説明

回転軸の冷却装置及び冷却方法

【課題】安価な装置にすることができると共に装置の構造をシンプルにすることができ、且つ、高温熱源からの熱を放熱するのに十分な能力がある回転軸の冷却装置及び冷却方法を提供する。
【解決手段】軸受け4に支持されて回転する回転軸の冷却装置であって、間隔をおいて対向して配設された板部材1aと、該板部材間に配設されて、該板部材同士を連結する複数の連結部材2と、前記軸受けに支持されると共に先端が一方の前記板部材の外側面に固定された第1回転軸3と、軸心が該第1回転軸の軸心と一致するように配設されると共に基端が他方の前記板部材の外側面に固定された第2回転軸7と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温熱源からの伝熱を伴いながら回転する回転軸の冷却装置及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温熱源を有する回転機械は、熱が回転軸を通して軸受けへと伝わるため、軸受けが熱によるダメージを受け、短時間で故障する。該軸受けを高温熱源の伝熱から保護するためには、該回転軸を冷却する必要がある。従来、その手段として、例えば、軸受け用のハウジング内で冷却油を回転軸に直接吹きかける方法(特許文献1)、また、軸受け用のハウジング内に冷却用空気を導入し、回転軸の温度を下げる方法(特許文献2)が公知にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−184715号公報
【特許文献2】特開平3−111147号公報
【特許文献3】実開平2−45号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの回転軸冷却手段を、高温熱源を有する回転機械の熱対策に適用した場合、冷却油が必要であったり、冷却用空気を導入するための設備が必要であったりするため、コストアップになるという問題がある。さらには、回転機械に該冷却のための機構を付加する必要があり、機械が大型化すると共に、複雑化するという問題がある。また、他の手段として、例えば、回転軸に空気導入孔を設ける構造で、遠心力を利用して回転軸内に気流を発生させ、冷却させる方法(特許文献3)が公知にされている。しかし、この方法では、回転軸自らの回転による自己冷却のため、構造が単純で冷却設備は不要であるが、空気は比重が軽く大きな吸引力を得られないため、遠心力により発生する気流の量は十分でなく、高温熱源からの熱を放熱するには能力不足であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたもので、安価な装置にすることができると共に装置の構造をシンプルにすることができ、且つ、高温熱源からの熱を放熱するのに十分な能力がある回転軸の冷却装置及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明の回転軸の冷却装置は、軸受けに支持されて回転する回転軸の冷却装置であって、間隔をおいて対向して配設された板部材と、該板部材間に配設されて、該板部材同士を連結する複数の連結部材と、前記軸受けに支持されると共に先端が一方の前記板部材の外側面に固定された第1回転軸と、軸心が該第1回転軸の軸心と一致するように配設されると共に基端が他方の前記板部材の外側面に固定された第2回転軸と、を具備することを特徴とする。
【0007】
また本発明の回転軸の冷却装置は、前記複数の連結部材が前記第1回転軸及び第2回転軸の軸心に対して対称な位置に配設されていることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の回転軸の冷却装置は、前記板部材の重心が前記第1回転軸及び第2回転軸の軸心と一致するように前記板部材が配設され、且つ、前記板部材の外径が前記第1回転軸及び第2回転軸の外径より大きいことを特徴とする。
【0009】
また上記の目的を達成するために本発明の回転軸の冷却方法は、請求項1記載の回転軸の冷却装置を用いた回転軸の冷却方法であって、前記第1回転軸及び第2回転軸の回転に伴って前記板部材及び複数の連結部材を回転させることにより、該板部材及び複数の連結部材に伝わってくる熱を該板部材及び複数の連結部材で放熱させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、軸受けに支持されて回転する回転軸の冷却装置であって、間隔をおいて対向して配設された板部材と、該板部材間に配設されて、該板部材同士を連結する複数の連結部材と、前記軸受けに支持されると共に先端が一方の前記板部材の外側面に固定された第1回転軸と、軸心が該第1回転軸の軸心と一致するように配設されると共に基端が他方の前記板部材の外側面に固定された第2回転軸と、を具備するようにしたから、安価な装置にすることができると共に装置の構造をシンプルにすることができ、且つ、高温熱源からの熱を放熱するのに十分な能力がある等種々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す正面断面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。図1において、間隔をおいて対向して平行に配設された二枚の板部材1a、1bの間には複数の連結部材2が配設されており、該複数の連結部材2によって該板部材1a、1b同士が連結されている。なお本実施形態では、板部材1a、1bは円板であり、連結部材2は円柱状のピンである。また本実施形態では、6個の連結部材2を板部材1a、1bの周縁に等間隔で配置している。
【0013】
そして、一方の前記板部材1aの外側面には、第1回転軸3の先端が固定されており、該第1回転軸3は軸心が前記板部材1a、1bの重心と一致するように配設されている。そして、該第1回転軸3は軸受け(本実施形態ではベアリング)4に支持(本実施形態では二点支持)されており、該軸受け4はハウジング5内に装着されている。
【0014】
そして、二つの軸受け4間には管状の位置決め部材6が配設されている。該位置決め部材6は該二つの軸受け4で挟持されており、これにより該二つの軸受け4は位置決めされている。なお、前記第1回転軸3は前記管状の位置決め部材6内を貫通している。また前記第1回転軸3の基端(図1中右方。図示せず)は図示されない駆動手段(本実施形態では駆動モータ)に連結されている。
【0015】
また、他方の前記板部材1bの外側面には、第2回転軸7の基端が固定されており、該第2回転軸7は軸心が前記第1回転軸3の軸心と一致するように配設されている。そして、該第2回転軸7の先端(図1中左方。図示せず)は図示されない回転機械の被回転体(図示せず)に連結されている。
【0016】
なお本発明において、回転機械とは、少なくとも一つの被回転体を有し、該被回転体を回転軸により回転させる機械のことをいう。回転機械としては、例えば、工作機械、ガスタービン発電機、蒸気タービン発電機、撹拌機、ポンプ、各種エンジンなどが挙げられる。なお本実施形態では、回転機械として工作機械を用いている。工作機械は高温熱源を有している。
【0017】
このように構成されたものの作動について説明する。第1回転軸3の基端に連結された図示されない駆動モータを作動させると、第1回転軸3、板部材1a、連結部材2、板部材1b及び第2回転軸7が回転される。そして、該第2回転軸7の回転に伴い、前記回転機械の被回転体が回転される。
【0018】
そうすると、前記回転機械における高温熱源から第2回転軸7に次第に熱が伝わってくる。そして、該第2回転軸7に伝わった熱は次第に板部材1a、1b及び複数の連結部材2に伝わってくる。しかし、第1回転軸3及び第2回転軸7の回転に伴って板部材1a、1b及び複数の連結部材2を回転させることにより、該板部材1a、1b及び複数の連結部材2に伝わってくる熱を該板部材1a、1b及び複数の連結部材2で放熱させるようになっている。このため、第1回転軸3に熱が伝わるのを防ぐことができ、これにより、軸受け4を高熱から保護することができる。
【0019】
なお本発明では、間隔をおいて対向して配設された板部材1a、1bと、該板部材1a、1b間に配設されて、該板部材1a、1b同士を連結する複数の連結部材2と、を具備し、該板部材1a、1bの外側面に第1回転軸3と第2回転軸7を各々固定した構成にされている。これにより、回転機械における高温熱源から伝わってくる熱を該板部材1a、1b及び複数の連結部材2で放熱することができるため、
高温熱源からの熱を放熱するのに十分な能力がある回転軸の冷却装置となっている。また上述した構成により、安価な装置にすることができると共に装置の構造をシンプルにすることができるという利点がある。
【0020】
なお本発明の実施形態では、図2に示すように、複数の連結部材2が第1回転軸3及び第2回転軸7の軸心に対して対称(点対称)な位置に配設されている。このような構成にすると、回転時の重量アンバランスを小さくすることができるため、好ましい。
【0021】
また本発明の実施形態では、板部材1a、1bの重心が第1回転軸3及び第2回転軸7の軸心と一致するように該板部材1a、1bが配設されている。このような構成にすると、回転時の重量アンバランスが無くなるため、好ましい。さらに本発明の実施形態では、該板部材1a、1bの外径が該第1回転軸3及び第2回転軸7の外径より大きい構成にされている。このような構成にすると、板部材1a、1bの熱抵抗と放熱面積を大きくすることができるため、好ましい。
【0022】
なお複数の連結部材2(本実施形態では円柱状のピン)は、できるだけ細く長くすることにより、それ自体の熱抵抗を大きくすることができる。また該連結部材2の設置位置は回転中心(第1回転軸3及び第2回転軸7の軸心)から遠ざけることにより、該連結部材2に当たる風速が増し、該連結部材2表面の熱伝達係数を大きくすることができる。これらの作用は、結果として、回転機械における高温熱源から伝わってきた熱を該連結部材2で遮断することになる。なお本発明の実施形態では、6個の連結部材2を用いたが、該連結部材2の個数は、これに限定されるものではなく、2個以上であればよい。ただし、3個以上であれば安定性の高い連結ができるため、より好ましい。
【0023】
また複数の連結部材2の材質は、金属であることが望ましいが、断熱性を重視する場合は、無機材料や耐熱樹脂の中から熱伝導率の小さい材質を選定しても良い。なお本発明の実施形態では、該連結部材2として円柱状のピンを示したが、該連結部材2の断面形状は、これに限定されるものではなく、この他に例えば、楕円、流線型、板状などであってもよい。また該連結部材2の表面に凸凹がある形状であってもよい。また該連結部材2の回転により積極的に空気を攪拌させたい場合は、該連結部材2を攪拌に適した形状と配置にすれば良い。
【0024】
なお本発明の実施形態では、板部材1a、1bとして円板を示したが、該板部材1a、1bの形状は、これに限定されるものではなく、この他に例えば、多角形、円錐形などであってもよい。また板部材1a、1bは、できるだけ薄くすることにより、それ自体の熱抵抗を大きくすることができる。また本発明における板部材1a、1bは、全くの板状体に限定されるものではなく、板状体の表面に凸凹がある形状のものも含まれる。また板部材1a、1bの材質は、金属であることが望ましいが、断熱性を重視する場合は、無機材料や耐熱樹脂の中から熱伝導率の小さい材質を選定しても良いし、金属と組み合わせた構造でも良い。
【0025】
なお複数の連結部材2は、回転による冷却作用で、回転機械における高温熱源から伝わってきた熱を遮断することができるが、回転速度が遅い場合や、高いトルクを伝達するために太い回転軸を使用する場合などは、該連結部材2の回転による冷却作用に加え、さらなる冷却作用(冷却手段)を付加するようにしてもよい。
その様な場合は例えば、ブロアーやエアーノズルを用いて該連結部材2にエアーを吹き付けるようにしてもよい。この場合、エアーの吹き付けは、該連結部材2にのみ、局所的に行えば良いため、エアーの消費量は最小限に止めることができる。
【0026】
また本発明において、高熱から保護することができる対象物は、軸受け4に限定されるものではない。該軸受け4の他に例えば、スリップリング、メカニカルシール、各種センサなども対象になり得る。
【符号の説明】
【0027】
1a 1b 板部材
2 連結部材
3 第1回転軸
4 軸受け
7 第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受けに支持されて回転する回転軸の冷却装置であって、間隔をおいて対向して配設された板部材と、該板部材間に配設されて、該板部材同士を連結する複数の連結部材と、前記軸受けに支持されると共に先端が一方の前記板部材の外側面に固定された第1回転軸と、軸心が該第1回転軸の軸心と一致するように配設されると共に基端が他方の前記板部材の外側面に固定された第2回転軸と、を具備することを特徴とする回転軸の冷却装置。
【請求項2】
前記複数の連結部材が前記第1回転軸及び第2回転軸の軸心に対して対称な位置に配設されていることを特徴とする請求項1記載の回転軸の冷却装置。
【請求項3】
前記板部材の重心が前記第1回転軸及び第2回転軸の軸心と一致するように前記板部材が配設され、且つ、前記板部材の外径が前記第1回転軸及び第2回転軸の外径より大きいことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の回転軸の冷却装置。
【請求項4】
請求項1記載の回転軸の冷却装置を用いた回転軸の冷却方法であって、前記第1回転軸及び第2回転軸の回転に伴って前記板部材及び複数の連結部材を回転させることにより、該板部材及び複数の連結部材に伝わってくる熱を該板部材及び複数の連結部材で放熱させることを特徴とする回転軸の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251627(P2012−251627A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125955(P2011−125955)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】