説明

固定具および咬合器

【課題】義歯の破損を防止しつつ当該義歯を固定することのできる固定具、および、この固定具を有し、正確かつ効率的さらには客観的に噛み合せの調節を行うことのできる咬合器の提供。
【解決手段】固定具2は、咬合器に有床義歯を固定するための固定具であって、有床義歯の床を配置する凹部211を有する本体21と、凹部211内に設けられ、作動流体の供給によって膨張し、作動流体の排出によって収縮するバルーン221,222とを有し、凹部211内に有床義歯の床を配置した状態にて、バルーン221,222内に作動流体を供給し、バルーン221,222を膨張させることによって、有床義歯を固定するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具および咬合器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、損失した天然歯を補うための義歯治療がある。義歯治療とは、例えば、局部床義歯(部分入れ歯)や全部床義歯(総入れ歯)等の有床義歯(入れ歯)を作成し、作成した有床義歯を歯肉に被せることにより、前記損失した天然歯を補う治療を言う。なお、有床義歯は、歯肉に被せる床と、この床に固定された人工歯とを有し、局部床義歯においては、さらにクラスプ等を有している。
【0003】
このような義歯治療においては、(1)頬の内側や歯肉等の口腔粘膜に対する有床義歯の適合性(密着性やフィット感)と、(2)有床義歯の噛み合わせとが非常に重要となる。
【0004】
前記(1)の調整については、まず、例えばシリコンなどの軟質材料が床内面に塗布された有床義歯を患者に装着し、有床義歯を歯肉に軽く押し付ける。これにより、軟質材料が床と歯肉に挟まれ、その表面が歯肉の形状に応じて変形する。次に、有床義歯を取り外し、変形した軟質材量の厚み等から強く歯肉を圧迫している部分を探す。床が歯肉を強く圧迫している部分を発見した場合には、この部分の内面を削って調整する。このような作業を必要に応じて複数回繰り返すことにより、口腔粘膜(歯肉)との適合性が高い有床義歯を作成する。
【0005】
一方、前記(2)の調整については、まず、有床義歯を装着した患者に、上歯と下歯との間にカーボン紙等を挟んだ状態にて噛み合わせてもらったり、噛み合せた状態で下顎を上顎に対して左右に動かしてもらったりする。次に、有床義歯の人工歯に付着したカーボン紙のインクの様子を見て噛み合せのバランス、具体的には、均一な力で噛み合っているか、下顎を左右・前後に動かす際に有床義歯が安定しているか等を観察する。不具合を発見した場合には、人工歯を削って調整する。このような作業を必要に応じて複数回繰り返すことにより、適した噛み合せの有床義歯を作成する。
【0006】
ここで、患者は、例えば、初めて装着した有床義歯であることや緊張によって、歯科医師の指示に従って通常の噛み合せを再現することができない場合があり、このような場合、有床義歯の調整が困難となる。これに加えて、顎の変形、噛み合せ異常、認知症等の疾患を抱えた患者に対する有床義歯の調整は、特に困難となる。
【0007】
そこで、例えば、上歯と下歯の噛み合せを再現することのできる咬合器に有床義歯を固定した状態で噛み合せの調整を行うことが考えられる。これによれば、歯科医師の意思で噛み合せ状態を再現できるため、正確かつ効率的、さらには客観的に、噛み合せの調節を行うことができる。
【0008】
咬合器は、従来からよく知られており、例えば、一対の支持板(上側支持板および下側指示板)と、これらを連結するとともに途中で屈曲変形可能な連結部とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このような咬合器では、例えば、下顎側の有床義歯の噛み合せを調節する場合、患者の上側の歯型を有する上顎模型を上側支持板の下面に石膏(接着剤)を介して固定するとともに、有床義歯を下側支持板の上面に石膏(接着剤)を介して固定する。そして、連結部を所望の形状に屈曲変形させることにより、様々な状態での噛み合せを再現することができる。
【0010】
しかしながら、このような咬合器では、有床義歯を石膏により固定するため、石膏が固まるまでに時間がかかり治療の長時間化を招いてしまうという問題と、石膏で有床義歯を破損するおそれがあるという問題とを少なくとも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−230726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、義歯の破損を防止しつつ当該義歯を固定することのできる固定具、および、この固定具を有し、正確かつ効率的さらには客観的に噛み合せの調節を行うことのできる咬合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
(1) 咬合器に有床義歯を固定するための固定具であって、
前記有床義歯の床部を配置する凹部を有する本体と、
凹部内に設けられ、作動流体の供給によって膨張し、前記作動流体の排出によって収縮するバルーンと、を有し、
前記凹部内に前記有床義歯の床部を配置した状態にて、前記バルーン内に前記作動流体を供給し、前記バルーンを膨張させることによって、前記有床義歯を固定するよう構成されていることを特徴とする固定具。
【0014】
(2) 前記バルーンは、前記凹部に前記有床義歯を配置した状態にて、前記有床義歯の表側に位置する第1のバルーンと、前記有床義歯の裏側に位置する第2のバルーンとを有している上記(1)に記載の固定具。
(3) 請求項1または2に記載の固定具を備えることを特徴とする咬合器。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軟質なバルーンによって義歯を圧迫することにより、義歯を凹部内で挟持し固定するため、義歯の破損(傷つき、破壊等)を効果的に防止または抑制することができる。また、バルーンが義歯の表面形状に追従して変形し密着するため、義歯をより安定した状態で固定することができる。
【0016】
また、従来のように、石膏等の接着剤を用いずに義歯を固定することができるため、患者から取り外した義歯を固定具に固定する行為や、固定具から取り外した義歯を患者に装着する行為を迅速に行うことができる。そのため、義歯の噛み合せの調整をより短時間にかつ効率的に行うことができる。さらには、石膏等の接着剤を取り除く必要がなく、その際に義歯が破損する危険性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の咬合器の好適な実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す咬合器が有する第1の固定具の平面図(上面図)である。
【図3】図2に示す第1の固定具の断面図である。
【図4】図2に示す第1の固定具へ下顎側有床義歯を固定する方法を説明する平面図である。
【図5】図2に示す第1の固定具へ下顎側有床義歯を固定する方法を説明する平面図である。
【図6】第1の固定具に下顎側有床義歯を固定し、第2の固定具に上顎側有床義歯を固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の固定具を適用した咬合器(本発明の咬合器)の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明の咬合器の好適な実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す咬合器が有する第1の固定具の平面図(上面図)、図3は、図2に示す第1の固定具の断面図、図4および図5は、図2に示す第1の固定具へ下顎側有床義歯を固定する方法を説明する平面図、図6は、第1の固定具に下顎側有床義歯を固定し、第2の固定具に上顎側有床義歯を固定した状態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図6中の上側を「上」と言い、下側を「下」とも言う。
【0020】
図1に示す咬合器1は、下顎側有床義歯100を固定する第1の固定具(本発明の固定具)2と、上顎側有床義歯200を固定する第2の固定具(本発明の固定具)3と、第1の固定具2および第2の固定具3を、顎運動に近似して相対運動可能なように連結する連結部4とを有している。
【0021】
このような咬合器1は、第1の固定具2に固定された下顎側有床義歯100と、第2の固定具3に固定された上顎側有床義歯200とを噛み合わせることによって、これらを患者に装着したときと同様の噛み合せを再現することができる歯科治療用機器である。このような咬合器1を用いることにより、下顎側有床義歯100および上顎側有床義歯200の噛み合せを簡単かつ効率的簡単に調整することができる。
【0022】
なお、本願明細書中の「有床義歯」には、少なくとも、局部床義歯(部分入れ歯)および全部床義歯(総入れ歯)が含まれる。一般的に、全部床義歯は、歯肉に被せる床と、この床に固定された人工歯とを有しており、局部床義歯は、さらに、クラスプ等を有している。なお、以下では、説明の便宜上、有床義歯として、全部床義歯を例に挙げて説明する。
【0023】
以下、本実施形態の咬合器1について詳細に説明する。
まず、第1の固定具2および第2の固定具3について説明するが、これらは、互いに同様の構成であるため、以下では、第1の固定具2について代表して説明し、第2の固定具3については、その説明を省略する。
【0024】
[第1の固定具]
図2および図3に示すように、第1の固定具2は、下顎側有床義歯100の床部(下顎側有床義歯床部)110を配置(収納)する凹部211を有する本体21と、凹部211内に設けられたバルーン22とを有している。
【0025】
本体21は、下顎側有床義歯100を支持・固定するための部材である。また、本体21は、硬質であり、例えば、金属製またはプラスチック製とすることができる。このような本体21には、その下面に開口する凹部211が形成されている。
【0026】
凹部211は、下顎側有床義歯100の床部110を配置するための凹部である。したがって、凹部211の形状(開口形状および深さ)は、下顎側有床義歯100の床部110を配置(収納)することができれば、特に限定されず、本実施形態では、床部110の形状に類似した「U」字状をなしている。なお、下顎側有床義歯100の床部110の形状は、患者によって異なる。そのため、第1の固定具2に汎用性を持たせるために、凹部211の形状は、統計や経験によって大半の下顎側有床義歯100の床部110を配置できるような形状とするのがよい。
【0027】
このような凹部211には、バルーン22が設けられている。バルーン22は、第1のバルーン221および第2のバルーン222からなり、これら第1、第2のバルーン221、222は、それぞれ、その内部に作動流体fを供給することによって膨張し(膨らみ)、反対に、内部の作動流体fを排出するによって収縮する(萎む)。
【0028】
第1のバルーン221は、弾性を有し、膨張・収縮が可能な袋状の本体221aと、本体221a内へ作動流体fを供給したり、本体221a内の作動流体fを排出したりする口部221bを有している。
【0029】
本体221aは、長尺であり、「U」字状の凹部211の外側(表側)の側面211aに沿って配置されている。すなわち、本体221aは、凹部211に下顎側有床義歯100を配置したときに、下顎側有床義歯100の表側に位置するように設けられている。このような本体221aは、その外周の一部にて、例えば、接着剤やワイヤー等を用いて凹部211の側面211aに固定されている。これにより、本体221aを凹部211の側面211aに沿って、すなわち「U」字状に膨張させることができる。
【0030】
口部221bは、本体21に形成された貫通孔212を介して本体21から突出している。そのため、口部221bを介して、本体221aへの作動流体fの供給および本体221aからの作動流体fの排出を簡単に行うことができる。
【0031】
このような第1のバルーン221では、口部221bから本体221a内へ作動流体fを供給することにより本体221aが凹部211内に向けて膨張し(膨らみ)、口部221bから本体221a内の作動流体fを排出することによって本体221aが収縮する(萎む)。
【0032】
第2のバルーン222は、弾性を有し、膨張・収縮が可能な袋状の本体222aと、本体222a内へ作動流体fを供給したり、本体222a内の作動流体fを排出したりする口部222bを有している。
【0033】
本体222aは、膨張した形状が球状であり、「U」字状の凹部211の内側(裏側)の側面211bの頂部(中切歯と対向する部分)に配置されている。すなわち、本体222aは、凹部211に下顎側有床義歯100を配置したときに、下顎側有床義歯100の裏側に位置するように設けられている。
【0034】
口部222bは、本体21に形成された貫通孔213を介して、本体21から突出している。そのため、本体222aへの作動流体fの供給および本体222aからの作動流体fの排出を簡単に行うことができる。
【0035】
このような第2のバルーン222では、口部222bから本体222a内へ作動流体fを供給することにより本体222aが凹部211内に向けて膨張し(膨らみ)、口部222bから本体222a内の作動流体fを排出することによって本体222aが収縮する(萎む)。
【0036】
なお、本体222aの形状としては、球状に限定されず、例えば、第1のバルーン221のように、長尺であってもよい。このような形状の場合には、凹部211の内側の側面211bに沿って配置することができる。
【0037】
このような第1、第2のバルーン221、222の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
ここで、第1、第2のバルーン221、222を膨張・収縮させる作動流体fとしては、特に限定されず、液体、気体のいずれを用いてもよい。また、作動流体fとしては、生体親和性を有するものが好ましい。
【0039】
また、作動流体fを第1のバルーン221内に供給する方法、および、作動流体fを第1のバルーン221内から排出する方法としては、特に限定されず、例えば、シリンジ等を用いる方法が挙げられる(第2のバルーン222についても同様)。
【0040】
すなわち、作動流体fが収納されたシリンジを口部221bに接続した状態にてシリンジの押し子を押し込むと、シリンジ内の作動流体fが第1のバルーン221の本体221a内へ供給され、本体221aが膨張する。反対に、シリンジの押し子を引き戻すと、本体221a内の作動流体fがシリンジ内へ排出され、本体221aが収縮する。
【0041】
このようなシリンジの操作は、術者(歯科医師等)によっても簡単に行うことができるため、咬合器1の使用が簡単となる。また、このような方法では、第1のバルーン221内へ供給する作動流体fの量(体積)を簡単に調節することができ、本体221aの膨張の程度を簡単に制御することができる。
【0042】
また、作動流体fを第1のバルーン221内に供給する方法、および、作動流体fを第1のバルーン221内から排出する方法としては、上述したシリンジを用いる方法の他に、ポンプ等の流体機器を用いる方法も挙げられる。この方法では、術者がポンプを操作することによって、作動流体fを第1のバルーン221内に供給したり、作動流体fを第1のバルーン221内から排出したりすることにより、本体221aを膨張させたり、収縮させたりすることができる。
【0043】
なお、咬合器1では、第1、第2のバルーン221、222の膨張、収縮をそれぞれ独立して行うことができるように構成されていてもよいし、互いに連動して行うことができるように構成されていてもよい。ただし、操作性の観点から、第1、第2のバルーン221、222の膨張、収縮をそれぞれ独立して行うことができるように構成されているのが好ましい。
【0044】
以上、第1の固定具2について説明した。このような第1の固定具2には、次のようにして下顎側有床義歯100が着脱される。
【0045】
まず、第1の固定具2の第1、第2のバルーン221、222をともに収縮状態(作動流体fを排出した状態)とする。次に、図4に示すように、凹部211内に下顎側有床義歯100の床部110を配置する。次に、図5に示すように、第1、第2のバルーン221、222をそれぞれ膨張させ、第1、第2のバルーン221、222によって下顎側有床義歯100の床部110を両側(すなわち、表側および裏側)から圧迫する。これにより、下顎側有床義歯100が第1の固定具2に固定(装着)される。
【0046】
なお、第1、第2のバルーン221、222を膨張させる際は、例えば、第1のバルーン221を膨張させてから第2のバルーン222を膨張させてもよいし、反対に、第2のバルーン222を膨張させてから、第1のバルーン221を膨張させてもよい。また、第1、第2のバルーン221、222を同時に膨張させてもよい。また、第1、第2のバルーン221、222を交互に少しずつ膨張させてもよい。
【0047】
反対に、第1の固定具2に下顎側有床義歯100が固定されている状態にて、第1、第2のバルーン221、222を収縮させると、第1の固定具2から下顎側有床義歯100を簡単に取り外すことができる。
【0048】
このような第1の固定具2によれば、軟質な第1、第2のバルーン221、222によって下顎側有床義歯100をその両側から圧迫することで、下顎側有床義歯100を挟持し固定するため、下顎側有床義歯100の破損(傷つき、破壊等)を効果的に防止または抑制することができる。また、第1、第2のバルーン221、222が、下顎側有床義歯100の表面形状に追従して変形し密着するため、下顎側有床義歯100をより安定した状態で固定することができる。
【0049】
また、上述したように、第1の固定具2への下顎側有床義歯100の着脱を簡単に行うことができるため、操作性に優れた咬合器1となる。特に、第1の固定具2によれば、従来のように、石膏等の接着剤を用いずに下顎側有床義歯100を固定することができるため、患者から取り外した下顎側有床義歯100を第1の固定具2に固定する行為や、第1の固定具2から取り外した下顎側有床義歯100を患者に装着する行為を迅速に行うことができる。そのため、下顎側有床義歯100および上顎側有床義歯200の噛み合せの調整をより短時間にかつ効率的に行うことができる。また、石膏等の接着剤を取り除く必要がないため、その際に、下顎側有床義歯100が破損する危険性を回避することができる。
以上、第1の固定具2の構成について詳細に説明した。
【0050】
咬合器1は、前述したように、第1の固定具2と第2の固定具3とを連結する連結部4を有している。連結部4は、第1の固定具2および第2の固定具3を、顎運動に近似して相対運動可能なように連結しており、これにより、下顎側有床義歯100と上顎側有床義歯200との口腔内での噛み合せを咬合器1にて再現することができる。
【0051】
図1に示すように、連結部4は、第1の固定具2が固定された第1のアーム41と、第2の固定具3が固定された第2のアーム42とを有しており、これらは、軸43によって、回動自在に連結されている。なお、第1のアーム41に対する第2のアーム42の姿勢は、図示しない固定手段によって固定することができる。
【0052】
また、第2のアーム42は、先端側アーム421と、基端側アーム422と、先端側アーム421と基端側アーム422とを連結する関節44とを有している。関節44は、2つのボール441、442と、これらボール441、442を挟持するボールホルダー443とを有している。また、ボール441は、先端側アーム421と接続されており、ボール442は、基端側アーム422と接続されている。
【0053】
ボールホルダー443は、図示しないボルト等を操作することによって、各ボール441、442を挟持する圧力を独立して変化させることができる。すなわち、ボールホルダー443は、圧力が弱く、術者によってボール441をボールホルダー443に対して摺動回転させることのできる状態と、圧力が強く術者によってボール441をボールホルダー443に対して摺動回転させることのできない状態とを取ることができる。このことは、ボール442についても同様である。
【0054】
このような関節44によれば、先端側アーム421の姿勢を基端側アーム422に対して自在に変化させることができる。
【0055】
すなわち、関節44を有することにより、図6に示すように、床部(上顎側有床義歯床部)210が第1、第2のバルーン321、322に両側から圧迫されることにより、第2の固定具3に固定された上顎側有床義歯200の姿勢を、第1の固定具2に固定された下顎側有床義歯100に対して自在に変化させることができる。
【0056】
以上のような連結部4によれば、上下顎の開閉を再現することができ、下顎側有床義歯100と上顎側有床義歯200の噛み合せを確認することができる。
【0057】
なお、本実施形態の咬合器1は、いわゆる「平均値咬合器」と呼ばれるタイプの咬合器であるが、咬合器1としては、このタイプに限定されず、例えば、「平線咬合器(蝶番咬合器)」、「全調節性咬合器」、「半調節性咬合器」等のいかなるタイプの咬合器であってもよい。
【0058】
以上、図示の実施形態に基づいて本発明の固定具および咬合器を説明したが、本発明は、これらに限定されるものでない。例えば、本発明の固定具および咬合器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0059】
また、前述した実施形態では、咬合器が2つの固定具(本発明の固定具)を有する構成について説明したが、これに限定されず、少なくとも1つの固定具(本発明の固定具)を有していればよい。すなわち、第1の固定具および第2の固定具のうちのいずれか一方に本発明の固定具が用いられていればよい。
【0060】
例えば、下顎側有床義歯と、上顎側の天然歯との噛み合せを調節する場合には、本発明の固定具を下顎側有床義歯を固定するために用い、上顎側の模型は、従来のような固定具(固定方法)を用いればよい。また、上顎側有床義歯と、下顎側の天然歯との噛み合せを調節する場合には、本発明の固定具を上顎側有床義歯を固定するために用い、下顎側の模型は、従来のような固定具(固定方法)を用いればよい。
【0061】
また、前述した実施形態では、各固定具に、2つのバルーン(第1、第2のバルーン)が設けられた構成について説明したが、バルーンの数は、これに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。具体的には、第1のバルーンおよび第2のバルーンのうちの一方を省略してもよいし、これらを一体的に形成してもよい。また、第1のバルーンをその延在方向に複数に分割してもよい。言い換えれば、複数の第1のバルーンを凹部の外側(表側)の側面に沿って配置してもよい。
【0062】
また、第1、第2のバルーンの形状としては、特に限定されず、表面が滑らかなものであってもよいし、表面に凹凸が形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 咬合器
2 第1の固定具
21 本体
211 凹部
211a 側面
211b 側面
212 貫通孔
213 貫通孔
22 バルーン
221 第1のバルーン
221a 本体
221b 口部
222 第2のバルーン
222a 本体
222b 口部
3 固定具
321 第1のバルーン
322 第2のバルーン
4 連結部
41 第1のアーム
42 第2のアーム
421 先端側アーム
422 基端側アーム
43 軸部
44 関節
441 ボール
442 ボール
443 ボールホルダー
100 下顎側有床義歯
110 床部
200 上顎側有床義歯
210 床部
f 作動流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
咬合器に有床義歯を固定するための固定具であって、
前記有床義歯の床部を配置する凹部を有する本体と、
凹部内に設けられ、作動流体の供給によって膨張し、前記作動流体の排出によって収縮するバルーンと、を有し、
前記凹部内に前記有床義歯の床部を配置した状態にて、前記バルーン内に前記作動流体を供給し、前記バルーンを膨張させることによって、前記有床義歯を固定するよう構成されていることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記バルーンは、前記凹部に前記有床義歯を配置した状態にて、前記有床義歯の表側に位置する第1のバルーンと、前記有床義歯の裏側に位置する第2のバルーンとを有している請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定具を備えることを特徴とする咬合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52088(P2013−52088A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191875(P2011−191875)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(509277855)
【Fターム(参考)】