説明

固体電解質型燃料電池

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は固体電解質型燃料電池のセル構成に係り、特に基板の破損がなく信頼性に優れる平板型の固体電解質型燃料電池に関する。
〔従来の技術〕
ジルコニア等の酸化物固体電解質型燃料電池を用いる燃料電池はその作動温度が800〜1100℃と高温であるため、発電効率が高い上に触媒が不要であり、また電解質が固体であるため取扱いが容易であるなどの特長を有し、第三世代の燃料電池として期待されている。
しかしながら固体電解質型燃料電池は、セラミックが主要な構造材料であるために、熱的に破損しやすく、またガスの適切なシール方法がないため実現が困難であった。そのため燃料電池として特殊な形状である円筒型のものが考え出され、上記2つの問題を解決し、電池の運転試験に成功しているが、電池単位体積あたりの発電密度が低く経済的に有利なものが得られる見通しはまだない。発電密度を高めるには平板型にすることが必要である。平板型の電池には例えば、第1図,第2図に示す構造のものが知られている。第1図,第2図はそれぞれ従来の固体電解質型燃料電池の横切断面図,縦切断面図である。ランタンマンガナイト系またはランタンコバルタイト系酸化物で多孔質のセパレート基板15にランタンクロマイト系酸化物で緻密質のインタコネクタ2が積層されている。またニッケル−ジルコニアサーメットからなる単セル基板11に単セルが積層されている。単セルは図示しないがジルコニア固体電解質層と、その両主面に配されたアノードとカソードから構成されている。アノードはニッケル−ジルコニアサーメットであり、カソードはランタンマンガナイトからなる。上記セパレート基板15と単セル基板11とは交互に重合される。上記セパレート基板15と単セル基板11はリブである案内羽3を有し、反応ガスをチャンネル7を介してセルの中央部から周辺部へと導き、排出口8より排出する。セルの中央部には燃料ガス導入管4と酸化剤ガス導入管5があり、導入孔6を介して反応ガスをチャンネル7に供給する。
単セル基板11は酸化ニッケルとジルコニアの各粉体を所定の割合で混合したのちプレス成型し、温度1400〜1600℃で焼成して製造される。得られた単セル基板に固体電解質層(図示せず)が直流減圧プラズマ溶射法により形成される。続いてランタンストロンチウムマンガナイトLa0.9Sr0.1MnO3と溶剤からなるペーストが固体電解質層の上に刷毛塗りされ乾燥後1200℃で焼成されカソード(図示せず)が形成される。単セル基板11は使用に際して燃料ガスにより酸化ニッケルが還元され、ニッケル−ジルコニアサーメットが形成される。生成したニッケルが触媒として機能しアノードとしても働くようになる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら上述のような従来の燃料電池においては、酸化ニッケルがニッケルに還元されるときに単セル基板は大きな体積変化を受けるために、基板が変形したり、割れるといった問題があった。またセルの運転中もセル周辺からの空気浸入により周辺部で酸化還元の繰り返しが起こり、単セル基板が破損しやすいといった問題があった。
この発明は上述の点に鑑みてなされ、その目的は基板の材料を改良することにより、セルの破損のない信頼性にすぐれる固体電解質型燃料電池を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上述の目的は、多孔質の単セル基板上に少なくとも固体電解質層とアノードとが順に形成されてなる単セルとインタコネクタとを交互に積層し、かつ、前記多孔質単セル基板側に酸化剤ガスを、前記アノード側に燃料ガスを通流するものとすることにより達成される。
また、前記単セル基板にはランタンクロマイト系酸化物、ランタンマンガナイト系酸化物、ランタンコバルタイト系酸化物材料等を用いることが出来る。単セル基板材料としてランタンクロマイト系酸化物を用いた場合には、単セル基板上にカソード、固体電解質層およびアノードを順に形成し、単セル基板材料としてランタンマンガナイト系酸化物もしくはランタンコバルタイト系酸化物材料を用いた場合には、単セル基板がカソードを兼ねることが可能なので、単セル基板上に少なくとも固体電解質層およびアノードを形成するものとする。
〔作用〕
従来はアノード側に単セル基板上が形成され、ニッケル−ジルコニアサーメットからなる単セル基板に燃料ガスを通流する構成であったため、数mmと厚さの大きい単セル基板が燃料ガスにより還元されることに起因して、単セル基板が大きな体積変化を生じていたが、上記本発明のごとく、単セル基板をカソード側として単セル基板側に酸化剤ガスを通流する構成とすることにより、単セル基板が還元されて体積変化を生じることがなくなり、一方、アノードはわずか数十μmであるので、還元により体積変化を生じてもわずかであり燃料電池の運転に支障を生じることがない。
〔実施例〕
次にこの発明の実施例を図面に基いて説明する。第1図R>図,第2図はそれぞれこの発明の実施例に係る固体電解質型燃料電池の横切断面図、縦切断面図である。従来の電池と構造は同一であるが、単セル基板とセパレート基板の材料のみが異なる。セパレート基板15Aは酸化ランタンLa2O3,酸化カルシウムCaO,酸化クロムCr2O3の各粉体を所定割合で混合し1300℃で反応させてランタンカルシウムクロマイトLa0.8Ca0.2CrO3を生成させ、粉砕,造粒後プレス成型し、酸化ふん囲気中1200℃において1〜4mm厚さでかつ多孔質に焼成して調製される。次にLa0.8Ca0.2CrO3を造粒したのち、直流減圧プラズマ溶射法で緻密で1〜70μm厚のインタコネクタ2をセパレート基板15Aの上に形成させる。単セル基板11Aは酸化ランタン(La2O3)と酸化ストロンチウム(SrO)と二酸化マンガン(MnO2)の各粉体を所定の割合で混合し1200℃の温度で焼成して相互に反応させLa0.9Sr0.1MnO3を生成させる。得られたLa0.9Sr0.1MnO3を粉砕し、造粒したのちプレス成型し、酸化ふん囲気中1250℃で焼成して調製される。単セル基板11Aの上に8%イットリアで安定化されたジルコニアが直流減圧法でプラズマ溶射され固体電解質層(図示せず)が形成される。続いて酸化ニッケル−ジルコニア粉体と溶剤からなるペーストが固体電解質層の上に刷毛塗りされ乾燥後1200℃で焼成されアノード(図示せず)が形成される。
セパレート基板15Aは緻密に焼成することが困難であるので多孔質に形成され、緻密質のインタコネクタによって酸化剤ガスと燃料ガスの分離が行われる。
〔発明の効果〕
本発明のごとく、多孔質の単セル基板上に少なくとも固体電解質層とアノードとが順に形成されてなる単セルとインタコネクタとを交互に積層し、かつ、前記多孔質単セル基板側に酸化剤ガスを前記アノード側に燃料ガスを通流するものとすることにより、厚さの大きい単セル基板が還元されることに起因する大きな体積変化の発生が回避されることとなり、割れがなく信頼性に優れる固体電解質型燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は固体電解質型燃料電池の横切断面図、第2図は固体電解質型燃料電池の縦切断面図である。
1:単セル、2:インタコネクタ、11,11A:単セル基板、15,15A:セパレート基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】多孔質の単セル基板上に少なくとも固体電荷質層とアノードとが順に形成されてなる単セルとインタコネクタとが交互に積層され、かつ、前記多孔質単セル基板側に酸化剤ガスを、前記アノード側に燃料ガスを通流することを特徴とする支持膜型固体電解質型燃料電池。
【請求項2】前記単セル基板が、ランタンコバルタイト系酸化物またはランタンマンガナイト系酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載の支持膜型固体電解質型燃料電池。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2883688号
【登録日】平成11年(1999)2月5日
【発行日】平成11年(1999)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−156141
【出願日】平成2年(1990)6月14日
【公開番号】特開平4−48554
【公開日】平成4年(1992)2月18日
【審査請求日】平成7年(1995)1月20日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(999999999)株式会社富士電機総合研究所
【参考文献】
【文献】特開 昭64−27165(JP,A)
【文献】特開 平2−111632(JP,A)
【文献】実開 平2−54167(JP,U)