説明

固着物剥離除去装置

【課題】微粉末の摩耗粉や剥離粉が周囲に飛散することがなく、また、剥離時における摩擦熱の発生を抑制できる新規な固着物剥離除去装置の提供
【解決手段】車体等に固着した固着物を剥離除去する固着物剥離除去装置であって、回転駆動手段により回転される取り付け軸30に取り付けられて当該取り付け軸30を中心に回転する円板状の剥離部材20を有し、当該剥離部材20は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主体とし、当該エチレンプロピレンジエンゴムに、少なくとも所定量の充填剤と、軟化剤と、白色顔料と、架橋剤とを配合したゴム組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体等に固着した接着剤などの固着物(粘着物)を効率良く剥離除去するための固着物剥離除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の車体には、ステッカーやエンブレム、雨よけのためのドアバイザーなどの各種外装材が粘着テープや粘着剤などによって接着されている。これらの外装材は、車体の板金修理や再塗装を行う際には邪魔になるため、その都度車体より剥がす必要がある。しかし、これらの外装材を剥がした後に粘着テープや粘着剤などの一部が車体表面に固着して残ってしまうことがあり、これらの固着物の除去作業(手作業)には、多くの時間と労力を要している。
【0003】
係る問題を改善するため、例えば以下の特許文献1では、車体等に接着されたステッカー等を剥離除去する粘着剤剥離用回転ロールを提案している。この粘着剤剥離用回転口一ルは、表面に弾性力と耐摩耗性を有するロール状の本体を、電気グラインダやエアグラインダにより回転させて剥離対象面に圧着することにより、剥離対象面側の固着物を摩擦熱で軟化させて剥離除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平8−9143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記公報の粘着剤剥離用回転ロールは、剥離対象面に本体を庄接させると、本体と剥離対象面との摩擦により本体が摩耗したり固着物が剥がされて多量の摩耗粉や剥離粉が発生する。そして、これらの摩耗粉や剥離粉は微粉末のため、ロール状の本体が回転するのに伴って周囲へ広く飛散し、作業環境や作業者の健康を損ねるなどの問題がある。
【0006】
また、修理作業のために車体から一旦取り外した(剥がした)樹脂製のドアバイザーなどを再利用するために、そのドアバイザー側に残った接着剤の固着物なども完全に除去する必要がある。しかし、ドアバイザー側の固着物を前記のような回転ロールを用いて除去しようとすると、摩擦剥離時に発生する高温の摩擦熱によってドアバイザー表層部が薄く溶けて曇ってしまい、その外観を著しく悪化させてしまうといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明は係る従来の問題点を改善するためになされたもので、その目的は、固着物の剥離除去作業時に摩耗粉や剥離粉が周囲に飛散することがない新規な固着物剥離除去装置を提供することを目的とするものである。また、本発明の他の目的は、剥離除去時における摩擦熱の発生を抑制できる新規な固着物剥離除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、車体等に固着した固着物を剥離除去する固着物剥離除去装置であって、回転駆動手段により回転される取り付け軸に取り付けられて当該取り付け軸を中心に回転する円板状の剥離部材を有し、当該剥離部材は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主体とし、当該エチレンプロピレンジエンゴムに、少なくとも所定量の充填剤と、軟化剤と、白色顔料と、架橋剤とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする固着物剥離除去装置である。
【0009】
このような構成をした本発明の固着物剥離除去装置によれば、電動ドリルやエアドリルのような回転駆動手段によって、剥離部材を取り付け軸と共に高速で回転させて、その剥離部材の外周面を剥離すべき車体の固着物に押し当てることにより、その摩擦力によって固着物が粉末状に削り取られるように除去されると共に除去された固着物と、同じくその摩擦力によって発生した剥離部材の摩擦粉とが結合して比較的大きな粒状となって効率良く除去される。これによって、微細な摩耗粉や剥離粉が発生して周囲に飛散することがなくなるため、作業環境や作業員の健康への悪影響を防止することができる。
【0010】
また、本発明の固着物剥離除去装置は、剥離部材を高速で回転させながら剥離対象部位に軽く接触させるだけで固着物を効果的に剥離除去できる。そのため、発生する摩擦熱も小さくなるため、樹脂製のドアバイザーのような熱に弱い部材に対して摩擦熱による悪影響を抑制することができる。
【0011】
ここで、本発明の固着物剥離除去装置の主要部を構成する剥離部材は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM:Ethylene-Propylene-Diene Rubber)を主体とし、このゴムに所定量の充填剤と、軟化剤と、白色顔料と、架橋剤とを配合したゴム組成物からなる。
【0012】
そして、まずこのゴムに配合される充填剤は、主に剥離部材の容積を増し、コストを引き下げることを第一の目的とし、併せて加工を容易にし、さらに本発明の目的を達成する性質を付与させるために配合するものであり、従来のゴム製品で通常用いられている各種の充填剤をそのまま適用できる。
【0013】
具体的には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、活性化炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム(クレー)、シリカ(二酸化ケイ素)、メタケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、ゼオライト、チタン酸カリウム・ウィスカ、白石カルシウム、珪藻土、ケイ砂、軽石粉、スレート粉、アルミナのコロイド溶液、アルミナ・ホワイト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、二硫化モリブデンなどの無機充填剤を用いることができる。特に、この中でも軽質炭酸カルシウムはコスト的にもまた加工性などにも優れていることから本発明で用いる充填剤として最も望ましい。また、この充填剤としては、これら無機系の充填剤の他に、再生ゴムやゴム粉末、エボナイト粉末、セラック、木粉、ココナッツ椰子殻粉、コルク粉末、セルロースパウダ、木材パルプ、紙および布などの有機系の充填剤を用いることができる。
【0014】
そして、この充填剤の配合量は、エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して150〜300重量部とすることが望ましい。すなわち、配合量が150重量部未満では、エチレンプロピレンジエンゴムの使用比率が高くなって十分なコスト削減が達成できないだけでなく、本発明の目的を達成する性質が十分に発揮できないからである。反対に、配合量が300重量部を越えてしまうと、ゴムとしての性質を損なってしまい、強度や弾性が著しく低下してしまうからである。好ましくは、200〜250重量部の範囲である。なお、ゴムの中でもエチレンプロピレンジエンゴムは、天然ゴム(NR)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などの他のゴムに比べて前記の充填剤を大量に配合してもゴムとしての性質を維持できるという特質を有している。
【0015】
これらの充填剤と共に配合される軟化剤は、ゴムの加工を容易にする目的で、ゴム分子間の潤滑剤として作用すると共に、他の配合剤の分散を助け、さらに本発明の目的を達成する性質を付与させるために配合するものであり、従来のゴム製品で通常用いられている軟化剤をそのまま適用できる。
【0016】
具体的には、プロセスオイル(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系)、エチレン−α−オレフィンのコオリゴマー、パラフィン・ワックス、流動パラフィン、ホワイト・オイル、ペトロラタム、石油スルホン酸塩、ギルソナイト、石油アスファルト、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂などの鉱物油系軟化剤を用いることができる。特にこの中でもプロセスオイルはコスト的にもまた加工性などにも優れているから本発明で用いる軟化剤として最も望ましい。また、この軟化剤としては、これら鉱物油系の軟化剤の他に、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、ロジン、パインオイル−ジペンテン、パインタール、トール油などの植物系軟化剤を用いることができる。
【0017】
そして、この軟化剤の配合量は、エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して50〜100重量部とすることが望ましい。すなわち、配合量が50重量部未満では、素材が硬くて加工が困難になってしまうだけでなく、本発明の目的を達成する性質が十分に発揮できないからである。反対に、配合量が100重量部を越えてしまうと、素材が柔らかくなりすぎて所望の強度が得られないからである。好ましくは70〜80重量部である。
【0018】
これらの充填剤、軟化剤と共に配合される白色顔料は、製品としての美観を向上させると共に、本発明の目的を達成する性質を付与させるために配合するものであり、従来のゴム製品で通常用いられている白色顔料をそのまま適用できる。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン、パライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、せっこう、沈降性シリカなどの白色顔料を用いることでき、この中でも酸化チタンはコスト的にもまた性能的にも最も好ましい。
【0019】
そして、この白色顔料の配合量は、エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して5〜50重量部とすることが望ましい。すなわち、配合量が5重量部未満では、ゴムの素材の色(黄土色)が強くて所望の白色度が得られないだけでなく、本発明の目的を達成する性質が十分に発揮できないからである。反対に、配合量が50重量部を越えてしまうと、それ以上の効果が得られず材料が無駄になってしまうからである。好ましくは10〜30重量部である。なお、この白色顔料と共にカドミウム赤や銀朱などの赤色顔料や、アンバーや酸化鉄茶などの褐色顔料、カドミウム黄や亜鉛黄などの黄色顔料、酸化クロム緑やコバルト緑などの緑色顔料、群青やコバルト青などの青色顔料などを併用することができるが、白色顔料を含まない場合にはその性質がやや低下する。
【0020】
前記充填剤、軟化剤、白色顔料と共に配合される架橋剤(加硫剤)は、ゴムとしての弾性や引っ張り強さなどを発揮させると共に、本発明の目的を達成する性質を付与させるために配合するものであり、従来のゴム製品を製造する際に通常使用されている架橋剤をそのまま用いることができる。
【0021】
具体的には、硫黄(粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、非汚染性硫黄ドナー)、硫黄化合物(塩化硫黄、モルフォリン・ジスルフィド、高分子多硫化物)、セレニウム、テルリウム、酸化マグネシウム、リサージ、亜鉛華、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイル・キノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、ヘキサメチレン・ジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、ヘキサメチレンジアミン・カルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4´−メチレンビス(ジクロヘキシルアミン)アルバメート、4,4´−メチレンビス(2−クロロアニリン)、第三ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第三ブチルクミルペルオキシド、1,1−ジ−第三ブチルペルオキシ・シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(第三ブチルペルオキシ)パレレート、ベンゾイルペルオキシド、第三ブチルペルオキシイソブチレート、第三ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、第三ブチルペルオキシベンゾエート、第三ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、第三ブチルペルオキシアリルモノカルボナート、p−メチルベンゾイルペルオキシド、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物およびトリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂、エチレングリコール・ジメタクリレート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、多官能性メタクリレートモノマー、多価アルコールメタクリレートおよびアクリレート、N,N´−m−フェニレンジマレイミド、安息香酸アンモニウム、シリカ系充填剤含有モノマー、トリアリル・イソシアヌレート、含金属モノマー、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸マグネシウム、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、N,N´−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ヘキサンジアミン、イソシアヌル酸、カチオン系活性剤、特殊混合加硫剤、高純度工業用石けんなどを用いることができる。
【0022】
さらに、これら架橋剤と共に架橋促進剤、架橋促進助剤などを配合することが望ましい。
架橋促進剤としては、例えば、ジフェニル・グアニジン、ジ・オルトトリル・グアニジン、オルト・トリル・ビグアニド、ジカテコール・ほう酸のジオルト・トリル・グアニジン塩、n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合品、同族のアクロレイン−芳香族塩基の縮合品、ヘキサメチレン・テトラミン、アセトアルデヒド・アンモニア、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N−N−ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4´−モノホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾル・スルフェンアミド、N,N´−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−第三ブチル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−第三ブチル−ジ(2−ベンゾチアゾール)スルフェンイミド、チオカルバニリド、エチレン・チオ尿素(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチル・チオ尿素、ジブチル・チオ尿素、トリメチル・チオ尿素、ジラウリル・チオ尿素、テトラメチルチラウム・モノスルフィド、テトラメチルチラウム・ジスルフィド、活性化テトラメチルチラウム・ジスルフィド、テトラエチルチラウム・ジスルフィド、テトラブチルチラウム・ジスルフィド、N,N´−ジメチル−N,N´ジフェニルチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチラウム・テトラまたはヘキサスルフィド、ジベンジルアミンとモノベンジルアミンの混合品、エチルクロリドとアンモニア,ホルムアルデヒドの反応生成物、ベンゾチアジル−2−スルフィンモルホリド、ベンゾチアジル−2−ジシクロヘキシルスルフィドアミド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チラウムジスルフィド、ジメチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジル・ジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル、ジメチル・ジチオカルバミン酸銅、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉄、ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペコリン、イソプロピル・キサントゲン酸亜鉛、ブチル・キサントゲン酸亜鉛、4,4´−ジチオジモルホリン、亜鉛−o,o−ジ−n−ブチル・ホスホロジチオエート、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオスルフェート),ジソデウム塩,ジヒドレート、メルカプトイミダゾリン−チオン−2などを用いることができる。
【0023】
架橋促進助剤としては、例えば、亜鉛華、活性亜鉛華、リサージ、鉛丹、鉛白、水酸化、カルシウム、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛、ジブチルアンモニウム・オレート、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリアタノールアミン、ジベンジルアミン、有機アミン、ジエチレングリコール、レシチン、トリアリル=トリメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛塩混合物、アミン系活性剤、過酸化亜鉛調整物、オクタデシル・トリメチル・アンモニウムブロミド、合成ハイドロサイト、2−エチルヘキサノエート亜鉛からなる加硫促進助剤などを用いることができる。
【0024】
また、このゴム組成物は、その他にスコーチ防止剤や老化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、粗練り促進剤、滑剤、難燃剤、練り込み帯電防止剤、カップリング剤などを適量添加しても良い。
【0025】
そして、この架橋剤の配合量は、エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して1.0〜10重量部とすることが望ましい。すなわち、配合量が1.0重量部未満では、十分な架橋効果が得られず、本発明の目的を達成する性質が十分に発揮できないからである。反対に、配合量が10重量部を越えてしまうと、それ以上の効果が得られず材料が無駄になってしまうからである。好ましくは2.0〜5.0重量部である。なお、この架橋剤と共に、前述したような架橋促進剤、架橋助剤、老化防止剤などを併せて配合する場合はその総配合量がエチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して合計1.0〜10重量部とすることが望ましい。
【0026】
また、前記剥離部材は、硬度計(ディロメータ)で計測されるゴム硬度(JIS K6253)が25°〜45°であることが望ましく、さらには30°〜35°とするのが好ましい。すなわち、ゴム硬度が25°未満では、柔ら過ぎて固着物の剥離効果が十分に得られないばかりでなく、取り付け軸に取り付けた際に変形したり、回転時に撓んでぶれたりするおそれがあるからである。反対にゴム硬度が45°を越えると剥離対象部位を傷つけたり細かな摩擦粉が多く発生したりするからである。なお、このゴム硬度は、主に充填剤の配合量を調節することによって調整できる。
【0027】
ゴム組成物の調製は、前述した材料を所定の比率で配合しながらオープンロールなどを用いる開放式混練、ニーダ、インタミキサなどを用いる密閉式混練、さらには溶液式混練などによって行うことができる。開放式混練の場合は、材料のゴムをオープンロールに巻き付かせ、素練りした後、充填剤、軟化剤、白色顔料を所定量添加し、最後に架橋剤を添加する。この間、常時10L/分程度の冷却水を流し、混練時の温度を約50〜70℃程度に保つことが好ましい。また、密閉式混練の場合には、架橋剤以外の配合成分を一括して密閉式混練機に投入して混練を行い、数分後に排出させてからオープンロールを用いて架橋剤の添加を行う。この間、やはり十分な冷却水を流し、密閉式混練中は約120℃以下に、オープンロールでの架橋剤添加は約70℃以下に保つことが好ましい。
【0028】
このようにして調製されたゴム組成物は、一般に金型を用いた加圧成形プレス機で約100〜300kg/cm、約130〜190℃の架橋条件下で加圧・架橋成形されることによって本発明の剥離部材となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の固着物剥離除去装置によれば、以下に示すような優れた効果を発揮する。
(1)電動ドリルやエアドリルのような回転駆動手段によって、剥離部材を取り付け軸と共に高速で回転させて、その剥離部材の外周面を剥離すべき車体の固着物に押し当てることにより、その摩擦力によって固着物が粉末状に削り取られるように除去されると共に除去された固着物と、同じくその摩擦力によって発生した剥離部材の摩擦粉とが結合して比較的大きな粉末状となって効率良く除去される。これによって、微細な摩耗粉や剥離粉が発生して周囲に飛散することがなくなるため、作業環境や作業員の健康への悪影響を防止することができる。
(2)また、本発明の固着物剥離除去装置は、剥離部材を高速で回転させながら剥離対象部位に軽く接触させるだけで固着物を効果的に剥離除去できる。そのため、発生する摩擦熱も小さいため、樹脂製のドアバイザーのような熱に弱い部材に対して摩擦熱による悪影響を抑制することができる。
(3)また、従来使用済みの樹脂製ドアバイザーは、その固着物をきれいに除去することが困難であったため、通常廃棄処分されていた。しかし、本発明の固着物剥離除去装置を用いればその固着物をきれいに除去することができるため、そのままその車あるいは同種の他の車のドアバイザーとして再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る固着物剥離装置100の実施の一形態を示す斜視図
【図2】本発明に係る固着物剥離装置100の実施の一形態を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る固着物剥離装置10の実施の一形態を示した斜視図、図2はその分解斜視図である。図示するようにこの固着物剥離装置10は、円板状の剥離部材20と、この剥離部材20の中心部に取り付けられる取り付け軸30とから主に構成されている。
【0032】
取り付け軸30は、例えば長さが約5〜6cm、径が約0.5mm程度のボルト状の金属製軸部31と、一対の固定部材32、33と、締め付けナット34とから構成されており、その軸部31が図示しない電気グラインダやエアグラインダなどの回転駆動手段に取り付け可能となっている。
【0033】
そして、図2に示すように、この金属製軸部31の頭部に固定部材32、33の一方を嵌め込んだ後、この金属製軸部31を剥離部材20の中心部に穿孔された取り付け孔22を貫通させた状態で反対側から他方の固定部材33で挟み、締め付けナット34を金属製軸部31のネジ山35に螺合させることで図1に示すように円板状の剥離部材20を取り付け軸30に一体的に取り付け可能となっている。
【0034】
また、図2に示すようにこの固定部材32、33の剥離部材20に接する面には、それぞれ突起36が複数設けられており、これらの固定部材32、33を締め付けナット34によって剥離部材20側に押さえつけるように締め込むことでこれらの突起36が剥離部材20側に食い込んで剥離部材20が空回りしないようになっている。
【0035】
一方、剥離部材20は、例えば厚さ約1.5cm、直径が約7.0cm程度の円板状の部材本体21の中心部に、前記取り付け軸30の軸部31が貫通する取り付け孔22が穿孔された構造となっている。
【0036】
この剥離部材20は、前述したようにエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主体とするゴム組成物から構成されており、この剥離部材20が車体などに粘着して固着した固着物と高速で擦り合うことでその固着物を強制的剥離して除去することになる。
【0037】
すなわち、このような構成をした本発明の固着物剥離装置10による固着物の剥離・除去に際しては、剥離部材20を取り付け軸30と共に図示しない回転駆動手段によって高速で回転(例えば、600〜800rpm)させた状態で、その外周面を剥離すべき車体などに粘着して固着した固着物に押し当てることにより、その摩擦力によって固着物が粉末状に削り取られるようにして除去される。また、この際には剥離部材20側のゴム材料もその摩擦力によってその表面から摩耗粉となって削り取られるが、削り取られた摩耗粉が粉末状の固着物を取り込むように結合して比較的大きな粉末状となる。これによって、削り取られた固着物や剥離部材20側のゴム材料が微細な摩耗粉や剥離粉の状態で周囲に飛散することがなくなるため、作業環境や作業員の健康への悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0038】
また、本発明の固着物剥離除去装置10は、剥離部材20を高速で回転させながら剥離対象部位となる固着物に軽く接触させるだけで効果的に剥離除去できる。そのため、その部位に発生する摩擦熱も小さいため、例えば、樹脂製のドアバイザーのような熱に弱い部材に対して摩擦熱による外観の悪化などの悪影響を未然に抑制することができる。以下、具体的実施例を説明する。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
まず、エチレンプロピレンジエンゴムとして三井石油化学工業株式会社の原料を使用したMW004を用いると共に、充填剤として近江化学工業製の軽微性炭酸カルシウム(平均粒径3μm、見掛け比重1.6ml、吸油量91ml/100g)を、軟化剤として出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW−90を、白色顔料として石原産業株式会社製の白色顔料(硫酸法酸化チタン)A−100を、架橋剤(架橋促進剤、架橋助剤を含む)として、鶴見化学工業株式会社製のゴム粉末硫黄、大内新興化学工業株式会社製のノクセラーTT−P、ノクセラーTRA、ノクセラーDM−P、日本油脂株式会社製のステアリン酸を用いた。
【0040】
そして、このエチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して充填剤を250重量部、軟化剤を75重量部、白色顔料を25重量部、架橋剤を5重量部配合し、オープンロールでこれら材料が均一に分散するまで混練した。なお、エチレンプロピレンジエンゴムの材料として用いたMW004には、予めある程度の充填剤が含まれているため、それを考慮してさらに前記の充填剤を加えた。
【0041】
その後、その混練物を厚さ約5mmのシート状にした後、5cm×5cmのマス目状に裁断し、裁断した5cm×5cm角のシートを三枚1組に重ね合わせて金型にセットし、200kg/cmの圧力で加圧しながら170℃の温度で12分間加熱処理(架橋)して本発明に係る(規定値内)剥離部材20を作製した。なお、この剥離部材20のゴム硬度(JIS K6253)を硬度計(ディロメータ)で計測したところ、35°であった。
【0042】
そして、このようにして作製した剥離部材20を用いて、実車に装着されていたポリカーボネート製のサイドバイザーの粘着面に固着していた粘着シールを剥離除去し、その剥離除去作業時に発生する粉塵の状態および除去後のサイドバイザー表面の状態を目視観察した。
【0043】
この結果、サイドバイザーの粘着面に固着していた粘着シールを簡単に剥離除去できただけでなく、その作業中に細かい粉塵が周囲に飛散することがなく、消しゴムの削り滓のような比較的大きな粒状となって除去された。また、除去後のサイドバイザー表面には熱で溶けたような部分や白く曇ったような部分が殆ど見られず、ほぼ元のクリアーな状態が維持できた。
(実施例2)
【0044】
エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して充填剤を300重量部配合した他は、実施例1と同様な条件で本発明に係る(規定値内)の剥離部材20を作製した。そして、このようにして作製した剥離部材20を用いて、実車に装着されていたアクリル製のサイドバイザーの粘着面に固着した粘着シールを剥離除去し、その剥離除去作業時に発生する粉塵の状態および除去後のサイドバイザー表面の状態を観察した。この結果、実施例1と同様に、サイドバイザーに固着した粘着シールを簡単に剥離除去できただけでなく、その作業中に細かい粉塵が周囲に飛散することがなく、消しゴムの削り滓のような比較的大きな粒となって除去された。また、除去後のサイドバイザー表面には熱で溶けたような部分や白く曇ったような部分が殆ど見られず、ほぼ元のクリアーな状態が維持できた。
(実施例3)
【0045】
エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して充填剤を200重量部配合した他は、実施例1と同様な条件で本発明の規定値内の剥離部材20を作製した。そして、このようにして作製した剥離部材20を用いて、実車に装着されていたポリカーボネート製のサイドバイザーの粘着面に固着した粘着シールを剥離除去し、その剥離除去作業時に発生する粉塵の状態および除去後のサイドバイザー表面の状態を観察した。この結果、実施例1と同様な良好な結果が得られた。
(比較例1)
【0046】
エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して充填剤を120重量部配合した他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製した。そして、この剥離部材を用いて実施例1と同様な試験を行ったところ、サイドバイザーの粘着面に固着した粘着シールの剥離除去にやや時間がかかった。また、その作業中に細かい粉塵が周囲に飛散することがなく、消しゴムの削り滓のような比較的大きな粒状となって除去されたが、除去後のサイドバイザー表面に細かい傷が残って白く曇ったような部分が見られた。
(比較例2)
【0047】
エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して充填剤を350重量部配合した他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製したが、得られた剥離部材は、ゴム特有の強度や弾力性が乏しくなってしまい、剥離部材として用いることができなかった。
(比較例3)
【0048】
軟化剤の配合量を40重量部とした他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製した。そして、この剥離部材を用いて実施例1と同様な試験を行ったが、得られた剥離部材は、硬度が高すぎて(50°)、サイドバイザー表面に細かな傷が残ってしまった。
(比較例4)
【0049】
軟化剤の配合量を120重量部とした他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製したが、得られた剥離部材20は、柔らかすぎて(20°)、取り付け軸に取り付けた際に変形してしまい、また、固着物の剥離除去に多くの時間がかかってしまった。
(比較例5)
【0050】
白色顔料を全く配合しない他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製し、この剥離部材を用いて実施例1と同様な試験を行った。この結果、細かな粉塵が発生すると共に、固着物の剥離除去に多くの時間がかかってしまった。この白色顔料は、当初製品の美観を向上させることのみを目的として配合したものであったが、これを配合すると製品の性能(剥離除去性、微粉発生抑制、発熱抑制)がより向上することが分かった。
(比較例6)
【0051】
白色顔料の配合量を60重量部とした他は、実施例1と同様な条件で剥離部材を作製し、この剥離部材を用いて実施例1と同様な試験を行った。この結果、実施例1に比べて効果に差が殆ど見られないものの、配合量が増えた分のコストが高くなってしまった。
【符号の説明】
【0052】
100…固着物剥離装置
20…剥離部材
21…剥離部材本体
22…取り付け孔
30…取り付け軸
31…軸部
32、33…固定部材
34…締め付けナット
35…ネジ山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体等に粘着して固着した固着物を剥離除去する固着物剥離除去装置であって、
回転駆動手段により回転される取り付け軸に取り付けられて当該取り付け軸を中心に回転する円板状の剥離部材を有し、
当該剥離部材は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主体とし、当該エチレンプロピレンジエンゴムに、少なくとも所定量の充填剤と、軟化剤と、白色顔料と、架橋剤とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする固着物剥離除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固着物剥離除去装置において、
前記ゴム組成物は、前記エチレンプロピレンジエンゴム100重量部に対して、前記充填剤を150〜300重量部、前記軟化剤を50〜100重量部、前記白色顔料を5〜50重量部、前記架橋剤を1.0〜10重量部配合してなることを特徴とする固着物剥離除去装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固着物剥離除去装置において、
前記剥離部材は、ゴム硬度(JIS K6253)が25°〜45°であることを特徴とする固着物剥離除去装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183468(P2012−183468A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47680(P2011−47680)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(511058660)
【出願人】(511058671)
【Fターム(参考)】