の基地局501と第2の基地局502を、送信シンボルに関して、互いに連携させる機能部505が必要となる。
【0038】
図2は、第1実施形態に従う送信機1を概念的に表す機能ブロック図である。
【0039】
送信機1は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)伝送方式を採用している。送信機1は、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアをそれぞれ、複数の送信アンテナ151,152から同時に送信することによってスペクトラムアグリゲーションを行うように設計されている。この送信機1は、LTE(Long-Term Evolution)-Advancedの基地局に適用されることも好ましい。
【0040】
図2に示すように、送信機1は、データ送信部10と、第1及び第2のサブキャリア生成部111,112と、回転直交符号化部13と、第1及び第2の周波数信号処理部141,142と、送信アンテナ151,152と、回転角記憶部16とを有する。送信アンテナ151,152を除くこれら機能構成部は、送信機1に搭載されたプロセッサ300(例えば、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array))に所定のプログラムを、メモリ302を用いて実行させることによって実現される。
尚、サブキャリア生成部111,112及び周波数信号処理部141,142は、キャリアごとに個別に設置されているのに対し、回転直交符号化部13は、複数のキャリアに共通に設置されている。サブキャリア生成部111,112も周波数信号処理部141,142も、基本的な構成を互いに共通にするため、以下、重複した説明を省略する。
【0041】
各サブキャリア生成部111,112は、キャリア毎に、対応する送信ビット系列をシンボル変調した後、複数のサブキャリアに分割する。
図2に示すように、各サブキャリア生成部11は、誤り訂正符号器400と、シンボルマッパ(コンステレーション・マッパ)402とを有する。
各誤り訂正符号器400は、送信すべき送信ビット系列に対して、誤り訂正符号化の処理を実行し、CRC(Cyclic Redundancy Check)のチェックビットを付加する。
各シンボルマッパ402は、各キャリアの送信ビット系列を、2次元シンボル配置図上の複数個の信号点(即ち、複数個のシンボル)にマッピングし、それにより、送信シンボルs、sがキャリアごとに生成される。
【0042】
尚、図2に示す第1実施形態については、キャリア毎にサブキャリア生成部111,112を備えているが、別の例については、異なるキャリアが1つのサブキャリア生成部111を共有する。これによって、装置構成を簡略化することもできる。あくまで、送信機1の特徴は、回転直交符号化部13にある。
【0043】
回転直交符号化部13は、各キャリアごとに生成された送信シンボルに対して回転直交符号化を、前述の送信シンボル式を用いて施し、送信シンボルs'、s'を生成する。回転直交符号化部13は、各シンボルの変調方式に応じた最適な回転角θにより、各シンボルを回転直交符号化する。
【0044】
回転直交符号化部13は、前述の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)方式により、符号化を行う。
【数8】

θ:回転直交符号化のための回転角
s:第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s:第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s':第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
s':第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
【0045】
本実施形態については、キャリア数(拡散率)Nが2であるが、例えば、N=2n(nは2以上の整数)である場合、回転直交符号行列Cは以下のようにする。
【数9】

【0046】
また、キャリア数Nが、N=2=4である場合には、回転直交符号行列Cは以下のようにする。
【数10】

【0047】
また、キャリア数(拡散率)Nが、2のべき乗でない場合にも本発明を適用でき、例えば、N=3である場合には、回転直交符号Cは以下のようにする。
【数11】

【0048】
回転直交符号化部13は、更に、回転直交符号化された送信シンボルs'及びs'を、リソースブロックマッピング部(図示しない)に供給し、それにより、各シンボルをリソースブロックにマッピングする。そのリソースマッピング部は、リソースブロック第1及び第2の周波数信号処理部141、142に出力する。
【0049】
各周波数信号処理部141,142は、送信シンボルs'、s'毎に、周波数信号処理(例えば、周波数軸上の波形を時間軸上の波形に変換する)をし、各送信アンテナ151,152へ出力する。
図2によれば、各周波数信号処理部141,142は、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform、逆高速フーリエ変換)部410と、CP(Cyclic Prefix)挿入部412と、送信部414とを有する。
各IFFT部410は、回転直交符号化された各送信シンボルs'、s'の周波数軸上の波形を時間軸上の波形に変換する。各IFFT部410は、複数のサブキャリアを合成して、マルチチャリア波信号である各キャリアの送信信号を生成する。各IFFT部410は、よく知られているように、直並列変換器及び並直列変換器を有する。
各CP挿入部412は、各キャリアの送信信号にCP(Cyclic Prefix)を挿入し、CP時間長以下の遅延波に対してサブキャリア間の直交性を保持し、マルチパス遅延波に対するロバスト性を高める。
各送信部414は、CPが挿入された送信信号を、各送信アンテナ151,152へ出力する。
【0050】
回転角記憶部16は、回転直交符号化部13に対する回転直交符号の回転角θを予め記憶する。回転角θは、各シンボルの変調方式に応じて、最適な回転角θとなるように予め選択されている。
具体的には、回転角θは、適用された変調方式における信号点間距離を、等間隔に配置するべく、決定される。
例えば、キャリア数NがN=2である場合、以下のように決定される。
QPSK変調方式の場合: θ=tan-11/2
16QAM変調方式の場合:θ=tan-11/4
また、キャリア数NがN=4である場合、以下のように決定される。
QPSK変調方式の場合:θ=tan-11/4、θ=tan-11/2
16QAM変調方式の場合:θ=tan-11/16、θ=tan-11/4
【0051】
図3は、QPSK変調方式における回転直交符号の回転角θを表す複数の信号点を、2次元シンボル配置図上に示す図である。
【0052】
図3によれば、送信機1がQPSK変調方式を採用する場合について、複数の信号点は、以下のように表現されている。
○:scosθ
●:scosθ+ssinθ
シンボル(信号点)の検出誤りを最も低くするためには、各信号点間距離を等間隔に配置することが好ましく、そのためには、回転角θを以下のように設定することが好ましい。
【数12】

【0053】
図4は、16QAM変調方式における回転直交符号の回転角θを表す複数の信号点を2次元シンボル配置図上に示す図である。
【0054】
図4に示すように、送信機1が16QAM変調方式を採用する場合について、各信号点間距離を等間隔に配置することが好ましく、そのためには、回転角θを以下のように設定することが好ましい。
【数13】

尚、本実施形態は、他の多値変調方式にも適用可能である。
【0055】
以上、本実施形態については、s及びs共に、同じ変調方式を用いる場合について説明したが、異なる変調方式を用いることもできる。一例については、送信シンボルsにはQPSK変調方式が適用され、一方、送信シンボルsには16QAM変調方式が適用される。この例については、4×16=64点の信号点間距離が等しくなるように、回転角θを決定すればよい。
【0056】
図5は、第1実施形態に従う受信機2を概念的に表す機能ブロック図である。
【0057】
図5に示すように、受信機2は、図3の送信機1と通信可能であって、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの信号をそれぞれ、複数の受信アンテナ201,202から同時に受信することによってスペクトラムアグリゲーションを行うように設計されている。
【0058】
受信機2は、2つの受信アンテナ201,202と、第1及び第2の周波数信号処理部211,212と、信号点検出部23と、第1及び第2の送信シンボル復元部241,242と、データ受信部25と、回転角記憶部26と、チャネル行列記憶部27とを有する。受信アンテナ201,202を除くこれら機能構成部のうち受信アンテナ201,202を除くものは、受信機2に搭載されたプロセッサ700(例えばDSPやFPGA)に、メモリ702を利用しつつ、所定のプログラムを実行させることによって実現される。
回転角記憶部26は、送信機1における回転角記憶部16と同じ回転角θを記憶する。
【0059】
各周波数信号処理部211,212及び各送信シンボル復元部241,242は、キャリアごとに個別に設置されているのに対し、信号点検出部23は、複数のキャリアに共通に設置されている。各周波数信号処理部211,212も各送信シンボル復元部241,242も、基本的な構成を互いに共通にするため、以下、冗長した説明を省略する。
各周波数信号処理部211,212は、各受信アンテナ201,202から入力された受信信号毎に、周波数信号処理(時間軸成分を周波数軸成分に変換する)をし、各受信信号を複数の受信シンボルに変換する。
図5に示すように、各周波数信号処理部211,212は、受信部600と、CP(Cyclic Prefix)削除部602と、FFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)部604とを有する。
各受信部600は、各受信アンテナ201,202から出力された各受信シンボルr,rを、各CP削除部602へ出力する。
各CP削除部602は、各受信信号からCP(Cyclic Prefix)を削除する。
各FFT部604は、各受信信号の時間軸成分を周波数軸成分に変換する。各FFT部604は、マルチキャリア波信号である各キャリアの受信信号から複数の受信シンボルを抽出し、それら複数の受信シンボルを信号点検出部23へ出力する。各FFT部604は、よく知られているように、直並列変換器及び並直列変換器を有する。
【0060】
信号点検出部23は、例えば最尤検出やMMSE等化によってチャンネル推定を実行し、それにより、チャネル行列H及びノイズ行列nを推定し、その推定結果を、チャネル行列記憶部27に記憶させる。
信号点検出部23は、更に、その推定されたチャネル行列H及びノイズ行列nと、回転角記憶部26に記憶されている回転角θと、キャリアごとに入力された複数のサブキャリアによって表される受信シンボルr,rとに基づいて、前述の受信シンボルの式を解くことにより、第1の送信シンボルsを復元するための、第1群の信号点(I値及びQ値に間する情報)と、第2の送信シンボルsを復元するための、第2群の信号点(I値及びQ値に間する情報)とを検出する。
信号点検出部23は、更に、第1群の信号点を第1の送信シンボル復元部241に出力し、一方、第2群の信号点を第2の送信シンボル復元部242に出力する。
【0061】
各送信シンボル復元部241,242は、キャリア毎に、入力された複数の受信シンボルから、各送信シンボルs,sを復元する。
各送信シンボル復元部241,242は、シンボルデマッパ(コンステレーション・デマッパ)612と、誤り訂正復号器614とを有する。
各シンボルデマッパ612は、検出された複数個の信号点(複数個のシンボル)をデマッピングした後、誤り訂正復号化の処理を行い、その後、各誤り訂正復号器614は、CRCのチェックビットを用いて復調誤り検出を行う。
【0062】
尚、図5に示すように、本実施形態については、キャリア毎に各送信シンボル復元部241,242を備えているが、別の例については、異なる2つのキャリアが1つの送信シンボル復元部241を共有するものであってもよい。これによって、装置構成を簡略化することもできる。あくまで、受信機2の特徴は、信号点検出部23にある。
【0063】
図6は、回転角θに対するビット誤り率(Bit Error Rate)のカーブの一例を表すグラフである。
【0064】
図6の各カーブは、回転角θを0〜π/4に変化させた場合のビット誤り率(Bit Error Rate)の変化を表す。尚、各周波数帯域のEb/Noは共に、20dBに設定した。
図6に示すように、QPSK変調方式(○で示す)の場合、θ=tan-11/2あたりで、ビット誤り率が最も低いことが確認できる。また、16QAM変調方式(△で示す)の場合:θ=tan-11/4あたりで、ビット誤り率が最も低いことが確認できる。
「Eb/No」とは、デジタル変調信号における、1ビットあたりの電力密度対雑音電力密度比を意味する。Ebは、1情報ビット当りのエネルギー(energy per information bit)を意味し、また、Noは、ノイズ電力スペクトル密度(noise power spectral density)を意味する。
【0065】
図7は、Eb/Noに対するビット誤り率を表すカーブの一例を表すグラフである。
【0066】
図7は、QPSK変調方式を適用しており、符号化率R及び回転角θをパラメータとした場合の、Eb/Noに対するビット誤り率を表す。
図7によれば、各カーブは、以下のように表される。
○:θ=0、R=1
△:θ=0、R=7/8
□:θ=0、R=2/3
●:θ=tan-11/2、R=1
▲:θ=tan-11/2、R=7/8
■:θ=tan-11/2、R=2/3
尚、θ=0とは、2つの送信系列を、前述の回転直交符号化による合成を行うことなく、完全に独立に送った場合を意味する。
【0067】
図7によれば、いずれの符号化率Rについても、θ=tan-11/2の場合(図6に示すように、ビット誤り率が最低である回転角θ)が、θ=0の場合よりも、ビット誤り率が低いことが理解できる。
但し、符号化率Rが低い場合、誤り訂正で得られる周波数ダイバーシチゲインは大きくなる。そのために、回転直交符号を用いたプリコーディング(符号化率Rが低い)によって得られる周波数ダイバーシチゲインは、符号化率Rが高い場合より相対的に小さくなる。
【0068】
尚、図7について、回転直交符号を用いることなく(θ=0)、BER=10-3をEb/No=16dBで達成しようとした場合、符号化率はR=2/3でなければならない。
これに対し、θ=tan-11/2に設定することによって、符号化率をR=7/8に設定することができる。
即ち、同一の受信電力環境下(Eb/N0=16dB)にあって、所要BER(=10-3)を達成しようとした場合、伝送容量を、約1.3倍(=7/8×3/2)にすることが可能となる。これは、回転直交符号の適用によって得られた周波数ダイバーシチゲインのために、符号化率Rを高く設定しても、所要BERを達成することができているためである。
【0069】
更に、前述した実施形態については、各帯域で1つずつ送信ビット系列を伝送する場合(SISO(Single Input Single Output))について説明したが、別の一例については、各帯域で複数の送信ビット系列を伝送するMIMOが採用される。N(N:2以上の整数)個のキャリアで、帯域毎にM(M:2以上の整数)信号を伝送することで、合計M×N信号を同時に伝送する場合の、回転直交符号CN,Mは、以下のようになる。
【数14】

: M×Mの単位行列
【0070】
以上、詳細に説明したように、本発明のスペクトラムアグリゲーション用の送信機、受信機、方法及びプログラムによれば、送信機1が、複数の周波数帯域を有する複数のキャリアで送信される信号を合成して複数の最終的な送信信号を生成し、それら最終的な送信信号を同時に送信することによって拡散し、多重化して送信し、それにより、周波数ダイバーシチゲインが向上して伝送特性も向上する。
従来、送信機及び受信機について、プリコーディング方式、特に、回転直交符号化を適用してスペクトラムアグリゲーションを行う技術は全く提案されていない。
【0071】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0072】
1 マルチアンテナ式送信機
10 データ送信部
111、112 サブキャリア生成部
12 リソースブロック選択部
13 回転直交符号化部
141、142 周波数信号処理部
151、152 送信アンテナ
16 回転角記憶部
300 プロセッサ
302 メモリ
400 誤り訂正符号器
402 シンボルマッパ
410 IFFT部
412 CP挿入部
414 送信部
501、502 シングルアンテナ式送信機(基地局)
505 送信シンボル連携機能部
2 マルチアンテナ式受信機
201、202 受信アンテナ
211、212 周波数信号処理部
23 信号点検出部
241、242 送信シンボル復元部
25 データ受信部
26 回転角記憶部
27 伝搬路特性記憶部
600 受信部
602 CP削除部
604 FFT部
612 シンボルマッパ
614 誤り訂正復号器
700 プロセッサ
702 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信機であって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの各々の送信ビット系列を符号化する符号化器と、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成する変調器と、
前記異なるキャリアについての前記送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成する回転直交符号化手段と、
各キャリア毎に、前記符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施す周波数信号処理手段と、
前記複数のキャリアの送信信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、前記複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する送信部と
を有することを特徴とするスペクトラムアグリゲーション用の送信機。
【請求項2】
前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと、第2の送信アンテナとを含み、
前記キャリア数Nは、2であり、
前記回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)により、前記回転直交符号化を行う
【数1】

θ:前記回転直交符号化のための回転角
s:前記第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s:前記第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化前の送信シンボル
s':前記第1の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
s':前記第2の送信アンテナから送信されるべき、回転直交符号化後の送信シンボル
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記キャリア数Nは、N=2n(nは2以上の整数)であり、
前記回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列C2nを用いたプリコーディング(pre-coding)により、前記回転直交符号化を行う
【数2】

θ:前記回転直交符号化のための回転角
=1
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
前記キャリア数Nは、N=3であり、
前記回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)により、前記回転直交符号化を行う
【数3】

θ、θ、θ:前記回転直交符号化のための回転角
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項5】
前記キャリア数Nは、N=2=4(n=2)であり、
前記回転直交符号化手段は、次の回転直交符号行列Cを用いたプリコーディング(pre-coding)により、前記回転直交符号化を行う
【数4】

θ、θ:前記回転直交符号化のための回転角
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項6】
前記回転角θは、当該送信機が採用する変調方式における信号点間距離を等間隔に配置するように決定されることを特徴とする請求項2に記載の送信機。
【請求項7】
当該送信機がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を採用する場合、θ=tan-11/2とし、
当該送信機が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式を採用する場合、θ=tan-11/4とする
ことを特徴とする請求項2に記載の送信機。
【請求項8】
当該送信機がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式を採用する場合、θ1=tan-11/4、θ2=tan-11/2とし、
当該送信機が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式を採用する場合、θ1=tan-11/16、θ2=tan-11/4とする
ことを特徴とする請求項5に記載の送信機。
【請求項9】
LTE(Long-Term Evolution)-Advancedの基地局に適用されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の送信機。
【請求項10】
複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信機であって、
前記複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルとしてそれぞれ、前記複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信する受信部と、
それら受信された複数の受信シンボルと、前記回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、前記複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出する信号点検出手段と、
その検出された複数の信号点に基づき、前記複数の送信シンボルを復元する送信シンボル復元手段と
を有することを特徴とする回転直交符号化を用いたスペクトラムアグリゲーション用の受信機。
【請求項11】
複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信方法であって、
周波数帯域が互いに離れた複数キャリアの各々の送信ビット系列を符号化し、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成し、
前記異なるキャリアについての前記送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成し、
各キャリア毎に、前記符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施し、
前記複数のキャリアの信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、前記複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって同時に送信する
ことを特徴とする回転直交符号化を用いたスペクトラムアグリゲーション用の送信方法。
【請求項12】
複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信方法であって、
前記複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの受信信号としてそれぞれ、前記複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信し、
それら受信された複数の受信シンボルと、前記回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、前記複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出し、
その検出された複数の信号点に基づき、前記複数の送信シンボルを復元する
ことを特徴とする回転直交符号化を用いたスペクトラムアグリゲーション用の受信方法。
【請求項13】
複数の送信信号を複数の送信アンテナからそれぞれ同時に送信する送信方法であって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルを、符号化前の送信シンボルとして、その送信シンボルに対してプリコーディングとして回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成し、
前記複数のキャリアにそれぞれ対応する複数の、前記符号化後の送信シンボルをそれぞれ、複数の送信信号として前記複数の送信アンテナから、それら送信信号をそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する
ことを特徴とするスペクトラムアグリゲーション用の送信方法。
【請求項14】
複数の送信シンボルを複数の送信アンテナからそれぞれ送信する送信機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの各々の送信ビット系列を符号化する符号化手段と、
その符号化された送信ビット系列を変調し、送信シンボルを生成する変調手段と、
前記異なるキャリアについての前記送信シンボルに対して回転直交符号化を行い、それにより、符号化後の送信シンボルを生成する回転直交符号化手段と、
各キャリア毎に、前記符号化後の送信シンボルに周波数信号処理を施す周波数信号処理手段と、
前記複数のキャリアの送信信号にそれぞれ対応する複数の、周波数信号処理後の送信シンボルをそれぞれ、前記複数の送信アンテナから、それら送信シンボルをそれぞれ受信する複数の受信アンテナを有する受信機に向かって送信する送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするスペクトラムアグリゲーション用の送信機用のプログラム。
【請求項15】
複数の送信アンテナからそれぞれ送信された複数の、回転直交符号化された送信シンボルを複数の受信アンテナにおいてそれぞれ受信する受信機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記複数の送信シンボルを、周波数帯域が互いに離れた複数のキャリアの送信シンボルとしてそれぞれ、前記複数の受信アンテナにおいて、複数の受信シンボルとして受信する受信部と、
それら受信された複数の受信シンボルと、前記回転直交符号の回転角θと、チャネル行列及びノイズ行列の少なくとも一方とに基づき、前記複数の送信シンボルを復元するための複数の信号点を検出する信号点検出手段と、
その検出された複数の信号点に基づき、前記複数の送信シンボルを復元する送信シンボル復元手段と
を有することを特徴とする回転直交符号化を用いたスペクトラムアグリゲーション用の受信機用のプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60633(P2012−60633A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173722(P2011−173722)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】