説明

固形物を含有した液状の圧送可能なタール懸濁液を、内部に含有された分離された固形物を搬送する必要なく分離するための装置および方法

本発明は、内部に含有されていた分離固形物を直接利用することにより、乾留反応によって固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別するための装置に関し、前記装置が、石炭貯蔵容器の上部の内側部分に配置された遠心分離機からなり、前記遠心分離機が、固形物を含有した液状タール用の供給ノズルと、遠心分離された液状タール用の排出ノズルとを装備し、底部に、タール中に含有される固形物のための出口を有し、これにより、タール懸濁液から得られるタール含有固形物を、搬送したり輸送したりする必要がない。本発明はまた、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別し、本発明の装置によって、内部に含有されていた分離固形物を搬送する必要なく利用するためのプロセス、および、前記固形物が混合された石炭の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別し、内部に含有されていた分離固形物を搬送する必要なく利用するための装置に関し、前記装置は、石炭貯蔵容器の上部分に配置され、前記装置は、固形物を含有した圧送可能なタールまたは固形物を含有した圧送可能なタール懸濁液を、液相と内部に含有される固形物とに分別する遠心分離機からなり、これにより、固形物を引き続き搬送することなく貯蔵された石炭上にまたは石炭内に直接置くことができ、タール懸濁液のみを圧送または輸送すればよく、分離された固形物を搬送する必要はない。本発明はまた、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別し、得られた固形物を石炭とともに貯蔵するためのプロセス、および、固形物が混合された石炭からコークスを製造するプロセスへの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスを製造する石炭の分解蒸留は、粘性のある固形物を含んだタール懸濁液を生成することが多く、これらのタール懸濁液は、分別してさらに処理する必要がある。タールのコンシステンシーのため、固形物の分別は通常、遠心分離機を使用して実施されるが、分別した後に得られた固形物を搬送したり輸送したりする必要があるという課題を伴う。これは、かなりの費用を要する。
【0003】
コーキングプロセスによりタール懸濁液を分別するためのプロセスは公知である。特開平07188671A号公報は、タール懸濁液を分別し、得られた固形物を利用するためのプロセスを記載しており、前記プロセスは、コーキングプロセスによって得られるタール懸濁液の希釈を伴い、得られた希釈物は遠心分離され、得られた固形物並びに固形物が除かれたタールは、さらに処理される。英国特許出願公開第789709A号明細書は、堅い石炭タールから液体成分と固体成分とを分別するためのプロセスを記載しており、前記プロセスは、適当な添加剤を利用した水性分散液の生成を伴い、前記分散液は、遠心分離機によって、上澄みの液相と内部に含有される固形物とに分別される。
【0004】
これらのプロセスの欠点は、得られた粘着性のタール含有固形物を搬送または輸送する必要があることである。固形物をさらに使用するための普通のプロセスは、例えば、原料となる石炭と混合して、両方とも一緒に貯蔵することである。しかしながら、タール含有固形物のコンシステンシーのため、スクリューコンベアまたはベルトコンベアなどの搬送に使用される機器は、故障し易く、概して効果的ではなく、或いは高圧の二重壁排出ラインなどのさらなる高価な機器の使用を必要とする。
【0005】
したがって、本発明の目的は、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液の分別から回収された固形物の搬送時に遭遇する問題点を改善しまたは回避し、そして搬送することなく固形物を利用するためのプロセスを提供することであり、分別によって得られた前記固形物を石炭ストックに加えることを意図している。
【0006】
本発明は、石炭貯蔵容器の上部の内側部分に配置されている遠心分離機からなり、前記遠心分離機が、固形物を含有した液状タール用の供給ノズルと遠心分離された液状タール用の排出ノズルとを装備し、底部に、タール内に含有された固形物用の出口を有する装置によって、この目的を達成する。遠心分離した後、遠心分離によって得られた固形物は好ましくは、重力によって、石炭が貯蔵されている石炭貯蔵容器内に落下する。
【0007】
これは、固形物を遠心分離機または下流の容器から石炭貯蔵容器に搬送する必要性を不要にする。固形物は、遠心分離プロセスによって、石炭貯蔵容器内の石炭中に直接落下する。遠心分離機された液状タールは、容器内の遠心分離機から、ポンプ付きのラインを介して排出される。この液状タールは、供給タンクに戻したり、さらに活用したりすることができる。固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液は、遠心分離する前に、希釈したり、添加剤を混合したりすることができる。石炭貯蔵容器は、例えば石炭貯蔵サイロでもよい。
【0008】
請求するものは、特に、乾留反応によって、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別し、内部に含有されていた分離固形物を搬送する必要なく使用するための装置において、
・前記装置が、石炭貯蔵容器の上部の内側部分に配置された遠心分離機からなり、
・前記遠心分離機が、固形物を含有した液状タール用の供給ノズルと、遠心分離された液状タール用の排出ノズルとを装備し、
・前記遠心分離機が、底部に、タール中に含有された固形物のための出口を有することを特徴とする装置である。
【0009】
また、請求するものは、乾留反応により、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別し、内部に含有されていた分離固形物を搬送する必要なく本発明の装置を使用して利用するためのプロセスである。前記プロセスは、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液が、石炭貯蔵容器の上部分に配置された遠心分離機に圧送され、前記遠心分離機が、タール懸濁液を遠心分離された液状タールと固形物とに分別し、前記固形物が、さらに搬送または輸送されることなく石炭容器内の石炭上にまたは石炭中に置かれることを特徴としている。
【0010】
遠心分離によって得られ、石炭上に置かれる固形物は、好ましくは、石炭とともに貯蔵される。沈降により通常、遠心分離から得られた固形物が石炭貯蔵容器内の石炭とともに貯蔵されたり、或いは、石炭を、適当な機器を使用して遠心分離から得られた固形物と混合させることもできる。好ましくは、遠心分離に使用される固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液は、石炭からコークスを製造するためのプロセスから作り出される。
【0011】
また、請求するものは、石炭貯蔵容器の上部内側部分に設けられた遠心分離機を使用して、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液を分別することによって得られる固形物を含有する石炭の使用である。前記石炭は、特に分解蒸留のため、そしてコークスの製造のために使用されることができる。
【0012】
本発明の利点は、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液の遠心分離から得られた固形物を搬送するのに、コストのかかる圧送を必要としないことである。固形物は、遠心分離機から貯蔵された石炭上に直接達する。圧送する必要があるのは、固形物を含有した圧送可能なタール懸濁液または液状タールのみである。かくして、かなりの量のエネルギーまたは設備が節約される。
【0013】
本発明による石炭を分解蒸留するためのプロセスの構成は、2つの図面によってより詳細に説明される。第1の図面は従来技術の機器を示しており、第2の図面は本発明による装置を示している。本発明によるプロセスは、この形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来技術による機器を示す。
【図2】図2は、本発明による装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、従来技術による機器を示す。固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)が、ポンプ(2a)によって遠心分離機(3)に圧送され、そこで上澄みの液状タール(4)は、さらなる使用のため、ポンプ(2b)によって圧送され、内部に予め含有されていた分離された固形物(5)が得られる。前記固形物(5)は、石炭(7)を貯蔵するための容器(6)内に置かれる。タールからの搬送された固形物(5a)は、コンベアベルト(8)またはスクリューコンベアを介して容器(6)内に通される。タールからの固形物(5b)は、石炭(7)上に貯蔵される。石炭(7)は、関連した開口(9a)を介して容器(6)から取り出すことができ、または別の開口(9b)を介して補給することができる。
【0016】
図2は、本発明による装置を示す。固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)が、ポンプ(2a)によって遠心分離機(3)に圧送される。本発明によれば、遠心分離機(3)は、石炭(7)を貯蔵するための容器(6)の上部の内側部分に配置される。遠心分離機(3)では、タール懸濁液は、上澄みの液状タール(4)と前記懸濁液中に含まれる固形物(5)とに分別される。前記固形物は、重力によって、遠心分離機(3)の開口(3a)から石炭(7)上に落下し(5b)、そこに貯蔵される(5c)。液状タール(4)は、ポンプ(2b)を介して圧送される。石炭(7)は、関連した開口(9a)を介して容器(6)から取り出すことができ、または別の開口(9b)を介して補給することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液
2a ポンプ(固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液用)
2b ポンプ(液状タール用)
3 遠心分離機
3a 遠心分離機の開口
4 液状タールまたは遠心分離されたタール
5 分離された固形物
5a 搬送された固形物
5b 石炭上に貯蔵された固形物
5c 遠心分離機から外部に落下した固形物
6 容器
7 石炭
8 コンベアベルト
9a 石炭を取り出すための開口
9b 石炭を補給するための開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)を分別し、内部に含有されていた分離固形物(5)を搬送する必要なく利用するための装置において、
前記装置が、石炭貯蔵容器(6)の上部の内側部分に配置された遠心分離機(3)からなり、
前記遠心分離機(3)が、固形物を含有した液状タール(1)用の供給ノズルと、遠心分離された液状タール(4)用の排出ノズルとを装備し、
前記遠心分離機(3)が、底部に、前記タール(1)中に含有される固形物(5)のための出口(3a)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)を分別し、内部に含有されていた分離固形物(5)を搬送する必要なく利用するための方法において、
固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)が、石炭貯蔵容器(6)の上部分に配置された遠心分離機(3)内に圧送され、
前記遠心分離機(3)が、タール懸濁液(1)を遠心分離された液状タール(4)と固形物(5)とに分別し、
前記固形物(5)が、搬送または輸送される必要なく石炭容器(6)内の石炭(7)上にまたは石炭中に置かれることを特徴とする方法。
【請求項3】
固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)を分別し、内部に含有されていた分離固形物(5)を搬送する必要なく利用するための請求項2に記載の方法において、
前記固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)が、石炭(7)からコークスを製造するための方法から作り出されることを特徴とする方法。
【請求項4】
内部に含有されていた分離固形物(5)を直接使用することによって、固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)を分別するための請求項2または3に記載の方法において、
遠心分離によって得られ、前記石炭(7)上に置かれる前記固形物が、前記石炭(7)とともに貯蔵される(5c)ことを特徴とする方法。
【請求項5】
固形物を含有した圧送可能な液状タール懸濁液(1)の分別からの固形物材料(5c)を含有し、固形物材料は搬送される必要なく利用される請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の石炭(7)の使用において、
遠心分離機(3)によって得られた固形物材料(5)または遠心分離されたタール(4)と混合された石炭(7)が、分解蒸留またはコークスの製造のために使用されることを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516528(P2013−516528A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547454(P2012−547454)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007840
【国際公開番号】WO2011/082810
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(502099418)ティッセンクルップ ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Uhde GmbH
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Uhde−Strasse 15, D−44141 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】