説明

固体絶縁スイッチギヤおよび組立方法

【課題】モールドされた電気部材の多数個を積み重ねて電源系統を構成する固体絶縁スイッチギヤの組立作業を容易とする。
【解決手段】第1の操作機構2を収納した第1のフレーム3と、第1のフレーム3に固定されたフランジ4と、フランジ4に固定された第1の可動絶縁部6と、第1の可動絶縁部6に接続された遮断器7と、遮断器7に接続された第1の母線側変流器9とを有する背面側ユニット1aと、フランジ4に寸法調整部材を介して固定される第2のフレーム18と、第2のフレーム18に固定された第2の可動絶縁部20と、第2の可動絶縁部20に接続された第2の母線側変流器21と、第2の可動絶縁部20に接続された断路器22とを有する正面側ユニットとで構成され、第1の母線側変流器9と第2の母線側変流器21とを連結導体10で接続することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源系統を構成する電気部材を絶縁材料でモールド(注型)した固体絶縁スイッチギヤおよび組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の固体絶縁スイッチギヤは、真空バルブ、導体などの電気部材をエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドし、これらを組合せて電源系統を構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このため、電源系統によっては、多数個のモールドした電気部材を箱体内に一括して配置し、これらを接続しなければならず、組立作業を困難とさせていた。また、それぞれのモールドした電気部材で寸法管理などが行われるものの、多数個を積み重ねて接続するものでは各相の高さ寸法に不揃いが生じることがある。特に、二重母線仕様や変流器を増設するものでは、接続する電気部材が多く、寸法管理が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、モールドされた電気部材の多数個を接続して電源系統を構成する固体絶縁スイッチギヤであって、組立作業を容易とし得る固体絶縁スイッチギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の固体絶縁スイッチギヤは、第1の操作機構を収納した第1のフレームと、前記第1のフレームに一側面が固定されたフランジと、前記フランジの他側面の一方端に固定された第1の可動絶縁部と、前記第1の可動絶縁部の一方端に接続されるとともに、前記第1の操作機構で開閉操作される遮断器と、前記遮断器に接続された第1の母線側変流器と、前記第1の可動絶縁部の他方端に接続されたケーブル側変流器とを有する背面側ユニットと、前記フランジの他側面の他方端に寸法調整部材を介して固定されるとともに、第2の操作機構を収納した第2のフレームと、前記第2のフレームに固定された第2の可動絶縁部と、前記第2の可動絶縁部の一方端に接続された第2の母線側変流器と、前記第2の可動絶縁部の他方端に接続されるとともに、前記第2の操作機構で開閉操作される断路器とを有する正面側ユニットとで構成され、前記第1の母線側変流器と前記第2の母線側変流器とを連結導体で接続することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す側面図。
【図2】本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの電源系統図。
【図3】本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの要部拡大断面図。
【図4】図3のライナーを示す正面図。
【図5】本発明の実施例2に係る固体絶縁スイッチギヤの要部拡大断面図。
【図6】図5のライナーを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
先ず、本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤを図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す側面図、図2は、本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの電源系統図、図3は、本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの要部拡大断面図、図4は、図3のライナーを示す正面図である。なお、固体絶縁スイッチギヤは、二重母線で、電流計測を行う変流器を多数用いる仕様となっている。
【0010】
図1に示すように、箱体1内は、図示点線を境とし、床部分と背面全域部分を占める背面側ユニット1aと、正面中段から天井部分までの正面側ユニット1bとに分かれて構成されている。
【0011】
背面側ユニット1aには、箱体1の床面に第1の操作機構2を収納する第1のフレーム3が固定されている。第1のフレーム3の図示上部には、フランジ4の一側面がボルト5で固定されている。フランジ4の他側面の一方端となる図示右側には、エポキシ樹脂で導体をモールドした第1の可動絶縁部6が固定されている。第1の可動絶縁部6は、電源系統を構成するモールドされた電気部材となる。以下、モールドされるものは、同様の電気部材となる。
【0012】
第1の可動絶縁部6の図示左側の一方端には、第1の操作機構2で開閉操作される遮断用真空バルブをモールドした遮断器7(CB)が接続されている。なお、括弧内の記号は、図2の電源系統に対応するものであり、以下、同様の表記をする。遮断器7には、導体をモールドした直線状の連結導体8を介して巻線をモールドした第3の変流器9(CT3)が接続されている。第3の変流器9には、導体をモールドしたコ字状の連結導体10の一方端が接続されている。
【0013】
第1の可動絶縁部6の図示右側の他方端には、巻線をモールドした第2の変流器11(CT2)と第1の変流器12(CT1)が直列接続されている。第1の変流器12には、開閉器をモールドした第1の接地開閉器13(ES1)が接続されるとともに、分岐され、巻線をモールドした計器用変成器14(VT)が接続されている。計器用変成器14には、2条の電力ケーブル15が接続される導体をモールドしたケーブルヘッド16(CH)が接続されている。
【0014】
正面側ユニット1bには、第2の操作機構17を収納する第2のフレーム18がフランジ4の他側面の他方端となる図示左側にボルト19で固定されている。ボルト19とボルト5は、互い違いに配置されている。第2のフレーム18の図示上部には、導体をモールドした第2の可動絶縁部20が固定されている。
【0015】
第2の可動絶縁部20の図示右側の一方端には、巻線をモールドした第4の変流器21(CT4)が接続され、第4の変流器21には連結導体10の他方端が接続されている。第2の可動絶縁部20の中間部には、第4の変流器21から分岐された断路用真空バルブをモールドした第1の断路器22(DS1)が接続され、隣接盤との接続を行う導体をモールドした第1の母線23(BUS1)に接続されている。
【0016】
第2の可動絶縁部20の図示左側の他方端には、断路用真空バルブをモールドした第2の断路器24(DS2)が接続されている。第2の断路器24には、導体をモールドした第2の母線25(BUS2)が接続されている。第1の断路器22と第2の断路器24間であって第2の可動絶縁部20内には、第2の接地開閉器26(ES2)が設けられている。第1の断路器22、第2の断路器24、第2の接地開閉器26は、第2の操作機構17で開閉操作される。
【0017】
次に、背面側ユニット1aと正面側ユニット1bの固定方法を図3、図4を参照して説明する。
【0018】
図3に示すように、フランジ4には、端部がL字状に曲折した第2のフレーム18がボルト19で固定されるものの、高さを調整するためのライナー26を挿入することができる。ライナー26は、図4に示すように、馬蹄形をしており、ボルト19を迂回し、仮止めした第2のフレーム18とフランジ4間に挿入される。ライナー26は、所定厚さを有する寸法調整部材となる。
【0019】
組立てにおいては、背面側ユニット1aと正面側ユニット1bのそれぞれを組立てておき、背面側ユニット1aに正面側ユニット1bを乗せて組立てるものとする。このため、背面側ユニット1aと正面側ユニット1bの個々では、モールドされた電気部材の個数が減り、組立作業を容易とすることができる。積み重ねるモールドされた電気部材も少なく、高さ方向の寸法管理が容易となる。
【0020】
また、連結導体10の接続では、第3の変流器9と第4の変流器21の水平レベルを合せる必要があるが、ライナー26で高さ調整を行うことができる。この場合、第4の変流器21を含めた正面側ユニット1b側の電気部材の高さ方向をマイナス公差で製造しておけば、ライナーでの調整が容易となる。第3の変流器9と第4の変流器21の水平レベルが合う場合には、ライナー26は不要となる。この場合でも、ライナー26を挿入することができる構成のため、寸法調整部材を備えたものとする。
【0021】
ここで、予め組立てしておく電気部材は、背面側ユニット1aでは、第1の操作機構2を収納する第1のフレーム3、第1のフレーム3が一側面に固定されるフランジ4、フランジ4の他側面に固定される第1の可動絶縁部6、第1の可動絶縁部6の一方端に接続される遮断器7と連結導体8と第3の変流器9、第1の可動絶縁部6の他方端に接続される第2の変流器11、第1の変流器12である。第1の接地開閉器13、計器用変成器14、ケーブルヘッド16は、組立てしてもよいが、箱体1の高さ方向や奥行き方向に裕度があり、厳密な寸法管理をする必要がなく、後工程で組立てをすることができる。ケーブルヘッド16は、電源系統を構成する上で必須である。
【0022】
なお、第3の変流器9と連結導体8を一体化することができるので、これを第1の母線側変流器と称する。また、第1の変流器12と第2の変流器11を一体化することができるので、これをケーブル側変流器と称する。
【0023】
正面側ユニット1bでは、第2の操作機構17を収納し、フランジ4の他側面に固定される第2のフレーム18、第2のフレーム18に固定される第2の可動絶縁部20、第2の可動絶縁部20の一方端に接続される第4の変流器21、他方端に接続される第1の断路器22と第2の断路器24である。第1の母線23、第2の母線25は、組立てしてもよいが、箱体1の高さ方向に裕度があり、厳密な寸法管理をする必要がなく、後工程で組立てをすることができる。
【0024】
ここで、第4の変流器21を第2の母線側変流器と称する。このため、第1の母線側変流器と第2の母線側変流器で互いのユニット1a、1bが仕切られ、連結導体10で接続されることになる。なお、単独母線仕様の場合には、第2の断路器24、第2の母線25が省略される。母線23、(25)は、電源系統を構成する上で必須である。また、簡素な電源系統では、第2の接地開閉器26が省略される。
【0025】
上記実施例1の固体絶縁スイッチギヤによれば、背面側ユニット1aと正面側ユニット1bを予め組立てておき、背面側ユニット1aのフランジ4に正面側ユニット1bの第2のフレーム18をボルト19で固定し組立てるようにしているので、それぞれのユニット1a、1bではモールドされた電気部材の個数を最小限に抑えることができ、組立作業を容易とすることができる。また、フランジ4と第2のフレーム18間にライナー26を挟むことができるので、高さ方向の寸法調整を容易とすることができる。
【実施例2】
【0026】
次に、本発明の実施例2に係る固体絶縁スイッチギヤを図5、図6を参照して説明する。図5は、本発明の実施例2に係る固体絶縁スイッチギヤの要部拡大断面図、図6は、図5のライナーを示す正面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、正面側ユニットの寸法調整方法である。各図において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0027】
図5に示すように、ジャッキボルト27を用い、第2のフレーム18の高さを調整できるようにしている。フランジ4との隙間には、ライナー28を挿入する。ライナー28は、図6に示すような複数の馬蹄形を有するものである。例えば、図示中央の馬蹄形の開口部にはジャッキボルト27を貫通させ、両側の開口部にはボルト19を貫通させる。
【0028】
上記実施例2の固体絶縁スイッチギヤによれば、実施例1による効果のほかに、第2のフレーム18の高さ調整を容易とすることができる。
【0029】
以上述べたような実施形態によれば、電源系統を構成するモールドされた電気部材を背面側ユニットと正面側ユニットに分け、背面側ユニットに寸法調整部材を用いて正面ユニットを組立てるので、組立作業を容易とすることができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、および変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 箱体
1a 背面側ユニット
1b 正面側ユニット
2 第1の操作機構
3 第1のフレーム
4 フランジ
5、19 ボルト
6 第1の可動絶縁部
7 遮断器
8、10 連結導体
9、11、12、21 変流器
13 接地開閉器
14 計器用変成器
15 電力ケーブル
16 ケーブルヘッド
17 第2の操作機構
18 第2のフレーム
20 第2の可動絶縁部
22、24 断路器
23、25 母線
26、28 ライナー
27 ジャッキボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の操作機構を収納した第1のフレームと、
前記第1のフレームに一側面が固定されたフランジと、
前記フランジの他側面の一方端に固定された第1の可動絶縁部と、
前記第1の可動絶縁部の一方端に接続されるとともに、前記第1の操作機構で開閉操作される遮断器と、
前記遮断器に接続された第1の母線側変流器と、
前記第1の可動絶縁部の他方端に接続されたケーブル側変流器とを有する背面側ユニットと、
前記フランジの他側面の他方端に寸法調整部材を介して固定されるとともに、第2の操作機構を収納した第2のフレームと、
前記第2のフレームに固定された第2の可動絶縁部と、
前記第2の可動絶縁部の一方端に接続された第2の母線側変流器と、
前記第2の可動絶縁部の他方端に接続されるとともに、前記第2の操作機構で開閉操作される断路器とを有する正面側ユニットとで構成され、
前記第1の母線側変流器と前記第2の母線側変流器とを連結導体で接続することを特徴とする固体絶縁スイッチギヤ。
【請求項2】
前記寸法調整部材は、所定厚さを有するライナーであることを特徴とする請求項1に記載の固体絶縁スイッチギヤ。
【請求項3】
前記第2のフレームにジャッキボルトを用い、前記フランジとの寸法を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体絶縁スイッチギヤ。
【請求項4】
前記ケーブル側変流器に電力ケーブルを接続するケーブルヘッドを接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体絶縁スイッチギヤ。
【請求項5】
前記断路器に母線を接続したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の固体絶縁スイッチギヤ。
【請求項6】
第1の操作機構を収納した第1のフレームと、
前記第1のフレームに一側面が固定されたフランジと、
前記フランジの他側面の一方端に固定された第1の可動絶縁部と、
前記第1の可動絶縁部の一方端に接続されるとともに、前記第1の操作機構で開閉操作される遮断器と、
前記遮断器に接続された第1の母線側変流器と、
前記第1の可動絶縁部の他方端に接続されたケーブル側変流器とを有する背面側ユニットと、
前記フランジの他側面の他方端に寸法調整部材を介して固定されるとともに、第2の操作機構を収納した第2のフレームと、
前記第2のフレームに固定された第2の可動絶縁部と、
前記第2の可動絶縁部の一方端に接続された第2の母線側変流器と、
前記第2の可動絶縁部の他方端に接続されるとともに、前記第2の操作機構で開閉操作される断路器とを有する正面側ユニットと、
前記第1の母線側変流器と前記第2の母線側変流器とを接続する連結導体とで構成される固体絶縁スイッチギヤの組立方法であって、
先ず、前記背面側ユニットと前記正面側ユニットのそれぞれを組立て、
次に、前記フランジの他側面に前記第2のフレームをボルトで固定し、
次に、連結導体を接続することを特徴とする固体絶縁スイッチギヤの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−5504(P2013−5504A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131855(P2011−131855)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】