説明

固体ヒドロペルオキシドの中間体を介して有機ペルオキシドを製造するための反応器

容器底部(2)を有する容器(1)、容器中に配置された撹拌機(3)、600秒より短時間で前記反応器を空にするための、容器底部中に配置されたドレインバルブ(4)、及び容器底部中に配置された少なくとも1つの濾過装置(5)を有する反応器は、有機ペルオキシドのより安全な製造のために適している。有機ペルオキシドの製造方法は、反応器中に懸濁液の形の固体ヒドロペルオキシドを製造する工程、反応器中に固体ヒドロペルオキシドを保持しながら容器底部(2)中に配置された濾過装置(5)を介して前記懸濁液を濾過する工程及び前記ヒドロペルオキシドをアルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ヒドロペルオキシドの中間体を介して有機ペルオキシドを製造するための反応器、並びに前記反応器を使用した有機ペルオキシドの製造方法に関する。
【0002】
有機ペルオキシドは、重合反応、ポリマーの架橋反応及び不飽和ポリエステル樹脂の硬化のための開始剤としての工業的に利用されている。この適用は、ペルオキシドが不安定な酸素酸素結合で遊離基ラジカルに分解することに基づいている。この分解はペルオキシドの化学構造に依存して多様な温度及び多様な速度で行われる。分解の際に放出される熱により、不十分な熱搬出の場合に、分解工程の自己促進を引き起こし、これは大抵は激しい分解に至ってしまう。純粋な形態の又は高濃度のペルオキシドの多くは、爆発の危険のある物質である。この場合、固体ペルオキシドの取り扱いは特に問題であり、その際、この分解は熱的なだけでなく機械的応力によって、例えば摩擦又は衝撃作用によっても始まることがある。
【0003】
多くの工業的に重要な有機ペルオキシドの場合に、固体ヒドロペルオキシドの中間体を介して製造が行われ、前記固体ヒドロペルオキシドは更なる反応のために、前記固体ヒドロペルオキシドを製造した液体反応混合物から分離しなければならない。一例は、US 3,117,166から公知の、固体2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドの誘導体である。この生成物を工業的規模で確実に製造するために、固体ヒドロペルオキシドにあまり機械的負荷がかからない条件で反応を実施することができる装置及び方法が必要となる。
【0004】
US 5,210,320は、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドの誘導体の一工程の製造方法を記載していて、その際、反応されない使用物質は固体ヒドロペルオキシドと分離し、前記ヒドロペルオキシドは場合により洗浄し、引き続きさらに反応させる。固体ヒドロペルオキシドを分離するための方法として、前記明細書中で、デカント、濾過及び遠心分離が挙げられており、その際、デカントが有利である。実施例2は、撹拌された500mlの二重ジャケット反応器中での2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンの製造を開示しており、この場合、固体の中間生成物の2,5−ジエチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを使用物質及び洗浄液のデカントにより分離し、固体を反応器中に残す。デカントによるこのような分離は、しかしながら、大量の液体が固体中に残留するため、この分離は特にあまり有効ではなく、かつ数回の洗浄工程が必要であるという欠点を有する。この文献は、固体ヒドロペルオキシドを分離することが反応器中にヒドロペルオキシドを保持しながら工業的に確実に実施できるという示唆はない。
【0005】
先行技術、例えばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, Fifth Edition, Volume B2, 第10頁〜第47頁からは、冷却された撹拌漏斗は公知であり、その際、反応器容器の底部は濾過ユニットとして構成されていて、その中で反応と濾過を連続して固体を保持しながら実施することができる。有機ペルオキシドの確実な製造のために、この装置はしかしながら安全性の理由から適していない、それというのもこの装置は反応の間の冷却を停止する場合に十分に迅速に空にすることができず、従って、大事故につながる反応器中で自己促進する反応の危険が生じるためである。
【0006】
従って、本発明の課題は、安全性の問題を解消しかつ固体ヒドロペルオキシドの中間体を介する有機ペルオキシドの製造時に、固体ヒドロペルオキシドを使用物質からより良好に分離することができる反応器を準備することである。
【0007】
本発明の主題は、
a) 容器底部を有する容器、
b) 容器中に配置された撹拌機、
c) 600秒より短時間で反応器を空にするために、容器底部中に配置されたドレインバルブ、及び
d) 容器底部中に配置された少なくとも1つの濾過装置
を有する、有機ペルオキシドの製造のための反応器である。
【0008】
さらに、本発明の主題は、次の工程:
a) 本発明による反応器中で懸濁液の形の固体ヒドロペルオキシドを製造する工程、
b) 懸濁液を容器底部に配置された濾過装置を介して、反応器中に固体ヒドロペルオキシドを保持しながら濾過する工程、及び
c) 前記ヒドロペルオキシドを、アルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させる工程
を有する、有機ペルオキシドの製造方法である。
【0009】
本発明による反応器は容器底部を有する容器を有し、その際、前記容器は有利に直立する円筒の形を有し、前記容器底部は有利に、いわゆる皿形底部(Kloepperboden)の形に湾曲するように構成されている。有利な実施態様の場合に、この容器は付加的に冷却ジャケットを有し、前記冷却ジャケットに冷媒を通し、容器内容物を冷却することができる。
【0010】
本発明による反応器は、さらに容器中に配置された撹拌機を有し、前記撹拌機によって反応器中に存在する反応混合物を十分に混合することができる。この撹拌機は、この場合、有利に反応器の上側から軸を介して駆動される。撹拌機として、液体の十分な混合のために使用可能な全ての撹拌機が適している。羽根撹拌機を使用するのが有利であり、この羽根は前記容器底部の直上にまで達しており、その際、撹拌機から容器底部までの距離は、特に濾過の際に形成される濾過ケーキが撹拌機の羽根にまでは到達しないように決定される。撹拌機のこのような配置により、一方で濾過の際の固体の機械的負荷をわずかにし、他方で前記固体を少量の洗浄液と共に撹拌し、それにより有効に洗浄することができる。
【0011】
本発明による反応器は、さらに、600秒より短時間で反応器を空にする、容器底部中に配置されたドレインバルブを有する。この場合、反応器を空にするための時間は、本発明の場合に、反応器内圧と外圧との差圧なしで、ドレインバルブを完全に開放して、水により90%まで充填された反応器を空にすることにより決定される。このドレインバルブは、有利に容器底部の最も深い場所に配置され、容器を完全に空にすることができる。湾曲した皿形底部としての容器底部の有利な実施態様の場合に、このドレインバルブは有利に容器底部の中央に配置されている。本発明によるドレインバルブは、有利に、全バルブ断面にわたり短時間内に前記バルブの開放が達成できるように構成され、例えば前記ドレインバルブをボールバルブとして、フラップとして又はシフトバルブとして構成することにより達成される。ドレインバルブを用いて、運転障害時に又は反応器中で生じる有機ペルオキシドの分解の際に、前記有機ペルオキシドの自己促進する及び制御されない分解が生じる前に反応器を確実に空にすることができる。前記ドレインバルブは有利に、反応器が180秒よりも短い、特に60秒より短い時間で空にすることができるように構成される。より短時間の空にする時間により、前記反応器は反応による比較的高い反応温度でかつ比較的高い熱放出速度でも確実に運転することができる。
【0012】
ドレインバルブの開放は、有利に反応器中の温度測定及び/又は圧力測定により作動させられる。この装置の作業者による作動の付加的可能性も有利である。ドレインバルブと捕集容器との接続も有利であり、前記捕集容器中で排出された反応器内容物を希釈剤、例えば水で希釈し、場合により冷却する。
【0013】
本発明による反応器は、最終的に少なくとも1つの容器底部中に配置された濾過装置を有し、前記濾過装置を介して液体を反応器から取り出し、その際に液体中に存在する固体は反応器内部に保持される。容器底部中に配置された濾過装置は、有利に多孔性の形状安定性の材料からなる1つ又は数つのフリットの形で構成されていてもよい。このようなフリット用の材料として、ガラス、セラミック及び金属、特に特殊鋼が適している。フリットの形の濾過装置は、有利にフリットがそれぞれ容器底部中で同一平面上に配置されているようこ構成され、つまりフリットの反応器内側に向かう側は反応器の容器底部の内側と同一平面上にあるように構成される。
【0014】
容器底部中に配置された濾過装置は、有利に、フィルターエレメントを通過した液体を取り出すためのそれぞれ少なくとも1つの導管、並びにフリットと取り出し導管との間の遮断装置を有し、前記遮断装置によって意図しない液体の反応器から取り出し導管内への到達が妨げられる。濾過装置は、この場合、有利に、フィルターエレメントと遮断装置との間の容量ができるだけ小さく保たれるように構成される。
【0015】
有利な実施態様の場合に、この濾過装置は、容器底部中の開口部内へ交換可能に配置される。この開口部は、この場合、有利に、円形のフランジ開口部として構成されていて、前記フランジ開口部と濾過装置とはねじにより結合される。
【0016】
更なる有利な実施態様の場合に、前記反応器はさらに容器底部に配置されかつ前記容器の内部空間に突出する少なくとも1つの冷却装置を有する。この冷却装置は、この場合有利に、冷却面の大部分が容器底部の付近にあるため、反応器を部分的にだけ充填した場合でも有効な冷却が達成されるように構成されている。この冷却装置は、有利に冷却媒体が流通する熱交換器として、特に有利に蛇管、管束型熱交換器又はプレート型熱交換器として構成されている。この冷却装置は、この場合撹拌機の下側又は有利に撹拌機の横側に配置されていてもよい。
【0017】
交換可能に配置された濾過装置を備えた反応器の実施態様の場合には、有利に濾過装置と共に交換可能な冷却装置が使用される。特に有利に、この場合、フロートヘッドを備えた管束型熱交換器が使用され、前記ヘッドは容器底部中の開口部を通って下側から容器内へ組み込まれている。反応器のこの実施態様の場合に、前記反応器の冷却効率は濾過装置の一部を冷却装置に置き換えることにより、反応器中で実施される反応の冷却の必要性に適合させることができる。
【0018】
本発明による反応器は、より確実な製造及び固体ヒドロペルオキシドの更なる反応を可能にし、その際、前記ヒドロペルオキシドは僅かな機械的負荷にさらされるだけであり、かつ反応器中で前記ヒドロペルオキシドの分解が始まる際に常に迅速にかつ確実に反応器を空にすることにより収拾することができる。
【0019】
本発明による、有機ペルオキシドの製造方法は、固体ヒドロペルオキシドの中間体を介して行われる。この方法の第1の工程において、この場合、固体ヒドロペルオキシドが本発明による反応器中で懸濁液の形で製造される。この懸濁液の製造は公知の方法で行う。有利に、固体ヒドロペルオキシドとして2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドが製造される。
【0020】
固体ヒドロペルオキシドの懸濁液の有利な製造方法は、酸性媒体中での第三アルコールと過酸化水素との反応である。2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドの製造のために、この方法の場合に、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオールと過酸化水素とを、有利に硫酸の添加下で反応させる。この反応のための適当な反応条件は、US 3,117,166及びUS 5,210,320から公知である。
【0021】
2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを製造する他の有利な反応は、WO 96/03372から公知の、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンと過酸化水素との酸性媒体中での反応である。この実施態様の場合に、本発明による反応器は、有利に付加的な冷却装置を備えた実施態様の形で使用され、ヒドロペルオキシドの製造の際の高い反応熱は確実にかつ迅速に排出することができる。
【0022】
固体ヒドロペルオキシドの懸濁液の製造の間に、有利に液体が反応器底部中に配置された濾過装置を通過して漏出することは、前記濾過装置の後方に配置された遮断装置を閉鎖したままにするか又は濾過装置を通して液体の漏出に対向するガスを反応器中へ導通させることにより抑制される。
【0023】
本発明による方法の第2の工程において、次いで固体ヒドロペルオキシドの懸濁液を容器底部中に配置された濾過装置を介して濾過し、その際、前記固体ヒドロペルオキシドは反応器中に保持され、液体は反応器から取り出される。前記濾過は、有利に濾過装置に負圧を印加することにより行われるため、前記液体は反応器中の圧力によって濾過装置を通過するように押圧される。
【0024】
反応器中に保持される固体ヒドロペルオキシドは、さらになお洗浄液で洗浄することができ、付着する使用物質を除去し、その後でさらに反応させる。前記洗浄液は、前記ヒドロペルオキシドを僅かにしか溶解しないが、除去すべき使用物質は良好に溶解するように選択される。2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド用の洗浄液として、水、硫酸ナトリウム水溶液又は硫酸アンモニウム水溶液が適している。有利に、固体ヒドロペルオキシドはこのために洗浄液中で懸濁され、その際に、有利に反応器中に配置された撹拌機が使用され、均質な懸濁液が維持される。得られた懸濁液は、次いで、容器底部中に配置された濾過装置を介して、反応器中に固体ヒドロペルオキシドを保持しながら濾過される。
【0025】
本発明による方法の場合に、引き続き、反応器中に保持されたヒドロペルオキシドをアルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させて所望の有機ペルオキシドにされる。この反応のために必要な反応条件は、先行技術から公知である。有利に、この工程において、ヒドロペルオキシドは溶剤中に溶解され、その後でアルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させ、この反応の際に放出される反応熱を確実に搬出することができる。アルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物との反応は、この場合、本発明による反応器中で行うことができる。これとは別に、ヒドロペルオキシドを溶剤中に溶かすか又は懸濁させ、他の反応器中に移し、そこでアルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物との反応を実施することができる。
【0026】
本発明による方法の有利な実施態様の場合に、アルキル化剤として第三アルコールが使用され、ヒドロペルオキシドと第三アルコールとの反応は強酸の存在で行われる。第三アルコールとして、有利にtert−ブタノール、tert−アミルアルコール又はクミルアルコールが使用される。この反応のための適当な反応条件は、US 5,210,320から公知である。この方法の特に有利な実施態様の場合に、中間体の2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを介して、硫酸の存在でtert−ブタノールとの反応により生成物の2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンが得られる。
【0027】
本発明による方法の他の有利な実施態様の場合に、ヒドロペルオキシドを、一連のカルボン酸塩化物、カルボン酸無水物及びクロロホルメートからのアシル化剤と反応させる。この反応のための適当な反応条件は、US 3,117,166から公知である。
【0028】
有利に、アシル化剤として、一連の塩化アセチル、塩化イソブチル、塩化ピバロイル、塩化2−エチルヘキサノイル、塩化3,5,5−トリメチルヘキサノイル、塩化ネオデカノイル及び塩化ベンゾイルからなるカルボン酸塩化物が使用される。この方法の特に有利な実施態様の場合に、中間体の2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを介して、この有利なカルボン酸塩化物との反応により、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アセチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(イソブチリルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ピバロイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサンの化合物のひとつが製造される。
【0029】
さらに有利な実施態様の場合に、アシル化剤として、有利に、一連のイソプロピルクロロホルマート、n−ブチルクロロホルマート、sec−ブチルクロロホルマート、2−エチルヘキシルクロロホルマート、ミリスチルクロロホルマート、セチルクロロホルマート、シクロヘキシルクロロホルマート又は4−tert−ブチルシクロヘキシルクロロホルマートからなるクロロホルマートが使用される。この方法の特に有利な実施態様の場合に、中間体の2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを介して、この有利なクロロホルマートとの反応により、2,5−ジメチル−2,5−ジ(イソプロピルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(n−ブチルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(sec−ブチルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ミリスチルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(セチルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニルペルオキシ)ヘキサンの化合物のひとつが製造される。
【0030】
更なる有利な実施態様の場合に、カルボニル化合物としてアセトンが使用される。この方法の特に有利な実施態様の場合に、中間体の2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドを介して、アセトンとの反応により、化合物の3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−シクロ−1,2,4,5−テトラオキサノナンが製造される。
【0031】
固体ヒドロペルオキシドの中間体を介して、有機ペルオキシドを製造する本発明による方法は、改善された純度を有する生成物を提供する、それというのも、その製造のために使用される物質から固体ヒドロペルオキシドのより有効な分離が可能であるためである。固体ヒドロペルオキシドのより有効な洗浄により、さらに洗浄のために必要な洗浄液の量を少なくすることができるため、本発明による方法の場合に僅かな廃棄物が生じる。
【0032】
図1は、本発明による反応器の実施態様を表す。
【0033】
図2は、付加的な冷却装置を備えた本発明による反応器の別の実施態様を表す。
【0034】
図1に示された実施態様の場合に、本発明による反応器は、円筒状の二重ジャケット容器の形の容器(1)を有し、この容器底部(2)は皿形底部として構成されている。前記容器(1)は120cmの充填高さ及び120cmの内径を有する。容器内に、上側から駆動される撹拌機(3)がインペラー撹拌機の形で配置されていて、前記撹拌機の羽根は容器底部から18cm上方にまでに達している。容器底部(2)中では、中央に18cmの排出開口部の直径を有する1つのドレインバルブ(4)が配置されている。この容器底部は、さらに、なお、それぞれ21cmの直径を有する4つのフランジ型開口部を有する。それぞれのフランジ型開口部中には濾過装置(5)が組み込まれていて、この濾過装置は全体の開口断面にわたり金属焼結板を有し、その際、この金属焼結板は組み込まれた状態で容器(1)の内壁と同一平面にある。それぞれの濾過装置は、遮断弁(6)及び接続導管を介して液体用の捕集容器(7)及び真空ポンプ(8)に接続されている。金属焼結板と遮断弁との間の容量は、この場合、濾過装置1つ当たり約1リットルである。
【0035】
図2に示された実施態様の場合に、本発明による反応器は、容器底部(2)に配置された付加的冷却装置(9)を有し、前記冷却装置は前記容器の内部空間に突き出ている。前記冷却装置(9)は、この場合、蛇管、管束又はプレート型熱交換器の形を有していてもよい。この冷却装置(9)は、前記冷却装置が濾過装置(5)と一緒に交換可能に構成されている。
【0036】
実施例
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンの製造
図1に相応する反応器に、70質量%の過酸化水素550kgと80質量%の硫酸366kgとからなる混合物を装入した。撹拌しかつ前記反応器を二重ジャケットを介して冷却しながら、60min内で2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール250kgを供給し、20℃の温度を30〜32℃に上昇させた。この反応混合物を、なお30℃で90min撹拌し、その後で水200kgを添加した。次いで、撹拌機を停止し、生成された懸濁液を10minの間に真空を濾過装置(5)に印加することにより濾過し、その際、前記液相を捕集装置(7)中へ吸引し、生じた2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドが容器(2)内に保持された。反応器中に保持された固体生成物を、水500kgの添加、懸濁液の3minの撹拌及び新たに真空を濾過装置(5)に印加することによる濾過により洗浄した。この洗浄工程を1回繰り返した。その後で、tert−ブタノール481kgを添加し、前記固体を撹拌及び加熱することによりその中に溶かした。得られた溶液に、撹拌しかつ反応器を二重ジャケットを介して冷却しながら、60min内で80質量%の硫酸500kgを供給し、その際、この温度は40〜45℃に上昇した。この反応混合物を、この温度でさらに60min撹拌し、引き続き水50kgを添加した。下側の水相を分離し、この液体生成物を、順番に水150kg、1質量%の苛性ソーダ150kg及び水150kgで洗浄し、その間に前記相を撹拌し、引き続き下方の水相を分離した。ストリッピング塔中で真空中でストリッピングすることにより残りの水及び揮発性副生成物を除去した後に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン405kg(90%)が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による反応器の実施態様を表す。
【図2】付加的な冷却装置を備えた本発明による反応器の別の実施態様を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 容器底部(2)を有する容器(1)、
b) 容器中に配置された撹拌機(3)、
c) 600秒より短時間で前記反応器を空にするために、容器底部中に配置されたドレインバルブ(4)、及び
d) 容器底部中に配置された少なくとも1つの濾過装置(5)
を有する、有機ペルオキシドを製造するための反応器。
【請求項2】
さらに、容器底部(2)中に配置されかつ容器(1)の内部空間に突き出している少なくとも1つの冷却装置(9)を有することを特徴とする、請求項1記載の反応器。
【請求項3】
濾過装置(5)はフリットであり、前記フリットは容器底部(2)中で同一平面に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の反応器。
【請求項4】
前記濾過装置(5)は容器底部(2)中の開口部内に交換可能に配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応器。
【請求項5】
さらに、容器底部(2)中に配置されかつ容器(1)の内部空間に突き出している少なくとも1つの冷却装置(9)を有し、その際、前記冷却装置(9)は前記濾過装置(5)と一緒に交換可能であることを特徴とする、請求項4記載の反応器。
【請求項6】
次の工程:
a) 請求項1から5までのいずれか1項記載の反応器中で、懸濁液の形の固体ヒドロペルオキシドを製造する工程、
b) 前記懸濁液を容器底部(2)に取り付けられた濾過装置(5)を介して、反応器中に固体ヒドロペルオキシドを保持しながら濾過する工程、及び
c) 前記ヒドロペルオキシドを、アルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させる工程
を有する、有機ペルオキシドの製造方法。
【請求項7】
固体ヒドロペルオキシドが2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
固体ヒドロペルオキシドの製造を、酸性媒体中で第三アルコールと過酸化水素との反応により行うことを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドの製造を、酸性媒体中で2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンと過酸化水素との反応により行うことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
固体ヒドロペルオキシドを工程b)及び工程c)の間で洗浄液中に懸濁させ、得られた懸濁液を容器底部(2)中に配置された濾過装置(5)を介して、反応器中に前記固体ヒドロペルオキシドを保持しながら濾過することを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ヒドロペルオキシドを工程c)において溶剤中に溶かし、その後で、アルキル化剤、アシル化剤又はカルボニル化合物と反応させることを特徴とする、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程c)のアルキル化剤は第三アルコールであり、前記反応を強酸の存在で行うことを特徴とする、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
アルキル化剤は、一連のtert−ブタノール、tert−アミルアルコール及びクミルアルコールからなる第三アルコールであることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程c)のアシル化剤は、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物及びクロロホルマートから選択されることを特徴とする、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
アシル化剤は、一連の塩化アセチル、塩化イソブチル、塩化ピバロイル、塩化2−エチルヘキサノイル、塩化3,5,5−トリメチルヘキサノイル、塩化ネオデカノイル及び塩化ベンゾイルからなるカルボン酸塩化物であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アシル化剤は、一連のイソプロピルクロロホルマート、n−ブチルクロロホルマート、sec−ブチルクロロホルマート、2−エチルヘキシルクロロホルマート、ミリスチルクロロホルマート、セチルクロロホルマート、シクロヘキシルクロロホルマート及び4−tert−ブチルシクロヘキシルクロロホルマートからなるクロロホルマートであることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項17】
カルボニル化合物がアセトンであることを特徴とする、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−503015(P2009−503015A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524472(P2008−524472)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064359
【国際公開番号】WO2007/014845
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】