説明

固相抽出用焼結型吸着材およびカートリッジ

【課題】抽出特性の高い粒子状の多孔質ポリマー系固相抽出剤の優れた機能を損なうことなく、取り扱いが容易で各種要求に対応しやすい固相抽出剤および固相抽出剤の充填密度の変動がない固相抽出カートリッジを提供する。
【解決手段】粒子状の多孔質ポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体とを適切な割合で混合後、熱可塑性樹脂の融点付近の温度で加熱して熱可塑性樹脂粉体を融着させた後、冷却して得られる熱可塑性樹脂の多孔焼結体内部に多孔質ポリマー系固相抽出剤を固定した焼結型固相抽出用吸着材を製造するとともに、その焼結型固相抽出用吸着材をリザーバあるいはホルダに装着して固相抽出カートリッジとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化学分析の前処理工程において使用される固相抽出用の吸着材およびそれを用いた固相抽出用カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体試料中からの測定対象物の抽出には溶媒抽出法(液−液抽出法)が古くから用いられてきた。溶媒抽出法は、操作が煩雑で、かつ環境負荷の高い有機溶媒を大量に使用する等、種々の問題が指摘されているため、近年は固相抽出法に移行しつつある。固相抽出法は、固相と液相との間の相互作用による物理的抽出法で、測定対象物質の固相抽出剤への高い親和性を利用して、測定対象物質を固相抽出剤表面に抽出・濃縮するものである。溶媒抽出法に比べ、高回収率、高精度、迅速性、簡便性、安全性、低コスト、溶媒低減、自動化が容易、フィールドサンプリングが可能等の特長を有している。そのため、多数の検体の迅速処理が必要とされる環境試料や食品試料中の農薬等の微量有害物質の抽出・濃縮に広く利用されている。
【0003】
固相抽出剤としては、シランカップリング反応によりシリカゲル表面にオクタデシル基やオクチル基等の疎水基を導入したシリカ系固相抽出剤が使用されてきたが、近年では、負荷量が大きいこと、耐薬品性が高いこと、ロット間のバラツキが少ないこと、多彩な種類があること等の理由により、高分子物質を利用したポリマー系固相抽出剤が急速に普及しつつある。ポリマー系固相抽出剤としては、当初は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体が用いられたが、抽出効率を改善するためメタクリレートとジビニルベンゼン共重合体(特許文献1参照)やビニルピロリドンとジビニルベンゼン共重合体(特許文献2参照)等、内部に極性基をもつ固相抽出剤が提案されている。また、疎水性固相抽出剤にイオン交換基を導入したもの(特許文献3参照)やキレート性官能基を導入したもの(特許文献4参照)等多機能な固相抽出剤も提案されている。
【0004】
これらの固相抽出剤は、破砕形あるいは球形の数十μmの粉体であり、樹脂製(主に、ポリプロピレン製)のリザーバに充填して使用する。固相抽出用リザーバの作成は、下部にポリエチレン製等の焼結フィルタ(フリットと呼ぶ)を挿入したリザーバに乾式で充填を行い、その後、充填ベッドの上にもフリットを挿入し、固相抽出カートリッジとする。代表的な固相抽出カートリッジの構成を図1に示す。乾式充填によって充填された固相抽出剤の充填状態は、高速液体クロマトグラフィーに使用される充填カラムのように高密度に充填されているわけではない。したがって、充填直後に均一に充填されているようにみえても、振動や衝撃を受けると固相抽出剤が動き、上部フリットと充填ベッド上部との間に隙間が生じてしまうことがある。このような隙間が生じたまま使用すると、均一な抽出ができないとか、速やかな溶出ができない等により、抽出回収率が変動する上、カートリッジ中に試料溶液が残存するといった問題が生じる。
【0005】
固相抽出剤がポリマー系固相抽出剤の場合には膨潤・収縮による問題も生じる。固相抽出カートリッジを用いて水試料からの抽出を行う場合、まず有機溶媒で固相抽出剤を洗浄するとともに、充填ベッドの調整を行う。その後、純水等を流して試料溶液の液性に合わせるという作業を行う(この操作をコンディショニングとよんでいる。)。一般に、ポリマー系固相抽出剤は有機溶媒中で膨潤するが、有機溶媒で膨潤した固相抽出剤を水中に入れると一気に収縮する。つまり、コンディショニングの間に充填ベッドは膨潤した後、収縮することとなるため、上記のような隙間やチャネリングが発生してしまうことがある。このような状態で使用すると、抽出回収率の低下やバラツキが生じてしまう。これらの問題を解決するためには、形状が安定しており、かつ膨潤・収縮のないポリマー系固相抽出剤が必要となる。
【0006】
上記問題を解決することが可能と思われる技術が、特許文献5〜6に提案されている。これらの特許文献では、粉体の固相抽出剤を高分子繊維(パルプ)と混合し、溶媒留去法あるいは加熱融着法によってシート状あるいは膜状とした固相抽出体として使用することが開示されている。これらは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース等の繊維により形成される網目状のシートあるいは膜内部に微粒子の固相抽出剤を保持させたものである。保持担体となる繊維は、通常の固相抽出工程において使用される溶媒では溶解することはなく、膨潤することもない。したがって、このような方法を用いることで膨潤・収縮のない固相抽出体を製造することができるとともに、上下のフリットも不要となる。しかしながら、このような方法によって製造される固相抽出体は厚さ1mm以下の薄膜状であり、一般的な固相抽出カートリッジのように円柱状に充填して、充填ベッド高さの調整によって必要な充填量を得るためには煩雑な作業が必要となる。これらの薄膜状固相抽出体は、通常のろ紙と同様の方法で使用するため、固相抽出カートリッジと共通の器具を使用することはできないから、専用の器具を準備しなければならない。さらに、孔径も小さいため、高流速での抽出処理がしにくく、目詰まりが生じやすいという問題もある。
【0007】
近年、高流速下で高分離が得られるとされるモノリス型充填剤の製造方法が提案(特許文献9など参照)されており、実際に商品化もされている。ポリマー系のモノリスに関しても種々検討されており、特許文献10では固相抽出分野への適用例が示されている。特許文献10のポリマーモノリスの製造方法によれば、0.5〜10μm程度のスルーポア、2〜50nmのメソポアを有する円柱状の固相抽出剤を製造することが可能であるとされている。このポリマーモノリスのスルーポア径は、一般的な粒子状固相抽出剤を充填した空隙よりも小さいが、十分に固相抽出剤として使用可能であると推察される。ポリマーモノリスは、密閉された反応容器内にモノマー、架橋剤、希釈剤、重合開始剤を入れて重合反応によって製造されるものであり、反応容器の内部の形状と同じ形状の多孔質体が得られる。高速液体クロマトグラフィー用カラムや固相抽出カートリッジとして使用する場合には、製造されたポリマーモノリスを反応容器からいったん取り出してからさらに加工して目的のカラムやカートリッジに挿入して使用することが通常である。しかしこれでは煩雑であるため、目的のカラムやカートリッジそのものを反応容器として用い、それら内部に直接モノリス型の固相抽出剤ベッドを生成させてしまうというというものである。この製造方法は、粒子を充填する工程が省けるという利点があると同時に、ポリマーモノリスそのものが多孔体であるため、通常の固相抽出カートリッジで使用される上下フリットも不要となる。しかしながら、固相抽出カートリッジ一本ずつ個別に固相抽出剤ベッドを重合反応により直接製造する方法は煩雑であり、大量製造に適しないという問題とともに、重合反応による内圧上昇によって樹脂製の固相抽出カートリッジでは変形してしまうおそれもある。さらには、固相抽出剤にさらに化学反応により種々の官能基を導入して高機能化を図りたいという場合、スルーポアが小さいために反応が均一に進行せず、固相抽出剤への官能基の導入率が低いという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3274898号公報
【特許文献2】特許公表2000−514704号公報
【特許文献3】特許公表2002−517574号公報
【特許文献4】特許公開2005−213477号公報
【特許文献5】特許3785438号公報
【特許文献6】特表平10−500058号公報
【特許文献7】特表2001−502762号公報
【特許文献8】特表2002−524243号公報
【特許文献9】特開2007−292751号公報
【特許文献10】特開2006−15333号公報
【特許文献11】特開2008−221611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点をかんがみてなされたもので、粒子状の多孔質のポリマー系固相抽出剤の機能を損なうことなく、取扱いが容易で各種の要求に対応しやすい固相抽出用吸着材および充填密度の変動がない固相抽出用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鋭意研究を行った結果、粒子状の多孔質のポリマー系固相抽出剤を熱可塑性樹脂粉体と混合して混合物とし、この混合物を加熱・焼結して多孔の焼結体(以下では多孔焼結体とよぶことがある。)とすることにより、この多孔焼結体が多孔質のポリマー系固相抽出剤の機能を損なうことなく、取り扱いが容易で各種要求に対応しやすい固相抽出用吸着材となる知見を得たことに基づくものである。すなわち、混合物を加熱・焼結すると、混合物中の熱可塑性樹脂粉体は、その表層付近が融着して相互に結合し、多孔質で三次元網目状の構造を形成するが、この際多孔質のポリマー系固相抽出剤がこの網目状の構造中に固定された焼結体となるので、多孔質のポリマー系固相抽出剤の機能を損なうことなく、取り扱いが容易で各種要求に対応しやすい固相抽出用吸着材を製造することができる。この際、ポリマー系固相抽出剤の粉体の表面と熱可塑性樹脂粉体の表面とが融着により結合して一体的になることも予想される。
すなわち、粒子状の多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体の混合物を加熱・焼結した多孔焼結体であって、熱可塑性樹脂の焼結マトリックス中に多孔質ポリマー系固相抽出剤が分散固定されたものであることを特徴とする焼結型固相抽出用吸着材、およびこの焼結型固相抽出用吸着材をリザーバあるいはホルダに装着した固相抽出用カートリッジとすることにより上述の課題を解決しようとするものである。
【0011】
本発明では、乾燥時のベッド体積と溶媒に膨潤させた時のベッド体積から下記式1により求められる膨潤度が1.0〜2.0である多孔質のポリマー系固相抽出剤が熱可塑性樹脂粉体に混合される。
【式1】
【0012】

【0013】
本発明においては、熱可塑性樹脂粉体に混合される多孔質のポリマー系固相抽出剤の混合率が、10〜70重量%である。
【0014】
本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかまたはそれらを混合したものを主成分とし、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはエチレン−ビニルアルコール共重合体を混合したものも使用することができる。
【0015】
本発明においては、熱可塑性樹脂多孔焼結体内部に多孔質ポリマー系固相抽出剤が固定された焼結型固相抽出用吸着材をリザーバあるいはホルダに装着して固相抽出用カートリッジとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体とを混合し、融着法を用いて製造される多孔焼結体を固相抽出用吸着材として用いることで、多孔質ポリマー系固相抽出剤の機能を損なうことなく、取扱いが容易で各種要求に対応しやすい固相抽出用吸着材となり、この多孔焼結体を適切なリザーバあるいはホルダに装着することで、振動や膨潤・収縮による充填密度の変動がない固相抽出用カートリッジを、簡便かつ安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1は、一般的な固相抽出用カートリッジの構成例を示す。
図2は、焼結型固相抽出用吸着材を用いた固相抽出用カートリッジの構成例を示す。
図3は、上下に細孔径の異なる多孔焼結体層を一体成形した多層式焼結型固相抽出用吸着材を用いた固相抽出用カートリッジの構成例を示す。
図4は、焼結型固相抽出用吸着材を用いたルアー型固相抽出用カートリッジの構成例を示す。
図5は、焼結型固相抽出用吸着材を用いた平板型固相抽出用カートリッジの構成例を示す。
図6は、固相抽出法の操作工程を示した図を示す。
図7は、固相抽出法に用いる吸引マニュホールドの構成例を示す。
図8は、実施例1の焼結型固相抽出用吸着材Aとキレート樹脂粒子aの各pHにおける金属吸着特性比較を行ったグラフを示す。図8a、図8b、図8c、図8d、図8e、図8f、図8g、図8h、図8i、図8j、図8kおよび図8lは、それぞれ五価ヒ素As(V)、カドミウムCd、コバルトCo、三価クロムCr(III)、銅Cu、鉄Fe、マンガンMn、モリブデンMo、ニッケルNi、鉛Pb、バナジウムV、亜鉛Znの各pHにおける吸着特性比較を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、粒子状の多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体とを混合した後、公知の方法によりこの混合物を加熱・焼結し、冷却して多孔焼結体とし、この焼結体を固相抽出用吸着材として用い、この多孔焼結体を適切なリザーバあるいはホルダに装着して固相抽出用カートリッジとするものである。
【0019】
本発明において使用される多孔質のポリマー系固相抽出剤の材質は、特に限定されるものではない。既存の疎水性樹脂、親水性樹脂、イオン交換樹脂、キレート樹脂等を用いることができる。また、その形状に関しても特に限定されるものではなく、公知の塊状重合法により得られる樹脂の粉砕による不定形粒子、公知の懸濁重合法により得られる球状粒子であってもよい。
【0020】
一般に、ポリマー系の吸着材は良溶媒中で膨潤するという特性をもつ。疎水性のポリマー系固相抽出剤は有機溶媒中で、イオン交換樹脂やキレート樹脂は水中で高度に膨潤する。乾燥体積を基準とすると、良溶媒中での膨潤体積は数倍以上にもなるものもある。膨潤することにより吸着材の細孔が大きくなると同時に比表面積も増加するが、非膨潤状態での比表面積は数十m/g以下と非常に小さいため、その粒子のもつ機能を十分に発揮することができない。多孔焼結体も細孔を有してはいるものの比表面積は低いため、このような比表面積の小さい粒子を熱可塑性樹脂粉体に混合して多孔焼結体としても十分な機能は発現しない。このとき、多孔焼結体の内部に保持された粒子が膨潤することができれば比表面積が大幅に増加することとなるが、粒子の周囲は熱可塑性樹脂との融着によって固定されていて十分に膨潤することができない。一部が膨潤して細孔を広げたとしても、多孔焼結体が形成する細孔の閉塞を引き起こしてしまう。さらに、膨潤・収縮が繰り返されると、熱可塑性樹脂との融着状態が崩れて、多孔焼結体から脱離・漏出が生じる恐れもある。これらの問題を解消するためには、膨潤度合いが小さく、かつ比表面積の大きい粒子を用いる必要がある。
【0021】
本発明においては、熱可塑性樹脂と混合される多孔質ポリマー系固相抽出剤は、多孔焼結体内に安定して固定し、かつ使用時の通液特性を確保するために膨潤度合いの小さいものが用いられる。多孔質ポリマー系固相抽出剤の膨潤度は、乾燥時のベッド体積と溶媒に膨潤させた時のベッド体積から、上記の式1により求められる。本発明においては1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8の膨潤度を示す高分子担体が用いられる。多孔質のポリマー系固相抽出剤の細孔径、比表面積は吸着対象成分や共存成分の特性にも依存するため特に限定されるものではないが、一般に、非膨潤時の細孔物性として、平均細孔径4〜50nm、比表面積100〜1000m/gのものを用いる。
【0022】
本発明において、熱可塑性樹脂粉体に混合される多孔質のポリマー系固相抽出剤の量は10〜70重量%であり、好ましくは10〜60重量%である。添加量が10重量%未満では多孔焼結体中に固定される多孔質のポリマー系固相抽出剤量が少なくなり、十分抽出機能を発揮することができなくなる。また、多孔質のポリマー系固相抽出剤の添加量が70重量%を超えると、多孔焼結体の成形性が低下したり、強度や柔軟性等の物性が低下したりする。
【0023】
本発明の焼結型固相抽出用吸着材は、多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体とを混合後に加熱・焼結するため、多孔質のポリマー系固相抽出剤の熱変性が問題となる。一般にポリマー系固相抽出剤は、耐熱性が低いため、この熱変性を防ぐため熱可塑性樹脂の材料としては融点が比較的低いポリエチレンやポリプロピレンが用いられる。これら熱可塑性樹脂粉体を単独あるいは混合して用いることができる。これらの材質は撥水性の強い材質であるが、濡れ性を改善させるため、さらには柔軟性を改善するために、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−ビニルアルコール共重合体の粉体を混合することができる。
【0024】
本発明において使用される多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体の粒子径は、とくに限定はなく、任意のものを使用することができるが、一般に、多孔質のポリマー系固相抽出剤の平均粒子径は5〜300μm、熱可塑性樹脂粉体の平均粒子径は20〜800μmのものが用いられる。多孔質のポリマー系固相抽出剤の平均粒子径が小さい場合には多孔焼結体からの漏出が起きてしまう可能性がある。このような場合、熱可塑性樹脂の溶融度合いを高めることで多孔質のポリマー系固相抽出剤の脱落を防ぐことが可能であるが、得られた多孔焼結体の開孔率が低下し、透過性の悪い多孔焼結体となってしまう。そのため、通常は、混合する多孔質のポリマー系固相抽出剤の平均径に対して0.5〜4倍の平均径を有する熱可塑性樹脂粉体が使用される。一方、多孔質のポリマー系固相抽出剤の粒子径が大きすぎる場合には熱可塑性樹脂粉体との融着度が低くなり、強度、柔軟性ともに不十分な多孔焼結体となってしまう。なお、熱可塑性樹脂粉体の形状に関しては、不定形の破砕型であっても、球形であってもかまわない。
【0025】
本発明の焼結型固相抽出用吸着材は、公知のプラスチックの多孔焼結体の製造法の応用によって製造される。すなわち、1)目的の機能を有する反応性官能基を有する多孔質のポリマー系固相抽出剤を準備する工程、2)前記多孔質のポリマー系固相抽出剤の粒子と熱可塑性樹脂粉体とを混合する工程、3)前記多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体との混合物を金型のキャビティに振動させながら充填する工程、4)前記粒子および粉体の混合物が充填された金型を熱可塑性樹脂の融点付近の温度に設定された恒温炉に入れて所定時間加熱して多孔焼結体を成形する工程、および、5)金型を冷却して成形された多孔焼結体を取り出す工程、により製造される。
【0026】
本発明の焼結型固相抽出用吸着材における多孔焼結体の細孔径は、使用する熱可塑性樹脂粉体の平均粒子径および粒度分布により決定される。多孔焼結体の濾過精度や通液精度を調節するために、特許文献11に示されるような多層式焼結体とすることも可能である。すなわち、金型下部に、目的濾過精度を達成しうる粒子径を有する熱可塑性樹脂粉体を、目的の厚さが得られる量だけ充填して恒温炉中で加熱融着により多孔焼結体を成形後、いったん金型を開け、本発明の粒子および粉体の混合物の一定量を充填し、再度恒温炉中で所定時間加熱して多孔焼結体を成形するという方法を用いる。この方法により、下面(あるいは上面)に細孔径の異なる多孔焼結体層を有する多孔焼結体を得ることができる。
【0027】
本発明の焼結型固相抽出用吸着材は、適切な形状および容量を有するリザーバあるいはホルダに装着して、固相抽出用カートリッジとして用いる。図2に、本発明の焼結型固相抽出用吸着材12を注射筒型のリザーバ1に挿入したときの例を示す。このとき、本発明の焼結型固相抽出用吸着材の透過性やろ過精度が問題となれば、図1に示すように、粒子状固相抽出剤11を充填した固相抽出カートリッジと同様に上部あるいは下部、またはその両方に、適切な透過性あるいはろ過精度を示すフリット(2および3)を挿入してもよい。また、図3に示すように、上部あるいは下部、またはその両方に多孔焼結体層13aおよび13bを一体成形した焼結型固相抽出用吸着材13も用いることができる。この他、図4に示すように、上部が開放形でなくメス型ルアー部を有するキャップ4aを使用するリザーバ4bに焼結型固相抽出用吸着材14を挿入したルアー型固相抽出用カートリッジとしたり、図5に示すように、フィルタホルダ類似構造をもつ平板型ホルダ5に平板状に成形した焼結型固相抽出用吸着材15を装着した平板型固相抽出用カートリッジ等とすることも容易である。
【0028】
本発明において、固相抽出用のリザーバあるいはホルダの材質はとくに限定されるものではなく、必要に応じて、ステンレス、ガラス、プラスチック製のものを用いることができる。通常は、ディスポーザブルカートリッジとして使用するため、安価なポリプロピレン等のプラスチック製が用いられる。
【0029】
本発明の固相抽出用カートリッジは、通常の固相抽出用カートリッジと同様の方法で用いることができる。すなわち、図6に示すように、1)適切な溶媒・溶液を用いてコンディショニングを行い、固相抽出剤の活性化(水和、溶媒和)を行う、2)一定量の試料溶液を適切な流速で通液し、試料溶液中の測定対象物質を抽出・濃縮する、3)適切な溶媒・溶液を用いて固相抽出剤に抽出された不要成分を洗い出す、4)適切な溶離液を用いて固相抽出剤に抽出・濃縮された測定対象成分を溶離させる、5)溶離された測定対象成分を含む溶液を適切な機器で測定する、という工程により行われる。固相抽出用カートリッジへのコンディショニング液、試料溶液、洗浄液、溶離液等の送液は、注射筒等を用いて手動で行うこともできるが、再現性の向上や省力化のため、種々の送液ポンプや図7に示すような固相抽出用マニュホールド21等を用いて行うことも可能である。
【0030】
図7において、固相抽出用カートリッジ6を固相抽出用マニュホールド21にセットする。固相抽出用マニュホールド21内に溶出液用受器(たとえば試験管、ビーカー)23をセットする。つぎに、アスピレータなどにより吸引を開始してマニュホールド21内を減圧とし、特定の減圧に保持する。ついで、固相抽出用カートリッジ6に、たとえば、アセトニトリル、水、3M硝酸、水および0.1M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)の順で、それぞれ10mLずつ通液してコンディショニングを行う。この際、コック22の開閉により通液を行う。この後、試料溶液を固相抽出用カートリッジ6に投入して通液させ、目的とする成分を固相抽出用カートリッジ6の焼結型固相抽出用吸着材に吸着させる。試料が固相抽出用カートリッジ6を抜けきったら、適当な溶媒を通液して焼結型固相抽出用吸着材中に吸着された不要成分を洗い出し、この洗浄液が固相抽出用カートリッジ6を抜けきったあと、コックを閉じ、固相抽出用カートリッジ6を隣のコックに移動させて取り付ける。さらに、吸着された成分を溶出させるため、適当な溶媒を固相抽出用カートリッジ6にコックの開閉により通液する。溶出された成分を溶出液用受器23に導く。このあと、受器23を取出し、さらに必要な分析などの操作を行うものである。
つぎに実施例によって本発明を説明するが、この実施例によって本発明をなんら限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
焼結型固相抽出用吸着材Aの製造
(1)キレート樹脂粒子aの合成
多孔質ポリマー系担体の合成は、懸濁重合法により行った。グリシジルメタクリレート80g、エチレンジメタクリレート120g、酢酸ブチル200gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2gの混合物を、0.1%ポリビニルアルコール水溶液2,000mL中に加え、油滴径が60μmになるように攪拌した。その後、70℃で6時間重合反応を行った。生成した共重合体粒子を濾取し、水、メタノールの順で洗浄した。一日風乾後、分級を行い、32〜90μmの多孔質ポリマー系担体80gを得た。得られた多孔質ポリマー系担体70gを、イソプロピルアルコール200mL、水800mLにペンタエチレンヘキサミン80gを溶解した溶液中に加え、50℃で6時間反応させてポリアミノ化を行いポリアミノ化樹脂とする。このポリアミノ化樹脂を濾取後、水、メタノール、水の順で洗浄した。洗浄したポリアミノ化樹脂の全量を、1M NaOH 1,000mLにクロロ酢酸ナトリウム150gを溶解した溶液中に入れ、40℃で6時間反応させ、カルボキシメチル化を行った。反応物を濾過して十分に水で洗浄後、メタノールに置換し、乾燥させてキレート樹脂粒子aを得た。
【0032】
(2)キレート樹脂粒子aの特性評価
前記(1)で得られたキレート樹脂粒子aの比表面積および平均細孔径(Beckman Coulter SA3100 Surface Area Analyzerで測定)は、それぞれ180m/gおよび12.1nmであった。また、乾燥状態のベッド体積とメタノール膨潤ベッド体積から求めた膨潤度は1.18であり、膨潤度が低いことが確認された。このキレート樹脂粒子aの250mgをとり、下部に孔径20μmのフィルタを挿入した内径8.9mm、高さ64mmのポリプロピレン製の注射筒型リザーバに充填し、充填ベッド上部にも同様のフィルタを挿入し、固相抽出用カートリッジを作成した。この固相抽出用カートリッジに、アセトニトリル、水、3M硝酸、水および0.1M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)の順で、それぞれ10mLずつ通液してコンディショニングを行った。その後、0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)で調整された0.5M硫酸銅溶液3mLを通液し、キレート性官能基を銅で飽和させた後、水10mL、0.005M硝酸5mLで洗浄した。吸着された銅を3M硝酸3mLで溶出し、溶出液を10mLに定容後、吸光光度計で805nmにおける銅の吸光度を測定し、銅吸着量を求めた。その結果、銅の吸着量は、0.44mmol Cu/gであり、十分な金属吸着能を示した。また、このキレート樹脂粒子a充填固相抽出用カートリッジを用いて、−30kPaの減圧下での純水の通液速度を測定したところ、44mL/minであった。
【0033】
(3)焼結型固相抽出用吸着材Aの製造
前記(1)で得られたキレート樹脂粒子aの25gとポリエチレン粉体(平均粒子径125μm)25gを混合して、混合物とした。この混合物の一部を直径9mm、高さ10mmの円柱状の成形体が得られる金型のキャビティに振動させながら充填をした。その後、金型に蓋をし、130℃の恒温炉中で20分間加熱した。加熱終了後、金型を空冷し、成型品を取り出し、円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Aを得た。この円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Aの平均重量は0.22g/個であり,キレート樹脂粒子aの混合量は50%であるので,キレート樹脂粒子aが0.11g含まれていることとなる。
【0034】
(4)焼結型固相抽出用吸着材Aの特性評価
前記(3)で得られた焼結型固相抽出用吸着材Aを、内径8.9mm、高さ64mmのポリプロピレン製の注射筒型リザーバに挿入して固相抽出用カートリッジを作成し、前記(2)と同様の方法で銅の吸着量を調べた。銅吸着量は0.21mmol Cu/gであり、十分な金属吸着能を示した。この焼結型固相抽出用吸着材A中のキレート樹脂粒子aの混合量は50%であるので、キレート樹脂粒子aの吸着能力の95.5%を維持していることとなり、ポリエチレン粉体との融着による大きな機能低下はなく十分な金属吸着能を示した。また、この焼結型固相抽出用吸着材A挿入固相抽出カートリッジを用いて、−30kPaの減圧下での純水の通液速度を測定したところ、39mL/minであり、(2)で得られたキレート樹脂粒子a充填固相抽出用カートリッジより若干通液速度は低下したが、十分使用可能な範囲のものであった。この評価試験時における流出液をBeckman Coulter Multisizer 3 Coulter Counterを用いて測定したが、キレート樹脂粒子の漏出は観察されなかった。さらに、水60mL−メタノール60mLの通液を繰り返し5回行ったが、体積変化はまったく観察されなかった。
【評価試験1】
【0035】
焼結型固相抽出用吸着材Aの吸着特性評価
前記(2)で得られたキレート樹脂粒子aを充填した固相抽出用カートリッジと、前記(4)で得られた焼結型固相抽出用吸着材Aを挿入した固相抽出用カートリッジを用いて種々のpHにおける金属吸着特性を調べた。前記(2)にしたがい、各固相抽出用カートリッジのコンディショニングを行った後、種々のpHに調整した金属混合標準液(五価ヒ素As(5価)、カドミウムCd、コバルトCo、三価クロムCr(III)、銅Cu、鉄Fe、マンガンMn、モリブデンMo、ニッケルNi、鉛Pb、バナジウムV、亜鉛Zn、各0.1mg/L)を通液し、金属を吸着させた。吸着させた金属は、3M硝酸3mLで溶出させ、溶出液中の金属濃度を測定して、回収率を求めた。金属濃度の測定には、PerkinElmer Optima 3000 DV ICP発光分光分析装置を用いた。その結果を図8に示す。焼結型固相抽出用吸着材Aの吸着特性は、混合したキレート樹脂粒子aの吸着特性とほとんど同じであり、本発明による焼結型固相抽出用吸着材は、多孔焼結体内に固定された機能性樹脂粒子の吸着特性を変化させていないことが分かった。
【実施例2】
【0036】
焼結型固相抽出用吸着材Bの作製
(1)キレート樹脂粒子bの合成
グリシジルメタクリレート60g、エチレンジメタクリレート140gとした他は、前記(1)と同様の条件で多孔質ポリマー系担体を合成し、45〜90μmに分級した。この多孔質ポリマー系担体を用いて、実施例1(1)と同様の条件でキレート樹脂粒子bを合成した。得られたキレート樹脂粒子bの比表面積は232m/g、平均細孔径は11.6nm、および膨潤度は1.17であった。また、前記(2)と同様の方法で銅吸着量を求めたところ、0.33mmol Cu/gであった。
【0037】
(2)焼結型固相抽出用吸着材Bの作製と評価
前記(1)で得られたキレート樹脂粒子bの10g、ポリエチレン粉体(平均粒子径125μm)20gおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体粉体(平均粒子径120μm)20gを混合後、実施例1(3)と同様の方法で成形し、直径9mm、高さ10mmの円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Bを得た。この焼結型固相抽出用吸着材Bの金属吸着量を前記(4)にしたがい測定した。銅吸着量は、0.05mmol Cu/gであった。この焼結型固相抽出用吸着材B中のキレート樹脂粒子bの混合量は20%であるので、キレート樹脂粒子aの吸着能力の75.8%を維持していた。エチレン−酢酸ビニル共重合体粉体を混合した焼結型固相抽出用吸着材Bは、乾燥状態でも速やかに水が浸透し、濡れ性の改善効果があることが分かった。
【実施例3】
【0038】
焼結型固相抽出用吸着材Cの作製
(1)陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの合成
グリシジルメタクリレート30g、ジビニルベンゼン170g、トルエン180g、n−ドデカン20gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2gの混合物を、0.1%ポリビニルアルコール水溶液2,000mL中に加え、油滴径が40μmになるように攪拌した。その後、80℃で6時間重合反応を行った。生成した共重合体粒子を濾取し、水、メタノールの順で洗浄した。一日風乾後、分級を行い、32〜63μmの多孔質ポリマー系担体75gを得た。得られた多孔質ポリマー系担体70gを、イソプロピルアルコール200mL、水800mLにN,N−ジメチルエチルアミン70gを溶解した溶液中に加え、40℃で6時間反応させて四級アンモニウム基を導入した。得られた樹脂を、濾取後、水、メタノールの順で洗浄し、乾燥させて、疎水性固相抽出剤cを得た。
【0039】
(2)陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの特性評価
実施例1(1)で得られたキレート樹脂粒子aの比表面積および平均細孔径は、それぞれ645m/gおよび5.2nmであった。また、乾燥状態のベッド体積とメタノール膨潤ベッド体積から求めた膨潤度は1.71であった。この陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cのイオン交換容量を逆滴定法により測定したところ、0.34meq/gであった。また、この陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの60mgを実施例1(2)と同様の注射筒型リザーバに充填した固相抽出用カートリッジを用いて、−30kPaの減圧下での純水の通液速度を測定したところ、38mL/minであった。
【0040】
(3)焼結型固相抽出用吸着材Cの作製と評価
前記(2)で得られた陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの25gとポリエチレン粉体(平均粒子径125μm)25gを混合後、直径9mm、高さ5mmの円柱状の成形体が得られる金型のキャビティに振動させながら充填をし、実施例1(3)と同一条件で、円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Cを得た。この円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Cの平均重量は0.12g/個であり、陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの混合量は50%であるので、陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cが0.06g含まれていることとなる。この焼結型固相抽出用吸着材Cのイオン交換容量を逆滴定法により測定したところ、0.15meq/gであった。この焼結型固相抽出用吸着材C中の陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの混合量は50%であるので、陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cのイオン交換容量の88.2%を維持していた。この焼結型固相抽出用吸着材Cを実施例1(4)と同一の注射筒型リザーバに挿入して固相抽出用カートリッジを作成し、−30kPaの減圧下での純水を通液した時の通液速度は、32mL/minであり、十分使用可能な範囲のものであった。また、流出液中にも粒子の漏出は観察されなかった。さらに、水−メタノール通液を繰り返し試験においても、体積変化はまったく観察されなかった。
【評価試験2】
【0041】
焼結型固相抽出用吸着材Bの吸着特性評価
前記(3)で作製した陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cを60mg充填した固相抽出用カートリッジと、実施例2(1)で作製した直径9mm、高さ5mmの円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Cを挿入した固相抽出用カートリッジを用いて、薬物の固相抽出を行い回収率の比較を行った。試料は、表1に示す薬物を1mol/Lの酢酸ナトリウム緩衝液10mLに溶解したものを用いた。
【0042】
【表1】

【0043】
上記固相抽出用カートリッジにメタノール2mL、純水2mL、2mol/L酢酸ナトリウム緩衝液1mLを通液してコンディショニングした後、上記試料溶液全量を注入した。ついで、95:5=0.1mol/L酢酸ナトリウム緩衝液:メタノールの混合溶液2mLを同カートリッジに通液して洗浄した。その後、メタノール2mLを通液して固相抽出剤に吸着した薬物を溶出した。酸性物質に関しては、2%のギ酸−メタノール溶液4mLを通液して溶出した。溶出液中の各薬物濃度をHPLCを用いて表2に示す条件で測定し、吸着回収率を求めた。表3に各薬物の回収率を示す。
【0044】
【表2】



【0045】
【表3】

【0046】
表3の結果から、円柱状の焼結型固相抽出用吸着材Cは、中性化合物、塩基性化合物および酸性化合物をほぼ100%吸着回収することができ、混合された陰イオン交換基を導入した疎水性固相抽出剤cの特性を十分発揮できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、多孔質ポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体との熱融着という簡単な方法で、疎水性樹脂、親水性樹脂、キレート樹脂、イオン交換樹脂等の多孔質ポリマー系固相抽出剤を高度に保持し、かつ充填密度の変動といった問題が生じない、高機能な焼結型固相抽出用吸着材を装着した固相抽出カートリッジを得ることができる。本発明の焼結型固相抽出用吸着材は、平板状や円盤状、円柱状や角柱状、中空の円筒状や角筒状、さらには、これらの一端を閉塞させたカップ状等の多彩な成形体を得ることが可能であり、液体試料中の測定対象成分の抽出・濃縮以外にも、大気中成分の捕集用カートリッジ等とすることも可能であり、化学分析に使用される前処理剤として広く使用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:注射筒型リザーバ
2:上部フリット
3:下部フリット
4:ルアー型リザーバ、4a:キャップ、4b:ボディ
5:平板型ホルダ、5a:キャップ、5b:ボディ
6:固相抽出用カートリッジ
11:粒子状固相抽出剤
12:本発明の焼結型固相抽出用吸着材
13:上部および下部に多孔焼結体層を一体成形した本発明の焼結型固相抽出用吸着材
13a:上部多孔焼結体層、13b:下部多孔焼結体層
14:本発明の焼結型固相抽出用吸着材
15:平板状に成形した本発明の焼結型固相抽出用吸着材
21:固相抽出用吸引マニュホールド
22:ストップコック
23:溶出液用受器
●:実施例1の焼結型固相抽出用吸着材Aの金属の吸着回収率
△:実施例1のキレート樹脂粒子aの金属の吸着回収率
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図8a】

【図8b】

【図8c】

【図8d】

【図8e】

【図8f】

【図8g】

【図8h】

【図8i】

【図8j】

【図8k】

【図8l】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の多孔質のポリマー系固相抽出剤と熱可塑性樹脂粉体の混合物を加熱・焼結した多孔焼結体であって、熱可塑性樹脂の焼結マトリックス中に孔質ポリマー系固相抽出剤が分散固定されたものであることを特徴とする焼結型固相抽出用吸着材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂粉体に混合される多孔質のポリマー系固相抽出剤が、乾燥時のベッド体積と溶媒に膨潤させた時のベッド体積から下記式1により求められる膨潤度として1.0〜2.0である請求項1に記載の焼結型固相抽出用吸着材。
【数1】



【請求項3】
熱可塑性樹脂粉体に混合される多孔質のポリマー系固相抽出剤の混合率が、10〜70重量%であることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の焼結型固相抽出用吸着材。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかまたはそれらを混合したものを主成分としたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の焼結型固相抽出用吸着材。
【請求項5】
前記請求項1ないし4記載の熱可塑性樹脂多孔焼結体内部に多孔質ポリマー系固相抽出剤が固定された焼結型固相抽出用吸着材をリザーバあるいはホルダに装着した固相抽出用カートリッジ。

【公開番号】特開2010−256225(P2010−256225A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107965(P2009−107965)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000229818)日本フイルコン株式会社 (58)